Generated by All in One SEO v4.9.7.2, this is an llms.txt file, used by LLMs to index the site. # JapanForming WE THINK IN SHEET METAL ## Sitemaps - [XML Sitemap](https://japanforming.com/sitemap.xml): Contains all public & indexable URLs for this website. ## Posts - [ブログ](https://japanforming.com/blog/) - [バーチャルシミュレーションからプレス成形の現場へ ― 世界をつなぐ](https://japanforming.com/virtual_simulation_connecting_worlds/) - プロセスのバーチャル化は、プロセスの最適化、効率と精度の向上、そして素早い対応が求められる環境においてより迅速に設計変更を行えることから、多くの分野で広く活用され、さらに拡大を続けています。プレス成形分野では25年以上にわたり、プレス成形工程でのシート材の挙動をシミュレーションする専門性の高いソフトウェアが活用されています。これらのアプリケーションを通じて、シミュレーション結果を保存し、生産チェーン全体で重要なデータを共有することができます。 プレス成形分野でシミュレーションソフトウェアを継続的に活用することで、バーチャル環境での結果と実際の製造現場での結果を最大80%程度まで相関させることができます。パレート図(図1)はこの相関を示しており、投入するエンジニアリング工数に応じて、シミュレーションの結果と製造現場での結果の一致率がどのように変化するかを表しています。 図1:パレート図 現在では、80%の相関を達成するために必要なエンジニアリング工数は約20%にすぎません(図1)。しかしこの相関をさらに高め、できる限り高い予測精度を目指し続けることこそが、今後の課題となるでしょう。 本質的には、これは未来を予測する能力に関わるものです。大きなメリットをもたらす変革的な考え方である一方で、完全に実現することは依然として容易ではありません。 シミュレーションが実際の製造を導く以上、取り組むべき課題の一つは、バーチャルでシミュレーションしたことを実物の製造現場で正確に実行することです。製造工程全体を通じて数多くのパラメータが存在し、それらが変動することで、シミュレーションと実際のプレス部品との間に差異が生じる場合があります。 さらに、品質基準はますます厳格になっています。寸法精度は0.3mm以内に維持する必要があり、外観部品に生じるサーフェスの不具合についても正確に予測しなければなりません。これらの不具合は、特殊な照明技術を用いて初めて確認される場合も少なくありません。また、単品部品のばらつきを考慮しながら、サブアセンブリや完成したホワイトボディ(Body in White)の寸法公差を維持する必要があるため、さらに複雑さが増します。 したがって、シミュレーションと実際の生産パラメータの差異がわずかであっても、製品仕様への適合性に大きな影響を及ぼす可能性があります。このような場合、各パラメータの関係を詳細かつ体系的に分析することが重要です。具体的には、材料証明書に記載された機械特性(図2)と、ソフトウェア上の材料特性の設定(図3)を比較します。また、これらの特性は時間の経過とともに変化する可能性があるため、製造日も確認する必要があります。 図2:材料証明書の例 図3:シミュレーションにおける材料特性の設定例 シートの流入に影響を与えるもう一つのパラメータは、バインダ内の面圧分布です。これは、加えられる荷重と接触面積との関係によって決まります。そのため、製造現場の面圧テーブル(図4)と、バーチャル上の面圧テーブル(図5)を比較する必要があります。 図4:プレス機を閉じる時点における実際の面圧テーブルの例 図5:シミュレーションにおける面圧テーブルの例 トライボロジも、プレス成形に大きな影響を与えます。金型表面の粗さは材料流入と最終部品の面品質に大きく影響します。そのため、シミュレーションで使用する摩擦係数と、実際の金型に施される表面仕上げ(図6)を比較することが不可欠です。 図6:AutoFormで使用する摩擦係数と、実際の金型に施される研磨との比較 着目すべきは実生産のパラメータとシミュレーションのパラメータが一致しない部分を特定し、理解することです。 このような課題を克服するには、徹底的かつ体系的な検証プロセスが必要です。バーチャルのシミュレーションパラメータと現場での製造条件を効果的に同期させることで、シミュレーションを実際の製造プロセスの信頼できる指針として活用でき、実質的にデジタルマスターを構築することにつながります。 より高い相関性を追求することは、品質向上、効率改善、そしてコストとリードタイムの削減につながります。これにより、拡大する市場要求に応えることができます。 したがって、従来の考え方にとらわれず、シミュレーションを信頼して製造プロセスの指針として活用することが不可欠です。そのためには、部門間で情報を円滑に共有し、ある分野のシミュレーション結果を、別の分野でも有意義なデータとして活用してゆくことが重要です。 シームレスな情報の流れを確保するには、初期の製品フィージビリティ検討から生産ラインの稼働に至るまで、全体を捉えるグローバルな視点をもつ必要があります。全体像を共有することで協調的な取り組みが促進され、各部門および各工程が共通の目標に向かうパートナーであることを認識しやすくなります。こうした協調により、有機的で障壁のない情報交換が促進されます。 デジタル情報の流れは、部門間の統合だけでなく、より広範なサプライチェーンをつなぐうえでも不可欠です。効果的なデータ共有により、生産プロセスチェーン全体にわたって、情報の詳細度と精度が向上します(図7)。 図7:情報の流れ まとめると、コスト、品質、納期に関する市場要求を満たしながら、部品のプレス成形およびアセンブリで優れた成果を得るには、すべてのプロセスにデジタル化とシミュレーションを十分に組み込むことが重要です。重要なパラメータを整合させ、デジタル情報の円滑な流れを維持することが鍵となります。このような連携によって初めて、バーチャル上の予測を実際の製造現場における成功へと確実に結び付け、一貫して高精度で信頼性の高い結果を実現することができます。 - [部品設計の初期段階におけるコスト増のリスク低減](https://japanforming.com/springback_feasibility_drawbeads/) - 初期段階のフィージビリティ評価:成否は最初に決まる このブログ記事は、お客様からの緊急のご要請をきっかけに執筆したものです。オートフォーム社テクニカルアカウントマネージャー、ステファン・キューパーが、初期段階のフィージビリティスタディを徹底する重要性と、それが「少なすぎる、遅すぎる」という問題とどう結び付くのかを解説します。初期段階における製品や工程のフィージビリティスタディにて、スプリングバック見込み補正の有効な方策を確立できれば、トライアウト担当部門での時間とコストの大きな無駄を防げます。では、この原則は十分に実践されているでしょうか。 ここに問題の本質があります。本来避けられたはずの不具合を修正するには、多くの場合、製品形状の変更が必要です。率直に言えば、これをトライアウトの後期段階で行うと、膨大な工数とコストが発生します。プレス工場でこうした状況を目の当たりにし、トライアウト担当者から「ソフトウェアのユーザーは現場をまったく理解していない」と聞かされたような経験をお持ちではないでしょうか。 本来、これらはすべて防げたはずです。では、こうした問題はなぜ生じるのでしょうか。 問題の根本は、製品のフィージビリティ担当部門の役割にあります。その主な責任の一つは、工程計画や金型設計の段階で、製品形状の追加修正をできるだけ抑えることです。一般的には、設計した製品形状のフィージビリティを確認し、われやしわなく製造できる状態にすることに重点が置かれます。しかし実際には、製品設計の承認を得ること自体が目的になりがちです。 「われもしわもない。だから承認する。これで仕事完了だ」 その結果、スプリングバック評価の段階で不具合が発生しやすくなります。エンジニアリング工程で行われるべき金型の見込み補正は、後半の段階で行われているのです。この段階でよく見られるのは、補正後の金型に対しスプリングバックやアンダーカットのロバスト性評価を行っていないために、過大なスプリングバックが発生するケースです。つまり、初期段階で必要な検討を省くと、その代償は大きく、影響が数週間に及ぶこともあります。 これは実際に当社の顧客で発生した事例であり、同様の事象が再発し得ることが認識されました。 図1:スプリングバック見込み補正後のドロー型のアンダーカット フィージビリティスタディの段階では、設計変更は当たり前であり、影響も最小限に抑えられます。ロバスト性を高めるために補強形状を追加したり、見込み補正に向けて壁角度を調整たりするなど、必要な部分修正はこの初期段階で対応できます。 一方、製品設計を出図する段階で、定評のある手法を用いて、工程のロバスト性と製品の見込み補正を検討することが極めて重要です。 さらに、見込み補正の可否評価は、スプリングバック評価における最初のステップではないことを明確にしておく必要があります。まず重視すべきは、製品の最終的なスプリングバックに最も大きな影響を及ぼす境界条件を特定することです。これは、各工程後にスプリングバックを計算し、それぞれの結果を比較することで実施できます。 たとえば図2では、左上のフランジ領域に見られる高いスプリングバック値が、フランジ工程ではなく、主にドロー工程に起因していることが明らかです。 図2:各工程後のスプリングバックの比較 第2段階では、スプリングバックを最小限に抑え、制御しやすくするために、工程の安定(ロバスト)性の確立に取り組みます。理想的には、金型の見込み補正を実施しない状況を実現することが望まれます。 図3:スプリングバックを低減するためのさまざまな補強形状の検討 第3段階では、適切な見込み補正方案を策定します。 図4:最終製品のスプリングバック結果に基づく、ドロー工程および1stトリム工程の見込み補正 この手法は最終工程がピアス工程など、スプリングバック結果への影響が小さい部品に適しています したがって、フィージビリティスタディでは、簡略化したシミュレーション設定の使用を推奨します。複数のコンセプトを比較検討し、各案の長所や限界を評価したうえで、最適な方案を決定できます。 初期段階のフィージビリティスタディでは、一般的に以下のような設定が用いられます。 AutoForm-DieDesignerを用いた概念的な金型サーフェスの迅速な作成 バインダクローズ時の流入やしわを評価するため、フラットニングを用いたモデル(アダプティブラインビード)によるドロービードをシミュレーション カット金型のクロージングや、シートの塑性変形がない「最適」な状態と想定し、トリム工程を考慮 標準および材料ファイルでノイズ変数を定義し、簡易的にロバスト性チェック シミュレーション時間を短縮するため、精度設定を調整 結論として、製品および工程のフィージビリティスタディの段階でスプリングバックの挙動、工程のロバスト性、見込み補正を分析する本手法は、バーチャル製品開発におけるフロントローディングに大きく貢献しています。オートフォーム社では、顧客が直面していた不具合の解決に向け、クラウド上でのロバスト性解析を支援しました。工程を分析し、軽微な変更を提案した結果、良好な成果が得られました。この成功を受け、オートフォーム社のソリューション効果を最大限に活用し、最新の技術を取り入れ続けるためには、継続的な学習が重要であるとの認識が高まり、追加の AutoForm トレーニングが承認されました。 全体として、この手法は新製品の開発期間を短縮し、後期段階での修正を回避することで、開発部門と製造部門の連携を強化します。小さな投資が、大きなコスト削減につながります。 その実例として、包括的な解析を活用し、トライアウトを初回で成功させた顧客が複数あります。たとえば、フォードや日本の埼玉車体は、デジタルエンジニアリングを効果的に活用し、初回から精度の高い設計を実現しました。 - [AutoForm-BuildOptimizer:バーチャル・シミングとティーチングの可能性](https://japanforming.com/virtual_shimming_teaching/) - はじめに 手動で行うシミングは、従来型の手法となりつつあります。近年、OEMではバーチャル・シミングの導入が進んでいます。この手法により、リードタイムおよび作業工数の削減が可能となり、その結果として数十万ユーロ(数千万円)規模のコスト削減が見込まれます。 ホワイトボディ(BiW)のアセンブリでは公差の不具合が頻繁に生じますが、それをすべて避けることはできません。アセンブリは複雑です。プレス部品が公差内であっても、それを組み立てるとアセンブリ全体が公差内に収まるとは限りません。そのため、量産立ち上げの段階では、アセンブリを公差内に収めることが主な目標となります。これが達成できない場合、次の2つの問いが生じます。 車体工場で解決できることは何か? 金型工場で解決すべきことは何か? 車体工場に着目すると、主な対策は2つあります。1つはクランプのシミングで、コストが比較的低いアプローチです。もう1つは接合順序の調整であり、よりコストがかかる工程側の変更となります。本稿では、AutoForm Assemblyと専用モジュールAutoForm-BuildOptimizerを用い、顧客とのグローバルな共同検証を通じて得られた、バーチャル・シミングおよびティーチング最適化の可能性に関する知見を紹介します。 図1:ホワイトボディ(BiW)アセンブリの公差不具合に対する車体工場および金型工場での対策 主なコスト削減効果は以下の通りです: 金型工場における「ホワイトボディ(BiW)に起因する品質補正や対策の削減 トライアウトの回数やトライアル段階のアセンブリ調達量の削減 シミング工程 組立ステーションでは、接合による偏差を補正するために、部品の固定点にシムを挿入する一般的な手法があります。これにはクランプの位置調整が含まれます。「シム」と呼ばれる薄い金属板を、上部または下部のクランプに配置します。シムの厚さは通常0.1mmから2mmほどであり、場合によっては複数のシムを組み合わせることもできます。 その目的は、部品同士を局所的に過度に曲げ、互いに締め付けることで、接合後およびクランプを開いた際にアセンブリが公差範囲内になるようにすることです。 図2:シミング工程 ソフトウェアでは、ユーザーはクランプ(および接合)の設定を変更し、バーチャル上でシミング最適化を行うことができます。その原理は以下の通りです: シムを挿入するクランプを選択し、以下を定義します: 特定のシム値をマニュアルで設定(例:-0.5 mm) 複数のクランプに可能なシミング範囲(例:±2 mm)を指定し、自動最適化を実行 ティーチングオプションを有効にして、溶接ガンの位置補正を可能にする。 この手法は、異なる工程の複数のクランプ(または接合部)に適用でき、時間とコストのかかるトライアンドエラーを伴わずに最適な寸法精度を得ることができます。この手法は画期的です。予測が難しい相互依存関係があるため、現状の車体工場では、一度に複数箇所を同時に補正することはほぼ不可能と考えられているためです。したがって、この手法により、シミング検証の回数を劇的に削減できます。 AutoFormを活用したドアアセンブリの事例 事例をご紹介します。ここでは、インナー部品、各種補強材、およびサイドインパクトビームで構成される左側のドアインナーのサブアセンブリを取り上げます。低・中強度鋼やホットスタンプ鋼など、板厚も0.7~1.5 mmとさまざまな材料が使用されています。 図3:ドアインナーのサブアセンブリ 各部品は主に3つの工程で組み立て、接合には抵抗スポット溶接を用います。まず、ドアインナー部品をヒンジやロック補強材(A-10)と接合します。次の工程では、追加の補強材(A-20)を組み付けます。最後に、サブアセンブリをウィンドウフレーム補強材およびサイドインパクトビーム(A-30)と接合します。 図4:アセンブリ工程 このソフトウェアでは、ユーザーは個々の部品のプレス成形シミュレーションの結果に基づいてシミュレーションの設定を定義できます。これにより、プレス成形工程から生じる寸法偏差、応力、ひずみ、板厚など、最終的なホワイトボディ(BiW)アセンブリの品質に重大な影響を与える要因を、アセンブリシミュレーションで考慮することが可能になります。本来、接合工程の前に、部品は公差範囲内に収まるように補正されます。しかし、ここで疑問が生じます。 公差に収まるように補正された部品同士を組み付けると、アセンブリの公差に収まりますか? アセンブリシミュレーションの結果、すべての単体部品が公差内に補正されていても、最終組立品には±1.5 mmを超える寸法偏差が残ります。接合工程に起因するひずみで組立品が公差外となるため、車体工場で最適化を開始します。 図5:アセンブリ工程に起因する偏差 手動シミングと自動シミング まず、ソフトウェア上で手動シミングを適用することで、寸法精度を向上できます。これは、ユーザーがシミングとティーチングを設定し、トライアンドエラーを繰り返しながら反復的にシミュレーションを行うことで、手動で最適化を行う方法です。 図6:手動で行うバーチャル・シミング しかし、この方法はユーザーの専門知識に頼るところが大きく、そして各調整の影響も複雑で相互に作用することが多いため、トライアンドエラーを要し、時間がかかる場合があります。 より効率的な方法として、ソフトウェア内の自動最適化を活用できます。ユーザーが複数のクランプにシミング範囲を設定すると、ソフトウェアが可能な組み合わせを自動算出します。そして複数の組立ステーションに対して公差ベースの最適化を行います。ユーザーはが各クランプポイントの感度解析を実行し、プロセスウィンドウを通じて短時間で最適解を導き出すことができます。 ドアアセンブリの事例では、工程A-10およびA-30にシミングとティーチングを設定し、シミュレーションを実行しました。公差限界を定義して自動最適化を開始すると、ソフトウェアは数秒で、アセンブリを公差内で実現する適切なプロセスウィンドウを提示しました。 図7:自動最適化を適用したバーチャル・シミング 図8:バーチャル・シミングを用いて最適化されたアセンブリ工程から生じた偏差 ただし、シミングが常に有効な解決策とは限りません。場合によっては、シミングやティーチングだけでは特定の不具合を解消できないことがあります(必要なシミング値が大きすぎる場合など)。その際は、接合順序の調整や、アセンブリの不具合に基づきプレス金型工場での修正など、別の対策が必要になります。 バーチャル・シミングによる効率化 図9は、標準的な組織におけるシミングの一般的な進め方を示しています。修正はすべて反復的に行われ、シミングパラメータの定義と実装の両方をエキスパートが主導します。多くの場合、複数回の反復が必要となり、複雑さによっては数日から数週間を要します。 図9:車体工場における現状(AS IS)のシミング工程 これまでに、バーチャル・シミングが、適合公差内の組立を実現するために最適なシミング設定を迅速に特定する有効な手段であることを実証しました。さらに、バーチャル検証と、専門家が提案するシミング定義を組み合わせることで、実際のラインでシミングを適用する前に、複数の仮想トライを実施することが可能となります。 図10:車体工場における理想(TO BE)のシミング工程 シムそのものは安価ですが、適切な設定を見つけ出し、実装に要するリードタイムを短縮することで、大きなコスト削減が可能になります。つまりトライアンドエラーの反復をなくすことで、従来は数日から数週間かかっていた作業を数時間に短縮することが最終的な目標となります。 組織の内部プロセスを変更するには、関係者の合意形成、ソフトウェアの検証や評価、プロセスの開発または再設計、展開までを含めると、長期間を要する場合があります。当社の経験では、ソフトウェア開発は顧客側での問題解決より速く進むため、プロセス変更はできるだけ早期に着手することが極めて重要です。 結論 要約すると、バーチャル・シミングは、特にトライアウトおよび生産支援に有効なメリットをもたらします: 個々のクランプの影響を明らかにし、複数の組立ステーションにわたる最適化を行うことができます。 - [Aurock:部品の割れに関するケーススタディ](https://japanforming.com/aurock_stamping_simulation/) - Aurockのモデリング&シミュレーションマネージャー、レニー・ジャキノ氏と、CEOのファビアン・ナザレ氏が、これまでシミュレーション活用が進んでいなかったプレス成形業界のさまざまな分野に、板材成形シミュレーションを導入してきた経験をご紹介します。 Aurockは、航空宇宙業界にプレス成形シミュレーション技術を提供した先駆企業です。過去15年にわたり、プレス成形、エラストフォーミング、圧延、熱間プレス成形、超塑性成形など、幅広い分野でお客様を支援してきました。AutoFormとAbaqusによるシミュレーションを活用し、さまざまな解析を実施するとともに、その専門性を活かしソリューションを提案しています。こうした強力なツールのメリットをお客様に示すことで、シミュレーションを継続的かつ体系的に活用する文化の定着を進めています。 早期段階からのシミュレーション 部品の成形性を担保し、安定かつ信頼性の高い生産を実現するために、早期段階からシミュレーションを用いた検討を行うことをお客様に推奨しています。工程計画部門では、金型コンセプトを検証し、部品や工程の制約を考慮した適切な工程パラメータを特定する上で、シミュレーションを積極的に活用しています。この初期段階でのシミュレーションは非常に有効である一方、時間的な制約も厳しくなります。AutoFormは、短時間でのデータ入力と高速計算、そして高精度な結果を備えており、この用途において最適なツールです。数時間以内に結果を提供できるため、非常に早い初期段階からお客様を迅速に支援することができます。 技術部門を支える重要なパートナー シミュレーションの活用により、部品の成形性やスプリングバックの検討、幾何公差の確認、材料健全性の評価を行い、お客様が安全な工程を設計できるよう支援しています。AutoFormを用いたシミュレーションは、最適ブランク形状や金型面の決定、スプリングバックの予測、プレス成形条件の最適化に特に適しています。こうした特長により、この段階で求められる機動力と迅速な対応を実現できます。 材料データはシミュレーションに不可欠な入力情報であるため、当社では必要な材料カードを作成する補完的な業務も行っています。材料特性の評価から、シミュレーションソフトウェア上での材料定義まで、一連の工程を一元的に管理できます。 量産化:ハイリスクな段階 量産化に伴うコストと時間は、製造業にとって大きな課題です。必要な人材や金型コストに加え、加工条件を調整するために生産設備を占有する必要があることから、この段階は高いリスクを伴います。シミュレーションは、こうしたリスクを抑えるうえで非常に有効な手段です。当社の有限要素シミュレーションの専門性をもって、お客様のプレス成形における初回トライでの成功率を高め、生産の安定性向上に貢献できます。もちろん、当社の内製生産においても同様です。 研究開発の迅速化 研究開発部門では、板材成形シミュレーションを活用したデジタル検証を通じて、新たなアイデアやイノベーションを容易に確認できます。これは、革新的または創造的なデザインを促進するための基軸である同時に、社内で情報を共有するための有効なコミュニケーション手段でもあります。 既存の生産ラインの効率的な改善 シミュレーションのもう一つの有効な活用法は、既存の生産ラインを改善してコスト削減につなげることです。対象となるラインは、数十年前から稼働している場合もあります。その際、実際の生産条件を正しく把握して反映し、シミュレーションを可能な限り現実に近づけたうえで、迅速に適切な結果を得るためには専門知識が不可欠です。 Aurockでは、「製造できるものをシミュレーションし、シミュレーションしたものを製造する」という原則を徹底しています。現場とシミュレーションの乖離が確認された場合は、お客様を支援しながら実際の工程を詳しく調査し、その原因を特定します。プレス機の状況を正確に把握するために生産現場へ赴き、そのうえで既存の工程を忠実にシミュレーションし、問題解決に取り組みます。 ケーススタディ:割れ不具合から良品化 図1 – 不具合が生じた工程をシミュレーションで再現 写真提供:Nimrod Aerostructures 図1の事例では、当初シミュレーションは行われていませんでした。部品には下死点の約200mm手前で繰り返し割れが発生し、生産を開始できない状況でした。そこで、解決策を見つけるために工程モデリングの依頼を受けました。そこで新たに金型を製作することなく、良品を安定して生産できるよう工程を見直すことを目標としました。 当初の金型設計には、ブランクホルダーと折り曲げたプリフォームが採用されていました。生産現場のすべての工程情報、使用材料、実際の金型を詳しく確認した後、その金型の実際の状態を再現し、不具合が発生する状況をシミュレーションで再現しました。 その後、代替案を提案・評価し、シミュレーションを通じて解決策を見出しました。具体的には、ブランクホルダーを取り外し、2本のパイロットピンを追加することで、応力の低減を図ったのです。最初のシミュレーションで有望な結果が得られたため、バーチャルトライアウトを通じてプリフォームの形状を改良し、不具合のリスクなく部品を完全に成形できるようになるまで調整を重ねました。そして、これと同様に重要なこととして、新しい金型を製作することなく実現できたのです。 図2 – デジタル検証により、新たに金型を製作することなく、工程ベースの実用的な解決策を特定 写真提供:Nimrod Aerostructures 結論 Aurockでは、工程をできるだけ早い段階でシミュレーションすることで、後工程で必要となるリソースを大幅に削減できると考えています。シミュレーションデータの入力に細心の注意を払うことも極めて重要です。AutoFormは迅速かつ容易に設定できますが、入力データは実際の金型を忠実に再現していなければなりません。当社の専門性は、次の3つの重要なステップに集約されます。すなわち、適切な材料モデルを特定すること、実際の生産条件を把握すること、そして力学現象を理解したうえで改善策を提案することです。当社では、お客様があらゆるプレス部品と関連するプレス成形工程の設計にシミュレーションの考え方を取り入れられるよう尽力しています。また、当社の専門性を通じて、量産化までの期間短縮と高い部品品質の担保に貢献します。 - [プレス設備と金型のたわみを再現したプレス成形シミュレーション技術](https://japanforming.com/die_deflection_simulation/) - 背景 地球温暖化対策のためのCO2削減手段として、さまざまな新技術や新車両が開発されています。車両の軽量化は、従来のICEVやHEVについても走行時のCO2排出量削減に直接貢献し、EVにおいては普及に必要な航続距離延長のために必須であるため、長年の継続課題として今後も重要な役割を担うことが予想されます。 軽量化の選択肢として総アルミ化などの手段もあるものの、特に日本においては高張力鋼(UHSS)のさらなる適用が進んでいます。近年では980MPaを超えるUHSSのボディ構造への採用率が30%を超えるような車両もあり、またさらに強度の高い材料の冷間加工も増加しています。 UHSSにおいては、限られた伸びの中で成形を成立させるための工程検討や、スプリングバック見込みなどの課題がある中で、プレス設備や金型が変形してしまい思い通りの成形ができないことが大きな課題として報告されています。また、金型構造の複雑化が進んでいることも、金型の変形が増加する一因となっています。 成形の難易度が高いケースこそシミュレーションを使ったデジタルな検討により金型製作現場での修正工数削減が必要とされるものの、伝統的なプレス成形シミュレーションでは金型を剛体として取り扱うため、金型そのものの変形を取り扱うことはできなかったがこれらを考慮するためのさまざまな機能開発が行われています。 本稿では金型たわみに関するプレス成形シミュレーションの現状と、今後の取り組み課題についてご紹介します。 金型たわみの分類 プレス金型業界において、パネル成形時に金型が変形することは経験的に広く知られています。金型のパネル成形面が変形してしまうと成形条件が変化してしまうことから、特に型構造の設計者は、成形荷重が付加されても変形しないようさまざまな検討を実施します。ところが、金型構造の複雑化と、成形荷重の上昇が原因で金型の変形を少なくとどめることが徐々に難しくなっています。 これらの状況を確認するための測定について考えると、金型そのものの変形と、プレス設備の変形を切り分けて測定することが非常に難しく、また成形中時々刻々と変化する金型形状を時系列的に測定する手段も限定的であるため、実際に起きている変形を現象ごとに正確にとらえることは非常に難しいと言えます。 シミュレーションにおいては、実際と異なりそれぞれの現象を切り分けて考えることができます。ここでは初工程加工に注目し、金型とプレス設備の変形によって(広義の)成形性が変化する要因を以下のように分類します。 ① プレス荷重の不足、もしくはプレス設備の変形により成形面全体のストロークを板厚と同じクリアランスまで閉じることができない場合。 ② 成形面の一部領域(当たりチェック部)では型クリアランスが想定位置まで閉じるものの、金型の変形により部分的に閉じ切らない面ができてしまう場合。 ③ ブランクホルダーの変形により、材料流入量が変化してしまう場合。 それぞれの現象についての現状とシミュレーションでの分析事例を以下に示します。 金型が閉じないケース プレス能力の不足、もしくはプレス設備の変形等により、特にハイテン材の加工時にこのような状況が発生することが報告されています(図1)。 図1 金型が閉じないケースの模式図 特に日本では、超ハイテンの冷間加工が進んでいること、金型や設備のスペース的制限が厳しいことから比較的頻繁にこのようなケースが報告されています。過去実機とシミュレーションの不一致事例として弊社に報告された中で、590MPa級以上の材料を使用しているモデルのおよそ4割が型開きの影響によるものと推定されています。 現状AutoFormでは、ストロークを指定してプレスを途中停止する機能を利用してこの状況を再現することができます。以下にサンプル形状でプレスが閉じない状況を再現した例を示します。工程はドローとトリムのみ、ドロー工程の上型が閉じ切らない設定としました。 図2 下死点に到達するか否かでのスプリングバック量の比較 図2に示した通り、金型の開き量は0.125mm(必要な成形荷重に対して約2.5%不足した想定)であるにもかかわらず、トリム後パネルの正規形状との差は0.23mm増加しました。このように、プレス能力が不足した状態でパネルを生産しなければならないことが想定される場合は、開き量を設定してシミュレーションすることで、より正確なスプリングバック予測をすることができます。ただ一方で、金型が開いた状況のスプリングバックを正確に予想するためには、開き量を正確に予想する必要があり、そのためには荷重を正確に予想する必要があります。 荷重を正確に予想するためには、シミュレーションの接触状態を実際の金型でも再現する必要があるが、実際の金型にはたわみ見込み、型あたり調整がすでに含まれているために再現するのが難しく、この辺りをソフトウェアとしてどのように取り扱うべきか、というところに課題があり現在解決に向けて検討中であります。金型が開くことが予見される場合には、開きを想定した結果を何パターンか確認しておくことが安定したエンジニアリングの観点からは重要となっており、複数のユーザー様がこのような取り組みをすでに始めています。 金型変形シミュレーションの現状と課題 シミュレーションでは一般的に金型表面を剛体として取り扱うことが多いが、実際には金型にも弾性変形が発生しています。前項で述べたように、実パネルとシミュレーション結果に違いが出ることが予想される場合は、その影響を事前にシミュレーションで確認しておくことは安定したエンジニアリングの観点から重要となります。しかし、金型の変形についてはエンジニアリングプロセスの都合上シミュレーションすることが困難なケースがあります。通常の金型設計プロセスでは、成形に使用するダイフェース面の設計が終了してから金型の構造部分の設計が始まることが多いが、金型の変形を考慮するためには金型の構造部分の形状データが必要となり、時系列的に事前検証が成立しません。AutoForm Forming R11では金型の構造部分を簡易的に作成し、構造部のデータがない状態でも金型の剛性をある程度のレベルで考慮することができる機能を提供しています(図3)。 図3 簡易的に作成した金型構造の形状例 またプレス設備についても、複数条件での変形状態の測定データがあれば、その結果から逆算して剛性特性を入力条件として取り扱うことができます。また2024年9月にリリースしたバージョンR12では、金型とボルスタ間の滑りやボルト締結を表現することができるようになり、より実際に近い変形解析が可能になりました。これらの機能を使用して二つの異なる性質を持つプレス設備に対する金型たわみ解析を実施した結果を以下に示します。 図4 異なるプレス設備の剛性特性での金型たわみ量の比較 図4左では金型を設置しているボルスタ剛性が低く、加工面全体が0.14mm程度落ち込んでいます。一方図4右では、ボルスタ剛性が高く、加工面全体の落ち込みは0.08mm程度に収まっています。この変形量自体の信ぴょう性を高めるためには過去の金型変形測定データとの合わせこみが必要となりますが、ひとたび実際の金型変形量との相関をとることができれば、設備選定の時点で金型変形計算が問題になるレベルなのかどうか、前車種の変形傾向と大きな違いがないかといった確認を事前に行うことができます。またバージョンR12では、金型変形量を見越した見込み変形を実施したり、外部で見込み変形を行った金型形状での変形計算を実施したりすることもできます。定量的に変形量を予測し、正確に対策量を決めるためにはパネル変形との連成や、荷重予測の改善、金型同士の接触など改善すべき点は多いものの、現状でも変形量そのものの定性的な評価は可能なレベルとなってきています。 ブランクホルダーの変形により流入量が変化してしまう ブランクホルダーの変形再現のためには、スライドやボルスタへのボルト締結ではなく、ダイクッションからクッションピンを介して荷重を伝える境界条件のモデル化が必要となります。またブランクホールド時から下死点に至るまでの時系列的な形状の変化と、局所的な開き量の変化、それに伴う成形条件の変化を連成して解析する必要があります。これらを簡便かつ明確に定義し、エンジニアリングプロセスのリードタイム内で予測技術として実現するためにはまだまだ課題が山積しており、実装に向けてさまざまな角度からの検討が進められています。ブランクホルダーにおいては、局所的な開きによる流入抵抗の変化を再現することが変形そのものを解析するよりも低コストでパネル予測精度向上を達成できる可能性もあり、現行機能で実際の挙動を模擬する取り組みも行われているが、ここでは詳細は割愛します。 まとめ 金型のたわみ変形と、その結果生じるパネル成形条件の変化は、シミュレーションの世界だけでエンジニアリング工数削減効果を得ることが非常に難しいです。荷重や接触条件などの詳細な条件で予測結果が変わってしまったり、予測が可能であっても対策が検討できなかったり、後追いでの確認は可能でも予測技術として確立することが難しかったりと、すべてを網羅した完全な結果を得るためには非常に多くの課題が存在しています。一方あらゆるシミュレーション技術に共通する考え方として、再現したい現象の一部の要素に分解して着目すると、比較的簡単に有用な解析結果を得ることができます。AutoFormとしては、より多くの要素を取り入れた解析が可能となるよう開発を進めるとともに、このような活用方法の提案についても力を注ぐ所存です。 - [株式会社ツバメックス:金型たわみ量を考慮したより高品質な金型製作](https://japanforming.com/stamping_defection_etd/) - 背景 株式会社ツバメックスはプレス金型やプラスチック金型の設計・製造のほか、金属プレス加工やプラスチック成型品加工などの量産を手掛けております。国内金型業界で最も早く市販CADシステムを導入したNC加工を取り入るなど、金型設計のデジタル化の先進企業として広く知られています。自動車のみならず、幅広い製品の金型製作に取り組んでおり、大小さまざまなトライプレス設備を保有しています。金型製作時のトライアウトに使用する設備は、加工に必要な荷重と設備の空き状況を考慮して決定されます。これまでも、納入先のプレス設備によらず、機差のない金型づくりに長く取り組まれてきました。しかし材料の超高強度化に伴って、金型製作時に社内トライアウトでは設定公差を満たしているにもかかわらず、金型納品時の量産メーカー設備でのトライアウトでは精度が変化してしまうという課題がありました。スプリングバック見込み、ダイスポッティングなどをデジタルでやり切り、金型の補正を少しでも削減するため、また納入する金型の品質を少しでも高めるために、金型たわみによる精度変化が課題と考えられていました。 ETD機能 株式会社ツバメックスではR11からAutoFormに実装された金型たわみ解析機能に着目し、これらの課題に対してアプローチできないかを検討しました。高張力鋼板では上型と下型のみのフォーム成形が一般的であり、パネル精度に影響する金型の変形は基本的に下死点で発生することから、R11におけるETD機能でも変形を掴むには十分と判断し、解析を実施しました。解析にはCADでモデリングされた上型と下型の3D構造の形状データを使用しました。 図1 金型たわみ解析のイメージ プレスの変形条件 金型のたわみを正確に計算するためには、金型が設置されているラムまたはボルスタの変形について、設定条件として入力する必要があります。株式会社ツバメックスではプレス機にかける荷重の大きさと、ラムまたはボルスタの変形量の関係性について、これまでの経験からある程度変形量(特定の荷重をかけたときのラム、ボルスタにおける最大変位量)を把握していました。また金型の外周部分については変位ゲージを使用して実際に変形前後の差異を測定したデータを保有していたため、測定経験のある部位の変位量が実際と解析で一致するようにプレス機(ラム、ボルスタ)の変形モデルを推定しました。 図2 金型外周の変形量測定イメージ プレス特性を決定した際の金型たわみの計算結果は以下に示すとおりになりました。成形面中央付近で変位量が最も大きくなり、下死点で金型が一部開いていることがわかります。つまり、後工程で再成形が可能だとしても、最終パネル精度に影響するレベルの金型変形が発生している可能性があることがわかります。 図3 実機での測定値からプレス特性を決定した際の型外周のたわみ量 プレス機差の影響調査 実測たわみ量を参考にして決定したプレス特性を利用して、プレス機差による精度の違いを検証しました。複数あるプレス設備から600tプレスと2000tプレスを例に選び、それぞれを使って同じ金型で成形した場合の金型のたわみ量の比較を下図に示します。設備剛性の高い2000tプレスを使用した場合、600tプレスで成形した場合の金型たわみ量に対しておよそ60%程度の変形量になることがわかりました。 図4 異なるプレス機での最大たわみ量の比較 また同じ2000tプレスを利用した場合でも、金型の設置方向の違いにより変形量に差があることも検証によってわかりました。 図5 プレス機への金型配置の違いによる最大たわみ量の比較 さまざまな金型の構造、保有する他のプレス機におけるたわみ量なども各種比較検討することで、現在では納入先の量産プレスで最も品質が高くなるトライプレスの選定や、より機差の発生しにくい金型構造の設計を行うことができるようになりました。また、異なる材質や板厚でもたわみ検討を進めることで、これまで製作したことのない部品向けの金型、納入先プレスラインであっても、事前に金型の品質を高めるためのノウハウを蓄積しています。 まとめ さまざまなプレス設備、材質、型構造に対する金型たわみ解析を行うことで、プレス機差がどの程度発生するかを事前に把握することができるようになり、金型の納入先の量産ラインに合わせてどの社内設備を利用して精度玉成を行うのが良いかを事前に判断できるようになり、また機差を最小化したより品質の高い金型を製作することが可能となりました。 上記に加え、今後もお客様に満足いただく金型を製作する為、新しい技術への探求、挑戦並びに努力を続けています。 ----------------------------- (企業概要) 株式会社ツバメックス 創業:1982年 所在地: 新潟県新潟市西蒲区高野宮3283-1 代表者:代表取締役 出口 次男様 資本金:40百万円 売上高:3,803百万円 (2022年12月期) 従業員数:170名 (2025年10月現在) 事業内容:自動車、建築資材、家電製品等のプレス金型、モールド金型の製造及び 金属部品のプレス加工、プラスチック成型品の製造 URL:https://www.tsubamex.co.jp/ - [クインタス・テクノロジーズ社:航空機ドアフレームのシートメタルフォーミングの最適化](https://japanforming.com/quintus_technologies_aircraft_doorframes_sheetmetal_forming/) - Sture Olsson, Business Development Manager はじめに:本稿では、クインタス・テクノロジーズ社が航空機ドアフレームのシートメタルフォーミング工程にどのような革新をもたらしたかを解説します。 高圧成形技術、革新的な金型設計、そしてAutoFormシミュレーションソフトウェアを導入することで、クインタス社は製造プロセスを16工程からわずか3工程に削減することに成功し、大幅なコスト削減と生産性の向上を実現しました。 背景:航空宇宙業界では従来、金型コストを最小限に抑えるため、単一の金型を用いたプレス成形技術が主流でした。クインタス・テクノロジーズ社は、これをさらに発展させ、他社サプライヤーが提供する通常の200~300バール(3,000~4,350 psi)よりもはるかに高圧の最大1,400バール(20,000 psi)で加工を行っています。 この高圧と革新的な金型設計を組み合わせることで、複雑な形状をより少ない工程で製造することが可能となり、中間工程での手作業による補正や熱処理が不要になります。AutoFormプレス成形ソフトウェアを活用することで、しわ、板減、スプリングバックを予測できるほか、金型製作やトライアウトを開始する前に、生産工程やブランク形状を開発することができます。 図1:クインタス社のFlexform流体セルプレス 航空機用ドアフレーム:この最適化プロセスは、大型民間航空機用のドアフレームで行いました。このドアフレームは板厚2 mm(0.08インチ)のアルミニウム2024-T42を使用し、中央に大きな窪み、6つの非円形穴、そしてアンダーカットがある複雑な形状が特徴です。 図2: コンポーネントの位置 図3: コンポーネントの寸法 初期フィージビリティ評価:ドアフレームの製造プロセスは、当初、ブランク材の準備を含め16工程に及んでいました。クインタス社は、新たな金型設計を導入し、圧力を300バール(4,350 psi)から800バール(11,600 psi)に引き上げることで、プレス成形を2工程に削減し、製造プロセス全体を6工程に短縮することに成功しました。 この最適化により、部品の生産コストが大幅に削減され(推定:年間約50万ユーロ/約9,200万円)、生産能力も向上しました。 図4: フォーム金型の支持壁(ベージュ色部分) さらなる工程最適化:クインタス社アプリケーションチームは最近、ドアフレーム製造プロセスのさらなる最適化について検証しました。高度なシミュレーションと金型設計の豊富な経験により、同社エンジニアはプレス成形をわずか1工程に集約することに成功しました。この最終的な最適化により、ブランクの準備を含めた製造プロセス全体はわずか3工程にまで削減されました。 図5: 部品とFLDのAutoForm画面表示 金型設計: クインタス社による新しい金型設計は、その高圧プレスの性能を最大限に生かしたものです。支持壁が効果的に圧力を導くため、側面やアンダーカット部分も高精度で成形できるようになっています。 図6: フォーム金型に置かれたプリカットブランク 図7: フォーム後の最終部品 図8: プレス後の最終部品 結果:プロセスの精度と再現性を評価するため、5つのサンプルをプレス成形し、3Dスキャンによる測定を行いました。収集したデータは優れた再現性を示し、最適化されたプロセスが有効であることをさらに裏付けました。 図9: 評価に使用した断面 結論:クインタス・テクノロジーズ社は、最新の金型設計、AutoFormプレス成形ソフトウェア、および高圧成形技術を導入し、航空機用ドアフレームのシートメタルフォーミング工程を最適化しました。製造プロセスを16工程からわずか3工程に削減したことで、大幅なコスト削減と生産性の向上が実現しました。 これらの改善には、高精度なシミュレーションと革新的な金型設計が大きく貢献しています。同社は提案から金型設計の完成まで、製造メーカーが高品質かつコスト効率の優れた生産体制を築くためのサポートを一貫して提供しています。 詳細については、以下をご覧ください:ホワイトペーパー |プレス成形の最適化 - 航空機ドアフレーム | Quintus Technologies。 弊社チームに直接お問い合わせいただく場合は:お問い合わせ | Quintus Technologies ※参照為替レート:1ユーロ=184円(2026/5/18) - [インペリアルカレッジロンドン 機械工学科:インダストリ4.0 BiWデジタル化のエキスパートを育成](https://japanforming.com/imperial_college_digitalization_experts/) - はじめに 多くの大学が技術系課程を提供する中、特に顕著な実績を有する大学がいくつかあります。これらの教育機関では、独自のカリキュラム、産業界との強固な連携体制、そして革新的な教育手法の導入などにより、他校との差別化を図っています。中でもインペリアルカレッジロンドンの金属加工技術コースは、こうした特徴を体現しており、体系的かつ独自性の高い教育プログラムを提供しています。 本稿では、このコースについて詳細を紹介しながら、業界への即戦力として活躍する人材や高水準の初任給を得ている卒業生を輩出する点について、同コースが担う重要性を考察します。 2023 最優秀有限要素シミュレーション賞(AutoForm の Dave Ling 氏とともに) 金属加工技術(MPT)コースについて MPT(金属加工技術)コースは、インペリアルカレッジロンドンの機械工学科が提供する高度な技術プログラムで、現代の金属加工に関する技術を中心に学びます。このコースでは、鍛造、鋳造、成形、積層造形など、さまざまな手法を深く学ぶことができ、特に板金成形に力を入れています。またモデリング、設計、シミュレーション、およびプレス成形の幅広い要素を徹底的に検証し、軽量部品の持続可能な製造手法についても学べます。 MPTコースを卒業した人たちは、プレス成形や車体成形に特化したカリキュラムのおかげで、製造業や自動車関連の分野で活躍しています。さらに、銀行やコンサルティングといった金融業界に進んだ人でも、このコースがキャリアの成長に大きく役立ったと感じています。卒業生の満足度は高く、多くが研究スポンサーとして本コースとの連携を継続してます。 コロナ禍以前、本コースではジャガー・ランドローバー製造拠点への視察など、実践的な企業訪問を実施しており、学生たちはアルミ部品の生産現場を直接観察する機会を得ていました。最近では、MPTコースの博士課程修了生が電気自動車メーカーと共同研究を行いました。この提携の成果として、研究者はドイツで成形試験を実施し、熱間プレス成形技術の有効性を検証するとともに、自動車メーカーの厳格な要求仕様へ対応しました。これらの実社会における成功事例は、現役学生向けケーススタディ資料として活用されています。 さらに本コースでは、CO2排出量の評価、コスト分析、軽量化検討、および部品の設計などを目的として、有限要素(FE)シミュレーションなど、さまざまな解析手法を導入し、理論と実践を融合した高度な解析学習を体系的に提供しています。 コース構成 インペリアルカレッジロンドンのMPTコースは、英国の大学で唯一、金属成形に特化している点が大きな特徴です。このプログラムでは、理論と実践をバランス良く学べる内容となっています。学生は22週間かけて、金属成形技術向けに厳選された専門的なテーマを集中的に学びます。 理論 コースの約60~70%は理論を扱い、さまざまな技術、原理、メカニズムについて学びます。さらに産業界から3名の特別講師を迎え、計6回の講義を実施することで、理論的基盤をより深めます。これらの講義から理論と実践が繋がり、さまざまな金属加工技術での応用例や知見を得ることができます。 実習 本コースでは講義に加えて、次の3つのコースワークに取り組むことで実践的なスキルの習得を重視しています。 コースワークI - 材料モデリングの基礎 最初のコースワークは材料モデリングの基礎に焦点を当て、さまざまな材料の挙動やメカニズムを扱い、シミュレーションの基本を学びます。 コースワークII - AutoFormを活用したITシミュレーションスキル研修 次のコースワークでは、オートフォーム社のエキスパートエンジニアであるDave Ling氏とDeborah氏による指導のもと、実践的なシミュレーショントレーニングを体験します。受講生はシミュレーションに取り組み、その結果を経験豊富なエキスパートの結果と比較します。AutoFormソフトウェアを実際に操作することで、自分自身でパラメータ入力や独自研究を進める力が身につきます。 コースワーク III - 事例研究 最後のコースワークでは動的なケーススタディに取り組み、習得したスキルを活用して、実際の自動車部品の分析や改良に取り組みます。ケーススタディは業界の最新動向を反映し、毎年アップデートされています。受講生はプレス成形シミュレーションを実施し、試験部品のフィージビリティ評価や、モデリング、設計、最適化などの知見をAutoFormにて深めます。またCO2排出量の計算、軽量化、コスト最適化、部品の持続可能性などにも着目し、費用対効果が高く、かつ持続可能な部品開発を目指します。 プロジェクトの最後には、実際の自動車メーカーに対して発表を行います。学生たちは20~30分程度の詳細なプレゼンテーションを実施し、その後に質疑応答も行います。昨年度はフォード社の技術担当者が参加し、CO2排出量、コスト解析、有限要素法(FE)シミュレーションなど多角的な評価基準に基づき学生たちを評価しました。業界の専門家による直接的なフィードバックは実務経験として非常に有益であり、また最高評価を得たグループには表彰が行われます。 2023 最優秀ビジネスケース賞 (Ford Motor Company の Dimitrios Chantzis 氏とともに) MPTコースのメリット MPTコースには数多くのメリットがあり、学生にとって非常に魅力的な選択肢となっています。以下では、とりわけ重要なメリットについて紹介します。 インダストリ4.0の理解 本コースは、学生がインダストリ4.0時代に必要な力を身につけることを目指します。ITシミュレーションの技術は、現代のプレス成形産業のさまざまな分野を発展・改善する上で大変役立ちます。将来、管理職を担う学生たちは、プロセスチェーンにおけるデジタル化について幅広く理解できるようになります。また、製造現場のCO2排出という重要な課題にも焦点を当て、本講義ではプレス機や塗装加熱炉などを中心に、たとえばアルミのプレス成形などの工程でどのようにCO2排出量を評価し、削減できるかを学びます。この学びは、製造プロセス全体のCO2排出量の算出と削減に不可欠です。 就職力の向上 本コースは業界特化型の学習アプローチを採用することで、学生の就職力の底上げに寄与しています。業界の専門家による連携により、学生は最新のスキル需要や人材育成戦略を常に把握できます。またゲスト講師の中にはこれを優秀な人材をスカウトできる機会と捉える場合もあるため、学生にとっては卒業後の理想的なキャリアを獲得できるチャンスが高まります。事実、他大学との比較においても優れた成果を実証しています。 高給与水準 本コースは基礎・理論・実践を融合したカリキュラムを特徴としており、業界からも高い注目を集めています。卒業生は基本的な有限要素法(FE)シミュレーションのスキルや最先端技術への順応力を身につけ、業界の変化にも柔軟に対応できる準備が整っています。そのため、雇用主から高い評価を受け、初任給が高額となる場合も多くあります。 業界の戦略的分析 本コースのプロジェクトは、戦略的かつ経営幹部レベルの視点を養います。架空の工場長としてビジネスモデルを展開する課題に取り組むことで、学生は理論的なコンセプトを超えた視野を広げます。賃貸料やエネルギーコストといった実務的な側面を学び、その予測を現実の業界標準と整合させます。賃貸料、人件費、エネルギー費用を含むコスト解析に対するこの包括的な理解は、コンサルティングや上級管理職での役割に向けた準備となり、同世代の学生に比べて就職を早めることがよくあります。 結論 インペリアルカレッジロンドンは、2年連続で「ユニバーシティオブザイヤー」に選出されました。世界ランキングも昨年の7位から今年は6位へと順位を上げたことで、その評価が一層高まっています。 - [見込み補正の新しいアプローチ ~ AutoForm DieDesignerPlusが広げる工程設計の選択肢 ~](https://japanforming.com/compensation_newapproach/) - 成形シミュレーション技術の進展により、見込み補正の役割はこの数年で大きく変化してきています。AutoForm‑Compensatorによって成形結果を定量的に評価できるようになったことで、見込み補正は単なる形状差の修正ではなく、成形シミュレーションにおける面精度結果を起点として工程設計へつなげる設計要素として捉えられるようになってきました。 一方で、多くの顧客は AutoForm Compensatorを用いて寸法差分の補正自体は行えているものの、見込み面の流れや曲率連続性といった面品質の観点では課題を抱えているケースが少なくありません。実際には、AutoForm Compensatorで得られた補正情報を、外部のCADシステム側で改めて切削可能な品質の見込み面として再生成している例も多く、この工程が作業の分断や手戻りの一因となっています。特に、外部CADシステムを跨って見込み補正業務を行わざるを得ない環境では、面精度結果と形状設計が分離しやすく、非効率な運用になりがちです。有効な補正手段が限られる中で、見込み補正を工程判断として十分に活かしきれず、対応に苦慮している状況も多く見られます。 こうした背景から、外部 CAD に依存せず、AutoForm 環境内で工程設計と連続した高品質な見込み補正を行いたいという要望も多く寄せられています。本稿では、こうした課題に対する一つの有効な選択肢として AutoForm DieDesignerPlusを位置付け、見込み補正を工程設計の流れの中で扱うための考え方と、その具体的な活用方法を整理して紹介します。 工程設計における見込み補正の位置づけと一気通貫の考え方 見込み補正は、面精度結果を起点として工程設計へフィードバックされる重要な設計要素です。しかし実際の設計現場では、設計環境や工程への関与の仕方によって、見込み補正を工程設計の流れの中でどこまで連続的に扱えるかに明確な違いがあります。 たとえば CATIA 環境では、既存のソリューションとしてAutoForm‑ProcessDesignerforCATIAを中心に、AutoForm‑Compensatorで得られた成形 CAE 結果やベクトル・フィールドを活用し、見込み補正を工程設計へ連続的に反映するフローが定着しています。一方、CATIA以外のCAD環境では、外部CADを跨った作業が必要となるなど、ツールや環境の制約によって運用が分断され、見込み補正を工程判断として十分に活かせないケースも少なくありません。 このような環境の違いは、見込み補正そのものの捉え方にも影響しています。従来は、面精度結果を確認し、CAD上で形状差を調整する作業として扱われることが多く、面精度結果は主に形状修正の参考情報として用いられてきました。これに対し AutoFormでは、AutoForm‑Compensatorによる面精度結果評価を起点に、補正を工程データとして定義し次工程へ連続的につなげていく考え方を重視しています。このアプローチにおいて、見込み補正は単なる形状修正ではなく、工程を成立させるための判断プロセスとして位置づけられます。 図1:面精度結果評価後、環境に応じて選択できる見込み補正フロー 図1に示すように、この考え方を AutoForm環境内で具体化する手段の一つが AutoForm‑DieDesignerPlusです。成形解析から得られた結果は、まず AutoForm‑Compensatorにより補正量として評価されます。AutoForm 環境内では、AutoForm‑DieDesignerPlusを用いてクオリティ形状に対する見込み補正を行い、そのまま工程設計へ連続的につなげることが可能となります。特に、AutoForm‑Compensatorによる面精度結果評価と、AutoForm‑DieDesignerPlusによる形状設計を組み合わせることで、面の流れや曲率連続性を考慮した高品質な見込み補正サーフェスを、工程検討と連動した形で一体的に扱える点が特長です。 結果として、面精度結果を起点に、見込み補正を工程検討の軸として ◆面精度結果の確認 ◆見込み補正内容の検討・反映 ◆次工程(NC工程)への展開 という流れで工程検討が連続的に進められます。 このように見込み補正を工程検討の中核に据えることで、工程全体を俯瞰しながら検討を行えるだけでなく、設計意図や品質要求を反映した見込み補正サーフェスを工程情報として明確化し、次工程へ展開・共有しやすくなるという価値が生まれます。 従来の見込み補正と比べたAutoForm-DieDesignerPlusのメリット このようなワークフローの考え方を踏まえることで、AutoForm-DieDesignerPlusの見込み補正には、従来の手法とは異なる特長が見えてきます。 ◆見込み補正を工程検討の一部として継続的に扱える ◆補正の背景や意図を工程データとして保持しやすい ◆面精度結果を踏まえた試行錯誤を繰り返しやすい ◆関係者への説明や設計意図の共有がしやすい ◆面精度結果に基づき、面の流れや曲率連続性を考慮した高品質な見込み補正サーフェスを生成しやすい これらは、AutoForm‑ProcessDesignerforCATIAで培われてきた見込み補正の実務的な強みを、より広い設計環境で、かつ品質志向の形で活かせるよう展開したものであり、AutoForm-DieDesignerPlusならではの価値と言えます。 参照ターゲットとベジエサーフェスによる見込み補正設計 AutoForm‑DieDesignerPlusの見込み補正では、図2が示すように、参照ターゲットを基準としたベジエサーフェスによる補正設計を活用できる点が特長です。参照ターゲットは、見込み補正において目指す形状品質を明確にするための基準サーフェスであり、補正量を直接決める目標形状ではありません。 面の流れや曲率連続性といった品質要求を重視して、補正の方向や到達点を判断できるため、数値差分のみに基づく補正で起こりがちな面品質の低下を抑えられます。その結果、補正内容を工程設計の流れの中で評価しやすく、成形条件や後工程との整合を保った見込み補正が可能となります。 図2:参照ターゲットを用いた、品質志向の見込み補正アプローチ また、図3に示すように、ターゲットサーフェスの編集時には外形線の連続性条件(G0/G1/G2)を指定でき、補正後の形状挙動を品質要求に応じて制御できます。位置連続、接線連続、曲率連続といった条件を明示的に管理することで、加工性や外観品質を意識した見込み補正設計が行えます。 図3:品質要求に応じて制御可能な外形線連続性(位置・接線・曲率) このように、参照ターゲットとベジエサーフェスを中心とした見込み補正は、面品質と工程整合を両立する有効なアプローチであり、品質要求や形状精度が重視される部品で大きな価値を発揮します。 見込み補正機能の構成から見るAutoForm DieDesignerPlusの位置づけ ここまで、見込み補正を工程設計の流れの中で扱う考え方や、AutoForm Compensatorを起点とした一気通貫のワークフローについて述べてきました。こうした考え方は、AutoForm DieDesignerPlusの見込み補正機能の構成にも反映されています。 表1に示すように、AutoForm‑DieDesignerPlusはAutoForm‑ProcessDesignerforCATIAと同様に、見込み補正や面品質評価に関する多くの機能を備えており、ベジエサーフェスを用いた面変形をはじめ、面精度結果に基づく補正・評価の基本的な枠組みは共通しています。ベクトル・フィールド補正や手動操作に加え、複数領域に対して異なる補正係数や補正タイプを設計状況に応じて設定し、それらを組み合わせて見込み補正に活用できる点が特長であります。 表1:見込み補正に関する機能比較 また、補正対象をカーブではなくサーフェス単位で定義できるため、形状全体を俯瞰しながら補正意図を反映しやすい操作感になっています。補正後は、デルタ解析や曲率解析に加え、総変位量やゼブラライン解析といった評価機能を用いて、結果を定量的・視覚的に確認できます。 - [衝突安全性能の向上:インドの自動車製造における熱間プレス成形と冷間プレス成形の比較解析](https://japanforming.com/cold_hot_stamping_crash_performance/) - はじめに 自動車産業は常に進化しており、メーカーは衝突時の安全性に特に配慮しつつ、車両性能の向上に努めています。乗員の安全を守り、最高評価を獲得するためには、車体構造を強化することが最も効果的です。 堅牢かつ高強度な構造部品の開発においては、メーカーは一般的に冷間プレス成形(AHSS/UHSS)または熱間プレス成形のいずれかの工程を選択します。これらの工程にはそれぞれ独自のメリットとデメリットがあり、どちらを選択するかは設計上の要件や製造目標、さらにはコスト管理の観点から総合的に判断されます。 これらの技術は、世界の自動車業界に大きな影響を与えています。一方で、インド市場での役割については、コスト効率や生産拡大のしやすさ、環境への配慮といった点から詳しい検討が必要です。こうした要素を把握することは、インドの自動車製造業の進歩を促すうえで非常に重要となります。 本稿では、冷間プレス成形と熱間プレス成形の手法について、両者を比較しながら詳しく説明します。 冷間プレス成形:量産向けのコスト効率の高いソリューション インドの自動車市場は手頃な価格の車種が牽引しており、メーカーの約45%がこの分野に注力しています。そのためコスト効率が依然として最重要視されており、生産工程のすべてに考慮されます。 2024年現在、低価格車向けHSS/UHSS部品の製造において、インドのOEM各社では冷間プレス成形が主流の製造技術として広く用いられています。この手法は、構造ならびに安全基準を遵守しつつ、製造コストの最適化を実現する上で有効です。 冷間プレス成形とは? 冷間プレス成形は常温でプレス機を用いて部品を製造する工程です。自動車メーカーでは、強度が980 MPaまたは1180 MPa以上の高強度鋼(HSS)や超高強度鋼(UHSS)に冷間プレス成形を採用しています。 冷間プレス成形の利点 冷間プレス成形は、直接競合する熱間プレス成形技術と比較して、以下の通り明確な利点があります。 ・コスト効率 ・持続可能性 ・サプライチェーンの柔軟性 ・量産への適合性 コスト効率 冷間プレス成形は、加熱炉や複雑な金型、冷却装置が必要なく、設備もシンプルでメンテナンスコストも安く済むため経済的です。また、前処理や後処理の費用も抑えられるため、全体的にコストダウンにつながります。熱間プレス成形とのコスト差は大きく、特に予算を重視するインド市場では冷間プレス成形の魅力が際立っています。 持続可能性 加熱工程を伴わないため、使用するエネルギーを抑えることができます。このエネルギー消費量の低減は、CO2排出量の削減にもつながるため、持続可能性の目標達成の一助となります。 サプライチェーンの柔軟性 冷間プレス成形においては、シンプルかつ従来型の生産設備を採用することで、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応することが可能となります。生産プロセスの変更を短期間で実施でき、新製品のリードタイムも大幅に削減されます。加えて、熱間プレス成形技術を利用する場合と比較して、すでに生産している製品の変更も格段に効率的に行うことができます。 量産への適合性 冷間プレス成形は非常に高速で、多くの場合1秒もかからずに部品を生産できます。この工程は非常に迅速かつ効率的であり、大規模な生産にも容易に対応できます。そのため冷間プレス成形は、コスト効率が良い低価格車の量産に最適な選択肢となります。 冷間プレス成形の課題 冷間プレス成形には、以下のような課題もあります。 ・材料の成形性の低さ ・激しい金型の摩耗 ・スプリングバックの不具合 材料の成形性の低さ 常温では、とくに高炭素含有のAHSSやUHSSなどの材料では成形性が大きく低下します。そのため、この種の材料を冷間プレス成形する際には、高トン数のプレス機が必要となります。それにもかかわらず、複雑で深い形状を持つ部品の製造は依然として難しい課題です。 激しい金型の摩耗 冷間プレス成形では大きな荷重がかかるため、金型が著しく摩耗し、メンテナンスや交換のコストが頻繁に発生します。この問題を抑えるには、効果的な潤滑が不可欠です。さらに、PVDコーティング(物理蒸着表面処理)を施すことで、金型の耐久性と稼働寿命を伸ばすことが可能です。 スプリングバックの不具合 材料が再結晶温度に達することはないため、最終製品にスプリングバックが生じる可能性があります。代表的な不具合として壁面の反りなどがあります。これらの問題への対応として、エンジニアは高度な部品設計、金型製作の方策、および見込み補正など、さまざまな手法を積極的に取り入れています。 熱間プレス成形:高級車種を支える革新的な性能 熱間プレス成形は、高強度構造部品の製造にも適用できる技術です。この工程は通常、1400 MPa以上の強度を持つ高強度材に使用します。卓越した耐久性と耐衝突性が求められる部品に適しています。 インドの自動車市場では、熱間プレス成形は主に高級車のメーカーが利用しています。特にタタ・モーターズやマヒンドラといった一部のOEMでは、特定のホワイトボディ(BiW)部品の製造に、この技術の導入や検討を始めています。 熱間プレス成形とは? 熱間プレス成形では、「ボロン鋼」と呼ばれる特殊な鋼合金を再結晶温度以上に加熱します。加熱した材料を高精度な金型で成形し、そして急冷することで、卓越した硬度と耐久性を備えた部品を製造できます。加熱することで延性が高まり、急冷によって高い強度が得られます。次に、冷間プレス成形と比較した際の熱間プレス成形の利点について説明します。 熱間プレス成形の利点 熱間プレス成形工程は、その数々の大きな利点から広く活用されています。 ・高い成形性 ・高い強度 ・実績に基づく信頼性 高い成形性 熱間プレス成形では、極めて複雑な形状を加工できます。材料の延性が高まるため、比較的低いプレス機で、より深く繊細な形状を作り出すことが可能です。対照的に、冷間プレス成形で同じ形状を加工することは非常に難しく、あるいは不可能な場合すらあります。 高い強度 熱間プレス部品は、クエンチングなどの熱処理工程により、極めて高い強度レベルに達します。そのため、衝突性能に直結する構造部品に適しています。 実績に基づく信頼性 熱間プレス成形は、長年の研究と実用化によって改良され、信頼性の高い工程として認知されています。材料特性が安定しているため、厳しい安全基準にも容易に対応できます。 熱間プレス成形の課題 - [アルミニウムの冷却時間を300%短縮:インプレッションテクノロジーズとフィッシャーグループのHFQ(ホット・フォーミング・クエンチグ)適用事例](https://japanforming.com/hot_forming_quenching_technology/) - はじめに アルミニウムの熱間プレス成形には、多くの利点があります。しかし特に自動車や航空宇宙産業では、多くのOEMメーカーは依然としてこの技術への投資に対して慎重な姿勢を崩していません。新たな技術には当然ながら保守的になりがちであり、製品に組み込む前に、何度もテストや検証を行う傾向がみられます。 こうした懸念が少しでも解消されるよう、本稿ではインプレッションテクノロジーズ社がアッヒェルン(ドイツ)にあるフィッシャーグループで実施したHFQの量産への適用事例を紹介します。 適用事例 インプレッションテクノロジーズ社は、2012年よりHFQ工程の改善に取り組んできました。現在では、HFQが高強度アルミニウム構造体製造分野における主要なソリューションとなり得ると考えられます。同社は、優れた面精度と機械特性を維持しつつ、高速かつ大量に部品を製造する技術を有しています。この適用事例は、フィッシャーグループとの連携により、当該技術の実用性能を検証する目的で実施されました。 同社は300個の部品サンプルを用い、高度な金型技術と効率的な冷却を組み合わせることに成功しました。初期段階の部品サイクルタイムは約40秒で、クエンチング時間は部品の板厚や合金グレードに応じて15~20秒を要していました。シミュレーションと専門技術を活用することで、インプレッションテクノロジーズ社とその金型の協力会社であるウェバ社は、極めて高いクエンチング速度を達成し、クエンチング時間を短縮するとともに、成形中の温度の均一化を実現しました。 図1:HFQを用いて成形したドアインナー これによりクエンチング時間を5秒未満に短縮でき、総サイクルタイムは約25秒となり、クエンチング速度は300%向上しました。シフトパターン、ライン構成、1ストロークあたりの部品数などの要因を調整することで、さらなる生産効率の向上が見込まれます。 生産能力の向上に加え、シミュレーションを活用した金型サーフェスの設計手法により、不適切なダイスポッティングに伴う遅延や障害も低減する事ができました。 金型のタイムリーかつ高精度な製造は、プレス成形業界にとって依然として大きなボトルネックとなっています。ウェバ社の技術は、ダイスポッティングを正確に評価し、ほぼ完璧なダイスポッティングを実現するための修正案を提案するものであり、これにより金型の納期や工数が大幅に削減されました。 量産においてこれらの目標を達成することは、HFQ技術の普及に向けて重要なマイルストーンとなります。 図2:HFQ焼き入れ改善後のサイクルタイム。 量産におけるHFQの仕組み HFQを量産に対応させるには、適正なダイスポッティングと、工程中の迅速なクエンチングが必須条件となります。良好なダイスポッティングでは、クエンチング中にシート全体で温度と面圧がほぼ均一になります。しかし熱間プレス成形でこの均一化を実現するのはとても困難です。インプレッションテクノロジー社がこれらの難題をどのように克服し、HFQを量産に対応させてきたのか、その取り組みを見てみましょう。 ダイスポッティング精度の向上 アルミニウムの熱間プレス成形においては、熱伝達が最終部品の品質に極めて重要であるため、適正なダイスポッティングがさらに重要となります。過飽和固溶体(急冷後の状態)を維持し、早期析出を回避し、さらに熱変形を防ぐには、(金型とシートの)接触が良好であることが重要です。これらの要因は、最高の機械特性を実現し、厳しい寸法公差を満たすために不可欠です。 しかしエンジニアの多くは、スポット位置の偏差はトライアウト段階で修正できると考え、事前にスポッティングを行わずに金型を作成できると誤解しています。鋼材のプレス成形におけるスポッティングを、アルミニウムの熱間プレス成形にもそのまま適用できると思い込んでいるためです。 しかし、両工程には多くの違いがあるため、これは誤りです。たとえば、アルミニウムの熱間プレス成形ではひずみの局在化が起こりやすいため、設計ではより細かな配慮が必要となります。 スポッティングの改善には、手作業での調整や金型の再切削に多くの時間や工数がかかります。スポッティング中の調整には、十分な削り代を持たせ、どこに材料を追加すべきかを判断する為、経験値が非常に重要となります。 こうした努力にもかかわらず、特に冷却路付近では切削できる材料量には限界があります。 インプレッションテクノロジー社とウェバ社は、AutoFormのプレスポッティング機能を活用して金型面を設計しました。この技術がHFQアルミニウムの熱間プレス成形金型に適用されたのは、これが初めてです。これにより、最初の金型からスポッティングの結果が大幅に改善され、金型の再切削などの手作業による調整が不要になりました。また必要な削り代を正確に見積もることができ、スポッティングの調整段階で、切削時の材料に対し余裕を確保できます。その結果、事前にスポッティングを行わなかった場合でも、金型は最終的なダイスポッティングレベルに極めて近い状態で加工され、初回のトライアウトにてほぼ完璧なダイスポッティングを行うことができます。 図3:Tリッドのシミュレーション画像 成形工程におけるクエンチングの最適化 量産ではクエンチングが極めて重要です。高い生産効率を維持するには、迅速かつ効果的なクエンチングが求められます。また金型は均一なクエンチング並びにプレス部品内の残留熱を防ぐ最適な状態にする必要があります。残留熱が原因でひずみが生じると、部品の寸法精度に影響し、規格外となる恐れがあるからです。 アルミニウム合金には、機械特性に影響を与える最低冷却速度があります。合金のクエンチングが遅すぎると、強度やその他の重要なパラメータが低下する場合があります。したがって高精度な寸法適合性を実現するには、高くかつ均一なクエンチング速度と、低い出口温度の組み合わせが不可欠です。 これらのパラメータはすべて、部品の出口温度分布(クエンチング終了時の部品の最高温度と最低温度の差)を調査することで把握できます。この差が小さいほど、熱分布は均一となります。この差は、金型の製作・製造工程におけるインプレッションテクノロジー社の仕様要件を定義する重要な要素です。 インプレッションテクノロジー社では、製造の協力会社がHFQを用いたプレスラインの運転パラメータを設定する際に、技術とノウハウの提供を通じた支援も行っています。これには、トン数、速度性能、寸法、動作、剛性、加熱炉の加熱能力、ブランク温度分布の公差、自動化のガイドラインなど、基本的な詳細が含まれます。 金型メーカーではこのような情報や支援を活用しながら、金型の設計、スポッティングやその他のシミュレーションの実施、冷却路の構築、CFDによる流量の検証を行うことで、最適な温度分布を担保できます。インプレッションテクノロジー社は協力会社と緊密に連携し、仕様要件の正しい理解と効果的な実施を促進しています。 図4:ランプ缶の例(HFQ成形部品) まとめ インプレッションテクノロジー社、ウェバ社、フィッシャーグループによる、量産向けHFQ工程の実証に向けた連携は、アルミニウム熱間プレス成形業界に大きな成果をもたらしました。ダイスポッティングの精度向上およびクエンチング時間の短縮を通じて、量産への対応を実現しています。 この適用事例ではHFQがアルミニウム熱間プレス成形の最先端技術として位置づけられ、自動車や航空宇宙分野にてOEM各社が抱える導入時の主な懸念事項にも対応しています。高い生産効率と優れた寸法適合性を両立した成果は、インプレッションテクノロジー社が有する工程最適化の専門性と、技術革新への姿勢を証明するものです。 HFQによってサイクルタイムの短縮、機械特性の向上、設計の自由度といった利便性が高まることで、アルミニウムの成形分野に革命がもたらされる可能性を秘めています。インプレッションテクノロジー社の手法がさらに改良され、大手企業との連携が進むことで、HFQの普及が加速し、世界市場においてより効率的で持続可能な製造が実現すると期待されています。 - [フェニックス3Dメタル社:高度なシミュレーションでラバーパッド成形プロセスを3倍効率化](https://japanforming.com/phoenix_3d_metaal_rubberpad_forming/) - はじめに フェニックス3Dメタル社は、薄板プレス成形業界において独自の市場を切り拓いてきたプレス部品メーカーです。同社は1つの金型で幅広いデザインに対応できる独自のラバーパッド成形プロセス(RPFP)を提供しています。大量生産を主とする他社とは異なり、フェニックス社は小ロット・高品質・低コストの部品製造(年間最大生産能力10,000個)を得意としています。農業、食品加工、マテリアルハンドリング、建設機械などの業界にサービスを展開しており、長年にわたり高度なシミュレーション技術を通じて自社プロセスを強化し、ほぼ100%という高い成功率を維持しています。 「お客様が思い描くものを、私たちが形にします」 - フェニックス3Dメタル社の手法 「お客様が思い描くものを、私たちが形にします」は、フェニックス社のミッションステートメントであり、それがいかに難題であってもお客様の夢は必ず叶えるという決意を表しています。量産によくある複雑な金型を用いることなく、数週間ほどで高品質な部品を製造するのです。フェニックス社のラバーパッドを用いたプレス成形プロセスでは、下型は1つのみ、上型にはラバーパッドを使用します。このラバーパッドを薄板に強い荷重で押し当てて成形するため、金型製作の時間やコストを削減できます。 ただしデメリットは工程の所要時間です。RPFPから部品を取り出すまで、従来のプレスラインでの生産よりも時間を要します。そのためRPFPは部品生産が一定数を超えない場合に有効な選択肢となります。フェニックス社では過去の知見やデータをもとに、年間250~10,000個までの生産数の場合にRPFPを推奨しています。年間の部品生産需要がこの範囲内である限り、同社では従来の高品質なプレス部品と同等の精度やコスト効率を担保できます。 ラバーパッド成形プロセス:コスト効率のよい代替手法 ラバーパッドを用いたプレス成形プロセスは、約100年前から用いられてきた技術です。これは下型の上にラバーパッドを強く押し付けて薄板を成形するという、ごくシンプルな仕組みになっています。 . ラバーと薄板を金型に押し付けると、ラバーは下型と同じ形状になり、その間に挟まれた薄板も、下型の形状のとおりに成形されます。プレス機が上昇するとラバーパッドが戻り、ラバー形状は元通りになりますが、薄板は押し付けられた形状を維持します。 従来のプレスや深絞りでは、バインダ、パンチ、ダイなど複数の金型を使用することで高品質な仕上がりとなります。一方、RPFPではパンチのみを使用するため、従来のプロセスよりも簡便かつ経済的です。 ただしRPFPプロセスには量産における損益分岐点があります。これを超えると、従来のプロセスのほうがコスト効率で有利になります。したがってフェニックス社は、高品質な小ロット生産を求める企業に適しています。事実、顧客の多くはニッチな業界に従事している企業や、あるいは特注生産を必要としている企業などです。 シミュレーションを用いた精度向上: AutoFormの役割 フェニックス3Dメタル社では、精度を非常に重視しています。コスト計画からわずかに逸れるだけでも、顧客の事業計画に大きく影響する可能性があるため、誤差の許容範囲は厳しく設定されています。デザインを確定させるには、綿密な計画や検証が必要となります。従来のように、複数の金型を作成してトライアウトを行い、トライアンドエラーを繰り返しながら最適なデザインまでたどり着く手法に頼ることはできません。そのため、AutoFormシミュレーションが同社の要となっています。 フェニックス社ではシミュレーションを活用して、顧客のデザインが実現可能であるかを金型設計や生産へ進む前に評価しています。その結果をもとに効果的な修正案を提案し、それらの変更について検証も行います。フェニックス社のルディ・ダムス氏は「失敗は許されません」と断言しています。 コスト管理に加え、リードタイムを短く(多くの場合、わずか6週間程度)に抑えながらも、初期の金型設計を成功させています。シミュレーションは不具合の早期発見と、効果的な対策を講じる上で不可欠です。材料の板減、過度なスプリングバック、しわなどの不具合を生産開始前に検出し、対策を講じることができるからです。 Hydromagモジュールはフェニックス社のRPFPを直接再現したものではありませんが、フィージビリティに関する不具合を検出し、改善策を提示することができます。シミュレーションとRPFPを組み合わせることで、フェニックス社は初回トライアウトにて100%の成功率を達成しています。 コスト管理の重要性 フェニックス社が想定する主要顧客層は、少量から中規模の生産ロットを必要とする企業です。これらの企業は多くの場合、限られた予算内で事業を運営しており、わずかなコスト増加が収益構造や事業計画に甚大な影響を及ぼすおそれがあります。大規模ロット生産における規模の経済により、ミスや納期遅延による追加コストを吸収できるケースとは対照的です。 このため、フェニックス社は正確な見積もりの提示ならびに部品の納期厳守を徹底しています。高精度でのフィージビリティ評価は、単に役に立つだけという訳ではなく、競争上の優位性を構築するうえで不可欠な要素です。潜在的不具合の早期検出により、フェニックス社は定められた予算内で最終製品を計画通りに納品できる体制を整えています。 フェニックス3Dメタル社はその卓越したパフォーマンスにより、大量生産に軸足を移行する必要もなく、小~中規模の生産ロットを求める企業から継続的に支持されています。フェニックス3Dメタル社は、規模の異なる多様な企業にサービスを提供しています。たとえば、スタートアップ企業は市場の需要が不透明なため、小規模ロットの生産でフェニックス社を利用することが多く、またフェニックス社では品質を損なうことなく、そうしたニーズに応えられる体制を整えています。 フェニックス社の多様な顧客層とプロセス フェニックス社のビジネスモデルは、業界を問わず多くの企業から支持されています。多くの業界では、新規ビジネスや需要が低い時期、あるいはカスタム部品を提供する場合などに、小ロット生産が必要となります。 同社の顧客は、農業、マテリアルハンドリング、輸送、医療、建設、芸術、さらにはコーヒーマシン製造など、幅広い分野に及びます。プレスラインでは、たとえば年間500個の小ロットである大型コーヒーマシンの部品生産にも対応しています。 RPFPではどのような複雑なデザインでも柔軟に対応できます。たとえば、車椅子の泥除けのようなシンプルな部品から、高度な速度制御システムのように複雑な部品に至るまで、フェニックス社では常に高品質な製品を提供しています。 この独自技術のおかげで、顧客や部品設計について、常に変化に富んだ業務と新たな課題に取り組んでいます。ルディ氏が「私たちが退屈することはありません」と指摘するとおりです。顧客が非常に複雑な形状を必要とする場合でも、RPFPを利用することで、量産に伴うコストや発注の最小ロットを気にすることなく、精度の高い製品を提供することができます。 まとめ フェニックス社ではシミュレーションを導入して以来、どのような複雑なプロジェクトにも、確信を持って取り組むことができるようになりました。シミュレーションの導入前はトライアンドエラーに頼る部分が多く、何度も調整を繰り返すことから、コストとリードタイムが増加していました。リスクを抑えるには、初回で成功する可能性が高いシンプルな部品に絞って注力せざるを得ませんでした。 シミュレーションを活用することで、部品の難易度に応じて作業速度が平均で2~3倍向上しました。この改善により、同社が請け負うプロジェクトの件数が増え、また技術や採算面で確実に実現できるものだけを選んで取り組めるようになったのです。 フェニックス社ではプロジェクト選定の改善によって、初回トライアウトの成功率が向上しました。これにより、小ロットの精密金属部品の信頼できるサプライヤとしての市場評価が高まり、安定した顧客基盤を獲得しています。フェニックス社はその高い技術と専門性をもって、難易度の高い設計上の課題に対しても、革新的なソリューションで取り組んでいます。 - [焼戻し鋼板: 熱間プレス成形手法の考察](https://japanforming.com/tempered_steeel_hotforming/) - はじめに 自動車業界では、エンジン駆動と電気自動車の両方で「軽量化」が最重要課題となっています。軽量化は燃費効率の向上とCO₂排出量の削減をもたらします。さまざまな手法がありますが、最先端の材料や加工技術を活用したホワイトボディ(BiW)の最適化から特に大きな成果が得られています。 本稿では、BiWの耐久性やエネルギー吸収性能を高め軽量化を両立するために、部品の中に限定的な焼戻しを組み込んだ革新的な熱間プレス成形の手法について考察します。主題に入る前に、BiWの硬い領域と柔らかい領域の特徴を把握することが重要です。 衝突安全に関わる部品の硬い領域と柔らかい領域 車両の衝突性能を最適化するには、硬い領域と柔らかい領域がどちらも不可欠です。硬い領域は外部からの力による変形に強く抵抗し、乗員を守る安全バリアとして働きます。そのため、衝突時の怪我のリスクを低減できます。このゾーンの強度は一般的に1400MPa以上です。 衝突のエネルギーは、消散させなければなりません。そこで柔らかい領域が重要な役割を担います。柔らかい領域は変形することで衝撃のエネルギーを吸収するように設計され、比較的強度が低い部品が用いられます。降伏応力は通常300~600MPa程度です。車両にはこれらのゾーンが組み込まれていて、硬い領域が変形を妨げる傍ら、柔らかい領域は意図的に変形することで重要な領域への応力を軽減します。 特性の最適化による硬い領域と柔らかい領域の統合 従来、冷間プレス成形工程では、テーラーウエルドブランク(TWB)などの手法を活用してBiWの部品に硬い領域と柔らかい領域を組み込んできました。これは板厚が異なる同じ材料、あるいは異なる材料や合金を組み合わせることで、設計や性能の要件を満たす手法でした。 近年の熱間プレス成形技術の進展により、これらのゾーンをひとつのプレス部品(たとえば車両に不可欠なBピラーなど)にまとめることが可能となりました。テーラードテンパリングと称される革新的な焼戻しの手法により、硬い領域と柔らかい領域を単品部品に継ぎ目なく組み込むことができます。この手法を通じて、板厚、重量、コストなどの主要な特性を最適化することができます。 熱間プレス成形におけるテーラードテンパリングの手法 熱間プレス成形は、加熱したブランクを水冷金型で成形および急冷し、加工硬化によって超高強度の部品を製造する工程です。合金の微細組織がマルテンサイトに変化することで、一般的には1400MPa以上の強度が得られます。テーラードテンパリングは管理された範囲内でその特性を最適化する手法で、要件に応じて精密にカスタマイズを行うことができます。特に相変態と形状の調整から高い効果が見込めます。これらのソリューションは、デザインに応じて個別あるいは組み合わせて適用できます。以下に各手法の概要を説明します。 図2: 単一強度から調整された強度へ 1. 相変態 相変態では、熱処理や焼き入れ工程にてボロン鋼合金の微細組織を調整します。材料の各領域を異なる温度で選択的に加熱し、冷却速度を調整することで、領域ごとにマルテンサイト、ベイナイト、フェライトなどの異なる微細組織を形成することができます。 この技術により、以下を形成できます。 • 耐衝撃性を担う高強度領域(マルテンサイト) • エネルギー吸収と柔軟性を担う延性領域(フェライトまたはベイナイト) 2. 形状の調整 部品の強度と延性を最適化する別の手法として、形状をカスタマイズする「形状の調整」も活用できます。さまざまな技術を用いて部品の特定領域を選択的に強化し、外力に対する耐久性を高めます。この手法では、たとえば材料変更などのコストをかけることなく、必要な領域のみの強度を高めることができます。 相変態 ボロン鋼合金の相(マルテンサイト、パーライト、フェライトなど)は、熱処理条件の違いによってそれぞれ強度と延性のレベルに明確な差があります。各相は固有の機械特性を有するため、用途に合わせて特性を調整した材料を設計することが可能になります。相変態によって、ひとつの部品に複数の相を組み込むことができるため、領域ごとに強度レベルが異なる最終製品を実現できます。 部品の特性を目的に応じて調整する上で、主に2つの方策または技術によって相変態を可能にします。 1. テーラーテンパードブランク 2. プレス金型の部分的加熱(現在検討中) テーラーテンパードブランク 図3: テーラーテンパードブランクの挙動 この手法では、ブランクを成形ステーションへ移す前に、ブランクの特性を領域ごとに調整します。図3に示すように、最初に高温加熱炉にてブランクを930°C(1706°F)まで加熱し、オーステナイト化します。加熱中、比較的ソフトな状態を維持すべき領域は輻射から遮蔽します。すると遮蔽した領域は加熱されないため冷却が始まりますが、その他の領域は高温のままとなります。 この技術の要となるのが対流冷却工程であり、そこでは所定の時間内にブランクを特定の温度まで冷却します。その後、ブランクを熱間プレス成形工程に移し、成形します。最後に、プレスした部品に焼入れを行うことで、硬い領域と柔らかい領域を自在に組み合わせることができます。 図4: テーラーテンパードブランク → マルテンサイト相の形成 → 引張強度 部分加熱したプレス金型 図5: 部分加熱したプレス金型 図6: 部分加熱したブランクの焼き戻し → マルテンサイト相の形成 → 引張強度 材料特性を選択的に調整する手法には、成形工程中にシートを加熱する方法もあります。図5に示すように、まずブランク全体を完全にオーステナイト化してから成形ステーションへ移します。プレス金型にはカートリッジヒーターと冷却経路が装備されており、特定領域の温度制御と冷却速度の調節を行うことができます。 高温が維持される領域は、フェライト、パーライト、ベイナイトなどの中間相変態を経て、最終的にマルテンサイトへ変化します。これらの領域は比較的硬度と強度が低い柔らかい領域となります。一方、冷却経路に直接接触している領域は急冷され、ほぼ瞬時にマルテンサイトへ変化するため、より高い強度と硬度が得られます。 このように冷却速度を選択的に調整することで、最終部品は領域ごとに異なる特性を有するようになります。結果として、強度と柔軟性のバランスが最適化され、衝突時の性能も向上します。 形状の調整 - [ゲスタンプ社:ピンチをチャンスへ - 製造業における持続的な発展](https://japanforming.com/gestamp_sustainable_manufacturing_industry/) - 継続的な工程改善に取り組むゲスタンプ社では、ブラジルのオートフォーム社のプレス成形とアセンブリの工程統合ソリューションに関する提案を積極的に取り入れています。ゲスタンプ社車体設計部の協力のもと、各工場の統括部門を対象に2度のウェビナーを開催し、AutoFormソフトウェアの活用を通じて各部門が達成した効果と成果を紹介しました。また社内の工程改善に向けた知見の提供も行いました。 ウェビナーでは知識共有および各施設に有用なツールの紹介を行いました。提示したソリューションを各生産拠点の工程改善にどう活用できるか、またどのように導入すれば効果的に成果を得られるかについて、より包括的な理解を促進するものです。 ウェビナーでは最初にデジタルツインに焦点を当て、製品設計から金型製作の承認まで、プレス部品の開発サイクル全体でシミュレーションを活用する手法を解説しました。図1に示す通り、第一段階では製品のフィージビリティ評価が重要です。インポートした部品形状や材料のデータ、そして適切なダイフェースから成形性の問題を迅速に分析します。AutoFormソフトウェアのフィージビリティ解析機能を活用し、製品形状の修正案を検討すれば、不具合を軽減することができます。これにより、再加工や作業の遅延を最小限に抑えることができます。 図1: 製品フィージビリティ解析 この評価に続くステップでは、製造工程の検討と金型製作のコスト見積もりを行います。タンデム、トランスファ、順送などのプレス成形工程のパラメータ化を通じて、展開形状を明確に定義します。このデータは、図2に示すように、選択した工程に必要なブランクやコンポーネントのサイズ決定に活用できます。これらの解析を経て、必要な工程数や各工程内での配置を検討しながら、工程を決めてゆくことができます。 図2: 工程開発と予算組み 金型製作の工程検証およびコスト解析後、次段階では定義した工程の性能評価を行います。AutoFormソフトウェアには、セグメント化されたビードの高さ変更、壁面の傾き、パンチとダイの進入半径、面圧、ブランクのサイズや配置などを自動変数で検討できるツールが搭載されています。この段階では、図3に示すように、フィージビリティ評価と併せて、材料のスプリングバック見込み補正も極めて重要となります。これらの検証後、次段階にて金型の設計を行います。 図3: プロジェクトおよび見込み補正 金型の開発段階から製造用金型の出図へと進むにつれ、安定した生産工程に重大な影響を及ぼす要因を検討しなければなりません。板厚など材料の機械特性にばらつきがあることで不具合が生じる場合があります。AutoFormソフトウェアを活用して、確定させた全ての公差を組み込むことで、製造現場において安定した生産を担保することができます。材料に変化が生じると、ソフトウェアは不具合の原因を迅速に識別し、プレスラインの不稼働期間を最小限に抑えます。ロバスト解析を通じて、製品の特定領域に影響を及ぼす変数を特定できます。図4の解析結果から、最終製品の品質と寸法を決定する上で、材料の板厚が重要な要因であることが明らかとなっています。 図4:工程パラメータの板厚感度解析 図5に示すように、ゲスタンプ社は先進的なエンジニアリングを取り入れることで、再加工の大幅な削減、不具合の迅速な検出、製品品質の向上といった成果が得られることを実証しました。これは、フィージビリティ評価や工程計画の定義から単品部品の金型コストに至るまで、冷間プレス成形、熱間プレス成形、アセンブリ接合、生産支援などあらゆる工程を網羅しています。 図5: ゲスタンプ社の工程サイクル この工程のフィージビリティとアセンブリの寸法は、生産ラインを円滑に稼働させる上で極めて重要です。アセンブリ初期の接合工程を分析することで、全体的なレイアウトの評価、影響の大きい部品の特定、形状変更の提案を通じた効率と製造品質の最適化が可能になります。 アセンブリ工程を評価するには、アセンブリおよびヘミングのモジュールに関する包括的な理解が欠かせません。ヘミングやスポット溶接のシステムだけでなく、基準形状、成形後形状、デジタル化された部品(スキャンデータ)も考慮が必要です。また最終アセンブリの寸法評価では、各部品の複合的なスプリングバック効果を含めなければなりません。 工程検討ではスプリングバックの影響を考慮し、必要に応じて接合工程を適応させることが重要です。妥当な結果を得るには、必要な調整を見極めながらトライアウトのパラメータを定義しなければなりません。そのためアセンブリのソフトウェアにはバーチャルアセンブリリファレンス(VAR)のコンセプトが採用されています。これはアセンブリの結果に基づいて単品部品の形状を見込み補正できる便利なツールです。図6は、見込み補正を施していない製品(左側)と、インナーパネルを見込み補正した製品(右側)のアセンブリを比較しています。 図6: 見込み補正 - バーチャルアセンブリリファレンス(VAR) トライアウト支援では、デバイスへの部品の挿入順に関連するアセンブリの不具合や、単品部品の安定性に関する問題などに対処します。この工程では必要に応じて適切な変更を加えることができます。一方、生産サポートでは、生産中に生じる不具合の解消、不稼働時間の削減、不具合の削減に注力し、さらなる効率化を図ります。アセンブリモジュールでは、既存のアセンブリを解析することもできます。デジタル化によるより高精度な解析と適切な生産パラメータの設定を通じて、卓越した製造工程を担保します。このようにきめ細かな対応が、プロジェクトの成功と高い顧客満足度に寄与することでしょう。 ゲスタンプ社はブラジルにてアセンブリをデジタル化した先駆者です。その成果をもとに手順と要件の確立を図りながら、組立部品の安定性を向上および担保することで、品質と精度に妥協を許しません。 エンジニアリングの段階で不具合に対処することで、製品開発から最終アセンブリに至るまで、また溶接工程の寸法精度に寄与する支持点の配置でも無駄を削減できます。ゲスタンプ社の包括的かつ高品質なコンテンツから応用事例をいくつかご紹介しました。これらは担当部門に大きな満足感をもたらしています。 第二車体開発技術部より:「アセンブリモードのシミュレーションを活用し、コンセプト段階で製造工程の検証や改善を行います。作業遅延を削減し、納期の大幅短縮を実現できるだけでなく、生産効率の向上と不具合の削減にも寄与します。この取り組みには、生産性・品質・効率の向上、コスト削減、開発や調整の期間短縮、そして何よりもゲスタンプ社におけるイノベーションの促進といった利点があります」 ゲスタンプ社におけるデジタルツインの推進にあたり、レアンドロ・ペドラコリ氏のご信頼とご尽力に深く感謝申し上げます。また発表に際して調整にご尽力いただいたアタイア社のカイナン・フィゲイレド・ベロ・ロペス氏、ウェビナーの実績と貢献をご共有いただいたレオナルド・フェルナンデス・ドンピエリ氏、レオナルド・フレイタス・オリベイラ氏にも心より御礼申し上げます。関係各位のご協力とご参加に深く感謝します。 - [シミングとティーチング:AutoFormを活用した見込み補正:ホワイトボディ技術部の業務効率化](https://japanforming.com/biw_stamping_assembly_compensation/) - 複数部品のアセンブリ工程において、各部品が単品精度を満たしていれば、それらを組み立てたアセンブリは公差に収まると考えがちです。しかし、残留応力や剛性などから各部品にわずかな偏差が加わると、最終アセンブリが公差に収まらないことがあります。 この不具合を解消する手段は多くありますが、通常は組み立てる部品に応じて対応は異なります。特に自動車部品のアセンブリにアウター部品(クラスA)が含まれる場合、その見込み補正に関わる担当者は非常に慎重な判断が求められます。 最初に、部品の見込み補正について説明します。AutoForm Assemblyではアセンブリする部品(複数可)を選択して、見込み補正を実行することができます。基準の部品形状をモーフィングして形状修正を行い、アセンブリ全体を公差内に収めるのです。一般論として、アセンブリする部品の中で最も剛性が高い部品を見込み補正すれば、この部品が残りの部品を公差内の位置まで移動させることができます。AutoForm Assemblyでも剛性解析を実行できるため、アセンブリに最も影響する部品を容易に特定することが可能です。 次に、拘束位置や接合順序を調整することで、アセンブリを公差に収める手法について説明します。ホワイトボディ分野では、シミングおよびティーチングと称されるものです。シミングはアセンブリ工程における治具拘束点の見込み補正で、ティーチングは溶接点の見込み補正です。このシミングとティーチングは、通常、同時に実行します。 シャシー、構造部品、ホワイトボディなどを扱う技術部では、上述のようなアセンブリの見込み補正を行っています。成形シミュレーションによる検討業務を実施している段階ではまだ実部品が存在しないため、通常はトライパネルを使用した溶接時に拘束点を修正し、補正された位置で部品を接合しています。そして拘束部分を解放すると、組み立てた部品が公差位置に収まるのです。 AutoFormを活用したシミュレーションでは、アセンブリ工程の設定時にインポートした基準サーフェス上に拘束点と溶接点をそれぞれ定義します。図1は溶接位置の断面を示しています。 図1: 左: 溶接点の定義。右: 溶接点の断面 工程をすべて定義したら初期シミュレーションを行い、要求精度に収まっていないサーフェスがないかを確認します。 図2: 公差に収まっていない領域(白色部分) 公差に収まらない領域が検出された場合、治具の拘束点や溶接点の位置を拘束面の法線方向に調整することもあるでしょう。AutoForm Assemblyでは「ΔN」という特定のボックスを使うと、拘束点や溶接点の位置を法線方向に直接修正することができます。 この「トライ&エラー」は実部品で行うとコストがかかりますが、これをソフトウェア上でのバーチャルな検討で置き換えることができます。つまり作業が大きく効率化され、大幅なコスト削減と時間短縮を実現できます。 図3: 左: 溶接点のリスト定義。この領域に影響がある4ヶ所の接合にΔNを適用しています。右: 見込み補正した接合部分の断面 シミュレーションでトライ&エラーを繰り返しながら、最終的に公差内に収まる設定が確定したら、その時点でトライアウト担当者に引継ぎ、実物を使った検討を開始します。 図4:シミング後の良好な結果 治具の受け面や拘束位置を正規の寸法から変更した場合、これらの点に強い反力がかかる可能性が想定されます。正規位置ではない場所で拘束を行うため、これは当然と言えます。また見込み補正によって実際に接合点や拘束部分にかかる反力は、さらに増加することも予想されます。シミュレーション・ソフトウェアを利用しない実機での修正では、このような反力の変化を詳細にとらえることはできません。シミュレーションを有効活用すれば、見込み補正工程をバーチャルに検証することが可能になるのです。 図5: シミング前後の反力 アセンブリ担当者が不具合対応に当たる場合、まずは工程の概要について把握し、そして不具合の生じている領域(図2の赤丸部分)の拘束や接合を調整していきます。さまざまな値を組み合わせながらトライ&エラーを重ねることで、アセンブリが公差内に収まるよう調整するのです。わずか数回の修正で公差に収まる場合もありますが、実際には調整に膨大な工数がかかることも珍しくはありません。また多大な時間を費やしたとしても、必ずしも良好な結果が得られるとは限りません。AutoForm Assemblyを有効活用し、バーチャルに解決策を見出すことで、時間やコストを大幅に削減することができます。 図6: AutoForm Assemblyを活用するメリット 部品や工程の不具合を早期に特定することで、より的確な判断が行えます ロバストな設計工程を構築し、トライアル期間を短縮することで、リードタイムを削減できます 金型修正の回数を削減し、生産を効率化することで、コストを削減できます より精度が高い、安定した金型や部品を担保できます ホワイトボディ部門では多くのユーザーがAutoForm Assemblyのシミュレーションを有効活用しています。ここ数ヶ月、弊社にはデモの依頼が絶えず、また非常に前向きなご意見を多数頂戴しています。このようなシミュレーションに対応したソフトウェアは他にありません。またAutoFormソフトウェアのユーザー・インターフェースは使い勝手が良く、様々な部門でご愛顧いただいています。アセンブリのトライアルを開始する前に、すでにシミングやティーチングで「何が起きるか」をバーチャルで事前予測できることは、非常に大きなアドバンテージとなるのです。 AutoForm Assemblyの詳細については、お近くのAutoFormオフィスまでお問い合わせください。 - [不良による廃棄と再加工を大幅削減:部品コーナー部のしわの問題にアプローチ減](https://japanforming.com/digitaltwin_maxion_structural_brasil/) - ブラジルのクルゼイロにあるマキシオン・ストラクチュラル・コンポーネント社のエンジニア、パウロ・セザール・ジュニオール氏と、オートフォーム社のエンジニア、ウェズリー・アパレシード氏が共同執筆した本記事では、プレス成形時に直面した不具合への対応、特にデジタルプロセスツインの適用を通じて廃棄と再加工を大幅削減し、生産効率全体を改善した事例ついてご紹介します。 デジタルプロセスツインによる継続的改善 ブラジルのクルゼイロにあるマキシオン・ストラクチュラル・コンポーネント社の事例は、デジタルエンジニアリングのプロセスツインが製造効率をいかに変革し得るかを示す好例です。2005年以降、同社はシミュレーション技術を活用し、諸機能の統合や手法の進化などを通じて、プレス成形工程の改善に取り組んできました。そして生産の最適化、ラインの性能改善、継続的改善の担保などの成果をあげています。クルゼイロの技術部門では、このデジタル手法を活用して、クロスバー部品の生産プロセスを最適化できることを実証しました。 課題:複雑な冷間プレス部品の成形 対象となるコンポーネントは量産用の冷間プレス部品であり、板厚は6mm、引張強度は560~700MPaの範囲で変動します。ここに複雑な成形が加わると大きな問題に直面しました。急激な形状変化、凸形状など(図1)プレス成形が難しく、製品の品質低下を招き、高い不良率につながりました。 図1: 成形難の領域 特に深刻な不具合として、過剰なしわが確認されました(図2)。部分的には修正が可能でしたが(図3)、修正ができない箇所については廃棄せざるを得ませんでした。過剰なしわによって材料が重なり、局所的な変形が助長されると、材料の硬化が生じ、最終的には破断に至ります。 図2: 過剰なしわ(品質の不具合) 図3: 部品の修正 しわの不具合に加え、別の悪化要因もありました。しわを金型の壁面に押し付けることで生じる高い圧力が、金型の早期摩耗を引き起こし、コーティングの剥離を招いていたのです(図4a)。金型の保守担当者は頻繁に手直しをせざるを得ず、影響を受けた箇所を溶接処理(図4b)した後、材料を追加して仕上げと研磨を行う必要がありました(図4c)。 図4: (a) 鋼材の摩耗、(b) 鋼材の溶接、(c) 鋼材の研磨 これらの不具合を解消するため、生産支援として採用された手法の一つが、サーフェススキャナーとAutoForm Formingを用いた金型のリバースエンジニアリングでした。金型の実際の状態をスキャナーで計測すると、ダイとパンチ間の距離にばらつきがあることが明らかになりました(図5)。基準板厚に応じて6mm前後の値が想定されていましたが、鋼材への過度な圧力と板厚増加により、一部の領域で金型のギャップは最大7.5mmに達していました。 図5: 鋼材-金型間のシートのギャップ スキャンした金型サーフェスを解析すると、シートの位置、荷重、シート寸法、摩擦、コンポーネントの移動、クッションピンの位置など、実工程のパラメータをすべてシミュレーションで定義しました。バーチャルモデルが実際の製造条件と一致することを確認するため、シミュレーションのスキッドラインとしわ領域を実際の状態と比較しました(図6)。 図6: (a) シミュレーションと(b) 実部品の比較 別途、鋼材の摩耗についても条件を比較しました(図7)。これにはAutoForm-DieAdviser、TriboForm Thermo plug-inのモジュールを使用しました。金型の加熱効果も考慮したより正確な摩擦モデルを加えることで、バーチャルモデルのさらなる改善を図りました。 図7: (a) シミュレーションと(b)実部品の金型摩耗の比較 バーチャルモデルの検証後、不具合を解消するための修正計画を策定するため、バーチャルトライアウトを実施しました。この計画を支援する上で、AutoFormシミュレーションの結果分析機能を活用しました。たとえば「最小主応力」を利用すれば、高圧縮領域を特定できます。 圧縮効果を最小限に抑えるため、まず比較的軽微な修正として、ブランクプロファイルを調整しました(図8)。しかしこれだけでは不具合を完全に解消できません。別のソフトウェアリソースであるAutoForm-DieDesignerを使用して、金型形状を修正し、金型との接触ポイントにおけるシートの圧縮を緩和することで、当該領域の方向に沿ってより均一な応力分布を担保しました(図9)。両手法を組み合わせることで、満足のいく結果が得られたため、金型部門へ検証と実装を依頼しました。 図8: ブランクの修正案 – ブランク外周の変更 図9: 金型形状を修正 修正計画を実施すると、良好な結果を得られました(図10)。その後の生産において、不良率が大幅に低減するとともに、再加工もすべて不要となりました。これによりプレス工場の効率が改善され、持続可能性の向上にも貢献しました。 図10: 修正計画を実施後の実部品 実証された通り、生産とシミュレーションを組み合わせることで、稼働中の作業と並行して不具合対応を検討できるため、効果的な修正案を導き出すことが可能になります。最適な対策を特定してから、その対策を金型に反映させるため、トライアンドエラーが不要となり、大幅な効率化が実現します。本稿で紹介した事例は、数ある代替案の一つに過ぎません。たとえば、ブランクの削減やCP・CPK指標の改善による部品提出保証書(PSW)やPPAP検証要件への準拠といった対応もあり、これらにより生産開始までのリードタイムを大幅短縮することが可能となります。 この手法にご興味をお持ちでしたら、関連記事である「バーチャルPPAP計画」を参考にしてください。AutoFormによるPPAP計画の支援、そして複数のステージを前倒しすることで時間とコストの両方を最適化する手法について解説しています。 参考文献 AMS. (30 of 03 of 2017). American Metal - [数ヶ月単位のトライアンドエラーを削減:トライ後の不具合対策として、全体最適の視点で、プレス、アセンブリの対策を実施](https://japanforming.com/digitaltwin_skh_smc_india/) - インドのプネに拠点を置くSKH SMC社は、精度、効率、コスト管理が最優先される1次サプライヤです。同社はインドのオートフォーム社と提携し、デジタルツイン技術と高度なアセンブリシミュレーションを効果的に活用しています。電気自動車(EV)用バッテリーボックスのセパレータープレートの製造における深刻な問題の解消に取り組み、革新的な思考から成果を得られることを実証しました。 本稿では、従来のプレス成形の修正からアセンブリのバーチャルシミングおよびティーチングへと手法を転換する上で、事業面での便益、技術戦略、資源節減効果、および考慮すべき影響について考察します。この手法の転換によって再加工やトライアウトのコストを削減し、プロジェクトのリードタイムを大幅短縮することが可能となりました。 背景:パネルからアセンブリまでの公差 検討する部品は、EVバッテリーボックスのバッテリーパックを分離するために必要なバッテリーのセパレータープレートです。これは以下2つのコンポーネントで構成されます。 • ベースプレート、および • 剛性を高めるために複数のエンボス加工が施された構造用プレート 本稿では主に構造用プレートを扱います。このプレートをバッテリーパックに組み込むには、最終アセンブリにて厳密な平坦度公差を満たさなければなりません。そのためSKH SMC社では、アセンブリに求められる平坦度仕様に合致する平坦なパネルの製造を目標に掲げました。 従来、スプリングバックの偏差はプレス成形工程で見込み補正していましたが、金型コンポーネントの再加工に膨大な時間とコストを要していました。プレス成形シミュレーションのコミュニティサイトであるJapanForming.comに掲載されているブログ記事(アセンブリ工程の最適化:部品の最適化を代替する戦略的手法 – EVバッテリーケースの製造に関する事例紹介)では、AutoFormソフトウェアでバッテリープレートのシミュレーションを行い、仕様を大幅に超える15mmのスプリングバックを特定した事例を詳細に紹介しています。この事例からも、従来の手法では不具合対応に限界があることが実証されています。 プレス成形工程で生じる偏差を見込み補正する手法の代替として、アセンブリ工程でスプリングバックを管理する手法を検討しました。プレス成形したパネルは剛性が低いため、アセンブリ工程で修正ができます。特にシミングクランプや溶接機のティーチングを活用すれば、フォーム金型を修正することなくスプリングバックを管理することが可能になります。 本共同プロジェクトは、ホワイトボディ(BIW)工程の詳細かつ高精度なバーチャルモデルである真のデジタルプロセスツインの構築を中心に進められました。特に特徴的なのは、プレス成形工程のCAE結果をアセンブリシミュレーションへ直接組み込んだ点であり、これによりプレス成形工程で生じた偏差が最終アセンブリに及ぼす影響を包括的に把握することができるようになりました。 図1. プレス成形&BiWアセンブリのエンジニアリングにて、 デジタルプロセスツインのコンセプトを活用 戦略の転換:アセンブリシミュレーションとバーチャルシミング このプロジェクトでは、プレス成形中に変形したパネルを組み立てる際の挙動をシミュレーションすることを目標に定めました。スポット溶接においてシミングとティーチングを戦略的に調整することで、この変形を補正することができるかを検証しました。変形を効果的に補正できれば、膨大なコストをかけてプレス金型を修正する必要がなくなります。 アセンブリシミュレーションの結果は良好でした。シミングやティーチングを通じてプレス成形で生じた変形を修正でき、凸状の変形が凹状に変化するなど、大きな変形が効果的に解消されました。これにより、アセンブリ工程中に「バーチャルシミングおよびティーチング」の適用、つまりシミュレーションしたオーバーベンドとクランプの再配置を通じて、不具合を解消し、目標形状を得るための道筋が立ちました。 SKH SMC社プネ工場では、バーチャルの検証結果をすぐに製造現場へ取り入れました。CMM(三次元測定機)による測定結果はシミュレーション結果とほぼ一致し、デジタルツインの有効性が証明されました。 図2. プレス成形からアセンブリ、そして実部品への偏差の変化 アセンブリシミュレーションを活用した手法の利点 コストへの影響:金型の再加工を回避 従来の生産環境において、15mmという大きなスプリングバックに対処するには、少なくとも3回の品質ループ(再加工、プレスのトライアウト、測定)が必要となります。それぞれ最大3週間を要するため、多大な資本や工数が生じます。 従来の修正プロセスには、通常、以下が必要となります。 1. プレス成形工程の見直しと最適化(サプライヤと協働) 2. 複数回の再研削や再加工による金型形状の微調整 3. 軽微な寸法修正にはリストライク金型の追加 SKH SMC社ではアセンブリを基軸に対応することで、上記の修正プロセスを回避できました。またリストライク金型が不要となり、約30,000米ドル(約470万円 156.6円/米ドル)の直接的なコスト削減を実現しました。さらにプロジェクトの期間の1.5ヶ月短縮とスケジュール全体の約2ヶ月前倒しに貢献しました。 運用柔軟性の向上 SKH SMC社では、アセンブリラインに修正を加えることで、従来のサプライヤからパネルを調達し続けることができました。本来ならば、これらのパネルは公差外れとして不良品扱いされていたでしょう。しかし今回の対応により、品質を損なうことなく最終アセンブリの公差を満たせました。これはデジタルを効果的に活用して検証しなければ成しえなかったことです。 SKH SMC社では発想の大きな転換が起こりました。上流工程で完璧さを追求するのではなく、シミュレーションを活用し、より費用対効果が高く迅速に対応できる下流工程で修正を行うことにしたのです。その結果、サプライチェーンの摩擦を最小限に抑え、遅延も回避でき、また全体的な効率改善にも寄与することができました。 デジタルツインを最大限に活用 SKH SMC社ではアセンブリシミュレーションの活用を通じて、バーチャルの検討業務と実物の製造現場のワークフローを統合し、戦略的に意思決定を行うことで、デジタルツインの理念を最大限に活用することができました。AutoFormソフトウェアを活用することで、潜在的な成果を引き出せただけでなく、以下にも対応できるようになりました。 1. バーチャルの環境内で偏差を定量化 2. さまざまなスポット溶接やシミングの方策を検討し、フィージビリティを評価 3. 金型の再加工を行う前に、信頼できる情報に基づいた意思決定を行う トライや生産立ち上げの段階で変更を行うには、非常に複雑で膨大なコストや時間がかかります。しかしSKH SMC社では高精度なシミュレーションを有効活用することで、エンジニアリングの初期段階から重要な意思決定を行うことができるようになりました。 - [イタリア・Walmaz社、完全デジタルプロセスのワークフローを構築](https://japanforming.com/walmaz_italy_digitalprocess/) - プレス成形シミュレーションのデータを疲労解析や熱機械的解析の条件設定に活用 はじめに 近年、高性能製品の需要が著しく高まっています。こうした要求に応えながらも、生産コストとリードタイムの削減を図る上で「フロントローディング」の手法に注目が集まっています。これは実製造の開始前に不具合を特定し、解消する取り組みですが、ここでシミュレーションが極めて重要な役割を担っています。 この成功事例として、イタリアのWalmaz社とウォーターポンプの大手メーカーとの共同プロジェクトが挙げられます。AutoFormシミュレーションのデータを他社ソフトウェアでの後続解析の条件設定に活用することで、実効性のあるデジタルワークフローを確立しました。 Walmaz社について イタリアのサン・ジョルジョ・デッレ・ペルティケに本社を置くWalmaz社は、1973年に設立され、薄板の冷間切断やプレス成形のハンドトランスファ金型、順送金型、オートトランスファ金型の設計・製造を専門としています。同社では主に自動車や白物家電業界の製品を扱っています。 Walmaz社は金型設計の初期段階からお客様をサポートし、生産サイクルにおける深絞りのシミュレーションまで提供しています。これらのシミュレーションに含まれる解析レポートや推奨される修正案を活用することで、部品のフィージビリティを担保できます。またWalmaz社にはプレス設備もあり、お客様のご依頼によるプレス部品の加工も承っています。 Walmaz社はお客様と緊密に連携し、設計段階では生産ニーズに応じて最適化まで考慮した設計を行います。またお客様ごとにカスタマイズした高品質なソリューションを提供します。技術チームは最新鋭の2D・3Dソフトウェアを駆使し、お客様と連携しながら金型設計を綿密に検討し、常に革新的なソリューションを追求しています。 Walmaz社の金型工場では高度な機械設備で金型のコンポーネントを自社製造し、組み付けや生産ライン全体の試験まで実施することができます。専用のプレス機を用いて金型のトライアウトを行い、お客様はプレス部品のサンプルや寸法検査報告書を受け取る事ができます。また、近くの施設にはプレス機も備えており、必要に応じて生産全体の再現も可能です。 図1: Walmaz社のシミュレーション報告書例 家電業界における現行のシミュレーションプロセスと新たなトレンド 現在、プレス成形シミュレーションは、一般的に、衝撃や落下のシミュレーション、耐疲労性解析とは別のプロセスとして扱われています。後者は通常、初期データとしてCADデータを使用し、板厚のばらつき、残留応力、スプリングバックなどの変形履歴は考慮しません。 言い換えれば、情報伝達はプレス成形シミュレーションの段階で途切れてしまいます。そのため後続のシミュレーションでは実環境を部分的にしか再現できません。そしてエンジニアはこの実環境を正確に反映していない不完全な結果をもとに意思決定を行わざるを得ません。 この問題に対処する上で、最近では設計のワークフローを完全デジタル化する取り組みが活発に行われています。初回トライアウトで最適な製品が求められる中、シミュレーションで実環境条件を忠実に再現する必要性がますます高まっています。材料試験を通じたバーチャルの材料特性カード作成から、デジタルの工程設計、プレス成形シミュレーション、熱機械的解析、衝撃試験、耐疲労性評価、そしてCAE解析の日常的使用に至るまで、設計担当者はプロセスをシームレスに構築しなければなりません。 AutoFormにはシミュレーション結果をさまざまな形式でエクスポートする機能が搭載され、そのデータを後続解析の入力条件として活用できるようになっています。これにより、板厚/板減データ、残留応力、メッシュなどの情報転送が可能になり、より精密かつ包括的なシミュレーション結果を得ることができます。エクスポートはCSVなどの汎用的な形式、またはDyna、Pamといった特定の設定に対応し、STL/Nastran/AF形式のメッシュを添付することもできます。 その利点としては、製品形状と性能をバーチャル環境内で改善できるため、開発コストとリードタイムを削減できることが挙げられます。 ある事例を取り上げます。ウォーターポンプに取り付けるコンポーネントに不具合が頻繁に生じるため、耐疲労性解析を実施しました。製造工程全体はAutoFormプレス成形シミュレーションを用いて設計されました。検証済みの工程(切削や金型アセンブリの基礎となるもの)からDynaデータファイルをエクスポートし、CFD、Mechanicalなどの汎用シミュレーションソフトウェアに読み込みました。 図2.致命的な板減が検出された領域:部品は破断していませんが、アセンブリ後の疲労によって不具合が生じる可能性があります。基準板厚のCADデータを用いた耐疲労性解析では不具合は特定されませんが、AutoForm解析データに基づくシミュレーションでは不具合が検出されます。 するとプレス成形シミュレーションで既に確認されていた特定箇所が、疲労発生の起点となったことが判明したのです。板厚は一定で変形履歴もない基準のCADデータを使用して機械シミュレーションを実行しても、これらの脆弱性は指摘されませんでした。しかしながら、プレス成形結果を組み込むことで、技術者は不具合を特定し、重要なデータを全て活用しながら解決策を検討することが可能となりました。 拡張の長期的展望および結論 この種のシミュレーションプロセスを完全に確立させ、企業のワークフローに組み込むことができたら、デジタルワークフロー構築への次のステップは、AutoForm Assemblyを活用した家電製品のアセンブリ全体のシミュレーションです。この手法によって、相互に拘束される部品のデータをエクスポートできるため、このデータは後続のシミュレーション(たとえば構造変形シミュレーションなど)において非常に有用です。 異なるシミュレーションソフトウェアを活用したソリューション間でデータを交換することは、優れた「デジタル製品」を生み出す手法であります。それはコストとリードタイムが最適化された生産工程によって支えられ、より優れた高性能な「実製品」として実現されることになります。 本記事の作成にあたり、専門技術のご指導をいただきましたWalmaz社の皆様に心より感謝申し上げます。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm2025」開催レポート:その3 三菱自動車工業株式会社様](https://japanforming.com/autoforum2025_mmc_report3/) - 2025年10月31日(金)、ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会議「AutoForUm 2025」を開催いたしました。ユーザー事例発表のひとつとして、三菱自動車工業株式会社 板金樹脂生産技術部の中川 直哉様より、鉄材料のTriboForm適用による影響調査についてご講演いただきました。本記事では発表内容の概要をお伝えします。 「鉄材料のTriboForm適用による影響調査」 1. 背景 部品“HOODOTR”で、実際の金型による初回トライにおいて絞り成形時にワレ不具合が発生。絞り成形には全周ロックビード工法を用いているが、事前の工法検討時のCAE解析では検知できていなかった“未検知ワレ”であったことが問題となった。 全周ロックビード工法は歩留まり向上および成形安定性などの観点により積極的に採用していきたい一方で、ワレ不具合が発生してしまうと流入調整が不可能な工法のため、ワレ不具合対策に多くの工数や費用がかかるリスクがある。CAE解析の予測精度を向上させ、“未検知ワレ”ゼロを達成する必要がある。 工程設定や材料物性、金型サーフェスなど様々な要因を考える中で、AutoForm提供のプリセットされたTriboForm摩擦モデルを用いて、クーロン摩擦では無くTriboForm摩擦でのシミュレーションを実施した。結果として、クーロン摩擦では未検知だったワレ不具合がTriboForm摩擦では検知することが出来た。よって摩擦、特にTriboFormに着目し本格的に検証を進めていくことになった。 2. TriboForm摩擦モデルの作成 検証を進めるにあたり、AutoForm提供のプリセットされたTriboForm摩擦モデルを使用するのではなく、まず三菱自動車での金型づくりに則した摩擦モデルの作成をおこない、それを基に検証を進めることとした。 三菱自動車にてシート材や潤滑剤など様々な資材、およびそれに付随するデータを準備しTriboForm社へ送付。TriboForm社にてスライド試験や表面測定を実施し、三菱自動車独自のTriboForm摩擦モデルを得た。 作成されたTriboForm摩擦モデルを使い、4つの異なる部品型(HOOD OTR、FR-DOOR OTR、RR-DOOR OTR車種A、RR-DOOR OTR車種B、すべて全周ロックビード工法使用)においてシミュレーションを実施し、各初回トライ結果とのワレ一致率を算出した。 ※AutoForm提供のプリセットされたTriboForm摩擦モデル(以下AF-Tribo)、三菱自動車独自のTriboForm摩擦モデル(以下MMC-Tribo) 結果として、MMC-Triboを適用することにより一致率が向上するものと向上しないものがあることが分かった。この結果を基に一致/不一致の要因をさらに調査していくことにした。 3. ワレの要因調査とシミュレーションでの再現 要因調査にはAutoForm-Sigmaを用い、複数のシミュレーション設定値に幅を持たせることで、どのデザインパラメータが、どの程度、部品の品質に影響を及ぼすかを特定する。プレス機/材料/金型の各項目の中から影響因子の洗い出しをおこない、トライボロジの領域であること、AutoForm-Sigmaの変数として設定可能であることを条件とした変数選定をおこなった。 【HOOD-OTR】 まず一致率の高いHOOD-OTRについて、車体前側コーナーのワレで比較すると、クーロン摩擦ではワレ検知なし、MMC-Triboではワレを検知している。 事前に選定した影響因子をすべてSigma変数化し、要因調査を行った。該当の車体前側コーナーのワレは平面ひずみ変形で、FLCオーバーによるワレである。最大主ひずみに対するSigma変数の寄与度を確認し、該当部のワレについてはパンチ金型粗さの寄与度が最も高いことが分かった。 その後も様々な調査を進めた結果、4つの異なる車種で最もHOOD-OTRの一致率が高かった理由は、パンチ金型粗さが実金型の金型粗さに近かったことが要因であると推察した。 【FR-DOOR OTR】 次に一致率の最も低かったFR-DOOR OTRについての調査を行った。FR-DOOR OTRのハンドル部において、実機ではワレが発生している。一方シミュレーション上では、クーロン摩擦およびMMC-Triboどちらもワレ検知なしとなった。 次に、HOOD-OTRと同様に、事前に選定した影響因子をすべてSigma変数化し、要因調査を行った。このハンドルのワレ部分についてはFLC未満で発生しており、これは板厚減少によるワレであると判断した。板厚減少に対するSigma変数の寄与度を確認すると、該当部のワレについてはパンチ金型粗さ、ダイ金型粗さ、パンチ半径粗さの順に3つの因子の寄与度が高いことが分かった。 その後も様々な調査を進め、パンチとダイそれぞれの金型粗さによる、成形途中での材料の流れが重要であることが特定された。また4つの異なる車種で最もFR-DOOR OTRの一致率が低かった理由は、パンチとダイの金型粗さをシミュレーションで再現できていなかったことが要因であったとの結論に至った。金型粗さを変えることで、成形途中での材料の流れの変化を正確に再現することが可能となり、未検知だった実機でのワレをシミュレーションで再現できるようになった。 ※MMC-TriboパターンA : パンチ金型粗さ/半径粗さ大,ダイ金型粗さ小 ※MMC-TriboパターンB : パンチ金型粗さ/半径粗さ小,ダイ金型粗さ大 4. まとめ 今回、三菱自動車独自のTriboForm摩擦モデルの採用により、実機のトライボロジ領域の再現、特に金型粗さの正確な再現をおこなうことで、未検知ワレの発生を防止できることが分かった。今後も継続して検証サンプルを追加していくことで、検知をより確かなものとし、最終的には未検知ワレ完全ゼロを目指す。 初回トライでの安定性の向上により、コスト損失を防げるだけでなく、その後の金型品熟にもしっかりとした時間を確保できるようになる。本取り組みの継続も含め、伝統と革新を融合させたものづくりで三菱自動車工業株式会社は未来へとさらに力強く走り続ける。 - [FAWフォルクスワーゲン長春:AutoForm Assemblyを用いたレーザ溶接の熱影響に関する調査](https://japanforming.com/faw_laser_welding_assembly/) - レーザ溶接は、従来のスポット溶接よりも、高い面品質、高速な溶接速度、優れた気密性、そして強固な溶接強度を提供します。そのため特に自動車の量産に適しています。シャーシ、ルーフ、ボディサイドパネル、ドア、ボディアセンブリといった大きなコンポーネントの溶接に広く活用されています。 しかしながらレーザ溶接は高温となるため、複雑な熱影響が生じます。高出力レーザの熱源によって溶接部の表面温度が急激に上昇・下降し、大きな温度差が生じることで熱弾性変形および塑性変形を引き起こします。 本調査では、FAWフォルクスワーゲンのサイマルエンジニアリング部署がAutoForm Assemblyのライン溶接を活用し、テールゲート外板アセンブリに対するレーザ溶接の影響を調べました。 AutoForm Assemblyライン溶接モジュールを用いたレーザ溶接変形の解析 AutoForm Assemblyでは、以下の3つの主要な物理パラメータのみを定義します: 1. 出力:レーザ溶接装置の定格出力 2. 変換効率:装置の状態を考慮した、レーザ定格出力の低減値 3. 速度:溶接速度 加熱・冷却サイクルによる熱負荷の結果は、後処理中に計算されます。比熱容量や熱伝導率など、部品に関連する熱パラメータは、材料カードに事前統合されています。 前処理工程 前処理工程では、いくつかの手順が必要となります。 まず、材料の板厚、物理モデル、熱力学的特性などのパラメータを設定します。このシナリオでインポートしたサブアセンブリを図1に示します。 図1:AutoForm Assemblyへインポートしたサブアセンブリ 工程計画ステージにて、工程数とアセンブリ順序を決定すると、アセンブリシーケンスツリーが作成されます(図2)。 図2:アセンブリシーケンスツリー 挿入や拘束の工程では、接合時の安定性を担保するため、挿入順序(図3)、挿入方向、配置、およびクランプ設計を定義する必要があります。 図3:各工程のクランプ条件 接合にはスポット溶接とライン溶接の両方を用います(図4)。 図4:黄色の線は溶接定義を示しています(右側は拡大図) AutoForm Assembly R12では、レーザ溶接熱モデルの過渡的効果を組み込むことでシミュレーション精度が向上します。レーザ溶接後の冷却過程の熱負荷を段階的に適用することで、ライン接合部の進行を段階的に追うことができるため、解析結果が製造現場の実環境をより忠実に反映できるようになります。 シミュレーション結果の解釈 図5は寸法結果を示しています。レーザ溶接境界付近では、アウターアセンブリには-X方向に最大1.7mmの変形を確認できます。この偏差はヘミング工程やロールインの結果に影響を及ぼします。 図5:アウターパネルの変形 シミュレーション結果の検証 レーザ溶接後、アウターパネルのアセンブリをブルーライトでスキャンすると、-X方向における著しい変形が確認されました。全体的な傾向および実際の測定値は、図6.1および図6.2に示す通り、シミュレーション結果と非常に一致しています。 図6.1:アウターパネルの変形をスキャンによって確認 図6.2:スキャンとシミュレーションの比較 テールゲートとリアバンパーのアセンブリでは、変形部の付近のクリアランスが他の領域よりも大きく、明らかな欠陥が生じています(図7)。 図7:テールゲートとリアバンパーのクリアランス不良 バーチャルトライアウトと見込み補正 AutoForm Assemblyでは、レーザ溶接による変形を正確に予測し、アセンブリ工程で調整できるかを評価することで、偏差の見込み補正が可能になります。本事例では、シム調整とティーチング(約2mmの調整)により寸法精度が向上しました。しかしながら、図8に示すように、過度なシム調整は面ひずみを引き起こす可能性があります。 図8:シム調整による精度向上および面ひずみ スプリングバックを考慮することで、最適なアセンブリ結果を得るために必要なターゲット形状を決定でき、Aクラス外観不良を回避することが可能となります(図9)。 図9:バーチャル補正による変形制御 まとめ 自動車製造では、レーザ溶接後の変形が依然として問題となっています。部品設計にて事前見込み補正を行うことが、変形を軽減する上で最も効果的な方法となります。 FAWフォルクスワーゲン長春工場サイマルエンジニアリング(SE)部署のチームリーダーであるチャン氏は、これらの調査を通して、多くの気づきを得ることができ、そのことに大きな意義があると感じ、次のように述べています。「この調査を通じて、AutoForm AssemblyがSEステージでレーザ溶接工程を正確にシミュレーションし、変形を予測できるだけでなく、部品設計段階の見込み補正プロセスを簡素化できることも学びました。さらに、治具調整をバーチャルにサポートすることで、リスク、コスト、リードタイムを大幅に削減できます」 著者紹介: 著者:Zhang Peiran 所属部署:FAWフォルクスワーゲン長春工場、T-G-VSC、製品技術・立ち上げ担当部門 オートフォームチャイナ、サム・ウー氏のご協力に感謝申し上げます。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm2025」開催レポート:その2 株式会社SUBARU様](https://japanforming.com/autoforum2025_subaru_report2/) - 2025年10月31日(金)、ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会議「AutoForUm 2025」を開催いたしました。ユーザー事例発表のひとつとして、株式会社SUBARU 車体生産技術部 プレス技術課 プレス成形技術係 係長 天野 雄太様よりAutoFormの活用事例紹介についてご講演いただきました。本記事では発表内容の概要をお伝えします。 SUBARUにおけるAutoFormの活用事例紹介 1998年にAutoForm導入以降、株式会社SUBARU(以下、SUBARU)では成形シミュレーションの高度化に取り組んでいる。 現象の本質を捉え論理的に解き明かし、より確かな技術を着実に構築してきた結果、初品パネル精度向上に成功している。現在では量産不具合の削減にも取り組んでいる。 1. AutoFormの活用 SUBARUはAutoFormの活用範囲は広く、社内量産部品の全て(1車種あたり約30部品)で解析検討を行っている。材料は引張強さ270Mpa級~980Mpa級の鋼板、5000系・6000系のアルミニウムまで幅広く材料モデルを構築している。また、直近のいくつかの取り組みの成果により、PNL SD OUTの様な大物部品に於いても初品寸法精度90%前後を安定して維持している。 部品全般に於いては金型サプライヤーの協力もあり、社内量産部品では初回ホームライントライで平均寸法精度93.6%と非常に高い精度を達成した。 2. SUBARUの取り組み SUBARUは物事の本質を論理的に捉え、確かな技術の構築を進めている。CAEと現物の双方の現象を見極め考察し、どちらが現象に寄り添うべきか判断し、よりよい金型づくりに取り組んでいる。 CAEを現物に近づける例として、材料データの構築を紹介する。量産材のバラつきに対応するため、定期的に引張試験を実施。また鉄鋼材は引張強さごとに、アルミ材はメーカー・種類ごとにモデル化を行っており、この材料モデルと解析パラメーターを金型サプライヤーにも提供している。 反対に、現物をCAEに近づける例として金型構造を見直している。実際の金型のたわみを計測したところ最大1mmの変形が確認できましたが、この挙動を再現するにはプレス機を含めた構造解析が必要となり解析時間が非常に長くなってしまう課題があった。そこでプレス機を含めた構造解析の解析を見直し、必要なパラメーターだけを抽出して簡易化したことで日程を短縮しつつ解析精度を維持することができた。その結果、開発の日程に影響なく金型のたわみを0.3mmまで低減できた。これはPNL SD OUTの寸法精度向上に大きく貢献している。 予測精度向上とともに製品の寸法精度向上に寄与するデジタルでの見込み補正は、前回発表から継続して実施されており、近年では測定結果データを利用した一般見込み補正機能も活用している。現物のパネルが複雑にスプリングバックした際に、CADを用いた手動の織り込みでは、非常に時間がかかってしまうものが、測定データを活用した見込み補正を使用すれば、短時間で思い通りの見込みを実施することができる。この機能のおかげで、机上だけでなく金型の仕上げ段階でAutoformの更なる活用が期待できる。 また寸法精度向上の次の課題として、外観面品質についてもデジタル化による定量評価技術を構築し、現物とCAEを同等の基準で評価することが可能となっている。机上検討段階で外観に関する不具合を事前に予測し、つぶし込むことで外観による改修費低減を達成している。 3. 今後の展開 SUBARUは魅力ある車をお客様へ届ける為に、現状に満足せず新たな課題に挑戦している。 その一つとして、意匠面の精度向上が挙げられる。近年増加傾向にある扁平部品には自重の影響やスプリングバックによる落ち込みが課題である。扁平部品への見込みは難題だがAutoForm-Compensatorを活用し扁平部品に適した見込み方法を検証している。 次に、アルミ部品の更なる精度向上、具体的には開発中の予期せぬ割れが課題である。割れを事前に予測又は対策を講じられるよう、解析精度を上げる必要がある。これには材料モデルの更新が必須であり、特に降伏曲面に着目している。SUBARUでは定期的に材料データを更新するべく社内に2軸引張試験機を導入した。社内だけでなくサプライヤーに対しても材料モデル構築を支援していく。 3つ目に、机上検討の効率化がある。これまでの取り組みによる工数の増加の影響で、フロントローディングを担う机上検討部隊のリソース不足が課題となっている。リソースにも限界があり個々の作業を低負荷にしていく必要がある。その対応策として、SUBARUとAutoFormサロゲートAIについての協業を進めている。 最後に設計余裕の適正化がある。安定した量産を実現する為に設計余裕は必要であるが、その余裕代をどの程度確保すべきか判断に課題がある。商品性を落とさない為にも適正な設計余裕代を把握する必要があるが、それには量産時の割れやしわの発生を抑える為に量産ばらつきを把握する事が重要である。そこで、SUBARUでは現場データとCAEを結びつける取り組みを強化している。 具体的には、プレスラインに流入量検査装置を設置し、量産時の材料流入量をリアルタイムで計測・記録している。このデータを基に変動要因を分析し、設計余裕の適正化に活用していく。 また、この計測データをAutoForm-Sigmaと連携させ、実際の量産ばらつきを反映したリスク評価を実現していく。これにより、設計段階で量産時のリスクを事前に把握、低減できるようになり、商品性と生産性の両立した魅力的な商品を提供していく。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm2025」開催レポート:その1 株式会社ナガラ様](https://japanforming.com/autoforum2025_nagara_report1/) - 2025年10月31日(金)、ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会議「AutoForUm 2025」を開催いたしました。 ユーザー事例発表のひとつとして、株式会社ナガラ 代表取締役社長 武原 謙二様、第一製造部部長 見野 豪則様より、熟練者の経験を若手エンジニアに継承するためのコミュニケーションツールとしてAutoFormをどのように活用されているかについてご講演いただきました。本記事では発表内容の概要をお伝えします。 変革の時代を渉る ~ AutoFormで更なる飛躍を!~ 1. AutoForm導入の背景 創業1980年の株式会社ナガラにおいては、2008年に他社成形シミュレーションソフトウェアを導入するまで、成形性の検討、工程計画、精度玉成等の全ての業務を先人達の経験や過去の実績を頼りに行っていた。結果として、トライ&エラーの多発、工数増大が常態化していた。 2008年に導入したシミュレーションソフトウェアの利用により、シミュレーション結果数値をもって、成形性の保証、工程計画の立案等、プロアクティブにお客様への提案が可能となった。ただ、金型製作においては、シミュレーションの結果があるがために、結果の善し悪しが注目され、そもそもの金型側の問題を棚上げにしてしまうという新たな課題が生まれた。またシミュレーションへの期待が大きくなるにつれて、実機との比較において発生する差異についての説明責任が求められ、その検証のためにシミュレーションを多数回すためのモデル作成工数が増加し、社内においてフラストレーション増大に繋がった。 その対応策として2015年に導入したAutoForm-DieDesignerによりこれまで行うことが出来なかった様々な工法・工程検討が可能となり、提案力が飛躍的に向上した。モデリング工数の劇的な低減、圧倒的なシミュレーションスピードにより、発生し得る不具合の事前検証・対策立案により、金型の修正工数が大幅に削減された。また型製作のフロントローディング化により、SE検討業務の拡大にも対応可能となった。 2. AutoForm活用実績 【一貫した成形性確認と工程検討】 AutoForm-DieDesignerにより、製品データからの金型モデル作成、シミュレーション実施、DCR提案、工程計画の作成を一貫して完結するようになり、検討効率と信頼性の向上を達成している。 【SE検討】 2010年以降、製作のフロントローディング化が進むにつれ、金型メーカーが製品に対しての改善提案を求められる様になり、金型受注と同時に、このSE検討も担う事が多くなってきた。この頃から、ナガラでは、AutoForm-DieDesignerによるモデル作成とシミュレーションを扱える人材を育成してきた。AutoForm-DieDesignerモデル作成はCAD設計者ではなく、若手を割り当て、現物のプレストライに精通した人材をシミュレーション評価者とし、評価者からのフィードバック、密接なコミュニケーションを通じて若手の教育に力を注いでいる。 【スプリングバック検証】 玉成難航が予測される超ハイテン用の金型についてもフロントローディングが求められ、製品形状が決まる前の仮型の製作とシミュレーションを組み合わせた、玉成の超早期化にも取り組んでいる。型構造の違いにより仮型と本型のスプリングバック量は異なるものの、精度玉成作業を大幅に前倒しすることが可能となり、リードタイム全体の大幅削減を達成した。 今では、SE検討から金型設計製作、トライアウト、金型移管まで一貫した金型プロジェクト案件を受注するなど、多くのお客様から信頼を寄せられている。 3. AutoForm導入効果 多くの現場で目的化しがちな「解析精度100%」。しかしそれは本当にビジネスの成果に繋がっているのだろうか? 結果が合っているか、外れているかは重要ではない。どう対策を打ったか?これからどう打つのか?という「対話」を、シミュレーションを軸に考えていくことが重要であると武原社長は話す。株式会社ナガラでは、AutoFormを導入し、常日頃考えているのは、そのスピード優位性を生かし、「当たる/当たらない」のシミュレーション結果100%の精度追求ではなく、製品、工程等の様々な状況を想定し、いかに直しやすいかを考え、どちらに外すかを考えておくことが重要と考えている。 4. ナガラが目指すシミュレーションの役割 株式会社ナガラが目指すシミュレーションの役割は、製品形状・材質、金型構造、充当機の環境など、様々な状況において製品精度は変化することを理解し、現物とシミュレーション結果について、幾度となく論議する事で、遠回りとなる精度追求の時間を減らし、「効率的に問題を解決する道筋を作ること」であると考えている。また、デジタルツールの活用により、会社として新しい成形技術検討への挑戦や、シミュレーション結果をもとに現場とのコミュニケーションを深め、お客様に対しては、付加価値がある提案内容の実現をさらに目指していく。最後に、各人が「楽しい」「面白い」と思えるようになることが最強のスキルアップであり、金型メーカーの枠を超えたエンジニアリングカンパニーへと進化していく。 - [航空宇宙案件の事例:SATE社がシミュレーションを活用し設計の技術力を強化](https://japanforming.com/sate_aerospace_stampimg_simulation/) - 過去の記事では、航空宇宙部品サプライヤーであるSATE (Senior Aerospace Thermal Engineering) 社(英国拠点の航空宇宙部品メーカー、ハイテク部品・システムの国際的なメーカーであるシニアplc社傘下企業)が、新製品導入(NPI)業務にプレス成形シミュレーションを取り入れた事例をご紹介しました。本稿ではSATE社の別の事例をご紹介します。 SATE社技術部門には、工程設計とプロジェクト管理に精通した製造技術者と新製品導入(NPI)に対応する技術者がいます。さらには、金型設計の豊富な経験と高度な技能を有する金型技術者も在籍しています。 SATE社は製品の設計よりも製造が中心となっていますが、その技術力を活用し、製品開発段階にて的確な変更提案を行うことで、部品の成形性を改善させています。従来はエンジニアリングの知見のみに基づいて提案を行っていましたが、オートフォーム社のシミュレーションソフトウェアの導入により、このプロセスは革新的な変化を遂げました。本稿ではこの事例を具体的にご紹介します。 図1: お客様から提供されたCADモデル (板減 ~30%) でプレス成形工程のシミュレーションを実行 お客様よりSATE社へお問い合わせがありました。新規設計した部品について、自社のハイドロフォーミング設備では深さの要件を満たすことができないという相談です。 この部品は未だ製造準備段階であったため、見積依頼書(RFQ)にはCADモデルと基本的な公差の情報しかありませんでした。提供されたデータを調べたところ、部品の幅方向の大部分にわたって走る深い曲線と強度用の形状が存在しました。 SATE社では、オートフォーム社と共同で、冷間プレス成形と熱間プレス成形の両方を評価しました。材料の特性評価にかかるコストや時間を考慮し、AutoForm材料ライブラリに収録されている材料データで代替することにしました。 高温用の材料の特性評価にかかるコストは1万ポンド(約200万円)以上と推定されるため、フィージビリティ検討段階で評価を行うことは現実的には困難でした。そこで代わりに、最も近い材料モデルを用いて部品を評価することにしました。この材料が指定した材料特性とは完全に一致しないことは認識しつつも、その機械的特性は非常に類似していました。特にAutoFormの材料は伸び率が低いため、板減がより速く進むと予測されます。シミュレーションにて板減レベルを許容内に収める事で、実際のプレス部品が改善されると予測したためでした。それでもなお、初期設計での最良結果でも28%を超える板減を示しました。 さらに、熱間の工程ではスプリングバックが生じないため、シミュレーションではこの要素を除外できました。これによりシミュレーションを簡素化し、成形性と板減のみを集中的に検討することができました。 お客様は当初、成形性を向上させるための設計変更に前向きでした。初期のシミュレーション結果から、成形性、板減、スプリングバックを考慮した場合、熱間プレス成形が最もリスクの低いプロセスであることが明らかになりました。しかし部品を単一工程で成形するには、強度用の形状を変更すべきだと判断しました。この熱間プレス成形の提案をお客様に提案したところ、仮承認を得られ、SATE社はAutoFormで設計を再検討することができました。まず問題のある形状を完全に削除し、規定寸法を遵守しつつ成形性を向上させる代替形状をシミュレーションで反復検討しました。 図2: 既存の形状と提案した形状の比較断面図 さまざまな設計案を検討した結果、SATE社では既存設計において2つの半径をつないでいたほぼ垂直な壁を変更することに決定しました。代わりに、半径の接点における角度を当初の9度から約20度に拡大する案を提案し、10mmの深さの要件は維持できました。形状両端の進入角度も緩和され、仕様を満たす新規形状が実現しました。 設計変更の検討後、設計図をお客様へ送付しました。お客様は変更点を素早く確認すると、これに同意し、SATE社への発注を決定しました。 設計変更により、重要な懸念は解消されました。しかし、製造開始前に、金型サーフェスをさらに調整しなければなりませんでした。具体的には、ジョグル形状への圧縮を緩和するために、外側にビードを追加しました。その結果、フランジと新たな部位の間にできた凹形状で材料を伸ばし、しわや板余りを完全に排除できました。この不具合はシミュレーションにて予測されていたため、シミュレーションを活用すれば、不具合領域を事前に特定して解消することが可能であるという点を改めて気付かせてくれました。もしシミュレーションがなければ、金型を製作するまで、この不具合に気づくことはなかったでしょう。特に部品の受注数量が限られている状況では、多大な修正コストが生じていたはずです。 図3:ジョグル形状の材料が十分に伸びるように、最終部品形状の外側に追加されたビード形状 最後に検討すべき点は、強度用の形状とジョグル形状の両方が同じ比率で材料を必要とする事で、硬化と板減が生じ板減を緩和することでした。当初、板減は基準板厚の24%に達していました。この問題に対処するため、ブランクの強度用の形状周辺にカットアウトを戦略的に追加しました。この分割によって、材料が強度用の形状に流れ込み、最大板減を4.5%まで大幅に緩和することができました。 シミュレーションの活用で、材料の流入量を予測する事は非常に重要でした。それは最終製品形状に影響しない、カットアウトのサイズと位置をし、保証できたからです。 これらの取り組みにより、金型のトライアウトでは初回で合格できました。特筆すべきは、最初の製品からお客様に大幅な変更なしに提供できたことです。 図4: (左) オリジナル (右) 修正後の部品 図5 最終の金型を上記の画像に示します。SATE社では金型設計から初品検査および決定した工程の承認に至るまで、わずか4ヶ月でした。これはシミュレーションを活用することで、非常に短期間で実施できました。シミュレーションなしでは最低でも8ヶ月を要したことでしょう。さらに部品は全てSATE社で製造されました。 結論 結論として、シミュレーションを導入することで、SATE社には以下のメリットがもたらされました。 1. 迅速かつ正確な見積書を作成。 2. さまざまな成形方法の検討、長所短所の評価、そして最も費用対効果が高く最適な手法を素早く決定。 3. フィージビリティに関わる不具合について、形状変更の提案などを含め、お客様との効果的なコミュニケーションが可能。 4. 初回のプレス成形サイクルにて公差に見合う製品の取得が可能。 ※参照為替レート:1GBP = 208.96JPY(2025/12/19) - [英国SATE社:シミュレーションを活用した航空宇宙部品の設計・生産の推進](https://japanforming.com/aerospace_simulation_sate/) - はじめに シミュレーションソフトウェアは、自動車業界において長年活用されてきましたが、現在では航空宇宙業界においても、部品設計やプレス成形工程にて導入が進んでいます。 本稿では、英国に拠点を置く航空宇宙部品メーカー、SATE (Senior Aerospace Thermal Engineering) 社がシミュレーションソフトウェアを導入し、当初は想定しきれなかったさまざまな活用法を見出すまでの取り組みについてご紹介します。 SATE社について 1988年にジェフ・ミルトンとトレバー・ミルトンの兄弟によって設立されたSATE社は、2013年のシニアエアロスペース社による買収を通じて、航空宇宙業界のプレス成形分野における大手企業となりました。 同社は最大1000度に達する4台の大型熱間プレス成形機を保有しており、航空宇宙部品の製造に不可欠な熱間ブランク、熱間金型、熱間プレス成形に対応しています。これらのプレスは主にチタン合金向けに使用されています。 一方、熱間金型の急冷設備では、主にニッケル基合金の大型部品を加工しています。この複雑な工程では、部品を高温に加熱した後、急速に室温の金型へ移し、最終形状へ深絞りします。その後、小型プレス機でゆっくりと成形します。別途、熱処理に対応したアルミ加工設備では、ストレッチ成形、深絞り、フランジ加工などを行っています。 SATE社はプレス成形と断熱のソリューションを専門としており、生産工程の中でも特にプレス成形が主軸となっています。また断熱材についてもSATE社独自の技術力を有しています。油圧プレスを用いて薄板を剛性化・成形するほか、断熱材を挟み込むインナースキンやアウタースキンの製造にもプレス機を活用しており、これが同社事業全体の半数を占めています。 部品のトリミングには3台のレーザー切断機を活用しています。また、プレス成形、機械加工、非破壊検査のサポートサービスや、表面酸化物を除去する化学処理も行っています。 図1: オートフォーム社トム・スコットとSATE社ダレン・ゴフェリー SATE社従来のプレス成形手法 SATE社では数十年にわたり実施してきたプレス成形プロセスのワークフローがあり、そこでは部品設計をトライアンドエラーによる反復的なサイクルで行ってきました。新製品導入(NPI)プロジェクトでは、部署の担当者がブランク形状を推定し、プレス成形を行い、部品に不具合がないかを評価するといった手順を追っていました。そして次に、技術者がCADを使って、材料の調整、ブランクの再切削、部品の再成形を、目標とする結果が得られるまで繰り返します。 このトライアンドエラーには、通常、約8回のサイクルを要し、このような試験には別途材料も調達しなければなりません。 熱間プレス成形の85~90%にて高価なチタン合金Ti-6-4(Ti6Al4V)を用いるため、このトライアンドエラーには膨大なコストがかかります。Ti-6-4シート、2m×1m×1mmのサイズで約2000ポンド(約41万円)かかり、1枚あたり製造できる部品は中型サイズのものが約4個です。試験には2枚のシートが必要であり、またエンジニアリング費用やレーザー切断のコストも加わるため、プレス前にかかるコストは膨れ上がり、優に5000ポンド(約100万円)を超えることもあります。 しかし問題は成形前のコストだけではありません。特殊な熱間プレス成形でも、プレス機で35~40分もの間、部品を高温で加熱するなど、多大なコストが生じます。製品が要求を満たすまで同じプロセスを繰り返すため、NPIプロジェクト1件あたりのコストは総額数万ポンドに達する場合すらあります。このプロセス全体には数週間もの期間を要するため、NPIが遅延するとコストはさらに膨らみ、益々お客様への訴求効果がなくなります。 トライアンドエラーの手法では、基本要件以上に部品を改善することが難しくなります。部品が最低限の要件を満たすと、さらなる改善を追求するには時間やコストが上乗せされるため、実際には難しいです。ある領域の軽微な板減といった問題については、ブランク形状や成形パラメータ(速度やプレス荷重など)を最適化するにはコストがかかるため、よく見過ごされてしまいます。 シミュレーションの導入 最終段階に至るまでの時間とコストを削減する上で、トライアンドエラーの手法に代わりシミュレーションを導入することはSATE社にとって長年の優先課題でした。これによりNPIプロジェクトを迅速に進めることができるだけでなく、新規案件の獲得においても有利に働きます。プロセスの実効性、金型規模、関連コストについて包括的な評価を顧客に提示できることは、とても大きな利点となります。 しかしながら、シミュレーションの導入について、経営陣は当初否定的でした。SATE社では創業以来、プロトタイプのみの手法を用いてきたため、このシミュレーションは全く未知のものでした。この不安は、AutoFormで設計した金型を用いて最初のプレス部品ができるまで続きました。 シミュレーションの効果 シミュレーションはSATE社のプロセスに革命をもたらし、従来の手法とは比較にならないほどのメリットをもたらしました。主なものを以下に挙げます。 1. 高精度なTi-6-4モデル: AutoFormのTi-6-4モデルは700度においても非常に精度が高く、成形性とフィージビリティの評価に大いに役立ちました。そして迅速に信頼できる結果を得ることができました。 2. 使いやすさ: SATE社は図面をもとに製造を担う企業であるため、設計業務には重点を置いておりません。AutoFormを扱うのは主に製造技術者や金型技術者であり、実践的な応用には優れていますが、プレス成形に関する理論的知識レベルにはばらつきがあります。ただしAutoFormは使いやすいソフトウェアであるため、SATE社の技術者たちは、その使い方について、自己学習やトレーニングを通じて1年で習得することができました。 3. 事業成長: AutoFormのシミュレーションではさまざまなプレス成形を正確に再現できるため、プロジェクト入札では有利に働きます。設計のフィージビリティを詳細に評価することで、実物を試作するよりも前に、ライブシミュレーションや動画を通じて特定の工程を説明し、詳細な仕様を提供することが可能となりました。ブランク展開は、成形性の向上と材料コスト削減の両面で、極めて重要な役割を担っています。こうしたシミュレーションの取り組みを通じ、SATE社は顧客の信頼を勝ち得て、従来以上に多くのプロジェクトを獲得できるようになりました。 4. ソフトウェアでの金型設計の開発: AutoFormが評価されるべき点として、ソフトウェア内で金型設計を直接開発・修正できることが挙げられます。他の手法では、修正はCADで行う必要がありますが、AutoFormの金型設計機能を活用することで、大幅な時間短縮を実現できるだけでなく、金型工場で修正を検討することもできます。 まとめ SATE社はシミュレーションをワークフローに組み込むことで、プレス成形の精度と効率が飛躍的に向上しました。製造プロセスの合理化によりトライアンドエラーのループが大幅に削減し、バーチャル上で反復を行うことで、品質を損なうことなく、厳しい納期に対応することが可能となりました。 シミュレーションは生産コストの削減のみならず、バーチャルの環境で潜在的な課題を特定し対策を講じることで、製品品質の向上にも寄与しました。また、材料の無駄を削減することで製造プロセス全体の持続可能性を高めました。 要約しますと、SATE社はプレス成形シミュレーションの導入により、アジャイルかつ将来を見据えた体制を構築し、また資源効率を重視する姿勢を確立することで、競争力をより一層強化できました。 ※参照為替レート:1GBP = 208.4JPY(2025/12/11) - [メコネット社、プレス成形業界に進出:シミュレーションによるコスト削減の定量化](https://japanforming.com/mexonet_simulation_stamping/) - メコネット社は、北欧に拠点を置く高品質プレス部品メーカーであり、林業用収穫車、オフロード車、その他様々な用途の製品を提供しています。ジョンディア、AGCO、三菱ロジスネクスト、ロクラといったOEMにプレス部品の製造に必要な金型を提供しています。 メコネット社は「革新を共に築く」というモットーを掲げ、設計から量産に至るまでの全工程において、顧客と緊密に連携しています。顧客の目標達成に向けて金型設計と解析を支援する上で、シミュレーションが重要な役割を果たしています。 図1: メコネット社では革新を共に築き上げます ・歴史的観点から読み解くメコネット社のシミュレーション 20年前、メコネット社は業界の慣例に従い、プレスの専門家に頼りながら高品質な金型設計を行っていました。基本のデザイン案を作成後、試作と修正を繰り返しながら、徐々に改良を加えてゆくのです。しかしこの手法は時間とコストがかかるため、納得のいく結果を得るには、膨大なリソースが必要でした。 図2: トラクタのフェンダ部品 図 3: エンジンフードのサポート メコネット社では金型の品質と効率を向上させるため、2004年に手法の見直しを行い、プレス成形シミュレーションソフトウェアの導入に至りました。同社は自動車業界以外でプレス成形シミュレーションを導入した初めての会社です。現在、メコネット社は部品の設計から取付まで顧客と緊密な連携を図り、プレス部品の品質を担保しています。 「今やメコネット社のプロセスには、シミュレーションが欠かせません」と、メコネット社技術&NPI担当マネージャのユホ・ピルネス氏は述べています。 ・メコネット社におけるシミュレーションの役割 シミュレーションは現在、メコネット社のプロセスに不可欠です。まず、顧客が提示するデザインを希望通りに作り込むことができるか、その実現可能性を評価することから始めます。たとえば、顧客が1つの金型で深絞り部品の製造を希望する場合、メコネット社のエンジニアがデザインを解析し、顧客と協力して、1つの金型で部品全体をプレスできることを確認します。 「革新を共に築く」というモットーを体現するメコネット社では、設計部門とトライアウト部門が緊密に連携し、顧客とも密接に協力しています。この協働体制により、従来の部門間の壁が取り払われ、高品質な部品を期日内に納品できるプロセスを実現しています。現在、メコネット社はアルミ、高強度鋼(HSS)、ステンレス鋼の深絞りにおいてシミュレーションを活用しています。 メコネット社では、シートカット、深絞り、3Dレーザーカット、機械切削、洗浄、ロボット溶接、リベット接合など、包括的な工程の自社生産に対応しています。小さな部品から最大3000mmの大きな深絞り部品に至るまで、多岐にわたる部品にシミュレーションを活用しています。 ・シミュレーションを活用することの利点 メコネット社が数多くの入札を勝ち取り、常に納期を順守し、また納期短縮を図る上で、シミュレーションは重要な役割を果たしてきました。具体的には以下の利点が挙げられます。 1. プレス成形のあらゆるニーズに対応するワンストップショップ メコネット社は、設計から量産に至るまでの全工程において、顧客をサポートします。部品形状からの金型設計、修正作業への協力、工程設計や金型設計の支援を行います。その後、メコネット社の生産ラインに金型を設置することで、すべてのフローがシームレスにつながるワンストップショップを実現しています。 図4: トラクタのキャビンフロア 2.金型コストの減少 顧客は通常、最終製品の機能は維持しつつも、部品点数を最小限に抑えるように希望します。これにより溶接などの追加工程が不要となり、アセンブリも容易になります。 メコネット社ではシミュレーションを有効活用することで、この分野に強みを有しています。複数の部品をひとつの深絞り部品にまとめ、さらにプレス成形もひとつの金型で完結させることができます。これにより、生産は絞り型の工程へ集約され、その後レーザートリムを経て最終製品となります。 ある事例では、メコネット社はフランスの顧客向けに部品個数を7点からわずか1点に削減しました。その顧客は、その後もメコネット社と引き続き取引を続けています。 3.レーザー・カットの利点 自動車業界の生産量は極めて多いため、レーザーカットは必ずしもコスト効率が優れているとはいえませんが、生産量が少ない産業用途では有効活用できます。メコネット社では部品点数と総生産量を削減することで、レーザーカットを工程へ効果的に組み込んでいます。同社では任意の形状をプログラムし、固定してレーザーで切断することができ、絞り型の工程後にレーザートリムを1回行うのみで、最終部品を完成させることができます。 「メコネット社では、80%以上の案件にて、ワンショットのトライアウトを実現しています」と、メコネット社シニアデザインエンジニアのユルキ・ヒルヴォネン氏は述べています。 4.ワンショットのトライアウト メコネット社では、80%以上の案件において、ワンショットでのトライアウトに成功しています。これは意義深い成果です。なぜなら、トライアンドエラーを繰り返すことこそ、プレス成形プロセスにおいて間違いなく最もコストと時間を要するからです。 図5: 部品の角部を修正し、半径を増やすことで、われが解消しました持続可能性 多くのコスト削減策は、持続可能性にも好影響をもたらします。たとえば、メコネット社は部品の板厚を最適化し、製品1点あたり15キログラムの鋼材を削減しました。これは形状と板厚の最適化、ならびに高強度鋼材の採用によって達成しました。 鋼材1キログラムはCO2排出量2キログラムに相当します。この取り組みにより製品1点あたり30キログラムのCO2を削減できました。特に生産部品の点数が多いことを考慮すると、重量削減はカーボンフットプリントの大幅削減に直結します。これはシミュレーションがコスト削減に有効なだけでなく、廃棄やCO2排出量の削減を通じて、企業の環境目標達成にも貢献できることを示しています。 まとめ シミュレーションは、メコネット社のプレス成形プロセスにおいて不可欠なものとなっています。プロセス全体をシミュレーションすることで、部品の修正、スプリングバックの結果、面ひずみなどの課題を顧客と事前に協議し、対応することが可能となります。また、安定した量産を実現するために、プロセスのロバスト性を解析することで、実部品の製造開始前に結果を予測することができます。これらの取り組みにより、同社はコスト、工数、時間の削減を実現しています。ワンショットのトライアウトは、FormingWorld.comコミュニティから称賛を受けるに値する成果です。メコネット社の皆様、素晴らしい成果をありがとうございました。また、この有益な投稿を共有いただき、心より感謝申し上げます。 - [プレス成形工程のトライボロジシステム - 数値シミュレーションにおける表面粗さの影響](https://japanforming.com/tribological_system_simulation_results/) - プレス成形した部品の品質は、成形中に作用するトライボロジや摩擦条件と直接関係します。摩擦条件は、シート材、型材、潤滑剤、表面粗さ、法線力、変形速度、その他の要因によって異なり、このような要因の組み合わせをトライボロジシステムと呼びます。トライボロジとは、相対運動を伴うサーフェス間の相関関係およびそれに伴う現象を扱う科学技術とヨストによって定義されています(1966年)[1]。ヨストはまた、この現象は、たとえば走行中の自動車表面に対する空気の接触など、運動が生じるほぼ全ての界面において存在すると報告しています。 最近の研究によれば、摩擦に関連するコストは、部品の最終生産価値の約5%を占めるとされています[2]。また1966年のヨスト[1]の報告書では、トライボロジは化学、物理学、固体力学、熱伝達、材料科学など複数の分野から成ると示されています。さらにこの報告書では、世界の原油消費量の約10%が摩擦の対処に費やされていることに言及し、経済的・環境的観点からトライボロジの研究が不可欠であることを指摘しています。ホルムバーグら(2017年)[3]は、トライボロジが世界のエネルギー消費、コスト、排出に与える影響を評価する研究を実施しました。この研究は運輸、産業、住宅、サービス業界を対象としています。その結果、世界のエネルギー消費量の23%が摩擦を伴う接触に起因しており、そのうち20%が摩擦の対処に、3%が摩耗した部品の交換用部品の製造に消費されていることが判明しました。また、表面処理、材料、潤滑の技術進歩により、摩擦関連の損失に伴うエネルギー消費を15年間で40%、8年間で18%削減できる可能性があると報告しています。 数値摩擦モデルの研究は1980年代に始まりました。ビンとルオ(1988年)[4]は有限要素法を応用し、応力分布と見かけの摩擦の予測を試み、実験によって現象の存在を実証しました。ホルら(2015年)[5]は、ミクロな表面変化に基づく配座解析に、マクロ・スケールの摩擦モデルを提案しています。現在、プレス成形工程のトライボロジ条件をシミュレーションすべく、ソフトウェア上で金型、シート材、潤滑にパラメータを割り当て、より現実的な表面状態を再現する新技術が提唱されています。これらのサーフェス間の相対運動と相互作用によって表面粗さが変形し、プレス成形シミュレーションで使用する摩擦係数が決まります。 本稿の目的は、ブルーニング・テクノメタル社研究開発部門の研究成果を提示し、議論の材料とすることです。それにより、シミュレーションで用いる摩擦と実際の摩擦がより同等に近づき、より現実的でより複雑なトライボロジモデルが構築できることを期待しています。 トライボロジシステムについて 本研究において、トライボロジシステムのシミュレーションに使用した型材は、焼入れと焼戻しの処理を施したAISI D2鋼材(硬度約59±1 HRC)で、その組成は表1の通りです。金型は手作業で研磨し、フォーム金型に広く用いられるCrAlNコーティング処理を施しました。数値シミュレーションに使用したシートは、冷延および溶融亜鉛めっきを施したCR4級鋼材であり、初期直径160mm、厚さ0.65mmで、最終形状は図1に示す通りです。 図1: シートの直径および形状 (a)、最終部品 (b) 表1: 金型鋼材(AISI D2)の化学成分 材料の機械的特性評価には、JIS Z 2201:1998に準拠した5号試験片を用いました。表2には、シートの圧延方向に対する3方向(0度、45度、90度)の引張試験結果を示しています。 DIN EN ISO10113およびASTM E-517を適用し、塑性異方性係数と加工硬化指数を測定しました。その結果を表3に示します。 シミュレーションに設定するトライボロジシステムのデータは、機械特性の他、シート/金型の表面粗さも必要です。ブルーニング・テクノメタル社で実施した先行研究によると、金型粗さは1.3 µm(標準偏差0.04 µm)、シートの表面粗さは1.6 µm(標準偏差0.09 µm)です[6]。カラパナサミーら(2014年)[7]は研磨仕上げ金型に0.08 µmの表面粗さを用いています。またホルら(2016年)[8]は実験において溶融亜鉛めっきシートで1.35 µmの粗さを使用しています。したがって、TriboForm®ソフトウェアを用いてこの3つの金型粗さプロファイルを評価しました。 ホルら(2016年)[8]は、ストリップ引抜きタイプの摩擦試験において、潤滑量0.5 g/m²および1.2 g/m²を使用しました。一方、シグバントら(2018年)[9]は、自動車用プレス部品のケーススタディにて2 g/m²を用いて、シミュレーションと実験を実施しました。ホルら(2017年)[10]は、シートの両面にそれぞれ0.6 g/m²および2 g/m²の潤滑量を適用し、製品の最終品質に対する潤滑量の影響を分析しました。 表2: 材料の機械的特性 表3: 各圧延方向の係数「n」および「r」係数 図2: 金型表面のトポグラフィ、表面粗さは(a) 0.08 μm、(b) 0.4 μm (b)および(c) 1.3 μm 本研究では、余剰変数を排除するため、潤滑を定量の1.2 g/m²で検討しました。 実験計画 本研究では、潤滑量を1.2 g/m²、シートの表面粗さを1.6 µmと固定し、各種ケーススタディを実施しました。金型の表面粗さ(0.08 µm、0.4 - [アセンブリ検証:ホワイトボディ(BiW)製造分野にデジタルプロトタイピングが到来か?](https://japanforming.com/biw_assembly_simulation_automotive/) - オートフォーム社では、車体製造の効率化を提唱し、納期短縮とコスト削減を究極まで実現することを目標に定めています。 この取り組みの第一歩は、車体設計から始まります。次に製品・工程技術部門では、設計された車体のデザイン全体をサブアセンブリに分割します。それをさらに単品部品へと分割することで、製造の負担を軽減します。 図1 -シミュレーション上の車体設計から単品部品へ、そして実際の車体製造へ 実際には、これらの製造工程は順序が逆となります。最初に単品部品を組み立てることでサブアセンブリを形成し、最終的には車体全体の完成に至ります。 製造工程の都合上、実部品は設計されたデザインとまったく同じにはなりません。しかし実部品はできるだけデザインに忠実であるべきです。では、差異はどこまで許容されるのでしょうか?GD&T部門では車体全体にコントロールポイントを定め、それを含む各諸ポイントを、サブアセンブリや単品部品に指定しました。寸法公差や曲率・平面度などのサーフェス特性の定義を通じて、最終製品の品質および機能性を担保することを目指します。 ここでは、これらの「制約条件」を満たすことができれば、すなわち目標を達成することができる、という考え方を基本としています。近年の車体は200~300個、あるいはそれ以上の単品部品から構成されています。それぞれの単品部品の製造段階において、予め定められた制約条件を満たすことが前提となります。 しかし単品部品が制約条件を満たしたとしても、それらを組み立てたサブアセンブリが規格に収まり、それをさらに組み立てた車体全体も規格に収まると、言い切ることができるでしょうか?この答えは、決して単純明快なものではありません! 某クライアントのアセンブリ技術部門では、サブアセンブリの製造ラインが既に稼働していましたが、そのサブアセンブリを衝突試験基準に適合させるため、急きょ変更を加えるという難題に直面しました。具体的には2箇所に補強材を追加する必要がありましたが、アセンブリ上の不具合が生じる懸念もあります。このリスクを軽減するために、あらゆる専門性を結集して取り組みました。 しかしながら、いかに詳細まで検討を重ねようとも、補強材を加えたアセンブリの初回トライアウトでは、不具合が生じることが判明いたしました。部品の穴の位置がずれるため、部品同士を正しく組み立てることができず、その結果、次のアセンブリ工程においてピンを挿入できないという不具合が生じるのです。 機密保持のため、実際の干渉の詳細画像をお見せすることはできませんが、それをバーチャル上で表現したもので説明します。 トライアウトでこのような問題が発生した場合、まず特定すべきは、不具合の原因が部品にあるのか、それともアセンブリにあるのかという点です。従来どおり、トライアンドエラーを繰り返しながら、無数の対策を検討した結果、最終的に解決策を見出すことができました。しかし、この原因究明に多大な時間とリソースを費やしたことで、コストが膨らみ、多大な遅延も招きました。 ここで根本的な疑問が生じました。この不具合を事前に回避する手立てはあったのでしょうか?そして、もしそうなら、どのような手段があったのでしょうか? これらの疑問を解消すべく、オートフォーム社に打診があり、現行の技術で解決策を見出すことができるのか、調査が始まりました。 まずアセンブリ技術部門にて工程設計を開始する時点まで遡りました。既に製造された金型やプレス部品、それらを組み立てたアセンブリを考慮しつつ、一から検討したのです。 その手順を図2に示します。 図2 – 工程解析ステップ ステップ1 – CAD-0形状を用いたアセンブリ工程の検証 オートフォーム社では、まずアセンブリ技術部門と同様に、この不具合がアセンブリ工程に起因するものであるかを検討しました。単品部品のCAD-0形状を用いて工程をシミュレーションし、アセンブリ部門が工程設計の初期段階で直面するシナリオの再現を試みました。通常、この段階では単品部品のプレス成形シミュレーションの結果は得られないため、手始めにCAD-0形状を用いました。 図3 – アセンブリ工程形状の入力設定 図3は、アセンブリ工程シミュレーションのさまざまな設定段階を示しています。図3aはアセンブリの3Dモデルにおいて、不具合が生じた穴を示しています。この穴の断面を図3b、cに示します。図3bは3つの部品のCAD-0断面を示しています。 オートフォーム社では2つのシミュレーションを実施しました。最初のシミュレーションでは、CAD-0の形状をそのまま使用しました。次のシミュレーションでは、すべての部品にオートフォームの推定機能で「妥当な」スプリングバックを適用し、変形した形状を作成した後、これをシミュレーションの入力データとして使用しました。この後者のシミュレーションは、現実の状態をより正確に反映しています。 この入力データは実際のアセンブリ工程を反映したものです。クランプの位置と閉じる順序、溶接スポットとその順序、サブアセンブリ部品の順序、そして金型形状は、すべて実際の工程と差異はありません。 両方のシミュレーションの結果から、アセンブリ工程に起因する不具合は確認されませんでした。 図4 – アセンブリ工程シミュレーションの結果 図4は、変形部品を設定条件に用いた後者のシミュレーション結果を示しています。特筆すべき点として、穴のエッジとピンとの間のクリアランスがわずかに減少していることが挙げられます(詳細は図4参照)。この微小な変化については、さらに調査が必要だと判断しました(次段階の検討事項)。特にプレス成形工程シミュレーションで検討した形状を用いてアセンブリ結果を評価する場合にはなおさらです。 ステップ2 – プレス部品のシミュレーション結果を用いたアセンブリ工程の検証 工程設定を変更せずに、事前にスプリングバックを推定した部品を最終検証したプレス成形シミュレーションの結果と置き換えました。この結果を図5に示します。このシナリオでも穴のエッジとピンとの干渉は検出されませんでした。 図5 – プレス成形シミュレーションの部品を用いたアセンブリ工程シミュレーション ステップ3 – スキャン部品を用いたアセンブリ工程の検証 上述の2つの解析後、納入された実部品のスキャンデータを取り、アセンブリ工程シミュレーションに活用しました。具体的には、プレス成形シミュレーションの部品をスキャンデータに置き換えました。その結果、図6に示すシミュレーションでは、現実で発生した干渉の不具合が正確に再現されました。 図6 - スキャン部品形状を用いたアセンブリ工程シミュレーション 図7に実施したすべての解析について要約します。 図7 - 調査の要約 ステップ2とステップ3の結果を比較すると、シミュレーションの部品は製造現場の実部品とは異なるという、論理的な結論が導かれます。ただし、どちらの部品も公差に収まります。なぜなら、公差外の部品は品質保証部門による受入検査の段階ですでに排除されているからです。 では、どの検証が足りなかったのでしょうか? 工程を見直すと、プレス成形シミュレーションでは、結果のばらつきを考慮していなかったことが、すぐに判明しました。ステップ2では、1つのパラメータセットのみのプレス成形結果を用いて、アセンブリ工程シミュレーションを行っていました。それによって工程パラメータのばらつきという「現実」を無視していたのです。 - [インプレッションテクノロジーズ社:ホットフォームクエンチング(HFQ)を活用した超高強度アルミニウムの軽量化](https://japanforming.com/hotforming_impression_technologies/) - プレス成形業界では、品質基準を満たす製品をできる限り効率的に製造することが最終目標として求められます。そのため、優れた材料や製造技術の研究が進められています。特に長年注目を集めてきた材料に引張強度が300MPaを超える超高強度アルミニウムがありますが、従来の製造工程では、この材料の成形は困難とされてきました。本稿では、この超高強度アルミニウムから高品質な製品を生産できる画期的な工程、「ホットフォームクエンチング(HFQ)」について紹介します。その前に、自動車産業では、なぜ超高強度アルミニウムが重要であるか、その理由について考えてみましょう。 超高強度アルミニウムの必要性 超高強度アルミニウムは、強度重量比が他のアルミニウム系よりも優れています。航空宇宙や自動車産業などでは、「高強度」かつ「軽量」な部品が求められるため、超高強度アルミニウムで複雑な部品を製造することができれば、非常に大きな利便性をもたらします。部品の材料使用量を削減できるなど、他の金属に比べて大幅なコスト優位性も有します。 また、超高強度アルミニウムはエンボディッドカーボン(運用段階以外のCO2)が低いため、OEMの目標達成にも大きく貢献します。 超高強度アルミニウムの使用に関する問題点 2x、6x、7x系アルミニウムの強度は非常に高いですが、その成形性はかなり限定されます。冷間プレス成形では、小さい半径を成形するのが難しく、また高いスプリングバックやドローの浅さ、寸法のばらつき、破壊のリスクといった多くの不具合が懸念されるため、形状が複雑な部品には、超高強度アルミニウムは不向きだとされています。 このような課題への対応策として、たとえば、複雑なコンポーネントを複数の小さなサブコンポーネントに分割するといった手法があります。しかしこの場合、分割したサブコンポーネントを後の下流工程で組み立てる工程が必要となり、あわせて金型、工数、材料などの追加コストが生じます。さらに機械加工が必要な場合には、材料の廃棄やサイクルタイムの問題も検討しなければなりません。 また、超高強度アルミニウムは大きなスプリングバックを発生させるため、金型設計の段階にて、複雑で難解な見込み補正を行わなければなりません。そして製造現場では、公差に入らなかった部品の廃棄や度重なる金型の微調整といった対応に追われることが懸念されます。 そのため、メーカーでは成形性を重視する傾向が強まり、超高強度アルミニウムの代わりに、低強度で成形性しやすい材料を選択するようになりました。それに伴い、重量の増加と部品コストの上昇という問題に直面しています。 自動車部品の製造には、熱間または温間プレス成形技術も用いられます。この手法では、たとえばハット形状の成形の場合、冷間プレス成形よりも形状の柔軟性が増し、深絞りの成形性も向上します。しかしながら、これらの手法にも限界があります。たとえば軟鋼材の伸び率は通常40~49%ですが、5000系の合金で広く採用されているA5052は伸び率がわずか25%です[1]。このように材料によって成形性が大幅に異なるため、超高強度アルミニウムを使用する場合には、部品形状をあまり複雑にすることはできません。 超塑性成形も選択肢の一つではありますが、サイクルタイムが非常に長くなることに注意が必要です。 超高強度アルミニウムにはさまざまな課題がありますが、それでも低強度グレードのアルミニウムと比較すると、その利便性は欠点をはるかに上回ります。そのため、超高強度アルミニウムの課題を克服すべく、さまざまな取り組みが行われています。 図1: インプレッションテクノロジーズ社のピラー 図2: (左) 左のバッテリーリッド (右) 航空機の後部座席 HFQ(ホットフォームクエンチング)工程とは インプレッションテクノロジーズ社では、インペリアル・カレッジ・ロンドンとの共同研究により、2012年にホットフォームクエンチング(HFQ)の自社開発を始めました。この工程を利用すれば、超高強度アルミニウムを比較的容易に非常に厳しい仕様で成形することが可能となります。 HFQでは超高強度アルミニウムの粘塑性変形を活用することで、アルミシートから卓越した形状精度と強度を備えた部品を製造することが可能となります。 この工程を用いると、超高強度グレードのアルミニウムを非常に柔軟に絞ることができます。小さい半径やその他の複雑な部位を成形しても、実質的にスプリングバックは生じません。熱プロファイル、成形量の制御、および金型設計を組み合わせて検討すれば、非常に複雑な部品まで対応することができます。 HFQ工程のメリット コスト削減 材料の重量削減を通じて、アルミニウムの使用量も削減できるため、コストを直接的に削減できます。アルミシートは最終部品の総コストの70%に達する場合すらありえます。HFQを用いて板厚を10%削減できれば、最終部品コストの約7%を削減できます。これはどのOEMにとっても非常に大きなメリットとなります。 また保管、輸送、取扱、プレス出力の要件に関するコストや最終部品の取扱い関連のコストなども削減が可能です。 HFQ工程では多くの場合、初回から仕様を正確に満たすため、金型の調整に関するコストも削減できます。一方、従来の工程では、金型の再切削が何度も必要となり、場合によっては10回から11回にも及ぶことがあります。 図3: HFQ摩擦攪拌接合を用いたクロスメンバー 超高成形性 HFQ工程は成形性が非常に高く、かなり複雑な部品を設計することが可能となります。これにより部品点数と金型コストを削減でき、数十万ユーロ規模のコスト削減効果をもたらします。またアセンブリ工程の運用経費(OPEX)や設備投資(CAPEX)、設計工数の削減にも貢献します。 少量生産および大量生産への適用 HFQ工程は少量生産から大量生産まで幅広く対応可能です。非常に効率的なサイクルタイムを実現できるため、従来の手法に代わる選択肢として有用です。 原材料を幅広く選択可能 イギリスのコベントリー地区にあるHFQ材料評価センターでは、あらゆるアルミニウム合金を対象とした熱間プレス成形の特性評価に用いることができる、標準化された手法が開発されました。 これにより、熱処理済みおよびFテンパー(加工直後のままの状態で特定の熱処理を行っていない状態)アルミニウム合金を幅広くご利用いただけるようになりました。すなわち調達部では材料を幅広く選択でき、またコスト削減の可能性もひろがります。インプレッションテクノロジーズ社では、主要サプライヤーと比較の上、すでに約20%のコスト削減機会を提唱しています。 結論 HFQ技術により、高強度および超高強度アルミニウム合金を量産で使用できるようになり、材料の歩留まり向上、ブランクサイズの最適化、部品統合の幅が広がりました。アルミニウムのコストが総費用の相当な割合を占めることを考慮すると、これは特に重要な意義があります。 参考文献 [1] https://www.nipponsteel.com/en/tech/report/nsc/pdf/103-16.pdf - [韓国GIOTECH社におけるデジタルトランスフォーメーション - フィージビリティに関するケーススタディ](https://japanforming.com/giotech_digitaltransformation/) - 1991年に設立されたGOITECH社は自動車用プレス金型の製造を専門としています。世界的な業界リーダーとなるべく、最高水準の金型を生産するための研究開発に取り組んでいます。GOITECH社では納期短縮とコスト削減のため、初期品質レベルを90%以上に向上させることを目標としています。これを実現するため、AutoFormを用いたシミュレーションと見込み補正(フルサイクルシミュレーション)をすべての部品に適用することで、品質確認の回数と生産工数を最小限に抑えることを目指しています。 従来、GOITECH社のワークフローでは、CATIAを用いて工程のモデリングを行いますが、お客様から部品データを受け取った後の工程計画は担当者の専門性に依存していました。つまり工程計画はその担当者の経験に応じて策定されます。CATIAで生成したデータをもとにAutoFormでシミュレーションを実行するには、データの変換・適用作業を行う必要があり、それに時間を要していました。このワークフローを改善するため、GOITECH社では経験則をもとに工程計画に優先順位をつけ、モデリングに費やす時間、部品変更のアップデートを行う時間、データ交換や管理に要する時間の削減を目指しました。既存のワークフローについては、図1をご参照ください。 図1 既存のワークフロー 韓国オートフォーム社では、GOITECH社の既存のプロセスを改善すべく、AutoForm-DieDesignerを用いた最適なエンジニアリングプロセスの導入を提案しました。全体像について話し合いを行った上でプロジェクトの日程と内容を確定させ、図2に示す通り、GOITECH社のプロジェクト参加者向けの特別な研修プログラムを組みました。 図2 プロジェクト計画案 この4週間のAutoForm-DieDesingerプロジェクトで3日間の集中トレーニングに続いて3週間の実践的応用トレーニングが行われ、GOITECH社から5名のユーザーが参加しました。トレーニングで用いる部品には、既に実施済みのドアアウターのプロジェクトが選定されました。このプロジェクトでは計画手法とモデリング情報がすでに整備されていましたが、このトレーニングに特化して、AutoFormで再現しました。その様子を図3に示します。 図3 以前の部品の工程検証 研修終了後3週間の内にGOITECH社のすべての技術者は新たに取得したスキルをスイングゲートインナーとベースルーフに適用しました。推奨手法であったAutoForm-DieDesignerを用いて工程計画を策定するとともに、金型サーフェス全体のモデリングも行いました。 「自主学習の一環であったスイングゲートインナー部品において、新たな工程ではCADモデリング時間が最大55%(5時間から2時間へ)短縮され、不要なデータ交換時間も最小限に抑えられました。AutoFormの置換機能を用いることで部品を簡単に修正でき、また修正機能による迅速な調整が可能となった点は大変喜ばしいことです」と工程計画の担当者は述べています。さらに次のように付け加えました。「フォームチェックを活用した成形性評価結果をもとに最適な計画手法を検証できる点を非常に高く評価しています」 6月9日、韓国オートフォーム社のソウル事務所にてレビュー会議を開催しました。またGOITECH社のプロジェクトの成果を効率的に発信するため、対談を実施しました。この対談はオートフォーム社のYouTubeチャンネルにて公開される予定です。プロジェクトに直接携わったGOITECH社の担当者は次のように述べています。「自主研究対象であったスイングゲートインナー部品では、新たな工程を用いることでCADモデリング時間が最大55%(5時間から2時間へ)短縮され、不要なデータ交換時間も最小限に抑えられました。AutoFormの置換機能で部品修正を容易に実施でき、修正機能による迅速な調整が可能となった点は大変喜ばしいことです。「工程計画の担当者は次のように述べています。「成形性の評価ツールであるFormcheckを通じて、成形性結果をもとに最適な計画手法が評価できることを知り、非常に参考になりました」(詳細は図4をご参照ください) 図4 CATIAとDieDesignerモデリング時間の比較(機密情報につき詳細は非公開) GOITECH社ではコスト削減、モデリング、部品変更の対応時間を短縮できたため、DieDesignerを用いてプレス成形工程全体のフィージビリティについてもシミュレーションを実施する予定です。これにより図5に示すように、改善された見込み補正の方案の評価ならびによりロバストなプレス成形工程の検証および見込み補正の手法を実現することが可能となります。 図5 GOITECH社の今後のプロセス 図6 プロジェクトを成功に導いたレビュー会議、韓国オートフォーム社ソウルオフィスにて GOITECH YouTube : https://www.youtube.com/@goitech_official With GOITECH – Jeongkwan Lee, Jeongok Kim, Seeun Kim, Jinsoo Jang, Hyunsoo Kang, Seongbae Park - [わずか30枚のパネルで1960年代スポーツカーのホワイトボディのレプリカ製作に成功:MW Design社がBiWプレス成形を最適化](https://japanforming.com/biw_stampimg_mw_designs/) - スポーツカーは究極のエンジニアリングの象徴であり、その独特な設計要件により製造が特に難しいとされています。特にスポーツカーのホワイトボディ(BiW)は複雑な曲面形状ゆえに難題が多くあります。しかし60年以上前に設計されたスポーツカーを最先端のプレス成形シミュレーション技術を用いて再現しようと試みたら、どのような結果が生じるでしょうか? コロナ禍の最中に実施された1960年代スポーツカーのレプリカ製作において、英国のMW Designs社がエンジニアリング業務を請け負った経緯についてご紹介します。同社のお客様は高級電気自動車のレプリカスポーツカー(ハリウッドのアクション映画に登場するモデルを含む)を少ロット生産する専門メーカーのプレス加工を担当しています。プロジェクトで実際に使用した車種は非公開のため、ボディ形状が非常に似ている1960年代のフォードシェルビーコブラで代用します。曲線的なホワイトボディを再現するためにMW Designs社が用いたプロセスをご紹介します。 最初の課題:分割できないパネルデザイン MW Designs社がお客様にエンジニアリング業務を請け負う中で判明した最初の大きな障壁は、ホワイトボディに分割ラインがないことでした。同社は1960年代オリジナルモデルの分割ラインの数や配置に関する情報を一切入手できませんでした。 したがって、まずオリジナル車両(この場合はフォードシェルビーコブラ)を入手し、車両全体の3Dレーザースキャンをとり、お客様のご要望である高級電気自動車向けにサイズを若干縮小するなど、基本形状を作成することから始めました。 次にAutoFormを活用し、車体全体を個々のパネルに分割する位置を検討しました。MW Designs社では最低限のプレス成形工程でパネルを作成し、最小限の接合箇所で最終製品を組み立てることができる、理想的な分割ラインを検討すべきだと判断しましたが、ここでさまざまな疑問が生じました。というのもOEMの1次サプライヤーとしてパネルを担当する部署がこのような工程に関与するような機会は滅多にないからです。 したがって、ここから非常に有意義な経験が得られるかもしれません。ホワイトボディの分割位置は極めて重要な検討事項です。分割方法によっては後工程で作業が増加する可能性がある一方、他の箇所でより大きなパネルを作成すれば、作業量を削減しながらも同等の結果を得ることができるからです。 フィージビリティおよびさまざまな分割ラインやパネルを個別に検討し、最も効率的に組み立てることができる分割ラインを決定しました。本質的にはパズルと似通うものがあり、絵を複数のパーツに分割し、最低限の部品を最もシンプルに組み立てる方法を見極めるようなものです。 図1:最終製品を組み立てるには、最小限でもパネル30枚が必要 図2: フードパネルを延長し、フェンダー上部沿いに溶接継手を形成 最適な部品数 スキャンした車両を最小限の数量でパネルに分割するには、徹底的な検討だけでなく、アセンブリに対する深い理解も不可欠です。 たとえば、クラムシェルとウィングを含むリア側全体をひとつのユニットとする案を検討したところ、プレス成形シミュレーションからインナーウィングの後方に過度なシワが生じることが判明し、この手法は回避することにしました。この問題に対処するため、リアパネルを中央部と2つのリアウィングに分割しました。 フロントパネルについても同様に対応しました。当初はフロントボンネット、ウィング、ノーズコーンを一体型で製造する計画でした。しかしながら、AutoFormのシミュレーションにてリアクラムシェルと同様のしわの不具合が予測されたため、フロントパネルをアッパーウィングと中央部(ウィングの内側が一体構造でメインボンネットとして機能)に分割するデザインに変更しました。 フロントパネルをウィング部分で分割しましたが、それでも中央部はかなりの大きさを占めました。実際、アウターウィングを除いたフロントパネル全体がほぼそのまま残ったのです。 ウィングの上部を分割することにしましたが、これはシミュレーションで予測した不具合に関わるものではありません。むしろ溶接の継ぎ目をより長く明確にする目的で行われました。継ぎ目が長いとTIG溶接が容易になり、また仕上げの手作業も少なくて済むからです。 パネルの位置決め後、重要部分の最終仕上げには手作業が必要でした。プレス成形したパネルの最終形状を整えるため、古くから受け継がれてきた付加価値の高い製造工程では慣習的に特定の部品を手作業で仕上げています。これは伝統的なハンマーとドリーを用いて行いました。 図3:後部からのビュー 図 4: リア上部に継ぎ目が入り、中央部のパネルも幅広く設計 コロナ禍における材料最適化と納期達成 コロナ禍ではさまざまな制限が課される中でも、MW Designs社のエンジニアリング業務をもとにプレス成形を担当したお客様は納期を厳守しようと努力していました。パネルを製造するには、まず鋳造部品の調達とポリマー部品の製造を行い、それらを期日までに自社工場へ搬入する必要があります。部品の機械加工、埋め込み、プレス成形、取り外しといった工程をこなさねばならず、当初は納期を厳守するのは難しいと思われましたが、しかし工場ではコロナ禍においても120台の車両生産を完了しました。 このお客様はシミュレーションとトライアウトの工程全体の時間を短縮しました。ここで時間短縮を図れたことで、MW Designs社シミュレーション担当部署の範疇外ではありますが、お客様が対応していた他の業務で生じていた遅延を補うことができました。実際にシミュレーションのおかげで、多くのホワイトボディ工程が予想より大幅に早く完了しました。 その結果、コロナ禍で時間や財政面で様々な制約があったにもかかわらず、お客様は期日までに納品できたことを喜びました。またシミュレーションは適切な材料選択の一助ともなりました。当初、ホワイトボディには安価なアルミニウム合金が推奨されていましたが、シミュレーションを通じてプレス成形には適していないことが判明しました。さらにシミュレーションで検討を重ねた結果、お客様は5754のアルミニウムを選択しました。 シミュレーションを活用すれば、完成品に必要な部品点数の削減も検討できます。当初の車両は約70枚のパネルを必要としていましたが、シミュレーションでフィージビリティ検討を行い、最終的にわずか30枚にまで削減することができました。これにより、製造工程が簡素化され、製造時間も大幅に短縮されました。 トライアウトにより設計シミュレーション部品の製造に成功 使用した金型はいわゆる「少量生産用金型」と呼ばれるものでした。低仕様で基本的に上型、パネル、バインダー、三点金型で構成され、ガイド機構はありません。それにもかかわらず、トライアウトは成功を収めました。 最初のトライアウトで生産したプレス部品は概ね良好なものでした。手作業で微調整することで、2度目のトライアウトではほぼ完璧な部品が、3度目では完璧な部品が得られました。最初のトライアウトから多くのパネルで十分な品質が担保できたのは、シミュレーションを活用して設計したとおりにトライアウトを実施したからです。 トライアウトに長期間を要したり、リソースを大量消費する必要はありません。場合によっては単一部品を金型で作成するだけのために、数週間から数ヶ月を費やすこともあります。しかし事前のエンジニアリング段階で徹底的に検討を重ねることで、トライアウトの期間や工数を大幅削減できるのです。レプリカのEVを販売するお客様は部品を迅速に受領したことで、すべての関係者を安堵させました。 まとめ 信頼できる安定したシミュレーションには、用途を問わず多くの利便性があります。本稿ではクラシックスポーツカーの再設計にシミュレーションをどのように活用できるか一例をご紹介しました。この事例では要件が厳しいスポーツカーの生産に要する時間、コスト、工数を削減するだけでなく、パネルをわずか30枚にまで削減できました。これは60年前にオリジナルが製造された当時は実現不可能なことでした。今日では飛躍的に優れた形で製造することが可能となっているのです。 - [PWOグループ:自動車業界向けプレス金型の高精度シミュレーション:量産の革新性、効率、安定性](https://japanforming.com/pwogroup_stamping_simulation/) - チェコ共和国のPWO社はプレス部品およびその金型の製造を専門としています。当社の革新性と技術的卓越性については、長年にわたり高い評価を受けています。我々は、金型の製造技術だけでなく、高度なシミュレーションによる工程最適化にも注力しています。設計段階から量産に至るまで、最高精度を担保することを目標としています。本稿では、当社の工程に組み込まれた主要な革新技術の一部をご紹介します。 初期設計から量産までの安定性 PWO社ではシミュレーションへ設定するすべての入力データは金型の実際の状態に基づくものであり、それが生産部品の信頼性を高めています。構造全体の精度に加え、緻密なCADサーフェス定義、正確な製造、均一な表面加工、精密な金型処理、材料の機械特性の正確な記述によって、シミュレーション結果が実物の結果と一致することが担保されます。「正確な入力設定は正確な結果出力を生み出す」という原則を順守することで、シミュレーションと実部品の偏差を最小限に抑え、製品の品質を維持しています。 Aピラー補強材のスプリングバック 図1 初期状態:シミュレーションを改善する前の初期生産ステージにおけるスプリングバックを示しています。PWO社のスポッティングは常に同一品質であるため、本来シミュレーションには同じ摩擦条件を適用できるはずであるにも関わらず、このサイドメンバー補強材の結果は、量産条件における金型の粗さの測定が正しく反映されていないことを表しています。 Aピラー補強材の事例は、PWO社での金設計工程の進歩を示しています。初期シミュレーションの結果は図1にあり、実際のシートにおけるスプリングバックは許容公差外でした。これは金型サーフェスの記述が不十分であったこと、材料のばらつき、シミュレーションの詳細条件の不足、初期段階における実データの不完全さが原因でした。その結果、シミュレーションはプレス成形の挙動を正確に予測できず、部分的に許容限界を超えて変形する結果となりました。これにより修正回数が増え、生産サイクルが長期化し、修正コストが増加する事態を招きました。 この結果を徹底的に分析し、いくつかの最適化対策を実施しました。具体的には、面圧分布(およびガススプリング)の正確な定義、形状ドロービードと摩擦パラメータのリファインメント、正確な材料モデルとカードの採用、高度なシミュレーションツールの使用、適切なクランプコンセプトの選定などです。これらの改善により、当社は図2のように達しました。 図2 初期プレス成形後の状態:スプリングバックは、シミュレーション精度の向上により公差内に収まっています。 現ステージでは、プレス部品のスプリングバックは要求公差内に収まっており、プレス成形後に部品が構造・機能要件を満たすため、微調整を追加する必要はありません。この進歩により最終製品の品質が向上し、製造工程全体が効率化されました。金型の過度な摩耗を防ぎ、不部品を削減することで、安定した効率的な量産を維持しています。 図3 PWO社にてAutoForm担当者との共同作業の様子。樹脂レプリカの作成後、金型をスキャンし表面粗さを測定する工程です。 図4 PWO社の原則:正確な入力設定は正確な結果出力を生み出します。 結論:成功の方程式としての革新と品質 PWO社は最高水準のプレス成形および金型設計を提供することに引き続き尽力してまいります。精密なシミュレーション、安定した製造工程、そして継続的な革新を通じて、自動車業界が求める厳密な精度・安全性・品質の要件を満たす部品を製造しています。常に完璧を目指し、新たな材料、革新的な製造技術、高度なシミュレーションを駆使して技術進歩に対応し、お客様の期待を超えるべく、絶えず進化を続けてまいります。 図 5 チェコ共和国PWO社 - [株式会社富士テクニカ宮津における金型製作プロセス革新の歴史](https://japanforming.com/fuji_miyazu_diedesigner_sigma/) - 【はじめに】 株式会社富士テクニカ宮津は、静岡県および群馬県に拠点を置き、主に自動車用金型を製造している企業で、日本国内外の各自動車メーカー様より多大なる信頼を得ている業界のトップランナーです。また、各国のお客様にも貢献できるよう現地法人を設置しています。 国内工場:三島工場、伊豆長岡工場、大泉工場 海外拠点:[北米]富士テクニカ宮津アメリカ社、[中国]烟台富士沃森技術有限公司 [アジア]フジテクニカインドネシア社 富士テクニカ宮津 三島工場 創立より67年を迎える株式会社富士テクニカ宮津は、歴史ある金型製造メーカーとして、これまで世界中のお客様に貢献してきました。 “他の追随を許さない金型を作り続ける”をトップメッセージに、全世界のお客様から品質、コスト、納期で信頼される世界最高品質を誇る大型プレス金型メーカーを目指しつづけています。 同社は常に先進的なものづくりを続けています。1979年には自動車用金型製造業界初のCAD/CAMシステムを導入しました。CAD/CAM導入は、当時の金型製作におけるデジタル化の大きな一歩でした。マスターモデルのプローブスキャンから数値データを作成し、それを基にした金型の形状加工から始めましたが、手探りでの模索が続き解決すべき課題も多くありました。それでも課題を一つ一つ克服し、やがて金型図面においても手書きからCADにいち早く移行するなど、CAD/CAMシステムを定着させていきました。導入以前は、ダイレイアウトの検討開始から金型出荷まで2年かかることもありましたが、CAD/CAMの導入によって金型製作の期間とコストを飛躍的に改善することにつながっていきました。 【AutoFormの導入】 そんな同社が他社にさきがけ、いち早く導入したのがプレスシミュレーションソフトウェアAutoFormです。1997年にまだAutoFormの日本での知名度がまったく無かったころに日本において2番目となる導入を決定しました。 工程設計課 CAE係 係長の清水氏は、つぎのように述べています。 工程設計課 CAE係 係長 清水康佑氏、劉春節氏、植松祐二氏 日本国内の自動車メーカーの場合、金型製作依頼があった際に、事前にある程度の検討がなされ、ダイフェース・デザインなどのデータが既に存在する状況もあります。一方で、国外の自動車メーカーの場合、ダイフェース・デザインを含む工程検討からまとめての依頼となるケースが多くあります。そのような場合にAutoFormの計算の速さ、そしてAutoForm-DieDesignerを使った形状作成の迅速さが大きなアドバンテージとなります。 【AutoForm-DieDesigner】 我々は早くからAutoForm-DieDesignerに着目し、有用性を理解していました。 AutoForm-DieDesignerを使用することで、依頼を受けてから早くに部品の成形性を確認でき、初期検討業務の工数削減を実現するとともに早くから工法を確立していくことを可能にします。またその結果、お客様により早くさまざまなフィードバックを返すことが可能となります。 AutoForm-DieDesigner導入検討に際し、富士テクニカ宮津社内での反対意見はほとんど有りませんでした。当時国内取引先との実務においては、各社のプレス成形における標準仕様に基づいた2D断面形状の評価から形状および工程設計するフローであったが、3D形状化後の検証で手戻りが多く、それを問題視していました。そのため、初期の設計時において手戻りとならないよう主要な不具合対策をあらかじめ織り込んでおく必要があると考えていたためです。 2002年にAutoForm-DieDesignerを導入し、従来型のやり方からAutoForm-DieDesignerを使って工程検討をおこなっていく仕組みに変えていきました。 AutoForm-DieDesigner導入効果(当時) 当時、ダイレイアウト定義/CAD形状作成/シミュレーション実行において、それぞれ別々の人が業務を担当していました。CAD形状がダイレイアウトのコンセプトとマッチしていないことがシミュレーション実行後に判明したり、線ずれやショックラインなどプレス方向における部品の振り角度が大きく影響したりする場合に、その変更によってCAD形状を大きく修正しなければならないなど、検討フローにおいて何度も作業を繰り返すことも少なくありませんでした。 AutoForm-DieDesignerの導入により、たとえばCADにあまり詳しくなくても形状作成ができるようになったおかげで、3つの役割(ダイレイアウト定義/CAD形状作成/シミュレーション実行)を少しずつ統合することが可能となりました。またAutoForm-DieDesignerの機能により、おこなった検討の繰り返しを減らしていくことが出来るようになり、必要な検討工数を大幅に削減できるようになりました。 AutoForm-DieDesigner工数+モデル作成工数実績 他にもAutoForm-DieDesignerを使うメリットとして、CADでの金型形状変更よりも早く対応ができるため、頻繁な部品形状の変更にもすばやく対応できます。(車種開発の段階においては部品形状の変更はよくおこなわれます)また工程案や形状案で複数の選択肢が出てきた場合にも、AutoForm-DieDesignerを活用することで、短時間で複数案を一度にシミュレーション実行することも可能となり、効率良くより最適な結論を導き出すことが可能となります。それによって最終的な金型製作用のデータについても品質を大幅に向上することができるようになりました。これを二十年以上も前から取り組んでいます。 工程設計課 CAE係 大泉担当 久保田一陽氏、清水和宏氏、住谷嘉仁氏 同社はアウトプットの質の向上と業務効率のさらなる向上に向けて惜しみない努力を続けています。AutoForm-DieDesignerの導入により、1部品あたりにかかる必要な検討工数も減り、こなす仕事も増えていきました。それを自信につなげ、さらに日本国内外において顧客の信頼を獲得していきました。 さらにその後も同社の業務フローの変革は続き、パネルの測定業務において新規での設備導入も早くからおこなっていました。非接触式3Dスキャンです。 金型トライアルで払い出されるパネルを3Dスキャンし測定をおこないますが、同社では基本的に毎トライアルおよび全ての工程パネルのスキャンをおこないます。これは各パネルの履歴を確認し、どの段階のどの工程が不具合に対して最も影響を及ぼしているのかを見極めるためです。その見極めによって、最も不具合要因に対して直接有効かつ最適な対策が何かをより検討できるようになります。 またその3Dスキャンデータの活用として、シミュレーション結果との比較も実施します。比較により、結果と一致しなかった箇所について考察をおこない、次回シミュレーション実施時へのフィードバックとして、より一致率を上げていけるようにします。この業務フローがループとなることで、同社の技術力はさらに高まっていきます。 【AutoForm-Sigmaの活用】 同社における近年の取り組みの1つとして、AutoForm-Sigmaを活用した工程設定の最適化検討が挙げられます。 一例として、自動車のボンネット部にあるフードという部品があります。そのフランジを曲げる工程において、最小限にパネルのスプリングバックを抑える工程設定の検討が必要です。その中でも曲げ金型のエントリータイミングにおいて最適な深さを決めることが課題となります。そのような検討において、AutoForm-Sigmaの活用を検討しています。さらにAutoForm-Sigmaを活用することで、曲げのエントリータイミングだけではなく絞り工程の金型加圧やあるいは金型のギャップなど、工程をまたいだ複数の項目で幅を持たせた解析が可能となります。そうすることで各項目の寄与度がどのくらいかを確認することもできるようになり、それぞれのケースにおいて曲げ金型のエントリータイミングの影響がどのくらいなのかを確かめることも可能となってきます。 同社は常に先進的なものづくりを追求しており、これからも業界のトップランナーとして技術を磨き続けていきます。“他の追随を許さない金型を作り続ける”をトップメッセージに、全世界のお客様から品質、コスト、納期で信頼される世界最高品質を誇る大型プレス金型メーカーを目指しつづけます。 (企業概要) 株式会社富士テクニカ宮津 設立:1957年2月 所在地: - [FAW-TD:シミュレーション解析によるフェンダの寸法制御と調整](https://japanforming.com/improve_fender_dimensions_simulation/) - フェンダは、プレス成形工程が非常に複雑で、他のBiW(ホワイトボディ)部品と多くの合わせ面を共有しています。そのため、寸法精度と面精度ともに細心の注意を払う必要があります。本稿ではAutoForm解析を用いて高品質のフェンダを作成する方法について詳しく説明します。 基本部品および検査治具 図1. 部品設計&測定ツール設計 この部品のプレス成形には、ドロー、トリミング、フランジ、カムフランジ、ビークリストライクの、合計5つの工程(5-OP)が計画されています。 図2 プレス成形工程の設計 AutoFormで成形性とロバスト性を検証した後、各工程のスプリングバック結果は次のとおりでした。 図3 各工程のスプリングバック結果 OP40(カムのリストライク)では、Aピラー領域に顕著な寸法のばらつきが見られ、中央部が上方にクラウニングし、両端が下方に移動していることが明らかになりました。この不具合は見込み補正で修正したくなるのが当然ですが、しかし工程改善によってスプリングバックを最小限に抑えることが最善策です。過度な見込み補正による悪影響を回避できるためです。 図4 初期スプリングバックの結果 Aピラー側およびホイールハウス部分の寸法精度が低いことが確認されたため、以下の方法で改善を図りました。 図5 工程調整 ゲイナー形状の追加: このステップにより、Aピラー側のフランジ加工時の材料の伸びの大部分が緩和され、寸法偏差が緩和されます。 フランジ加工タイミングの調整: ホイールハウス部分のフランジ加工タイミングを再設計します。 調整によって両領域のスプリングバックは大幅に緩和され、寸法は公差内に収まりました。さらにスプリングバック全体の分布も改善し、その後の見込み補正が容易になりました。 図6 工程調整後のスプリングバック クランプシナリオの検討とクランプとスプリングバックの評価 クランプはパネルの寸法精度に大きく影響します。クランプが不十分だと、大抵の場合はスプリングバックのデータが非現実的になります。初期段階の検証を経て、以下のクランプ方案を用いることになりました。 部品を車両位置で測定し、最小クランプコンセプト(MCC)を適用しました。○は基準点システム(RPS)のクランプポイント、△はパイロットポイントを表します。2つのパイロットポイントがパネルを自重で固定し、XY方向の動きを制限し、6つのクランプがパネルをY方向に固定しています。 前述の工程調整と組み合わせることで、以下のスプリングバックの結果が得られました。 図7 MCC方案を用いたスプリングバックの結果 クランプとパイロットの荷重についても検証しました。クランプ荷重が過大になると、一般的にパネルがひずみ、スプリングバックのデータの信頼性が低下します。ここでは各クランプの法線荷重は 5N 未満であり、パイロット荷重はパネルの重量と等しく、シミュレーションの信頼性が確認できました。 見込み補正の方案 スプリングバックの結果から、ビーク部(No.2)、Aピラー(No.3)、ドッグレッグ部(No.1)に局所的な見込み補正を行うことにしました。OP10~OP40でこの見込み補正を行い、OP50では基準部品のサーフェスを使用しました(図8)。 図8 見込み補正の方策 さらにAutoFormサーフェスへこみの結果や過去のプロジェクトで得た知見から、枠内で面精度に不具合が生じる可能性があると予想されました。この不具合に対処するため、その領域にローカルクラウニングの見込み補正を適用しました。 図9 サーフェスへこみ値が0.1 mmに到達 図10 ローカルクラウニングの見込み補正 これらの方案を適用した結果、クランプで拘束する方法の2つにおいて、スプリングバックの結果が改善されました。 図11 2つの方法でクランプを拘束した場合のスプリングバック その結果、トライアウトパネルは測定ポイントの 91.3% が公差内に収まり、高品質なものになりました。シミュレーションと実際の結果は 0.5 mm 未満の誤差と、高い相関性を示しました。 図12 AutoForm理論的結果とトライアウトのスキャン結果 さらにトライアウト担当エンジニアからは、パネルの面精度が以前のプロジェクトよりも著しく向上し、スポッティングの作業時間が短縮されたとの報告がありました。下図に示すように、実際のパネルの面ひずみは 0.02 - [韓国DONGYOUNG社: オールインワン統合型プレス成形工程のスプリングバック見込み補正](https://japanforming.com/dongyoung_korea_integrated_stamping/) - 第2部 AutoFormを用いた直接的なスプリングバック見込み補正工程 第1部はこちら:韓国SIMWON社: オールインワン統合型プレス成形工程のレイアウトモデリング 1994年に設立されたDONGYOUNG社では、車体構造向けの金型開発を行っています。近年は自動車業界の需要が高い超高強度鋼板製品に注力しています。この鋼種にはスプリングバックやその見込み補正に関する多くの問題があるため、DONGYOUNG社では2021年にAutoFormを導入し、さまざまな解析を実施して問題を解消してゆくことで、金型の品質を担保し、市場をリードしてきました。 本稿では、DONGYOUNG社がAutoForm Smart Designのワークフローを活用したスプリングバック見込み補正工程についてご紹介します。図1の詳細なワークフローのとおり、製品形状のフィージビリティ検討フェーズを短縮することを目的としています。AutoForm-DieDesignerPlusを用いたスプリングバック見込み補正工程に加え、この工程で作成したトライアウト金型の検証結果も含まれています。 図1 AutoForm Smart Designワークフロー 図2と図3は、スプリングバック見込み補正前のワークフローを詳細に示しています。製品は1.2GPa級の超高強度鋼材を使用した部材であり、フィージビリティと併せてスプリングバックについても検討を行いました。 図2 部品のコンセプトプロセス レイアウトモデリングの完了後、スプリングバックの結果を確認しました。コンセプトステージではスプリングバックをできる限り抑制しましたが、基準ステージでも最大約4mmのスプリングバックが確認されました。 図3 基準金型の設計工程とスプリングバックの結果 スプリングバックを安定させ、さらに緩和するため、最初の反復解析では製品領域上に変更領域を定義し(図4)、その後、スプリングバック見込み補正を実行しました。 図4 見込み補正の方策: 部品領域上に変更領域(Direct Compensation)を定義 しかしながら、2度目の反復解析(図5)では変更領域全体にスプリングバック見込み補正を適用すると、面品質が低下しました。超高強度鋼の材料特性を考慮すると、面品質が低下するとスプリングバックが不安定になる場合もあるため、追加の対策を施しました。 図5 ゼブラライン解析結果から変更領域の面品質を評価 DONGYOUNG社では面品質が低下した領域に基準ターゲット領域を定義することでこの問題に対処しました(図6)。曲率ケースの結果変数を用いることで、面品質が明らかに改善されました(図7)。 図6 見込み補正方策: 品質が低下した領域における参照ターゲット領域の定義 図7 変更領域と参照ターゲット領域を比較した曲率ケースの解析結果 これらの調整後、最終的なスプリングバック解析の予測では最大約0.7mm(図8)となり、公差範囲内に収まりました。これにより金型加工やその後のトライアウト検証に適した結果となりました。 図8 最終見込み補正シミュレーションのスプリングバックの結果 金型の加工後、専用治具を用いて測定を行いました(図9)。表1に示す通り、プレス成形解析とトライアウトの比較結果には優れた相関性が認められ、最大偏差は0.9mmでした。 図9 測定治具を用いたトライアウトの結果 表1 シミュレーションとトライアウトの比較結果 総括すると、これらは製品のコンセプトステージから金型加工データの作成に至るまでの統合型のプロセスが、オールインワンプロセスであるAutoForm- DieDesignerPlusを活用することで効率的に管理できることを裏付けています。この包括的なワークフローは開発期間の短縮だけでなく、コスト削減にも貢献します。お客様には、ぜひこの統合型手法の導入をご検討いただければ幸いです。期間短縮だけでなく、より徹底した分析を通じて、トライアウト回数や再加工のコストを大幅に削減できる可能性があります。 - [自動車業界の大変革!鉄鋼メーカーはどう対応していくのか ―JFEスチールにおける車体軽量化への取り組み―](https://japanforming.com/自動車業界の大変革における鉄鋼メーカーの対応/) - 100年に一度の大変革が進む自動車業界。自動車メーカーや部品メーカーに材料となる鋼板や利用技術を提供するJFEスチール株式会社においても、迅速かつ柔軟な対応が求められています。同社は変化する自動車業界の現状をどのようにとらえ、どのような技術を提供しようとしているのか。同社 スチール研究所 薄板加工技術研究部の飯塚栄治氏と飛田隼佑氏にうかがいました。 自動車メーカーのマルチマテリアル化と歩調を合わせる ――単刀直入に、鉄鋼メーカーとして、大変革が進む自動車業界をどのように見ているか、お聞かせいただけますか。 飯塚氏 鉄鋼メーカーとしては、自動車業界の動向を踏まえた開発を進めるべきと考えています。ガソリン車からEVへのシフトにより、大きく変わるのが車体の構造です。お客様に当社の鋼板材料を広く使っていただくために、どのような車体構造がいいかといったことを考えた設計から、そのために必要な材料や成形技術や接合技術を開発して提供していくことが私たちのスタンスです。 ――EV化は鉄鋼メーカーにとってチャンスととらえてよろしいでしょうか。 飯塚氏 EV化は鉄の可能性を広げるチャンスでもあると思っており、自動車メーカーのマルチマテリアル化の動きと歩調を合わせていくことが必要と考えています。各種の軽量素材が検討される中、鉄の可能性を広げていくことが私たちの目指す方向です。 ――EV化が進む中で、鋳造技術を用いて車体構造を一体成形する技術「ギガキャスト」が海外を中心に注目され、日本の自動車メーカーでも採用が進むことが予測されています。100点もの部品が1部品に集約できるようなダイキャストに自動車部品関連企業の参入が進んでいます。車の素材の一部が、鉄からアルミになると、鉄鋼メーカーにも影響が及びそうですが、どのようにとらえていますか。 飯塚氏 注視はしていますが、鉄による車体構造を提案し続けることが我々の役割だと意識しています。お客様が求めることを理解して「鉄を使う場合はこういう利点がある」といったことを伝えていきたいと思っています。 飛田氏 今の自動車がすべてギガキャストに置き換わることはあり得ないと思いますので、技術開発の方向性を間違えないように注意していくことが大切と考えています。 ――お客様のニーズへの提案というところでいうと、御社が寸法精度変動対策として開発した「ストレスリバース®工法」があります。そのあたりは車体軽量化のニーズの高まりを踏まえて開発されたものでしょうか。 飯塚氏 そうです。車体軽量化はガソリン車とEVの両方に共通する課題で、それを解決するために当社では超高張力鋼板を提供しています。しかし、材料が硬くなるほど材料強度変動に起因する寸法精度変動が大きくなるという難題があります。当社が開発した「ストレスリバース®工法」は、バウシンガー効果と呼ばれる、変形の方向を逆にした直後の変形応力は小さくなるという鋼板の特性を活用して寸法精度変動を抑える技術です。 飛田氏 図1で示したストレスリバース®工法適用ルーフセンターRFの実部品試作結果より、引張強度が高くなった場合でも長手方向の曲率半径の上昇を抑えることができ、寸法変化と寸法精度の変動が大幅に低減します。結果的に金型製作におけるコストや時間の削減に貢献することができ、複数の量産部品に採用されています。他のスプリングバック対策技術として、壁折リストライク工法等が量産部品に採用されています。 (図1)ストレスリバース®工法 *ストレスリバース法とは、予成形と本成形の2工程に分けて成形する工法である。予成形の湾曲の曲率半径を製品よりも小さく成形し、本成形で製品よりも少し大きく成形を行うことによって、予成形と本成形の下死点でスプリングバック要因応力が反転し、本成形ではバウシンガー効果により応力の絶対値が低減しスプリングバックが小さくなる。また、材料強度変動が発生した場合において、下死点の応力変動も低減し、寸法精度ばらつきも小さくなることによって、超高張力鋼板に対して安定した加工を実現することができる。 自動車用鋼板利用技術を体系化した「JESOLVA®」 ――ストレスリバース®工法は、御社が提供されている自動車用鋼板利用技術を体系化した「JESOLVA®(ジェソルバ)」の一要素ですね。車体構造の変化や軽量化といったニーズに対して、JESOLVA®が貢献できることをお聞かせください。 飯塚氏 JESOLVA®は「JFE Excellent SOLution for Vehicle Application」の略で、自動車用鋼板を使いこなすために当社が独自開発した利用技術の総称です。高強度鋼板を採用する自動車開発に向けたソリューションとして2019年にリリースしました。 JESOLVA®は図2のように、車体の設計支援、部品の成形技術、部品の接合技術の3つ(図の青、赤、緑)を体系化したもので、これらはすべてつながっています。設計支援面では軽量高強度な車体構造を創出するトポロジー最適化技術や衝突性能評価・向上技術、成形面ではひずみ勾配を考慮した高精度伸びフランジ割れ予測技術や流入制御工法等のしわ低減技術、「ストレスリバース®工法」のようなスプリングバックを低減する技術があります。また、接合面では超ハイテン材部品を高品質に接合するパルススポット®溶接やインテリジェントスポット®溶接技術などにより自動車メーカーを支援しています。 当社の高成形高強度鋼板シリーズ「JEFORMA®(ジェフォーマ)」(図の黄)とJESOLVA®をセットで提案し、車体開発から安定した量産まであらゆるステージで貢献していくことを目指しています。鉄鋼メーカーの得意領域である材料技術に、これまで培ってきた設計支援、成形技術や接合技術を組み合わせて提案できるのが当社の強みです。 (図2)JESOLVA® ――さらに御社はJESOLVA®の適用を推進するEVI(Early Vendor Involvement)活動拠点として、千葉市の「カスタマーズ・ソリューション・ラボ(CSL)」と福山市の「カスタマーセンター福山(CCF)」を運営されています(図3)。 飯塚氏 当社では、EVIとして、自動車メーカーの新車開発の初期段階から参画し、材料、構造、成形技術、溶接技術を提案する活動を行っています。CSLとCCFは、お客様とJFEスチールが一体となって共同研究を推進することを目的に開設した展示・実験複合研究棟です。ここではEV車体構造も含め、常に最新の独自開発技術を展示しており、新たな共同開発テーマがいくつも生まれています。 (図3)EVI活動拠点 量産安定化に向けた手段の一つとしてのAutoForm-Sigmaを活用 ――自動車メーカーの課題として、鋼材特性の変動が発生して困っているという話を聞きます。鉄鋼メーカーとしてアドバイスいただけることはありますか。 飯塚氏 ばらつきの課題で一番効いてくるのが量産時の品質維持です。量産時のばらつき要因は、成形条件の変動、型の摩耗等の変動、摩擦の変動、材料特性の変動などさまざまで、量産立上げ後も変動を加味してプレス品質を担保する必要があります。そうなってくると成形余裕度、つまりマージンの量が重要になります。マージンが少なすぎると量産中に成形不良が散発し、マージンが大きすぎると無駄な生産準備工数や型の費用、成形工程数が発生します。適正なマージン量は一品一葉ですが、現状は一律基準で設定しているのが実態のようです。 こうした中で、AutoForm-Sigmaで各種の変動を考慮して解析し、部品や部位に対してどの程度成形性が変動するかの知見を蓄えていくことが、過不足のない、即ち適正なマージン量を設定する一助になる可能性があると考えています。 ――量産ステージでのAutoForm-Sigmaの活用のヒントはありますか。 飯塚氏 たとえば、量産で散発割れが起きた場合、AutoForm-Sigmaなら敏感な要因が一発で出てくるので、そういった分析用途で使うのも不具合に対応する手段の一つかと思います。散発割れの要因を推定するのにAutoForm-Sigmaが役立つと考えています。 軟鋼板では摩擦の考慮が必要 ――御社では、JESOLVA®とJEFORMA®の各技術の中でシミュレーションをされていると思いますが、AutoFormはどのような用途でお使いですか。 飛田氏 AutoFormは成形の面で利用しています。AutoForm-Solverがあれば短時間で答えが得られ、複数パターンの条件設定ができるので、非常に助かっています。 ――AutoFormで最も評価しているところはどこですか。 飛田氏 一番はスピードです。特に前捌きのところは計算スピードが重要になります。打ち手を複数パターン考えるために、繰り返し素早くシミュレーションを実行でき、開発期間の短縮につながっています。 ――量産工程の中で変動要素の一つとして摩擦(トライボロジー)を挙げられていましたが、シミュレーションで摩擦はどこまで考慮すべきでしょうか。 飯塚氏 特にパネル系の流入の多い部品は解析精度の面で摩擦係数の精度がポイントになると思います。 ――最後に、環境負荷への低減に向けた御社のアプローチとしてCO2削減や環境対策に関する考えと、現在の取り組みをお聞かせください。 飯塚氏 鉄鋼メーカーとしてカーボンニュートラルに向けた製鉄プロセス転換やグリーン鋼材の供給などの取組みを進めてます。また、高強度鋼板を開発し、自動車メーカーに軽くて強い構造や、ワレやシワに強い成形技術を提案することで、自動車の軽量化に貢献することがCO2の削減につながると考えています。 (企業概要)JFEスチール株式会社 設立:2003年4月1日 所在地:東京都千代田区内幸町2-2-3 資本金:2,396億円 従業員数:連結44,469名(2023年3月末) 事業内容:鉄鋼事業(薄板、厚板、形鋼、鋼管、ステンレス、電磁鋼板、棒線、鉄粉などの鉄鋼製品の生産・販売) URL:https://www.jfe-steel.co.jp - [韓国SIMWON社: オールインワン統合型プレス成形工程のレイアウトモデリング](https://japanforming.com/simwon_smartdesign_stamping_precess/) - 第1部 AutoFormを用いた直感的なレイアウトモデリングプロセス 2006年に設立されたSIMWON社は、国内外の大手自動車メーカーのパートナーとして、ドアモジュール、サイドアウター補強材、アンダーフロア、フレームなどの製品を開発・生産しています。同社はアルミ/TWB加工製品の熱間および冷間のプレス成形を専門としています。2019年にAutoFormを導入して以来、熱間プレス成形やアルミベースの製品の成形性検証のトレーニングを継続的に受講し、品質向上と開発期間・コストの削減を実現しています。 SIMWON社の現状の開発プロセスを図1に示します。まずAutoFormを用いてコンセプトプロセスを実施します。次にCADシステムで基準金型サーフェスを作成し、AutoForm Formingで再び検証解析を行います。この一連のプロセスではステージごとにそれぞれ担当者を割り当てる必要があり、またデータ変換に伴うデータ破損や品質問題の懸念もあります。特に複数の製品ラインを展開する場合、時間とコストの折り合いもつけなければなりません。このためSIMWON社では頻出する諸問題に対処するためAutoForm-DieDesigner®Plusを導入しました。 図1 従来のプレス成形の設計ワークフロー 改善された新たなプロセスは図2に示すように3つのステージで構成され、各ステージではそれぞれの目標を達成することに特化しています。 図2 工程改善のステップ 1. 固定観念の打破(先入観の克服) ほとんどのユーザーは、以前のプロセスでCADシステムを使いこなしていたため、高い熟練度だけでなく、ある種の固定観念を持ち合わせていました。しかしソフトウェアトレーニングや事例検証のセッションを受講していただく過程で、むしろ、そのような固定観念こそが不要なのだ気づかされました。AutoFormソフトウェアの高品質なサーフェス出力にご満足いただき、またソフトウェアの機能も使い勝手がよく、利便性や作業効率が高まるという点にもご納得いただきました。その後にワークフローについてグループディスカッションを行うことで参加者同士の共通理解がさらに深まり、事例検証トレーニングを通じて、AutoForm Formingを用いた統合型プロセスへ円滑に移行することができました。 図3 Die Designer Plusユーザートレーニング 2. プロセスの改善 既存のプロセスにおける問題解決にむけて、韓国のオートフォーム社ではシンプルかつ効率的なAutoForm Smart Designワークフロー(図4)を提案しました。AutoForm Formingが軸となるこの統合型プロセスでは、ユーザーが単独でコンセプトステージから見込み補正の検証まですべての業務を担うことで、データの破損や品質低下のリスクが排除されます。さらには部門間の連携やコミュニケーションに関わる諸問題も解消されます。 図4 AutoForm Smart Designワークフロー AutoForm Smart Designワークフローの有効性は、2つのトライアウトを通じて検証されました。まず図4に示すワークフローのとおり、アルミ車体構造部品に対してタスクを実施しました。最初にソフトウェアで準備作業を行い、次に成形性を検証し、そして図5のとおり見込み補正のモデリングを行います。工程は合理化されているため、単独のエンジニアがすべてのタスクに対応することができます。そのため、データの受け渡し時に生じがちなエラーのリスクを排除でき、また部門間のコミュニケーションもより円滑に行うことができますその結果、SIMWON社では開発期間とコストを削減することができたのです。 図5 AutoForm Smart Designワークフローによるアルミ車体構造部品の開発 次に、車体構造製品のインナーパネルとアウターパネルに、熱間プレス成形を用いた同様のワークフローを適用しました。これにより従来のプロセスと比較して作業時間が75%削減し、また製品変更への迅速な対応が可能となったことで顧客満足度が大幅に向上しました(図6)。 図6 2つの熱間プレス部品の検証 本稿にて紹介した情報が幅広いお客様に届くことで、AutoForm Smart Design ワークフローの導入が促進され、それぞれの企業独自の工程要件に適した工程改善が実現することを願っています。 - [試験における人為的な誤差による影響をうけない、部品の板厚に応じた成形限界曲線](https://japanforming.com/forming_limit_curves_tata/) - 成形限界曲線をやさしく解説 FLC(成形限界曲線)は、部品の成形性評価に欠かせないツールであり、材料にわれが生じるまでの最大ひずみレベルを示します。しかしFLCを作成するのは非常に困難です。従来の方法(中島法、マルシニアック法)には、主に3つの問題点があります。 1) FLCを作成するには、多くの材料、時間、試験が必要です 2) 材料から試験片を1つ測定し、そこから材料特性のばらつきを推測しなければなりません 3) 試験によって人為的な誤差が生じ、結果の精度に影響をあたえます そのため、シミュレーションソフトウェアや金型工場での部品安全評価に、実験をベースに作成したFLCを用いることは最適とは言えません。その代替として、計算をベースに作成したFLCを使用する方法があります。これは回帰分析などを用いて、引張試験で定めた機械特性から生成できます。 本稿ではAbspoel Scholting FLCのメリット、計算によるFLCとの比較、そして上記の3つの問題点への対応について説明します。 Keeler FLCとの比較 計算によるFLCの中でもKeeler FLCは最も広く普及し、非常に長い歴史を持つモデルです。1970年代に開発されたこのモデルは、当時は軟鋼材のみが用いられていたため、高い精度を発揮していました。しかし今日の鋼材グレード(特にAHSS)では、その相関性は希薄になり、重大な誤差が生じる可能性が非常に高くなっています。そのため、Keeler FLCからFLCを決定することが困難です。 下の図は、デュアルフェーズ鋼材の例です。ここでは2つのポイントが明らかです。KeelerではFLCが過大になり、FLCの左側の傾きが45°になっていません。このため実際には成形できない部品が成形可とみなされ、金型工場での大規模な修正作業や、高いコストがかかる金型の修正が必要になる場合があります。 図 1:デュアルフェーズ鋼材の比較 – 測定した中島試験の試験片に対する Abspoel & Scholting FLCおよびKeeler FLCのひずみ 試験から生じる板厚の人為的誤差 Abspoel & Scholting FLCは、測定したFLCの複数のポイントを、低炭素鋼、高強度鋼、先進高強度鋼など、さまざまな材料の引張試験データと相関させた経験的モデルです。使用する引張データは、総伸びA80、ひずみ率(r値)、板厚です。 図2: 3方向引張試験の試験片 図3: 3方向引張試験から予測した Abspoel & Scholting FLCの4つのポイント 測定したFLCと比較すると、Abspoel & Scholting FLCは、外面ではなく、中間面のひずみのカーブを決定します。中島試験では、曲面により、材料自体のニュートラルラインよりも外面のひずみが大きくなります。材料が厚く、半径が小さいほど、ニュートラルラインと外面のひずみの差が大きくなります。 中島試験では、半球形のパンチの湾曲したサーフェスが別の効果をもたらします。試験片に二軸の予ひずみが生じるのです。意図したひずみ経路で材料を変形させる前に、球形が材料に押し込まれ、二軸のひずみが生じます。最小主ひずみ方向にはひずみがなく、最大主ひずみ方向のみにひずみがある平面ひずみ試験片の場合、試験片はまず最小主ひずみと最大主ひずみが正になり、安定すると平面ひずみ試験片のようにまっすぐ上方向にひずみ経路を進みます。しかし結果としてFLCの最低ポイントは右下方にシフトします。中島試験における人為的な誤差、つまりこの二軸予ひずみの影響により、測定したFLCが大幅に低下し、最も重要な部分、すなわち平面ひずみ(最小主ひずみがゼロ)付近における材料の潜在的性能が制限されます。 図4: 中島試験の二軸予ひずみ FLCが低く、r値が低い材料の場合、中島試験にはさらに別の欠点があります。FLC分布の左側に十分なデータポイントがないため、適切なカーブを合わせることができません。FLCの左側に合わせたカーブや推定値は非常に不正確であることが多く、シミュレーションでネッキングを検出できない場合があります。これもまた、金型工場で不具合が生じ、逆に材料の性能が過小評価されることで、不必要な設計変更や金型加工、さらには材料選択の妥協につながる可能性があります。 これまでこの問題は認識されていませんでした。なぜなら左側の傾斜は常に45°と想定されていたため、(開始)ポイントは1つだけでよいとされていたからです。しかし、引張試験およびマルシニアック試験片を用いて左側のネッキング挙動を調査したところ、FLCの左側はr値に依存していることが明らかになりました。従来の45°のカーブは誤りであることが証明され、計算したFLCでは左側の傾斜が正しいため、設計者は材料の性能を最大活用し、またシミュレーションでネッキングの不具合を正しく検出することができるようになりました。 試験の所要時間と必要な材料 Abspoel Scholting FLCは引張試験から算出されます。つまりカーブの作成に必要な試験材料は少なく、材料のばらつきを推定する必要もありません。 Abspoel Scholting - [中国SGMW社の事例!ダイスポッティング効率化への革命的ワークフロー改革](https://japanforming.com/china_sgmw_diespotting/) - 本稿では、金型メーカーのSGMW社がダイスポッティングのワークフローを検討する際に参考にした試験とその結果についてご紹介します。 一般論として、プレス成形における上型と下型のギャップは、シートの板厚と同じになります。しかし成形工程では、パネルの厚みを一定または均一に保つことはできません。パネルは全方向に伸びることで塑性変形が誘発され、最終部品の剛性が担保されるためです。すなわち不要な変形や傷を防ぐには、上下型間のギャップと板厚を一致させる必要があります。パネルの品質が低下すると、顧客への納品ができなくなる可能性があります。 ダイスポッティングは、金型間のギャップを正しく(シートの板厚と同じ)不均等にすることを目的としています。これは、金型トライアウトの段階で、非常に手間と時間がかかる作業として行われます。 本件に対応する上で、SGMW社では面圧(つまりギャップ)が異なる4つの領域を特定しました。 強圧領域:上型と下型のギャップがシートの板厚よりも小さい領域 処理不要領域:ギャップがシートの板厚と同じ領域 回避領域:金型とシートが接触しない(負荷がかからない)領域 つなぎ面領域:強圧領域と処理不要または接触なしの領域間の領域 ダイスポッティングの作業を短縮するために、以下に要約されたスキームに従って、切削した形状上に領域を設定します。点線は実際の切削形状を表し、黒色の実線は基準形状を表します。 実際にはどのようにして、これらの領域を確認しているのでしょうか。測定は難しく時間を要するため、標準的な手法として、着色の濃淡と面圧を関連付けます。プレスしたシートの両面に青色の塗料を均一にブラシで塗り、金型で挟みます。金型に残った塗料の量を4段階の濃淡として、面圧のタイプを決定します。 強い着色:高圧 一般的な着色:処理なし 着色なし:回避(接触なし) わずかな着色:つなぎ面 図1: ドロー型のクリアランス例 図1はこの原則をルーフパネルに適用したもので、次の領域を区別しています。 a) 強圧領域 b) 処理のいらない領域 c) 接触のない領域 d) つなぎ面領域 合わせ、シーリング、ヘミングの領域は、高圧にさらされます。SMGW社ではこの原則を適用し、デジタルスポッティングを行いました。サーフェスの切削は「基準」の代わりに4つの異なるギャップ/圧力領域を考慮し、経験をもとにした値を用いました。 しかし最近のプロジェクトでは、切削後のスポッティングの状況を確認する際に、次のような不具合が確認されました。 ドロービードの外周部のクリアランスは板厚よりもはるかに小さく、大きなベアリングゾーンにてスポッティングが均一にならず、流入をコントロールできませんでした。 凹面と凸面の半径間のクリアランスが不十分であったため、面圧分布が不均一となり、初期のスポッティング率が低下しました。 ベアリング(高圧)部分と非ベアリング(非接触)部分の距離が適切でなかったため、パネルの外側に跡が残り、その解消に多大な時間を要しました。 図2は、ダイスポッティングを長時間行った後の状態を示しています。 図2: ドロー型の着色不良 図2と図1を比較すると、接触するべき個所が接触していない大きな領域があり、不整合が生じています。この後、SGMW社では、このプロジェクトで使用してきた数値を破棄し、シミュレーションしたプレス成形済シートの板減分布値を使用することにしました。 ドロー工程をシミュレーションした結果、板減分布は非常に不均一であることが分かりました(図3参照)。 図3: ドロー後の板減分布 板厚が不均一なため、上型と下型の間にギャップが生じました。SGMW 社では、シミュレーションによる板厚分布をもとに切削を行うことにしました(図4を参照)。 図4: ドロー後の板厚分布 板厚分布をもとにダイフェースを再構築しました。その結果を図5に示します。 図5: CADにてダイのサーフェスに適用した板厚マップ 図5では、正の値は面圧が高い領域を示し、負の値は面圧が低い領域または面圧がゼロの領域を示します。図6は、スポッティングの新たな加工要件を示しています。 図6: ダイスポッティングの要件 このマップを初期設定(図1)と比較すると、新しい設定はかなり異なっています。新規プロジェクト(コード CN113PR)のスポッティング作業は文書化され、旧プロジェクト(コード E230R)と比較されます。比較結果を図7に示します。 図7: 新旧プロジェクトの比較 新しい方法では、140 時間の作業で 58% - [『ターミネーター:ニュー・フェイト』 ~ 映画から捉えた自動車プレス・アセンブリ工場~](https://japanforming.com/terminator_darkfate_stamping_assembly/) - 工場の内部を紹介しますが、はたしてこの工場の正体は?! 『ターミネーター:ニュー・フェイト』という映画では、珍しく自動車プレス成形の世界が映し出されています。本稿では、この大ヒット作品に登場するプレス工場、そして重要な役割を果たすプレス成形工程やプレス部品について紹介します。 『ターミネーター:ニュー・フェイト』をご存知ない方のために説明します。この映画は、未来からやってきたサイボーグ兵士がサラ・コナーと手を組み、凶悪なターミネーターから女の子を守ろうとする物語です。 2019年に製作されたこの作品はジェームズ・キャメロン監督のシリーズ復帰作で、リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイビス、アーノルド・シュワルツェネッガーが出演しています。面白いことに、これは シリーズ6 作目ですが、しかし『ターミネーター 2』の続編としてストーリーが展開してゆきます。 そのため『ターミネーター3』や『ターミネーター:新起動/ジェ二シス』など興行的に振るわなかった以降の続編を鑑賞せずとも、『ターミネーター:ニュー・フェイト』を直接お楽しみいただけます。一部ではこれがシリーズ史上最高の作品だと絶賛されていますが、熱狂的なファンたちの間では賛否両論のわかれるところでしょう。 この映画では迫力あるアクションを存分に楽しめます。そして初代ターミネーターであるサイバーダインシステムズT-800モデル101を、アーノルド・シュワルツェネッガーが再演しています。このキャラクターに老いの兆候が見え隠れすることで、サイボーグ人間の人格にさらなる深みが感じられます。これは演者が72歳にして作品に復帰したシュワルツェネッガーであるからこそ、非常に説得力があります(『エクスペンダブルズ』での不自然なまでに若さを強調する演出とは対照的ですね!) しかしさらに輝いていたのは強靭なサラ・コナー役で復帰したリンダ・ハミルトンです。シュワルツェネッガーと再会を果たす瞬間は、特に感慨深い場面となっています。 映画の予告編をご覧いただければ、その意味をおわかりいただけるかと思います。 上映開始から約 12 分後に、メキシコのプレス工場にて激しい戦闘シーンがあります。意外にも、ものシーンは実際にはハンガリーにあるメルセデス社の工場で撮影されました。しかし、メキシコのオートフォーム社の情報によると、このシーンはメキシコのアセンブリ工場に特有の整然とした雰囲気がよく表現されていて、ゲスタンプ社やフォード社の工場を彷彿させるような情景となっています。 図 1: 上部および下部フード部品の組立て前の研磨工程。裏では2名の作業員が金型を使い、組立て用の接合面を準備しています。 画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures 図 2:グレースを演じるマッケンジー・デイビスが、インナードア部品を即席の武器として応戦しています。ただしご自宅では絶対に真似しないでください! 画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures 図 3: 組立て作業中、車体の構造部品にスポット溶接が施されます。 画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures 車種については、ハンガリーで生産されているモデルを調べ、映画の中でも車体の側面を確認したところ、メルセデスCLAの可能性が高いと考えます。 ファンたちの間で注目を集めているのが、映画に登場する「アリウス・モーターズ」のメキシコの工場です。この名称が建物や工場内に大きく表示されていることから、このアリウス・モーターズこそが、人類と戦争を繰り広げる AI を開発したサイバーダイン技術やスカイネットの初期形態ではないかという憶測が飛び交っています。映画でもそれをさりげなく示唆するヒントが散りばめられています。たとえば、工場の作業員がロボットに置き換えられることを嘆くシーンがあります。その上司は「それが未来だ」と言い放ちますが、これはAIが支配する世界の到来を暗示しているようかのようです。 『ターミネーター: ニュー・フェイト』は、低迷してきたシリーズ作品を見事に復活させました。本作は見ごたえ満載のアクションだけでなく往年のファンの心をくすぐる懐かしさを融合させた、スリリングなSF体験を楽しめる秀逸な作品となっています。 運命は自身が創り出す、それを忘れないでください! - [リスク、回復力、再構築: EPALFER社の成功事例](https://japanforming.com/epalfer_stamping_reinvention/) - 自動車業界向け金型製造分野において、EPALFER社は20年余りの間に、ヨーロッパ有数の独立したメーカーへと成長しました。ポルトガルのセガデスに拠点を置く同社は100名近くの従業員を擁し、試作や小ロット生産向けの設計、製造、トライアウトを提供し、また順送金型やトランスファ金型にも対応しています。 創業者であり CEO のエドゥアルド・オリベイラ氏とビジネスパートナーのパウロ・アルメイダ氏は革新的な取り組みを続け、常に大きなリスクを抱えつつも結果的には大きな成果を出しています。本稿では、EPALFER社が小さな地元企業から世界の自動車金型業界でも有数の大手企業へと成長するまでの道のりと、それに伴う忍耐力、ビジョン、そして徹底した卓越性の追求について、オリベイラ氏が綴ります。 図1: エドゥアルド・オリベイラ氏(左)とパウロ・アルメイダ氏 小さな始まり、大きな野望 2002年にパウロと私がEPALFER社を立ち上げたとき、私たちのビジョンはシンプルでした。それは難易度の高いプレス部品を効率よく高精度に製造できる会社を作ることでした。しかし年月と共に、イノベーションと高度な技術、そしてお客様との強固なパートナーシップを基盤とする企業へとさらに大きな成長を遂げました。 パウロと私は以前から金型製造業に従事していました。この業界を熟知していた私たちは、自分たちで何か新たな事業を立ち上げるチャンスがあると考えたのです。しかしそれは決して簡単なことではありませんでした。従業員は2名のみ、私は設計を担当し、パウロは生産を担当していました。 当初は装置業界向けの金型を製造する小さな事業からスタートしました。これは創業当初の主な収入源となり、同時に金型製造業界に確固たる基盤を築くこともできました。しかし事業を成長させるには方向転換が必要だと気付くまで、それほど時間はかかりませんでした。自動車業界は規模が大きく、より難易度の高い要求に応じなければならない市場でした。この分野へ参入するには、技術やスキルに対する大きな投資が必要でしたが、私たちは覚悟ができていました。 図2: 現場でのエドゥアルドとパウロ 型破りな戦略で大手に快勝 EPALFER社が市場に参入した当初、業界内の激しい競争にさらされました。欧州の金型製造業界には、大手企業と長年にわたり取引がある老舗企業が数多く存在します。その市場に参入することは、決して簡単なことではありませんでした。 しかし私たちは突破口を見出しました。老舗企業の多くは依然として旧式の技術を用いていたのです。そのため一般的な部品は効率的に製造できる一方、高い精度が求められる複雑な部品の製造には苦戦していました。 EPALFER社はこれを千載一遇の機会と捉えました。急速に進化する自動車業界では、複雑な形状や軽量の部品に対する需要が高まっていることを早期段階から認識していました。こうした部品は、従来の技術では製造できないものでした。私たちは他社が手掛けない、あるいは手掛けられない高難易度のプロジェクトに注力することを使命としました。最新技術に投資し、スキルを高め、難しいプロジェクトを請け負う企業としての地位を確立しました。そしてその戦略は功を奏したのです。 図3: 3Dレーザーカットマシン 図4: 順送金型の全体図 躍進と激戦 2005年に自動車業界のTire1サプライヤから初めて請け負った順送金型は、EPALFER社にとって大きな転機となりました。この順送金型によって我が社の技術力をアピールできたのは無論のこと、我が社への信頼を勝ち得ることができたのです。自動車業界は要求が厳しく、大きなリスクも伴います。Tier1サプライヤから仕事を請け負う場合、失敗は許されません。期日内に精度要求を満たす金型を納品したことで、EPALFER社は業界での地位を確立し、その名を知られるようになりました。 とはいえ、想像すらできなかった深刻な課題にも直面しました。中でも大きな打撃となったのは、自動車業界を直撃した景気後退でした。パウロとオフィスに籠り、どのように事業を継続できるかを考え続けたことを覚えています。眠れない夜も続き、厳しい決断も迫られました。プロセスを合理化し、少ないリソースで効率的に成果を上げる方法を模索し続けました。柔軟な対応力ついて様々な学びを得ましたが、長い目で見ると、この経験を経ることで、より強い企業へと変貌を遂げたのだと思います。この試練の時期には、機敏さを保ち、絶えず革新を続け、成功を当然と見なさないことの重要性を学びました。 図5: 順送金型の組立工程 成功への原動力となったシミュレーションソフトウェア 技術への早期投資は、EPALFER社の成長の糧となりました。競合他社に対して強力な武器となる最先端のシミュレーションツール、 AutoForm ソフトウェアへの投資を決定した時のことは今でも鮮明に覚えています。当時、我が社のような零細企業にとってはリスクを覚悟しなければいけない決断でした。巨額な投資でしたが、しかしこれまで不可能だった金型設計の最適化や生産の効率化を実現することができました。その結果、製品の品質向上、開発サイクルの短縮、コストの削減が突如と実現化し、より競争力のある価格設定が可能になりました。 シミュレーションの主なメリットは、お客様とより有意義な議論ができることです。「この材料はある応力条件下でどのように振る舞うのか」や「ブランクホルダ力を最適化できるか」といった技術的な質問をいただいた場合、シミュレーションデータを用いて具体的な回答を提供することができます。このように詳細な情報を提供することで検収のプロセスが改善され、お客様との信頼関係も強化されます。 図6: 現場での金型の搬送 すべてはチームワーク しかしシミュレーションは成功事例の一端に過ぎません。EPALFER社 の成功の核心は、エンジニアリング部門とトライアウト部門の専門知識にあります。現在EPALFER社の従業員は 95名、その全員が事業に貢献しています。デジタルシミュレーションから現場のトライアウトに移行する際、その工程が円滑に進むよう細心の注意が払われます。すべての金型をあらゆる細部まで試験、調整、微調整することで、最終製品がお客様の期待を上回るものとなるよう徹底管理しています。 EPALFER社は創業以来、継続的な学びと成長の機会を重視してきました。革新と限界への挑戦が奨励される、前向きな職場環境を構築できたことを誇りに思います。この業界は特に大手企業との競争が激しく、優秀な人材の採用と維持は容易ではありません。しかし従業員への投資こそがEPALFER社の成功を牽引する原動力であることを誇りに思います。 図7: 部品の製造と倉庫への搬送 お客様のニーズに応える EPALFER社が真価を発揮するのは、お客様のニーズを全力で理解する姿勢に尽きます。自動車分野、特にホワイトボディ、シート、バッテリー、サスペンションシステムでは、非常に具体的で厳しい要件に対応しなければなりません。EPALFER社は金型製造だけでなく、シミュレーション、2D/3D レーザー切断、開発、生産に至るまで、お客様のニーズにマッチする総合的な生産ライフサイクルソリューションを提供しています。 顧客中心の姿勢こそがEPALFER社の真骨頂とも言えるでしょう。お客様の成功を全力でサポートし、期待を上回る高品質の金型を提供しているEPALFER社を理解してくださるお客様からは、何度も仕事の依頼をいただきます。我が社は単なるサプライヤではなく、信頼されるパートナーとなることにこだわり、お客様と長期的な関係構築に取り組みます。 図8: U字型部品 リスクを恐れず成功を勝ち取る 何よりEPALFER社 はリスクを恐れません。装置業界から自動車業界への事業転換はリスクを伴うものでした。当時は零細企業であったにもかかわらず、最先端技術に投資したこともリスクでした。プロジェクトのコスト見積もりでは、常に限界に挑戦するリスクを冒していました。しかしこのようなリスクがあってこそ、今日では我が社はより強靭な企業へと成長しました。 振り返ってみると、新たな挑戦を続け、時代の流れを先読みする能力こそが、我が社にとって極めて重要であったことは明らかです。この業界では自己満足は許されません。自動車業界は、新たな材料、新たな技術、新たな要求など、常に変化し続けています。たとえば電気自動車への移行は、特にバッテリーや構造部品の分野で新たな機会を創出しています。EPALFER社はこれまであらゆる難題に挑んできたように、新たな挑戦に対する準備はできています。 私は将来について楽観的に考えています。我が社の目標は、最先端技術への投資を継続し、持続可能な業務形態を採用し、AIや機械学習を活用して、お客様に最高のソリューションを提供し続けることです。EPALFER社は、従業員、最新技術、そして我が社が最も大切にしている品質、信頼性、顧客満足度に投資を続けていきます。 - [先進高強度鋼材のミクロ構造を定量化する新たな手法](https://japanforming.com/quantify_microstructure_advanced_high_strength_steels/) - 近年、人工知能は目覚ましい発展を遂げ、多くの業界に革命をもたらしています。材料科学の分野においては、ウェイン州立大学のチンユー(ウィリアム)・ヤン教授が主導するデータモデリングのプロジェクトに大きな注目が集まっています。 本稿では、ヤン教授が提唱するデータモデリングを用いて、広範な材料試験を行うことなく、高強度鋼、特にDP鋼の特性を予測する方法について紹介しています。10 年近く前に始動したこのプロジェクトは、合金開発とシミュレーションにおいて、業界が抱える課題に対処できる大きな可能性を有すると期待されています。 高強度鋼材の課題 先進高強度鋼(AHSS)は、自動車や航空宇宙などの業界で、高い安全性が求められる分野に広く使用されています。強度対重量比に優れているため、軽量、高性能、低燃費の自動車開発などに適しています。 その結果、この 20 年間で、AHSSは特に車体部品の分野で急速に普及しています。 しかしAHSS に関しては、その正確な特性評価が大きな課題となっています。 DP鋼は軟らかいフェライトと硬いマルテンサイトの 2相で構成されています。各相は、最終材料に異なる特性を与えます。その特性を完全に理解するには、2相の比率と分布を定量的に把握することが不可欠です。 図1: 2相のミクロ構造 しかし相は確率的に分布しているため、材料内の相の配置を決定することは困難です。2相のランダムな分布と割合を予測して、その機械的特性を特定することは非常に煩雑な作業ですが、材料科学者や材料技術者にとっては非常に重要な情報です。 「AHSS材の導入は、業界に大きな課題をもたらしました」と、ヤン教授は説明します。「高強度鋼は新しい材料です。その定性的な特性はよく理解されていましたが、ある材料が別の材料に比べてどれだけ優れているか、あるいは劣っているかを定量的に評価することは困難でした」 そのミクロ構造の確率的性質を捉え、材料を正確に特性評価する必要があります。するとマルテンサイトとフェライトの分布を定量的に把握することができ、材料特性をより正確に予測することが可能になります。 確率モデルの開発 教授の研究の核心は、DP鋼の特性を予測する確率モデルの開発です。統計的手法を通じて材料のミクロ構造の基本特性を定量化することで、科学者や技術者がDP鋼の利点と限界を評価する上で役立てることができます。 「マルテンサイトとフェライトの分布は無作為であるため、これを確率的に捉え、材料特性をより正確に推定できるモデルを開発しました」と、ヤン教授は述べています。「このモデルに適切なパラメータを当てはめることで、高強度鋼の主な特性を特定し、その機械性能を予測することが可能になります」 このモデルは、ミクロ構造の画像を定性的に目視確認しながら比較する従来の方法とは大きく異なります。これまでは用途に応じて材料を主観的に評価していました。一方、確率モデルでは数学的枠組みを通じて、材料特性を正確に判断することができます。 AIによる材料特性の予測 この革新的な手法は「AI」という言葉で表現されることが多いですが、その本質は、小さなデータセット向けに最適化された統計モデルです。このモデルは、実験から得るデータに限りがある材料科学では特に効果的な活用が見込まれます。確率モデルでは利用可能なデータをトレーニングに活用します。 ウェイン州立大学のヤン教授らの研究により、高強度鋼材のミクロ構造がもつ確率的(ランダム)な性質に対処するための包括的な手法が確立しました(図 2 参照)。 図2:多相材料に対して開発された手法と検証 図3:ミクロ構造の相関関数 この手法は、ミクロ構造モデルと確率的フィールドモデル、相関関数、深層ニューラルネットワーク技術をまとめあげ、材料のミクロ構造のランダム性や確率的特性を効果的に捉えます。二相のミクロ構造における相分布情報を定量的に捉えることで、同等の特性を持つサンプルを追加することができるため、大規模な実験を必要としません。高度な確率モデルと人工知能を活用することで、材料ロット間のばらつきやサプライヤーごとの違いを考慮し、あらゆる生産シナリオにおいてロバストな予測モデルを保証します。相関関数(図 2 参照)を用いることで、ミクロ構造の各特性の相互関係をより良く把握でき、モデルの予測精度が向上します。 この手法の主なユースケースとして、薄板のシミュレーションに用いる材料特性の評価と合金開発の2つが挙げられます。自動車製造や航空宇宙産業などの業界では、製品と製造工程を設計および最適化する上でシミュレーションが不可欠です。材料特性をより深く理解することで、より効果的に製品を設計および最適化することができます。 合金開発では、材料を望ましい機械特性にする上で、最適な相の比率を検討する際にこのモデルが役立ちます。新規材料の開発を効率化でき、物理な実験も最小限に抑えることができます。 合金開発の促進 ヤン教授の合金開発に関する研究は、材料科学の分野の飛躍的な進歩を象徴しています。従来、新たな材料の開発では、広範な物理的試験を通じて特性を決定していました。しかしヤン教授のモデルを活用することで、この工程を大幅に短縮することができます。 「たとえば、新しいタイプの DP 鋼材を開発する際に、物理試験を最小化したければ、このモデルを用いることでDP 500 や DP 600 などの従来の DP 鋼材グレードから、新たなタイプの特性を確実に予測することができます」と、ヤン教授は述べています。 この手法では材料試験にかかる時間とコストを抑制できます。メーカーは機械的実験の回数を減らすことができ、同時に開発工程を促進することができます。 オートフォーム米国のKidambi Kannanは次のように説明しています。「AI モデルは過去のデータをトレーニングに活用します。他の DP グレードを特徴付けるのに十分なデータを有する状態で、新しい DP グレードが登場した場合、AIと確率モデルを組み合わせれば、物理的な試験を実施することなく、新たな合金の特性を予測することができます」 このモデルは革新的な材料が求められる業界にて特に有益です。企業は開発コストを削減でき、また用途ごとに最適な高性能の材料を使用することができます。 研究成果と応用 - [トライアウトの生産性向上:AutoForm を活用した金型たわみ解析](https://japanforming.com/tryout_tool_defection/) - トライアウトではどの作業に最も高いスキルが求められるでしょうか? 答えは「ダイスポッティング」です。本稿では、さまざまな設備パラメータ、特に金型のたわみがダイスポッティングに与える影響、そして製造工程におけるデジタルエンジニアリングを活用した「フロントローディング」がトライアウト全体の時間をどのように短縮できるかを、オートフォーム・インディアのアプリケーションエンジニア、Sameer Chudnaik が解説します。 図1: トライアウトにおける手作業でのスポッティング 問題提起 トライアウト時間の約 35% から 40% は、初期のダイスポッティング作業に費やされます。特に主要部品の場合、品質改善を担う熟練のエンジニアには過大な負担がかかります。そのため品質改善業務が期日に間に合わない場合も稀ではありません。 負担過多の原因と工程改善を通じた緩和策 ダイスポッティングは、プレスの平行度、加工ばらつき、加工精度(加工中のカッターの摩耗など)といったさまざまな設備や工程のパラメータが影響を及ぼすため、難易度の高い工程です。本稿では「プレスと金型のたわみ」が与える影響に着目した検討を行います。 シートの変形中にはモーターから負荷がかかり、金型、ラム、ベッドが継続的にたわみます。通常、最大のプレス荷重は下死点で発生するため、経験則を用いて金型のたわみ値を計算することは困難です。金型のたわみは、以下のようなパラメータに依存します。 ダイにかかる引張力 ダイがプレス面積に占める割合 3D ダイフェースのバランス 金型の剛性 トライアウトでのスポッティングの時間が長引くことのないように、シミュレーションを用いてたわみを見込み補正する必要があります。 たわみの影響について 図 2:左)負荷のない状態で金型が閉じると(BDC)上型と下型は直接接触します 右)負荷がかかった状態で金型が閉じると(BDC)上型と下型はたわみます トライアウトでは、たわみによってシートの拘束条件が不均一になります。トライアウト担当エンジニアは、シートの両面に塗料を塗布し、ダイスポッティングを行います。これは手作業で行うため、熟練した技術が求められます。上型と下型のサーフェスを正確に一致させるスポッティング工程には、膨大な時間がかかる場合もあります。 手作業で行うスポッティングの工数を最小限に抑えるため、多くの企業では独自の手法を採用しています。 図 3:パンチとダイのたわみを補正する上で、上型のみにオーバークラウンを施しています。下型のパンチはマスターとしてそのまま使用します(クラウンは適用しません) したがって、ダイのオーバークラウンは以下のとおり算出します。 ダイのオーバークラウン = ダイのたわみ + パンチのたわみ さらに調査を進める中で、プレス成形シミュレーションのファイル、金型設計の金型ソリッド、鋳造やプレスの弾性モデルなどの入力データを用いて、ダイのたわみを解析しました。ダイのデザインがない場合は、下図に示すように、AutoFormの基礎構造生成モデルを用いて金型ソリッドを生成することができます。 図 4:上型のダイで 0.4 mm、下型のパンチで 0.5 mm の最大たわみ値が確認されました 経験則をもとにダイフェースのオーバークラウンを行う企業もありますが、金型の中心部にオーバークラウンを施しても、多くの場合、実際のたわみパターンは想定通りになりません。右図のように、トランクリッドのパネルでは、金型の最大たわみは中心からずれた位置に生じています。実際の最大たわみポイントは、形状や荷重分布によって異なります。 CAD ソフトウェア上にて、ダイの中心部を最大のたわみポイントとしてオーバークラウンを手作業で決定すると、トライアウト時に誤差が生じる可能性があります。実際の金型のたわみを正確に計算するには、手作業ではなくAutoForm などの高機能ソフトウェアを活用すべきです。金型のたわみをシミュレーションすることで、切削加工に適したオーバークラウンサーフェスを生成することができます。 最終的には、上型のダイと下型のパンチの両方のたわみデータをもとに上型をオーバークラウンすることに決定しました。下図はAutoForm を活用して生成したオーバークラウンのデータです。これは切削加工に使用できるものです。 図 5:切削加工に使用できる部品 エンジニアリングステージにおける金型たわみ解析のメリット 平均的なドロー部品の製造において、ダイスポッティングに 12 日の工数を要する場合、金型たわみ解析によってスポッティングの時間を - [アルミパネル工程設計の改善手法](https://japanforming.com/changan_aluminumforming_case/) - 1 目標および需要 アルミパネルの金型を製造後、トライアウト担当者は最終調整を行いますが、アルミシートには特有の材料特性があるため、最適化には多くの労力を伴います。また品質育成ループの管理も煩雑です。したがって、アルミパネルの製造工程や金型設計段階で、外観に不具合が生じるリスクを評価し、軽減することが重要です。 1.1 アルミシートを成形する上で考慮すべき材料特性 アルミシートは鋼板よりも密度が低く、プレス金型への張り付きやかじりが生じやすいです。またアルミのヤング率が低いため、成形後に大きなスプリングバックが発生します。伸びや成形限界曲線(FLC)が低いことから、しわやわれのリスクが高まります。さらにアルミシートは硬度が低く、時効硬化しやすいため、プレス成形がより難しくなる要因となっています。 1.2 アルミの金型工程の包括的改善 上記の課題に対処する上で、以下の重要な4つのポイントにご留意ください。 1. 部品の最適化:早期段階からサイマルエンジニアリングを開始し、部品設計を最適化します。これには、形状の調整による剛性の強化、フィレットの追加、成形性上のリスク抑制などが含まれます。 2. 工程の最適化:アルミシート特有の基準を用いて、プレス成形工程をシミュレーションします。成形結果の安全マージンを評価し、工程設計、部品の位置決め、カット、フランジ/成形方法を検証します。 3. 構造の最適化:エア抜き穴やストリッパーなどを用いることで、プレスの範囲と荷重を抑制し、トリムレイアウトの詳細を調整します。 4. 製造の最適化:材料のばらつきに対応するための十分な成形マージンを確保します。これには、粗さ、ダイスポッティングのレベル、流入のコントロール、カット角度、フランジのクリアランスなどに注意が必要です。 2 成形性の不具合予測と予防策 アルミパネルの製造における成形性の不具合には、しわ、われ、スキッドラインなどがあります(図1参照)。われは材料のひずみが限界値を超えると発生し、しわは材料が局所的に蓄積することで生じます。またダイやパンチがシートに接触するとスキッドラインが生じ、プレス部品のサーフェスに輪郭の跡が残ります。 図1: 成形性の不具合例 3 外観品質の不具合予測と予防策 外観品質の不具合は、主に図 5 に示すように、歪んだゼブララインの反射や不明瞭または不鮮明なフィーチャーラインなど、目立ちやすい「A クラス」の領域で発生します。 図5: 不明瞭なフィーチャーライン 3.1 外観品質の不具合予測 最終プレス部品、CNCサーフェスデータ、基準データのゼブラパターンを比較することで、外観の不具合を予測できます。これらのパターンに相違がある場合、それは最終的なパネルが反り返っていることを意味します。フィーチャーラインの明瞭さは、角度と長さを測定して評価します。角度が 154° 以上、弧の長さが 6 mm 未満、または半径が 48 mm 未満の場合、フィーチャーラインは不明瞭です。 3.2 外観品質の不具合予防策 外観上の不具合は、見込み補正係数を調整してスプリングバック量を抑制し、見込み補正領域を最適化することで緩和できます。見込み補正データのゼブラパターンとライン長を基準部品に合わせることにより、不具合を最小限に抑えることができます。さらに、スプリングバック見込み補正データをもとに「A クラス」のサーフェスを調整することで、図6のようにゼブララインを滑らかにすることができます。 図6: 補修前後の見込み補正結果の比較 フィーチャーラインの明瞭度が予測基準を満たさない場合は、図 7 に示すように、ダイの構造に対して、デザインに対策を施す必要があります。 図7: フィーチャーラインのデザインの調整 4 サーフェス品質の不具合予測と予防策 サーフェス品質の不具合とは、図 - [GMTCK金型・プレス部門: ワンシステムによる連続したデジタルエンジニアリング (第1回: ロバストなレイアウトモデリングプロセス)](https://japanforming.com/gmtck_korea_digital_process_stamping/) - GMTCK金型・プレス部門が掲げる「期待を超える大胆な改革」のスローガンに沿って、製造技術ダイプロセスエンジニアリング部署では部署や組織の大胆な改革に着手し、新たな技術や環境を推進しています。 GMTCK(ゼネラルモーターズテクニカルセンターコリア)の製造技術ダイプロセスエンジニアリング部署は、期待を超えるエンジニアリングソリューションを提供し、その実績を出すことで、同僚や顧客を尊重し、信頼と尊敬を集める部署へと成長しています。さらに顧客のニーズに応え、デジタルプロセスによるイノベーションを推進すべく、さまざまな手法を模索しています。 自動車業界は、ネットゼロエミッションの実現とESG基準の達成に向けて継続的な取り組みを行っています。これにはエンジニアリングワークフローの簡素化やデジタル化を通じたプロセスの効率化、材料歩留まりの最適化によるコスト削減、不良品の削減や金型修正の削減による工場稼働時間の改善などが必要です。 R11リリースイベントでは、オートフォームコリアから「品質ループがゼロになるロバストなデジタルプロセス」の発表がありました。その後、GMTCK製造技術ダイプロセスエンジニアリング部署では、ロバストなデジタルプロセスを実現するため、オートフォームコリアと共同で「ワンシステムによる連続したデジタルエンジニアリング」プロジェクトを立ち上げました。本稿ではこれまでの成果をご紹介します。 2023年以来、GMTCKはレイアウトモデリングプロセスの大幅な改革に取り組んでいます。GMTCK製造技術ダイプロセスエンジニアリング部署のエンジニアであるByongchan Ahn氏は、プロセスデザイン分野の新たな製品であるAutoForm-DieDesigner®Plusでボディサイドのアウター部品をモデリング、解析しました。オートフォームコリアは2024 年の主な活動の一環として、GMTCKと緊密に連携してAutoForm-DieDesigner®Plusでレイアウトサーフェスモデリングと見込み補正のモデリングを行う計画をたてました。これにより、モデリング、解析、見込み補正のプロセスにおいてワンツールシステムが実現し、他のソフトウェアへデータ変換する必要性が大きく低下します。 図1: ワンツールシステム: プロセス改善 第1回: ロバストなレイアウトプロセス オートフォームおよびGMTCKでは、ロバストなデジタルプロセスのプロジェクトを2段階構成としています。 1. レイアウトサーフェスのモデリングプロセスを改善するためのロバストなレイアウトプロセス 2. 見込み補正の方法とモデリングプロセスを改善するためのロバストなスプリングバック見込み補正プロセス 見込み補正モデリングの改善については、第2回で詳しく説明します。 図2: ロバストなデジタルプロセスのキックオフミーティングとプロセスコンサルティング ロバストなレイアウトプロセスのプロジェクトでは、AutoFormで直接モデリングすることで、モデリング時間とデータ変換時間の短縮を図りました。GMTCKの担当者が初期トレーニングを受講後にAutoFormを初めて使用しましたが、AutoFormの機能は直感的で使いやすいため、モデリングを効率的に行うことができました。またモデリングの経験がなかったエンジニアも参加し、十分なスキルを身につけることができました。 モデリングスキルの向上のため、オートフォームおよびGMTCKは「DieDesignerPlusモデリング研究グループ」を立ち上げました。GMTCKのメンバー全員が積極的に参加し、既存の自動車プロジェクトから製品のモデリングに適用できるモデリングのレベルを検討しました。各エンジニアの手法は社内で共有され、オートフォームとの毎週のテクニカルミーティングでは、テクニックや改善点に関するレビューとフィードバックが行われました。 図3: DDPレイアウトモデリング研究グループとDDPモデリングのトレーニング オートフォームおよびGMTCKは1ヶ月間にわたって研究グループを開催し、最終会議ではロバストなレイアウトモデリングプロセスのプロジェクトの進捗を確認し、ロバストなスプリングバック見込み補正プロセスに関するプロジェクトの計画について話し合いました。このイベントでは、DieDesignerPlusに関するテクニカルサポートや要望をまとめ、共有しました。 GMTCKのByongchan Ahn氏は、ロバストなレイアウトモデリングプロセスのプロジェクトを評価し、次のように述べています。「モデリングの容易さは大きなメリットですが、改善の余地も残っています。DieDesignerPlus モデリングを作業プロセスに適用すると、既存のプロセスよりも時間を約22%短縮できます」 継続的なコミュニケーションを通じて顧客とのより緊密な関係を構築できたため、オートフォームではこのプロジェクトを成功と評価しています。 図4: 最終レビューミーティング まとめ GMTCKとオートフォームコリアは、今後も引き続きプロセスの改善に取り組みます。オートフォームの革新的な製品や手法を通じて、デザインプロセスにおけるCAD品質のモデリングと見込み補正のさらなる強化を図ります。この進歩によってワンツールシステムが実現すれば、解析とCADモデリングのトランジションタイムが削減され、他の重要な作業プロセスにより多くの時間を割くことができるようになります。モデリングの経験がないエンジニアも作業できるようになり、またモデリング時間も従来のプロセスよりも約22%短縮されます。オートフォームは顧客のニーズに配慮し、新たな技術を取り入れることで、プレス成形およびホワイトボディのデジタル開発プロセスの推進に貢献してゆきます。AutoFormが業界にもたらすさらなる改善と進歩は、今後明らかになることでしょう。 その第2回では、見込み補正モデルの改良点について詳しくご紹介し、実際の適用事例とともに、ロバストな見込み補正プロセスについて説明します。 - [ボルボ・カーズの精度調査: 金型の表面粗さが解析精度におよぼす影響を評価](https://japanforming.com/volvo_tooking_roughness_simulation_accuracy/) - トライボフォーム・エンジニアリング、ボルボ・カーズ、スウェーデンのブリーキンゲ工科大学機械工学部は、共同研究で金型の表面粗さがシミュレーション精度に影響する度合いを分析しました。サーフェスの測定データは、2015年から2023年にかけて、ボルボ・カーズがさまざまな生産用やトライアウト用の金型から収集したデータを使用しています。 この研究では、金型を構成するダイから39箇所、ブランクホルダから41箇所、パンチから20箇所、合計100箇所のサーフェス測定をもとに分析を行いました。各金型コンポーネントのサーフェスを複数の位置にて測定し、その対象には平面とカーブしたサーフェスの両方が含まれます(図1と2を参照)。3D共焦点顕微鏡を使用してサーフェスの3次元特性を捉え、結果は表面粗さ(Sa値)として表します。平均値ではなく中央値を使用したのは、外れ値に対するロバスト性を高めるためです。 図 1: AutoFormでモデリングしたリアドアのインナー部品の金型一式 図 2: リアドアのインナー部品のサーフェス測定位置の例 次に100箇所の測定値それぞれについて、詳細な解析を行いました。複数のシナリオのデータポイントを生成するために、平面領域と半径領域をスキャンごとに別々にプロットしました。 金型の表面粗さを正確に表現することがシミュレーション精度に影響を及ぼすかを評価するために、この研究では4つのケースを想定しました。 クーロン摩擦モデルを使用 TriboForm摩擦と平均 Sa 表面粗さ値を使用 金型コンポーネントごとに表面粗さを変化させたTriboForm摩擦を使用 金型コンポーネントごとに表面粗さを変化させたTriboForm摩擦を使用し、各コンポーネントの平面および半径領域にも適用 表1の数値を用いてこれら4つのケースのシミュレーションを行い、結果を比較しました。 表 1. 解析した4つのケースと、対応する金型の表面粗さの値(μm) 結果 この研究では、金型の表面粗さの値の正確さが、シミュレーション精度にどれほど影響するかを明らかにしました。 それでは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。 (a) ケース1 – クーロン摩擦 0.15 (b) ケース2 – 金型に依存しないTF (c) ケース3 – 金型に応じたTF (d) ケース4 – 金型と半径に応じたTF 図3. ドロー終了時の高度な成形性結果。部品全体の成形性とFLDを示しています。 ケース 1 摩擦係数が一定(0.15)のクーロン摩擦モデルを用いたシミュレーションでは、図3aの成形限界図(FLD)が示すとおり、部品に不具合が生じます。しかし実際のボルボ・カーズの製造現場にて同じ形状、金型、工程を用いると、不具合が生じずに部品を成形できたため、この解析結果と現実の結果は一致しませんでした。 シミュレーション結果のみで検討を進めると、不具合を解消するために不必要な工程や金型形状の修正が行われることになりかねません。このシミュレーションと現実の結果の相違は、業界で広く使用されているクーロン摩擦モデルを用いたシミュレーションが、実際の製造現場の結果と一致しない可能性を示唆しています。 - [ホットフォームクエンチング(HFQ®)の利点と推奨事項](https://japanforming.com/hfq_technology_benefit/) - はじめに アルミニウムの冷間プレス成形は数十年前から活用されていますが、対応できる製品には限界があります。複雑な部品は分割し個別成形してから組み立てる必要があるため、デザインの自由度は制限されます。 熱間プレス成形は溶体化してから高温で成形するため、冷間プレス成形工程の欠点の多くが解消されます。本稿では熱間プレス成形の主な利点について説明します。 HFQが必要な理由 ホットフォームクエンチング(HFQ)には、アルミニウムの従来の成形工程よりも多くの利点があります。冷間プレス成形では実現できないデザインでもHFQ ならば対応可能です。アルミニウムのプレス工場が HFQを導入することで得られる利点を探ってみましょう。 高い成形性 HFQ の主な利点に、その高い成形性が挙げられます。これによりデザインの幅が広がり、1枚のブランクからシングルステージで複雑な部品を成形することが可能になります。たとえば、アルミニウムを深絞りで加工するドアインナーは形状によっては、1枚のブランクを冷間プレス成形することでは実現できないため、2枚または 3枚をそれぞれプレスしてから組み立てなければなりません。 HFQ を利用すれば1 枚のブランクからシングルステージで成形できるため、複数の金型を使用し、アセンブリ工程を追加する必要がありません。また部品コストを削減でき、材料歩留まりも向上します。 図1: (左) 冷間プレス成形 vs. HFQ 熱間プレス成形 またアルミニウムのドアリングの多くは冷間プレス成形が難しいため、一般的には複数パネルを組み立わせたり、複数の金型を用いた製造方法が採用されています。しかしHFQでは、1枚のブランクからシングルドローで成形でき、同時に最終部品の強度を担保することで車両の側面衝突性能を向上できるのです。 HFQ は超高強度アルミニウムの長所を最大限に引き出すことができます。超高強度アルミニウムを冷間プレス成形する場合、スプリングバックが大きい、鋭った半径を成形できない、ドロー深さが浅くなる、寸法ばらつきが大きい、破断のリスクが高いなどの課題に直面します。そのためアルミニウムを選択しないメーカーもありますが、HFQを導入することでこれらの課題は解消されます。 超高強度アルミニウムの利点にダウンゲージングが挙げられます。AピラーやBピラーなど強度が重視される部品の板厚を薄くすることができるため、車両を軽量化できます。これにより、コストの削減、持続可能性の向上、運用コストの削減などを導くことができます。 HFQでは超高強度アルミニウムを扱えることが決め手となり、多くのメーカーがHFQを導入しています。 図 2: HFQで成形したバッテリーケース (写真提供: Jet-Wagen) スプリングバックはごくわずか 設計したプレス成形工程が実現できるかはスプリングバックの影響を強く受けます。そのためスプリングバックの予測とコントロールは大きな課題となっています。 アルミニウムの強度が高まるにつれて、スプリングバックが大きくなり、最終製品の精度に影響が広がります。それに従い、シミュレーションや製造現場でのトライアンドエラー、それに長時間を要するトライアウトなどを通じて、スプリングバック見込み補正の方案を策定しなければなりません。 部品のスプリングバックが過度な場合は、部品の再設計または金型の再加工などで対処することも可能ですが、いずれもコストと時間がかかります。 HFQ工程は高温で加工するため、冷間プレス成形に比べスプリングバックを最小限に抑制できます。最終部品に残留応力が残らないため、薄板や超高強度のアルミニウムでも、正確な寸法管理と再現性を担保できます。 超高強度アルミニウムを選択する際に、見込み補正の方案や部品の再設計に頭を悩ませる必要がなくなります。 トライアウトを繰り返したり、金型を再加工することはプロジェクトの遅延や評判の低下につながるため、リソースの削減とそれに派生する利便性は非常に大きいです。 金型のコスト削減 HFQ 工程を導入すれば、用途によってはプレス金型やアセンブリのツールが不要になる場合があり、製造の大きなコスト要因である金型への投資を大幅に削減できます。 ある事例では、高圧ダイカストの代わりにHFQ を採用したことで、金型コスト全体の60% 削減だけでなく、重量の 35% 削減も実現できました。 - [金型と共に歩んだ38年間の軌跡](https://japanforming.com/career_tool_die_usa/) - ミシガン州には北米の自動車産業向けに部品を供給する金型工場が数多くあります。特に州西部のグランドラピッズは昔からこうした工場が集まる地域です。その地で育った私にとって、金型製造業に従事することは当然の選択肢でした。見習いとしての下積み期間は長く、厳しいものであることはわかっていました。しかし全力を尽くして努力すれば、高度な技術を要する職業に就き、高収入を得ることができ、高い満足度を得られるのです。金型職人の数は減少の一途をたどり、また革新的なデジタル技術の急速な普及に伴い仕事内容も変化していますが、それでもこれは非常にやりがいのある職業であることに変わりはありません。 私は最初から全力で取り組みました。ウォルターヘイガンゴルフの工場で働き始めて間もなく、地元で有名な金型工場からの支援を受け、全米工具機械加工協会(NTMA)が主催する金型職人の育成コースを受講する機会を得ました。私はこの理論課程を6カ月で修了すると決意しましたが、最初の頃はとても大変でした。NTMA で 8 時間みっちりと授業を受けた翌日も、休む間もなく金型工場で丸1日勤務するという日々を過ごしました。工場では主にメンテナンスや清掃作業を担当していました。この金型工場では新人研修から設備周りのことまで、あらゆる面で私をサポートしてくれました。見習い期間の終了後も引き続き4 年勤務するように打診されましたが、それは当然だと思い承諾しました。 半年後にはNTMAの課程を修了し、次に製造現場での実践的な学びが始まりました。私はベイリーダーとして配属され、金型職人たちと仕事をするようになりました。金型職人の見習いとして「修行」に出たのです。この間、機能的なプレス金型を「作り込む」ためのあらゆる過程について、多くの学びを得ました。まず荒加工の鋼材からの加工準備、そして2D 部品図面を読み込んでボルト穴や位置決め穴の加工、最終的には切削盤やサーフェスグラインダー、タブグラインダーを使用して 2D 加工を行い、ブロックを 3D の粗形状に加工する準備を整えます。その後も、手作業による研削(いわゆる「ペーパー引き」)、手作業でのパンチの設置、リードチェック、青焼き、型合わせなどの工程があります。これは金型を「販売」するまでのリードタイムが約 6 ヶ月だった 1980 年代当時の標準的な「金型製造工程」でした。まもなく私は金型職人としての認定を受け、部品とそのプレス金型やプレス成形工程に関わる全般の責任者を務めるまでになりました。 自動車OEMの間でタイミング、コスト、新たな材料、工程改善、製造品質などの競争が激化し、その影響がサプライチェーンの下流にある金型業界にも波及する中、技術革新も急速に進みました。たとえば高精度な高速機械加工のプログラミングが可能になり、3D 形状金型ブロックの加工準備期間が大幅削減されました。1990 年代半ばには、初回トライアウトまでのリードタイムが 3 ヶ月程度にまで半減しています。しかもこれはシミュレーションが登場する前の時代です。 スポンサー支援を受けた金型工場では献身的に仕事に打ち込みましたが、組織変更や経営陣の交代(競争や変化が激しい金型業界ではよくあることです)などがきっかけとなり、私は同じ地域の別の金型工場に移り、金型職人として本格的に働き始めました。ほぼ同時期の1990 年代半ば、最新技術を学びたいという思いが芽生え、地元のコミュニティカレッジで Mechanical Desktop ソフトウェアを使用した 3D サーフェシングのクラスを受講しました。金型工場では当初、製造部門に配属される予定でした。しかし私にデジタルサーフェシングのスキルがあることを知った社長からの提案を受け、エンジニアリング部門に「昇進」して、この最新技術を社内に広めるための支援を行うことになったのです。給与は減りましたが、しかし高い生産性が見込める技術力の可能性や長期的な展望を考えると、これが自分の将来にとって最善の選択であると確信しました。エンジニアリング部門では主にワイヤーフレーム製品をサーフェス形状に変換し、金型のサーフェシングや金型のカッターパスを作成する業務を担っていました。私はいつしか「コンピュータ博士」となり、その他の IT 業務も自然と私が担当するようになって ゆきました。 フィレット半径がないワイヤーフレーム (左) 部品の印刷仕様に合わせてワイヤーフレームのサーフェスを作成 (右、シートの片側) 活気にあふれていたこの時代、意欲的に学びを続けることで多くのチャンスを掴むことができました。技術進歩に伴い、カッターパスプログラミングは製造現場が担うようになり、新たな切削機で直接実行できるようになりました。またOEM のデザインソフトウェアが3D製品ファイルを扱うようになると、プレス工場や金型工場では製品をワイヤーフレームから作成する必要がなくなりました。 現在の標準的なソリッド形状 エンジニアリング部門の生産性は、技術革新と共に大きく向上しました。プレス成形シミュレーション技術は進化と成熟を続け、また最新の高度な材料グレードからは次々に新たな課題が生じ、そしてプレス金型の「予算」(コストと時間)はますます削減される一方で、コンピュータに精通したオペレーターは増え続け、コンピュータの計算帯域幅も拡大されてゆきました。そのような中、金型業界のエコシステムに、シミュレーション技術がもたらされたのです。 私が勤務していた金型工場は、エンジニアリング業務にシミュレーションを導入した、おそらく最初の企業です。シミュレーションを長期的な視野から捉えると、コスト削減、金型製作工程の迅速化、収益の大幅増、プレス成形工程のコスト効率、顧客とのコミュニケーションなど、数多くのメリットがあります。シミュレーションの導入以前、成形やスプリングバックの不具合は、金型職人の経験則をもとに対処していました。見るからにスプリングバックの不具合が生じそうな部品がお客様から持ち込まれることも度々ありました。そのような時は、職人たちが集まってスプリングバックの程度を推測し、帽子に数ドルずつを投げ込み、結果が出るまで待っていたものです。金型から最初の部品を取り出してスプリングバックを測定すると、最も近い予測をした人がその賞金を獲得したのです。その後、測定したスプリングバックから CAD で調整を行い、形状を再作成します。トリムラインはプレス部品に刻印し、ブランクをバンドソーで切り取り、そして各ブランクのエッジをヤスリで整えて展開します。後にはウォータージェットやレーザーを使用するようになりましたが、それでも CAD でカットラインを変更する必要がありました。 初期のシミュレーションは、非常に厄介な作業や重要な工程のすべてをシミュレーションできることに価値がありました。当時の選択肢(Pam-Stamp、Optris、AutoForm)を評価し、最終的にAutoForm を採用しました。決め手となったのは、直感的で使いやすいシミュレーション設定環境と、シミュレーション実行のターンアラウンドが非常に短いことでした。シミュレーション設定用の金型サーフェス作成機能(AutoForm-DieDesigner)の開発が急速に進むと、この機能は当社の業務に欠かせないものとなりました。さらにはAutoForm-Trim によるトリム展開、やAutoForm-Compensator は非常に大きな利益をもたらしました。当初、これらの機能はすべて、SGI、HP-UX、Sun OS などの Unix ベースのプラットフォームで利用していました。後にWindows システムへの移行が可能になると、当社はすぐにこの機会を捉え、北米で初めて Windows システムに移行した金型工場となりました。 - [シューラー社のアルミニウム熱間プレス成形手法 『FAST』 の工業利用](https://japanforming.com/schuler_aluminum_hothorming_method/) - シューラー社がインペリアル・カレッジ・ロンドンおよび Hanlei (Guangdong) Technologies と共同開発した画期的な工程についてご紹介します。この手法はFASTと称され、アルミニウムの熱間プレス成形分野に飛躍的な進歩をもたらしています。 図1: シューラー社、インペリアル・カレッジ・ロンドン、Hanlei (Guangdong) Technologies, Automotive Center Südwestfalen (ACS)のメンバー FASTとは FASTはFast light Alloy Stamping Technology(高速軽合金プレス成形技術)の略語で、アルミニウムの熱間プレス成形に要する時間、スペース、コスト、エネルギーの削減が見込める先駆的な工程です。 この工程では加熱の効率化と自動化により、従来は数分を要した加熱時間が約 5 秒へと短縮されました。さらにFAST では、材料の前処理や後処理も不要になります。 加熱すると延性が高まるため、従来の工程では前処理が不可欠でした。通常はブランクを金型で加工する前に、ジェット加熱炉でブランクを加熱します。しかし加熱によって特定の特性が失われる場合があります。 これらの特性を回復させるには、「時効」と呼ばれる熱処理工程が別途必要となります。この後、処理は成形後に施しますが、最適な状態に戻るまで 2~3 時間を要します。その結果、従来の工程では熱処理に膨大なエネルギーが費やされていました。FASTの導入によって、この問題が解消されます。 これまで5 分を要した加熱が、FASTではたったの5 秒間となります。これはFASTの大きな利点です。前処理と後処理がなくなると、エネルギー投入量が削減されるだけでなく、それぞれ加熱炉が不要になるため、その設置スペースも他に有効利用できます。加熱はプレスに組み込まれているため、投資コストも削減されます。 つまりFASTを導入することでプレス成形に要する時間とエネルギーを大幅削減でき、前処理や後処理などの工程も排除できます。 図2: 加熱ステージと成形ステージにおける下型の全体図 FASTを導入すべき理由 FAST は従来のアルミニウム熱間プレス成形を発展させた工程であり、従来の手法を代替することができます。 前処理と後処理が不要になる点については前述のとおりです。単独の加熱炉が不要になるため、必要な設置面積を大幅に削減でき、製造工場の設備投資(CAPEX)に有利に作用します。 エネルギー要件の削減は、特に過去 3 年間でエネルギーコストが飛躍的に上昇したヨーロッパにおいて、事業運営費(OPEX) に有利に作用します。 FASTによってサイクルタイムが数時間から 15 秒に短縮されると、工場は同じ時間でより多くの部品を製造できるようになります。工場の生産性が向上すると、EBITDA および利益率が大幅に増加します。 また二酸化炭素排出量の削減は、企業成長やマーケットでの評判にも大きな役割を果たします。EUが導入した排出権取引制度であるEU ETSは、この種のマーケットとしては世界最大の規模を誇ります。企業ではエネルギー投入量を削減することで二酸化炭素排出量を削減でき、その排出権を補助金や現金に交換することができます。排出権取引制度の認知が進み、その枠組みが広がってゆけば、そのメリットもさらに拡大していくでしょう。 FASTの仕組み FAST では油圧プレスに2 つの金型が設置されています。ひとつは加熱工程に使用するものであり、もうひとつは成形を担う金型です。 最初の金型は、接触加熱を利用してブランクの温度を加工温度まで素早く上昇させます。所要時間は材料の厚さに応じて 3~5 秒ほどです。従来の工程では同程度の温度に達するまで通常 5 分、つまり - [シミュレーションを活用して精度を重視するFluidFormingメタルフォーミング工程を最適化](https://japanforming.com/aerospace_fluidforming_hydroforming/) - FluidFormingのケーススタディが、複雑な航空宇宙部品に対するシミュレーションの有効性を実証 テネシー州に本社を置くFluidForming Americas社は、自動車、家電製品、エネルギー、航空宇宙産業など、品質と精度が重視される産業向けに、非常に複雑で再現性の高い成形部品を提供しています。最近取り扱った部品には、燃料電池、バッテリー筐体、ファンブレード、熱交換器などがあります。FluidFormingのハイドロフォーミング工程は、メタルフォーミング業界で最も高い成形圧(最大60,000 psi)を採用しています。 部品生産を最適化し、お客様に最高級の品質、精度、再現性が担保された部品を提供できるよう、同社のエンジニアリング部門ではAutoFormを活用して生産の合理化、製品設計の最適化、コスト管理、材料の無駄の削減を図っています。 従来のブラッダーによるハイドロフォーミングは1950年代から採用されてきましたが、FluidFormingメタルフォーミングはブラッダーを使用しません。これはメタルフォーミング分野における初の大革新です。この持続可能なメタルフォーミング工程では、成形媒体として高圧の水を使用し、また高精度なラピッドプロトタイピングや少~中量の部品生産にも対応できます。 https://www.youtube.com/watch?v=HiBCL9oQD0o 製品開発と最適化のプロセス FluidForming社はお客様と連携して製品設計を改善し、安定した生産を行っています。エンジニアリング部門ではお客様の3D CAD図面の作成段階から関わることで、その部品について理解を深めることに努めています。 その後、AutoFormシミュレーションを実行しながら部品設計をさらに調整し、FluidFormingメタルフォーミング工程にあわせて部品を最適化します。このため開発部門では金型の製作や部品の成形前に不具合を特定および解消することができるようになり、お客様の工数削減に貢献できます。 Step 1: バリューエンジニアリング → 1-3週間 Step 2: 金型の製作 → 4-8週間 Step 3: セットアップ&部品の承認 → 2-3週間 FluidFormingメタルフォーミングにおいては、材料の流入からクランプ圧、水量、水圧に至るまで、すべての工程に変動が伴いますが、それらはコントロールされています。FluidFormingの成形圧は最大4,000 bar(60,000psi)にも達し、現在製造メーカーが関与する他のどのメタルフォーミング工程よりも精緻な部品を生産できます。また成形媒体である水は材料の片面だけに接触するため、仕上げまたは塗装が施されたメタルサーフェスにも対応できます。 さらにこの工程に必要な金型は1つのみなので、コストと生産時間も大幅減となります。FluidForming FormBalancerは3Dプリント金型だけでなく、アルミニウム、熱間圧延鋼、工具鋼など、さまざまな型材に対応できます。モジュール式の金型やインサートを使用できるため柔軟性が一層高まり、複雑な部品成形にも対応するコスト効率の高いソリューションを提供します。 The FluidForming FormBalancer 「不可能」を可能に FluidForming社エンジニアリング部門では、インディアナ州にあるブラジルに本社を置くJ&N Metal Product社と共同で、AutoFormを活用しながら航空宇宙メーカーの部品設計の最適化を行いました。 上の画像は、ある大手航空宇宙メーカーのために製作した試作品です。右側のバックルは成形部品の一部ではなく、部品の機能には影響しません。この部品はインコネル718から成形し、サイズは18" x 13.5" x 2.15" (L x W x D)です。 J&N社のプロジェクトエンジニアリングリーダー、オースティン・エクスタインは次のように述べています。Fluid Forming Americas社に出会うまでは、「バタフライ」部品の製造はほぼ不可能だと考えられていました。材料の厚みと方向について共に検討した結果、非常に複雑なアセンブリにも対応できる部品の製造に成功しました。 FluidForming Americas社のエンジニアリング部門では、シミュレーションを通じて成形性と材料の厚みという観点から部品の初期検討を行うことができました。そこから工程の成形性に対するフィージビリティについて、フィードバックをお客様に提供しました。また設計を変更することで成形性を向上させる提案もできました。 この事例では、初期の方式では成形ステップを1回で検討していましたが、これでは「バタフライ」部品形状の金型が鋭角であるため、材料が裂けることが判明しました。そこで2つの金型を使用し、中間アニーリング方式に改めることで、安定した生産が見込めるようになりました。この革新的なソリューションにより、重要領域の板減が緩和され、裂けは生じなくなりました。 この形状に必要な成形圧は、1次成形で120 - [中国OEMが運用しているスマート金型流入プロセス](https://japanforming.com/smart_diedraw_in_process_china/) - 中国のOEM企業では、ある戦略を通じて自動車部品の開発が改善されました。本稿では特にシミュレーションの活用を通じてプレス成形工程にもたらされた変化について検証します。 まずはこのOEMがプレス成形シミュレーションをどのように活用してきたか、簡潔にご紹介します。 2005年:乗用車の生産を開始しましたが、スプリングバック見込み補正は2016年まで従来の手法で行っていたため、スプリングバック、しわ、われの見込み補正には多くの手作業での調整が必要でした。 2016年:プレス成形の効率を向上させるため、AutoFormを活用して工程を検証し、工程の最適化、デバッグの最適化、座標変換に取り組みました。 2019年:AutoForm-Sigmaを導入し、またTriboFormの試験運用も始めました。 2020年:AutoForm-Sigmaを完全に運用にのせ、またTriboFormを正式導入しました。シミュレーションの全ての設定を実際と同様にフィットさせるため、OEMとTriboForm担当部署が協業でカスタマイズライブラリを構築しました。OEMは材料と潤滑剤を提供し、TriboForm担当部署は材料の表面粗さなどの要因をライブラリに組み込みました。 2021年: 1つ目のTriboForm材料ライブラリが完成し、自動流入コントロールシステムを組み込んだ部品設計の準備が整いました。 2022年: 2つ目のTriboForm材料ライブラリの開発を新たに開始し、デルファイ法や専門機関の協力のもと、さらに工程最適化を進めました。 2023年:複雑な設計部品に小規模な流入戦略を用いることで、イノベーションが促進されました。また、生産中の流入の自動コントロールシステムも開発されました。 OEMの調査結果 ロバスト性解析の導入前は、シミュレーションと実際の製造現場での数値に大きな差異があり、トライアウトを何度も繰り返しながら金型を調整したり、生産中にダイフェースを再加工する必要がありました。また、自社専用のTriboFormライブラリがないため、シミュレーション結果の精度が低く、手作業による調整も必要でした。こうしたトライアンドエラーによる調整は時間がかかり、コストもかさみます。部品ごとに何度も金型の再加工や再切削を行わなければなりませんでした。 内製の鋼材部品をシミュレーションすることで、金型のローンチ前の絞り工程の再加工を、1部品あたり1~4回からわずか0.11回まで削減できました。主要アルミ部品については、現在では再加工は平均1.19回です。 通常の寸法要件は±0.5mm、特定領域では±0.25mmですが、トライアウトの回数を削減しながら、より短時間で寸法基準を満たすことができました。 スマート金型の流入プロセス このOEMでは、複雑な部品設計に新たな材料流入プロセスである、スマート金型の自動材料流入システムを導入しました。 まずロックビードを使用できる部品については、最小流入プロセスから始めました。これは大半の部品に適用できましたが、ロックビードを使用できない場合やCp値が許容限界を超えてしまう場合など、より高度なソリューションが必要な場合もあります。そのような場合には、流入が最適になるように自動制御するスマート金型の自動流入コントロールシステムを採用しました。 特記すべき部品 OEMがプレス成形工程を改善した具体的な事例を見てみましょう。問題となったのは、新型モデルのフードで、生産中に不具合が生じていました。この不具合には主に2つの要因がありました。 まず自社専用の材料ライブラリがなかったため、材料のスプリングバックがシミュレーションと一致しませんでした。またAutoForm-Sigmaも導入されていなかったので、ロバスト性解析は実施していません。その結果、担当部署ではトライアンドエラーを重ねながら調整することで寸法要件を満たさなければなりませんでした。 このフード部品では、シミュレーションを活用してフランジ金型が成形を開始するタイミングを検討しました。フードの前面部分を検証した結果、フランジ金型の形状を変更し、成形タイミングを調整することで、スプリングバックを最小限に抑えられる事が分かりました。これらの変更により、再加工や溶接の必要がなくなりました。下図がこれらの変更の効果を示しています。 図 1: 最適化されたフランジ金型形状のフリースプリングバックと実測の結果(注:設計上の特徴を除去するために、一部の領域をぼかしています) この結果から見て取れるように、最良のフランジ金型形状を特定したことで、スプリングバックを大幅に緩和することができました。 スマート金型流入プロセスの利点 以下のグラフは、AutoForm-Sigmaおよびスマート金型流入プロセスの導入後のシミュレーションを通じたさまざまな改善を示しています。 図2: シミュレーション統合がさまざまなプレス成形パラメータに与える影響。 左から右へ: 1) 最初のパネル寸法偏差; 2) 初回パネルの合格率; 3) 正式図の出図前のサーフェス修正回数;4)ホームラインのデバッグ時間 これらのグラフでは、青色のバーはAutoForm-Sigma導入前の値を表し、緑色のバーは導入後の値を表しています。 1番目のグラフは、AutoForm導入後の最初の部品の寸法偏差が6mmから2.37mmに減少したことを示しています。 2番目のグラフは、初回プレス部品の合格率が41.80%から73.50%に改善したことを示しています。 3番目のグラフは、正式図の出図前に必要なサーフェスの修正回数を示しています。スマート金型の導入後は、再加工や再切削などの修正がなくなり、トライアウトの回数が4回からゼロとなった非常に大きな改善結果を示します。 最後の4番目のグラフは、デバッグ時間が78時間からわずか5.9時間に大幅に短縮されたことを示しています。これはAutoFormの導入と新たなプロセスがプレス成形工程の改善に寄与する可能性を示しています。 結論 図3:鋼材部品のプロジェクト統計。白点: 平均初回パネルの合格率は73%; 青点: 平均納入合格率は87%; 黒点: 出荷前の平均サーフェス再切削数は0.11回 図4:アルミニウム部品のプロジェクト統計。白点: 初回パネル合格率および平均合格率は62%; 青点: 平均納入合格率は86%; 赤点: 出荷前の平均パターン削減数は1.19回 - [中国発の成功事例: サイドレールのアセンブリにおける溶接ひずみの予測と最適化](https://japanforming.com/china-siderall-assembly-optimization/) - サイドシル・アセンブリは、安全や品質を担保する上で重要な自動車部品です。安全性の観点から、主に超高張力鋼材を使用し、また溶接ポイントも多数あります(図1)。そのためサイドシル・アセンブリの寸法を調整することは非常に難しいとされています。本稿ではサイドシル・アセンブリのトライアウト工程を円滑に進める上で、どのようにAutoForm Assemblyを活用できるかご紹介します。 図 1: 溶接ポイントの分布 このアセンブリには128箇所もの溶接ポイントがあり、溶接は6工程実施します(図2)。 図2: 溶接計画 従来通りにトライアンドエラーを繰り返しながら何度か溶接のトライアウトを試しても、深刻な寸法上の不具合は解消されませんでした。最も顕著なものは端部の著しいねじれで、片側で+2.5mm、もう一方では-1mmの偏差が確認されました(図3)。 図3: 数回のトライアンドエラー後の寸法偏差 この結果から、従来のトライアウトだけではアセンブリを適正に実行することは難しいと判断しました。そこでAutoForm Assemblyを活用し、工程の数値解析を行うことになりました。 ステップ1:すべてのパネルを個別にスキャンし、そのデータをもとにアセンブリ工程をシミュレーションすると、非常に高精度な結果が算出されました(図4)。 図4: スキャンしたデータを活用したシミュレーションの結果 バーチャルアセンブリの解析中、スキャンしたパネルを合わせる際に2つの不具合が特定されました。まず、エンドキャップと呼ばれる部品の単品寸法精度の不良により、フィレット部分でエンドキャップとメインローリングビームに干渉が生じていました(図5)。次に、ローリングビームと小型ブラケットの合わせ面には約0.8mmの意図的に設計されたギャップがありますが、これが最終アセンブリではひずみの原因となりうることが確認されました(図6)。 図5: エンドキャップとローリングビームの干渉 図6: 意図的に設計された合わせ面のギャップ ステップ2:2つの部品パネル(メインローリングビームとエンドキャップ)を選択し、AutoForm Assemblyにて見込み補正を実行しました。最終的な補正量と結果を図7と図8に示します。 図7: 見込み補正量の分布 図8: 見込み補正後の結果 シミュレーション結果をもとに、部品設計と個別のパネルに3つの修正を施しました。 1. ローリングビームとエンドキャップの見込み補正 2. エンドキャップの干渉部分の修正 3. 小型ブラケットの公差を調整し、実パネルの寸法を修正することで、合わせ面のギャップを最小限に抑制 その結果、ほぼすべての寸法が±0.8 mmの公差内に収まり、溶接アセンブリの不具合はほぼ解消されました。テストポイントの1箇所に約1 mmの偏差(図9)が生じましたが、この程度の寸法誤差は自動車製造に障りはないため、これ以上の最適化は必要ないと判断しました。 図9: 是正処置を施した後の最終アセンブリ 結論: 1. AutoForm Assemblyは、複数の超高張力鋼材を使用したサイドシル・アセンブリの解析に効果的に活用できます。 2. パネルの寸法不良や溶接ポイントの密集に起因するねじれを予測および解析できます。 3.サイドシル・アセンブリのトライアウト工程を円滑に開始する上で、AutoForm Assemblyから有意義な情報を得ることができます。 - [ゼネラルモーターズ社によるAutoFormを活用したスプリングバック見込み補正の手法](https://japanforming.com/generalmotors_springback_compensation/) - スプリングバックは、プレス成形において避けられない現象です。部品形状、材料、ダイフェースの設計に応じて、プレス部品には多少のスプリングバックが生じますが、この望ましくない形状を何らかの方法で修正し、部品を指定の公差内に収めなければなりません。スプリングバックを是正するには金型サーフェスを修正(モーフィング)する必要がありますが、それ以前に、スプリングバックをコントロールすることが重要です。つまりスプリングバックの程度を最小限に抑え、再現性を担保するのです。しかもプレス成形工程自体に大幅な変更がなく、また面精度にも影響しないよう、金型サーフェスの修正は最小限に抑えるべきです。 ゼネラルモーターズ(GM)社は、有限要素解析(FEA)を使用して薄板の成形挙動を予測する分野のパイオニアでした。初期の頃は、成形挙動を予測するシミュレーションでしわの傾向やシートの割れを予測できれば十分でした。時の経過とともに、シミュレーション技術とハードウェアが進化するにつれて、シミュレーションでは複雑な材料モデルや摩擦モデル、プレスの動作、現実的な成形条件に対応できるようになり、シミュレーションにおける薄板の解析も向上しました。これらの進歩により、成形性だけでなく、トン数、面精度、スプリングバック、再現性、見込み補正など、より正確なシミュレーション結果が得られるようになりました。こうした技術的進歩は、より新しく複雑な材料等級や、より複雑な製品設計への対応という課題に不可欠なものでした。 GM社では、ドローのシミュレーションにとどまらず、2次成形やトリム、トリムライン展開、工程間のスプリングバックなど、工程設計の開発全体において、シミュレーションを日常業務の一環として行うようになりました。なかでもシートは工程間の移動を伴うため、シートの挙動、配置、ネスティングの理解を深める上で、工程間の中間スプリングバックが非常に重要であることが認識されました。 「理想的なシミュレーション」による工程設計全体の実現は、段階的かつ革新的な取り組みです。その第一歩として、まずはスプリングバックの最小化を目指しました。これは、余肉部分の形状を最適化し、全体的なスプリングバックを最小限に抑えることで実現できます。 GM社では、シミュレーションに基準点を導入しました。これは見込み補正を目的とするもので、ドロー型のステーションにおける形状変化を緩和するために、スプリングバックのバランスを調整します。この基準点の検討はインクリメンタルにて行われます。 GM社がシミュレーションで使用した最初の基準点は「サーフェス基準点」でした。 「理想的なシミュレーション」への道のり まず、フリー・スプリングバックを実行し、どのポイント(通常3つ)が安定していて、かつスプリングバック公差内(通常±0.5mm)にあるかを確認します。この位置で剛体運動を排除し、安定した部品形状を担保するために、これらの基準点を車両の姿勢で設定し、複数のシミュレーションを実行します。 公差内の安定した3つのポイントを定義 安定した「サーフェス基準点」を特定したら、次に「フランジ基準点」を定義します。この新しい基準点は、実際の生産基準点(「パネル適格性」の基準点)に近接して定義するのが一般的であり、クラスA領域に影響を与えることなくフランジ領域の見込み補正を促進することができます。 フランジ基準点の定義 同様に重要なのは、工程のロバスト性を確認することです。つまり、材料、板厚、荷重などにわずかなばらつきがあっても、シミュレーション結果が「再現できること」であることが重要です。不安定な工程では、見込み補正の方案を立てることは非常に困難になります。 安定した工程と「フランジ基準点」をもとに見込み補正マップを定義した後、GM社ではスプリングバックしたパネルの工程間の動きも含め、すべての工程をシミュレーションモデルに組み込みました。パッドは閉じ、トリムとピアス工程で干渉がないことを確認し、必要に応じて修正を行います。 ステーション間のスプリングバックを含む完全なシミュレーションの設定 このシミュレーションでは、見込み補正マップを生成し、そのマップは選択した金型サーフェスのモーフィングに適用します。 モーフィングしたサーフェスは全ての工程のシミュレーションに適用し、その結果生じるスプリングバックは「パネル適格性」の基準点を通じて確認します。 モーフィングと検証は通常は数回のトライ&エラーを繰り返され、寸法要件に対する最終的なパネル形状を十分に検証します。 「完全なシミュレーション」への道のり 当初、この複雑な「全工程」のシミュレーションは、限られた専門部署のみが扱っていました。その後、GM社ではこれを標準化し、より広範なグローバル成形性担当部門に展開することで、高品質なエンジニアリングの成果を得ることができるよう、必要なタスクを一貫した方法で達成できるようにしました。 パネル適格性の基準点で得られた最終結果 - [中国NIO社: BiWアセンブリのシミュレーションを活用して電着や焼付け塗装後の熱変形を排除](https://japanforming.com/china-nio-biw-assembly-simulation/) - はじめに 電着や焼付け塗装などの加熱・冷却処理を行うと、ホワイトボディ(BiW)のボディサイドアウター部分に座屈や波打ちといった恒久的な塑性変形が発生することがあります。このような不具合は車両の品質に大きな影響を与えます。一般的に、変形が生じる原因として以下の要因が考えられます。 1.加熱や冷却を通じて、サイドアウターパネルとインナーパネルの間に局部的な温度差が生じると、冷却後にアウタースキンパネルのサーフェスが不均一に変形し、不具合が発生することがあります。 2.ハイブリッドBiWでは、鋼材とアルミニウムの線膨張係数の違いが、加熱や冷却を繰り返すことで、鋼材のサイドアウターパネルのサーフェスに局所的な塑性ひずみが生じることがあります。 鋼材とアルミニウムのハイブリッドBiWでは両方の不具合が同時に生じる可能性があり、鋼材またはアルミニウム単一のBiWよりも不具合が頻発する傾向にあります。トライアウトや生産段階で対処する場合、複数部門による広範な検証対策が必要となるため、特に効率が悪くなります。 しかしCAEシミュレーションツールを活用して初期の製品開発段階で不具合を識別し、検証を行えば、これらの不具合を効率的に排除することができます。このように後工程を見越した対策を講じることで、量産時の不具合やその深刻度を大幅に軽減できます。 本稿ではAutoForm Assembly 熱硬化モジュールを活用した不具合の解析およびその回避策についてご紹介します。 AutoForm Assembly熱硬化モジュールを活用した焼付け塗装のひずみ解析 シミュレーションでは、結果に大きな影響をおよぼす加工条件を、材料カードで正確に設定および定義する必要があります。 線膨張係数はAutoForm Assemblyによる焼付けのシミュレーションにおいて、最も大きな影響があるパラメータです。 熱伝導率は、材料の熱伝導のしにくさを示します。 対流熱伝達率は、流体と固体のサーフェス間の熱伝達能力を表します。これは焼付けのシミュレーションにおいて、シミュレーション対象物と周囲環境に対して定義します。 前処理 解析の前処理、つまりシミュレーション設定には複数の工程が必要となります。 まず材料の板厚方向、材料の板厚、材料モデル、熱力学パラメータなどを設定します。本稿の対象であるインポート済みのサブアセンブリを図1に示します。 工程計画ステージでは、工程数や各工程で組み立てる部品/サブアセンブリを決定し、図2に示すとおりアセンブリシーケンスツリーを作成します。 図1: AutoForm Assemblyにインポートしたサブアセンブリ 図2:アセンブリシーケンスツリー 組付け治具への設置と固定を行う際には、各部品/サブアセンブリの接合時に安定性が担保されるように、工程ごとに設置順序(図3)、設置方向、位置決め、クランプの方策を検討する必要があります。 次に接合と接着です。本件ではスポット溶接、接着(図4)、FDSを使用しますが、FDSはまだソフトウェアに実装されていないため、代替モデルとしてリベットを使用します。 図3:設置順序 図4:シミュレーションで使用する接着 シミュレーションでは最後に熱力学パラメータ(線膨張係数、熱伝導率、対流熱伝達率)を部品や材料ごとに定義します。熱伝達率は、鋼材で45mW/mmk、鋳造アルミニウムで220mW/mmk、熱間プレス成形の鋼材では23.3mW/mmkに設定します。 また本体と周囲環境間の対流熱伝達率は0.02mW/(mm^2・K)に設定します。 さらに焼付け時の加熱時間と温度保持時間は、実際の加工条件に合わせて設定します。 シミュレーション結果の考察 サイドパネルの変形をシミュレーションする場合、その結果の品質は、主に変形の程度とバーチャルオイルストーンの性能によって決まります(図5)。 図5:サイドアウターパネルの変形 サイドアウターパネルの下側部分に1.9mmの著しい膨張が見られますが、これはアルミニウム押出ビーム材の線膨張係数が他の鋼材パネルよりも高いことに起因します(図6)。この変形は加熱や冷却から生じたものです。もし塑性変形の値が滑らかな勾配をもって変化し、局所的に急激なばらつきを持たなければ、実際の車両では面ひずみはほとんど検出されません。そのため、この塑性変形の量を構造的な剛性の指標として、構造設計の初期段階における剛性の最適化のために使用することができます。 図6:ボディサイドのアセンブリにおけるアルミニウム押出ビーム材 図7はバーチャルオイルストーンの結果を示しています。Bピラー下部の両端で最大0.17mmという急激な値が確認されました。これらの結果から、この領域で波打ちが生じていると結論づけることができます。 図7:X方向のバーチャルストーニングの結果 図7の結果は加工条件下でのへこみや波打ちといった面ひずみの可能性を示唆しています。したがって、この結果を焼付けによる変形の影響を受けた面精度の最終評価の指標として使用します。 シミュレーション結果の検証 図8および9では焼付けの前後における実際のアウターパネルを比較し、変形傾向とシミュレーション結果との相関性を紐解きます。 図8:焼付け前のBiW 図9:焼付け後の状態 Bピラー下端付近では膨張による変形が検出され、図5が示す傾向と一致します。 図10:焼付け後のBピラー部分のスキャン結果 図10にスキャン結果が示されているとおり、焼付け後にBピラー領域には正規寸法からの偏差が生じます。図5と比較すると、膨張による変形は傾向と分布の両方でシミュレーション結果と高い相関性があり、焼付けによる変形のアセンブリシミュレーションは非常に高精度であることがわかります。 まとめ サイドパネルの焼付けによる変形は、自動車業界における長年の課題です。この不具合に対処するためには、既存の解析ツールでは限界があり、構造的な剛性の設計がどのように影響するかを効果的に評価できませんでした。従来は、余分な補強材を追加するなどの対応がとられてきましたが、これにより効率が低下し、コストも増加していました。しかし熱硬化のシミュレーション技術が採用されたことで、サイドパネルの焼付けによる変形を正確に評価できるようになり、構造設計を効果的に改善することが可能になりました。この手法により、車両製造時の不具合に関連するリスクが大幅に低減され、余分な補強材のコストも削減可能となりました。 さらにこのタイプの解析は、複数の材料タイプを使用したドアなどの他のサブアセンブリにも適用できるため、潜在的なメリットはさらに広がります。 NIO社のコメント デジタルシミュレーション担当部署のリーダーであるトゥ氏は、このような不具合対応を広範に適用できる可能性について示唆しています。「ハイブリッドBiWを扱う多くの企業が焼付けによる変形の不具合に悩まされています。AutoForm Assemblyを活用して初期段階から対策を講じることで、トライアウトや量産における潜在的な損失を削減することができます」 著者について: - [アセンブリ工程の最適化:部品の最適化を代替する戦略的手法 - EVバッテリーケースの製造に関する事例紹介](https://japanforming.com/assembly-simulation_skh-smc/) - はじめに プレス成形シミュレーションソフトウェアの導入から、複雑なプレス成形の工程設計や作業が変革を遂げ、その工数は大幅に削減されました。 以前はトライアウト段階で膨大なトライ&エラーを必要とした作業も、現在ではバーチャル上でのシミュレーションで効率的に実施できます。この技術革新により、エンジニアはより複雑な部品を効率的に設計できるようになりました。 しかしプレス成形のソフトウェアでデザインに微調整を加える作業や、特にスプリングバックのような複雑な不具合に関する作業などは、非常に難しく時間を要する場合があります。プレス金型を見込み補正する作業でもトライ&エラーを繰り返すため、コストや時間が膨らみます。そのためプレス成形工程で見込み補正を行う前に、そのプレス成形工程が最終アセンブリに与える影響を評価することが重要となります。この評価を通じて既存の工程に対する理解が深まるだけでなく、部品の見込み補正の代替としてアセンブリ段階を最適化する手法を確立できます。 本稿ではインドのオートフォーム社テクニカルアカウントマネージャーであるラマンディープ・シンが、インドのTire1サプライヤSKH-SMC社の非常に興味深い事例についてご紹介します。この事例はプレス成形工程ではなくアセンブリの段階で面精度を最適化することに着目し、この革新的な手法が重要かつ有効であることを示しました。 製品の仕様 この解析で使用した製品は、インドのTire1サプライヤであるSKH-SMC社がOEM向けに開発したEVバッテリーパックのセパレータプレートです。このセパレータプレートは、図1が示すとおり、2枚のプレートを組み合わせたもので、ブランクステージで生成する基盤プレートと、プレス成形工程で製造する構造プレートで構成されています。 図1. EVバッテリーパックのセパレータプレート [基盤プレート + 構造プレート] インド発のこのプロジェクトは、オートフォーム社と長年の取引関係にあるSKH-SMC Pune社との共同研究によって進めてきました。 SKH-SMC Pune社は、OEM各社のプレス成形に関する工程設計やその調整作業に、高度な技術力を持つAutoForm製品を一貫して活用しており、その実績は高く評価されています。 この事例のOEMは電気トラックの製造を専門としています。電気トラックの駆動力はバッテリーに強く依存し、セパレータープレートで区切られたバッテリーパックを複数使用します。そのため、このプレートの設計は極めて重要です。左右のバッテリーと接触しないよう、プレートは平坦でなければなりません。さらにバッテリーのレイヤー間の距離を一定に保つため、+/- 0.5 mmの厳しい公差を満たす必要があります。 構造プレートのプレス成形シミュレーションの調査結果 SKH社の担当部署では、最終的なデザインに多数のエンボス加工が組み込まれているため、構造プレートのスプリングバックは最小限に抑制できると予測した上で、プレス成形の工程設計とシミュレーションを行いました。しかし最初のシミュレーションの結果は予測とはかけ離れたものでした。部品にはカーブがかかり、CAD0(正規寸法)のデザインとは大幅に異なる結果となったのです(図2A)。 図2A. スプリングバックを伴う構造プレートの側面図 図2B. スプリングバックを伴う構造プレートの上面図 パネルには著しいスプリングバックが生じ、偏差は最大15mmに達しました(図2B)。これはつまり構造プレートがCAD0の基準部品と同等となるように、プレス成形工程でさらに検討を重ねるべきであることを意味しています。 そのためSKH-SMC社の担当部署では、感度解析(あるいはロバスト性解析)と組み合わせた見込み補正に取り組みました。 そして製品や工程の感度によって指定の公差内で目標形状を得るのが難しくなることが分かりました。 SKH-SMC社はこの時点でインドのオートフォーム社に相談をもちかけ、ソリューションの模索を始めました。 複雑なプレス成形工程と構造プレートの最終要件を理解した上で、ラマンディープはAutoFormデジタルツインの手法を用いることにしました。これで初期アセンブリシミュレーションを実施し、既存のプレス成形シミュレーションの結果をAutoFormのアセンブリソフトウェアに組み込み、最終アセンブリへの影響を評価しました。またアセンブリ段階そのものにも改善の余地があるか評価しました。 アセンブリ最適化のソリューションを模索 アセンブリの最適化には、部品の見込み補正、シミング、ティーチングなど、いくつかの選択肢があります。 部品の見込み補正の場合、アセンブリの結果に応じて、アセンブリの1つまたは複数のコンポーネントを選択して調整します。このプロセスでは単品部品形状は通常の基準形状から外れた形状となりますが、アセンブリ後にコンポーネント全体を希望する公差内に収めることができます。 また別途、溶接治具でシミングとティーチングを併用する手法もあります。部品やサブアセンブリをオーバーベンドまたはシミングする際には、溶接スポットの適用前に、サーフェスにマイラーやクランプを使用します。一方ティーチングでは、接合用トングの位置を更新することで、新しい位置でシートに適切に接触するようにします。したがって、この手法ではクランプと接合用トングの両方を調整する必要があります。アセンブリ製品の最適化では、シミングとティーチングを併用することがよくあります。このプロジェクトでは、オートフォーム社はプレス成形工程で部品の見込み補正を行う代わりに、シミュレーションへシミングとティーチングを適用することを選択しました。 図3. マイラーに設置されたシム アセンブリシミュレーションの結果 オートフォーム社ではプレス成形シミュレーションのデータを用いて、最初のアセンブリシミュレーションを実施しました。その結果は有望で、サーフェスの偏差が15mmから3mmに減少しました(図4)。この偏差は依然として公差限界の+/-0.5mmを超えていますが、3mmの偏差を管理する方が、プレス成形工程で15mmのスプリングバックを修正するよりもはるかに容易です。 図4. 最初のアセンブリシミュレーション後のサーフェス偏差 図5. 最初のアセンブリシミュレーション後のサーフェス偏差の断面図 動画1. アセンブリ後のドラミング効果 バーチャル環境と製造現場の初期アセンブリ工程について、その相関関係を検証する上で、動画1は視覚的に理解を深めることができる有効な手段です。アセンブリ工程後に偏差が生じ、バッテリーセパレータープレートの中央部分が上方に持ち上がる様子がこの動画からわかります。この効果はバーチャルシミュレーションでも確認され、断面ビュー(図5)に反映されています。 アセンブリ段階でのさらなる改善: サーフェスの偏差が大きく緩和されたことで、プレス成形段階よりもむしろアセンブリ段階で最適化をさらに進める選択肢ができたのです。オートフォーム社ではさまざまな方法を試した結果、シミングとティーチングが最も効果的な手法だという結論に達し(図6)、それを推奨事項としてお客様へ伝えました。 図6. バーチャルシミュレーションのシミングおよびティーチングを通じてアセンブリの結果を改善 図7. シミングおよびティーチングを通じた第1レベルの改善後のCMMの確認(トライアウト結果) お客様はすぐに受け入れてくださいました。プレス成形シミュレーションを繰り返す代わりに、アセンブリ段階で調整することで、スプリングバックの不具合に対処することができました。この手法は、プレス成形のトライアウトを大幅に削減できるだけでなく、シミングやティーチングによる調整は、部品の見込み補正よりもコストを抑えられるため、より費用対効果が高いことが証明されました。 アセンブリ最適化の利点 アセンブリシミュレーションを通じた最適化には、いくつかの重要な利点があります。そのいくつかを以下に示します。 リソースの大幅削減: - [PT. Adyawinsa Stamping Industries:フランジ工程における高張力鋼材のスプリングバック予測精度の向上](https://japanforming.com/pt-adyawinsa-stamping-industries:springback-implovement/) - 2005年にインドネシアのカラワンにて設立されたPT Adyawinsa Stamping Industryは、ホンダ、日産、トヨタなどの自動車メーカー向けの部品や金型(治具、ラックなども含む)のサプライヤです。 PT Adyawinsaが取り組んでいた高張力鋼(HSS)部品用金型の設計・製造については、課題が山積していました。HSS部品をより効率的に取り扱い、市場競争力を維持するために、オートフォーム社と共同プロジェクトを立ち上げ、生産工場からの高い要求に対処することになりました。 HSS部品の量産には多くの問題があり、特にスプリングバック挙動が不安定なために部品が頻繁に公差から外れ、膨大なコストが生じていました。このプロジェクトの目的は、3か月の期間内にプロセスウィンドウを最大化してスプリングバックを安定させること、そして今後のプロジェクトで用いる手法を定義することでした。 このプロジェクトでは、図1のHSS部品に着目しました。 図1: プロジェクトで検討した部品 この部品の製造方法は、ドロー工程を一切含まないフランジ工程とトリム工程のみです。 プロセスウィンドウを拡大するために、解析ではまず、プレス機内の9つのクッションピンの面圧を検討しました。 最適な面圧を特定すべく、さまざまなシナリオを試しました。従来のようにトライ&エラーを繰り返すのではなく、AutoFormの技術力を生かした分析的手法を取り入れました。単一の荷重値を設定し、その結果をもとに調整するのではなく、まずスタート(底面から60mm)とストロークの下死点で面圧値の範囲を定義しました。テストした面圧カーブは、8.3 ±10% トンから15.18 ±10% トンでした。初期値と最終値はそれぞれ別途変化させることができるため、同時に多くのカーブを試し、検討することができました。 図2のグラフは、多角形内の設定と想定される面圧カーブを要約したものです。 図2: 基準の設定と変化する面圧カーブ あらゆるシナリオを検討した結果、われやしわのリスクなしに十分に引き伸ばせるのは、部品の総面積のわずか10%であることが分かりました(図3参照)。 図3: プロジェクトで用いた部品の成形性検討 最初のフランジ工程の後、トリミング、ピアス、リストライクの工程に進みました。最後に2本のボルトと複数のクランプポイントを使用した実際の測定シナリオでスプリングバックの結果を評価しました。 図 4:スプリングバック測定の設定 このステージでは、材料特性や潤滑など、生産中に変化する可能性のあるさまざまなパラメータを検討しながら、工程のロバスト性を評価しました。その結果、図5に示すように、安定した工程を実現することができました(Cp>1で再現性が担保されます)。 図 5: 工程の安定性 (Cp) しかし基準設定のスプリングバックの大きさは公差内に収まり、許容範囲内ではあるものの、図6の赤い大きな領域が示すように、工程全体としては品質標準(Cpk - [モンドラゴン大学&フォード社:産業用プレス成形工程シミュレーションの高度摩擦モデル](https://japanforming.com/産業用プレス成形工程の高度摩擦モデル/) - 薄板プレス成形は量産の要であり、複雑な形状を正確かつ無駄なく生産することが必須とされています。その工程は非常に複雑であり、材料特性、金型形状、潤滑、工程パラメータなど、多くのステージやパラメータが関わっています。 これらの要因を評価するには、高精度な深絞りシミュレーションが不可欠です。薄板と金型間のトライボロジが精度に大きく寄与することは広く認められています。 最新の研究では、モンドラゴン大学とフォード社が複雑な数値モデルを分析し、実験測定値との比較を行いました。具体的には、材料の機械特性の解析、トポグラフィの解析、複数のストリップ材のドロー試験を行っています。サプライヤーから入手した材料を5つのバッチにわけて、それぞれ機械特性と摩擦のばらつきを調査しました。そしてこれらの試験から、シミュレーションモデルの精度向上に有効とされる複数のトライボロジモデルを作成しました。 使用した材料は、厚さ0.65mmのDC06冷延軟鋼材に溶融亜鉛メッキ(50G50G-GI)を施したものです。 鋼材メーカーではトライボロジシステムがより良く機能するように、このシート材に放電テクスチャリング(EDT)を施しました。各圧延方向に沿って引張試験を実施し、中島試験により成形限界曲線(FLC)を決定しました。さらに適切な降伏基準を得るため、追加試験を実施しました。 サーフェスのトポグラフィを分析する上で、計測ソフトウェアでシート材の主なサーフェスパラメータを算出しました。またサーフェスの特徴的な部位の評価には、一連のトポグラフィのパラメータを使用しました。 正確な数値モデルを作成するには、プレスおよび工程パラメータの記録と測定が重要です。 そのためフォード社の工場にて、部品のゾーンごとに金型粗さと潤滑分布を測定しました。 ストリップ材のドロー試験からトライボロジ条件を定義しました。 モンドラゴン大学が開発した試験機には2つの閉ループ制御サーボ駆動軸があり、法線荷重と接線方向の動きを担います。 数値結果への影響を正確に特定するために、3つのモデル、すなわち一定摩擦係数、面圧および速度依存係数(P-v依存)、潤滑ゾーンにばらつきがあるTriboForm摩擦モデルを評価しました。 この事例では、スペインのフォード・バレンシア社が製造した軟鋼材のインナードアパネルを使用しました。この産業用部品は、複雑な形状、伸張した曲率、そして急激なつなぎ面が特徴的です。 図1. AutoFormモデルの設定(左)と最終部品(右). 図2のインナードアパネルの成形限界図(FLD)は、それぞれ異なるトライボロジモデルを用いたものです。摩擦モデルがより複雑になると、コンポーネント全体の張りが低下することがわかります。産業向けシミュレーションで採用されている従来の一定摩擦モデルでは、複数のゾーンで深刻なわれが発生しました。一方、P-v依存モデルやTriboFormモデルではFLDに大幅な変化が見られ、われのリスクがない有効な工程を検証できました。 図2. 3つの異なるトライボロジモデルを用いた シミュレーション結果のFLD: (a) 一定摩擦(µ=0.15); (b) P-v依存モデル; (c) 複数の潤滑ゾーンを適用したTriboFormモデル 流入測定値を分析するために、生産データをもとに11のポイントを選択し、3つの数値モデルすべてに同じ座標を用いました(図3参照)。この図は、一定摩擦モデルとの関係におけるP-v依存モデルとTriboFormモデルの流入の差異を比較したものです。 図3. 選択した11のポイントにおけるP-v依存モデル およびTriboFormモデルと一定摩擦モデルの流入予測の差異 3つの重要ゾーンのFLDを選択し、数値実験を比較しました。図4は、選択したゾーンの1つにおける実験的FLDコンターを示しています。一方、図5は数値流入と実験測定の差異を示しています。 図4. 産業用部品の選択したゾーンのFLDコンター図: トライボロジモデル(一定摩擦、P-v依存、TriboForm)と実験データの比較 図5. 分析した11のポイントにおける3つのトライボロジモデルを使用した数値流入値と実験値の比較 摩擦係数が面圧、滑り速度、潤滑量に依存する複雑なトライボロジモデルを使用することで、一定摩擦モデルよりもシミュレーションの精度が向上しました。潤滑ゾーンを用いたTriboFormモデルとP-v依存モデルでも結果は同様ですが、TriboFormモデルではわずかな板増が予測されています。すべての測定ポイントにおいて、一定摩擦モデルでは複雑なモデルよりも流入値が低く予測されました。これらの結果を実験結果と比較しても、明確な傾向は確認されませんでした。さらに、異なる材料バッチ間で摩擦係数の有意性は見られませんでした。これは、バッチに依存しない誤差因子であるシート粗さのばらつきが、摩擦係数の結果に大きな影響を及ぼしていないことを示唆しています。今後の研究では、金型の剛性がトライボロジ挙動、FLD、流入結果に影響するかを分析する予定です。 オリジナルの研究結果はこちらからご確認いただけます。 On the Use of Advanced Friction Models for the Simulation of an Industrial Stamping Process including the Analysis of - [最先端デジタルソリューションで実現する高精度プレス成形](https://japanforming.com/最先端dxソリューションで高精度プレス成形/) - オートフォームソフトウェアは、自動車、建機・農機、家電、材料メーカ、航空機部品メーカなど、さまざまな産業にて、そのユーザ・フレンドリーな使い勝手、圧倒的なシミュレーション速度、高精度な結果の実績により、世界中の多くのお客様に、日々ご活用いただいています。また、プレス成形およびBiWアセンブリのプロセスを網羅した最先端のソフトウェアであり、一貫性のある統合されたプラットフォームによってBiW開発プロセスの完全デジタル化をサポートしております(図1)。 オートフォームがサポートする開発プロセスには、製品開発、工程計画、工程設計、金型設計、金型や治具製造のデジタル・サポート、プレス成形工程やアセンブリ工程のトライアウト、量産立ち上げ、ならびに生産や品質管理活動が含まれており、一気通貫した検討、検証を可能とすることで、コンカレントエンジニアリングの実現に寄与しています。 ソフトウェアの開発に際しては、各国のお客様からのご要望を反映し、技術・開発研究所などと共同で開発した新技術の実証検証を経て、最新の工法技術としてソフトウェアに織り込んでおり、また、シミュレーションにおいて非常に重要である材料モデルに関しても、高精度モデルが実装されており、シミュレーション精度向上に寄与しています。 図1 プレス成形からBiW (Body in White) アセンブリまで一気通貫したソリューション 今回は、最新ソフトウェア・バージョンである、AutoForm Forming R12、AutoForm Assembly R12および新しく開発・リリースされたAutoForm ProgDie R12、チューブ成形に特化したソフトウェア AutoForm TubeXpertについて、それぞれの新機能と特徴をいくつかピックアップしてご紹介いたします。 【AutoForm Forming R12 - フォーミングソフトウェアにおける課題と改善点】 ①しわ再現能力の改善 プレス成形における「しわ」は、代表的な不具合として非常に重要ですが、物理的に不安定な現象であるため、数値計算で正確に表現することが非常に難しい課題です。しわの再現は継続的な課題として改善が続けられており、AutoForm Forming R11でも、しわ表現が大幅に改善されています。AutoForm Forming R12 (以降Forming R12)では、さらなるしわ表現の改善のために、最新のメッシュ・リファインメント方策が採用されています。図2に改善された「しわ」の表現の違い比較してご覧いただけます。左側がForming R11、右側がForming R12でのシミュレーション結果です。Forming R12では、しわ高さ、幅、数をより正確に表現すると同時に、計算時間の増加を最小限に抑えるようにソルバーが改善されました。 図2 改善されたしわ表現 ②見込み補正の改善 環境負荷低減 - CO2排出規制、燃費・電費向上 - のため、自動車重量を軽減することは必須な状況です。軽量化に寄与する高張力鋼板の採用に際して、ほぼ不可欠となっているプレス金型へのスプリングバック見込み補正に関しても、スムーズな面品質と解析結果を正確に反映した見込み補正のバランスをより柔軟に調整できるように、面生成時のスムーズ・コントロールに改善を施しています。 図3は、Forming R11とForming R12での見込み補正後の金型面品質を比較したものです。 ここでは比較のため強めのスムージング設定とし、見込みの正確さよりも出来上がりの面品質を重視していますが、R11では面のヨレが目立つのに対し、R12では全体的にスムーズな面品質へと改善されていることが分かります。この改善により、CADにおける金型面品質補正作業や切削後の仕上げ加工の工数削減が可能となっています。 図3 改善されたスムーズ・コントロールによる面品質向上 また、ゼブララインによる面品質評価のほかにも、さまざまな評価方法が追加されているため、多角的に品質確認が可能となっています。図4では、多角的評価の一例として、ゼブラによる評価と、パッチ間のG0連続性の評価、面の主曲率の連続性評価を紹介しています。 図4 見込み補正ズミ金型の面品質検証 ③金型たわみ 先に述べたように、高強度材料の適用は避けられない状況となっており、スプリングバック補正以外でも、プレス成型の際に、プレスと金型に発生するたわみについても考慮する必要があります。実際には現場にてたわみの影響を最小限に抑えるため、金型あわせ/当たり調整やシム板の調整などに時間が取られている現状があります。 オートフォームでは、弾性金型たわみ解析と金型への見込み補正を効率的に行うソフトウェアの開発も行っています。 プレスと金型のたわみを勘案したシミュレーション結果をもとに、たわみをキャンセルするようなオーバークラウンのベクトル・フィールドを算出し、金型への見込みを行うものです。 また、金型構造が定まっていない金型開発プロセスの早期段階においても、オートフォーム内で、金型の基礎構造モデルを作成することが可能なため、開発の早い段階から、たわみを少なくするような構造検討を行うことが出来るのが強みとなります。 【AutoForm Assembly R12における機能追加・改善点】 アセンブリをシミュレーションするためのさまざまなソフトウェアが開発・販売されているが、プレス成形シミュレーションとの連携、Formingのような使い易さから、多くのお客様に、AutoForm - [AutoForm Assemblyが切り拓く新たな可能性と欧州OEMの成功事例](https://japanforming.com/autoform-assemblyが切り拓く新たな可能性と欧州oemの成功事例/) - 世界に対する日本の競争力を名目GDPでみると、日本は2023年にドイツに抜かれ25年にはインドにも抜かれて世界第5位に転落することが確実視されています。このGDPはドル建てでみていることもあり為替の影響も数値に反映されますが、為替が円高に振れる明確な理由はなく、人口が3分の2のドイツにGDPが抜かれるということは単純計算で1人あたりの生産性がドイツの60%に満たないことを意味しています。さらに労働人口減少の解決策が見いだせない現状では、ITツールを活用し、企業の競争力維持、強化を図る必要性が必須であることは言うまでもありません。本稿では、ITツール導入の目的である競争力強化の観点と事例をご紹介します。 金型づくりにおけるムダと改善の可能性 継続的な材料の進化や部品数低減の要求から、新車種開発における金型製作には過去の知見のみで対応することは難しく、プレス成形シミュレーションによる事前の問題把握と対策は必須となっていて金型トライアウト前に問題を発見し潰し込むことのできる割合は間違いなく増えています。しかしながら、プレストライ後にヘムや溶接でプレス部品同士を組み付けてみると、サブコンポーネントとしての精度を満たさないことが往々にしてあります。この結果、苦労して玉成した金型を再度見込みなおすことが必要にならざる負えないケースがあり、車づくりの工程全体でみれば残念ながらムダが発生していると言わざるを得ません。ただ、ムダは金型製作に関わる方の技術的な問題に起因するものではなく、業務プロセスが生み出す問題であります。 AutoFormは、2021年にAutoForm Assembly製品を正式にリリースしました。これは、プレス後のホワイトボディ製造までソリューションがカバーする領域を広げて業務プロセスの最適化を可能とします。図1のように、実世界でパネル取得後にしか組み付け精度を確認するしか手段のなかった状況から、フロントローディングを可能としました。プレス金型や組み付け用のヘム、溶接設備を準備する前に問題を把握し、事前に解決することが「理論的には」可能になったのです。 図1 組み付け(アセンブリ)の問題を解決するフロントローディング ITツール活用を妨げる組織文化 30年弱の実績がありすでに当たり前のものとして業務に入り込んでいるプレス成形シミュレーションとは異なり、AutoForm Assemblyのような新しいツールは、これから新しく業務プロセスに組み込まれます。ということは、このデジタルツールを使う業務は今まで存在のしなかった業務であります。そのため、ただでさえ忙しいのに誰がやるのか?本当に使って問題ないのか?問題が起きたらどうするのか?というような問いが組織内に発生します。これらは、特に失敗を嫌う文化のある企業でリスクを低減する視点から発生する、ある種自然なものであるものの、企業が新たな挑戦を起こすことを阻害する種類の問いであるとも言えます。新しい挑戦は、捉え方によっては、苦労して今の形を作り上げてきたものを否定することにもなるため、如何に組織において変化を起こすことが難しいかは容易に想像がつきます。ただ、問題に対して何らかの改善策が立案され、「実行」されない限りは、現実はいつまでたっても変わることはありません。競争力を増すための新しい挑戦は、失敗した際のリスクを一生懸命議論するよりも、成功した場合の実益の視点から「やるしかない」という大義を理解する姿勢のある企業が取れる行動となり、変化が激しいビジネス環境では競争力へと昇華されていきます。 新しい手法を取り入れた欧州OEMのシミュレーション活用事例 図2はプレミアムカーを製造販売する、ある欧州OEMの新しい手法の適用の歴史です。従来のプレス部品の正寸を部品設計の形状ではなく、組付け後にサブコンポーネントが精度を満たすようにプレス部品としての新たなターゲット形状VAR(Virtual Assembly Reference)をバーチャルで定義し見込みを行います。検証プロジェクトの開始から、フードを主ターゲットとした車種開発への新手法VARの適用までを2年に満たない期間で終了し、2023年には適用するサブコンポーネントの種類を拡張しています。車種開発適用をスタートした後は、うまくいかなかったこともあったと伺っています。しかしながら、数か月単位のリードタイム短縮の可能性を秘めたVARプロセスの価値を金型、ヘム工場のトップであるリーダーとメンバーが理解し、「将来に向けてやらない理由はない」とあきらめることなくやり切りました。この事例は、やり方を変えて失敗しないのか?といった、現状維持に向かう力学にさからい、実益を得る、競争力を強化しないと先はないと覚悟を決めたリーダーとそのメンバーが挑戦してきた歴史であると捉えることができます。プレミアムカーとしてふさわしいパネル品質は維持しながら従来の手法と比較して、最大6カ月の期間短縮を実現(日本のメーカーと比較して、もともとの開発期間が長いためこの短縮期間の絶対値をそのまま日本企業が享受できるわけではありません。)できるプロセスを構築できたということが真にデジタルツールを活用できている。と言えます。 図2 欧州OEMでの新手法VAR適用の歴史 読者の中には、すでに大変な変革をリードしている方もいらっしゃると思います。新しい手法に挑戦するには勇気が必要だと理解しています。その勇気をサポートできるよう、AutoFormはこれからも皆様の変革を支援し、競争力強化を共に実現していきたいと考えています。 - [高度な試験設備がなくても実現!精度の高い材料シミュレーション手法](https://japanforming.com/精度の高い材料シミュレーション手法/) - 複雑な材料試験に多額のコストをかけることなく、正確なシミュレーションを実行する手法はありますか? タタ・スチール社では、成形限界曲線と降伏軌跡の高度な材料モデルを開発しました。このモデルは簡単な処理でシミュレーション精度を向上させることができるため、精度を妥協することがなくなります。プレス成形シミュレーションの精度向上には、高度な材料モデルが不可欠です。しかし必要な入力データの生成には多くの時間とコストがかかるため、現実的にはモデル生成は難しく、そのため用途が制限されてしまいます。 タタ・スチール社ではこの点を認識しつつ、その専門知識と技術力を活用して、最小限の試験で精度を妥協することなく、必要な入力データを生成するさまざまなソリューションを開発しました。本稿では2つのソリューションを紹介します。それらは降伏軌跡と成形限界曲線のソリューションで、どちらも簡単な引張試験から生成されます。 Abspoel & Scholting FLC まず成形限界曲線のソリューションについて説明します。2012年に、マーク・ショルティング氏と私はAbspoel & Scholting FLCを開発しました。これは全伸び(A80)、ひずみ比(r)、板厚のみを使用した引張試験から成形限界曲線(FLC)を計算し、局部的なネッキングの開始を予測するものです(下図参照)。特殊な装置や専任の技術者、多くの材料を必要とする従来の手法よりも、この3回の引張試験からFLCを作成する手法の方がはるかに簡単かつ迅速です。 図1: 3方向の引張試験から予測したAbspoel & Scholting FLCの4つのポイント(右図)(左図は試験片) さらには圧延方向または3方向すべてなど、任意の方向でFLCを生成できるという利点もあります。たとえば測定したFLCを作成する際に通常は直交方向を選択しますが、代わりに割れ判定が最も厳しくなる、すなわちA80が最も低い方向を選択することが可能です。 図2: 複数方向のFLCを作成 このモデルをプレス成形工程のシミュレーションソフトウェアに用いる際には、シミュレーションした部品の初期板厚にFLCが自動的に適応するため、非常に利便性が高いです。また1つのFLCをすべての板厚に適用させるよりも、より現実に近い設定条件でシミュレーションを実行することができます。 図3: Abspoel & Scholting FLCをAutoFormへ実装 Vegter 2017降伏曲面 次にタタ・スチール社Vegter 2017降伏曲面について説明します。2006年に導入されたVegter標準降伏局面は、補間特性を有する非常に正確なモデルです。単軸、平面ひずみ、2軸、せん断応力の測定データポイントはベジエ曲線として適合するため、測定データを正確に通過する点が二次モデルとの決定的な違いです。しかしVegter標準モデルではすべての測定ポイントを使用できる反面、平面ひずみやせん断の試験は容易ではなく、誰もがデータを入手できるものではないことが欠点でもありました。この特殊試験をすべての材料とその変種に対して実施するには、たとえ社内対応であっても、膨大な工数が必要となります。 Vegter 2017モデルの開発は、大きな転機となりました。このモデルは広く利用されているHill’48と同様に、単軸引張試験のデータのみから、せん断応力、平面ひずみ、および2軸応力の予測を行います。ただしVegter標準降伏軌跡の精度も継承されています。Vegter 2017はHill'48と同様に3方向引張試験が必要ですが、測定した膨大な降伏曲面とそれに対応する機械的特性の経験的相関から、高度な応力ポイント(せん断、平面ひずみ、2軸)が正確に予測されます。これはある種の柔軟性を欠く二次方程式の降伏関数とは根本的に異なります。 この公式は、学術誌「Journal of Materials Processing Technology」にて専門家による厳密な審査を受け公開されています。必要な3方向引張試験の結果は、引張強度(Rm)、最大荷重時の塑性伸び(または均一伸び)(Ag)、塑性ひずみ比(r値)です。 図4は0-90方向と45-135方向の降伏曲面を示しています。Vegter標準モデルでは、グラフ上のすべてのポイントを測定していますが、Vegter 2017では単軸引張(緑色)のみを測定し、平面ひずみ、せん断、および2軸のポイントはすべて予測のもと赤色で示されています。 図 4: 0-90方向と45-135方向の降伏軌跡 FLCと降伏曲面のモデルを用いたシミュレーション タタ・スチール社とFEソフトウェアのサプライヤが提携し、代表的なプレス成形シミュレーションソフトウェア(Altair-Radioss、Ansys LS-Dyna、AutoForm、ESI PAM-Stamp、Hexagon MSC Marc、Hexagon Simufact、Stampack Xpress)にAbspoel & Scholting FLCとVegter 2017の両方が実装されました。このように広く普及しているソフトウェアに実装されたことで、世界中でこれらのモデルを利用することができるようになり、複数のソフトウェア間であっても、材料モデルの相違なく結果を解釈することが可能になりました。 図5: - [そびえたつ壁を乗り越えて:ある女性の成功物語](https://japanforming.com/そびえたつ壁を乗り越えて:ある女性の成功物語/) - 「女性の視点から読み解くプレス加工業界」の連載は、多くの読者に好評をいただいています。本稿では、フォード・オトサン社のベルナ・トゥナリが自身の経験について語ってくれました。この談話は、業界に新たに就職する女性たちに勇気を与えてくれる内容です。 私は自動車業界で実りある9年間を過ごし、現在はトルコの先進企業であるフォード・オトサン社に勤務しています。女性として、男女平等を真に推進し、女性の成長を支援する企業で働けることを幸運に感じています。しかし、ここまでの道のりは決して楽なものではありませんでした。フォード・オトサン社に入社する前、女性がまだ少数派であったこの業界で、自分の能力が認められるまで多くの試練を乗り越えてきました。 女性も男性と同じようにプレス加工業界で成功できることを証明したいと、日々奮闘しています。ここでは自分の経験をもとに、プレス加工業界で活躍したいと考えている女性たちへのアドバイスをお伝えします。 学生から社会人へ 自動車業界に対する私の情熱は、すでにこの業界に就職していた従兄弟たちから刺激を受けたことから始まりました。また私は自動車産業に大きく依存する都市で育ったので、自然とこの業界への就職を熱望するようになりました。 この人生の旅の始まりは、機械工学の学位取得からでした。大学では、ほとんどが男性のクラスで私は唯一の女性でした。最初は大変でしたが、すぐに友達もでき、自分の居場所を見つけることができました。 アナドル大学では経営学の学士号も取得し、エラスムスの学生交換プログラムを通じて、1学期をスペインで勉強する機会にも恵まれました。この経験は、私の視野を広げ、新しい文化や言語に触れる貴重な機会となりました。 トルコの金型メーカーでプレス加工技術者として初めて就職するまで、就職活動に1年かかりました。企業は職務経験者を求めることが多く、新卒者、特に女性にとっては厳しい状況でした。また性別による偏見もあったと思います。多くの企業からは面接すら受けることができず、不採用とされたのです! 社会人になってすぐに感じた壁 正直に言うと、最初の就職先である世界的に有名な金型メーカーでは、入社当初は苦労の連続でした。新卒採用だったため、まだ知識も限られている中、男性が圧倒的に多い分野で女性である私は、自分の能力を証明しなければ信用されないと常に感じていました。 大学で機械工学を学んだ際、私がクラスで唯一の女性であったことが、職場の力関係を理解し、人間関係に対処する上で非常に役立ちました。私が真剣に職務に取り組んでいることが伝わるよう、あえてカラフルな服や女性らしい服装は避けるようにしていました。周囲に固定観念を植え付けることがないように、同僚にお茶やお菓子を用意することもありませんでした。 最初の就職先で5年勤務する中、自動車に関する論文で修士号を取得しました。この実務経験と大学院での学びが功を奏し、ついに私は業界の核心部へと進むことになったのです。 新たな「家族」であるフォード社 2021年、私はフォード・オトサン社で新たな仕事を得ることができました。これが大きな転機となったのです。ここで周囲から大きなサポートを受けたおかげで、自信と才能を開花させることができたと思います。入社して間もなく、私は6か月間の暫定チームリーダーに任命され、きちんと役目を全うしました。この経験から、機会さえ与えられれば、女性も男性と同様に技術と管理の両面で優れた能力を発揮できるという確信を得ました。性別に関係なく、どんな分野でも成功できることが証明されたのです。 フォード・オトサン社の男女平等への取り組みは目覚ましいものがあり、その背景には、同社が強く推進する多様性、公平性、包括性に関する方針があります。フォード・オトサン社では、性別よりも技術と能力が重視されています。女性は高く評価されており、現在では管理職の半分は女性が占めています。これは基幹産業の強固なガラスの天井を打ち破る上で極めて重要な変化であります。 プレス加工業界にて女性が担う役割の進化 この9年間、プレス加工業界に生じる前向きな変化を目の当たりにしてきました。私が初めてこの業界に就職した当初は、プレス部門で働く女性はほとんどいませんでした。この状況は今も同様ではあるものの、改善はされています。プレス部門には高度な技術が求められ、また、非常に多くの業務をこなさなければなりませんが、非常にやりがいのある仕事です。より多くの女性や若者がこの業界で活躍できるよう推進してゆくことが自分自身の責任だと感じています。 女性が活躍する成長分野 他の分野と比べると、プレス加工業界はまだ発展途上にあります。専門技術の取得が必須であり、また複雑な作業を伴うことも多い分野です。しかし、とてもやりがいがあるので、特に若い女性の方々に興味を持っていただければと思います。 実際、女性はこの業界に多大な価値をもたらす存在であることに間違いはありません。たとえば一般的に、女性は細かな作業や繊細な作業に優れている傾向にあるため、高品質な製品を生み出すことができます。またチームワークやコミュニケーションがより円滑になり、生産性向上につながっていくことでしょう。 女性がプレス加工業界で成功するには 経済活動において、女性が多くの試練に直面することは否定できないものであり、それはプレス加工や技術分野に限った話ではありません。賃金格差や否定的な固定観念、また仕事と同時に家事育児を担うために出世が遅れがちになる傾向は、非常に一般的に目の当たりにする障害です。 私からアドバイスするならば、常に自分自身を磨き、心の支えとなるメンターを見つけ、性差別と戦い、なにより自分の能力に絶対的な自信を持つことです。もし可能であれば、卒業前にインターンシップに参加して実務経験を積むことをお勧めします。 フォード・オトサン社は、現在のところ、溶接部門、ギガキャスト、プレス金型の3Dプリント分野の事業に力を入れています。こうしたニッチな分野が急速に台頭してくるということは、すなわち自身の専門性を発揮できるチャンスが出現し、就職機会が大きく広がることを意味しています。将来のキャリアを強く意識する女性は、今からこのような新たな分野を開拓してゆくべきです。 高所得を得る可能性を最大限に引き出すには、まず専門技術を身につけ、高いスキルを有することが重要です。 プレス加工の技術知識があれば、有能な社員として認知される上で非常に有利に働きます。たとえば、CNC加工やCADソフトウェアなど、先進的な製造技術をぜひ習得してください。 総論としては、業界の最新動向や革新技術に目を向けてください。業界のトレンドに対して敏感になり、常に最新情報を入手するのです。プロジェクトで重要な責務を担い、経験を積むことで、専門性を高めてゆきましょう。 社会変革が進行しているとはいえ、この業界には依然として旧来の考え方に基づく経営や家父長的な雇用体系が多く残存しています。そのような状況に遭遇した際には、特に女性は自信に満ちた態度で、豊富な知識を盾に、プロフェッショナルであることを誇示することが特効薬となるでしょう。 自動車業界で培ってきた私自身のキャリアは、多くの試練に直面しながらも、非常にやりがいが感じられるものでした。この業界で活躍したいと願う女性の皆さんには、私の経験談から勇気を得ることができたのであれば幸いです。男性同様、女性の私たちも卓越した存在となり、他の人々を導く立場となることができることを示すことができればと願っています。 Formingworld.com / JapanForming.com読者の皆さんを代表し、ベルナ・トゥナリさん、示唆に富む体験談を共有していただき、ありがとうございました。 プレス加工業界で活躍する女性たちに関する他のブログ投稿は、 こちらをご覧ください。 - [ゼネラルモーターズ(GM)社の女性社員たちの談話](https://japanforming.com/ゼネラルモーターズgm社の女性社員たちの談話/) - 本稿は平等と機会を称える「女性の視点から読み解くプレス加工業界」の第四部です。 参照:第一部|第二部|第三部|第四部 自動車業界は技術革新と労働力の変化により急速な変革を迎えています。この変革の中でも特に重要な役割を果たしているのが女性です。 男女平等はその公平性のみに注目が集まりがちですが、実は企業にも利益をもたらします。ボストンのコンサルティング・グループが1,700社以上を対象に行った調査によると、取締役会における男女比が高い企業ほど、財務状況が大幅に向上していることが明らかになっています。女性は革新技術やソリューションを積極的に活用する傾向があり、斬新なアイデアや新たな視点をもたらす存在でもあるのです。 この連載で紹介しているとおり、自動車業界では女性が原動力となり、より多様で革新的な職場環境の取り組みが活発に行われています。真に公平な社会を実現するには、企業と教育機関の連携が不可欠です。共に力を合わせれば、より一層包括的な自動車業界を築くことができるでしょう。 GM社ジュニア・エンジニアリング・アナリスト、バルバラ・ファリア・モリーナの談話 私はバーバラ・ファリア・モリーナ、23歳です。FEI大学センターの自動車機械工学科を卒業しました。父が自動車業界に携わっていたことや、家族全員が車好きだったことから、私は常に自動車業界を身近に感じていました。このような家庭環境に加えて、元々チャレンジ精神が旺盛であったため、自動車業界への就職を決意したのです。 2021年2月にゼネラルモーターズ社の金型開発技術部にインターンとして入社し、プレス成形シミュレーションなどの業務を担当することになりました。この時点では、この先に立ちはだかる大きな壁やそれを乗り越えるまでの経験がどれほど有意義なものになるかなど、全く想像もしていませんでした。 GM社に勤務した2年間、女性であることに不都合を感じたことは一度もありません。私の職場は非常に働きやすく、同僚たちとの関係も良好です。このような雰囲気は、GM社が社員の多様性を推進していることが大きいと思います。GM社は「世界で最も多様性に優れた企業となる」という目標を掲げ、包括的な企業文化に関する取り組みとして、多くの活動やキャンペーンを展開し、職場におけるあらゆる偏見やハラスメントは絶対的に容認しないという姿勢も貫いています。 プロ意識をもって働く上で、女性にとっての喫緊の課題は、根強い固定観念を打ち破ることにあると思います。自動車業界は男性が働く職場だという認識が依然として強く、批判やハラスメント、差別などに対する警戒心や不安を抱く女性も少なくありません。そのため、その結果として、自身の仕事にまつわる失敗を恐れるようにもなります。 自動車業界における男女平等は、偏見を撲滅することで実現できると確信しています。この取り組みをさらに推進してゆくには、私たち女性は自らの能力や専門性を誇示することが重要です。仕事に対する情熱や努力に性別は関係ないことが明らかになれば、それがさらなる社会変革の原動力となり、業界全体に良い影響を与えることでしょう。 GM社金型製作担当、ヴァネッサ・ロドリゲスの談話 さまざまな分野で奮闘する女性の多くは、社会から認められ、また社会が課す基準を満たす必要があると感じています。その先には、伝統的に「男性」が占有していた環境を変えてゆく、という大きな目標があります。たとえば、伝統的に「男性」の職場であった金型工場に初めて女性用トイレを導入するといった具体的な変革を伴うものです。私が学んだ金型製作クラスでは、私が唯一の女性でした。そのため、まずはクラスルームを変革し、そしてより多くの女性が専門クラスを受講する環境を整えることで、職業に対する固定観念をなくしてゆくための第一歩であると実感しています。GM社のように多様性を重視する組織は、このような社会変革の象徴となるでしょう。このような組織ではバランスのとれた環境がはぐくまれ、業績向上に寄与する形で関わるすべての人材に恩恵がもたらされると確信しています。 GM社購買担当、ジャクリーヌ・パイヴァ・デ・リマ・ベルナルデスの談話 周囲から適切な育成や導き、そして愛情を受ければ、少女たちはどのようなことでも成し遂げることができます!私は幼少期からしっかりとした基盤がはぐくまれてきました。私はジャクリーヌ・パイヴァ・デ・リマ・ベルナルデス(39歳)と申します。ESAN/FEIで経営学を、FEIで外国貿易学の修士号を取得した後、FGVで戦略的・経済的経営管理のエグゼクティブMBAを取得しました。またリーン生産方式、グリーンベルト/シックスシグマなどの研修も受講しています。 自動車業界に就職したのは2000年代でしたが、その道のりは平坦なものではありませんでした。カルマンギア・ド・ブラジル社で新卒採用され、PCP、エンジニアリング、ロジスティクスの部門にて約10年従事しました。そしてフォード社購買部門にて10年間を過ごしました。その後、石油・ガス分野のサプライチェーン企業への転職を経て、システムエンジニアとして自動車業界に戻りました。現在はブラジルのGM社購買部門にて、主に戦略的コスト削減やリーンイニシアティブに取り組んでいます。 女性は所属部署の雑用係と見なされていた時代から、圧倒的に男性優位な環境を改革するには、忍耐、学び、困難を乗り越える力、そして前向きな気持ちが必要でした。自動車業界に従事してきた23年間、私は常に学習を怠らず、同僚たちを理解し、そして自分の居場所を切り開く努力を続けてきました。近年は多くの女性が管理職として活躍し、大きな組織を率いていることに、これまでの努力が報われた思いがします。 女性の地位向上につながるムーブメントはまだ今でも発展を続けていますが、私自身もこれに貢献ができたことを誇りに思います。女性はいかなる場面においても、その才能、専門性、そして情熱を発揮することができるのです。自動車業界に従事する女性の多くが感じる最大の試練は、自分自身や他人から絶えず向けられる疑惑に満ちた視線と戦うことだと思います。「あなたは本当にここにふさわしいのか?」「あなたは正しいことをしているのか?」「あなたは本当にこれがやりたいのか?」「あなたは...」「あなたは...」「あなたは...」!!といった問いかけが日々心に響くことがあります。 私と同じく、ここにたどり着くまで努力を積み上げてきた女性たちへ。そうです、あなたは今、まさにいるべき場所にいるのです!目標を追い求め続けてください。献身と努力をもってすれば、どんなことでも成し遂げられます。 GM社金型工場の研修生、アナ・カニョットの談話 女性が多くの苦労を抱えていることは広く認識されていますが、特に金型職人として働く女性の苦労は、まだあまり認知されていません。私の金型職人としてのキャリアは、16歳でSENAIのコースを受講し、GM社への入社以前に別の企業で研修生となった時から始まりました。 この金型工場で受け入れてきたインターン生の中でも初めての女性であったことから、私の目前には大きな壁が立ちはだかっていました。最も辛かったのは、自分の能力を認めてもらえなかったことです。たとえばトラブルに直面している同僚が相談相手を探す際には、私には挨拶すらせずに通り過ぎ、一番近い男性の同僚に声をかけるといったこともよくありました。もし私に相談する同僚がいたとしても、私が作業を進めるには、まず上司の承認が必要とされていました。その場にいる男性全員が驚いた表情を浮かべることもよくありました。 この2年間のインターンシップを終えると、次に待ち受けていたのが就職活動での試練でした。数えきれないほどの求人に応募しましたが、金型業界は伝統的に男性の職場とされてきたことから、金型製作は女性の仕事ではないと断言されたことも一度や二度ではありません。男性のクラスメートたちが次々に面接を受け、就職が決まってゆく中、私にはほとんど返事すら来ることがなく、結局は面接まで呼ばれたのはGM社のみだったのです。 この金型業界では、私たち女性は自身の才能が認知されるまで忍耐強く努力しなければなりません。多くの試練を乗り越える必要がありますが、お互いに支え合うことで、女性金型職人の将来に繁栄と平和をもたらす道を切り開いていくことができるでしょう。 GM社金型製作アシスタント、ラファエラ・ガレゴの談話 ジェネラルモーターズの女性社員たち ジェネラルモーターズの女性社員たち 金型製造部門で働く私たち女性は、大きな壁や性別による偏見に直面していますが、革新技術が求められるこの業界において、私たち女性は重要な役割を担っているとも実感しています。どんなに苦労を伴うものであっても、それが私たちの進歩や進化を妨げるものではありません。金型製造部門における私たちの役割は、単に壁を打ち砕くことだけではなく、新たな視野を広げ、新たな視点で物事を捉えることができる存在であり、また協調性を高めるための役割も担っていると自負しています。 変革の推進するためには、思考や才能の多様化が不可欠であり、金型や工程開発の強化において、女性が貢献できることは数多くあります。もし金型職人の仕事に興味をお持ちで、専門技術を生かして活躍したい女性がいらっしゃれば、ぜひGM社へお越しください!想像以上に協力的で結束力のあるチームがあなたの活躍を応援します。一致団結して金型製作の未来を担い、また女性の才能 や能力には限界はないことを証明しようではありませんか。 この業界に従事する私たちは、次世代の女性たちが新たな可能性を見出すことができるように働きかけてゆく機会にあふれています。その道は険しいかもしれませんが、強い意志、豊富な知識、そして確かな情熱をもってすれば、私たちは女性として偉業を達成させることができるでしょう。金型製造部門における多様性は、さらなる革新や進歩の礎となることに間違いはありません。 - [トヨタ自動車株式会社様への出向の経緯と取組内容](https://japanforming.com/トヨタ自動車株式会社様への出向レポート/) - 2020年4月から2024年3月末までの4年間、トヨタ自動車株式会社様へ出向させていただき、そこでユーザーと同じ立場で業務を遂行しました。主に取り組んできた内容はAutoForm Assemblyを使用したヘミングシミュレーションを実用化することです。 これまで、アセンブリされた状態の寸法精度予測は、経験則に頼ってきました。実際のパネルを組付けた後でないとアセンブリ精度を確認できないことから、フロントローディングとしてアセンブリによる精度の変化を考慮した単品部品の寸法精度を決定することが難しかったのです。 ヘミング解析において、寸法精度を予測するのは容易ではありません。たとえば材料特性値、単品部品の成形履歴、ヘミング・ベッド形状、ヘミング加工パス、クランプ状態、接着剤など、実に多様な要因によって精度が影響を受けます。特に近年は車両軽量化の目的からエンジンフードに多く採用されるアルミ化が、寸法精度へ与える影響が大きく、ヘミング加工後の精度変化を一層予測しづらくしています。 実パネルでの修正を繰り返すよりもシミュレーションで対策の効果を確認することの有利な点として、実パネルではテストが困難であるようなアイデアを試すことが可能であることが挙げられます。 たとえば、アウターパネルのフランジを伸ばしてヘムの変化をみる解析や、ヘミング・ベッドを見込む解析を気軽に何パターンも試せることも、シミュレーションの大きなメリットとして改めて実感しました。 このようなメリットと、シミュレーションによる精度予測でヘミング解析のフロントローディングと精度作りこみの負担が大きく削減されることが期待されます。 フードAssyの不具合事例(2023 AutoForum資料より抜粋) ヘミングシミュレーションの活用において、最初は、試験的な単純形状を使用してのヘミング加工をAutoForm Assemblyで予測させ、ソルバーの予測精度を確かめつつ、改めてヘミング加工とはどういう工法であるのかを見つめなおす基礎試験から開始しました。正直なところ、基礎試験を行う前は、すぐに終了して次の段階へ進められるだろうと考えていました。というのも、試験内容は簡単な形状であり、ヘミング加工中の外乱もできるだけ排除できるよう考慮されていたからです。しかしながら、試験結果とシミュレーション結果がなかなか一致せず、その原因究明と対策にかなり時間をかけました。最終的には、数値パラメータを含めて差異の要因になっていると考えられる要素を1つずつ調整して再現しました。これと同時に過去の部品を題材にしてAutoForm Assemblyによる予測精度も確認していきました。 実部品を題材にしたCAE予測精度の確認を行っていくなかで、アウターパネルについては、単品シミュレーション結果の引継ぎが重要であることが分かってきました。 インナーパネルのヘム面がある場所よりも内側の面位置精度は、インナーパネルのヘム面によって支えられないため、アウター単品の寸法精度の偏差がそのまま残ります。 アウター単品の成形に伴い発生する加工硬化とスプリングバックの影響も存在するため、これらの影響はヘミングシミュレーションに考慮されるべきだということが分かりました。 実AssyとAF-Assemblyの比較(2023 AutoForum資料より抜粋) 調査、実験が意味を持つものとするためには、いつかは実プロジェクトへの適用を決断しなければなりません。不安は多々ありましたが、周りの方の応援もあり、この実験を通した寸法精度の一致率をみて、いよいよ新規車種プロジェクトへのAutoForm Assembly使用に踏み切りました。すなわち、単品パネルの寸法精度目標を、シミュレーション結果から決めるということです。実Assy結果が出てからも、さらに各種パラメータの見直しを行い、一致率向上の活動を続け、最終的に80%程度の一致率を出すことができました。 これを皮切りに他車種プロジェクトのアルミフード、さらにドアAssy、バックドアAssyへもAutoForm Assemblyの適用範囲を広げ、フード以外の各蓋物部品でも精度よく予測できていることがわかりました。 ヘミング解析のフロントローディングについて、予測精度はよい結果を残すことができましたが、ローラー・ヘミングをシミュレーションするには、単品部品よりも長い計算時間を要します。インナを弾性体として扱った場合、8並列で計算しても、部品によって1回の計算に30時間から40時間程度の計算時間が必要になるため、効果をだすためにはしっかりとCAE解析をやりきるための期間を確保しておかねばなりません。ヘミングシミュレーション担当者が専任であれば、単品部品のプレスエンジニアとの連携も必須です。 このヘミングシミュレーションを使用した初期品質向上の取り組みはまだ始まったばかりで、今後、さらに経験と実績を積み上がっていくことで、単品成形シミュレーションのように洗練されていくと思っております。出向を完了して帰任しましたが、今後もサポートさせて頂き、良いものづくりの一助となれば幸いです。 最後になりますが、出向中お世話になったトヨタ自動車の上司、同僚の方々をはじめ、一緒にヘミングCAE開発に携わってくれたメンバー、実機の調査に大いにご協力頂いた技能員の皆様、そしてサプライヤ様へ向け、出向を暖かく迎えて頂いたこと、さらに充実した楽しい時間を供に過ごさせて頂いた事に大変感謝致します。どうぞ皆様もご自愛頂き、今後も良き関係を続けていければ幸甚でございます。 - [BIW構造設計のハンドブック: 役立つヒントとテクニック](https://japanforming.com/biw構造設計のハンドブック/) - 自動車のボディ構造を扱うデザイナやエンジニア向けに執筆した過去のブログ投稿を再構成しました。ぜひハンドブックとしてご活用ください。 ボディ構造のエンジニアリングは奥が深いだけでなく、急速に大きく変化しています。常に学びを続けてください。またご自身の経験を同僚と共有することが良質な学習機会となり、またご自身のスキルも高めることができます。 まずはボディ構造のエンジニアリングや製造における「するだけ」という言葉の裏を簡単に説明したいと思います。よくある修正依頼から、いくつか例を挙げます。 ・この穴を5mmほどずらすだけです。 ・側壁を3mm内側にずらすだけです。 ・この部品に新しい穴を1つ追加するだけです。 ・この穴のサイズを変更するだけです。 ・このフランジを1mmカットするだけです。 これらは自動車の開発を通じて、ボディ構造エンジニアがよく受ける変更依頼です。そしてこれらはすべて標準的なワークフローに組み込まれています。以下にぜひご留意ください。 ボディ構造はドナーシステムであり、さまざまなシステムインターフェース をサポートする役割を担っています。 穴一つをとっても、以下のように数多くの考慮すべき事柄があることにお気づきでしょうか。 ・タンデム/トランスファー金型または順送金型(複数追加ステージ) ・ダイ、パンチ、ブランクホルダ、バインダ、ガススプリング、ボルト ・コントロールゲージ、溶接治具、クランプ、グリッパー ・ソーシング、タイミング、物流、部品番号の追跡 このようにただ穴を変更するだけでも、組み付けで不具合が生じないように、常に製造チェーン全体を確認しなければなりません。 経験の浅いエンジニアが対応する場合、適切に監督しなければ 「ただ穴を変更するだけ」でも、製造ラインや組立工程をすべて停止 せざるを得なくなる可能性があります。 私見として、ホワイトボディにおいて単純な変更などありえません。製品設計の変更依頼を受けたら、それがどのような開発段階であっても、必ず確認を怠ってはいけません。特に「これだけ」という依頼には要注意です。(post link) 自動車のシステムを設計・製造する際は常にインターフェースに着目しますが、ボディ構造(ドナーシステム)の場合はなおさらです。インターフェースは非常に重要です。さらには設計の方策やホワイトボディ構造について最終決定を行う際の判断材料ともなりえます。 しかしインターフェースとは一体何でしょうか。簡単に言うと、組立部品全体に含まれるすべての単品部品と車両構成部品の配置です。直接触れていようが、一定のクリアランスがあろうが、製造工程や必要なツールも含めてすべて対象となります。冷蔵庫を例に挙げると、すべての棚にはそれぞれのスペース、つまり容積があり、その収納には限界があります。また冷蔵庫自体にも部品を搭載するスペースが必要です。 自動車業界の関係者には周知の事実ですが、自動車には多数の部品が必要であり、単体のユニットを完成させるだけでも何十もの工程が必要です。冷蔵庫に何かを入れようとしたときにスペースがないと困りますよね。さて、ここからが本題です。 この複雑な検討作業を適切に進めるために、システムインターフェースを以下のように分割します。 設計: システムの機能およびエンジニアリングによってもたらされる動的又は静的なクリアランスを考慮しながら、すべての部品間のインターフェースを確認します。 製造: ボルト固定、溶接、積込、取付、人間工学などの他、塗装、車体工場、最終アセンブリに関する生産上の制約など、生産工程全般を確認します。 システムインターフェースの一例がフロントフェンダーです。フロントドア、フード、ボディサイド、フロント構造、ヘッドランプ、ダッシュボード、アーチライナー、タイヤエンベロープなど設計のインターフェース、そして電動工具の使い方や部品の取扱、積込、ボルト固定などの製造工程を管理する必要があります。 単品部品を設計する際には、部品は単品では成り立たないという点を常に意識してください。部品の周りに幽霊がいると言っているのではありません。相互に関係しあう他のシステムや工程があるのです。怖がらずとも、細心の注意が必要です。 作業する冷蔵庫には頻繁に変更が入ることをお忘れなく。あとは必要なものすべてを合理的に収納する方法を見つけるだけです。(post link) 設計のテクニックについて話す前に、もうひとつ重要な注意事項があります。エンジニアリングに対する変更依頼の確認についてです。 すべてのOEMに共通するのが、設計は継続的に変更してゆくという点です。理由はさまざまですが、自動車のライフサイクルのある時点で、部品を変更する必要が生じます。また生産ラインは停止しないという点も共通します。もちろん停止する場合もありますが、量産期間、つまり販売用に生産を行っている間は決して生産ラインを止めることはできません。 そのため部品交換によって製品品質だけでなく製造ラインの計画にも影響 が出ないよう、すべての関係者が確認および同調する必要がありますが —これが非常にやっかいなのです。 部品やホワイトボディのシステムの設計や製造において、また製品を変更する際には、単純に「するだけ」などありえないことはすでにご存じの通りです。原材料や板厚を変えるだけであっても、変更は変更です。既存の部品を新たな部品に交換しても問題はないと証明されるまで、製造チェーンでは新たな部品を「不明」として扱います。 主だった設計変更の理由 ・新型モデル間での部品の共通化 ・コスト削減および効率を重視した設計 ・工程や製品の改善 ・設計の修正(これもありえます) そこで「煩雑さ」を解消するために、実際に生産ラインで部品交換をする前に検証を行います。たとえば、部品の材料等級を変更したり、板厚を下げたりする場合は、通常、以下のとおり検証を行います。 初期プレス成形の検証用部品 10個 プレス成形とシステム機能の検証用部品 30個 システムおよび自動車の検証用部品 150個 ここで難しいのは、現在進行中の生産 (設備とサプライヤ)に影響を与えることなく、すべての検証を行わなければならないということです。これは高速走行中に運転手を交代するぐらいの困難を極めます。またこれまで部品の検証という観点からのみ話を進めてきましたが、適正品質と適正な性能を担保するには、さらに車両試験が必要となることにもご留意ください(この詳細は後述します)。 トライアウトおよびシステムの検証が完了したら、いよいよ製造現場や生産ラインへ適用することが可能になりますが、この作業もまた複雑です。製品検証は、変更の度合い、部品の複雑さ、システムの機能に応じた対応が必要になります。 - [フォルクスワーゲン社の女性社員たちが実感するプレス加工業界での女性の活躍について](https://japanforming.com/プレス加工業界での女性の活躍について/) - BiWプレス加工・組立分野から国際女性デーを祝福 本稿は平等と機会を称える「女性の視点から読み解くプレス加工業界」の第三部です。 参照:第一部|第二部|第三部|第四部 自動車業界は、技術革新と労働力の変化により急速な変革を遂げています。この変革の中でも特に重要な役割を果たしているのが女性です。 プレス加工業界では、多くの女性が活躍し、ロールモデルとしての存在感を示しています。彼女たちは人々が憧れる存在であるだけでなく、その存在によって技術職にまつわる固定観念が次々と打ち砕かれています。さらに女性がこれまで直面してきた機会の平等に関する諸問題を解消するため、多くの女性が自己能力を高める努力を惜しまぬ努力を続けており、その結果、労働市場における女性の需要は急速に高まっています。また女性の観点から革新的なアイデアが次々に創出され、管理職や技術職のあり方が変わりつつあります。これは男女平等と多様性の重要性を象徴しており、業界が継続的な発展を続けるためには女性の参加が不可欠であることが示されています。 国際女性デーを祝して、フォルクスワーゲン・ド・ブラジル社の金型工場に勤務する3名の女性にお話を伺いました。 フライス盤担当者、ローラ・ソリス・トマス・ダ・シルバの声明 フォルクスワーゲン社 - ローラ・ソリス・トマス・ダ・シルバ 昨今の自動車業界では、女性が躍進し、これまで男性優位であった環境に新たな風を吹き込んでいます。この多様性の広がりは、私たち女性が新たな機会を求めて障壁を乗り越える勇気と決意を後押ししています。このような象徴的な存在こそが、社会変革をもたらすきっかけとなっているのです。女性は自由に職業や業界を選べるという考えが急速に浸透し、それに伴い自動車業界で活躍する女性の数も増加しています。 金型設計者、ジェシカ・ダ・シルバ・ペレイラの声明 フォルクスワーゲン社 - ジェシカ・ダ・シルバ・ペレイラ 今日の自動車業界では、事務職のみならず技術職でも女性が活躍しています。プロジェクト管理、機械操作、金型設計など、これまで男性が中心だった役割を、多くの女性が担うようになっています。有能な女性が活躍の場を広げることで、業界全体が一段と進化を遂げています。 金型製作者、ビアンカ・モンテイロ・パッサジェンの声明 フォルクスワーゲン社 - ビアンカ・モンテイロ・パッサジェン 私はビアンカ、23歳です。2016年にセナイ・フォルクスワーゲン社で整備士の実習生となり、メカトロニクス技術者のコースを受講しました。コースの修了後には金型製造部門での就職が決まりました。その後も機械製造技術の勉強を続け、このクラスから唯一の女性として卒業しました。現在は金型工場のトライアウト部門に勤務しています。主な業務は金型の調整やクレーン、フォークリフトの操作です。5年がたちましたが、今でも常に多くのことを学び、充実した日々を過ごしています。 性別に関係なく、誰もが知識や経験を活かせる環境で働けることは、非常に意義深いことです。女性も男性と同じ研修を受け、同じ役割を担い、同じスキルを習得し、同じ責任を担うことができます。努力と覚悟さえあれば、何でもできるし、どこにでも行けるのです。私たちは誰にも夢を現実にする能力を持っています。フォルクスワーゲン社では、近年、寛容性と平等な機会に対する取り組みが広がり、また自分の意見をはっきりと主張することができます。そして仕事を着実にこなすことでプロとして認めてもらえます。私はこの会社で働くことを誇りに思います。 - [プレス部品の初期開発段階にデジタル・ツインを導入: デジタル化担当マネージャの見解 第一部](https://japanforming.com/プレス部品初期開発段階のデジタル・ツイン導入/) - はじめに: 一般論として、業界向けプレス部品の開発はすでに確立した分野であり、3Dモデル作成やCNCプログラミングといった関連技術について熟知した人材があまたいると考えられています。近年では、コンピュータによるプレス成形工程のシミュレーション技術が飛躍的な発展を遂げています。これは有限要素法(FEM)を用いた高度な計算モデルを用いてプレスやアセンブリの結果を高度なグラフィックで表現しながら、検討中のプレス成形工程の成形性を早期に検証するもので、いわゆる「デジタル・プロセス・ツイン」と称されています。 しかし各企業にて意思決定を行う上層部、特に関連部門の監督者や管理職の多くは、ひと昔前の環境、つまりデジタル・ツインが普及する以前の経験を有しています。そのため開発業務においては依然として旧来の計画や手順に依存する傾向があり、デジタル・プロセス・ツインは、金型設計や工程定義における不具合を回避するための「保険」のようなものとして捉えられがちです。結果として、金型開発のコスト削減や納期短縮、プレス部品の品質向上、プレスラインやアセンブリの生産性向上など、デジタル・ツインの可能性が十分に活用されることはほとんどありません。 本稿では、プレス部品やアセンブリの開発と金型作成をどのように改善できるかについてご紹介します。それにはデジタル・ツインを有効活用し、そこから得られるメリットを最大限に享受することが鍵となります。特にプレス成形工程およびアセンブリ工程の生産性向上と品質改善に着目し、計画作成や諸活動との調整を通じたデジタル・プロセス・ツインの有効活用についてもご紹介します。 このブログ連載は4部構成でお届けします。 第1部ではプレス部品および組立の開発初期段階について詳説します。第2部は計画と予算について取り上げます。そして第3部は金型の設計と製作について、第4部にはトライアウトと生産について説明します。ぜひ連載全体にわたりお付き合いください。 プレス部品およびアセンブリの初期開発段階: 自動車、電子機器、家電製品のほか、プレスやアセンブリを用いた製品の開発は、従来、製品技術部門の担当であり、進行中のプロジェクトを最終製品の作業条件に適応させることに着目してきました。デジタル・ツインはすでに確立された技術であり、構造強度、振動、熱効果などの分析に広く用いられています。しかし多くの場合、プロジェクトを担当する設計者やエンジニアは、プレス部品やアセンブリの実際の製造工程について精通しているわけではありません。なぜなら、彼らの学歴や職務経験上、各部品がどのように機能するかを評価することが第一義となっていて、製造工程について深く学ぶ機会がないからです。 部品を設計する上で、その製造工程に関する知識は必要となりますが、しかし製造工程の詳細まで熟知するように製品設計者に求めることも、多くの場合、現実的とは言えません。また十分な経験を有する人材を得ることが難しいため、やはり製造工程の習熟まで求めることが難しいのが現実です。そのため、シート部品のプレスおよびアセンブリの開発において生じる問題の多くは単純なものですが、しかし部品の初期検討段階で検出されなかった細部に起因するものです。壁の角度、曲げ半径、絞り深さ、公差などの項目は、多くの場合、部品の初期設計段階では部品の機能に影響を出すことなく簡単に修正することができます。製造工程の簡略化を通じて製造工程や金型作成のコストを削減できれば、より安価で高品質な最終製品を量産することが可能になります。しかしこれはプレスやアセンブリの不具合を事前に把握できる場合に限られるのです。 この段階でデジタル・プロセス・ツインを適用すれば、たとえ簡略化されたモデルを用いる場合でも、少なくとも検討しているデザインが意図した製造やアセンブリの工程に適しているかを素早く評価することができます。そして部品を工程条件だけでなく製造条件に合わせて最適化することが可能になります。これを適切に活用すれば、量産開始までの時間を短縮できるだけでなく、全体的なコストを削減でき、同時に品質も向上できます。図1はデジタル・ツインのモデルを使用してプレス部品の製造について解析と最適化を行った例を示しています。 図1:シート部品の初期設計(左)ではプレス成形工程にて破断の不具合が生じますが、修正形状(右)はストレッチが高まり、破断のリスクが低くなっています。 溶接によるプレス部品のアセンブリを図2に示しています。最終アセンブリの寸法結果を事前に評価することで、単品部品の寸法公差をより明確に指定することができます。 図2:プレス部品のアセンブリと溶接の評価から、最終アセンブリの寸法結果を把握できます。 製品技術部門にデジタル・ツインを導入するには、設計者やエンジニアの技術習得、そのサポートを行う専任チームの結成、さらには製造技術部門による製品技術部門の包括的なサポートなど、さまざまなアプローチをとることができます。デジタル・ツインの活用については、この段階ではプレス成形工程に精通している必要はなく、簡易的なデジタル・ツイン・モデルから非常に迅速に結果を得ることができるため、プロジェクトの進行に大きく影響することはほとんどありません。しかしデジタル・ツインの導入を成功に導くには、開発期限の設定、そして必要な投資と期待される利益のタイミングのずれ、という2つの課題に取り組む必要があります。 開発期限については、デジタル・ツインの影響よりも、むしろ開発中のプレス部品やアセンブリに製造上の不具合が検出された場合に、プレス成形、アセンブリ、加工条件をすべて同時に考慮しながらデザインを修正しなければならないことが主な要因となります。これは時間を要する作業であり、プロジェクトの開発期限が大幅遅延する原因となりかねません。しかし最終的に設計されるプレス部品やアセンブリは元の計画のままです。したがって製品技術部門の観点からは、デジタル・ツインの導入は業務の遅延を招くのみにしかならない、という見方になりえるのです。そしてこれが2つ目の課題を浮き彫りにしています。開発の初期段階にデジタル・ツインを導入することで享受できるメリットは、金型設計あるいは金型のトライアウトや量産開始の段階まで可視化することが難しい、という点です。製品技術部門では、プロジェクトの完了から相当の時間を経るまで、デジタル・ツインのメリットを実感することができません。 そのため、デジタル・ツインには明確なメリットがあるにも関わらず、プレス部品やアセンブリの初期開発段階に導入することは、製品技術部門のみから一見すると不便で、場合によっては非生産的であるように見えるのです。そのため金型製造から量産まで製品開発全体を統括する上層部が主導しながら、デジタル・ツインが企業にもたらすメリットを評価し、部門間でスケジュールや業務フローを調整し、初期段階からデジタル・ツインを適切に活用できるように調整することが重要です。そうすることで、金型作成や生産準備の段階で、デジタル・ツインの大きなメリットを確実に享受することができます。 - [デジタル・ツインのコンセプトが工程計画とコスト見積もりに与える影響: デジタル化担当マネージャの見解 第二部](https://japanforming.com/デジタル・ツインのコンセプトが工程計画とコス/) - このブログ連載は4部構成でお届けします。 参照: 第一部 | 第二部 | 第三部 | 第四部 デジタル・ツインのコンセプトがもたらす影響について、ブログ連載の第2部をお届けします。前稿ではプレス部品とアセンブリの初期段階について掘り下げました。本稿では工程計画とコスト見積もりに着目します。 工程計画とコスト評価は、これまで過去のデータや手作業で作成した見積もりをベースに検討が行われていましたが、デジタル・ツイン技術の導入により、大きな変革が進んでいます。最新のシステムでは3Dモデルと包括的なデータを活用して正確な査定を行うことが可能となり、高精度なコスト見積もりと効率的なリソースの割り当てができるようになりました。しかしこの技術を導入するには、人材の育成から工程計画と金型設計の統合に至るまで、独自の課題が伴います。 本稿では、工程計画とコスト評価にデジタル・ツインを活用することの利点や複雑さ、管理上の考慮事項について考察します。それでは、バーチャル上のシミュレーションと実製造現場のコスト評価の相関について検証し、コストと納期の面から潜在的な利点について確認してゆきましょう。 工程計画とコスト評価: プレス部品やアセンブリ部品の工程計画とコスト評価は、通常、プレス工程やアセンブリ工程に関する知識と経験があり、生産に何が必要であるかをある程度把握している担当者に割り当てられます。また、カスタマイズされた表計算シートやコンピュータのプログラムを使用して、過去の金型製造や製造履歴からコスト見積もりを算出することもよく行われています。 しかし、通常、過去のデータをもとに評価を行うと、部品のタイプ、サイズ、使用材料などは考慮されるものの、各部品やアセンブリの具体的な形状や実際の特性などは考慮されません。このため、多くの場合、金型や製造コストに寄与する重要な細部が考慮されないままになってしまいます。また、新たな部品には革新的な設計やこれまで使用したことのない新たな材料が用いられている場合もあります(自動車業界の電動化など、市場が劇的に変化している時期にはよくあることです)。 このような場合、新たなツールであるデジタル・ツインを活用することで、3Dモデルとデータ全体から得られる新規部品の実際の特性から客観的に確実であることが担保された見積もりを作成することができます。この最新のシステムでは、各コンポーネントの主要部位を自動的に識別し、製造工程を定義する技術が採用されています。さらに金型製造に必要な材料の消費量の推定、金型部品リストの生成、必要な作業のリードタイムの推定まで行います。これにより、金型自体の予算だけでなく、金型工場の作業負荷の見積もりや、利用可能なサプライヤー間で実施する作業の分配計画も立てることができるため、コストと納期の両面で大きな利便性が期待できます。 一方、このような技術の導入は、マネジメントにも困難が伴います。まず、プレス部品のプレス成形やアセンブリの工程計画に携わる技術者は、3Dモデルを採用した高度なシステムでの経験が浅く、基本的には数値表を扱うのみである場合がほとんどです。部品の3D形状モデルから納期や材料消費量などの見積もりを行うデジタル・ツインを、これらの技術者が使いこなすことは必ずしも容易ではなく、また不可能な場合すらあります。図1の例に見られるように、マネージャはこのような難しさを認識しておく必要があります。場合によっては、製造エンジニアリングや金型設計などの他部署から人材を異動させ、コスト見積もりの担当部署に加える場合もあります。 図1: 部品の3D形状に基づく工程計画およびコスト計画システムの画面例 経営陣が認識しておくべきもう一つのポイントは、工程計画と金型自体の設計との相互作用です。金型の製作、アセンブリ、工程の詳細によっては、計画段階で定められた納期やコストに影響を与える工程変更が必要となります。 コスト削減の可能性を最大限に生かすこと、または必要なコストやスケジュールの増加を分析し、計画に組み込むことができるよう、両方の活動(多くの場合、金型開発プロジェクトは外注されることが多いため、複数の企業が開発に携わっている可能性もあります)が効果的に統合されていることをマネージャが責任をもって確認すべきです。 - [デジタル・ツインのコンセプトをトライアウトと量産に導入:デジタル化担当マネージャの見解 第四部](https://japanforming.com/デジタル・ツインをトライアウトと量産に導入/) - このブログ連載は4部構成でお届けします。 参照: 第一部 | 第二部 | 第三部 | 第四部 デジタル・ツインのコンセプトに関するブログ連載シリーズの最終回へようこそ。これまでプレス部品の初期段階、計画と見積もりの作成、そして金型設計および製造段階にもたらされる変革について取り上げてきました。本稿ではデジタル・ツインのコンセプトが主軸となるトライアウトおよび生産段階について考察を進めます。 高度なシミュレーションシステムを通じて、プロセスの変革、確率的なシミュレーションの活用、そして生産ラインの徹底管理を実現できます。しかし部門間の連携を図り、また生産現場の状況を正確に反映させるには、きめ細やかな管理が必要です。デジタル・ツインが促進する生産の最適化、品質の向上、そして包括的な生産性の向上について、その可能性を探っていきます。 トライアウトおよび生産: 一般的には、金型が実際に製作されたら、その後にデジタル・ツインの利用価値が失われると考えられがちです。「実物の金型」を実際の製造現場で利用することができるのであれば、もはやバーチャルに検討することに意義はなくなるからです。 しかし高度なシミュレーションシステムの進化により、入力パラメータのわずかな変化を変数として定義できるようになり、製造現場の条件より正確に反映させた確率的なシミュレーションを実行できるようになりました。これでプレスや溶接工程の再現モデルに、実際の製造現場では完全に制御することが不可能な要因(板厚や材料特性などの「ノイズ変数」)まで含めて、これらの要因がプロセスに及ぼす影響を評価することができます。このシミュレーションを活用して製造プロセスにおける不具合の根本原因を特定し、その不具合を排除するために工程パラメータをどのように調整するか、バーチャルに検討することが可能になったのです。これにより、生産ラインでコストのかかるトライアンドエラーを繰り返すことなく、不具合を排除することができます。さらには、バーチャル上の工程に最小統計能力を設定することで、「バーチャル検収」を取り入れることもできます。 上述のことから、プレス成形工程や溶接工程のデジタル・ツインを通じて、製造時の損失を最小限に抑え、工場の生産性を最大限に高めるために必要な情報を活用することが可能になり、つまり生産ラインの徹底管理を実現することができます。図1Aと1Bは、製造上の不具合解消を目的としたデジタル・ツインを応用した例を示しています。 図1A: ノイズ変数の変動から生じる不具合を示したモデル 図1B: 発生した不具合を解消するために工程パラメータ(ブランクホルダ荷重とブランクの位置)を調整した同モデル この技術を実際に適用する上で、この場合も金型開発や生産に関わる複数部門の連携が最大の障害となります。デジタル・ツインのシミュレーションモデルは一般的に製造技術部門が担当し、ここに工程やプロジェクトのスペシャリストも配置されています。製造に影響を与える可能性のあるノイズ変数や不具合解消に活用できる工程変数のすべてを含むファイルは、ここで生成することになります。 しかし生産ラインの稼働状況を正確に再現するシミュレーションを構築するには、ノイズ変数の許容値や工程パラメータの変動範囲について、生産担当から完全かつ信頼性の高い情報を受け取る必要があります。同様に、製造、トライアウト、運用中に金型に何らかの修正が加えられた場合にも、その情報を受け取り、モデルに組み込む必要があります。このような連携が確立してこそ、生産管理ツールとして使用するデジタル・ツインが実際の製造現場を適切に反映していることを担保できるようになります。 部門間の連携の重要性については、通常、部門長にこのような発想はなく、むしろ各部門は独立して業務を進める傾向があります。またサードパーティのサプライヤーが提供するサービスについても同様です。そのため必要な連携を確立し、確実な運用を担保するのは、上層部の管理職の役割となります。理想的には、プレス部品や組立の生産における金型構築プロセスに、確率論的シミュレーションモデル(いわゆるバーチャル検収)の引き渡しという要件を含めるべきです。それによりデジタル・ツインから得られる最先端のリソースの活用および運用が可能になります。 ブログ連載シリーズのまとめ プレス成形やプレス部品のアセンブリにおけるデジタル・ツイン技術の進化は近年著しく、部品や金型の開発中に生じる不具合をほぼすべて網羅できる、非常に正確で多用途なシミュレーションシステムが確立してきています。 しかしこのようなデジタル・ツインの技術を有効活用する上で、それより以前の数十年間に培われた手順や慣習そのものが障害となりうる可能性は十分にあります。したがって企業の上層部はこの最先端技術がもたらす利便性を理解し、関連各部門およびサプライヤーの連携を促進するとともに、コスト削減、納期短縮、最終製品の品質向上、製造ラインの生産性向上など、デジタル・ツインがもたらすあらゆる利便性を最大限に引き出すための新しい手順を策定することが求められます。 参照: 第一部 | 第二部 | 第三部 | 第四部 - [デジタルツインのコンセプトを活用した金型の設計および製作の変革: デジタル化担当マネージャーの見解 第三部](https://japanforming.com/デジタルツインを活用した金型設計と革新/) - このブログ連載は4部構成でお届けします。 参照: 第一部 | 第二部 | 第三部 | 第四部 デジタルツインのコンセプトを活用した変革に着目したブログ連載の第3弾へようこそ。これまでプレス部品やアセンブリの初期段階、そして工程計画やコスト評価の複雑さについて取り上げてきました。本稿では金型設計と構築の領域について掘り下げていきます。 デジタルツインによって、初期段階での金型形状の作成、不具合の検出、プロセスの最適化、実際の製造現場での対象物の挙動を模倣するバーチャルシミュレーションが可能になり、この分野は大きな変革期を迎えています。金型の製造が始まる前に、すでに結果を正確に予測する機能を備えて、プロセスを最適化できるようになったことで、開発計画には根本的な転換の必要が生じています。 しかしこの見直しを進めるにあたり、特に高い専門性を有する金型製作部と生産技術部や設計部の連携において特有の課題があります。 本稿では、金型設計および製造にてデジタルツインを最大限に活用する上で直面する複雑さや障壁、そして管理上の注意点について解説します。バーチャルシミュレーションとその製造現場への適用の分岐点に立ち、このデジタルツインを最も有効活用する上で効果的な手段について考えてみましょう。 金型設計および製作: プレス部品の製造や組立の工程が決定したら、コンポーネントの詳細設計を練り上げ、トライアウト用の金型を製作する必要があります。これらの段階では初期段階の不具合検出と修正にデジタルツインを活用する取り組みがすでに20年以上前から行われています。 工程パラメータ、金型形状、材料使用の最小化、スプリングバックの見込み補正の最適化やその他の検討は、金型の詳細設計前から、プレス成形工程のデジタルツインを使用して日常的に行われています。 この分野におけるデジタルツインの活用はすでに成熟していると捉えられがちですが、この技術を効果的に有効活用するには、製造技術、金型工場、トライアウトの担当者が取り組むべき課題が依然として残っています。 従来、プレス金型の開発計画では、トライアウトを行うまで金型の挙動を正確に予測する手段がなかったため、コンセプトの検討やプロジェクトそのものに費やす時間を最小限に抑えることが求められていました。必要な情報をできるだけ早く提供し、納期に余裕を持って金型を製作すれば、トライアウト段階では金型メーカーが「本物の金型」を使って不具合を検出したり修正したり、材料の使用量を最小限に抑えるための時間を多く確保することができます。 プレス工程の高精度なデジタルツインを生成できる最先端システムの登場により、より現実的で信頼できるプレス成形中のシートの挙動をコンピュータ画面上で確認できるようになりました。そのためこれまでトライアウト段階でしか行うことができなかった不具合の特定をバーチャル上で対応できるようになり、あらゆる修正や調整を事前に行うことができるようになりました。図1は、プレス成形工程のデジタルツインから得られる結果を示しています(第2部の図2では、アセンブリ工程の同等の結果を示しています)。 図1:プレス成形工程のシミュレーション結果の例 プレス成形やアセンブリの結果を事前に予測できるということは、つまり開発計画に抜本的な変更が必要であることを意味します。金型、有資格者、時間といったリソースを適切なタイミングおよび方法で投入して、シミュレーションを確実に実行することが大前提となります。設計段階の時間短縮を図ることでトライアウトに多くの時間を割くことに、もはや意味はありません。むしろシミュレーションにより多くの時間を費やして「バーチャルトライアウト」を徹底的に行い、シミュレーションの精度を最大限に高めるべきです。すると金型の詳細設計や製作を始める以前に、プロセスはすでに最適化されています。それゆえ、金型の製作と調整をシミュレーションの通りに行うことで、最適なプロセスが担保されます。しかしこれは後述するように、そう簡単なことではありません。 これは経営の観点からも新たな課題に取り組む必要が生じます。まずシミュレーション担当者を慎重に選定しなければなりません。最新鋭のソフトウェアを導入し、次世代のコンピュータを設置しても、仮に担当者には金型の製作や運用の経験がなく、またプロジェクトの最適化を行うための十分な時間も許されていなければ、何も意味を成しません。金型設計の経験が豊富な担当者であっても、その業務上、実金型の製作やトライアウト、そして運用に直接関わる機会はほぼ皆無であるため、プレス成形工程にて生じる問題を解決するための「裏技」を知り尽くしているとは限りません。多くの場合、工程開発とそれに伴うシミュレーションは、他社に外注されます。同様に、金型工場やトライアウト担当部署では、高度な3Dモデルのシステムに精通していることはまれであり、ましてやデジタルツインの特徴でもある高度なシミュレーションについては全くの専門外であるため、シミュレーション結果を無視する傾向にあります。シミュレーションは実際の製造現場の挙動を十分に反映していないと思い込んでいるからです。 したがって、この関連しつつも全く異なる2つの分野を連携させることが急務となります。金型設計のコンセプト検討を担うエンジニアや設計者は金型製作に関する知識を取り入れるべきであり、また金型製作者はシミュレーションから得られた結果を理解し、遵守しなければなりません。つまりこれは金型工場では何十年もかけて確立した手法が効果的な連携に対する障壁となりうるため、大きな困難を伴うこともありえます。デジタルツインで用いるモデルは、通常、必要な調整や修正がすべて完了した生産用金型を再現することを目的としています。しかし実際には、現実的な理由から、シミュレーションで検討した内容とは異なる方法で金型が製作される場合が多くあります。 たとえば、通常はトライアウトの完了前に金型の最終仕上げを行うことはありません。これはサーフェスの調整が必要になった場合(これはよくあることです)、摩擦係数が想定した値とは異なる値に変化してしまうからです。またドロービードがシミュレーションよりも高く加工される傾向にもあります。なぜなら実際には、必要であればドロービードを削る方がはるかに容易だからです。トライアウトで使用するシート材がバーチャル上で想定された公称特性とは異なるケースもありますが、規格の許容範囲内である場合もあります。また、ブランクが設計通りに正確にカットされないこともありますが、これはカット金型がないか、あるいは材料消費量の削減が試みられているためです。 アセンブリ工程では、アクセスの問題や生産時間の短縮努力のため、溶接箇所の順序を変更する場合があります。また溶接後のアセンブリのひずみを最小限に抑えるために、すべてのプレス部品の許容誤差は非常に厳しいことも珍しくありません。しかしアセンブリの最終寸法を決定するのはアセンブリの剛性が高い一部の部品である場合も多く、あるいは、さまざまな部品の変形が互いに相殺し合うことで、寸法が合わない部品があっても適切に組み立てることができる場合もあり、これはデジタルツインで特定できる可能性があります。 プレス成形分野での金型開発において常に標準的な手法と見なされてきたこれらの要因は、プレス成形工程やアセンブリ工程に大きく寄与し、デジタルツインの結果とトライアウトの結果の間で相違が生じる原因となっています。その結果、シミュレーション結果をもとに設計した金型や設備に大幅な変更が施され、それがために、デジタルツインをどれだけ綿密に練り上げても、それを効果的に活用することができず、利便性を十分に享受することができません。 この種の相違を解消するには、上層部から個々の部門(生産技術、金型工場、トライアウト担当)への介入が必要となります。これにはいくつかの方法があります。たとえば、デジタルツインのシミュレーションに関する知識や経験が豊富な担当者を金型の製作やトライアウトの部門に関与させる、金型工場や品質管理などの担当者を含む委員会を設置してプロセスの制定やシミュレーションの精緻化を共同で行う、FMEA計画へのシミュレーション結果を組み込む、生産条件だけでなくトライアウト条件そのもの(後者は完成した金型の納品前のステップで参照)に対してデジタルツインを適用するなど、さまざまな活動が挙げられます。 しかし、なによりプレス成形/アセンブリ工程のデジタルツインがもたらす利便性について担当マネージャーが十分に認識することが第一義であり、また上述の連携問題やその他の障壁について理解した上で、そのデジタルツインから最大限の恩恵を享受できるようにそれぞれのケースで適切な措置を講じ、そしてひと昔前に開発された旧式の手法に固執することがないように配慮することが重要です。 - [ブラジル デルガ社: 近年のプレス業界における女性の立ち位置](https://japanforming.com/ブラジル-デルガ社-近年のプレス業界における女/) - デルガ社カミラ・ヴァリムがプレス業界で女性が直面する壁を乗り越えるまで 本稿は平等と機会を称える「女性の視点から読み解くプレス加工業界」の第二部です。 参照 第一部|第二部|第三部|第四部 自動車業界は、技術革新と労働力の変化によって急速に変革が進んでいます。この変革の中で、特に重要な役割を果たしているのが女性です。しかしAutomotive Business誌が実施した「2021年自動車業界における多様性調査」によると、自動車業界の管理職は依然として男性が大半を占めており、女性の割合はそのわずか20%にとどまっています。幸い、この数字は上昇傾向にあり、より多くの女性がエンジニアリング、生産、品質管理などの技術分野に進出を続けています。 以下、困難を乗り越え、さまざまな分野で活躍している女性たちをご紹介します。 デルガ社予算担当エンジニア、カミラ・ヴァリム氏による声明 「私たち女性が成し遂げられることに限界はない」 - ミシェル・オバマ デルガ社 カミラ・ヴァリム カミラ・デ・オリヴェイラ・ヴァリムと申します。25歳で、ENIAC大学センターでメカトロニクス技術の学位と産業機械工学の学士号を取得しました。またゲツリオ・バルガス財団でプロジェクトマネジメントのエグゼクティブMBAを学んでいます。また技術分野ではプロジェクト、ソフトウェア、エンジニアリング、プレス加工のコースを受講し、認定資格を取得しています。 私は昔から技術分野に興味を持っていました。子供の頃は土木技師に憧れていましたが、高校でメカトロニクスの技術コースを受講した際に、機械工学こそが自分の運命だと気づきました。 2015年半ば、オートキニトン(旧タワーインターナショナル)社で自動車市場に携わる機会を得ました。 そこで私は、公私ともに最高にやりがいを感じた7年間を過ごしました。 17歳で実習生として働き始め、見積もり担当部署へと昇格しました。当時、自分がこれほどの情報や知識を吸収することになるとは思いもしませんでした。私はその部署に配属された最初の女性見積担当者であり、在籍中、私はプロ意識が高い先輩方から多くを学びました。先輩方は私を励まし、さまざまな研修を行ってくれました。部署の大半は男性でしたが、誰もが私に対して常に敬意をもって誠実に接してくれ、技術的スキルも十分に評価していただきました。 自動車業界で働くことがいかに大変かは覚悟していました。同僚と肩を並べるには、人一倍の努力を重ね、より多くを学び、全力を尽くさなければなりません。なぜなら、この分野は男性が圧倒的に多く、女性は少数しかいないからです。私は女性が少ない工学部へ進学することを決めた時から、重圧を感じていました。しかし私はそのプレッシャーに屈することはありませんでした。学士課程を無事に修了し、さらに2019年度後期の機械産業工学科で最優秀最終論文賞を受賞しました。この受賞は私にとって大きな励みとなり、女性であっても、目標を定めて努力すれば何事も達成できるという自信につながりました。 2022年の初めにデルガ・グループの予算編成部署への異動が決まりました。同僚たちは私を温かく迎えてくれました。私はここでやりがいのある仕事をこなし、同僚たちと同じ責任、義務、評価を受けています。この部署は助け合いの精神が根付いています。私たちはお互いを尊重しながら、常に敬意を持って協力し合っています。 自動車業界で働くことを選んだ女性たちの一員であることを誇りに思います。この業界の女性たちは、どんな役割でも果たし、どのような困難にも立ち向かうことのできる、強く、勇敢で、賢く、自立した女性たちです。私たちは互いに励まし合いながら自分の居場所を守り、そして認められるために戦っています。私は自身で選択した職業や学業にやりがいを感じています。そして知識を共有する機会を嬉しく思い、また自分自身が積み上げてきたキャリアや、自分に対する評価にも満足しています。 私たちが築いてきた平等な社会が、文化として深く根付いてゆくことを心から願っています。どの業界においても、すべての企業が男女を公平かつ平等に扱うことが当たり前となる未来が訪れると信じています。そして実務、技術職、そして管理職に就く女性の数が大幅に増え、多様性が推進され、より公平で包括的な社会が実現されることを確信しています。 デルガ社製造技術部ブルーナ・アラウージョ・ダ・シルバ氏による声明 デルガ社ブルーナ・アラウージョ・ダ・シルバ氏 ブルーナ・アラウージョ・ダ・シルバです。現在30歳で、グランジABC大学で機械工学の学位を取得しています。現在はプロジェクトマネジメントのMBA取得を目指し、製品およびプロセス開発に関する複数のコースを受講しています。また、グリーンベルト/シックスシグマの認定も取得しています。 2009年に父が旋盤工として勤務していた工場を訪れた際に、この業界への興味が芽生えました。工場見学中、男性が大半を占める業界で奮闘する女性を目の当たりにし、これは私にとって目が覚めるような経験であり、自分が望む道を追い求めてもよいのだと示してくれました。当時すでに工学部に在籍していた兄も私を応援してくれました。翌年、私は機械工学の学位取得を目指して勉強を始めました。しかしその最中、父が失業し、学費を払うことができなくなってしまいました。 それでも私は強い意志と信念を持ち続け、努力を重ねて全額奨学金を獲得しました。 大学初日、私のクラスには男子学生が35人に対して、女子学生は3人しかいないことに驚きました。この不均衡の中で、私は女子学生でも優れた成績を収め、目標を達成することができることを証明しようという決意を固めたのです。 その年、私はインターンとして仕事を探し始めました。工業分野での就業経験がない女性がその分野で職を得るのは難しいだろうと感じていましたが、それを痛感したのは、企業選考の過程でした。すべての試験に合格したにもかかわらず、最終面接の日に人事部から選考を外れることを告げられました。その説明は衝撃的なものでした。「あなたは最も優秀な候補者で、すべての段階をクリアしましたが、マネージャーが女性を採用したくないと言っています」と言われたのです。この言葉で、私の世界は崩れ落ちました。大学を辞めて他の業界に進むことすら考えました。しかし、私は力を振り絞り、「どんな困難も乗り越える」という目標を掲げて頑張りました。翌月、電気パネルを扱う企業で初めてのインターンとなり、そこで多くのことを学び、1年後に採用されることとなりました。 2012年、私はフォルクスワーゲンのインターンシッププログラムに参加しました。これが私のキャリアの転機となったのです。この経験を通じてエンジニアリングに対する私の情熱は確固たるものとなり、また自動車メーカーで働くという夢も実現することができました。翌年、私はデルガ・ディアデーマ社で生産技術部のインターンに応募し、候補者10名の中で唯一の女性として、選ばれました。 デルガ社での勤務には、大きな壁が立ちはだかっていました。当初は何事も簡単に進まず、私が女性であるという理由だけで、私の能力が劣っているとよく決めつけられていました。それでも私は諦めませんでした。キャリアを築くという決意があったので、何があっても立ち止まるつもりはありませんでした。そしてカナダのトロントとの交換留学への参加など、多くの目標を達成しました。これらはすべて、努力と献身の結果です。デルガ社には素晴らしい指導者がいます。私の原動力は、学ぶこと、経験を積むこと、そして卓越することでした。実習生からアシスタント、アナリスト、そして現在のプロセスエンジニアへと、さまざまな職務を経験してきました。現在は継続的改善グループのコーディネーターとして、数々のプロジェクトを実践し、会社に多大な利益をもたらしています。この仕事に大きな充実感を感じています。また、困難に直面しても諦めずに取り組んできたこと、そして努力が認められたことを誇りに思っています。 すべての女性にお伝えします。夢を恥ずかしいと思わないでください。不安と向き合うのです。そして誰にも自分の成功を決めつけさせてはなりません。私たちは、望むもの、夢見るもの、何にでもなれるのです。そして、何より重要なのは、決してあきらめないことです! - [女性の視点から読み解くプレス加工業界:エンジニアリングの世界を生き抜くために](https://japanforming.com/女性の視点から読み解くプレス加工業界/) - エンジニアリング業界は、すべての人に平等な機会を提供し、働きやすい職場環境を実現しているのでしょうか。女性が技術や設計の分野で実務に就くことは奨励されているのでしょうか。また、管理職においても同様の機会が提供されているのでしょうか。プレス加工業界は慣習的に「男性の職場」とされてきました。FormingWorld.comのコミュニティに新たな視点をもたらすべく、Neklar社のリディア・カサスの見解をご紹介します。 リディア・カサスが語るプレス加工業界における女性の立ち位置 Neklar社のリディア・カサス エンジニアリング業界で働く女性として、私の歩んできた道のりは挑戦と成功に彩られてきました。これは私自身のキャリアを象徴するものであるだけでなく、男性優位の職場環境で働く女性を取り巻く環境の変化もはっきりと見て取ることができます。 周囲の理解を得る方法や固定観念への対処法、そしてNeklar社のような先進的な企業での勤務に至るまで、私の職務経験からは、これまでの進歩と、今なお残る一部の障壁の両方を実感しています。 初期の課題 23歳で社会人となった当初から、エンジニアリング業界で女性が働くことに、ある種の違和感を抱いていました。 数多くの機会に恵まれていたものの、折々の場面にて、私の意見が軽視されていると感じることがありました。また、仕事以外の面においても、初期の頃には暗黙のドレスコードがあり、この問題を真摯に受け止めてもらうには、周囲の認識を改める必要があると感じていました。 しかしキャリアを積み上げていく中で、女性の上司に恵まれたことが、私の仕事に対する自信を育む上で極めて重要でした。彼女からは的確な導きやさまざまな気づきを得ることができ、さらに誰もが働きやすい環境を構築してゆく上で、代表者や指導者の存在がいかに重要であるかを学びました。 プレス加工業界で女性が昇進を続けることは、保守的な年配の同僚たちとの戦いでもありました。自分の実力を何度も証明しなければならず、これは常に私にとって大きなテーマであり続けています。障壁に阻まれながらも、徐々にその壁を乗り越える方法を身につけ、私は常に努力を怠りませんでした。 男女格差から感じた進歩… そして取り組むべき課題 男女間の格差是正における近年の著しい進歩は否定できません。たとえば、ヨーロッパにおける女性科学者およびエンジニアの割合は、2009年の32.4%から2019年には40.9%に増加しています。過去10年間の世代交代がジェンダー格差の縮小に貢献しており、これは大きなプラス要因となっています。 しかしエンジニアリング業界が真の男女平等を実現するには、まだ長い道のりがあるということは暗黙の了解となっています。世界的に見ると、理工学部の卒業生に占める女性の割合はわずか28%です。さらに英国王立工学アカデミーの調査では、エンジリング業界における男女間の賃金格差は11%に上ることが示されています。一方、米国では女性の機械系エンジニアの平均給与は、男性エンジニアの95%となっています 次世代の女性エンジニアを育成する 私が直面した障壁は、性別に基づく固定観念だけでなく、女性がまだ少数派である業界で、女性が指導力を発揮することの難しさもありました。このような障壁は、エンジニアリング業界に限らず、概ねどの業界でも見られるものであると私は強く信じています。 これこそが、私が女性に技術職への就職を推奨する理由なのです。技術職に就く若い女性にとって、自己主張と自己肯定感は、職場環境をうまく乗り切るために不可欠です。 特に近年では管理職への登用において性別よりも資格が重視される傾向が強まっているため、自分の能力に対する自信が何よりも重要だと感じています。 女性エンジニアを目指す方々には、性別に基づく固定観念にとらわれることなく、しっかりとした履歴書を作成すること、そして強い自己肯定感を育むことが重要であるとお伝えしたいです。職場で性別による偏見に遭遇することが避けられないとしても、それに左右されてはいけません。その代わりに仕事を通じて自分の実力を示し、着実に実績を積み重ねることが大切です。 そして私の経験から言えることは、男性でも女性でも構いませんので、信頼できる先輩を見つけることです。優れた指導者に見守られることで、自身の視野が広がるだけでなく、困難に立ち向かうための導きや助言を得ることができるはずです。 エンジニアリング業界は常に変更し続けていることを忘れないでください。最新の技術や市場の動向に常に敏感であることが、仕事で優位に立つための鍵となるでしょう。 賢明な女性にとってエンジニアリングが賢い選択である理由 エンジニアリング業界の魅力は、キャリア選択の幅が広いことです。労働者不足でどの業界も需要が高まっていた時期に、私はこのエンジニアリング業界に就職することを選択しました。この仕事は知的好奇心が大いに刺激され、また女性がイノベーションスキルを発揮し、技術の進歩に貢献できる多くの機会にあふれています。 金属プレス加工やその他の分野ではキャリアアップや自己成長の機会が豊富にあり、また研修や教育を継続しながら管理職を目指す道も開かれています。そして多くの職場では多様な価値観が尊重されているため、柔軟な働き方を選択することができ、また協調的な文化も推進されています。 そしてもはや性別のみが採用の判断材料にされることもなくなりました。これは大きな進歩です。女性がこうした変化を前向きに捉えることで、女性の活躍に限界はなくなってゆくことでしょう。 パンデミック後の時代への適応 コロナ禍を機にエンジニアリング業界全般の考え方は大きく変わりました。仕事と家庭の両立が注目されるようになり、在宅勤務も定着しています。週に数日自宅から勤務することで、私は母親として娘と過ごす時間を確保することができるようになり、これまで仕事を優先しがちだったライフスタイルを見直すきっかけともなりました。 総じて言えるのは、近年は家族を優先する社会へと変化をしていることです。仕事と子育ての両立は、多くの社員にとっての最優先事項です。これこそが、社員を尊重し持続可能性を重視するNeklar社のような企業が、男女平等において時代を先取りしている理由です。 Neklar社:プレス加工業界の先駆的企業 私にとってのNeklar社は常に男女平等における先駆的企業であり続けています。同社では昇進や採用の判断において、性別は一切考慮されません。 持続可能性に価値を見出すNeklar社では、同様の指向を有する企業と協力しながら環境問題に積極的に取り組み、これらの原則の維持に尽力しています。 多方面においてリーダーシップが必要とされる重要なポジションを女性が占めているNeklar社のように、近年では多くの企業にて包括的な職場環境に対する意識が高まっています。もちろんエンジニアリング業界全体でもこのトレンドは顕著です。Neklar社では女性が活躍できる場を創出し、女性ならではの視点を積極的に取り入れることで、さらなる変革や成功を推進しています。 将来への展望:変化を受容し、進歩を遂げる 前述の通り、エンジニアリングは常に変化し続ける流動的な分野であるため、ことさら多様化に敏感でなければなりません。エンジニアとして私が近年注目しているのは、電気自動車(EV)をはじめとする車両の電動化であり、これは私が率いる部署の短期~中期的な課題となることでしょう。 しかし、エンジニアリングには従来の役割を超えた多くの機会があります。品質保証、購買、研究開発などでは、その分野に精通した熟練のエンジニアが常に必要とされ、向上心のある優秀な人材に対する需要は衰えることがありません。 - [ハイドロフォーム部品の材料特性をコイルからアセンブリまで徹底追跡](https://japanforming.com/ハイドロフォーム部品の材料特性をコイルからア/) - エンジニアリング業務では、想定外の不具合を回避し、計画通りに作業を進めなければなりません。そのためコストがかさむ試作の製造や量産の開始前にシミュレーションを行うことが非常に重要です。バーチャルにて解析を適切に行うことでコストを削減でき、また製品発表の日程も厳守できます。 しかし単品部品の製造工程に関する知識が乏しい構造設計を行うエンジニアは、製造中の材料の変化をブラックボックスのように捉えがちです。そのため構造解析モデルの作成時には、鋼材規格に記載されている平均的な材料特性を使用し、また材料板厚も一定の数値を適用する傾向にあります(図1)。 図1. 製造段階に応じた材料変化の「ブラックボックス」 近年、自動車製造のバーチャル解析は、原材料の生産段階から活用することができます。ハイドロフォーミングの工程はどれひとつとして同じものはなく、部品毎に専用に設計されています。一般的な工程を図2に示します。 図2. ハイドロフォーミング工程の主要な段階 日本製鉄のウェブサイト(nipponsteel.com)に掲載されている概略図(図3)によると、チューブの材料の多くはスチールコイルです。図3の各工程ステップをシミュレーションできる有限要素解析(FEA)のコードが複数あります。 図3. スチールコイル製造工程の概略図 (出典: nipponsteel.com) スチールコイルの製造において、コイル全体の材料特性を均一にすることに着目するのであれば、コイル製造のシミュレーションを省き、倉庫に納品された鋼材の引張試験をもとにハイドロフォーミング工程の検証から始めるという選択肢もあります。 引張試験の結果から、ひずみ-応力曲線、降伏曲面、成形限界曲線(FLC)の推定値など、鋼材の機械的特性を判断できます。この情報をAutoForm Material Generatorに読み込み、鋼材の材料カードを作成すれば、これをもとにコイルから製造工程を開始できます。材料特性を決定し、ハイドロフォーミングのシミュレーションに使用する材料メッシュにマッピングする手順を図4に示します。 図4. 材料特性を決定し、メッシュにマッピングする手順 ハイドロフォーミング工程では、まずスチールコイルからチューブを製造します。チューブの製造には押出成形を選択することもできますが、一般的にはロール成形(図5)が適しています。しかしロール成形を行うと、その曲げ加工により、材料特性が厚さ方向沿いに均質ではなくなります。 図5. 開花形状のロール成形と生産ライン (出典: thefabricator.com) 板厚の中間レイヤーでは材料特性は変化せず、チューブ製造工程後も降伏点は同じままです。しかしAutoFormのチューブ成形ソフトウェアで予測したとおり(図6)、チューブの厚さ方向では材料特性が変化します。チューブの内側レイヤーは圧縮ひずみを受け、外側レイヤーは引張ひずみを受けます。中立面は材料特性が変化しないレイヤーであり、その内径からの厚み方向の位置は内側の曲げ半径とチューブの板厚の比によって変化します。曲げ比が4未満の場合は、中立面は内径側に近くなりますが、4を超える場合は厚さの中央に位置します。 図6. DX53Dで製造したチューブの各レイヤーの降伏点 後続の工程で目標の部品形状に加工してゆくために、チューブを特定の箇所で局所的に変形させなければなりません。図7は局所的な変形の計算結果を示しています。変形を生じさせると、部品全体の材料特性はもはや均質ではなくなり、変形の度合いに応じて変化します。 図7. ハイドロフォーミング工程に特徴的な局所的変形 ハイドロフォーム部品全体の材料特性が均一ではないため、図1のようにCAD形状と一定の板厚、そして鋼材規格に記載された材料特性から構造解析のモデルを作成すると、シミュレーションと実測値の相関性が弱まる場合があります。アセンブリでは部品の製造履歴は考慮されません。アセンブリなど単品部品の製造に関わらない部門では、通常、その部門のエンジニアリング業務に忙しく、またハイドロフォーミングにも精通していないためです。 AutoFormでは形状を離散的な要素数に置き換え、節点の接続によってシステム全体を成形しています。離散化することでハイドロフォーミング工程での局所的な変形をより正確に予測でき、製造工程全体を通して材料特性の変化を追跡できるようになります。各工程の終了時の材料特性を次工程の開始時の材料特性と見なすため、チューブ製造段階のコイルの材料特性から始まり、チューブの曲げ工程では材料特性が新しくなり、最終段階のレーザー切断まで材料特性はアップデートされてゆきます。 最終的な材料特性は、FEAコードの形式で共有およびエクスポートできるため、この最終的なハイドロフォーム部品の特性を構造解析で使用することができます。図8は構造解析で考慮すべき材料特性の経路を示しています。 図8. 構造解析における材料特性の経路 以下は、AutoFormエクスポート機能を介して共有できる最終的なハイドロフォーム部品の特性です。 チューブのメッシュ(複数のレイヤーを含む) 各要素の最終塑性ひずみ 各要素の最終板厚(図9) 図9. 最終的な塑性ひずみと板厚を有する部品メッシュ この情報は多くのFEAコードに読み込めるフォーマット、またはカンマ区切り(*.csv)の中間フォーマットでエクスポートすることができます(図10参照)。 図10. エクスポートした要素、板厚と塑性ひずみのリスト 各要素の最終的な板厚と強度の関係から構造的完全性を分析すると、実物とのより高い相関性が確認されました。自動車業界では製造コストを削減するための慣行として、低強度鋼板(LSS)の初期材料板厚を25%削減する場合があります。しかし板厚を削減すると、強度解析の結果に誤差が生じる可能性があります。また、スプリングバック変形やその見込み変形を含む成形部品形状の変化に起因する組付け不良を検出するため、最終的な製品形状やそのメッシュを考慮することは重要です。AutoForm-TubeXpertでは、キャビティ面の材料のスプリングバックを見込補正することでトライアウトの回数を削減し、良好なアセンブリの条件を特定できます。 公称ひずみ応力曲線から最終的な要素ごとの新しい降伏点までのデータセットをエクスポートして、ハイドロフォーミング工程におけるDX53D鋼材について考察します。 公称ひずみ-応力曲線 まず標準的な引張試験から材料の機械的特性を判断します。次に公称ひずみ-応力曲線を真値に変換し、数学モデルに適用します(図11)。 図11. DX53D鋼材の実ひずみ-応力曲線の数学モデル 要素ごとの塑性ひずみ 構造解析のモデルを作成する上で、各要素の新しい降伏点が必要になる場合があります。これは図10の列Fに示されている最終的な塑性ひずみと材料の数学的関係性を使用してスプレッドシートで計算できます。材料の数学モデルは、図12に示すように、列Fからデータを取得する数式に変換し、新しい要素の降伏点を持つ新しい列を作成することができます。 図12. DX53D鋼材の新たな要素の降伏点をスプレッドシートで計算するための公式 構造解析に使用するひずみ-応力曲線のタイプを選択する際には、公称値または真値のどちらを使用するかを考慮しなければなりません。ハイドロフォーミング工程のシミュレーションでは、実測値のひずみ-応力曲線を考慮した方が実物との相関性が高くなります。構造解析モデルが公称曲線に基づく場合、各要素の降伏点に相当する公称値を算出するには、さらに計算が必要となります。 構造解析のFEAソフトウェアがより複雑なタイプの要素モデルや、異なる要素形状を使用する場合は、AutoFormで計算された各要素の特性を新しい構造解析要素のそれぞれにマッピングする必要があります。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」開催レポート:その3 南工株式会社様](https://japanforming.com/autoformユーザー会「autoforum-2023」開催レポート③/) - 2023年9月29日(金)ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」を開催いたしました。 本稿ではユーザー会開催レポートと題しまして、残念ながら会場にお越し頂けなかったユーザーの皆さまに、発表頂いた内容の概略と会場の様子を4回にわけてご紹介します。 第3回は、南工株式会社 成本 聡様の講演についてです。 第1回の講演(日産自動車株式会社様)についてはこちらから、第2回の講演(本田技研工業株式会社様)についてはこちらからご覧いただけます。 ■AutoForUm2023アジェンダ■ 「金型メーカーのデジタル革新 ~AutoFormによる業務プロセスのフロントローディング化」 講演者:南工株式会社 代表取締役社長 成本 聡 様 南工株式会社 成本様からは、金型メーカーのデジタル革新と題してAutoForm導入の経緯から導入効果としての業務プロセスのフロントローディング化について、経営者による視点で発表いただきました。 1.AutoForm導入までの経緯 沿革 金型設計製作を行う南工株式会社は、1968年に金型設計を行う有限会社として設立された南洋工務店を源流としています。 1980年代には300部品超を差配する金型元受けにまで成長し、2000年台に入ると自動車部品の金型の設計から金型の設計製作を行う会社に変化を遂げました。 デジタル化の取り組み 2000年に入社した成本様は、当時の社長のサポートを行いながら、自動車設計製作のモジュール化が進む時代の変化を読み取り、事業の柱を金型設計から金型の設計製作に変革しました。売上規模が全社の7割を占める金型設計事業からの事業モデル変更を決断した成本様は、開発のデジタル化のトレンドを汲み取り、2010年から金型の設計製作プロセスにデジタルツールの導入を開始しました。その一環で成形シミュレーションを導入し、評価のOK、NGの判断基準が明確になりました。客先へその結果のフィードバックや提案を行うなど、業務プロセスの改善を実施してきました。 2.AutoForm導入の効果 デジタル化を進め成形シミュレーションを導入してしばらくすると、多工程検証をやりきることができず、金型製作現場で手戻りによる作業工数のロスや、納期に追われ残業・休出で対応する従業員のストレスが課題と感じるようになりました。経営目標である金型改修回数の削減には、金型設計段階で全工程の成形性対策をやり切ることが重要と理解していた成本社長は、多工程解析を現実的な時間で行うことができるとして、AutoFormの導入を決め、課題解決に取り組みました。 事例1:パネル・クオーターインナ パネル・クオーターインナは南工株式会社での製作実績が多いものの、部品サイズが大きいことからAutoForm導入前のCAEツールでは解析時間が長くなり最終工程まで十分な評価を行うことが難しいという課題がありました。その結果フランジの縁割れやスプリング・バックといった問題が金型のトライアルで発生していました。 AutoFormを導入し最終工程までの成形解析を実施することができるようになった結果、最終フランジ工程で発生する縁割れを把握し、最初のドロー工程にフィードバックを行い、しわが発生しない範囲で材料流入の調整を実施する事でフランジの縁割れを対策する事ができました。また、縁割れ対策後の解析結果に基づきフランジ工程とカムリストライク工程に見込み補正を実施することで、初品パネル納品時の寸法精度を±0.6mmに抑えることができました。 最終工程までの評価を実施できることで、従来のやり方で発生していた先の読めない不具合対策の検討のために長時間残業や休日出勤をしていた従業員の閉塞感を打破することができました。 事例2:リンフォース・リヤサイドフロアインナ 980Mpa級の材料を使用するリンフォース・リヤサイドフロアインナはスプリング・バックが大きな課題でした。AutoFormを使用して多工程解析を実施したことで、見込みを実施する最適な工程と見込み量を分析することができました。結果として、初品プレスの面位置は±0.6mmに収めることができました。また、当初リストライク工程はカムを使用してリストライクを行う工程方案でしたが、各工程の見込み量を最適化することでカムを使用せずにスプリング・バックを押さえることができたため、加工工程の簡素化をすることができました。 従来のやり方ではシミュレーションで見込みきることができず、スプリング・バックが収束するまでの見通しを立てることが困難で、それが従業員のストレス要因となっていました。また、金型製作後に先の見えないトライアルと型修正を繰り返すことで、従業員の長時間労働につながっていました。AutoFormで多工程解析をやりきることでスプリング・バックが収束するまでの道筋をつけることができ、金型製作後の先の見えない型修正から解放されることで労働環境の改善を行う事ができました。解析や金型修正などで削減できた時間を社員教育に割り当てることで従業員の多機能化が進み、客先へのフィードバックを行う提案型の業務が行えるようになりました。 3.今後の展開 デジタル技術を取り込むことにより業務のフロントローディング化を進めてきた南工株式会社では、これから以下の課題に取り組んでいくことを発表いたしました。 人財育成 効率化を意識して取り組んできた人財の育成を、今後は個々人のスキルの向上と個人間のバラツキを無くすことに取り組みます。そのためには各自の持つスキルを教える、教わることを続けていくことで会社全体の底上げを行います。 顧客への提案力強化 外部環境では、モデルベース開発が進むことで業務のフロントローディングの更なる進化が求められています。そのために、取引先からの期待には全方位に総力をもって臨んでいきたいと考えています。 超ハイテン部品へのチャレンジ 取引先の車体軽量化ニーズに対応することが大事であると考えています。大型プレスを導入し、開発のデジタル化により培った技術力と提案力を用いて超ハイテン部品の金型に挑戦していきます。 そして、先代の意思を引き継ぎ、これからも取引先の期待に応え続けていくことを表明し発表の結びとなりました。 ※AutoFormJapanによる発表聞き取りに基づく記事ですのでご了承ください。 - [中国自動車メーカーGAC社: コストを抑えたダッシュボードパネルのプレス成形工程](https://japanforming.com/コストを抑えたダッシュボードパネルのプレス成/) - はじめに 本稿では中国の自動車メーカーGAC社(広州汽車)によるダッシュボードパネルの最適化について検証します。同社はAutoFormを10年前に導入してから、単純なシミュレーションを実行するだけでなく、複数のソフトウェアを用途に応じて使い分け、入札の初期見積もり、ロバスト性解析、工程計画および工程設計、コスト予測の評価など、幅広い分野で有効活用しています。 元のデザイン 元のダッシュボードパネルは大型の一体構造で、成形には4~5つの工程が必要でした。金型の構造が複雑で、特定の領域ではトリムや抜き加工を伴います。また単品のパネルは成形性が悪く、工程設計段階ではフィージビリティ検討に膨大な時間を費やしただけでなく、何度も部品の修正依頼を繰り返していました。そのため生産は不安定になり、プレスのダウンタイムも長引いたのです。この問題に対処するには、部品または工程のどちらかを最適化すべきでしたが、生産段階でプレス工程に調整を加えると、生産が不安定になるリスクがありました。 新たなデザイン GAC社の研究開発部では、まず部品の最適化を行いました。ダッシュボードパネルを上側部品と下側部品に分割すると、元のデザインよりも容易に成形でき、またアセンブリ工程も簡易化されることが判明しました。そして分割した部品のフィージビリティを検証するために試作金型を作成し、実際の使用環境下での機能性を確認しました。 部品を分割すると、その板厚は全体平均1mmから、上側部品が1mm、下側部品は0.8mmになります。次の図はこの変化を示しています。ダッシュボードの初期設計では全体的な板厚は1mmであり、DC03材を使用していました。しかし部品を上下に分割すると、下側部品の平均板厚は0.8mmに減少するため、DC01材を使用できるようになります。 上側部品についてもAとBの領域をフラットにして形状を修正することで、材料利用率が向上しました。 利点 この事例では工程ではなく部品の最適化を行いましたが、他にも以下のような利点が生じています。 軽量化 デザインは変更せずに、より薄い材料を使用できるようになったことで、ダッシュボードパネル全体の重量が削減されました。単品のダッシュボードでは重量が11.35kgでしたが、パネルを分割することで10.33kg(上側: 6.37kg、下側: 3.96kg)となり、車体重量を約1kg削減できたのです。 材料利用率の向上 シートの重量とサイズも改善されました。当初は1922 x 1285 mm(長さ x 幅)で19.63 kgのシートが必要でした。しかしパネルを分割すると、必要なシートの重量は上側10.26kgおよび下側6.39kg、またサイズはそれぞれ1720 x 760 mmおよび1565 x 650 mmとなります。その結果、材料利用率は約3.5%増加しました。 安価な原料 ダッシュボードパネルの元のデザインでは深絞り工程を伴うため、材料はDC03を使用しなければなりませんでした。しかしデザインを変更し、パネルを分割したことで、DC01を使用することが可能になりました。DC03の価格は1トンあたり約770米ドル(約110,000円)ですが、DC01は1トンあたり約725米ドル(約103,000円)です。デザインを変更することで、材料使用量の削減(1枚あたり約3kg減)だけでなく、コストも削減できたのです。 安定した生産 生産が不安定であることが、ダッシュボードの設計変更を検討するきっかけのひとつでした。パネルを分割することで、金型構造や工程の複雑さが解消され、生産の安定性が大幅に向上しました。また、成形のリスク、試作回数、プレスのダウンタイムも以前のデザインより低減されています。単品のダッシュボードでは工程数は3~5つでしたが、部品を分割すると工程は6つになります。しかし材料利用率が改善され、また金型形状もシンプルになったことで、工程が増えても、全体的な金型コストは僅かながらも削減できました。 全体的なコストの改善 コスト削減の大部分は材料利用率の向上によるものです。DC03からDC01に変更し、シート重量を19.6kgから16.6kgに削減できたことで、1枚あたりの材料コストも15.1ドル(約2,200円)から12ドルへ(約1,700円)と削減されます。また金型がシンプルになったことも、コスト削減に寄与しています。単品のダッシュボードでは金型が1つであったところ、パネルを分割したことで金型は2つに増えましたが、しかし複雑だった金型がシンプルになったことで、コストは削減されたのです。単品のダッシュボードの金型には4つの手順があるため46万5000米ドル(約66千万円)がかかりましたが、上下に分割した金型では手順は3つとなり、両金型の合計は43万6000米ドル(約62千万円)でした。 しかし分割したダッシュボードパネルに追加コストが生じたため、これらの削減は相殺されています。主な追加コストは溶接に関連するものです。単品のダッシュボードに溶接は必要ありませんが、部品を分割すると溶接は必須となります。溶接工程では、1箇所あたり約3セント(約4.2円)の溶接が24箇所必要となり、コストは約70セント(約99円)増加しました。さらに、スポット溶接用の接着剤が約1.6メートル分必要となり、1台あたり約20セント(約28.5円)のコストがかかります。また、同じ長さのシーリング材も必要となり、そのコストは1台あたり約12セント(約17円)となります。 ダッシュボードを最適化することで工程やコストは追加されましたが、1個あたり約14人民元(約280円)、または2米ドル(約280円)を削減できました。これは長期的に大幅な利益をもたらすことでしょう。 まとめ シミュレーションの活用を通じて成形工程を正確に予測することができ、またコスト削減や軽量化についても検討することができます。良好なシミュレーション結果をさらに修正することで、高い安全性を維持したまま、より軽量でシンプルかつ低価格のダッシュボードパネルをデザインすることができました。この事例から、シミュレーションを積極活用して部品や工程の改善に取り組むOEMの姿勢が伝わってきます。こうした投資は、顧客満足度の向上、収益性の改善、材料の無駄の削減、開発リードタイムの短縮、品質の向上、持続可能性の向上など、望ましい長期的な利益となりえるのです。シミュレーションへの一度限りの投資が、素晴らしい結果をもたらしました。 ※参照為替レート:1USD=142.58JPY / 1¢=1.425JPY / 1CNY=20.03JPY (2024/9/12) - [「プレス成形技術によくある落とし穴」をビル・ピットマンが再考します](https://japanforming.com/プレス成形技術によくある落とし穴/) - 世界的な自動車メーカーのプレス成形フィージビリティ担当マネージャーであるビル・ピットマンは、材料の無駄を最小限に抑え、最低限の金型数で高品質の部品を生産することを理念に掲げています。過去の寄稿記事では、プレス成形技術における よくある落とし穴トップ4 として、後期段階の設計変更、トライアウトでの度重なる調整、計画からの予期せぬ遅延を回避することの重要性について説いています。この落とし穴について、ビル・ピットマンが再び紹介します。 はじめに: 私はクレイモデルのフィージビリティ検討から製品発売に至るまで、ホワイトボディ全体の製造可能性を担保する責任を担っています。これまでの経験から、プレス成形のフィージビリティ検討業務において、必ず避けるべき4つの失敗について紹介します。 1. シミュレーションで検証せずに方策を立てる プレス成形のフィージビリティ検討では、常にシミュレーションで事前検証を行うことが大切です。多くの場合、不具合対策の検討中にシミュレーションを活用することがありません。しかし検討した対策は効果的であるように見えても、予測値を下回ったり、上回ったりする可能性があります。事前にシミュレーションで検証を行わなければ、金型への適用後に不具合が検出されると万事が手遅れになり、開発計画や予算に大きな影響が及びます。 シミュレーションの検証結果があれば、プレスの専門知識を有しないベンダーや設計部署、その他の関係者にも要点を的確に伝えることができます。また選択した工程に対する確証を得ることもできます。 2. 全体像を見失う ベンダーや設計担当者から設計変更の依頼を受けた場合、常に全体像を念頭に置いて判断することが重要です。また軽微な変更が予算や開発計画全体にどのような影響を与えるかも考慮すべきです。たとえば、ある部品を変更すると、それを取り付ける別の部品にも影響があるはずです。全体像を捉えることで、プレス成形に必要な視点が得られます。 3. トライアウトが設定条件を満たさない トライアウトの条件が不適切である場合がよくあります。たとえば、プレス金型の作成において、特に熱間プレス成形工程の場合、ダイスポッティングの作業に多大なコストや時間がかかります。金型工場によっては、トライアウトではこのダイスポッティングを簡略化し、適切な試験を行わずにパネルを作成する場合があります。 シミュレーションにて設定した条件は、すべて実金型にて再現しなければなりません。境界条件、適切なストローク設定、面圧、ギャップ、バインダの閉動作が合致した適切なダイスポッティングが施されていることが必須です。適切なダイスポッティングがなければ、計画と同じ摩擦係数にはなりません。 4. シミュレーションのみでコンセプトや製造能力を証明する(相関性の確認) シミュレーションの設定条件を実際の製造現場で再現可能であるという点に確証を持つことが重要です。シミュレーションは有益なツールですが、材料モデル、摩擦、面圧設定などプレス成形の物理的条件を再現しなければ意味を成しません。シミュレーションの設定条件と物理的条件の相関性が確認できたら、それを「標準」として活用することで、バーチャルでのシミュレーション作業を効率的に行うことができるようになります。成功には信頼が不可欠です。 まとめ 長年にわたり、私はあらゆる組織に多くの利益をもたらすロバストなエンジニアリングプロセスの手法を提唱してきました。シミュレーションを包括的に行うことで、後期段階の設計変更、金型の不具合、非効率な処理能力、部品の品質不良など、納期に影響を与えかねない問題が生じるリスクを最小限に抑えることができます。自動車の完全性を担保する上で、トライアウトの「一発合格」はとても重要です。また生産の立ち上げも円滑に進むため、リードタイムの短縮にもつながります。これは、担当者の豊富な経験、エンジニアリングツールの習熟、円滑なコミュニケーション、そして製品設計部署との早期からの連携などを強化することで実現できます。 ビル・ピットマンの包括的なエンジニアリングシステムの詳細については、ピットマンによる寄稿記事をご覧ください。 ビル(ウィリアム)・ピットマン、活躍中! ビル・ピットマンのきめ細やかなサポートは米国のみにとどまらず、同社がグローバル規模の成功を得る上で不可欠なものとなっています。このピットマンの手法は様々な業界で取り組みが進んでいるデジタル化のトレンドに応じています。 - [プレス成形工程およびBiW工程のシミュレーションにおいて整合したシステムエンジニアリングをサポートするソフトウェアおよびデータアーキテクチャの重要性](https://japanforming.com/ソフトウェアおよびデータアーキテクチャの重要/) - エンジニアリングの枠組みに、デザインやエンジニアリングのプロセスと整合した標準構造が必要な理由 「金型の品質が職人の仕事の質を左右する」という話を聞いたことがあるでしょうか。もちろん、熟練の職人技で仕上げた高品質な金型を使用すれば、製造業務のみならず、最終製品の仕上がりも良くなります。これはエンジニアにとっても、業務を担う上で優秀なソフトウェアツールが必要不可欠であるという点では同様です。 昨今のシステムエンジニアリング分野では、ソフトウェアが重要な位置を占めています。システムエンジニアリングとは、一連の要求、期待、制限を「実用的なエンジニアリング」としてのソリューションに落とし込むために、必要な技術と管理の両面を統括するアプローチです。 技術専門部門や標準化部門は、ISO 9001-2015 第5版標準に記載されている品質管理原則など、エンジニアが自身のプロセスやエンジニアリングツールの品質評価を行う方法についてガイドラインを定義しています。 エンジニアリングは通常、多岐にわたる部門や部署が関わる高度な共同作業です。すなわちISO 9001-2015によると、組織全体による効果的かつ整合性のある共同作業をサポートするソフトウェアツールが必要となります。 そこで、まず最初に確認すべきことは次の通りです。 実用的なエンジニアリングのプロセスをサポートするソフトウェアツールはどこにありますか? 後者については、標準ISO/IEC TR 24474:2021「システムおよびソフトウェアエンジニアリング - ライフサイクル管理 - 工程記述のためのガイドライン - ソフトウェアエンジニアリング知識体系ガイド(SWEBOK)」にて対応することができます。 この標準で重視すべきコンセプトのひとつは整合性です。ここでの整合性とは、製造工程(プレス成形、BiWアセンブリなど)のシミュレーションに使用するコンピュータモデルが、すべての領域において、矛盾した要求や不合理な要件を含まないことを意味します。またほかにも、目的に適したソフトウェア技術であること、そして入力データの信頼性や精度なども挙げられます。当然ながら、アルゴリズムの精度は入力データの信頼性とモデルの精度に比例します。この整合性を損なう例としては、正確な入力データに対して概算アルゴリズムを使用すること、またはその逆が挙げられます。 ソフトウェアの整合性を分析する方法として、AutoForm正確度指標やAutoFormパレートの法則(JapanForming.comブログ公開記事: パート 1, パート2, パート3, パート4, パート5, パート6)などがあります。 図1. プレス成形工程におけるAutoForm正確度指標およびパレートの法則 AutoForm正確度指標には、整合性があり有効かつ正確なコンピュータモデルを作成する上で不可欠な8つの観点が提示されています。 材料仕様 トライボロジシステムと摩擦モデル シミュレーション標準 工程定義 機械動作 金型、部品、治具の形状 結果評価 工程のロバスト性 エンジニアリングの目標を達成するには、これらすべてを満たす必要があり、また開発やエンジニアリングのプロセスを通じて継続的に進化していきます。 ドロービードやダイサーフェスのレイアウトなどは、部品や製品のデザインに含まれる初期条件の材料仕様や部品形状から定義することができます。しかし後のフィージビリティ検討段階では、評価基準をもとに金型動作や形状(部品形状を含む)をアップデートし、さらに新たな工程要素を追加または更新することで、部品の品質を担保しなければなりません。 これらのアップデートを行う際には、生産条件のばらつき(例:トライボロジ、金型のクリアランス、パラメータのばらつきなど)の入力値が現実的であること、また適正な評価を通じてロバスト性の目標を達成することが重要です。 このコンピュータモデルのアップデートは、エンジニアリング工程全体を通じて行われます。詳しくはバート・カーレアが執筆した、プレス成形工程のエンジニアリングに適用するAutoFormパレートの法則に関する記事で詳説しています。 エンジニアリングの共同作業をサポートするには、ソフトウェアのシステムアーキテクチャがあらゆる面においてAutoForm正確度指標に対応している必要があります。さらにソフトウェアアーキテクチャは、実際のエンジニアリングのワークフローと一致している必要があります。 階層的なソフトウェア構造では、システム、サブシステム、コンポーネント、ユニットが、確認や検証のプロセスにおいて実用的なエンジニアリングを反映している必要があります(図2参照)。 図2. 連動するシステムエンジニアリングと階層的ソフトウェアVeeモデル(データ構造) シミュレーション設定標準は、AutoForm正確度指標の基盤となります。そしてAutoFormガイドラインは、システムエンジニアリングの原則を満たした標準設定を提供するものです。すなわちソフトウェアシステムは、実際の開発およびエンジニアリングのワークフローモデルに基づくものでなければなりません(例:AutoFormパレートの法則を使用)。ソフトウェアシミュレーション標準におけるソフトウェアフィーチャー(精度面)の割り当ては、機能やコンポーネントがベースとなるのではなく、意思決定プロセスに準じています。図2は一見すると機能ベースの階層図のように見えます。しかし上層部からプロセスチェーンに沿った意思決定プロセスについて考えると、実際には、オブジェクト(方法論)志向の構造の中に、別の階層構造が見えてきます。この意思決定構造の階層によって、正しい意思決定に基づく工程改善の整合性が担保されます。 AutoFormソフトウェアシステムは、重要なマイルストーンやプロセスチェーン全体を通じた意思決定の局面で、エンジニアリングの段階に応じた標準を提供します。たとえば、シミュレーションの標準設定であるCE(コンセプト設計)、CE+(コンセプト設計プラス)、FV(最終検証)は、初期フィージビリティから最終検証までのさまざまなエンジニアリングの段階に対応しています。これらはエンジニアリングの段階に対応した適切なシミュレーションパラメータの選択をサポートするように自動調整されます。また設定はAutoFormパレートの法則に鑑みて常に検証されています。ソフトウェアシステムエンジニアリングにおける整合性のコンセプトは、AutoFormソフトウェアの包括的統合計画の中核を成すものです。 従来の機能重視のコンポーネントやオブジェクトをベースとしたソフトウェア設計戦略を組み合わせたもの。 階層的なソフトウェアアーキテクチャによる実用的なエンジニアリングの意思決定プロセスから構築する体系的なインテグレーション戦略。 整合性の高いシステムエンジニアリングを実現する自己検証Veeモデル:左側のソフトウェアによる確認は、右側のシステムエンジニアリングプロセスの検証を反映させたものです。AutoFormの顧客検証工程では、デザインファイルから直接ガイドラインと標準ファイルを活用できます。 ユニット試験後のソフトウェア試験では、統合の整合性が最優先されます。統合の整合性とは、すべてのソフトウェアコンポーネント間の相関関係を検証するプロセスです。統合システムの階層構造を確認するには、トップダウンとボトムアップの両アプローチが有効です。しかしAutoFormでは、正確度指標およびパレートの法則を使用した最新の包括的で体系的な統合戦略を採用しています。統合試験は実際のワークフローの各ステージで継続的に実施されます。システムエンジニアリングの整合性を確認する効率的かつ効果的な方法として、自己確認検証Veeモデルが採用されています。 まとめると、統合システムエンジニアリングの性能確認やソフトウェア標準データ構造の検証において、整合性こそが最も重視されるべきものです。整合性に関しては、以下の点を考慮する必要があります。 このソフトウェアはエンジニアリングの目標を達成するために十分であるか。 - [開発から量産据え付けまで1チームで手がけるHonda鈴鹿製作所におけるAutoForm活用、3年間の歩みとその成果](https://japanforming.com/開発から量産据付まで1チームで手がけるhonda/) - 1948年の創立から2023年で75周年を迎えた本田技研工業株式会社(以下、Honda)。同社において、軽自動車の生産を手がける鈴鹿製作所では、新機種の開発から量産までを一気通貫で手がけています。鈴鹿製作所に属する生産技術部門として金型生産部 金型量産技術課では、2020年にAutoForm製品を導入し、予測精度の向上に取り組んできました。その結果、3年間でビード設定の時間短縮やシワ対策立案の時間短縮など、さまざまな成果をあげています。これまでの取り組みについて、四輪開発センター 生産技術統括部 金型生産部 金型量産技術課の島田哲彦氏と川口洋史氏にうかがいました。 「Hondaの三現主義」を体現する鈴鹿製作所 ――Hondaの鈴鹿製作所は、1960年に国内3番目の工場として設立されました。現在、世界的ベストセラーのフィットをはじめ、N-BOX、N-WGNなどの軽自動車を生産しています。シビック、フリードなどの一般車は、栃木県の生産技術統括部で開発・設計し、埼玉県寄居町の寄居製作所で生産される分業制を採用していますが、軽自動車の車体に限っては開発・設計から検討、金型製作、量産までを鈴鹿製作所が一貫して担当しているのが特徴です。 そのため、同製作所で金型関連業務を担当する金型生産部の金型量産技術課は、企画・生技性検討から金型製作後の安定量産の維持まで、幅広い業務領域をカバーすることになります。自動車メーカーでは、効率を考慮して開発拠点と生産拠点を分ける分業制を採用するのが一般的ですが、軽自動車を担当する鈴鹿製作所はなぜこのような一貫体制を採用しているのでしょうか。 島田氏 鈴鹿製作所の開発・生産一貫体制は、SKI体制と呼ばれ2012年に始まりました。SKIは「鈴鹿・軽・イノベーション」の略です。開発から部品調達、生産に関わるそれぞれの担当がワンフロアに集結しました。そこで一定の成果をあげたことから、そのまま現在に至っています。 このような体制を採用している一番の理由は、「Hondaの三現主義」にあると私は思っています。三現主義とは「現場」へ行き、「現物・現状」を直接知り、「現実的」に評価と判断を行うことです。部門の違う担当者であっても「いい軽を作ろう!」と皆が同じ方向を向いていることで、議論の質も上がります。たとえば、設計者は机上検討の結果のみを図面に反映しがちですが、生産の現場では設定通りにいかないことがさまざまあります。すべてというわけにはいきませんが、その一つ一つを正確に共有し、解決につなげる為に実物を目の前に説明することもしばしばあります。量産しやすい車を設計することは、すなわち不具合の発生を抑制することにも繋がります。同じ場所でみんなが顔を突き合わせてやるという方法で、鈴鹿は三現主義をまさに体現しているのだと思います。 CAEエンジニアを長年かけて育成し、少数精鋭体制で生産準備 ――現在、金型量産技術課でCAE業務を担当しているのはわずか数名ということですが、共通して言えるのは、1人の守備範囲が広いことかと思います。少数精鋭体制で、生産準備を行うためには、1人ひとりの能力が高くないとできないのではありませんか。 島田氏 成形性検討から量産立ち上げまでできるエンジニアの育成に長い時間をかけています。一般的に自動車メーカーは、歴史的に分業体制が長いので、そのあたりは難しいのではないかと思います。 ――島田さんの職務経歴をお聞かせいただけますか。 島田氏 私は入社して鈴鹿製作所の工機金型ブロックに配属されました。それから現場で3年間、仕上げ工程で金型を磨いていました。通常の現場研修は、半年程度の工場実習で終わりますが、鈴鹿の工機金型には、新人を現場に投入し、作業をイチから身に付けさせる文化がありました。昔ながらの職人気質の先輩に「体で覚えろ」って言われる感じで。その後、金型設計に異動して3年間従事し、次に旧ホンダエンジニアリングでCAE業務と金型の初期検討業務(DE)を覚えてきました。そこから3年後に鈴鹿に戻り、現在はDEの実業務とグループリーダーをしています。 ――現場経験があったうえで、CAE業務を担当されてから10年以上が経っているということですね。 島田氏 最初は反発していましたけどね。現場作業するために入社したんじゃありませんって(笑)。でも今では感謝しています。その時の経験が自分自身の技術の柱になっているという実感があります。鈴鹿の工機金型には私のようなエンジニアが多いので、1人で企画検討から量産の面倒まで見られるということでしょうね。 ――川口さんの職務経歴を教えていただけますか。 川口氏 私も入社して鈴鹿製作所の工機金型ブロックに配属されましたが、最初はエンジン部品の金型の設計や新機種の検討業務を担当していました。そこから16年ほど経って、外部から見える部品を担当したくなり、プレス部品の生技性検討業務に転身しました。現在、モデル設計やシミュレーションを担当してから7年目です。 ――みなさん、いろいろな経験をされて、守備範囲を広げているということですね。 島田氏 それぞれ経歴は異なりますが、生技性検討から量産の困り事解決まで、全体を担えるエンジニアを長年かけて育成し、個々の能力を高めていくことで、クルマづくりに貢献しているのが、鈴鹿の金型領域です。 ビード設定時間の短縮、シワ対策立案の時間短縮などさまざまな成果を獲得 ――金型量産技術課では、CADソフトを使って金型形状のモデルデータ作成を行っていましたが、モデル作成に時間がかかっていたということでした。具体的にはどのような問題がありましたか。 川口氏 製品モデルデータを車体設計部門から受け取ると、CADソフトを使ってドロー工程の捨て絞り面(余肉)やベンド工程の曲げ刃形状を作成します。形状モデル作成に平均で3~4日、長いもので1週間ぐらいかかるのが普通でした。その後、CAEソフトで計算すると解析計算時間はおよそ一晩かかります。新機種を開発するにあたり、それだけでは精度の高い答えが出せないので、このサイクルを何度も繰り返すことになります。しかしながら時間がかかってしまう。製品の開発においてプレス成形性検討にだけ、何日も時間をもらうわけにはいかない。どうにか早く検討のサイクルを早く回せないものかと新たなCAEソフトを探していました。 ――CAEソフトに期待することとして、モデル作成時間の短縮、予測精度と計算時間短縮の両立、最終工程までの確認の早期化、ドロー流入量変化による完成品の変化の確認の早期化などをあげられていました。これらの思いを実現するCAEソフトを検討し、AutoForm製品の導入に至ったということですが、最終的にAutoForm製品に決めた理由はどこにありましたか。 川口氏 一番は計算速度の速さです。モデリング作業や解析の計算が圧倒的に速いので、AutoFormなら検討サイクルを今よりも早く回したいという思いが実現できるという期待がありました。 ――金型量産技術課では、AutoForm-Explorer、AutoForm-DieDesigner、AutoForm-Sigma、AutoForm-FormingSolverなどのライセンスを導入し、2020年10月より運用を開始しました。AutoForm導入後、金型量産技術課は3年間にわたって上流でのAutoForm-DieDesignerの活用、AutoForm-Sigmaによる設定最適化、精度向上の取り組み、量産不具合対策などを進めてきました。まずは、上流でのAutoForm-DieDesignerの活用について教えていただけますか。 川口氏 AutoForm-DieDesignerはドロー工程のシミュレーションで活用しています。上流工程で実施しておくことで、後工程の負担を大きく軽減できるからです。自動車開発では、前工程ほどコストとリスクの最適化にかけられる時間は長く、変更に伴うコストも少なくできます。そのため、早い段階で実施して研究所にフィードバックすることで、車のレイアウトが固まる前に織り込むことができ、結果として最終の金型調整の手間を大きく省くことができます。 ――2つめのAutoForm-Sigmaによる設定最適化についてお聞かせください。 川口氏 CAEの工程において、流入成形部品ではビード張力の設定だけで膨大な工数を必要としていました。新機種の開発では、時間もかけられませんし、人を確保することもできません。そこで、AutoForm-Sigmaを使って流入バランスを短期間で見極め、最適なビード張力を設定することにしました。結果として、既存のCAEソフトでのべ374時間かけていた検討時間を、11時間に短縮することができました。材料流入量の予測精度の向上により、型製作の効率化とコスト削減、製作日数の短縮に貢献しています。 ――3つめの精度向上の取り組みについてはいかがでしょうか。 川口氏 予測精度向上のために、材料試験から結果刈り取り、解析へのフィードバックまで同チームのエンジニアで取り組んできました。当初は材料モデルまで詳しく考えておらず、CAEの結果と実物が合わないという課題がありました。その後、解析精度と材料モデルが深く関係していることがわかり、2軸引張り試験やサイクリック試験を実施して精度を高めてきました。あとは実際に自分でトライに立ち会い、材料流入、亀裂、板厚減少率などを測定して、解析にフィードバックしてきました。それでもCAEと合わないことも多く、AutoForm社のエンジニアと測定結果や計算結果を見ながら議論を重ね、3年経ってようやく満足できるレベルに近付いてきたところです。 島田氏 AutoForm社のエンジニアと一緒に取り組んできて明確にわかったのは予測精度向上に対するいろいろな取り組みの寄与度です。さまざまな要素がある中で、寄与度の考え方を整理できたのは大きな進歩です。これまでも、材料モデルや解析条件などの前提条件を考慮すべきことは理解し、ざっくりとした情報は持っていました。しかし、その中での優先度は整理できていませんでした。AutoForm社にパレート・チャートを用いて、優先度を整理してもらったことで、それまでの土台が生きて、うまく積み上がっているのが今の状況です。 ――4つめの量産不具合対策についてお聞かせください。 川口氏 あるドロー型において、トライ時はOKだったのに量産開始時にシワが発生する事象がありました。シワは出たり出なかったりで、OK品やNG品が混在していました。プレス機もトライ時と量産時では異なります。今までのCAEソフトでやろうとすると、1つのモデルを作って流し、1つのモデルを作って流しと、何百パターンもやる必要があります。それでは非効率なので、まずはシワが発生する重要因子をAutoForm-Sigmaを使って特定することにしました。結果として、シワを再現して発生因子を特定することができました。対策立案までに要した時間は6時間です。 壁を作らず、まずは試してみる、Honda鈴鹿の文化が醸成 ――AutoFormの導入から3年。短期間でさまざまな施策を行い、成果をあげてきましたが、実際の成果をどのように感じていますか。 川口氏 検討時間を有意義に使えるようになったことが私にとっての成果です。過去の実績に頼ってきたスプリングバックの検討にも時間が割けるようになり、事前に金型への見込みが可能になりました。3~4日かかっていたドロー工程の捨て絞り面(余肉)のモデル作成時間も1日かからなくなりました。解析時間も短くなっているので、その分を予測に時間を割くことができます。 ――なぜ3年間でここまでの成果を出せたと思いますか。 島田氏 リーダーとして感じるのは、川口の好奇心が成果として実を結んだのだと思います。どこかで壁を作ってストップをかけていたら、そこで止まっていたでしょう。これをやってみたらどうか、あれをやってみたらどうかと、無鉄砲に見えるほど走っていく川口の姿勢が良かったと思います。 川口氏 私自身、やっているうちに、あれもやりたい、これもやりたい、何でも知りたいとなってしまう性格で、せっかく量産が近くにあるのなら、いろいろなことがやってみたいと思って取り組んできました。 島田氏 トライ&エラーが許される環境、「考えるだけでは、わからない。とりあえずやってみましょう」というスピード感がありました。出てきた結果に対して、合う、合わないといったことを、現場のエンジニアも交えて議論してきたことが結果につながっています。組織の面から考えると(前述の)SKI体制を基に発展した鈴鹿の評価体制があり、私たちの検討や活動を理解してくれました。金型生産部としてもそれを尊重してくださった。そこで結果を出すから、改めて信頼してもらえるようになる。まっとうに評価し、一緒にリスクを背負ってくれる。そういう応援をしてくれる存在は大きいですね。 ――AutoFormにもバーチャルと現物をマッチさせる思想(正確度指数)があり、一貫して1人が全ての工程で使えるように最適化(シームレスなデジタル・プロセス)されています。こうした考え方が、一貫体制を採用している鈴鹿製作所と似ていて、少数精鋭体制と親和性が高いと思いますがいかがでしょう。 島田氏 それはありますね。検討工程だけをやっていると、自己満足で頭でっかちになりがちです。「図面上ではこういう検討結果です」とか、「解析結果ではこうなっているからこれが正しい」など、ツールがあるゆえに検討側が強くなってしまいます。一概にそうでもなくて、現実世界に寄せていかないといけないと思います。 ――CAE業務を行うにあたり、組織のあるべき姿について意見を聞かせていただけますか。 川口氏 現物を見て、現場でどうこうしようということを関係者が建前でなく本音で話し、判断できる組織があるべき姿だと思います。 島田氏 異なる立場であっても同じ技術課題に対して、きちんと議論を交わせるような組織であるべきです。少人数であればそういうことができると思いますが、現実には多くの人が携わっています。金型製作の各プロセスにおいて、たとえば機械加工はモデルデータ通りにできているのか、型を磨き仕上げた後はどのような素性になっていて形状面はどのような当たりなのかなど、それぞれプライドを持って正確にアウトプットしたものを積み上げていき、CAEの予測と突き合わせる。ここが違う、あれがおかしい、といろいろ出てくるのでそれをしっかり腹落ちするまで議論して次につなげる。コリレーションの向上がいいモノづくりにつながるという理解が土台にないとなかなかできません。 ――今後、金型量産技術課の目指すところはどこですか。 島田氏 安定して良い製品が生み出せる金型を供給するための仕組みを構築すること。これに尽きます。量産では本当にさまざまな事が起きます。生産におけるロスや困り事の発生を生産準備段階から対策反映する。それが結果として良いクルマを生み出し、お客様に喜ばれるということです。 ――AutoFormを活用して3年間で業務フローが大きく変わり、CAEへの思いが実現しつつあると思います。最後にAutoFormへの期待をお聞かせください。 島田氏 AutoFormは、インターフェースがわかりやすく、とっつきやすい印象があります。プレスCAEは専門性が高い業務ですが自動車業界の変革の中、今までプレス部品を専門でやってきたエンジニアが、これまでの技術のみで貫くだけでは発展性がありません。そうなると、HEM加工や溶接によるアッセンブリーなどプレス部品単品だけではなく、車体を構成する一部として考えるとどうなるかと、予測技術を後工程へ広げていく必要があります。これまで以上に畑の違うエンジニアとの連携が重要になっていきますが、CAEソフトがわかりづらいとそのハードルが上がってしまうので、AutoFormにはその敷居をさらに下げてくれることを期待しています。 (企業概要) 本田技研工業株式会社 設立:1948年(昭和23年)9月 所在地:東京都港区南青山2-1-1 - [世代から読み解く鋼材の変遷](https://japanforming.com/世代から読み解く鋼材の変遷/) - 本稿は『MetalForming』誌(www.metalformingmagazine.com)2023年2月の自動車特集号に掲載された記事を、Precision Metalforming Associationの許可を得て転載したものです。 第3世代鋼材という呼称をご存じでしょうか。鋼材には第1世代や第2世代と称されるものもあります。本稿ではこれらの類似点や相違点、そしてその進化について説明します。このような鋼材の発展は自動車業界が牽引してきたものですが、その利便性の高さから自動車以外の業界でも活用が進んでいます。 その始まり - 第1世代鋼材 テールフィンやソックホップが流行したかつての時代、自動車の製造に適した鋼種はほんの一握りしかなく、軟鋼材と呼ばれる低強度鋼材が主流でした。冶金学上、炭素とマンガンを多く配合することで鋼材の強度を高めた高強度鋼材が唯一活用されていましたが、しかしこの鋼材は高強度である一方、延性、靭性、溶接性の低さが問題となっていました。 延性が限定的であったため、当時の自動車のデザインは比較的小型で平坦なボディパネルが主流でした。車両構造に関しては、鋼材の強度や延性の問題には比較的厚い板を採用することで対応していましたが、重量や安全性に関する大きな懸念はありませんでした。 1970年に米国で大気浄化法が成立すると、車体関連サプライヤーの間で環境問題への関心が高まりました。また同年には高速道路安全法も制定され、交通事故に起因する死者や負傷者、経済的損失の削減を支援する国家道路交通安全局も設立されています。さらに1973年の石油危機からは、車体の軽量化や燃費効率が着目されるようになりました。そして製鋼技術の開発や商用化が活発に行われるようになり、乗用車の材料としても積極利用されるようになったのです。 高強度低合金鋼材はガスや石油パイプラインの分野で10年以上前から使用されていましたが、自動車産業で広く採用されるようになったのは1980年代以降のことです。かつての炭素マンガン(CMn)鋼材とは異なり、高強度低合金鋼材は強度を高めても延性や靭性が低下することはありません。またプレスの強度が高まるとプレス部品の板厚を削減でき、さらには部品の軽量化が可能になります。部品製造に薄板を使用することで、鋼材の購入量が削減されるため、当時先進的であった鋼種の追加コストを相殺できたのです。 グローバル成形性図: 現在の鋼材と将来的な鋼材 1980年代にはボンネット、ドア、デッキリッドなどのクラスA品質のボディパネルにBH鋼材が採用されるようになりました。この鋼種は加工前の強度は低いのですが、プレス成形後に塗装硬化炉で時間をかけて焼き付けることで強度と耐デント性が高まります。この強度向上により、板厚と重量をさらに削減することが可能になります。 低強度鋼材の下側には、真空脱ガス処理された介在物のないIF鋼またはVDIF鋼がありますが、これはクラスA品質の露出面に相当するサーフェス精度を実現できる成形性の高い鋼材です。 EDDS(extra deep drawing steels)とも称され、一般的なBHよりも高い延性が必要なフェンダやクォーターパネルに採用されています。ボディパネルのサーフェスに深いカーブを加工できるため、空気力学的形状を取り入れることができ、燃費目標の達成や柔軟なスタイリングが可能になります。 冶金学的には、これらの鋼材にはいずれもフェライトを主成分とする微少構造があり、結晶粒の微細化、炭化物や窒化物の析出、合金要素を組み合わせることで強度が向上します。ほとんどの鋼種はパッチ式アニーリング(BA)で製造できますが、連続アニーリング(CA)ではより高速かつ効率的な製造が可能になります。どちらも同様に臨界温度まで加熱し、均一な製品ができるまで十分に浸漬した後、常温まで冷却します。CAでは20トンのコイル全体に同時に同じ温度プロファイルを適用するのではなく、コイル幅に沿った金属厚の断面のみを一度に加熱してから冷却します。そのため工程時間を9日から20分に短縮できます。しかし新たなCAラインの建設には数千万ドルから数億ドルの費用がかかるため、導入への障壁となっていました。 2000年代初頭からの欧州やアジアの発展に伴い、鉄鋼メーカーではCAラインの問題に取り組み、既存の設備で対応できる冷却速度を引き上げました。冷却速度を上げることで、マルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトなどフェライト以外の相を生成できるようになったのです。残留オーステナイトという用語は、低炭素鋼材の組成ではオーステナイトが常温で安定しないことに由来しますが、冷却速度を上げることで、この非平衡相を存在させることができます。 このような相の生成によってDP、TRIP、CPといった新たな鋼材の開発が進み、総じて第1世代の超高張力鋼板(AHSS)と称されています。また安全基準が厳格化されるにつれ、ホットスタンプ材(PHS)が車体構造に利用されるようになってゆきました。 希少な第2世代鋼材 低炭素残留オーステナイト鋼材には特殊な製造技術が必要ですが、3XX系ステンレ ス鋼は室温で完全なオーステナイトとなります。これらの合金は、約18%のCrと8%のNiを有し、優れた延性を有しています。 TWIP鋼材はオーステナイト組織を持ち、Mn12~30%、Si3%以下、Al3%以下、C1%以下の組成で達成されます。TWIP鋼材の伸びは50%に近く、EDDS鋼材に匹敵します。しかし、TWIP鋼材の引張強度はEDDSの3倍以上の1000MPaに達します。 この強度と延性の組み合わせにより、自動車メーカーは部品を統合することができ、プレス成形のインフラを節約しながら、生産性を向上させ、重量を減らすことができます。エネルギー吸収が必要な複雑な形状の部品にはTWIP鋼材が多く用いられています。 第2世代鋼材は高い延性を特徴としていますが、しかしこれには追加コストが伴います。ニッケルは現在1トン当たり3万ドル 近くで取引されており、1トンの304ステンレス鋼 には約8%のニッケルが含まれています。また特にTWIP鋼の場合、適切な組成と微小組織を達成するために必要な鋼材製造の複雑さが、製造コストの上昇につながります。最後に、必要な合金要素の種類と量によって、抵抗溶接プロセスに特別な注意が必要です。 現時点:第3世代鋼材 TRIP鋼材の名前の由来である変態誘起塑性効果には、残留オーステナイトが関与しています。これらの鋼材を変形させると、組織中の残留オーステナイトが高強度マルテンサイトに変態し、その工程で局部的なネッキングが遅れ、延性が向上します。 第3世代鋼材はすべてTRIP効果を活用し、同じ強度レベルの他の鋼材と比較して冷間プレス成形工程における延性を向上させています。冶金学的アプローチによって、強度や延性の目標値がそれぞれ異なる鋼材が開発されています。 DP鋼材は最も一般的なAHSSです。DH鋼材と呼ばれる延性を向上させたDP鋼材の新しい鋼種は、同じ引張強度で同等のDP鋼材よりも4%も伸びを大きくすることができ、エッジの延性も向上しています。同様にCH鋼として知られる高延性のCP鋼材も、同等の強度のCP鋼材よりも伸びが大きく、エッジの延性が改善されています。 TBF(TRIP-assisted bainitic ferrite)鋼材とCFB(carbide-free bainite)鋼材は、基本的に同じタイプの第3世代鋼材です。前者は引張強度1000MPa、伸び13%で、後者は引張強度1200MPa、伸び10%です。 商用の第3世代鋼材の中には焼き入れ分割(QP)工程に基づく系統もあり、1000MPaの引張強度で18%の伸び、1200MPaの引張強度で13%の伸びといった潜在的な特性の組み合わせを有します。 そのため用途によってはPHSに代わる冷間プレス成形が可能です。 このような特性を得るには、1990年代当時の装置では対応できなかった複雑なアニーリングサイクルを使用して、特定の組織相の平衡を展開する必要があります。必要な設備と関連する制御システムは数億ドルにのぼるため、このような鋼種を生産できる企業は世界的にも数社のみに限られています。 従来鋼種のアニーリングサイクルは単に加熱、保持、冷却ですが、AHSS鋼種には焼き入れと保持が必要です。第3世代鋼材は鋼種によっては必要となる微小組織を達成するために、2回目の焼き入れの前に焼き入れ、保持、再加熱が必要なため、複雑さを増しています。 第3世代の台頭 第3世代鋼材の世界的な生産は近年始まったばかりで、工程の最適化と共に新たな鋼種の開発が進んでいます。開発中の新しい鋼材の一つである中マンガン(MedMn)鋼材は、次に商的利用されることが見込まれています。高マンガンTWIP鋼材とは異なり、これらの新鋼種は3-10パーセ ントのMnを含む可能性があります。ある研究では1400MPaの引張強度と18パーセ ントの伸びの組み合わせが明らかにされています。 The Horizon MedMn 系鋼材のひとつである変形分割 (D&P) 鋼材の降伏強度は 2000 MPa を超え、一様伸びは - [ステランティス社が形状の設計を通じてホワイトボディのアセンブリ工程を効率化](https://japanforming.com/biwアセンブリ工程の効率化/) - ステランティス社では品質に対する自負があるため、多くを語る必要はありません。ただしあえて補足するならば、コスト、リードタイム、カーボンニュートラルの目標を達成すべく、工程の定常的な見直しを行っています。形状の設計においては、既存部品の再利用、「一発合格」への強いこだわり、工程のスリム化など、さまざまな取り組みが進んでいます(図1)。 図1: ステランティス社の目標達成に対する形状設計部門の取り組み 一例として、溶接工程の形状設計は、コスト効率 に大きく寄与します。アセンブリに必要な治具のトータルコストを考えてみましょう。理論上最もコストが高くなるケースは、組立部品を配置する際に一品ものの治具(つまりアセンブリごとに必要な専用の治具)のみを使用することです。しかし最新技術を活用したプロセスの再構築段階では、マルチセッティング(異なる車両の複数のアセンブリを設置可能で、再利用できる)治具と必要な部分にいくつかの治具を追加することで、アセンブリ工程のコスト削減を実現できます。またこのプロセスをさらに改善する段階においては、最適化を通じてトライアウトに必要な治具数を減らすことで、さらなるコスト削減を見込めます(図2)。ステランティス社では、2023年末までに治具数を30%削減することを目標に取り組みを進めています。 図2: アセンブリ形状治具のトータルコストを比較: ワーストケース(一品ものの治具のみを活用)、プロセス再構築段階(マルチセッティングの治具と追加治具を活用)、プロセスのさらなる改善段階(追加治具を削減)。ステランティス社の業務目標は治具数の30%削減。 ステランティス社では業務目標の達成において、シミュレーションが非常に重要な役割を担っています。シミュレーションなしではアセンブリ工程で検証を繰り返すことができる回数に限界があり、また物理的な検証を行うと一回あたりに必要な時間も膨大になります。つまり時間の観点から、大きな製品設計変更を行うにはすでに手遅れである可能性があり、また非常にコストのかかる機械加工を伴う形状変更を行う場合、リードタイムにも影響を及ぼします(図3)。 図3: アセンブリ工程の評価にシミュレーションを使用するメリット: 黄(上) = シミュレーションなし: トライアウト中に調整作業が必要となり、高いコストが生じます 青(下) = シミュレーションあり: エンジニアリングの段階で調整を行うため、修正に伴うコストを抑制でき、トータルコストの削減にもつながります アセンブリのシミュレーションにてコンセプトを早期に評価することで、検証の頻度が高まるだけでなく、検証期間も短縮されます。また最適化の選択肢が豊富にある段階で製品や工程を十分に検討できるため、最終段階の生産時に生じるリスクも緩和されます。 シミュレーションを行わない場合、検証は実機で行うことになります。リスクを特定することが比較的難しくなるため、工程最適化の機会も限定的となります。またリードタイムへの影響を最小限に抑えるには高いコストがかかる、実質的にはどの程度まで最適化を行えるかは不透明です。 ステランティス社ではAutoFormソフトウェアのアセンブリ・シミュレーションを評価する中で、ある革新的で大胆なソリューションを見出しました。シミュレーションがなければ、決して実現できないものです(図4)。 図4: アセンブリのシミュレーションを通じた工程の最適化 シミュレーションを活用することで、アセンブリの工程を6つから5つに削減できました。この結果、組立形状の改善を図りながらも、ジオスポット(溶接による接合箇所)の個数を14%削減し、ロボットの台数も20%削減することができました。コンセプトの決定後であっても、納期の遅延やコストの超過が生じることなく、このように工程を大きく最適化できるのは、シミュレーションあってのことです。 アセンブリのシミュレーションは、工程の最適化を根本から変革する画期的なものです。製品のコンセプトやアセンブリの順序を定義する際には、クランプやジオスポットが過剰になりがちで、時にはロボットの処理能力が追いつかず、またコスト効率も十分ではありませんでした。さらには溶接ステーション間の移動にも大きな問題がありましたが、これはサブアセンブリの強度に起因するものでした。このシミュレーションの調査を通じて、ジオスポットの個数を削減し、サブアセンブリの剛性を強化することで、形状のコスト効率が改善されたのです。これらはすべて、シミュレーションを活用した検討を通じて実現できたことです。これらの変更は、製品や工程の定義に組み込む前に、共同研究者と協力して検証を行いました。 - [障壁を架け橋に変革: デジタルトランスフォーメーションによる部門間の縦割りの解消](https://japanforming.com/dxによる部門間の縦割りの解消/) - 自動車産業は常に技術開発の最前線にあり、たとえばヘンリー・フォードが生産システムに革命をもたらしたように「現状を打ち破る」ことを使命としてきました。これは現在に至るまで変わりはありません。 各部門ではインダストリ4.0のような先進的な生産モデルを取り入れるなど、プロセスの改善を進めています。技術部門と生産現場が連携することで、情報やタスクの伝達を明確かつ効果的に行うことができる有機的なシステムを構築し、無駄の排除および二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。 このような状況下で競争力を維持するには、企業はエコシステムの中で最新の動向を注視しながら工場設備を最大活用して生産を行い、かつコストや品質目標も満たす必要があります。しかし変革を進めるにはパラダイムに対応するだけでなく、工法や工程の分析や調整も行わなければなりませんが、このような最適化にはデジタルツールが不可欠となります。ツールを有効活用することで、不具合の予測、前向きな意思決定、トライアンドエラーの排除などが可能になります。 変革においてはパラダイムの打破こそが最難関の課題です。フォード主義者が提唱するモデルでは、各部門や担当者がそれぞれ業務を遂行するためのシステムが構築されています。このモデルにおいては各自の業務完遂が最も重視されるため、個人主義的かつ縦割りにサイロ化された思考環境が醸成され、「自分の仕事は完了したのだから、もう責任はない」という考え方が大勢を占めるようになります。しかしプロセスチェーン全体の観点から捉えると、この思考はリスクをもたらしかねません。 自動車の最終組立を例に挙げます。この最終組立には、いくつの工程が必要となるでしょうか。多岐にわたる部門やサプライヤーから多くの業務担当者が様々な作業を実行しますが、その多くは相互に関連し、依存し合っています。たとえばフレームの組立工程においては、フレーム部品はプレス工場で製造されたものであり、その業務に必要なプレス金型は金型工場で製作されたものです。部門ごとに独立して業務を遂行する場合、金型工場は最良の金型をプレス工場に納品することに最大限の労力を費やし、またプレス工場は最良のプレス部品を組立工場に納品することに最大限の労力を費やします。しかしこの労力は時に過剰または不要となる場合もありえるため、この業務モデルが効率的だとは実は言い難いのです。 各部門がそれぞれ業務完遂を第一義に捉えた場合、その効率はどうでしょうか。そのプロセスは費用対効果が高く、プロセスチェーン全体の観点からも最終製品の品質を最大限に担保できるでしょうか。またプレス工場に納品された金型は、自動車の生産サイクルまで十分に考慮されたものでしょうか。結局のところ、製品のライフサイクルにおけるコストの大部分は量産に起因するものです。すべてのプレス部品が公差を満たす状態で納品されたとしても、コンポーネントやサブコンポーネントを手戻りや微調整なしに組み立てることは可能でしょうか。 このような疑問については、デジタルツールを用いて、製造現場の設営前にあらかじめ検証すべきです。このためエンジニアリング部門では、インダストリ4.0の基本概念のひとつである「プロセスのデジタルツイン」を構築し、各部門間で達成すべき業務の効果を予測し、成果を担保することで、コストを抑制しながら高品質の最終製品を実現することが重要です。 このデジタルツールを用いた新たな試みでは、エンジニアリングの段階からすでに複数の部門間で意見交換を行うことが可能になります。製品技術部門では、製品定義を行う際に製造技術部門の協力を得ることで、よりフィージビリティが高くシンプルな製品を作り込むことができます。プレス金型、ヘミング、溶接設備の購買に関するコストの削減や、手直しや再加工にかかるコストの抑制も実現できます。 製品のデザインが完了すると、製造のエンジニアリング部門では開発のエンジニアリング部門と連携し、車体の組立工程および量産工程の最適化と再現性について検討と定義を行います。 そのためにプレス担当部署とヘミング担当部署のための生産マップ(修正の方向性を示す事前検討データ)を作成します。プレス金型の開発においても、組立の解析から算出されたデータを考慮すべきであることに注意が必要です。完成車すべてを公差に収めるためには、単品部品を単品公差に収めることだけでなく、アセンブリ品についても規定の寸法に収めることが重要になります。 これが製造設備を物理的に設営する前の最終段階であることを考慮すると、この段階で製造部門がエンジニアリング部門に関与することはとても有意義です。なぜなら製造現場の担当者は幅広い知識を有するだけでなく、エンジニアリングの意思決定に有用な情報を提供できるからです。また製造部門においても、エンジニアリングに関与した担当者がシミュレーションを把握することで、シミュレーションと製造現場の相違を最小限に抑え、シミュレーション通りに製造が進むように指南することが可能になります。たとえ相違が生じたとしても、製造部門とエンジニアリングの間で連携をとることができるため、直接フィードバックを得ることができるようになります。 すでにエンジニアリング段階で潜在的な不具合が特定および解消され、また金型の完全性も担保されていることから、金型工場では金型に不備がないことを確認しながら、より短時間で高品質の金型を納入する必要があります。一方、プレス工場ではホームトライアウトを行うと、工程の安定性および再現性が担保されます。なぜならエンジニアリング段階ですでに材料特性のばらつきなどを考慮した解析が行われているためです。 デジタルツインのコンセプトは車体の組立にも適用できます。プレス工場と同様に、単品部品のプレス成形工程を複数の条件でシミュレーションすることで、初回のトライアウトにおいて微調整を行うだけで品質目標を達成することができ、さらに組立の諸条件を考慮することも可能になります。プレス工場の最終目標は組立の寸法通りの部品を納入することです。つまりエンジニアリングの段階で、単品部品の寸法偏差が組立の寸法に影響があるか、あるいは単品部品のいずれかを基準以上に変形させることで組立全体の寸法が満たされるか、といった点を確認することで、プレス金型の開発における無駄な時間や労力を削減し、微調整のみで正確な組立が担保された部品を量産できるようになります。さらに、たとえばヘミング工程のシミュレーションを行うことで、ソフトウェアで定義したローラーの経路と傾斜のとおりにロボットを操作するプログラムを実行できます。アセンブリの品質基準を満たすようにパラメータを最適化することで、プログラミングの作業時間や機器の調整に費やす時間も大幅に削減できます。 従来の障壁を将来の架け橋へと変革してゆくことこそが、製造業全般にとって非常に重要です。部門間の連携を強化することで無駄が排除され、エンジニアリングの有用性が高まる一方で製造現場の工数も大幅に削減できるため、新規案件の受け皿としての可能性が広がります。このデジタルトランスフォーメーションを実現するには、プレス成形およびアセンブリの分野ではAutoFormのような業界を支援するソフトウェアの活用が必須となります。JapanForming.comのブログでは、世界各国におけるAutoFormソフトウェアの活用事例や市場の最新動向を紹介しています。 ウェスリー・アパレシド・ダ・シルバ(Wesley Aparecido da Silva): オートフォーム社のアプリケーション・エンジニア。金型業界で13年以上の経験を有し、プレス工場、金型工場、生産技術および開発の分野でさまざまな業務に携わってきました。ABC連邦大学で材料工学を専攻。現在は、薄板プレス成形、ヘミングや溶接によるアセンブリ分野のデジタルトランスフォーメーション、そしてソフトウェアのトレーニングやサポートを担当しています。 - [EPALFER Portugal社が計画策定とコスト見積もりの効率化を達成](https://japanforming.com/計画策定とコスト見積の効率化達成/) - 計画策定とコスト見積もりの期間短縮を実現するための手段とは ポルトガルを拠点に自動車業界向けのプレス金型の開発と製造を専門とする金型メーカー、EPALFER社では、2020年にAutoFormソフトウェアの拡充を決定しました。見積もりの精度向上およびリードタイムの短縮に対応するため、計画策定およびコスト見積もりの機能をさらに充実すべきだと判断したのです。今ではプロジェクトの最初にまずAutoFormを使用して成形工程の初期フィージビリティを評価し、わずか数分で初期コストの見積りを算出しています。 数年前の自動車業界には、先行きが不透明で新車開発が低迷する時期がありました。EPALFER社生産計画部門の責任者であるジョアン・シルバ氏は次のように語っています。「当社では今後生じうる問題に備える良い時期だと判断しました。エクセルを使用した見積もり計算には時間がかかり、また専門知識が豊富な見積もり担当者の業務過多による遅延など、改善すべき問題は山積していました。そのため特に繁忙期には、依頼された見積を時間内にすべて対応することができない状況が多く生じていました」 「当初掲げた目標は、手入力による作業を削減することで作業時間の短縮を図り、またCADから表計算ソフトウェアに情報を転記する際の人為的なミスを回避することでした」とシルバ氏は続けます。「CADベースで操作が容易なAutoFormインターフェースとフィーチャー検出機能は、見積もりプロセスの最初に活用するツールとして最適だと考えました。またAutoFormユーザーとして、このソフトウェアの工程計画機能については熟知していたので、AutoFormを活用すれば見積もり業務を改善できることには確信がありました」 AutoFormを活用すれば、工程計画の代替案を速やかに生成し、評価することができます AutoFormの活用を通じて品質およびコスト効率の高い部品を製造できる工程コンセプトの代替案を迅速に作成し、どの工程を採用するか判断することができます。この工程計画の透明性と一貫性が担保されるため、意思決定プロセスに関わる各担当者は工程の意図を的確に把握することができ、それに基づく見積もりコストにも高い信頼を寄せています。ジョアン・シルバ氏は次のように説明しています。「従来の方法では見積もり1件につき1時間から数時間を要するため、1日に作成できる見積もりはわずか5~6件のみでした。今ではこのAutoFormソリューションを活用し、部品成形性の早期フィージビリティ検討や材料消費量の事前見積もりなど、一貫性のある信頼性の高い見積書をわずか30分で作成することができます。場合によっては、詳細な工程計画の策定、正確なコスト見積もり、生産代替案の評価などに時間を要することもありますが、それでもほぼすべての部品で1時間以内を実現しています。これによって、完成度の高い見積もりの本数を増やし、プロジェクトの指名を受ける機会を広げることができるのです」 EPALFER社の見積もり担当者は、順送金型とトランスファ金型の平均見積もりにおいて、±8%という妥当な範囲内でコストを見積もることができました。これは、自動車部門の中でも特に煩雑なプロセスにおいて常に良好な結果だと言えます。 複数プロジェクトの見積もりの偏差(%)例: トランスファ金型の見積もりコストと実際に生じたコスト 操作が容易な3DベースのAutoFormインターフェースを導入して以来、EPALFER社見積もり部門のワークフローはより効率化されています。コスト見積もりの原動力は工程計画の適切な定義であるため、プロセスの透明性と分かりやすさが担保されなければなりません。工程計画に精通したユーザーでも適切な工程定義を行うことができるよう、自動機能やウィザードが支援します。 AutoFormをプロジェクトの最初から活用するにはまずワークフローの微調整が必要でしたが、しかしその結果、プロセスをシームレスに統合させることに成功しました。初期計画から工程設計、最終的な最終検証に至るまで、1つのファイルが下流工程に転送されてゆくため、部門間の情報交換に誤りが生じたり、最初に見積もられた工程と最終的に設計された工程に不整合が生じたりする可能性が低くなります。 EPALFER社では改善が必要な分野を特定し、ソフトウェアのポテンシャルを引き出すことで、AutoFormソリューションの適用に成功しました。また標準を構築し、ソフトウェアの継続的な使用を通じて経験を積み重ねることで、自社のコスト構造に適合させてゆきました。現在ではAutoFormを活用して見積もりの精度向上や時間短縮の恩恵を受けているほか、AutoForm Formingインターフェースに統合されたワークフローを活用してエラーの削減や相互コミュニケーションの向上も実現しています。 - [初回一発合格を求めて](https://japanforming.com/初回一発合格を求めて/) - 「Brickwalls and Barricades: The Quest for Flawless Execution of First Hit Pass Outcomes(レンガの壁とバリケード –完璧な初回一発合格を求めて)」(仮題)と題された出版前の刊行物からの抜粋です。本稿では、信頼できる技術を駆使したシミュレーションおよび高度な職人技に裏付けられた金型製作を行うことで、プレス成形の不良や不具合を回避できる旨、実際のケーススタディを引き合いに紹介しています。 自動車シートの某大手メーカーでは、高い安全性が求められるプレス部品の順送金型を製作しました。しかし実際のプレス部品を使用した衝突テストでは、エッジクラックによってシートと車両が分離し、前面衝突に対する乗員の安全性が担保されないことが判明しました。 代表的な某家電メーカーでは、ランドリー用のクラスA品質のプレス部品向けにドローとリストライク工程を備えたトランスファー金型を製作しました。しかし実際のプレス成形では複数の大きなわれが生じました。 技術革新の偉業を成し遂げた著名な某IT企業では、世界各国に拠点を有する大手受託製造業者に、大型サーバー筐体の側壁パネルの金型製作を依頼しました。ピックアップトラックの荷台のような波型の外観を希望していましたが、実際に製造されたパネルはむしろポテトチップスのようでした。 高級ブランドの某小型家電メーカーは、家庭でこだわりの調理をする人向けに、オーブン内で平らな状態を保たなければならない耐熱製品のタンデムドロー型を製作しました。その結果、側壁のひとつの片側が角から角まで割れ、残りの3面には対称的な流入が確認されました。 4つの異なる市場から3つの異なる地域にまたがる4か所の異なる金型工場、そして3つのリスクスコアで行われた上述のケーススタディに共通するのは、プレス成形の不良だけではありません。これらのシミュレーションは適切な条件設定で実行され、成形性の結果は「合格」していたのです。 見直し調査 申し遅れましたが、私はティム・スティーブンスと申します。数十億ドル(約1,607億円)規模の超大手企業数社から、非常に難解な薄板プレス成形の不具合を解消するよう依頼を受けました。これら4件の超重要案件の科学的調査は、オリジナルのシミュレーションファイルを徹底的に見直すことから始めました。 計算設定 シミュレーションの計算およびソルバーの設定は、一般的なプレス成形シミュレーションの標準や慣行に準じています。シミュレーションの材料定義は実際の材料を再現したもので、私はプロとして正規の製品形状は成形可能だと判断しました。またダイフェース設計の技術は一般的なものであり、特殊な処置を施すこともなく、潤滑値も現実的でした。つまり、オリジナルのシミュレーションは正しく設定され、正しく実行されていたのです。私はあらゆる関連データを収集し、シミュレーションをゼロから構築することにしました。 材料 私が唯一信頼する独立系材料科学の専門家、Engineering Quality Solutions 社 (www.EQSgroup.com) のダニエル ”ダニー” シェフラー博士(月刊誌MetalForming MagazineやFormingWorldのコラムニスト)に実際の材料試験片を送り、材料ファイル作成にあたっての試験を依頼しました。また試験から算出された材料特性は、本日現在、この等級で一般的に使用されているコイルとして妥当なものであるか、ダニー氏の専門家としての見解も伺いました。この試験片が標準的な機械的値よりも成形性が高いか低いかを判断するには、この方法しかないのです。再切削した金型の材料が粗悪であるか標準的ではなかったために、後に改めて良質あるいは標準的な材料で金型を再切削しなければならないことになれば、それこそ無駄でしかありません。 ダイフェース設計 金型のティッピング、展開、ドロービードまたはその他の材料流入を抑制する仕掛け、隙(またはその欠如)、荷重、移動量は、実際の金型をそのまま適用して、不具合解消用のダイフェースを構築しました。実際のブランク形状、サイズ、位置も使用しています。また摩擦係数の値は、金型工場で適用している潤滑の種類と程度に基づくものです。 私がこだわったのは、シミュレーションのタスクを徹底的に見直し、信頼に値する根本原因を見出すことでした。つまり、偏見や先入観を持つことなく、金型と工程条件を現場のとおりに設定し、そのままシミュレーションを実行することです。 検査 シミュレーションの精度を判断するため、現場のプレスで生じたわれの位置と程度を測定し、記録しました。またブランクの流入や弾性回復(スプリングバック、オイルキャニング、ねじれ)も測定しました。これは実際のプレス結果と見直し後のシミュレーション結果が一致しているかを判断する上での基準として使用するためです。 結果表示 上述4件のケーススタディのシミュレーション結果から、いずれもプレスの不具合は完全に予測されました。プレスで実際に生じた不具合が、「デジタルツイン」としてシミュレーションで再現されたのです。図1参照 図1:科学的根拠に基づくシミュレーションで再現されたプレスの初品不具合から、プレスでわれが生じる根本原因を解明 (画像提供: The Die Guy, LLC) シミュレーションの予測精度に懐疑的な考えをお持ちの方は、この質問について考えてみてください。新たにシミュレーションを設定および実行してもプレスの不具合は予測できませんでしたが、しかし反対に、実際に現場で運用している金型の条件をシミュレーションへ適用させることで、プレスの不具合を正確に再現させることはできました。金型は使えるか、使えないかの2択であるのと同じように、シミュレーションも正確か正確ではないか、の2択でしかありません。シミュレーションを金型と同じように作り込むことができるのであれば、金型もシミュレーションと同じように作り込むことができるはずであり、そうすれば金型とシミュレーションが一致し、同じ結果を得ることができます。 整合性 金型がシミュレーションの条件とまったく同じように厳密に作り込まれていなくても、プレス成形すればシミュレーションで予測した通りの結果が得られる、という暗黙の期待があります。 ここで課題となるのが、デジタル上でのダイフェース設計、金型力学、材料定義、潤滑性能を現場で同様に実現することです。技術に裏付けされたフィージビリティのシミュレーションは、実際のプレスで生産する金型のデジタルDNAです。 デジタルツインを作り込むにはデジタルDNAが必須となります。 初回一発合格を実現するには、まずシミュレーション結果と現場のプレスの結果を一致させる必要があります。一致とは、重ね合わせたときに全く違いがなく、正確に一致することを意味します。エンジニアリングしたシミュレーション結果とプレスの結果を一致させたいのです。金型が完成するまでは、シミュレーションこそがデジタルDNAに裏付けされた技術となります。 家電市場を代表する某ブランドでは、政府主導のエネルギー効率化プログラム「EnergyStar」の要件を満たすため、新たなトップローダー洗濯機を開発することになりました。電化製品市場では利益を生み出すのが洗濯機です。そのため、この10億ドル(約1,607億円)規模のプログラムはきわめて重要であり、かつハイリスクな位置づけにあり、プレス成形には会社史上最も複雑な成形特性と金型力学が要求されました。 この製品は自動車のようなフィーチャーラインを特徴とし、デザインのコンセプトも非常に洗練されています。ホームセンターのフロアで最も視覚に訴えるエントリーレベルの洗濯機を開発することが、目標として掲げられていました。他の多くの市場とは異なり、家電製品の販売フロアにはすべての競合製品が横並びに展示され、消費者が横に並べて比較できるようになっています。もし外観面にひずみがあればどうにも隠しようがなく、完成度の高い競合製品に劣ってしまいます。 問題のプレスについては、成形、フィーチャーセット、公差など、あらゆる面で非常に複雑なものでした。新任の品質管理者は自動車業界での業務経験が長く、歩留まりの損失を過去平均の30%から3%以下に減らすことを使命としていました。金型設計は正確であることが必須でした。 シミュレーションファイルの徹底的な見直しを通じて、非常に難解なプレス成形の不具合を解消したティム・スティーブンス氏のケーススタディについてご紹介します。 - [プレス成形シミュレーション精度向上のためのオートフォーム「パレートチャート」と「正確度指標」活用](https://japanforming.com/プレス成形シミュレーション精度のautoform活用/) - はじめに 近年、自動車産業においてCAEはなくてはならないツールとなっています。設計、検討、生産技術、量産準備のあらゆる段階においてシミュレーションが活用され、コスト削減や品質向上に大きく寄与しています。加えてここ数年持続可能な社会への対応が求められ、自動車業界での生き残りをかけた、さらなる軽量化やコスト削減の必要に迫られています。このような要求を満たすために、CAEの徹底した使い切りによるデジタル上での検討品質の向上と、検討をやり切ることの重要度が非常に高まっています。デジタル上で高品質な検討をするためには、自社で製造される実物の製品やその製造工程をデジタル上で正確に表現できる必要があります。この表現能力のことを大きく「精度」と呼ぶことが多いですが、シミュレーションにおける再現「精度」を向上するためには、現物とCAE双方を正確に理解してデジタルの世界で表現しなければなりません。本稿では、シミュレーション予測精度の実態と、精度向上のために必要な二つの指標のご紹介と、これらの指標を使ってお客様のシミュレーションファイルから見つかった精度低下要因をご紹介します。 シミュレーション予測精度の実態 シートメタルの塑性加工シミュレーションにおいて最も権威がある国際学会といえばNumisheetを置いて他には考えられません。この学会では技術講演が行われるほか、毎回いくつかのテーマでベンチマークが実施されます。主催者側はプレス金型を作成し、その金型で生産される実製品の板減やしわ、寸法精度などを測定します。その加工条件のみを事前に公開し、ベンチマーク参加者は各々好きなソフトウェア環境でその製品の加工をシミュレーションし、計算結果を主催者側に提出します。主催者はその結果と実際の製品を比較して答え合わせを行い、学会当日に順位含めその分析結果を公開する。というものです。あらゆるソフトウェアに対して公平かつ厳正な比較が可能なため、しばしばこの業界ではソフトウェアの実力を示す、信頼のおける比較データとしてこのベンチマークの結果が利用されます。 以下に2022年に実施された結果をご紹介します。 図1. Numisheet2022 BM1: テーマ部品とその加工方法4通り 図1に2022年のベンチマークテーマ1に関しての条件を示します。ハット断面を有する比較的シンプルな形状の製品が対象で、ダイフェース面にはビードが設置されているものと、ビードが無いものの2通りの形状があります。この形状に対して、980MPa級ハイテンと、6000系アルミの2種類の材質でのスプリングバック後の曲率を評価します。 図2. Numisheet2022 BM1: 指定断面における曲率の実物との誤差 図2に示されているのが、シミュレーションと実物を比較した結果です。各グラフは横軸が測定断面の番号を示し、縦軸は実物との誤差を示します。AutoFormからの参加は、4番目に示された結果であり、ビードあり、ビードなし、ハイテン、アルミの4通りすべてで最も実物に近い結果となっています。 図3. Numisheet2022 BM1:計算時間の比較 また、この結果を得るために必要な計算時間を図3に示します。他の参加者と比較して文字通り桁違いの短い時間で高精度な結果が得られていることが分かります。 このようにNumisheet 等を通してソフトウェアの実力そのものは十分であることが証明されている一方、実際のユーザー様においては精度が十分に出ないケースがあることも事実です。実運用において精度とは、どのように考えられるべきなのかを以下に述べます。 AutoFormのパレートチャート 「パレートの法則」によれば、多くの場合結果の約 80% が原因の 20% から生じる(これを80/20ルールと呼ぶ)と言われており、多くの自然現象がそのような分布を示すことが知られています。この概念に従って、AutoFormでは正確なシミュレーション結果を達成するための原因、つまり入力条件について、パレートチャートを使って図4のように整理しています。「基礎」のパラメータはシミュレーションの最も基礎的なデータで、形状やごく基本的な加工条件などを含みます。次に「必須」なパラメータを正確に準備することができれば、基本的な条件とはいえ正確なシミュレーションを実施するための強固な基盤が形成されます。精度をさらに向上させるには、「重要」、「詳細」に分類される細かい条件についても突き詰める必要があるものの、基礎的な条件を毎回必ず正確に準備することができることこそが、安定して品質の高いエンジニアリングを実施する上では最も重要であることは明らかです。 図4. 精度決定要因の影響度と積み上げ(パレート図) AutoFormの正確度指標 パレートの法則によって分類されたさまざまなパラメータを物理的意味合いに沿って改めて整理したものが、正確度指標(Accuracy Footprint)です。シミュレーション設定やデータの不足や誤りを特定する目的で設計され、実際にはチェックリストの形で運用されています。この指標は、シミュレーションの設定と実際の製造における加工条件を8種類に分類して比較します。 図5. オートフォームが提案する正確度指標 このような指標を利用して、ユーザーにおける実際のシミュレーション設定を確認すると、Numisheetのベンチマークで提供される加工条件のようにすべての情報が揃わないこともあります。また実際のエンジニアリングの業務では、日々自社の量産に合わせて条件が更新されていくため、シミュレーションを実施した時点と、金型を加工した時点で条件が異なってしまうこともしばしば発生します。特に大きな企業では、プレス成形のさまざまな検討事項に対して担当者が異なる場合が多く、情報がうまく伝わらなかったり、個別に最適化を進めた結果一貫性が失われていたり、あるいはデータを提出する期日を守るために実際とは異なる状態でデータを出図しなくてはならなかったり、さまざまな理由でシミュレーション精度を担保するのが難しいというのが現実問題として存在しています。 日本ユーザーの精度アセスメント オートフォームではユーザー様からの依頼に基づき、実際の検討業務で作成されたデータに対して正確度指標を用いて評価し、実際と異なっていると考えられる条件を探して報告するサービスを実施しています。(精度アセスメントのサービス)また場合によっては、なぜそのような不一致が発生しているか、原因についても考察して改善案を提出することもあります。ここでは、精度アセスメントの結果から、機密情報を除いた全体的な傾向や、代表的な精度低下要因をご紹介します。 図6. 精度アセスメント実施対象の業種 n=55 まずはアセスメントの対象業種について図6に示します。OEMから24部品、部品サプライヤから12部品、金型サプライヤから14部品、そして試作メーカーから5部品を直近数年でアセスメントしています。またアセスメント対象の部品種別は、サイドアウターパネルを5種、アウター部品は11種、インナー部品は5種、構造系部品は24種、リインフォース部品は7種、その他の部品は3種となっています。材質ごとに分類した場合は、軟鋼が20部品、ハイテン(-590MPa)が13部品、超ハイテン(-1180MPa)が15部品、その他(1480MPa以上や熱間プレスなど)が4部品、そしてアルミニウムを3部品アセスメントしています。個々の事例についての詳細はここでは公開することはできないものの、非常に幅広い要因でシミュレーションと実物の不一致が発生しており、以下に代表的な例をご紹介します。 図7. 不一致の要因(複数選択あり、明らかなもののみ) (1) 材料特性: 材料特性の重要性は広く認知されており、近年シミュレーションに適用される材料モデルや取得する材料データの品質についての意識は非常に高まっています。非常にリードタイムの短い試作メーカーなどでは、材料を取得するのが難しいケースもあるが、それ以外のケースでは各企業の意識の差が顕著に表れる領域と言えます。 (2) 数値設定: 非常にシンプルな試験片では、メッシュサイズが結果に影響を与えることが避けられない場合もあるが、実部品の予測精度に対するメッシュサイズなどの数値設定の依存性は、陰解法、アダプティブメッシュを利用するAutoFormではかなり低減されています。実際の自動車部品を扱う際に最も重要なのは「形状が正確に再現できているか」であり、業界標準として90°のフィレットは4〜5メッシュで表現されるべきです。 (3) 加工条件の例: ブランクホルダーやパッドの荷重設定に誤りがあるケースが多く、これが不一致の大きな原因となります。トライアウトや測定を行う現場作業者は、与えられた自由度の中でより良い製品をより早く得るためにその場で最適な設定を模索するため、不一致が発生しやすいでうす。CAE作業者は、現場とのコミュニケーションが非常に重要であることを示す一例です。 (4) 金型形状の例: 手仕上げなどによる金型形状の変化だけでなく、NCデータの作成段階で形状が変わってしまうことはことさら多いです。これは業務の分担によるところが要因として大きく、担ぎ対策(スケーリング、オフセット)、型当たり調整のための仕込み、スプリングバックの補正、構造設計上の仕込みなど、ダイフェースを変更する作業の一部がCAE作業者の所属ではない、金型を削る部署で実施されることで発生することが多いです。 (5) 金型動作の例: 日本では特に、ブランクホルダーが開いたまま加工することが多いが、シミュレーションでは閉じた状態で設定されているケースは多いです。また、シミュレーションでは加工後のパネルを金型から取り出す工程が必要ないため、実際には可動するタイプの下型が、固定されていることもあります。シミュレーションで確認すると同時に、現場で何が起きているか、工程間のパネルデータを収集するなどして現場でも把握することが望ましいです。 (6) 安定性: - [航空宇宙企業DOMAERO社、数値シミュレーションを活用したリスク回避](https://japanforming.com/航空宇宙企業domaero社、数値シミュレーションを活用/) - DOMAERO社は1990年に設立された民間、防衛、宇宙分野のプレス成形を専門とするフランスの航空宇宙サプライヤです。航空構造物の軽量化に関する取り組みが進む中、主要顧客である大手航空宇宙OEMやそのTire1サプライヤからは、DOMAERO社が有するチタン薄板成形のノウハウが高く評価されています。同社では軽量化によく用いられるアルミニウム、ステンレス鋼、インコネルなどの材料にも対応しています。 行動につながるツールとしてのシミュレーション DOMAERO社では2021年にAutoFormを導入したことが、現状維持から抜け出すきっかけとなりました。同社 CEOクリストフ・ボンパール氏は、シミュレーションがなければ現在取引のある難解な部品を受注することは決してなかったであろうと語っています。航空宇宙業界では薄板部品の溶接工やボイラー工が減少し、経済的な問題は深刻さが増しています。そのためOEMでは溶接や仕上げの時間短縮を図るため、複雑なプレス部品をデザインすることで対応しようと試みています。そのためサプライヤはこのような変化に対応しなければなりません。 外部評価の要因としてのシミュレーション DOMAERO社では顧客から依頼のあった部品の生産性を検討し、そのレポート報告を行っていますが、その際にシミュレーションを活用することでさまざまな懸念を解消できるという信頼感が広まっています。顧客側でも設計部署によっては、たとえば金属疲労などのシミュレーション結果を判断を行う際の参考にしていましたが、そのような部署ではDOMAERO社が成形シミュレーションを用いて生産性の評価提案を行っているという事実に安心感を得ているようです。 シミュレーションを活用することで、トライアウトの修正回数を半分以下へ削減することができています。以前は標準的な部品でも3~4回の修正が必要でしたが、今では多くとも修正は1~2回のみです。修正が約1週間続くとすると、この部品の計画全体で半月分のリソース削減に相応するため、これは顧客からも大きな関心を集めています。 この削減できたリソースは他のプロジェクトに投入できるため、 DOMAERO社および顧客の双方に非常に有意義なものです。 社内の調和を図るツールとしてのシミュレーション かつてDOMAERO社にはプレス成形に精通した多くのエンジニアがいました。しかしプレス成形工程に関する判断を委ねることができる熟練したエンジニアたちは、いまではすでにみな離職しています。現在では数値シミュレーションが最終判断の基準として活用されていて、技術部門と金型工場の見解に相違がある場合には、両者の意見調整に欠かせないツールとなっています。またシミュレーションは、次の一手を検討し、決定する場合にも役立つ優れたツールです。特に今日では過去に経験のない新たな部品を取り扱う機会が増えていますが、その場合、たとえ簡易的なシミュレーションであっても、それは専門家のアドバイスよりも正確で信頼できる情報となりえるためです。CEOのボンパール氏が断言するように、これは非常に心強いことであり、新たなプロジェクトをより穏便に進めることが可能になります。 DOMAERO社ではプレス成形に関する新入社員の研修にもAutoFormソフトウェアを役立てています。その観点からも、同社にとってシミュレーションは欠かすことができないツールであります。 DOMAERO社ではシミュレーションの活用を始めてからプレス部品の品質改善が進み、またプレス加工後の手直しも削減されています。プレス加工後の手直しに対応できるエンジニアの離職率が近年高い傾向にありますが、DOMAERO社ではスタッフの稼働率に依存することなく業務を続行することができています。 事業を進化させるツールとしてのシミュレーション シミュレーションはDOMAERO社の事業成長にも大きく貢献しています。ここ数年で同社では従来の2倍ほどの価格帯にあるより複雑な部品を生産することができるようになりました。顧客からはより複雑な部品の製造依頼を多く受けるようにもなりましたがDOMAERO社は、部品の生産性、製造工程の複雑さ、そして全体コストの評価などを通じて、顧客をサポートしています。今のところ、DOMAERO社では自社生産する部品の生産性検討のみを行っていますが、将来的には、他の部品についても生産性検討を請け負うことを視野に入れています。 AutoFormでは条件を素早く設定でき、高速で計算できるため、これらの作業の迅速化を図ることができる点についても、ボンパ―ル氏は非常に高く評価しています。今年はすでに約150件の案件に対応していますが、戦略的価値のある部品により多くの時間を確保でき、その他の部品についても迅速に処理することができれば、DOMAERO社の事業成長は確実に見込まれること間違いありません。 - [AutoForm-ProcessDesigner^ForCATIAを活用した金型見込み補正における効率性向上への取り組み事例](https://japanforming.com/金型見込み補正における効率性向上への取組事例/) - 【はじめに】 近年、自動車産業の金型分野において、リバースエンジニアリングの手法が注目されています。自動車部品の設計と製造において、金型は品質、コスト、納期に大きな影響を及ぼします。しかし、金型開発/製造のプロセスにおいては、伝統的な職人技が依然として主要な手法となっており、効率化とデジタル化に向けた多くの課題が存在します。 具体的な課題として、金型開発データと実際の金型の整合性の確保、既存の金型の不具合や改良点を反映した3Dデジタルデータの不足、リピート型の整備における高い工数などが挙げられます。こうした金型設計と製造プロセスにおける課題に対処するために、リバースエンジニアリング手法が活用されています。 リバースエンジニアリングは、物理的なオブジェクトを3Dスキャンしてデジタルデータに変換し、それを元にCADモデルを生成する技術です。この手法は金型の設計、製造、修復、再製作などに適用可能で、その価値は高まりつつあります。ただし、リバースエンジニアリングは多くの工数とコストを必要とするため、効率的な方法を模索することが求められます。本稿では、プラグインハイブリッド(PHEV)からSUV、セダン、ミニバン、軽自動車まで、幅広い車種の開発・製造・販売を手がける三菱自動車工業株式会社(以下、三菱自動車)がAutoForm社のソリューションを通じて、金型リバースエンジニアリングの有効性を検証し、効果的なアプローチを適用した応用事例についてご紹介します。 【STLスキャンデータによるベクトル・フィールド生成機能】 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAはCATIA環境上で、金型面設計や、スプリングバック見込み補正、およびNC加工準備のための面修正に関して、効率的なソフトウェア・ソリューションを提供しています。2023年春にリリースされたバージョンR10では、見込み補正ソリューションが強化されており、これには新しいベクトル・フィールド生成機能が含まれます。(※ベクトル・フィールド=生成する見込み補正を定義するもの) これまでは、見込み変形量を決定するためにベクトル・フィールドを別のCAD環境や解析ソフトウェアで生成する必要がありました。新たに開発されたベクトル・フィールド生成機能により、CATIAの環境内で2つの形状(STL同士、STLからサーフェス、サーフェスからSTLおよびサーフェス同士の4つのパターン)間のベクトル・フィールドを簡単に算出できるようになりました。生成タイプには、押し付け変形用の偏差ベクトル・フィールドと見込み補正用の逆偏差ベクトル・フィールドの2種類があり、トリム型ドローシェル形状の作成やハンド再現面、リピート型など、さまざまな場面で幅広く活用できます。また、見込み補正エディタに搭載されているさまざまな見込み補正オプションと組み合わせることにより、柔軟な見込み補正戦略と高品質な見込み補正面を同時に実現できます。 【事例】パネル測定STLデータを用いたAutoForm-ProcessDesignerForCATIA-R10新機能活用 《概要》 金型のスプリングバック見込み補正のプロセスにおいて、効率性の向上は常に重要な課題です。今回の検証対象部品はバックドアインナーで、新しいAutoForm-ProcessDesignerForCATIAのSTL測定データによる見込み補正手法を用いた方法と従来の手動見込み補正面作成方法の両方を比較しその効果、特に効率性について詳しく検討しました。 《既存の困り事》 従来の手動面作成アプローチには、以下の問題が存在しました。 (1) 工数の増加 手動で面を作成する場合、見込みの量や回転角度、さらにはその徐変領域など具体的な数値やその定義が不足していると、手動での面作成が難しくなり、またその数値を算出するのにも時間がかかることがあります。たとえば、棚形状を変形する場合、どこを軸にして回転させるのがベストなのかなど、しっかり決めないと意図した形状にならない可能性もあり、その決定も時間がかかる要素となっておりました。また、徐変の範囲でつなぎ面を作成する必要があり、手動面作成の場合は、ぼかし面範囲の面品質を考慮した作りこみが必要で、これも時間と労力を要する作業でした。(図1) (図1)従来の見込み補正面作成指示方法 (2) 指示との整合性の難しさ 見込みの範囲と量において、手動面作成の場合は必ずしもうまく結果と合致しないことがあります。明確な見込みの回転角度や量に関する具体的な指示があれば、それに基づいて面を作成することできますが、そのような細かな指示を作成すること自体が労力を要する場合、ある程度簡略化された指示を使用せざるを得ないケースもあり、その結果、手動面作成の場合はスプリングバック量と範囲において意図とズレが生じるケースがありました。 《検討手法》 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAのベクトル・フィールド生成新機能を用いて、実際のパネル変形から逆偏差ベクトル・フィールドを算出します。それを用いて複数の局所的な修正箇所において見込み補正領域とそのつなぎ領域を定義することで、各箇所の修正面を生成します。最終的に見込み補正エディタの埋め込み機能を使用して各箇所の修正面を一つに統合しました。今回の事例では、対象部位の変形はベジエ・サーフェスによる見込み補正は使用せず、ベクトル・フィールド見込み補正機能のみを使用しました。 《検証結果》 良い点について: 新しいアプローチとしてAutoForm-ProcessDesignerForCATIAを活用した結果、いくつかの明確な利点が確認できました。まず、工数を大幅に減少させることができました。ベクトル・フィールドを用いた修正を行うことで、手動面作成でかかっていた時間を大幅に削減することができ、作業の効率が向上しました。また、AutoForm-ProcessDesignerForCATIAを用いた方法では、より正確にスプリングバック量や範囲に対する見込み補正面の作成が可能となり(図2)より実機で発生している現象に近い形状で対応できるようになりました。 (図2)見込み範囲について 面品質については、手動面作成とAutoForm-ProcessDesignerForCATIAを比較して同等であることが確認されました。精度においても、AutoForm-ProcessDesignerForCATIAを用いた方法がスプリングバック結果をより正確に反映した形状の作成が可能となり、設計と実機の一致度が向上しました。(図3) (図3)手張り修正とAutoForm-ProcessDesignerForCATIA作成面の比較 配慮が必要な点について 一方、以下のいくつかの点において配慮が必要であることもわかりました。一つ目のポイントはベクトル・フィールドを生成する際の、STLの事前修正です。AutoForm-ProcessDesignerForCATIAはノイズをある程度取り除けますが、不要なSTL部分、たとえば穴の部分などを正確に削除するために別のツールが必要です。(図4) (図4)STL編集について 次に、STLの位置合わせについてです。STLデータは型基準の位置姿勢で保存されており、ベストフィットを使用してから差分をベクトル・フィールドとして算出しています。ただ実現象に一致するような位置合わせが必要となる場合もあり、STLから差分を算出する際の適正なSTLの基準位置を検討するベストフィット以外のさまざまな手法を利用することができれば、より意図通りの見込み補正を行うことができます。 また、改修を実施する範囲、変形する部分、およびつなぎの部分を選定する方法についても調整が必要です。たとえば、大きな見込みが必要な場合、面をそのまま追従させるべきかどうかの判断が必要です。実際の業務に採用する場合は随時確認が必要です。 工数比較結果 具体的な工数比較の結果は以下の通りです。前提条件は、改修箇所が合計で15か所です。手動面作成の場合には通常35時間から40時間かかります。 今回の検証では、まずSTLの事前編集に8時間が必要でした。次にAutoForm-ProcessDesignerForCATIA新機能を用いたSTLによるベクトル・フィールドの生成には数分程度、その結果を利用した15か所の改修面作成に8時間かかりました。よって全作業の合計は約16時間で、工数を50%以上削減できたことを確認できました。 《今後の展開について》 今後の車種でもAutoForm-ProcessDesignerForCATIAを使った見込み手法を実際の業務に適用するべく水平展開していくために、詳細や懸案の再確認や、他事例での効率向上効果の確認を進めています。 【まとめ】 見込み補正ベクトル・フィールド生成および見込み補正エディタによる活用事例を紹介しました。これらの手法を活用することで、以下のような効果が期待されます。 面作成の柔軟性:新手法を使用することで、見込みの回転角度や見込み量の指示が不足しても、STLから算出したベクトル・フィールド見込み補正を用いて、局所的に見込み補正を行うことができますので、面作成についてより柔軟に対応することができます。 面品質を維持しつつ工数の大幅削減:新手法を活用することで、従来の手動面作成に比べて工数を半分以下に削減可能です。面品質は従来の手法と同等であり、精度についても実際の現象に近い結果が得られます。 リソースの効率的な活用:従来の手動作業に費やされていた時間についてリソースの効率的な転換ができ、生産性を向上させます。 すべての作業をCATIA環境下で完結することにより、見込み補正やリバースエンジニアリングをCATIA品質で実施することができます。 (企業概要) 三菱自動車工業株式会社 設立:1970年4月22日 所在地: 東京都港区芝浦三丁目1番21号 代表者:取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤 隆雄 様 資本金:2,843億8,200万円 - [プレス成形工程を対向液圧成形へ代替する取り組みについて](https://japanforming.com/プレス成形工程から対向液圧成形へ代替する取組/) - 概要 産業界が競争力強化を図るには、製造工程や手順のコストや時間を削減することが効果的です。そのため多くの企業が従来とは異なる製造方法を模索しています。このような背景のもと、Tecumseh do Brasil社ではAutoForm社およびTechnNova社と共同で、密閉式コンプレッサのハウジングの製造に関してフィージビリティ検討を実施し、従来のプレス成形を代替する工程として対向液圧成形を用いることが可能であるかを調査しました。この調査は生産工程の効率化および競争力強化を目的とし、数値シミュレーションを活用して行われました。 調査手法 対向液圧成形シミュレーションの精度を確認する上で、まずはTecumseh社が密閉コンプレッサの製造に使用している従来のプレス成形工程について調査しました。 プレス成形工程のシミュレーション結果を実際の材料を用いた実験結果と比較することで、対向液圧成形の検証や実行可能性の比較を行うことが可能になります。シミュレーションではまず材料特性を評価し板減を検証しました。 この調査では以下の手法を用いました。 実験による検証 数値シミュレーションの活用 実験による検証 コンプレッサのハウジングはプレス成形段階のものを入手し、実験とシミュレーションを行いました。この段階ではハウジングの板厚を分析し、部位ごとの板減の割合を調査しました。 この解析は2段構成となっています。 プレス成形工程の解析 ハウジング周りの板減解析 2つのハウジングの試験片を切断し(図1)、11箇所で板厚を測定することで、問題の部位を特定できました(図2)。 図1: 板減解析用に切断した試験片 図2: 解析との比較部位(板減) 数値シミュレーションの活用 実験を行った後に、2つの工法を比較するために、以下に示す3つのシミュレーションを実施しました。 1.従来の工程シミュレーション: 現在の工法であるプレス成形工程をシミュレーションしました(図3参照)。 図3: ハウジングの中間成形段階におけるパンチ、ブランクホルダ、ダイの設定 2.従来の工程を代替する工程のシミュレーション:まず従来の工程と同じ材料とインポート形状でシミュレーションを行いました。ただしパンチおよびダイ上のハウジングカバーは半径を変更しています。これは、ダイの半径が大きすぎると、対向液圧成形の金型を閉じる最終段階でシーリングの問題が生じる可能性があるためです。 3.対向液圧成形のシミュレーション – 液圧式の深絞り工程: この対向液圧成形の数値モデルでは、ハウジング材料とそのインポート形状は前述の工程と同じままとしました。これは最終形状のキャリブレーションを行う前の準備段階の形状です。これにより従来の工程における製造段階を1つ削減できます。 図4: 液圧式の深絞り工程 [12] 調査結果 実験結果 コンプレッサのカバーから脚部までの領域では、シートの公称板減に対して最大40.79%の大幅な板減が確認されました。一方、コンプレッサの肩周辺では、最大でわずか25.73%の板減にとどまりました。 図5: 左) カバー-脚部の板減値。右) カバー-肩周辺の板減値 シミュレーション結果 FLC曲線と板減 - 従来の工程と代替工程 従来の深絞り工程シミュレーションでは複数の致命的な領域が確認されましたが、その大半がコンプレッサの脚部に集中していました。対照的に、代替工程では半径を小さくしたにもかかわらず、従来の工程よりも材料の成形性が向上し、半径領域に高い摩擦が生じていることも示唆されています。 致命的な領域では従来の工程の公称板厚の30%~40%の板減が確認されましたが、代替工程では板減は20%~30%となり、工程は改善されていることが実証されました。 図6: a) 従来の工程での板減、b) 代替工程での板減 FLC曲線と板減 - 対向液圧成形 - [スマートエンジニアリングにおける人間と人工知能(AI)の比較](https://japanforming.com/スマートエンジニアリングにおける人間と人工知/) - ~デジタルトランスフォーメーションにおいて、プロセスエンジニアリングに精通したエンジニアの役割が極めて重要であり続ける理由~ 急速に進むデジタルトランスフォーメーションを積極的に取り入れ、エンジニアリング業務や製造部門のデジタル化を進めることを検討していませんか?人間の知能が人工知能(AI)に取って代わるだろうという懸念をお持ちでしょうか?AI、ML(機械学習)、センシングや適応制御を活用したスマート生産による雇用消失を心配していますか?デジタルトランスフォーメーションの浸透が進まないことを望んでいませんか? このような疑問を感じるのは当然のことですが、また産業革命の時代から、馬から機械へ、人からからロボットの活用へ、そして今や人間の知能から人工知能へと、これまでも同じような転換期を経てきたことも事実です。将来に対する不安を抱えているのであれば、エンジニアリングの「バリュー」を認め、デジタルトランスフォーメーションの本質を理解することが重要です。雇用を守るためにも、この転換期にどう対処すべきかを議論することに意義があります。 エンジニアリングやエンジニアは過去事例の情報や、現在起きている問題、そして新技術などさまざまな情報を集約して、最適な解決策を模索することに長けています。これはデジタルツインによって容易に自動化できるものではなく、また一部門だけで最適な解決策を導き出せるものではありません。デジタルトランスフォーメーションにおいて、エンジニアはAIやML、実行システムの競合とはならず、むしろデジタルツインを効率的かつ効果的に活用すべき立場にあるのです。 デジタルツインは製品開発を勝ち抜くためのツールですが、しかしすでに浸透しはじめているデジタルトランスフォーメーションにどう対応すべきかについては、慎重に検討しなければなりません。本稿ではデジタルトランスフォーメーションが重要な役割を担うエンジニアリングのプロセスチェーンについてご紹介します。そこで疑問に対する答えが見つかり、不安が解消されることを期待しています。 エンジニアリングのバリューストリーム デジタルトランスフォーメーションを効果的に進めるには、各関係部門が連携し、縦割り組織特有のサイロを撤廃することが重要です。その理想的な例として、製造のプロセスエンジニアリングにおいてはカーブ型のストリームが挙げられます。これは図1が示すとおり上流と下流の両方が中心となり、バリューの創造という共通の目標に向けて意思決定のワークフローを管理する効果的な方法です。 図1. デジタルエンジニアリングのバリューストリーム(デジタルトランスフォーメーションの効率化) プロセスエンジニアリング部門には、最も多くの情報が集約されます。製品技術と製造技術の両方が関わるためです。ストリームが曲線的であると、より多くの接触機会が生じ、効率や合理性が高まります。一方の直線的なストリームはいわゆる縦割り組織であり、共通目標を設定するのは難しくなります。またカーブ型のストリームには、製品開発と品質管理を効果的に行い、競争力を高めることができるVコンセプトを適用しやすいという利点もあります。上流のカーブは製品設計における「確認/Verification」のVであり、下流のカーブは「検証/Validation」のVです。 このようなストリームにおいて、製造のプロセスエンジニアリングには次のような特徴が挙げられます。 上流および下流の両方に関与(対比) 同時にさまざまな情報を交換(同時性) エンジニアリングに関する新たな視点(模索) 上流と下流の目標を組織全体の目標として設定(包括的) 図2. 製造のプロセスエンジニアリングの特徴 端的に言うならば、製造のプロセスエンジニアリングは他の業務よりも幅広く、複雑で、要求が厳しいのです。これらはすべて、エンジニアリングチェーンを通じて卓越性を発揮する上で極めて重要です。「対比」「同時性」「模索」「包括的」といった形容詞表現からも、こうした課題が見えてきます。 対比のエンジニアリングとは、製品機能に関するデザインと生産性に関するデザインの間で、最適な解を見出さなければいけないことを意味します。プロセスエンジニアリングの各業務にそれぞれ評価指標を設定することで、比較的容易に行えます。最近では意思決定のワークフローを短縮することが主な課題となっています。またプロセスエンジニアリングの結果から情報交換を行うエンジニアリングの同時性も、正しい意思決定を行い、前進を続けるために不可欠です。 プロセスエンジニアリングの別の課題としては、新たな分野を模索しながら、意思決定を行う必要があることです。たとえば、金型の研磨におけるトライボロジシステム、定量化された3点ゲージを活用したサーフェスの欠陥評価、サーフェスのクラック、金型のスポッティング、高度な材料モデル、変数など、以前はシミュレーションには関連がないとされてきた新たな分野に対応しなければならないのです。 プロセスエンジニアリング業務の中核となるのが、組織の目標を包括的に捉えることです。設計した機能と生産性に関わるすべての意思決定が、収益にマイナスの影響を及ぼすことがあってはなりません。設計した製造工程は、競争力のある製品開発、運用、および生産性において、現在の包括的な価値を表す必要があります。 近年、プロセスエンジニアの業務は上述のとおり大きく変化しているため、関係各部門を主導し、推進する強力な手腕が求められています。またあらゆる部門が的確な意思決定を行うには、プロセスエンジニアリングの包括的なデジタル化を進めなければなりません。つまり上流と下流のどちらもプロセスエンジニアリングに裏付けられた意思疎通や意思決定ができなければならないのです。カーブ型のストリームに沿って包括的なデジタル化を進めることで、上流と下流の両方にフィードバックが行われます。 協力体制の構築 協力体制を構築することは、組織をまとめ、共同でエンジニアリングを進める上で非常に有益です。特にデジタルシステムにはエンジニアがいる遠隔地をつなぐという利点があるため、これを採用する企業が増えています。システムが完全にデジタル化されると、異なる部門間のエンジニアの結束力が高まり、両者の障壁となっていた縦割り構造(サイロ)が破壊されます。そして各部門や組織の境界を越えて、各エンジニアがより効果的に作業できるようになるのです。 包括的なプラットフォーム プロセスエンジニアリングには、AutoForm正確度指標やパレートの原則に示されているとおり、幅広い分野が関与しています。これらの分野を効果的に網羅するには、組織全体にまたがるシステムを整備することが極めて重要です。このようなシステムを介して、エンジニアは3Dデザインや設計した形状を扱いながら、コミュニケーションを図ったり、ブレーンストーミングなどを通じてアイデアを生み出すことができます。このようなシステムに欠かせないのがGUIであり、3Dビューアやモデラーでコントロールするだけでなく、プロセスエンジニアリングナビゲーターなども活用します。このシステムアーキテクチャによって部門間の協力体制が強化され、包括的なエンジニアリングも可能になります。 図3. 包括的なGUIシステム デザインファイルの共有 製造のプロセスエンジニアリングに関連する3D形状の更新情報を管理するコンテナをソフトウェアシステムに組み込むことで、デジタル上で最新の情報とデザインを活用することが可能になります。誰もがあらゆるデータセットにアクセスできるため、容易に協力体制を築くことができます。またこの一元化された情報を活用することで、エンジニアはデザインを継続的に改善することができ、またプロジェクト管理者はタスク、納期、リソースを正確に管理できます。 プロジェクト管理システムにはそれぞれ独自のマイルストーンがありますが、最終的には、下流と上流の情報をすべて含むデザインファイルおよび設計した形状を使用して作業しなければなりません。すべての業務でAutoForm GUIを使用し、AutoFormデザインファイルを使用すれば、スタンドアロンのソリューションを使用し、レポートシステムやそのサマリ機能を使用してデータ情報を取得するよりも、遥かに効率的に作業を行うことができます。 デザインファイルの構造には、プロセスエンジニアリングに必要とされる機能が含まれていますが、マイルストーンごとのミーティングを簡易化できるプラグインや、必要に応じて追加できるその他のプラグイン、またはマイルストーンを拡張できるプラグインなどもあります。 デザインファイルを介したコミュニケーションに関するガイドライン 協力体制を構築する上で、活動や設計のマイルストーンを簡単に識別できるコミュニケーション標準が必要ですが、AutoFormデザインファイルにはガイドライン標準が搭載さています。エンジニアと管理者が同じ場所にいなくても、同じデザインファイルを確認しながらインスタントメッセージを通じて不具合や課題を特定し、解決策を検討できます。そのためあらゆる部門のエンジニアやマネージャーが問題に対するオーナーシップを持ち、責任をもって対応することができます。またデザインファイルを使用することで、すべてのエンジニアが簡単に連絡を取り合うこともできます。 人間の知能 将来の仕事について多くの懸念がある中、1982年にスティーブン・スピルバーグが製作・監督したSF映画『E.T.』を思い出していただきたいと思います。指で触れると出血や痛みが止まったり、自転車が街中を飛んだりする象徴的な場面に、誰もが興奮したのではないでしょうか。この映画は、新たなシステムに対して恐れを抱く場合があることを示すと同時に、新たなテクノロジがこの世界に奇跡をもたらす可能性があることを思い出させてくれます。同様に、デジタルツインはエンジニアリングに対する人間の知性に力を与えてくれるものです。エンジニアはデジタルツインを使いこなすことで、楽しみと驚きに満たされながら、最適な解決策を見つけ出すことができます。また、対比的な競争力、同時性のある納期の厳守、新たな分野の模索、プロセスチェーン全体にわたる包括性など、奇跡のエンジニアリングソリューションを実現できるようになるのです。デジタルツインの適用が進むほど、エンジニアリングからより良好な結果を得ることができるようになります。これは図4 (b) に示すように、GUIを使用することで簡単に実現できます。 (a)E.T. 映画ポスター - [熟練したスキルと適切なツールの活用がもたらす業務改善: プレス成形のフィージビリティ検討についてビル・ピットマンが説明します](https://japanforming.com/プレス成形のフィージビリティ検討/) - はじめに ビル・ピットマンはグローバルOEMの北米拠点におけるプレス成形のフィージビリティ担当マネージャーです。この職務は企業環境によって解釈が異なり、また開発段階や用途によってもタスクや目標は変化します。長年にわたりさまざまな自動車メーカーに勤務した経験を有するピットマンには、実践的な知識と確固たる基盤があります。しかしさらなる業務改善と精度向上を図るには、新たなツールの活用が必須であると考えています。本稿ではピットマンの日常業務とその職責に対する信念、そして世界各国に拠点を有する企業組織があらゆるリソースをどのように有効活用すべきかについてご紹介します。 ビル・ピットマンの担当業務 ビル・ピットマンはクレイを使ったフィージビリティ検討から製品の発売までホワイトボディ全体の製造が可能であることを担保する責任者です。スタジオで最初の意匠面が完成すると、次にフィージビリティ検討が行われます。一定の成形条件における品質目標を達成するために、まずは主だったパネルを分解してサーフェス曲率を調べます。 そしてパネルのデザインをもとにサーフェスの伸びに関する最初のシミュレーションを行います。さらには部品分割の設定や工程に着目し、それぞれの設計や隣接部品の性能を評価し、材料の使用量と工程の複雑さを考慮しながら、最も効率的で最適な部品設計を特定します。 ピットマンは設計段階において可能な限りのシミュレーションを行い、設計全体のロバスト性、効率、フィージビリティを早期から検討しています。また、たとえば後述するスキッドラインの例のように、プレス成形工程で生じうる不具合も併せて評価しています。 さらにシミュレーションを活用してブランク使用量を最適化すれば、プレス成形工程から生じる材料のスクラップも削減できます。ここで重視すべきは最適化の機会を見逃さないことです。多くの企業組織で金型や工程が開発されていますが、徹底した最適化まで行われることはあまりありません。その後、プレス工場にてブランクサイズの縮小について検討される場合もありますが、ブランクの削減量が予想を大幅に上回ることもあります。このような効率化の機会を見落とすと、想定される開発費にも影響を及ぼし、投資の判断に関わってくる場合すらあります。 ピットマンは材料の無駄を最小限に抑え、金型の数量も最低限に留めることに注力しています。これを実現するには、まず工程が安定していなければなりません。また情報を判断材料とするには、まず工程全体を包括的に理解する必要もあります。このように徹底した準備を行うことによってのみ、開発計画全体を成功へ導くための方向性が見えてくるのです。すべての部品のフィージビリティ検討が完了すると、ピットマンはまず手始めにこのデータをベンダーに提示します。これでブランクコスト、部品の性能、各部品と開発全体の適切な予算を把握することが可能になるのです。コスト、品質、タイミングの観点からも、これは開発計画の成功に大きく寄与します。 包括的なシミュレーションを行うことで、後期段階での設計変更、金型の機能不良、処理の効率低下、部品の品質低下といった諸問題のリスクを最小限に抑えることができます。自動車の開発においては「最初から正しく」取り組むことが非常に重要であり、このことは円滑な生産開始だけでなく、市場投入までの時間短縮にもつながります。ピットマンがこの職責を遂行できるのは、豊富な経験と熟練したエンジニアリングツールのスキルを持ち合わせ、また製品設計部門との有意義なコミュニケーションを図り、早期から協力体制を確立することができるからです。ピットマンは世界中どの拠点に対してもこのレベルのサポートを提供しています。この職務は米国だけでなく企業組織がグローバルに成功を収める上でも極めて重要です。この取り組みはほぼあらゆる業界で進んでいるデジタル化のトレンドに沿ったものです。 広範囲にわたるシミュレーションおよび解析のメリット ピットマンのように安定したプロセスを構築することには、どのような企業組織にも数多くのメリットがあります。メリットは個別に列挙しがちですが、その多くは強く相互関連しています。 1. コスト削減 設計段階で詳細解析を行う最大のメリットが、コスト削減です。多くの場合、金型を製作した後に部品設計の不具合が検出されますが、これを修正するには遅すぎる段階に達している場合もあります。このような設計上の欠陥については、設計段階で関連部品のシミュレーションと解析を行い、不具合や境界線の問題を特定すれば比較的容易に解決できます。一方、金型を製作してしまった後では、回収が見込めない多大なコストが発生してしまいます。 たとえば部品サーフェスの品質目標を達成するには、以下に示すように、大幅な工程と金型の修正が必要でした。ここでは品質に影響するシワを防ぐために、材料を支えるパッドを追加する必要がありました。フィージビリティ検討の段階で、しわを回避できる別のパンチ開口部を追加していれば、このような事態は避けられたはずです。しかしベンダーの金型設計にてこれが見落とされ、結果としてこのような状態で製造されました。このシミュレーションを活用した対策は、プレスのトライアル中に考案され、現場で検証されたものです。しかし最終的には想定外の機械加工や部品の発注が必要となったため、スケジュールが遅延し、追加コストが生じました。 ベンダーによるシミュレーションを観察することは、重要な成功要因です 経験の浅いシミュレーション・エンジニアが作業を行うこともあるため、正しい設定や条件を使用しているかどうかを確認する必要があります。シミュレーションの設定を誤ったまま(右下の画像)ダイを作成した例を以下に示します。適切な入力値(左下)を使用して実行すると実機の状態が再現されたため、品質目標の達成に向けた対策を検討しました。この段階では、すでに金型は作成されているため、対策は限定的なものとなります。 2. 遅すぎる設計変更を回避 設計のロバスト性がすでに検証されていると、設計の後期段階で修正が必要となることはあまりありません。修正を行う場合、その複雑さや特定に要する時間によっては、コストが生じるだけでなく時間も消費します。ある単品部品の製造のみに対策が必要な場合でも、関連する他の部品の金型に影響が出る場合もあります。また修正にかかるコストも、当初の見積もりよりも膨れ上がるかもしれません。さらには部品の組み立てや溶接が必要な場合、その金型や工程にも影響が及ぶ可能性があります。 3. トライアウト回数の削減 トライアウトループは、金銭的にも時間的にも非常にコストがかかり、総額10万ドル(約15百万円)を超えることもしばしばです。シミュレーションを行わなければ成功する保証はなく、また品質に関する判断の裏付けとなるデータもありません。シミュレーションのデータがなければ、不具合の原因を特定し解決するだけで数週間から数ヶ月かかることすらあります。実金型を使った従来のトライアンドエラーのアプローチは、今日の業界では現実的ではありません。シミュレーションを活用すれば、設計段階で不具合を特定して対処することが可能になり、部品の性能維持だけでなく、使用する金型の数も抑えることができます。その結果、品質の向上、スケジュールの短縮、工程の効率化が見込めます。シミュレーションの適切な入力値が不明で、間違っている場合でも、シミュレーションはより良い選択や対策の有効性を判断するための基礎となりえます。設計およびシミュレーションの段階であらゆる想定を徹底的に検討することで、部品設計を最終決定するまでに必要なトライアウトの回数を削減することができます。 4. 計画通りのプロジェクト進行 タイムラインの順守は、予算に次いでプロジェクトで最も重要な要素です。シミュレーションを行わないと、不具合が生じた際にタイムラインを順守できなくなります。 たとえばネジの長さを短くしたり、部位を柔らかくしたりするような設計変更が提案された場合、それが健全な提案に思えても、ダイや金型を扱う際にはその効率や危険性を考慮しなければなりません。変更がうまくいかず、前段階に戻すために金型の溶接や再加工が必要となれば、タイムラインの目標に間に合わないだけでなく、金型の完全性も損なわれます。 シミュレーションを使用すれば、部品の変更を通じてタイムラインを順守でき、開発計画の遅延や追加コストを回避することができます。このような不具合は開発計画に致命傷を与え、最終品質にも悪影響を及ぼす可能性があるため、細心の注意が必要です。 ピットマンが提唱するプレス成形における4つの落とし穴 ピットマンはプレス成形のフィージビリティ検討において回避すべき4点の過ちを挙げています。 1. シミュレーションによる(データに基づく)検証を行わずに業務を進めてしまう 2. 全体像を忘れてしまう(ある部品の変更が他の部品に及ぼす影響) 3. 十分に検討をやりきっていない条件でのトライ 4. シミュレーションをコンセプトや能力の検証のみに使用(相関性の検証は必須) まとめ ビル・ピットマンのシステムを再検証してみると、熟練したスキルと適切なツールを用いてプレス成形工程のシミュレーションや解析を行えば、多大なコスト削減が可能になるだけでなく、混乱や計画の遅延を回避することもできることがわかります。これが成功の秘訣であることは広く認識されていますが、しかしそう気軽に実行できるものでもありません。継続的な改善、そして常識を超えることを可能にするのは、会社の組織形態、最新技術の探求と活用への熱意、そして社員の高い専門性が欠かせません。これをプロジェクトで一貫して適用することができれば、成功が導かれることに間違いはありません。 作業を行うビル・ピットマン! - [高精度にこだわることで無駄なコストが生じていませんか?](https://japanforming.com/高精度にこだわり無駄なコスト発生/) - 精度に固執しすぎると、本質を見失い、コストばかり膨れ上がることになりかねません。 日常生活の中でも製品やサービスの正確さや精度が気になることがあるかと思います。精度を求めることは重要ですが、しかし精度にこだわりすぎることもまた危険です。設計工程の初期段階から「精度」を追求しすぎると、その工数が無駄なコストに転じかねません。プロジェクトの開始時や見積もりの手法を検討する段階では、多くの場合、正確さを求めるまでの時間の余裕はありません。これは小数点以下第4位まで測定したり、精密な仕様書を作成したり、制限のある寸法精度を厳守しなければならないエンジニアには受け入れがたいことかもしれません。しかし精度を極めるには、現実的でなければなりません。要件を正確に満たすことは、たとえばパズルの1片をはめることにしかすぎません。達成すべき最終目標は製品やサービスの精度ではなく、その販売を成功させることなのです。 なによりも重要なのは、早期段階において適時的確な技術的判断がくだせることです。そうすれば設計工程には高い生産性と精度の結果が伴ってきます。 本稿では金型形状の作成を例にご説明します。これはシミュレーションで使う金型サーフェスを定義する際に必要となるサーフェスやカーブなどを含みます。ここで触れる「精度」には複数の意味があります。まず最も重要なのが、サーフェスとトポロジが正しい位置と姿勢であることです。次に、サーフェス間の接続がしきい値に収まるように調整しなければなりません。しかし開発のこの段階では、サーフェス接続の精度は重視すべきことではないため後述します。 図1: 新規部品デザインの成形性 ある部品の生産工程を設計する新規プロジェクトを例にご説明します。過去にも同様のプロジェクトがあったものの、いくつか相違する点があり、そこから生産時に不具合が生じる可能性があることは明らかでした。最終目標は高品質な部品を生産することです。しかし不具合が懸念され、また安定した生産も担保できない中では、設計に多大な工数をかける前に、まずは不具合対策を検討する必要があります。ここでは「精度」を重視することなく、さまざまな工程や金型形状を素早く検討することで、正しく解析を実行できるようにしなければなりません。 後期段階で大幅な変更が生じることがないよう、早期からロバスト性を評価する必要があります。そのため一般的なCADソフトウェアではなく、初期シミュレーション結果を設計の判断材料として役立てます。たとえば、図1で示すように部品が大きく変わったことで、1回の絞りから生じる大きなわれは、工程間の微調整では不具合を解決できないことがわかります。特定の領域で予想されるわれは、生産時に同様のモデルから生じている不具合の範囲と一致しています。 当初の案では材料をより均等に延伸させるために予絞りの設計および設定を行い、2次成形で最終形状に成形する予定でした。しかしスプリングバックの改善、しわ、ブランクの利用率を評価していないので、この時点ではどの程度まで材料を延伸するかは推測するしかありません。ただしこれを検証するのみの目的において、機械加工ができる品質のサーフェスを作成し、何時間もかけてCADで複数のデザインを作成して比較する必要はありません。必要なのは、この工程変更の概念実証(POC)のみです。精度はそれが必要とされる場合には重視すべきですが、この状況で考慮すべきは精度ではなく、目の前にあるサーフェスを修正することです。 ではその手段を探ってゆきましょう。 図2: 調査のための柔軟な構造を設定する手順 この工程の説明を図2に示します。サーフェス上でモーフィング機能を使用し、数本のカーブ(①と②)で調整すると、初回ドローの概念に応じた結果を迅速に作成できます。これでCADを使用したサーフェス作成前にその効果を検証できます。図2の③では修正に対して範囲を指定すると、複数のシミュレーション結果が自動計算され、ソリューションをさらに最適化することができます。 図 3: 成形性 – われの解消 図3を見ると、この手段は有効ではあるものの、まだ目標条件には達していません。不具合を改善しただけです。しわ、スプリングバック、ブランクの利用率など、他の基準も評価する必要があります。 この時点では、他の品質基準を評価しながら形状の自動最適化が行われるソフトウェアツールを活用するのが最善でしょう。体系的な工程改善の手段については、JapanForming.comにロバスト性や工程最適化に関する記事が多数投稿されています。 業務目標を達成する上で、「精度」や「品質」が必ずしも重視すべきものであるとは限らないことを忘れてはなりません。その目的やレベルに応じてツールを効果的にお使いください。 この事例はシンプルすぎると思いますか?工程設計者としての業務が過小評価されたとお感じですか?プレス成形は多岐にわたる物理学や工学の分野が関与する複雑なシステムです。オートフォーム社はすべての分野を知り尽くした達人ではないかもしれませんが、しかし経験を活かし、ツールを有効活用することで、業務を成し遂げる手段については熟知しています。この事例は開発工程に新しい手法やソフトウェアツールを導入することで潜在的な価値を引き出すことができることを示す一例にすぎません。 このトピックについて皆さんのご意見をお聞かせください。AutoForm-ServiceCenterでは、たとえばモーフィング機能について、ご紹介した手法の適用例について段階を追った形態でご覧いただけます。また、技術サポートやセールスに関するお問い合わせについては、オートフォーム社日本オフィスまでお気軽にお問い合わせください。 - [航空宇宙サプライヤのLAUAK社、ブランクサイズ縮小からトライアウト時間短縮まで工程の削減を実現](https://japanforming.com/ブランクサイズ縮小からトライアウト時間短縮/) - 本稿ではLAUAK社技術サービス部門責任者であるJeremy Pion氏が、製品設計や工程設計におけるシミュレーションの重要性について、また工程に対する理解を深め大幅なコスト削減を実現する上で、シミュレーションをどのように活用したか説明します。 LAUAKグループは、エアバス社、ダッソー・アビエーション社、スピリット社、ボンバルディア社、リーヘル社などの大手航空機メーカーやOEMのTire1およびTire2サプライヤです。フランス南西部ハスパレンに本社を置き、従業員450名ならびに世界10ヶ所の生産拠点(フランス5ヶ所、ポルトガル2ヶ所、メキシコ1ヶ所、カナダ1ヶ所、インド1ヶ所)を有しています。同社の事業活動は、板金の成形と微調整、機械加工、組立、配管、機械溶接など多岐にわたります。 2020年にAutoFormを導入して以来、LAUAKグループ全体でシミュレーション解析の実施を進めてきました。特に金型の責任者でAutoFormシミュレーションのメインユーザーでもあるThierry Otharan氏および工業化を統括するDaniel Elisseiry氏が中心となりシミュレーションを推進してきました。そのおかげで今日ではシミュレーションの積極活用がすすみ、大きな恩恵を受けることができています。 LAUAK社で対応しているラバー、フレックスフォーミング、熱間プレス成形、超塑性成形など、さまざまなプレス技術にはそれぞれ独自の仕様と金型タイプがあります。デジタル化を通じて実機の状態通りにシミュレーションを行い、あらうる工程の比較評価を行うことで、最適な技術的ソリューションを選択することが可能になります。 あるときお客様から材料の置換と工程の修正について相談を受けました。工程の半ばに切断工程を伴う6つの工程から、最後にレーザー切断を行う5つの工程へと簡易化することを希望していたのです。このようにさまざまな修正が絡み合う場合、最適なソリューションを特定するには通常数年を要します。しかし4通りの工程を評価し、シミュレーションを活用しながら詳細に検討することで、最適な工程を迅速に特定することができました。これはAutoFormがなければ不可能でした。 また別のお客様からは部品製造に冷間プレス成形を用いることをリクエストされました。しかしシミュレーションの結果から熱間プレス成形がより適していることが判明しました。図1が示すとおり、冷間プレス成形では工程終了時に多くのしわや形状不具合が生じます。 図 1: 冷間プレス成形から生じるしわおよび形状不具合 シミュレーションの結果、熱間プレス成形工程を活用すればしわが生じず、また部品が公差に収まることも確認されました(図2)。このソリューションをお客様に説明する際には、シミュレーション結果を提示することでコミュニケーションを円滑に図ることができました。 図2: 熱間プレス成形でしわが生じることなく公差に収まる部品を製造 LAUAK社では早期開発段階からお客様をサポートします。お客様の製品設計部と緊密に協力することで、部品が仕様を満たすだけなく製造可能であることも担保し、ひいてはプロジェク全体のコストも削減できます。 最近では2つの部品をそれぞれプレス成形し、それらを溶接して1つの部品としていたお客様に部品統合を提案しました。いまでは溶接工程が省かれ、1つのブランクで単品部品として生産されています。 また別の部品では、安価な曲げ加工と比較的高価ですが安定した生産が見込める絞り加工のどちらを用いるか、検討が行われました(図3)。 図 3:部品生産に用いる工程の選択 (プレス成形または曲げ加工) シミュレーションの結果、どちらの工程からも同等の結果が得られたため、よりシンプルでコストが低い曲げ加工を迷いなく採用できました。さらには金型のコストを抑え、材料使用料も大幅に改善することで、部品コストの削減も実現できました。 よく言われるように、デジタルエンジニアリングに工数を費やすことは、トライアウトの時間やコストの削減につながります。LAUAK社では大きな収益を確保すべく、トライアウトの時間削減を特に重視しています。 エンジンインジェクタ部品(図4)を例にとると、以前は適正なブランク形状を特定するために、実機でおおよそ10回ほどのトライアウトが必要でした。しかしあるお客様の製造現場で生産している部品のブランクサイズ縮小を取り組んだところ、わずか数分で適正なブランク形状を特定できたのです。このようなワークフローに従い今年着手した4つの部品では、部品1個あたり平均40時間の削減に成功しました。 図4:(上)部品とブランキング金型。 (下)シミュレーション結果とトライアウトで事前に特定したブランクを比較(緑が初期CADライン) AutoFormを活用して数分で特定した黄色のラインと、トライアウト担当者が10時間かけて特定した赤色のライン 定期生産している部品では、手作業による微調整を3時間から20分に短縮できました。機械加工に先立ちシミュレーションで検討することで金型の品質が向上し、時間を大幅に削減できたのです。併せてコストも削減されるため、入札を有利に進めることができます。つまりシミュレーションを活用することで、すべての関係者にメリットがもたらされます。 図 5: 生産量が多い部品のタッチアップ時間の削減 LAUAK社では社内方針として変革を重んじています。競争力を維持するには、デジタル化を推進し、それを積極活用しなければなりません。市場の要求がますます高まる中、技術面で最も効果的なソリューションを最初に提案できる企業こそが、競合で優位に立つことができるのです。 - [50%に達する不良品率で破綻したチューブ部品製造: 遅すぎたロバスト性解析](https://japanforming.com/50%に達する不良品率で破綻したチューブ部品製造/) - 顧客離れこそが最も痛手となる教訓です 最近あるお客様から2年間も不具合対策に苦慮しているというチューブ部品ついて相談を受けました。そのサプライヤはOEMに部品を供給していますが、その苦境については以下の写真がすべてを物語っています。問題となっていたのはリアアスクルのサイドメンバーの金型でした。 このプロジェクトは2019年に始動し、同年に最初のシミュレーションも実施しています。サプライヤ(以下「プレス工場」と称します)は当時AutoFormとは別のシミュレーションソフトウェアを使用していましたが、そこで設計変更の必要性は示されませんでした。しかし生産が始まると最悪の事態に直面することとなり、さまざまな回避策が試みられました。 ロバスト性解析を活用することでいかに数百万ドル(約1億5千万円)のコストを回避できるか、そしていかに製造ラインの安定した稼働を担保できるかという観点から本事例をお届けします。 プロジェクトとその問題点 最初のシミュレーション実施後に量産開始となり、2020年初頭には初めて部品が生産されました。この生産工程は、曲げ加工、予備プレス成形、ハイドロフォーミングの3工程となっています。 まずストレートのチューブに4つの曲げ加工を施し、自転車のハンドルバーのような形状にします。次の予備成形では、金型でプレスします。そして最後のハイドロフォーミングにて、チューブ断面形状を変形させます。 初回生産後、左右両側にわれが確認されました。さらに調査を進めると、不良品率は50%を超えることが判明したのです。これはもちろんコストに大きく影響します。絶望的な状況でした。 部品の不具合対策 残念ながら、トライアウト部門および生産部門の担当者たちは、この不具合への対策を検討するにあたり、シミュレーションを積極活用することはありませんでした。むしろこれまでのトライアウトの経験をもとに、金型を手作業で修正することを選んだのです。そこで試された対策は以下の通りです。 各種工程パラメータの手作業による調整 ビニールシートの使用 コンサルテーション 1. 各種工程パラメータの手作業による調整 まず工程パラメータを調整することで最終部品に変化をもたらす対策が試みられました。 曲げ角度を段階的に上げてゆきましたが効果は確認できず、面圧を調整しても、しわとわれを相殺することができませんでした。参考になる修正基準がなかったためです。シミュレーションによる解析結果のように確実な指針が示されない中、トライアウトは手探りで進める他はなく、面圧、潤滑、表面処理、チューブの長さや厚さ、直径など、さまざまな値の調整を試みなければなりませんでした。このようなトライアンドエラーで事態を打開することはできず、修正回数を重ねても不具合は解消されません。むしろ悪化の一途をたどるばかりでした。 2. ビニールシートの使用 試作品の製造時には、材料流入や摩擦を低減するためにビニールシートを使用する場合があります。ビニールシートで材料の流れを促すことで、われなどの不具合を抑制できるのです。しかしこれには膨大な時間とコストがかかるため、量産には適していません。 不良品率を抑制すべく、このビニールシートをプレス工場で試してみました。するとある程度の成果が確認されたため、量産工程にビニールシートを追加することを決めました。 しかしその結果、時間やコストが大幅に増加しただけでなく、生産量までもが減少したのです。残念ながら、この対策は量産には適しておらず、不良品率は依然として50%に達する勢いでした。 このような損失や追加経費を考慮すると、プレス工場ではこの想定外のコストを顧客であるOEMに転嫁せざるを得ず、最終的には部品価格の引き上げという形をとることになりました。 当面の間、生産は続行しましたが、このことが顧客との関係悪化を招いたのです。 3. コンサルテーション 万策が尽きたプレス工場では、プレス成形シミュレーションを専門に扱うオートフォーム社に相談を持ちかけました。そこで必要なデータをすべて収集し、ロバスト性解析を行うことになりました。そこでは、AutoFormソフトウェアを用いたシミュレーションの結果は当初のシミュレーション結果とは異なり、製造された部品のしわやわれの傾向と一致したのです。 初期の調査結果とAutoFormシミュレーションを用いた検討結果の違いは、フィージビリティの結果が的を得たものであっただけでなく、後者の解析では工程パラメータのばらつきを考慮していたことにあります。従来のシミュレーションソフトウェアでは、それぞれのパラメータに1つの値しか設定することができません。つまり1つの材料特性値のみを設定してシミュレーションを実行すると、潤滑や面圧などの特定の値のみに目を向け、自然なばらつきが考慮されることはありません。これが50%にのぼる不良品率を抑制することができなかった一因であると考えられます。 まとめ AutoFormシミュレーション結果はプレス工場の担当部署に提示され、再現された不具合の規模や位置が実部品と一致していることが確認されました。 このプレス工場では2年にわたりチューブ部品のわれを解消すべく、さまざまな対策を試みましたが、その間、実質的な解決策がないまま、顧客に納品しようとしていたのです。手作業による「裏技」も役に立ちませんでした。 後日判明したことですが、顧客のOEMでは同部品の生産を別のサプライヤに発注していました。不具合対策に苦慮していたプレス工場では、このOEMから今後の案件もすべて失う危機に瀕していたのです。 もしプレス工場が、プロジェクトの初期段階から部品のロバスト性解析を行っていれば、このような事態は避けられたはずです。当初からプレス工場で実現可能でロバストな設計を行うことで、適正な価格で欠陥のない部品を納品することができるようになります。 - [プレス加工会社がトライアウト時間を3分の1に短縮:インディアスチールサミット社の成功事例](https://japanforming.com/プレス加工会社がトライアウト時間を3分の1に短縮/) - はじめに インドのグレーターノイダを拠点とする金型メーカー、インディアスチールサミット(ISS)社の事例をご紹介します。同社は高品質なプレス金型の製造において定評がある全国的に著名な企業です。本稿では、デジタルのスプリングバック見込み補正を導入したことをきっかけに、設計と開発のプロセスが大幅に効率化された事例をご紹介します。 課題と初期解決策 ISS社では、多くの材料から多岐にわたる部品を製造していましたが、高強度鋼板(HSS)の使用は限られていました。しかし国全体の安全規制が厳格化するにつれ、同社には顧客から高強度鋼板での加工を希望する声が寄せられるようになりました。 ISS社では当初AutoFormソフトウェアをフィージビリティ解析にのみ使用していました。つまりスプリングバック見込み補正はトライアウトの段階にて、経験を頼りに、実物の金型を手作業で調整していたのです。しかし高強度鋼板に関する経験値が不足していたため、スプリングバック見込み補正に問題が生じ始めました。高強度鋼板は軟鋼とは反応が異なるため、高強度鋼板のスプリングバックを手作業で調整する場合、軟鋼と同様には扱えないことが判明したのです。またこの作業はプロセスが確立しておらず、不安定でした。そのためスプリングバック見込み補正の作業では、トライアウト担当者は新たな戦略を試みながら、金型を何度も切削し直す作業に追われていました。また品質仕様を満たすには、トライアウトの回数追加と時間延長が必要でした。高強度鋼板の部品には18~20回もの設計修正が行われましたが、高強度鋼板への対応が明確に示されない中、手作業によるスプリングバック見込み補正には膨大な時間を消費せざるを得ず、混乱を招きました。この状況を打開しようと、ISS社では設計の最適化をより迅速に行うための方策について、検討を始めました。そして高品質な金型の迅速な製造と、安定した部品生産について豊富なノウハウを有しているオートフォーム社に白羽の矢が立ちました。 AutoFormソリューション ISS社では高強度鋼板を使用した部品の新規プロジェクトにAutoFormソフトウェアを活用し、デジタルスプリングバック見込み補正の手法を評価しました。 図1: 高強度鋼材部品 ISS社ではエンジニアリング段階からさまざまなスプリングバック見込み補正戦略の有効性を評価できる全く新たなツール、AutoForm-Compensatorを導入し、活用を始めました。 図2: エンジニアリング段階で試行した多くのスプリング見込み補正戦略 エンジニアリング中に安定性を図るロバスト性分析を行うことで、結果の再現性を確保しながら、望ましい部品精度を実現する戦略を決定しました。 図3: スプリング見込み補正戦略 Springback: 図 4: スプリングバック公差に収まった結果 Springback Results 図5a: スプリングバックのばらつきも公差に収まっています Springback Variation 図5b: スプリングバックに対するノイズパラメータの影響 AutoForm-Compensatorを活用し、スプリングバックの見込み補正だけでなく、エンジニアリングにて2工程目以降の金型にドローシェルを行い、シートの担ぎやパッド成形による不具合を回避しました。 図6: ドローシェルを活用したスプリングバック見込み補正戦略 図7: 位置決め中の下型からの接触距離 スプリングバック見込み補正をデジタル化することで、トライアウトで実物の金型を調整する前に、エンジニアリングの段階で事前に検討作業を行うことができるようになりました。実際のトライアウトでは何日もかかるトライアンドエラーの作業が、シミュレーションではほんの数時間で完了します。従来の手法ではトライアウトに18~20回を要していましたが、AutoForm-Compensatorで検討したデータに従って金型を切削することで、わずか6回で部品の品質目標を満たすことができました。これは新規部品の開発時間における3分の2の削減に相当します。トライアウトの回数を削減できたことで、金型品質を長期に担保できる利点も生じます。このように高強度鋼板部品の設計・製造工程を飛躍的に効率化できたことで、納期に応じて高品質な金型を製造することが可能になり、ISS社の評判も高まりました。また新たに導入されたスプリングバック見込み補正をデジタルで検討する手法も、高強度鋼板部品の金型製造に関する専門性の強化に貢献しています。 利点 ISS社ではスプリングバック見込み補正など、トライアウトで行う業務をエンジニアリング段階で事前検討することに明確な利点を見出しました。以来同社ではデジタルツールを活用してスプリングバック見込み補正を行うことを、社内標準として推奨しています。工程開発をエンジニアリング段階に移行することで、トライアウトの回数が削減されるため、大幅な時間短縮を実現できます。この事例ではトライアウトの回数が20回から6回まで削減され、工程評価に費やす時間が数ヶ月から数週間へ短縮されました。また別の部品においては、わずか3回のトライアウトのみで、最適な結果を得ることができました。これはデジタル化を通じた作業効率化が一過性のものではなく、汎用的に適用できることを示しています。 まとめ 本稿で紹介した事例では、デジタルシミュレーションを活用して道筋を立てることで、むやみにトライアンドエラーを行う必要がなくなることを示唆しています。トライアウトで試行錯誤を重ねるよりも、シミュレーションで問題点を解消する方がはるかに効率的に作業できます。またシミュレーションを活用すれば不具合の可能性を初期段階で解消できるため、エンジニアリング担当者とトライアウト担当者の間で何度も修正を行う必要がなくなります。反対にトライアウト担当者は、最初から実現可能で形になるデザインを受け取ることができるのです。しかしシミュレーションを活用する際の注意点として、ユーザーはシミュレーションの設定およびパラメーター入力を正確に行うことによってのみ、有意義な結果を得ることができます。つまり設定には実際の数値をできるだけ忠実に反映させる必要があります。無作為に数値を入力しても、信頼できる結果を得ることはできません。また、ロバスト性分析を実施し、工程の安定性を確認することも重要です。これによってトライアウト中に生じる不具合を最小限に抑え、また生産における不良品率も抑制できます。工程が安定していると、戦略の策定も容易になります。実際のシートが示す挙動に関してあらゆる可能性を予測し、それに応じた対策を立てることができます。ロバスト性は見込み補正を適切に行うための重要な布石となるのです。 インディアスチールサミット社より Satvir Bhati氏(左)、Gaurav Panwar氏(右) - [電気自動車の普及における鉄鋼の役割: チャンスと課題](https://japanforming.com/電気自動車の普及における鉄鋼の役割/) - 自動車産業が電気自動車(EV)へと大きくシフトする中、さまざまな分野で変化が生じ、同時にチャンスが訪れています。そのひとつが、数十年にわたり自動車産業において極めて重要な役割を担ってきた鉄鋼です。EVの普及が進む中、基礎研究・教育機関であるAuto/Steel Partnershipは、EVのバッテリー筐体に先進高強度鋼(AHSS)を使用すべく調査を進めています。本稿では、進化を続ける鉄鋼の役割と持続可能性への寄与、そしてこの変革の時代に求められる企業の成功戦略について概説します。 電気自動車への移行 EVの急成長は自動車業界にパラダイムシフトをもたらしています。自動車メーカーでは二酸化炭素排出量の削減と持続可能性の向上を重視し、内燃エンジン(ICE)から電動パワートレインへの移行を進めています。このシフトに伴い、EVの性能と効率を最適化すべく新たな材料と技術の開発が急務となっています。 先進高強度鋼とバッテリー筐体 EVの普及に伴い、その安全性と効率を担保する上で、軽量でありながら高強度な材料へのニーズが高まっています。そこで高い関心を集めているのが先進高強度鋼です。長年にわたり、鉄鋼は軟鋼から、高強度かつ成形性を向上させた先進高強度鋼へと進化してきました。このような新しい鋼種は優れた強度対重量比を有するため、EVのバッテリー筐体などの用途に向いています。先進高強度鋼を用いることで重量を最小限までそぎ落としつつも構造の最適化を最大限に高め、バッテリーを効果的に保護することができます。 脱炭素化と持続可能性に向けた鉄鋼の進化 鉄鋼業界では自動車業界と共に脱炭素化と持続可能性への取り組みを積極的に進めています。鉄鋼メーカーでは、電気アーク炉や水素を利用した製鋼など、より環境に優しい生産プロセスを採用することで、二酸化炭素排出量の削減に寄与しています。また鉄鋼は品質を損なうことなくリサイクルできるため、持続可能性が非常に高い材料です。このような進化を通じて、鉄鋼は低炭素化社会の実現という目標に大きく貢献します。 変化する情勢に応じた成功戦略 このような変革期においては、鉄鋼業界や自動車業界にて事業成功を見据えた戦略を立てることが極めて重要です。 (a) 判断材料の把握:持続可能性の目標、コスト効率、法規制への対応など、この変革期に考慮すべき判断材料を把握する必要があります。 (b) 基本原則の重視: 変革の渦中にあっても、品質、信頼性、費用対効果といった基本原則を重視することが長期的な成功を収める上で重要です。 (c) 革新技術の活用: 革新的な技術、材料、生産プロセスを取り入れることで、企業の競争力が高まります。EV時代の需要に対応するにはAHSSやその他の先進材料の研究開発が欠かせません。その一例が、世界鉄鋼協会の自動車部会WorldAutoSteelのSteel E-Motiveプログラムです。エンジニアリング協力会社であるリカルド社と共同開発したSteel E-Motiveのバッテリー筐体は、ベンチマークと比較して質量を37%削減しつつも保護性能が優れている電池パックであり、まさにインテリジェントなアプローチと言えます。 (d) パートナーシップの構築: 複雑な課題に取り組むには自動車メーカー、鉄鋼メーカー、その他の関係企業による協力体制が不可欠です。パートナーシップを構築することで、知識の共有や共同研究が進み、技術進歩が促進されるのです。Auto/Steel Partnershipでは関係各社から担当者が集まり、総力を結集して基礎研究に取り組むことで研究予算の拡大を図っています。またオートフォーム社のように業界に精通したエキスパートもさまざまな側面から協力を行っています。最近では、A/SPとオートフォーム社が協力して、材料構成データがプレスの荷重の予測精度にどのように影響するかを解明しました。この研究を通じて製造プロセスにて消費されるエネルギーの削減を図ることができます。2023年5月には、Great Designs in Steelにおいて、A/SPを代表してMartinreaのVince Milliotoがこの研究の一部を発表しました。オートフォーム社とは今後もさまざまな共同研究が予定されています。 (e) 当事者としての責任: 自動車産業では、ドライバーや同乗者への配慮を最優先に安全性の向上を図ってきました。同様に、二酸化炭素排出量の削減の取り組みにおいても、鉄鋼業界と自動車業界は環境問題や次世代への影響を考慮し、当事者としての責任をもって持続可能性に対する取り組みを進める必要があります。 まとめ: EVへの移行は、鉄鋼業界と自動車業界に課題と機会の両方をもたらします。自動車メーカーがEVの普及と共に、バッテリーの筐体に先進高強度鋼の採用が進んでいます。鉄鋼業界は、製品の強度と成形性を高めることで、持続可能性の目標達成に取り組んでいます。この変革期に成功する企業は、判断材料を把握し、基礎研究を重視し、革新技術を取り入れ、協力体制を構築し、持続可能性に対して当事者としての責任を全うすることが重要です。これらの戦略を取り入れることで、持続可能な低炭素自動車の発展に寄与することができます。 Auto/Steel Partnership: 研究開発の促進と協力体制の構築 Auto/Steel Partnershipは、自動車メーカーと鉄鋼メーカーが協力体制を構築するためのプラットフォームです。各団体がそれぞれの専門性を提供し、基礎研究や教育を通じて共通の課題に取り組み、新たな可能性を模索します。このパートナーシップを通じて進化する情勢を総合的に分析し、新たな機会を開拓してゆくことが重要です。 詳細については www.a-sp.orgをご覧ください。 著者について Michael Davenport ・Executive Director, Auto/Steel Partnership - [ステランティスブラジル社、サプライヤー管理にシミュレーションを活用し、工程計画への投資と部品コストの大幅削減を達成](https://japanforming.com/ステランティスブラジルのコスト削減/) - 企業のエンジニアリングプロセスにシミュレーションのようなリソースを導入する際の大きな課題として、投資の妥当性を示し、またリターンをどのように計算するかということが挙げられます。これは、たとえば毎分のストローク数からリターンを計算できるプレス機などの設備投資のように、それほど単純に測定できるものではありません。シミュレーションソフトウェアのような技術リソースの場合、着目すべきは利益ではなくどれだけコストを削減できるかという点であるため、既成概念にとらわれない思考が必要です。つまりリターンは利益ではなく、コスト削減をベースに計算することが求められます。 近年ではシミュレーションソフトウェアが工程計画に精通したエキスパートに取って代わるのではないかという懸念がありますが、そのようなことはありません。ソフトウェアは、熟練した経験豊富な「操縦者」の手にかかってこそ、さまざまな面で優れた結果をもたらすことができる強力なツールと考えるべきです。 このようなリソースは、ユーザーが実際に業務で活用できるだけでなく、後述するとおり、企業にとっても投資に対するリターンを迅速に得ることができるメリットがあります。 シミュレーションソフトウェアの活用によるコスト削減を評価する方法はいくつかありますが、たとえば予算計画の時間短縮と精度向上から図ることができます。一般論として、自動車メーカーには新たなプロジェクト(車両)に必要なすべての部品を社内で開発・製造できるだけの設備能力がありません。そのため多くの部品は社外で製作され、自動車メーカーが構築するサプライチェーンに組み込まれた取引先が開発を担うことになります。この段階でサプライヤーは大量の見積もりを短期間かつ正確に作成しなければなりません。競合優位性を維持するには十分に「低い」予算を算出する必要がありますが、同時に将来的な部品の納入時に損失が出ないように十分に「高い」予算を確保する必要もあります。 またそれとは別に、金型開発における時間短縮とコスト削減という評価方法もあります。設計者は工程を最適化することで、トライアウトや製造における変更や修正を減らすことができます。工程の改善を通じて、コストと製造に直接影響する原材料(ブランク)の消費も削減できるだけでなく、工程の安定性を高めることで製造時の不良品率も抑えることができます。またプロジェクトの早期段階で不具合を検出できるため、隣接する部品やアセンブリに大きな影響を与えることなく、あるいは金型が完成する前であっても、柔軟に変更することが可能です。 ブラジルのミナスジェライス州ベティムにあるステランティスグループ製品開発部門に所属するエンジニアリングアナリストのフランシスコ・ドス・レイス・ノゲイラ・ジュニア氏は、製品開発段階におけるシミュレーションの導入についての興味深い3つの事例を本稿にて紹介し、これがいかに同部門のシミュレーション機能強化に大きく貢献したかを示しています。 図1: 事例1 図1に示す事例では、製品技術部ではサプライヤーから電話があり、製品を設計通りに製造することができないため、製品を2つの部品に分割して製造した後にそれらを接合することが可能であるか、問い合わせを受けました。 当初、このような変更について判断できるだけの十分な技術的論拠がなかったため、フランシスコは別の担当者とシミュレーションで部品の成形性を評価することにしました。 その結果、これは単品部品として製造可能であることが判明しました。この分析を根拠に元の工程を採用し、サプライヤーが提案した工程と比較して部品コストは39%、工程コストは約42%(装置、金型、床面積など)を削減できました。 別の事例では、製品の変更依頼を受けたサプライヤーから、製造を実行するにはブランクサイズを大きくする必要があるという評価を受け取りました。フランシスコはシミュレーションを活用して工程を検証し、ブランクサイズを大きくする必要がないことを証明しました。つまり原材料の消費を抑えることで、0.63BRL(約19円)の追加コストを回避できたのです。 本稿で紹介する最後の事例は、図2に示した領域で切断作業中に不具合(クラック)が発生した製品について、技術部が行った調査についてです。この不具合を解消して品質を保証するには、この領域でレーザー切断を行う必要があるため、この工程で追加コストが生じることになります。しかしシミュレーションを使用して仮想上で不具合を検討し、切断ラインを変更するという解決策を見出しました。 図2: (左) タブ付き素材の破裂テスト (右) 分析による実際のサポート 以上3つの事例から、製品技術部では工程計画で約200万BRL(約6千万円)、部品の生産に関連するコストで年間100万BRL(約3千万円)以上の削減を達成しました。個々の事例では、シミュレーションソフトウェアへの投資額を大幅に上回る削減を達成しています。 上記のような状況に直面すると、実際には工数や技術的な根拠を持つ情報が不足しているため、議論は憶測の範疇となり、また意思決定も非常に難しくなります。その結果、的確で効果的な決断を下すことが困難となり、ますます運任せとなるのです。 冒頭で述べたように、シミュレーションソフトウェアの投資対効果の計算は難題であり、従来の算出方法は通用しません。シミュレーションソフトウェアは、具体的な結果を生成するわけでも、値札を付けて棚に並べることができる製品を提供するわけでもありません。シミュレーションソフトウェアを活用することで、開発、製造、生産の各段階で工程を改善し、コスト削減を達成することができるのです。経済学者の視点を考慮すると、もはや投資に支払う額は利益として受け取る額と同等ではありません。つまり、ここで述べた3,000,000BRL(約91,000,000円)は、ステランティスグループのキャッシュフローにおける利益と捉えることが肝要です。 著者について エドソン・ロドリゲス・ドス・サントス・ジュニア - パウリスタ大学機械工学科卒業、冶金工学(PMT-USP-監査学生)、切削・曲げ・絞り金型設計(Escola Pro-Tec)専門。機械的変形、板金プレスによる製造工程部門にて12年の実務経験を持ち、過去2年間はBiWアセンブリ部門に従事。現在、オートフォームブラジル社のセールスエンジニアとして、リーン生産方式とデジタルプロセスツインを用いたプレス成形とBiWによる製造工程の新しいグローバルシミュレーション技術の導入において、ブラジルの金属加工業界に貢献。 連絡先: edson.rodrigues@autoform.com.br フランシスコ・ドス・レイス・ノゲイラ・ジュニア - ステランティスラテンアメリカ社にてエンジニアリングアナリストとして10年以上従事。機械設計者、プロジェクト・コーディネーター、プレス成形、溶接、GD&Tのスペシャリストとして製品開発分野に25年以上従事。 連絡先: reisnogueira1978@gmail.com - [AutoForm-Sigmaが不足するリソースを担う](https://japanforming.com/autoform-sigmaが不足するリソースを担う/) - 近年、フロントローディングという概念と共に、バーチャルでいかに早く・安く・正確に“ものづくり“を行っていくかが、重要視されています。現在、オートフォームが関わるプレス成形シミュレーションは、型製作補助ツールから、必要不可欠かつ高度な精度を要求されるツールになっています。 同時に、シミュレーションを含む、DX、デジタル試作、Industrial 4.0、モデル・ベース・デザイン、IoT等のデジタル化やデジタル・ツールの進化も、開発業務に要求されています。 しかしながら、自動車業界の課題は、デジタル化だけではなく、開発サイクルの短縮、環境と安全基準、CASE開発などのリソース増加、人材不足、コロナ対策などによる業務形態の変化が発生しました。そのため、今までの作業形態では、簡単に対応・解決できなくなっています。 成形シミュレーションは、従来のエンジニアリング業務の品質を向上させるだけでなく、他の課題も解消できるツールとしての可能性があるかもしれません。リソース不足、特に深刻な人材不足問題に対するソリューションとして、AutoForm-Sigmaのポテンシャルを探ります。 【現状】 ものづくりにおいて、物理的な問題に関わるコストと時間は、共通な課題です。そのため、バーチャルによるエンジニアリングの解決は当たり前となり、シミュレーションはもはや必須業務・必須情報になっています。 一方で、シミュレーションのリソース(経済的や設備、使用者等)問題も存在しています。特に、使用者に至っては、経済的・設備問題が解決しても、対応できるエンジニアの確保が、大きな課題となっています。その課題は、オペレーター不足から検討・評価可能人員まで広範囲にわたります。 一般的に、シミュレーションというエンジニアリング(初期検討)業務は、開発車種がデータ化された時点でスタートします。この場合、設計データへの関与は、Feasibility Study業務とその結果のFeedbackが主となります。 図1 一般的な作業の流れ 図1(一般的な作業の流れ)を例に考察します。エンジニアリング工数は、フロントローディングが成功すればするほど、作業工数は拡大しますが、工場における問題は削減できます。しかしその削減工数を、エンジニアリング部門へ移行されるケースは少ないです。理由として、必要以上の工数が存在していたこと、ならびに改善工数もいまだ存在しているからです。またシミュレーション技術が飛躍すると、期待・課題・要求も高くなります。かつ新規開発車種における、コスト低減や日程削減も必然です。しかしながら、その要求に応えるリソースは、現状維持以上は見込めないことが多いです。シミュレーションの側面では、解析時間が進歩することで、数多くの解析が可能になります。以前は、解析時間を、結果の評価やレポート、ならびに形状変更依頼等の作成時間に充てていました。しかしながら、解析時間の短縮が、その時間を奪うことになります。さらにEVモデルの同時開発もあって、検討部品数は増加傾向にあります。同じ期間内に、検討部品数が増加した場合、現行のリソースでは無理が生じます。 図2(シミュレーション作業スタイル事例)は一般的なシミュレーション業務スタイルを示します。ここで、実際の作業を考えてみました。複数部品の検討がある場合、注力が必要な部品としない部品に分ける事が出来きます。同時に工数や負荷を考慮し、外注するかも検討することになります。その際、現設備や現エンジニア数を含めた環境も考慮しなければなりません。 図2 シミュレーション作業スタイル事例 エンジニアリング作業を強化するために、お金を厭わず、設備と即戦力の人材を確保できれば理想であります。しかしそこにリソース不足が存在します。そこでAutoForm-Sigmaを運用して最高の状態を構築してみるました。 【提案】 図2に対し、必要なリソースを満たす状態を図3(#3 エンジニア+シングルシミュレーション)、ソフトウエアAutoForm-Sigmaのみの追加を図4(#4 AutoForm-Sigma)とし、不足分のリソースを担うことができるかを考察します。 AutoForm-Sigmaは大きく分けて2つの運用法があります。(商品の詳細説明は割愛) 1.分析的な工程改善:工程ならびに設計パラメータに幅を持たせる事で、 分析的に工程を改善。 2.ロバスト解析:生産中に制御できない因子による影響を可視化。 このシミュレーション機能は、定義したパラメータ範囲を網羅するために多数の計算を実施します。その結果から分析的に解決、もしくは起こりうる状況を計算数以上の情報として提供してくれます。そのため、通常のシミュレーションと比べると、全体の計算時間はかかります(シングルシミュレーションの結果含む)。この計算時間は、一部の繰り返し作業を代替するもので、担当者のエンジニアリング作業と並行して実施することができます。 図3 #3 エンジニア+シングルシミュレーション 図4 #4 AutoForm-Sigma 【期待される効果】 上記内容を表1(#3と#4の期待される効果とコストの簡易比較)で確認すると、パフォーマンス並びにコストにおいて、AutoForm-Sigmaの運用は、十分期待に応えられることが判かります。 表1 #3と#4の期待される効果とコストの簡易比較 【まとめ】 限られたリソースの中で、最適な成果を上げることは、非常に難しいです。今回のテーマ、“不足するリソースを担う“は、今までもエンジニアリング部門で、シミュレーションソフトが代行してきました。その功績は、技術員無くしては語られません。先に述べたように、昨今の自動車業界の課題は、常に高い要求が付きまといます。この実情から、シングルシミュレーションの追加だけでは、リソース不足並びに数ある課題の両方を、解決するには限界があります。 また、シニア層の退職も増えています。それによりシニア層の知見に頼ることも難しくなります。そのため、標準やテンプレートなどの規定設定が、今以上に重要になります。AutoForm-Sigmaの設定は、標準設定やカスタマイズ設定が有効に使用できるため、ヒューマンエラーの無いスムーズな設定が、工数削減やリソース不足の対策に有効となります。 現技術員の部品検討時間と同時並行で、シングルシミュレーションでは確認できない解や情報を獲得し、効果的な情報提供の相乗効果も期待されます。つまり、シングルシミュレーションと技術員を単純に追加するよりも、安価で容易により多くの業務をこなすことができます。人員の追加が見込めない今、AutoForm-Sigmaの導入が最も現実的なリソース不足解決の手段なのではないでしょうか。 - [KIA:デジタルトランスフォーメーション(DX)成功のメリット 第三部](https://japanforming.com/kia-dx成功のメリット-part3/) - 熱間プレス成形に関するあらゆるレベルのビジネスおよびサプライヤーをデジタル化する技術を調査したKIA社の事例を紹介する第三部です。完全なデジタル化の要件を満たすソフトウェアシステムを調査したKIA社が、当初のデジタルトランスフォーメーションが失敗した理由、そしてこのメガトレンドを実現するためにとった行動について語っています。最後に第二部で紹介した熱間プレス成形部品における「デジタルダイスポッティング」のコストとメリットを探ります。 DXのメリットをシステム全体で共有することの重要性 昨今のカンファレンスでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドがもたらすメリットについて多くの発表を目にします。その多くは技術面の規制強化、マルチフィジックスに基づくソリューション、自動化による効率化、データセキュリティおよび保護法、データ可観測性、部門間の協力体制、ESG(環境・社会・ガバナンス)、メタバース、人工知能、インダストリー4.0の成熟度などに着目したものです。 このようなトピックやプレゼンテーションは注目に値するものではありますが、DXのメガトレンドとも呼ばれる大きなうねりの中で、今まさに変革を起こすにはどのような行動が必要であるか、という観点から取り上げられたものはほとんどありません。 デジタルプロセスエンジニアリングのモデル構築に長い時間を費やし、高品質な生産や下流の製造現場でのコスト削減や時間短縮について正しく判断できたとしても、それをDXのメガトレンドとどのように関連づけるべきかわからないのです。筆者自身もプロセスエンジニアリングの効果や効率を高めようと奮闘していましたが、デジタル化が全体の効率、規制、可観測性、そして事業成功に大きく影響するという認識が希薄であったことを悔いています。 しかしデジタルプロセスエンジニアリングを通じて、エンジニアリング業務を効果的かつ効率的に変革できたことには手ごたえを感じていますし、またDXのメリットを広げてゆく活動も続けてゆくつもりです。デジタル化を通じた業務改善からビジネスの成功を収めるまでを熟知しているからこそ、エンジニアリングプロセスを軸としてシンプルにデジタルアップストリームとダウンストリームをつなぐことができます。まずは小さな一歩から開始して、最終的には前述のような包括的なデジタルプロセスモデルを構築することも可能です。 自動車業界の市場動向を子細にわたり理解するために、デジタル化に関する長年の経験をもとにDXのソリューションを提供しているオートフォーム社に相談し、デジタルのベストプラクティスがもたらすメリットについて共同で調査しました。図1が示すとおり、コストを削減できる割合はコスト目標全体に対して相対的であることがわかります。これをもとにデジタル化のプロセスに優先順位をつけることで、ビジネスの成功を導きます。 図1.デジタルプロセスエンジニアリングのモデルによるコスト削減の可能性と実現 一般論として、自動車製品の最適化は競争力のあるスタイリング&デザインやその規制事項、デザインのアップデート、レガシー、最新技術、持続可能性、インテリジェントコネクティビティといった市場のニーズについてデータを収集および分析し、そのバリューを高めながらも同時にコストも削減しなければなりません。 収益性を高め、製品ラインを最適化するには、デジタルのバリュー解析を標準化することでその煩雑さを緩和でき、また業績との整合性も保つことができます。 エンジニアリングのコスト見積もりに基づくバリュー解析を適時に行わなければ、案件が複雑になり、整合がとれず、すなわちDXが機能しなくなります。そのため3Dモデリングとエンジニアリングを考慮する原価計算のスキームやシステムを確認することが非常に重要なのです。 製造工程の改善については、技術仕様が過剰であったり、また競合他社と簡易的なベンチマークを行ったりすることで、製品コストの増加を招いたり、最適化に工数がかかりすぎる場合があります。プロセスエンジニアリングでは、プロセスの改善を通じて削減を促進することを重視しています。これはサプライヤーとの購買のプロセスについても同様です。 デジタル化の核心部分となるのが、信頼できるレジリエントなサプライヤーを見極め、自動車の組立部品の最適なコストを確定することです。システムの安定化を図ることで、デザイン、材料、工程を継続的に改善してゆく中でも、デジタルの継続性を保つことができます。特に自動車メーカーとサプライヤーはいずれもコスト最適化が最重要課題であるため、同じシステムを導入する必要があります。 革新的で競争力のある製品を設計するには、必然的に最新鋭の材料を扱うことになります。しかしまた最新鋭の材料を使用するには、製造工程を最適化しなければなりません。つまり材料を変更するたびに、その製造工程を検証しなければならないのです。工程シミュレーションと実際の試験をもとに作成された広範な材料データベースを組み合わせて活用することで、製品の最適化とビジネスの成功を実現することができます。デジタルプロセスエンジニアリングのモデルを使用して、コンパクトで柔軟性が高く自律的なプレスラインを構築し、生産性を向上させることは、コスト削減にもつながります。 またデジタル化を通じて部門間や企業間をまたがる形で包括的で新しい製品最適化のワークフローを確立することは、コスト削減の規模でのシナジー効果に貢献します。 生産サイクルの改善、不良品の削減、バリューの数値化、不稼働期間の短縮、品質管理、新たな材料や工程を用いたバリューエンジニアリング、柔軟な生産ライン、自律的なプレスラインなど、多岐にわたる側面が連鎖反応のように強く結びつき、相互作用しています。そのため標準化された部品を最善の価格で提供するには、デジタル化を標準化する必要があるのです。 プロセスエンジニアリングのデジタル化がもたらすメリットを可視化することで、KIA社ではビジネスを優先する形で効率化を図りました。サプライ・チェーンの可視化、エンジニアリングの効率化、競争力の強化を見据えた投資に着目したことから、「熱間プレス成形部品のDXを拡張するデジタルダイスポッティングのワークフロー」のプロジェクトが決定しました。 たとえば、冷間プレス成形工程と熱間プレス成形工程がゲージに与える寄与度、スプリングバック量、局部減板などの感度解析を多くのケースで行い、その解析結果からデジタルプロセスを標準化しました。この解析にはデジタルプラットフォームを使用し、新たな標準に合わせて、実際のエンジニアリングプロセスを自動的に修正する必要があります。デジタルツールが現実の製造現場をベースに構築されている場合、デジタルツールを直接使用することで、革新的なデジタル化を促進できるというメリットがあります。 コストメリットに基づく短期的なデジタル化のプロジェクトであれば、比較的に抵抗や躊躇することなく、迅速に開始することができます。しかしプロセスの検討を通じたバリューのアップデート、サプライヤーとのデジタルエンジニアリングデータ全体の購買、冷間・熱間プレス成形工程と連動した材料ライブラリ、インテリジェントプレス向けの確率論的エンジニアリング、プラットフォームをカバーするプロセスのアプローチなど、要件を満たす最適なソフトウェア・システムの選定は、時間がかかる複雑なプロセスです。IT技術に関連する多くの確認や長期的な調査を経て、最終的にオートフォーム社がこれらの要件を満たしていることを確認しました。 このような調査から、熱間プレス成形部品に「デジタルダイスポッティング」のフィーチャーを追加するだけで、コスト面でのメリットが生じるようになりました; (a) 実際の製造現場をベースとしたシミュレーション (b) 切削用の形状データ 図2.AutoFormソフトウェアを介したデジタルの連続性 検証済みのデジタルプラットフォームを使用した長期的なデジタル化のプロセスを経て、図2に示すように、エンジニアリングにおけるデジタルの継続性を維持したまま、熱間プレス成形部品でDXのメリットを実証できました。このようなメリットを数値化することで、以下のような投資判断が可能になります。 費用対効果解析(測定可能) 各部品とコンポーネントの現場調査(特に生産工場) 削減の可能性(生産ラインまたはバリューエンジニアリング) デジタル化係数の完全性(デジタル化の成熟度を検証) 公式 = 削減 * デジタル化係数 * 日数 * 時間 * 具体的な(または実際の)コスト率 上記の公式から「デジタルダイスポッティング」による直接的な費用対効果を定量化することができます。 金型加工:X00,000€(年間最低額、1台あたり) 金型トライアウト:X00,000€(1年および1台あたりの最低額) 驚くべきことに「デジタルダイスポッティング」のフィーチャーを追加するだけで、切削と金型トライアウトの総削減額は、ほぼ100万ユーロ(約1億6千万円)に達します。無論これはすべてのエンジニアリング活動でデジタル化が共有され、かつ製造現場でも検証が行われた場合に限られます。つまりソフトウェアシステムがこの検証プロセス全体をサポートしていることが前提となります。 成功の概要 デジタル化を推進する有効な手段のひとつとして、自動車メーカーから積極的にサプライヤーをDXの活動に参加させ、ビジネスの成功に向けて、エンジニアリングの変革を推奨することが挙げられます。デジタル化プロジェクトを主導したKIA社では、サプライヤーとの間でデジタル化の最終目標を共有し、DXを専門とするソフトウェア会社からコンサルテーションを受けながら、デジタル化を進めました。 AutoFormソフトウェアを活用して長期のデジタル化プロセスの策定および費用対効果の解析を行い、デジタルの資産から短期に投資を回収できるプロセスを確立することで、デジタル化に対する投資についてサプライヤーの説得にあたりました。このように自動車メーカーがエコシステムのサポートネットワークを介してデジタル化のプロジェクトに参加することで、競争力の強化とビジネスの成功を実現することができるようになります。最終的にはプロジェクトに参加した企業間でビジネスの成功を共有でき、またデジタルプロセスチェーンを介したパートナーシップも維持できます。たった1つのフィーチャーを追加することで100万ユーロ(約1億6千万円)規模の削減が可能になるため、自動車メーカーではアセンブリの品質向上とコスト削減を目標に据え、サプライヤーにも過剰なサービスを提供することなく、自社の効率化を目指すことを促進しています。 - [ビードのデザインを修正してテールゲートアウターのかじりを解消](https://japanforming.com/ビートのデザインを修正しかじりを解消/) - プレス成形におけるかじりは、金型とシートの間に生じる成形荷重の急激な上昇、致命的な製品外観の損傷、深刻な金型の摩耗などを引き起こし、部品の品質だけでなくプレス成形の成功率にも影響を及ぼします。トライアウトで金型サーフェスにかじりが生じたら、それが軽微なものであっても、摩耗が急速に進む前に対処することが重要です。 図1. 曲げ試験後のシートサーフェス品質の光学写真 図2. 金型(パンチ)のかじり 昨年、某自動車OEMの依頼を受け、テールゲートのアウター部品に生じるかじりついて調査を行いました。シート材はCR04で板厚は0.9mm、金型は鋳鉄製です。トライアウトでプレスした部品の表面仕上げが部分的に悪く、金型サーフェスに溶着した金属片により接着磨耗が生じていました。このOEMでは過去の経験から、このかじりの現象を明確に特定できましたが、金型はすでに製作済であったため、かじりを回避できる選択肢は限られていました。潤滑量の増加、金型サーフェスの研磨、シート材のコーティング変更などを試しましたが、いずれの対策でもかじりを大きく緩和することはできませんでした。 最後にビードのデザイン設定を見直すと、このクラスAのテールゲート部品はドロー深さが十分ではなかったことが判明しました。パネル上で最適な伸びを確保するには、ビードをより深くする必要があったのです。この事例ではビードの高さがかじりを引き起こす主な原因でしたが、以前の部品でも同じ不具合が生じていました。そのため当時の対策と同様に、シングルビードをより浅いダブルビードに変更することで、伸びや塑性ひずみを妥協することなく、かじりを解消できると確信するに至りました。 最後のステップでは、金型を再切削する前に金型の形状を再検討し、新たに最適なダブルビードを作成しました。その検討には従来のトライアンドエラーに代わり、AutoForm-Sigmaを活用して工程の分析的改善を行いました。新たな(2つ目の)ビードは既存のビードから25 mm離す必要がありましたが、図3の通り、シミュレーションのAFドロービード緩和戦略を実施し、最適なビードの高さと溝半径を特定しました。パネルの製造時に不具合を排除するには、良好な成形性と塑性ひずみ条件(おそらく変更なし)を担保することが極めて重要です。これを目標に定めると、手作業でビードを修正するのであれば、何度も試行錯誤を重ねる必要があったはずです。さらにはブランク形状も同様に最適化し、ブランクサイズをわずかに大きくしたことで、ダブルビードを追加することができました。 図3. AutoFormドロービード緩和戦略 図4. シングルビードとダブルビードの成形性プロット 図5. シングルビードとダブルビードの塑性ひずみプロット 機密保持の問題があるため、OEMのシミュレーション結果はこのブログでは紹介できません。その代わりに機密保持の対象ではないフードアウター・パネルで同様のことを行いました。成形性の結果と塑性ひずみプロットをそれぞれ図4と図5に示します。右図のシミュレーションはダブルビードで、またブランクもわずかに大きいですが、シングルビードを用いた左図のシミュレーションと非常に似ています。このOEMではAutoForm-Sigma分析的工程改善の手法を活用し、再設計段階に多くの時間を割くことなく、テールゲートのアウター部品で同様のシミュレーション結果を得ることができました。その後、ダブルビードの仕様で金型を再切削したところ、かじりが大幅に減少しました。最後に、トライアウトでプレス条件を微調整したところ、このパネルのかじりをすべて解消することができました。 - [KIA:熱間プレス成形部品のデジタルトランスフォーメーション(DX)成功事例 第二部: デジタルダイスポッティングの活用](https://japanforming.com/kia社による熱間プレス成形部品のdx-part2/) - 製造エコシステムに着目した製品とビジネスのプロセス ビジネスとサプライヤのあらゆるレベルにおいて、熱間プレス成形工程のデジタル化を可能にする最新技術について、KIA社の取り組みを三部編成でお届けしています。この第二部では、KIA社が熱間プレス成形工程にデジタルダイスポッティングを組み込んだ事例をご紹介します。 自動車業界にてデジタルトランスフォーメーション(DX)をビジネスとして成功させることは、技術や組織のみならず文化の面からも最も難しいとされています。その理由として、サプライヤによるデジタル化の取り組みが製品の競争力に深く関わっていること、またビジネスの成功はデジタル化を通じてあらゆるレベルで共有されるべきであることなどが挙げられます。この「熱間プレス成形部品のデジタルトランスフォーメーション(DX)」プロジェクトを例に、デジタル化の難しさと重要性について検証します。 短期の投資 すでに確立している技術に基づく革新(応用)技術 すべての企業の価値解析から算出した革新的ROI KIA社ではこのような観点から現状の技術を洗い出し、サプライヤのデジタル化がどの程度まで浸透しているかを調査しました。 大半のサプライヤがAutoFormソフトウェアを導入し、その性能を高く評価 拡張性があり、構造革新、技術革新、事業革新を促進 そこでエンジニアリングのプロセスを革新すべく、現状のシミュレーションと検証のプロセスにAutoForm「デジタルダイスポッティング」を組み込み、さらにOEMおよびサプライヤがデジタル化を最大限に活用できるようにしました。 影響範囲の特定 興味深いことに、プロセスの革新を進める上でデジタル化がどのような影響をもたらすか、シミュレーション結果を用いて検証することができます。最初の熱間プレス成形シミュレーションの結果では温度が均一でないため、図1(a)のとおり斑点が局所的に見られました。これは気体に起因する現象で、図2(b)に示すように板減を引き起こします。 図1. デジタル化の可能性を検証するシミュレーションベースの因果関係分析 デジタルプロセスの革新 従来のワークフローでは、切削用NCモデルの作成はスプリングバック見込み補正後に行います。KIA社のプロジェクトチームでは、これらの工程の間に新たにデジタルダイスポッティングの工程を追加しました。デジタルダイスポッティングは、温度差がある局所的な領域のみに適用されます。 図2. 温度差のある局所的な領域にデジタルダイスポッティングを適用 リスクを考慮した検証 情報のフィードバックはすべての部門が対象となるように徹底しなければなりません。部品設計、品質保証、購買、検査など各部門のすべての関係者が状況を正確に把握しながらマイルストーンを進めることが重要です。本件では機械加工の面精度、寸法精度、引張強度が要件を満たすよう、AutoFormデザインファイルと工程設計システムを使用して検証を行いました(図3)。 (a)熱間プレス成形の結果 - 引張強度を満たすまでアップデート (b) 寸法精度を満たすまでアップデート (c) 切削面精度を満たすまでアップデート 図3. AutoFormデザインファイルを活用してすべての要件を検証 サプライヤの製造現場での検証(Shinyoung社) Shinyoung社ではこれらのエンジニアリングの結果をもとに金型を製作し、トライアウトを実施しました。製造現場では「シミュレーションの通りに製造する」ことを第一義に、デジタルダイスポッティング工程を正確に適用し、熱間プレス成形パネルの温度変化や、ダイスポッティング工程が適用された部分の板厚のギャップを確認しました。 図4. AutoFormデザインファイルに基づく熱間プレス成形のトライアウト トライアウト担当者は上型と下型のギャップを確認し、エンジニアリング担当者が行った板厚解析のとおりにギャップが見込み補正されていることを確認しました。 図5. 金型のギャップとAutoFormの板厚 トライアウトではクエンチング中の温度変化が均一であるかについても確認しました。実パネルの計測結果はデジタルダイスポッティングの解析結果と同様であり、パネルの強度は設計の意図と同様に良好であると予測しました。 図6. 熱間プレス成形中の均一な温度変化 – クエンチング 図 7. 熱間プレス成形にデジタルダイスポッティングを適用後のスプリングバック結果 トライアウト中のスプリングバックについても、予測通りに改善できました。デジタルダイスポッティング工程によって冷却速度を一定にできただけでなく、スプリングバックも緩和できたのです。 まとめ KIA社ではデジタルダイスポッティングを熱間プレス成形工程に適用することで、板厚が異なる領域の冷却速度を一定にでき、最終パネルの品質改善に成功しました。そして特筆すべきは、金型トライアウトの回数と金型製作の工数を削減できたことで、製造コストの大幅削減を実現したことです。デジタル化のプロセスを取り入れ、組織全体でデジタル化を効果的に活用できることを実証したKIA社およびそのサプライヤは、現在、デジタルダイスポッティングを冷間プレス成形工程へ適用することを計画しています。 第三部ではデジタルトランスフォーメーションとデジタル化の効果的な活用について特集します。 - [KIA: 製造のプロセスエンジニアリングにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の構築 第一部](https://japanforming.com/kia-デジタルトランスフォーメーションdx-part1/) - デジタル化のプロセスを通じた抜本的な変革の推進 デジタルトランスフォーメーション(DX)はバズワードですが、その反面、筆者が所属するプロセスエンジニアリング部門にとってどのような意味があるのか、また各部門や企業全体に何が急速に浸透しているのか、いまだ漠然としています。どのような利点があるのでしょう。事業効率や企業の俊敏性を向上できたり、OEM、材料サプライヤー、金型や部品のサプライヤーなどに新たな価値がもたらされたり、......もちろん、誰もがDXの重要性を認識していますが、それでも日々の生活の中でどのような変革が行われるのか、明確に理解できている人はあまりいません。 日常業務に立ち返ると、競争力のある製品の開発やコスト削減などの業務改善に取り組む一方で、実際の生産現場では多くの場面で問題に直面しています。プロセスエンジニアリングは各関係部門の基盤となる部門です。しかし綿密な対策、総合的な判断力、幅広いコミュニケーション、特定の事象に関する深い知識などが求められる非常に高度で複雑な業務であるため、デジタル化することは非常に難しいと考えています。ここ最近は「デジタルダイスポッティング」という言葉を聞くようになりました。ダイスポッティングを熟知している筆者たちエンジニアにとっては、「熟練の職人技に頼らず、デジタルのみでダイスポッティングを行うことは不可能」と考えるだけでなく、「そもそもシミュレーションの精度に大いに疑問を感じる」といった意見が多いです。 韓国のオートフォーム社ではAutoFormを介したデジタル化と現場主導のデジタルツインのコンセプトを紹介し、完全なデジタル化とその変革に向けて、非常にシンプルなDXプロジェクトとすぐに開始できるソフトウェアアーキテクチャを提唱しています。DXに必要なソフトウェアシステムについては、[スマート・ファクトリーのプロセスにおける一貫性の問題]および[プレス成形とBiW工程シミュレーションにおける一貫したシステムエンジニアリングをサポートするソフトウェアとデータアーキテクチャの重要性]の記事をぜひご一読ください。 その基本的な考え方はシンプルで、部門をまたがるすべての各関係者がエンジニアリングの成果を可視化できるソフトウェアシステムを使用することを推奨しています。材料、形状、プレス成形工程、工程配置、標準化、トライボロジ、品質評価、評価方法など、すべてのデータをAutoFormデザインファイルに格納し、それらを共有することで、部門間がデジタルなデータを介してコミュニケーションを図れるようになります。 エンジニアリングの成果をデジタルに可視化して、そのデジタルの連続性を担保することで、各関係部門が連携することが可能になります。 「競争力のある製品の開発」という目標に向けて、エンジニアはみな多くの業務に携わり、さまざまな責任を負っています。しかしすべての情報をエンジニアリングのソフトウェアシステムで扱うことは容易にできます。そしてもしそのシステムを部門間で連携できるのであれば、DXはそう難しいことではありません。AutoFormを活用すればシミュレーションを重ねるたびにアップデートされたデータを他部門でも確認することができ、さらにはその後の対策を部門間で検討する際にもリアルタイムでガイダンスを提供できます。 サプライヤーを含むすべての組織のエンジニアリングと製造のプロセスをインテリジェントコネクトシステムとして運用することで、業務効率を大幅に改善することができます。確かに自動車製品の競争力はサプライチェーン全体の強さが基盤となります。自動車メーカーはサプライチェーンの先頭に立ち、効率の追求と革新的製品の市場投入を導いていかなければなりません。とはいえ、ソフトウェアシステムを介してDXを推進できるのであれば、目標、役割、仕事を明確に定義した上で、共同プロジェクトを主導してゆくべきです。 図1. AutoForm GUIを介したエンジニアリングの検討と即時アップデート 目標 新車開発プロジェクトにおける材料と製造工程の調査にて、プロセスエンジニアリング部門では衝突安全性と運転性能を考慮した材料と熱間プレス成形工程を検討します。製品性能については、車体構造の観点から構造部品の要件である強度と剛性を満たさなければなりません。 製造のプロセスデザイン部門では、エンジニアリングのあらゆる段階において、設計変更の依頼に柔軟に対応できなければなりません。エンジニアリングの変更依頼に柔軟さをもたらすデジタルプロセスモデルを構築することが必須です。 デジタルシステムを活用した革新的なエンジニアリングプロセスを展開し、板厚やスプリングバックなどの寸法精度を含む製品の品質基準を担保することが、DX戦略の主目標となります。ISO9001:2015に準じたプロセスの手法は、AutoFormガイドラインの機能からご利用いただけます。 金型の設計、切削、トライアウトに費やす時間およびコストの削減を数値化することで、事業成功と俊敏性向上をもたらすことを最低限の目標に挙げます。 役割 1.KIA (プレス成形エンジニアリング部門、オーナー: キョンフン・チェ) a. 車種と部品の選定、プロジェクトの指揮 b. 上流とリスクベースエンジニアリングの導入およびリアルタイムの アップデート c. 新たなプロセス「熱間プレス成形とデジタルダイスポッティングを 活用したNCモデル」の構築 ・下流へのDX導入とPDCAの徹底 d. 「熱間プレス成形とデジタルダイスポッティングを活用したNCモデル」 のモデルを介した実パネルの検証 ・実パネルの検証およびプロジェクトの成果を数値化 ・ゲージの影響を考慮した局所的な冷却速度の確認 2.KIA (プレス成形エンジニアリング部門、プロジェクトマネージャー)および Shinyoung (金型メーカー) a. 正確なスポッティングのセットアップ、特に「デジタルダイスポッティン グ」を適用した場合のスポッティングの状態の数値化 - [『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』から指輪の鋳造における材料理論の現実性を検証](https://japanforming.com/鋳造における材料理論の現実性を検証/) - 映画から紐解くプレス成形のレビューを不定期にお届けしていますが、本稿では『ロード・オブ・ザ・リング』の世界を特集します。過去には『8 Mile』と『スターウォーズ: マンダロリアン』からプレス成形に着目したレビューを掲載しました。映画の中で効果的に使われる貴金属類は、そのほとんどが魔術の道具、魔法の刀剣、または無敵のロボットなどと深く関係していることにお気づきでしょうか。本稿では数ある魔法の中でも特に「力の指輪」について掘り下げます。SFやファンタジーが好きな読者のみなさまに喜んでいただけると幸いです。 アマゾン制作のドラマシリーズ『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』から、指輪の鋳造に重要な役割を果たした場面について考察を進めます。その鋳造に伴う材料加工は、現代の材料科学の理論に則り検証できるものなのでしょうか。あるいは力の指輪の鍛造は、単に魔法の世界の出来事なのでしょうか。 クリティカルシンキングを止めて、魔法と不思議の世界に迷い込んでみるのはいかがでしょう。 中つ国 第二紀: ヌーメノール時代 アマゾンの期待作『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』はさまざまな評価を得ています。ガーディアン紙が「ハウス・オブ・ザ・ドラゴンが素人作品に思えるほど驚異的」と称賛する一方、フォーブス紙は「ロード・オブ・ザ・リングに対するアマゾンの尊大な裏切り行為」と酷評しています。またThe Review Geekではそのマーケティング戦略を批判し、近年のキャンペーンの中でも特に賛否が大きく分かれる大惨事と評しています。 エピソード毎に8900万ドル(『ザ・マンダロリアン』は1500万ドル)という莫大な費用を投じた『力の指輪』は、映画版『ロード・オブ・ザ・リング』から5000年前に遡ります。舞台は中つ国の第二紀、サウロンの失脚によって終焉を迎えるくだりは、『指輪の仲間』の冒頭、ケイト・ブランシェットが演じるガラドリエルによって詳しく描写されています。 シーズン1予告: https://youtu.be/x8UAUAuKNcU シーズン1の予告編では、中つ国全体に広がる闇を阻止すべく、サウロンの打倒を絶対の使命とする主人公ガラドリエルが登場します。諸悪の根源である冥王モルゴスとの戦いは終止符を打ったとされる中、偏執的な戦士であるガラドリエルだけはサウロンがどこかに潜伏していると信じて止みません。 モーフィッド・クラーク(ガラドリエル) クレジット:マット・グレイス、アマゾン プライムビデオ ガラドリエルの物語には力の指輪が初めて鍛造されるシーンが描かれていますが、ここでまず材料科学に対する疑問が生じます。彼女の物語はシリーズ5本立てのプロットの1つに過ぎませんが、シーズン1ではガラドリエルが大きな存在感を示しています。モーフィッド・クラークがガラドリエル役を演じたことに対し、多くの視聴者が「淡白で、甘ったれで、ふてぶてしい」と否定的に捉えています。このような批判的な意見に同意する部分もありますが、トールキンの原作では、ガラドリエルは西方国に勢力を拡大し、新たな土地を支配下に置こうとする帝国主義者であることを忘れてはなりません。個人的には、クラークの描写は原作に忠実だと思います。 トールキンの作品世界における「ミスリル」は神聖な金属 シリーズを貫く第二の物語は、ドワーフがモリア(黒い杭)の鉱山で採掘した金属の発見です。そのミスリルと称される金属をドワーフたちは「まことの銀」とも称しています。しかしこの現世界で銀と称される金属とは異なり、この最強の金属は決して変色しません。 ドワーフは鉱山の地下に広がる闇をひたすら深く掘り続けました。第三紀になると、彼らは迂闊にも第一紀の戦闘から逃れ眠っていたバルログを呼び覚ましてしまったのです。バルログは解き放たれ、ドワーフ王国は滅亡への道を辿ります。そしてミスリルの採掘も中止となり、この金属の価値が高騰しました。このバルログは『ドゥリンの禍』として500年もの間モリアを支配することとなりました。 いや、先を急ぎすぎました。『力の指輪』の世界でミスリルが発見されたのはつい最近のことで、ドワーフとエルフはまだフィージビリティ検討を進めているところです......。 エルフを救った金属 『力の指輪』に登場するエルフの状況は悲惨です。中つ国の『ヴァリノールの樹』が枯れ果てると、エルフは徐々に衰退していきます。『不死の地』として知られるヴァリノールはエルフの故郷です。伝承によると、エルフはみなヴァリノールの光を自身の中に持っています。第7話ではエルフの衰退を逆転できる新たな鉱物『ミスリル』が発見されます。エルフの葉を侵す疫病がミスリルによって治癒されるのをドワーフのドゥリン王子が目撃する場面は非常に美しく描かれています。 しかし残念なことに、エルフは樹を治癒するには十分なミスリルを持ち合わせていません。 力の指輪の鋳造 高名なエルフ鍛冶師であり、トールキンの世界では伝説的な存在であるケレブリンボール卿は、解決策を見出すために苦闘していました。鍛冶職人のハルブランドがその名高い工房を前に畏敬の念を抱きつつ「何を作っているのですか?」と尋ねると、セレブリンボール卿は「ちょっとしたものを作りたかったのですが、何も足りていないのです」と答えます。するとハルブランドは持論を展開します。 「失礼ですが、馬鹿げた話に聞こえるかもしれませんが、合金によってはその性質を強化させることはできないのでしょうか?」 ケレブリンボール卿は「き、強化?」と訝し気です。 「私の故郷では貴金属は鶏の歯のごとく希少でしたから、それらを組み合わせることで特長を生かし難点を隠す工夫を重ねてきました。鉄に微量のニッケルを加えると、刃物を軽く、強靭にすることができます。あるいはこの鉱石の性質を強化させる合金があるかもしれません」 クレジット: アマゾンプライムビデオ ハルブランドはさらに一歩踏み込み、その合金が肉体を支配する力になる可能性すらを示唆します......。 シーズン1最終話のタイトルは『合金』です。 材料の性質を『強化』し難点を隠す ハルブランドは、合金の利点として性質を強化できること、そして難点を隠せることを挙げています。これは科学的な裏付けがないように思われるかもしれません、しかし合金化は確かに材料の難点を隠すための手段となりえます。未加工の金属は軟らかく脆い場合が多く、加工には不向きです。しかし金属を混合することで、複数の材料特性を1つの合金に束ねることができます。 たとえば、鉄に非金属の炭素を加えると鋼材になり、鉄にクロムを加えると腐食に強いステンレス鋼になります。鉄にニッケルを加えると成形性が高まり、耐食性も向上します。このように脆い材料を合金にすることで弱点を克服できるため「難点を隠す」ことになるのです。 欠陥を逆手に合金を改良するための方策について、ピッツバーグ大学スワンソン工学部から「Design metastability in high-entropy alloys by tailoring unstable fault energies (不安定な欠陥エネルギーの調整を通じた高エントロピー合金の準安定性の設計)」というタイトルのホワイトペーパーが最近発表されました。この研究を主導しているウェイ・シオンは「合金へ意図的に欠陥を付加することで、材料の延性(柔軟性)を維持しながら合金を強化する方法を示しています」と述べています。 この研究では変態誘起塑性 (TRIP)および双晶誘起塑性 (TWIP)を通じて強度と延性の相殺を解消できる革新的な設計特性が提案されています。面圧下で起こる微細組織の変化を利用することで目的に応じた欠陥が成形され、材料の強度が高まるのみならず、究極的には材料固有の欠陥が解消されます。主執筆者のシン・ワンは「不安定な微細組織を解明すれば不安定性を予測することが可能になり、ひいては欠陥を利用して強度と伸びをさらに高めることができます。その結果、材料の自己強化、つまり材料を変形させると、材料自体の強度が高まるようになるのです」と述べています。 宇宙開発プロジェクトが活発化し、月面を拠点とする宇宙ステーションが間もなく実現することが発表されています。各分野の研究が進む中、かつては魔法とされていた出来事がこの現実世界で次々と実用化されてゆくことを感慨深く思います。 - [AHK Automotive Circle:中国自動車市場の最新事情](https://japanforming.com/ahk-automotive-circle:中国自動車市場の最新事情/) - ドイツ商工会議所による新しいイベントシリーズ「AHK Automotive Circle」の幕開けとして、7月27日にオートフォーム社の上海オフィスで朝食会が開催されました。ティルマン教授による「デジタル化への挑戦」、そしてクリストフ・ウェーバーから中国自動車市場の最新事情について発表があり、参加者同士の活発な意見交換が行われました。本稿では、クリストフ・ウェーバーが7月にまとめた中国自動車市場の最新事情から得た考察についてご紹介します。 2023年上半期には、乗用車販売は2022年の低水準から若干回復しています。商用車販売は2020~2021年の建設業界刺激策を受け安定し、自動車輸出および電気自動車(EV)販売が非常に好調でした。しかし生産過多と需要の低迷が輸出増大の一因となり、また価格競争も誘発されています。手頃な価格帯で近未来的な体験を消費者へ訴求することでEV分野を席巻しているのは、少数の先鋭企業のみです。 乗用車(PV)販売: 回復の弱さと消費者の買い控え 2023年上半期の乗用車(PV)の販売台数は、低水準の2022年基準と比べて前年比成長は弱いです。内燃機関自動車(ICEV)の販売は比較的横ばいで、新エネルギー自動車(NEV)と輸出のみが安定的に成長しています。コロナ禍からの規制緩和やサプライチェーンのしばりにもかかわらず、需要は依然として低迷しています。2022年の景気刺激策が2023年からの販売を前倒しにしているようです。 テスラ社は2023年に価格競争を開始すると、それが即座にEV市場からICEV市場へと広まりました。生産過多と需要の低迷により、価格競争以外の選択肢が失われてしまったのです。中国汽車工業協会(CAAM)では、これ以上の採算悪化を防ぐため、国内外の主要OEMに価格競争からの脱却を呼びかけました。しかしCAAMが値引き中止の合意を発表した翌日には、独占禁止法上の懸念が持ち上がり、すぐに撤回されたのです。 2023年上半期には、いくつかの部門で変化が生じました。消費者心理の悪化により、高級路線からより手ごろな価格帯の選択肢へと移行が進み、ハイブランドのNIO社が苦戦する一方で、大衆向けのBYD社が好調に推移しています。2023年上半期の販売シェアは、40年前に中国が自動車市場を開放して以来初めて、国産ブランドが53%と過半数を占めました。日本ブランドは最も苦戦しており、市場シェアは2022年の20%から2023年上半期には15%に低下。GACトヨタ社は今月に1000人を解雇したことが報じられています。 商用車(CV)販売: 低迷した2022年からの安定化 CV販売台数は2022年には超低水準でしたが、2023年上半期には安定化しています。CAAMは、2023年のCV年間販売台数を380万台から400万台と予想。CVの中でも特に重要なトラック部門は、建設事業に大きく依存しています。2020年から2021年にかけては、建設業界刺激策と標準的なアップグレード案件によってトラックの販売は記録的なものとなりましたが、2022年以降は需要が枯渇しています。住宅市場はほとんどが低調で、投資は唯一の国有企業が主導しています。中国の商用車輸出は増加しており、今後も長期的な成長が見込まれます。 自動車輸出: 中国では生産過多から2023年には世界輸出における首位の座に 中国は2022年にドイツを抜いて第2位の輸出国となり、2023年には日本を上回り第1位となることが見込まれています。2023年1-5月の中国の自動車輸出は前年同期比80%増の190万台となっています。輸出先の上位3か国はロシア、メキシコ、ベルギーで、特にベルギーは欧州連合(EU)市場の玄関口となっています。またEVの主要輸出先はベルギー、英国、タイです。 生産過多と需要の低迷が、市場における「解放弁」として中国の輸出を後押ししています。輸出の大半はまだICEVが占めていますが、中国のEVサプライチェーンのコスト優位性および製品の高い競争力をもって、EVの輸出が再び大きく伸びることが予想されます。フォルクスワーゲン(VW) ID.3は現在、EUでは約3万5,000ユーロで販売されているのに対し、中国本土ではわずか1万5,000ユーロで販売されており、中国のEV市場の競争力の高さが浮き彫りになっています。 新エネルギー車(NEV)販売台数: 手頃な価格帯のEVがNEV販売シェア30%への成長を牽引 2023年上半期もNEV販売は力強い成長を続けています。CAAMは、2023年のNEV販売台数を900万台、NEV販売シェア30%と予測。EVモデル価格帯が手頃であることがEVの普及を促進し、その結果、NEV販売台数も新記録に達しています。市場の価格が下がると、より魅力的な提案が可能になります。さらに中国の規制当局は2023年に購入税の免除を拡大しました。各社では人気の高いEVモデルをこれまで以上に手頃な価格帯で発表しています。BYDシーガル社では、小型ながら高機能な自動車をわずか8万人民元で売り出すことで、各国の自動車メーカーに先立ち、この低価格帯の空白を埋めています。 2022年のNEVリーダー:手頃な価格帯と近未来的な体験の訴求によってEV分野を席巻する少数の先鋭企業 NEV分野は一握りの精鋭企業による占有状態となっており、今後も統合が促進されることでこの集中化が続くことが見込まれます。NEV販売台数の80%は上位10社で占められており、中国ブランドが80%以上を占めています。BYD社、テスラ社、中国の民間OEMがEV販売を牽引し、BYD社およびLi Auto社は人気のプラグインハイブリッド(PHEV)部門の74%を網羅しています。事実上すべての国際合弁企業と中国国有企業のOEMは、急速に進化するEV分野で苦戦を強いられています。 NEVの主導者は、EVにおいて手頃な価格帯と近未来的な体験の訴求を成功要因の2大柱として掲げています。未来のモビリティがどのようなものであれ、安定した消費者層である中国の若者からは、今日の自動車にデジタルネイティブの生活様式と自動運転技術が融合されることが期待されています。 自動車メーカー各社はこの新たな消費者の期待に応えるべく、大胆な取り組みを開始しています。吉利汽車社は魅族科技社の携帯電話を買収し、またNIO社は自社ブランドの携帯電話について計画を発表しています。トヨタ社は製品設計工程を見直し、自動運転用センサーの販売後のアップグレードなど、製品ライフサイクルを通じてハードウェア製品を改良が可能になることを検討しています。VWグループでは中国市場の倍増および「中国にて、中国のために」戦略を加速させるため、中国の自動車メーカーとの投資や提携に関する複数の案件を発表しています。アウディ社は上汽集団(SAIC)社のIMMotorプラットフォームをライセンス供与し、またVWはXpengのプラットフォームをライセンス供与することで、VW独自のSSPプラットフォームが完成するまでの空白を埋めようと計画しています。 データ提供元: 中国汽車工業協会(CAAM): http://en.caam.org.cn/Index/lists/catid/66.html イベントの様子: 写真: 参加者を出迎えるデイジー・ズーとクリストフ・ウェーバー 写真: デジタル化の挑戦について発表を行うティルマン教授 写真: クリストフ・ウェーバーが中国自動車市場の最新事情について発表 写真: 参加者による活発な意見交換 - [AutoForm Forming R10で搭載された機能を活用したイエン社の工数削減事例: 「ダイスポッティング」](https://japanforming.com/イエン社の工数削減事例「ダイスポッティング」/) - イエン社ではAutoFormでシミュレーションしたものを(可能な限り)金型製造の現場で再現することで、金型製造工程のデジタルツインプロセスを構築しようとしています。 これまでにもAutoFormの「接触距離」結果を利用してシートにかかる面圧をモデリングし、それをAutoForm-ProcessDesignerforCATIAのサーフェスに適用することで、工数削減に至った事例があります。しかしダイスポッティングは経験値を頼りにモデリングしなければならないため、長時間を要していました。このような問題に直面していた当時に発表されたAutoForm Forming R10には、「ダイスポッティング」に特化した機能が新たに搭載されていたのです。まさに必要な機能であったため、韓国のオートフォーム社の協力を得ながら金型製造工程に即座に適用しました。 図1:イエン社独自のダイスポッティングのデジタルワークフローのプロセス 図2: 新たなダイスポッティングのデジタルワークフローのプロセス (AutoForm Forming R10ダイスポッティング) イエン社によるAutoForm Forming R10「ダイスポッティング」活用事例(薄板のタイプ - 2ブランク / 2部品 / 2アウト) 中型部品のダイスポッティング見込み補正の事例を紹介します。AutoForm Formingの評価機能で上型と下型の接触距離を確認し、ダイスポッティング量を算出した結果を図3に示しています。この結果から、どの部分にダイスポッティングを行うかを決定する必要があります。 図3. 「上型+下型の接触距離」によるダイスポッティング量の確認 AutoForm Forming R10のダイスポッティング機能では、シミュレーション結果の板減と板厚を考慮しながら、必要な工程金型から上型または下型を選択して、ダイスポッティング見込み補正を適用することができます。図4は図3と同量のダイスポッティング見込み補正を行ったものです。 スプリングバック見込み補正の後、AutoFormダイスポッティング機能を適用することができます。 図4. ダイスポッティングの結果からダイスポッティング量を確認 ダイスポッティングの適用後、AutoForm-QuickLinkforCATIAを介してダイスポッティング見込み補正の情報をCatiaへインポートし、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのベクトルフィールド見込み補正機能を使用して最終的なダイスポッティングのモデルをNCモデルに適用することができます。またAutoForm-Process DesignerforCATIAのRelief Editor機能では、エンジニアがダイスポッティングの量を追加することもできます。図5は、ベクトルフィールド見込み補正後、金型工場の担当者がRelief Editorで必要に応じて追加を行い、ダイスポッティングのモデルを完成させたものです。 図5.AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのダイスポッティング調整結果 ダイスポッティングの見込み補正後、AutoFormやAutoForm-ProcessDesignerforCATIAでサーフェス精度を確認することができます。またNC加工後のサーフェス精度も事前に確認できます。板減した分だけダイスポッティング見込み補正量を減らしても、図6が示すとおり、この品質はインナー部品のNC工程に十分適用できると判断されます。 図6. AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使用したダイスポッティング面の品質確認 図7. 実金型のNC加工におけるサーフェス精度 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでダイスポッティングのモデリングを完了すると、解析検証を実行してダイスポッティング前後の結果を確認します。ダイスポッティング後、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのRelief Editorでダイスポッティングが適用される領域を確認し、ダイスポッティング領域を追加することができます。 図8. 実金型のNC加工におけるサーフェス精度の確認 ダイスポッティングのトライアウト結果は以下の通りです。図9は薄板と初回トライアウトでのダイスポッティングを示しています。この薄板は2か所を同時にシミュレーションすることを想定しています。シートが大きいため、金型工場で余計なあたりを取り除く作業に時間を要しました。しかしダイスポッティングの初回トライアウトでは、図10の現状工数と比較して約50%削減できました。またNC加工で使用するダイスポッティングのモデリングでは、AutoFormを使用した場合、約90%の工数を削減することができました。 図9 ダイスポッティングの結果 図 10 デジタルダイスポッティング工程の工数 図11 イエン社金型工場 まとめ 図1に示した現状のデジタルダイスポッティング工程は、現場経験の少ない技術者がAutoFormの結果を確認し、ダイスポッティングの見込み補正をかけるというもので、手作業でモデリングを行うため時間が要していました。 - [RA-Metal社のDP600材を使用した「内部補強材」:ブラジルのプレス部品事例](https://japanforming.com/ra-metal社のdp600材を使用した「内部補強材」/) - ブラジルの州都サンパウロから約150kmの距離にある都市リメイラに拠点を置くRA-METAL FERRAMENTARIA社は、新規顧客の獲得および維持に努めることで、国内のプレス成形業界における存在感を高めています。同社ではプレス部品の金型に対する顧客の要望に応じるために、エンジニアリング部門の開発を戦略的に強化しています。 プレス成形シミュレーションに特化したエンジニアリング部門による万全なサポート体制のほか、1500平方メートルに及ぶフロアには、8台のマシニングセンタに研削盤とワイヤー放電加工機、そしてトライアウトプレスが3台、3DアームやCMMを備えた計測室などの充実した設備が揃っています。 RA-METAL社では2014年に金型工場へプレス成形シミュレーションを導入し、このエンジニアリング業務に必要なライセンスソフトウェアを購入しています。 プレス部品の金型業界では、デザインが複雑な製品の増加に伴う対応に追われています。また機械的特性がさまざま異なる材料の開発も進んでいるため、安全なプロセスを構築するには、金型作成の手法やリソースに最新技術を取り入れることが不可欠です。 このような背景から、プレス成形業界はコンピュータによるシミュレーション、なかでもAutoFormソフトウェアの積極活用によって明らかな進化を遂げました。バーチャル環境で最適化を検討できるため、現場の作業負荷や時間を削減することが可能になり、その結果コスト削減や競争力の向上に繋がりました。 RA-METAL社ではこの技術を高く評価し、2020年には金型設計技術部にAutoFormソフトウェアを導入しました。 お客様に安全な工程設計を提供できるだけでなく、トライアウトをフォローアップでき、また新たに金型を開発する際には解析を通じて最適なソリューションを定義できるなど、より多くの価値を引き出すことができます。 また、運動学的成形解析、成形荷重の定量的な決定、ロバストなスプリングバック解析など、プロセスの詳細な評価により多くの時間を割くことができるようになりました。 新規作成した金型の初回トライアウトを実施する前に、金型全体の寸法測定を実施します。設計と実パネルの相違を排除することで、トライアウトの段階における解析のばらつきを最小限に抑えることができます。 トライアウトで問題が生じた場合、シミュレーションでも同様に問題を確認できるまで問題対処は行いません。このためトライアウトの期間中、シミュレーションは常に最新の状態に維持され、そこから得た経験と学習はエンジニアリング部門にフィードバックされます。 さらに、すべての寸法測定の結果をシミュレーション結果と比較し、特にスプリングバック解析では、以下の図(図1~図5)が示すとおり、実用的なケースで非常にロバストな結果を示しました。 事例1 (基準金型と見込み補正済金型の結果): 図1 初回トライアウトの寸法: 図2 図3 ストリップの写真 – OS 3066 図4 図5 事例 2021年にはDP600材を使用した「内部補強材」の製品開発を担いました。顧客からはトランスファ型として開発するよう指定がありましたが、これを順送型として定義しました(図6)。 図6 シミュレーションによる初期検討では、主にエッジクラックの不具合が確認されました。さらには図7に示すように、必要な寸法公差、特に接合面の公差の補正が非常に難しいこともわかりました。 図7 さまざまな検討や試験を行った結果、エッジクラックの不具合に最も適した工程を立案しました。しかしそれには追加のトリム加工が必要となることから金型構造が複雑になり、それを実現するステージを追加する余裕がありませんでした。そのため図8に示すように、この工程案を断念せざるを得ませんでした。 図8 別途、製品の最終成形をクラッシュフォームで行ったところ、良好な結果を得ました。しかしスプリングバックを解析すると、形状にかなりのねじれが確認され、良好な寸法に収めるのは非常に困難であることがわかりました。 特定のポイントでは振幅が4.3mm(図9) 図9 & 図9B フリースプリングバックの測定、基準状態の金型、クラッシュフォームでの成形。 そこで以前検討したプロセスを再び解析しました。 以前に検討した複数の案を取り入れ、多岐にわたる解析から得られた最良の結果を加味し、スプリングバックの挙動を改善できる新たなプロセスを作成しました。 具体的には図9Cに示すように、プリフォーム形状に関する2つの案を取り入れ、製品を5度回転させてパンチの当たりを良くし、合わせ領域を調整しました。 図9C この新たな案では重要な領域を成形できるだけでなく、以前の方案よりもねじれがほぼ50%まで抑制されることが確認できたため、その有用性が証明されました。そのため、この方案をもとにサーフェスの見込み補正を実施することにしました。 図10のとおり、特定のポイントでは振幅が4.3mmから2.3mmに減少しました。 図10 特筆すべきは、サーフェスの見込み補正中に、製品とストリップの側方延長部をつなぐブランチの形状が見込み補正結果に影響を及ぼすことが確認されたことです。特にブランチが硬いほどより大きな応力が蓄積し、これを製品から切り離すと寸法結果が変化することがわかりました。この問題に対処するため、このブランチの中央領域にリリーフを追加して応力を分散させ、製品から外した後の寸法結果に影響を与えることなく小さな変形を吸収できるようにしました。図11A、図11B、図11Cをご覧ください。 リリーフがないブランチ: 図11A & 図11B リリーフがあるブランチ(図12Aおよび12B) 図12A & 12B 図13と図14は、基準サーフェスと見込み補正サーフェスを用いたシミュレーションによるスプリングバックの結果の比較と、初期試験の寸法結果を示しています。 図13 - [工程シミュレーションを活用した家電製品の改革: メキシコMabe社のガスコンロ組立から見る外観品質](https://japanforming.com/工程シミュレーションを活用した家電製品の改革/) - はじめに メキシコMabe社では創業当初からキッチンキャビネットおよび一体型家具の製造を専門に扱っていましたが、その急成長により、1960年には家電分野におけるメキシコ最大の輸出企業となりました。1990年代の米国で販売されたガスコンロと冷蔵庫の3分の2以上はMabe社製品であり、またゼネラルエレクトリック社ブランドの家電製品についても、その95%が世界最大のキッチン製造工場であるMabe社サンルイスポトシ工場で生産されていました。本稿では、Mabe社の買収以降、家電製品の製造および製造効率の向上をもたらした手法やツールについて検証します。 家電製品の製造に関する課題 いまや一般家庭にある家電製品は50種類を上回ります。家電製品には最新技術を搭載することが重視されますが、さらには消費者へ訴求できる魅力的な外観であることも重要です。そのため家電設計者はバージョンアップの度に、よりスタイリッシュなデザインへと改良を重ねなければなりません。 家電業界では厳しい要件を満たす製品を迅速に生産できる革新的なソリューションが求められています。一般論として、製品の外観がスタイリッシュであるほど、その製造には多くの困難を伴います。たとえば洗濯乾燥機の蓋(ガラス製でないもの)の裏面をご覧ください。多くのヘム加工が施され、またフランジには多くの返しがあるかと思います。もし蓋が平らであっても、洗濯機の天板の曲線にぴったりはまらなければならず、また蓋を簡単に持ち上げるための取っ手も必要です。この蓋を製造するにあたり、組立工程で公差に収めるには、これらの部位をすべて正確に並べてはめ合わせる必要があります。 このように多面的な検証が必要となりますが、OEMではデザインの評価にデジタルツールを活用することで、迅速な意思決定を行えるようになりました。Mabe社が3年前にAutoFormソフトウェアの導入を決めたのもこのためです。AutoFormを活用した新たなプロセスをご紹介する前に、まずは従来のプロセスについて説明します。 従来のプロセス 従来のプロセスでは、設計技術者が部品のデザインを作成すると、次に金型工場にてその部品の実現可能性と成形性を評価します。設計技術者は機能的でスタイリッシュな製品を設計することを責務としますが、しかし材料の成形限界線図(FLD)まで検討することはなく、また各製造工程における部品評価を行ったり、それに必要なツールを利用することもありません。 1. 成形限界図と材料カード 複雑な部品から単純なものまで、どのような部品でも製造の過程では問題に直面する場合があります。また仕様のとおりに部品を製造しても、それらを組み付ける工程で不具合が生じることもあります。設計通りに部品を製造または組み付けできない場合、金型工場は製品設計者に修正を依頼しなければなりません。しかし製品開発の後期段階までくると、ある部品を修正すると別の部品にまで影響が及ぶ可能性が高くなります。通常は設計が最適な状態になるまでに複数の部署間で何度もやり取りが必要になるため、単品部品の修正であっても数週間から数ヶ月を要します。単純な製品であっても、ガスコンロの組立図(下図)のように、複雑で管理が必要な多くの部品で構成されている場合もあります。 2. ガスコンロの組立図 シミュレーション担当部署 ケレタロにあるMabe TyP社シミュレーション担当部署では、部品設計の準備としてプレス部品のフィージビリティ評価を行っています。ガスコンロ、洗濯機、冷蔵庫の中でも主に製造が最も難しい「クラスA」の部品を中心に扱っています。またトランスファー型や順送金型を使用した他の構造部品にも対応しています。 3. CAD部品、シミュレーション、実部品 上の画像では、グレーで示した箇所は伸びが十分ではなく、自然な状態に戻ると部品の中央にゆがみが生じます。Mabe社シミュレーション担当部署ではAutoFormソフトウェアを活用してデザイン案を評価しています。設計工程の早期段階から不具合や改善点についてバーチャルに検討しながら、プレス部品の工程設計全体を作成しています。矛盾や限界を検出すると、設計担当者へ連絡をとり、AutoFormを使用しながら、着目すべきポイントや修正すべき個所について、その理由とともに説明を行います。 4. バーチャルプロセス シミュレーション担当部署は、金型技術者とも緊密に連携することで、シミュレーションを通じた修正の推奨や検証に関するサポートを得ています。設計部署と金型技術者間のコミュニケーションが効率化されるため、成形可能で作業性の高い部品の開発時間を大幅に短縮することができます。さらに、これらの決定はすべてデータに裏打ちされているため、有意義なコミュニケーションが図れるだけでなく、今後の製品開発にも役立てることができ、また最終製品の出荷においても極めて重要です。シミュレーション担当部署は、外観だけでなく高品質な製品を作り出すために金型技術者や設計技術者との協力体制を築くことで、製造プロセスを加速させる重要な役割を担っています。 5. 工程改善 上の画像に示された工程分析から不具合が検出され、部品の品質を改善するための対策が施されました。その結果、部品中央部の伸びが増加し、ゆがみが減少するなどの効果が顕著に表れています。全工程のアウトライン化と分析を徹底的に行うことで、構想段階から生産段階に移行するまでの時間を数週間から数ヶ月短縮することができます。Mabe社では、従来のプロセスに比べて40%以上の時間を削減できると見積もっています。これは各プロジェクトの大幅な工数削減につながります。 6. 外観品質の向上 まとめ Mabe社のシミュレーション担当部署は、常に最先端の技術を取り入れながら、プロセスの改善に努めています。金型製作を熟知することで、バーチャルな検証と実際の製造現場の観点の両方を考慮しながら、製造プロセスを包括的に理解することが可能になります。そして設計技術者が追い求める外観へのこだわりと、金型工場の生産能力とのバランスをうまく調整しているのです。 Mabe社の手法は、革新性、主体性、効率、関係者間の明確なコミュニケーション、そして製品開発およびエンジニアリングのプロセスを通じた全工程でシミュレーションツールを活用することでもたらされる結果の好例です。このような手法の合理化によって、リードタイムの期間を40%以上も削減することができます。 - [Starq Y-Tec社ではホワイトボディのアセンブリ工程を正確に予測し、トライアウト回数を大幅削減](https://japanforming.com/biwアセンブリのトライアウト回数を大幅削減/) - 概要 先んじて実施されたイタリアFontanaグループとの共同プロジェクトにおいて、プレス成形工程およびアセンブリ工程の解析ソフトウェアであるAutoFormが非常に高精度であることが確認されました。その後、マツダやBYDのTire1サプライヤであり、BiWコンポーネントのプレス成形およびアセンブリを請け負う中国Starq Y-Tec社の現場にて、新たな検証プロジェクトが実施されました。 本稿ではStarq Y-Tec社がAutoForm Assemblyを活用し、最終製品に至るまでの工数を大幅削減した事例について紹介します。 課題 Starq Y-Tec社は大手メーカーを顧客に有する単品部品のプレス成形およびアセンブリのサプライヤです。当時はアセンブリ工程をシミュレーションできるデジタル・ツールは使用しておらず、すべてアナログで組立作業を行っていました。そのためアセンブリ工程で生じうる不具合を事前に特定できる手段は何もありませんでした。 ある顧客のフロント・サイド・メンバーを製作する中で、アナログな作業には多くの無駄な試行錯誤が伴うという気づきがありました。 図1: アセンブリ部品 単品のプレス部品は仕様と完全一致しているとは言い難くも、基準形状とは大差ないものでした。プレス成形部門での作業時にはスプリングバックの問題に対応しましたが、部品が仕様の範囲内に収まると、アセンブリ部門による組立作業に移行しました。 しかしプレス部品を組み立てると、部品が設計通りにはまらないことが判明したのです。そこでエンジニアリング部門まで部品を戻し、デザインの見直しが行われました。部品設計の修正からプレス成形やトライアウトまで含めると、この見直し作業には約2~3週間を要しました。 それでもトライアウトでは十分な結果を得ることができませんでした。そして最終的に仕様が満たされるまで、この一連の作業を何度も繰り返すことになったのです。ここでご留意いただきたいのは、単品のプレス部品は初期の設計から公差に収まっていたという事実です。 Starq Y-Tec社副社長Li Qi氏は次のように述べています。「デジタル・ツールを活用してアセンブリの不具合を事前に予測しなければ、最終段階まで不具合対応に追われることに気づきました。初期段階にて多大な労力をかけて単品部品を公差に収めたにも関わらず、後期段階ではその部品を組み付けることができず、単品部品の設計やトライアウトからやり直しました。これには莫大なコストと時間がかかります」 プレス成形やホワイトボディのアセンブリにおいて、このような事例は頻繁に生じています。OEMでも部品に修正を加えて最終アセンブリに対応したといった事例も多くあります。 またアセンブリ部門による部品の組み付けが上手くゆかないと、エンジニアリングやトライアウトの部門に立ち戻り部品設計を見直す必要があるため、アセンブリ部門で生じた不具合の対応に追われることに不満を感じる場合もあるようです。 不具合への対応策 アセンブリ部門では不具合を検出すると、以下のタスクを繰り返しながら工程を修正してゆくことで、アセンブリの改善を図りました。 1. クランプの位置や順序の変更 2. 溶接の位置や順序の変更 3. 単品部品のさまざまな修正 不具合が解消されるまで、このトライ&エラーのループを4回以上も繰り返す必要がありました。1回あたり2~3週間を要するため、この方法には膨大な時間がかかるだけでなく、非常に複雑で非効率であることも明らかです。 開発期間の長期化、コスト上昇や生産遅延、最終製品や金型の品質低下といった問題が生じるだけでなく、生産が遅延しないよう従業員が残業を強いられるなど、時間やコストに過剰な負担が生じることは言うまでもありません。 このように計画性がない生産活動の中で軽視されがちなのが、実際の作業にあたる担当者の心の健康です。明確な目的が示されずに仕事量のみが急増することで疲労や不満が増大し、士気や自信も低下します。エンジニアリング、アセンブリ、トライアウトの部門間で業務に対する責任の擦り合いが生じ対立が深まると、さらに悪影響が広がります。 このような負の関係性は、残念ながら多くの生産現場で見られるようです。しかしながらデジタル・シミュレーションを活用すれば、アセンブリを良好に進めるためにどのような修正を行うべきかが明確になり、このような部門間の対立もすぐに解消されるでしょう。 AutoFormソリューション Starq Y-Tec社の上層部は、アセンブリの不具合を事前に予測できれば、このような問題を回避できると判断しました。常に納期短縮を目標に掲げ、不具合の対応に数週間はおろか数日の猶予すら嫌がる大手メーカーの顧客満足度を高めるには、より迅速で信頼できるソリューションが必要でした。 そしてStarq Y-Tec社ではAutoFormソフトウェアによるアセンブリのシミュレーションについて、検証プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは2段階の検証を行いました。 1. アセンブリ工程で生じうる不具合や課題をAutoFormソフトウェア上で正確に 再現できるかを検証。またシミュレーションの実行前には実部品を測定。 使用した部品は5個のコンポーネントで構成されたフロント・サイド・ メンバー。材料はSPCM980YL-55/55、板厚は1.8mm。 2. AutoFormシミュレーション結果と実部品の実測値を比較し、シミュレー ション精度を検証。 結果 AutoFormシミュレーション結果は、実際のアセンブリ部品の実測値に非常に近いことが判明しました。 比較を行うため、合計104カ所で測定を行いました。差異が0.5 mm未満であったのは80カ所、そのうち56カ所は0.3 mm未満でした。 残りの24カ所は差異が0.5mm以上でしたが、1mm以上の差があったのはわずか6カ所です。 図1: アセンブリのグループ評価 アセンブリのシミュレーションでは、実際のアセンブリ部品と非常に近い結果が得られました。50%以上が0.3mm以内、74%がアセンブリ部品の0.5mm以内でした。 図2: - [等価な材料カードをお探しですか?材料ばらつきのシミュレーションがお役に立ちます](https://japanforming.com/材料ばらつきのシミュレーション/) - 金型メーカーが、成形中の材料変形挙動を再現するための材料カードの作成に苦労していることは、良く知られています(こちらの記事も参照)。ほとんどの場合、等価な材料カードか、非常に限られたデータ(と一般的な推定)によって作られた材料カードを使う事になります。本稿では、インドのオートフォーム社テクニカル・アカウント・マネージャであるラマンディプ・シンが、いかにして材料のばらつきの考慮が金型工場に信頼のおけるデータを提供するエンジニアリング業務を助けられるか解説します。 プレス成形工程をバーチャルに検証する手法として、近年ではシミュレーション・ソフトウェアが標準的に活用されています。デジタルの検討とリアルタイムの製造を確実に対応させるには、プレス成形シミュレーションで使用する材料カードが重要な役割を担います。 金型メーカーでは、プロセス・エンジニアリング(工程シミュレーション)で限られた材料情報しか利用できないと、金型のトライアウトで頻繁に不具合が発生します。プレス成形工程のエンジニアリング(シミュレーション)における材料特性評価の重要性について、OEMサプライチェーン部門側の認識が十分でない場合、金型メーカーがプロジェクトを受注した際に、多くの問題が生じる傾向にあります。金型メーカーがプロジェクトのデータと部品設計を受け取る際には、部品材料の試験証明書または材料等級名のみが引き継がれます。試験証明書(図1)には通常、降伏応力(σy - YP)、引張強さ(TS)、全伸び、平均r値(異方性)など、わずかな材料パラメータしか記載されていません。これらのデータのみでは変形時の材料の応力状態を完全に説明できないため、正確な材料カードを作成することはできません。しかし金型メーカーは納期を厳守しなければならないことから、必要な材料パラメータを取得するために奔走する結果となるのです。 図1-金型メーカーが受け取る試験証明書(TC) インドのある金型メーカーでは、顧客から受け取った試験証明書(図1)に指定されたパラメータから材料カード(図2)を作成することになりました。試験証明書に記載されているパラメータは限定的でしたが、初期エンジニアリング段階のシミュレーションではこれを使用する以外に方法がありませんでした。金型メーカーはエンジニアリングを進めながらも、必要な情報を収集して材料カードの精度を高めようとしましたが、結局うまくいかず、プロジェクトの納期を厳守するには、不完全なデータで検討業務を完了するしかありませんでした。エンジニアリング部門ではトライアウトですべてが円滑に進むことを祈りつつ、最終的な金型製造の担当部署にデータを引き継ぎました。 図2: 「仮定」をもとに作成し、シミュレーションで使用した材料カード しかし残念ながら金型メーカーの思惑は外れ、トライアウト中にパネルに大きな亀裂が入ったのです(図3)。これはエンジニアリング段階のシミュレーションでは検出されなかった想定外の不具合です。 このような不具合が発生すると、通常はエンジニアリング部門の責任が問われ、またトライアウト部門では金型の修正が行われます。トライアウトとシミュレーションの結果が異なることには、さまざまな理由が考えられるにも関わらず、とにかく金型を完成させないといけないので金型の修正という解決策が採用されてしまうのです。しかしこれでは、この不具合が生じた原因が工程自体にあるのか、それともシミュレーションの設定値に誤りがあるのかを見落とすことになり、また材料パラメータの検証にも手間やコストがかかるため、確認されることはほとんどありません。 トライアウト部門が金型や工程のトラブルに対応できるよう、エンジニアリング部門では感度分析を行って安定性やロバスト性を評価すべきでした。そうすればわれの原因に関する有益な情報が得られたはずです。この事例ではシミュレーションで使用した材料カードが材料特性のばらつきを考慮していませんでした。生産時の材料のばらつきは重大な不具合を引き起こす可能性がありますが、ロバスト性解析ではばらつきの寄与度を特定することができます。しかしロバスト性解析を行う前に、まずはシミュレーションで使用する材料カードに不備がなく、サプライヤーの材料試験から得た実験データとほぼ同一であることを確認することが重要です。 図3:トライアウト結果とシミュレーション結果 適切なパラメータとは?材料特性の評価には、降伏応力σy、引張強さ、n値などの単一材料のパラメータと実測データの両方を提供するさまざまな実験があります。材料パラメータよりも実測データの方が材料カードの精度が高いことに間違いありません。しかし金型メーカーが必要な材料の実測データを入手できることは稀です。正しいパラメータだけでなく、コイルごとに異なる材料のばらつきを考慮することが重要です。たとえば試験証明書に記載された値がσy=157Mpa、UTS=293Mpa、r=2.2であっても、材料の製造工程に+/-10-20%のばらつきが生じていたとしたらどうなることでしょう。 下図のシミュレーション結果を確認してみましょう。左のシミュレーションには基本パラメータから-10%、右のシミュレーションは+10%のばらつきがあります。左には大きなわれが確認されましたが、右は完全にグリーンです。 図4: 成形性確認 - 材料の下限(左)と材料上限(右) では金型メーカーはどちらの結果で最終検証を行うべきでしょうか?金型メーカーが必要とするソリューションは、トライアウトや生産における材料のばらつきに応じた部品品質のプロセス・ウィンドウの確認です。そのため仕様に応じてすべての材料の組み合わせやばらつきを評価するロバスト性解析が有益です。図5は材料パラメータの潜在的なばらつきを示しています。 図5: ばらつきを考慮した材料パラメータ ロバスト性解析をもとに作成したFLD図から、部品が破断していることがわかります。FLCラインの超過は、われが生じるパラメータ組み合わせがあることを意味しています。このわれをさらに評価するには、部品の仕様限界に対する板減を分析する必要があります。 図6: 仕様限界と板減のばらつきによる板減の工程能力(Cpk) (画像をクリックすると拡大表示されます) 図6の寄与度プロットが示すとおり、この部品はr値(等方性)と引張強さに対する感度が高いです。ばらつきのプロットからも、材料のr値とUTS値が低いと、板減の仕様限界を超える場合があることがわかります。図6(右)は、材料にばらつきがあり、板減が56%に達する部分があることを示しています。 エンジニアリングの段階でばらつきを考慮したロバスト性解析を実行することで、トライアウトの実施前に金型のわれなどの不具合を特定し、修正することができます。これでコスト増や遅延の原因となる生産時の不具合を事前解消できるため、時間とコストを削減することができます。単一の材料パラメータのみを考慮したシミュレーションでは、ロバストで信頼性の高い設計に不可欠なトライアウトや生産のばらつきを考慮することはできません。 結論 工程エンジニアが意思決定を行う際に判断材料として使用し、金型製作時に参照データとしても使用するシミュレーション結果は、シミュレーションに設定する入力データの信頼性に応じて精度が異なります。 プレス成形工程の入力データは一定ではありません。材料特性はコイルごとに異なり、また生産工程の影響を受ける場合もあるため、ある一定のばらつきを考慮しなければなりません。品質管理部門では結果が常に安定するように、製造工程能力を評価する場合があります。 プレス成形では、入力データだけでなく、潤滑剤の粘度、温度、金型やブランクの粗さ、バインダにかかる圧力などの変数を考慮しなければなりません。単発の工程シミュレーションから得たパラメータのみを検証しても、生産工程を検証するには不十分です。プレスは量産向けに設計されているため、プレスの1ストロークだけでなく、生産工程全体をシミュレーションする必要があります。 生産工程の信頼性を担保するには、すべての工程パラメータのばらつきを考慮して、実際の生産条件下でシミュレーション結果の安定性と再現性を確認しなければなりません。これが生産工程を正確に検証する唯一の方法です。 - [グルーポ・セグラ社: 第3世代AHSS鋼の冷間プレス成形シミュレーション](https://japanforming.com/グルーポ・セグラ社-第3世代ahss鋼の冷間プレス成形/) - 自動車業界では、大幅な軽量化や安全性の強化が常に課題となっています。このニーズを満たすには、自動車の製造工程で使用する材料に対して特別な特性が必要となります。 自動車用冷間プレス金属部品の設計、開発、製造を一手に担う大手企業のグルーポ・セグラ社では、新世代の先進高張力鋼板(AHSS第3世代)の利点を生かし、熱間プレス用途に代わるソリューションを研究開発することを目標に掲げました。 これはOEMからの今後の需要に応じ、AHSS第3世代の工業生産に関するノウハウや実績を培うことを目的としています。オートフォーム社とアルセロール・ミッタル社は、グループ・セグラ社と共にこの共同プロジェクトに参加しました。 選ばれた鋼種は、Fortiform®1050+EGとFortiform®980+GIです。アルセロール・ミッタル社では材料の特性評価を行い、AutoFormプレス成形シミュレーション専用のデータカードを作成しました。また、めっき、潤滑のタイプや量を考慮して摩擦係数の提案も行いました。 このプロジェクトの目的は、現在工場で生産している部品(図1)をAHSS第3世代Fortiform®で再現することです。評価には、もともとDP600+GI(1.50 mm)向けに設計された補強用フロア金型を使用しました。プレス加工ではドロー工程とトリム工程を行います。ドロー工程では平らなブランクを目標形状に変形させ、トリム工程では材料の余剰部分を切り取ります。 図1: DP600+GI(左)およびFortiform®1050+EGやFortiform®980+GI(右)向け に開発された補強用フロア金型 [著作権: グルーポ・セグラ社] 生産に影響が出ないよう、グルーポ・セグラ社では新たな金型セットを製作することが決まりましたが、その前に、アルセロール・ミッタル社が開発したAHSS第3世代のプレス成形用の材料データカードを使用して、工程シミュレーションを行いました。これはプロジェクトの中でも最重要ステップのひとつとなります。 何度かシミュレーションを行った結果、量産材よりも機械的特性が高いため、バインダー力を上げる必要があることが明らかになりました。また絞り高さとビードの拘束力を増加することで、材料の塑性変形に必要な適切な伸びと、しわを回避できる適切な材料流入のバランスが最適化されることも判明しました。また形状をわずかに修正することで、成形性が向上し、しわも回避できました。またスティフナを追加して、スプリングバックによる偏差を見込み補正しました。 ここで現実に起こりうる問題を予測し、金型の切削後にはすでに解消することが不可能になる不具合を未然に回避する上で、AHSS第3世代Fortiform®を用いた工程シミュレーションが非常に有意義となります。 金型の再設計には分析的手法が用いられました。初期段階では、サーフェスの品質よりもドロー型のコンセプト形状に着目し、新たなゲイナーのサイズと位置、ビードの半径とサイズ、その他の要素を最適化します。このようにドロー工程のスプリングバックを抑制することで、シートがより基準形状に近いものとなり、見込み補正が担保されます。 材料の使用量や関連コストを削減する上でも、(通常のトライアンドエラーによる検討よりも)分析的手法を用いることで、ブランクサイズの最適化に的を絞って検討することができます。この手法では多くの側面を同時に検討することができるため、設計のプロセスを包括的にスピードアップすることが可能になるのです。 最適な見込み補正戦略を模索してスプリングバックを公差に収めるにあたって、まずは工程のロバスト性(安定性)を調査しました。これは金型の見込み補正を行う前に必ず行うべきことです。もしその工程が、潤滑、ブランクの位置、材料特性だけでなく、(制御できない)ノイズにも影響を受けやすいとあれば、スプリングバックの偏差に一貫性があるとは言えないため、すべてのシナリオにおいてスプリングバックを適切に見込み補正することはできません。 このコンセプトに対する理解を深めるため、まず図2の例をご覧ください。従来のエンジニアリングの手法を適用した場合、基準シミュレーションにおけるスプリングバックの偏差は2.8mmですが、(スマートエンジニアリングとも称される手法にて)プロセスの安定性を確認すると、最大値と最小値の偏差は2mmであることがわかります。 図2: スプリングバックの偏差 いよいよ次は金型の見込み補正です。最終部品をレーザー切断するというこのプロジェクトの特殊性から、見込み補正の方法は直接定義しました。レーザー切断後のスプリングバックの結果を部品の基準形状と比較し、ドロー工程の金型を見込み補正する手法です。寸法目標に達するまで、見込み補正を複数回実行する必要がありました。 図3: 左、見込み補正を行っていない公差を満たさない部品。右、公差に収まる見込み補正部品 シミュレーションを実行することで必要な品質が確認されたため、金型の切削および組み付け、そして金型工場でのトライアウトを開始しました。アルセロール・ミッタル社では、この段階までにFortiform®1050+EGおよびFortiform®980+GIを用いたトライアル用のブランクをグルーポ・セグラ社に出荷し、プロトタイプの製作と試験を行いました。その結果、Fortiform®1050+EGだけでなく、Fortiform®980+GIでも良好な成形性が示されていることが判明しました(図4)。 図4: アルセロール・ミッタル社はFortiform®1050+EG (左)とFortiform®980+GI (右)の プロトタイプ用のブランクをグルーポ・セグラ社へ出荷し、プレス成形トライアルの 査定を行いました。[著作権: グルーポ・セグラ社] アルセロール・ミッタル社の助言の下、グルーポ・セグラ社とオートフォーム社は共同でシミュレーション結果とドロー工程後の実部品を比較したところ、成形性、スプリングバック、余肉、ドロー後の材料において高い相関性が認められました。 現実とシミュレーションの一致 グルーポ・セグラ社、アルセロール・ミッタル社、オートフォーム社の協力により、この分析の結果、Fortiform(第3世代AHSS)の成形は可能であることが実証されました。現実に即した結果を得るためにAutoFormで使用する材料の性が極めて重要なのと同様に、製造開始前に部品の挙動を予測すること、そしてもちろん、この分野で豊富な経験を有する専門性の高いチームを編成してシミュレーション結果を実際の工程で再現することも重要です。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」開催レポート:その4 トヨタ自動車株式会社様](https://japanforming.com/autoformユーザー会「autoforum-2023」開催レポート④/) - 2023年9月29日(金)ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」を開催いたしました。 本稿ではユーザー会開催レポートと題しまして、残念ながら会場にお越し頂けなかったユーザーの皆さまに、発表頂いた内容の概略と会場の様子を4回にわけてご紹介します。 第4回は、トヨタ自動車株式会社 野田 平祐様の講演についてです。 第1回の講演(日産自動車株式会社様)についてはこちらから、第2回の講演(本田技研工業株式会社様)についてはこちらから、第3回の講演(南工株式会社様)についてはこちらからご覧いただけます。 ■AutoForUm2023アジェンダ■ 「ヘミングシミュレーションを活用したフード作りこみプロセスのご紹介」 講演者:トヨタ自動車株式会社 製品化製造技術部 車体アンダーSE室 CAEグループ 野田 平祐様 トヨタ自動車株式会社の野田様からは、AutoForm Assemblyを利用したヘミングシミュレーションの活用事例について、以下のようなご発表を頂きました。 1. ヘミング製品作りこみの現状 複数のプレス部品を接合したサブアセンブリ工程は、接合するためのすべてのパネルがそろって初めて精度検討を始めることができるという時間的制約があります。内製パネルはもちろん、さまざまな仕入れ先様で生産されたすべての部品を使った検討業務において何らかの変更が生じた場合は、結果を上流にフィードバックしてプレス品の精度修理を行う必要があり、非常に時間がかかると同時に実施できる内容も多くの制約を受けます。特に、既に設備が完成しているタイミングでその形状を変更するような修正は難易度も高く、制約の中で細かな修正を数多く実施することが求められています。 そこで、CAEを利用して型や設備を実際に制作する前に良品条件を作りこむことで、加工条件の変更やパネルの手直しをデジタルで事前に実施し、実際の作りこみ作業でのやり直しを削減するような取り組みを実施しています。 2. ヘミングCAEを使った造りこみプロセスの検討 CAEを使った事前検討のためには、シミュレーションが実物を十分に精度よく表現できていることが必要になります。まずはローラーヘミング工程における基礎的な評価要素として、しわをシミュレーションで十分に表現できるかどうかを確認しました。しわの表現は十分実物と一致していることから、シミュレーションを使った精度の確認とヘム後の精度変化を基準にした見込み補正検討に利用できるかどうかを検証しました。 ヘム後の精度について、傾向はある程度予測できました。一方で定量的にみると実機とは特定の領域で乖離があり、予測精度の改善が必要でした。 3. 予測精度向上の検討 接合、ヘム後の精度には様々な要因が影響を与えます。プレス単品の予測精度や、ヘムそのものの加工条件の再現、ヘム時に塗布する接着剤など、様々な領域で実機とシミュレーションの条件一致を図ることで、ヘム後の予測精度を向上することができました。 これにより、デジタル上でヘム精度変化を分析し、見込み等の対策を事前に検討することが可能となり、 目標とする実物での作りこみ作業を削減できることが期待されています。 ※AutoFormJapanによる発表聞き取りに基づく記事ですのでご了承ください。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」開催レポート:その2 本田技研工業株式会社様](https://japanforming.com/autoformユーザー会「autoforum-2023」開催レポート②/) - 2023年9月29日(金)ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」を開催いたしました。 本稿ではユーザー会開催レポートと題しまして、残念ながら会場にお越し頂けなかったユーザーの皆さまに、発表頂いた内容の概略と会場の様子を4回にわけてご紹介します。 第2回は、本田技研工業株式会社 川口 洋史様の講演についてご紹介します。 第1回、日産自動車株式会社 佛川様の講演については、こちらからご覧いただけます。 ■AutoForUm2023アジェンダ■ 「Autoform-Sigma®を活用した業務効率化 ~初期検討からTRYまでにおける既存検討方法からの脱却~」 講演者:本田技研工業株式会社 四輪開発センター 金型生産部 金型量産技術課 鈴鹿金型Gr 川口 洋史 様 本田技研工業株式会社 川口様からは、AutoForm導入の経緯から、約3年間実際の業務に適用した成果、特にAutoForm-Sigmaの活用について、以下のようなご発表を頂きました。 1. 金型生産部 金型量産技術課の紹介 所属している生産技術統括部 金型生産部 金型量産技術課(鈴鹿)について紹介しました。本田技研工業の新車開発の多くは栃木の事業所にて行われていますが、軽自動車のアッパーボディについては鈴鹿製作所(量産工場)内で開発されており、金型生産部という部署名ではありますが、デザイン段階から量産維持までの幅広い業務を行っています。 2. AutoFormの導入~運用開始 金型量産技術課ではAutoForm導入以前にもCAEソフトを運用していましたが、運用の中で、もっとこうしたいという「思い」が生じましたが、この先に予想される人の確保の難しさ等を考えるとそのソフトでの実現は困難と考えるようになりました。そこでAutoFormの評価を行い「思い」を最も実現できるツールとして2020年10月にAutoFormを導入して運用開始しました。 3. 取り組み事例 企画検討段階の事例として「ビード設定効率化による作業時間短縮」、量産段階の事例として「シワ発生原因の特定と対策立案」の事例を紹介しました。 3-1. ビード設定効率化による作業時間短縮 リアインサイドパネルのドロー型においての流入バランス調整のためのビード調整について多大な時間がかかっていました。多数の亀裂の危険部位としわの発生部位が隣接しており、ビード調整は困難であるとともに、不十分のまま金型製作するとその困難な調整作業をより多くの工数をかけて金型上で行うことになります。この重大で困難な作業にAutoForm-Sigmaを適用することにより378時間かかっていたものが11時間で調整を完了して予想通りのトライアウトの結果を得ました。 3-2. シワ発生原因の特定と対策立案 FRAME HOODのドロー型においてトライアウトでは問題なかったものの、量産開始時にしわが散発的に発生した事象の原因の特定と対策にAutoForm-Sigmaを活用しました。量産プレス機とトライプレス機は違うために実物での事象の再現は不可能な上に、量産の合間での短時間での修正工事になり、さらに量産中のため対策の失敗は許されません。そこで事前にAutoForm-Sigmaにて対策の方向性を検討することになりました。その結果原因となる4つの因子としわに対する寄与度を6時間程度で抽出することができました。 その結果を元に対策を立てて修正工事を実施したところ、その後は全くしわの発生はなくなり、安定した量産が可能になりました。 4. 今後の展開 今後としては適用部品を増やして開発工数を減らし、AutoForm-Sigmaをドロー工程だけでなく部品としての精度保証に活用していきます。また金型改修や量産での不具合予測にも活用して、金型製作や量産維持にも貢献していきたいです。 ※AutoFormJapanによる発表聞き取りに基づく記事ですのでご了承ください。 - [AutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」開催レポート:その1 日産自動車株式会社様](https://japanforming.com/autoformユーザー会「autoforum-2023」開催レポート:その1/) - 2023年9月29日(金)ベルサール秋葉原にてAutoFormユーザー会「AutoForUm 2023」を開催いたしました。 4年ぶりの開催となった今回は、AutoForm Engineering GmbH のコーポレート・テクニカル部門担当役員のバート・カーレアから「世界で本格化するDX改革」についてのご紹介と、4社のユーザー様より、プレス成形シミュレーションの枠を超えた、最新のアプリケーション活用事例発表を頂きました。また、ユーザー様同士の交流も活発に行われ実りの多いイベントとすることができました。ご協力、ご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。 ■AutoForUm2023アジェンダ■ 本記事ではユーザー会開催レポートと題しまして、残念ながら会場にお越し頂けなかったユーザーの皆さまに、発表頂いた内容の概略と会場の様子を4回にわけてご紹介します。 第1回目は、日産自動車株式会社 佛川 正哲様の講演についてご紹介します。 「AutoForm-Sigma® による量産ワレ要因の推定」 講演者:日産自動車株式会社 車両生産技術本部 プレス技術部 圧型技術課 佛川 正哲 様 日産自動車様からは、以下2つのトピックスについて発表いただきました。 高精度解析を実施するためにどのような方法で要件、特に材料、摩擦、解析条件を最適化したか 量産ワレの要因特定のためにAutoForm-Sigmaを活用 AutoFormの予測精度を向上した上で、量産の散発ワレの要因特定と、その対策にAutoFormを活用いただいています。 ※AutoFormJapanによる発表聞き取りに基づく記事ですのでご了承ください。 1. 高精度解析の要件 -材料モデルの高精度化 日産として長年取り組んでいるテーマですが、これまでは一軸引張試験による低ひずみ領域だけの考慮に留まっていました。そこで、材料モデル高精度化のために必要な各種材料試験を行うことで、高ひずみ領域まで考慮したssカーブと、引張圧縮の繰り返し試験による移動硬化則を考慮しました。さらに、等二軸引張試験結果から実験値に合うような降伏曲面の調整を行いました。 さらに、重回帰よりも高精度なサポートベクター回帰+機械学習を活用し、材料試験材とトライアウト材で特性が異なるという課題についての手法の開発を行いました。その結果、過去のトライアウト材の納入実績から、降伏応力YP、引張強さTS、全伸びELの平均値を以前よりも正しく推定することができるようになり、トライアウトの予測精度が向上しました。 -摩擦モデル高精度化 材料だけでは、なかなか次のレベルの解析高精度化が進まなかったため、摩擦の影響にも着目しました。まずは現物の状況把握からスタートするための摩擦試験を行いました。摩擦試験から採取した結果の処理には少し工夫が必要です。測定した荷重条件は、ヘルツの接触理論で荷重から面圧に変換し、摺動速度毎に面圧と摩擦係数の関係を作成しています。 得られたデータは、TriboForm Analyzerを使って AutoFormで使用できる摩擦マップを作成しています。摩擦マップは実験値に合うようなチューニングを行っています。 -解析条件最適化 品質工学の組み合わせ表を活用し、コントロール・パラメータの解析結果への寄与度を分析しました。解析設定を見直すことで高速かつ高精度な計算を実行することが出来ています。 これらの高精度化によって、ドロー工程の流入量のシミュレーションと現物の一致率の向上に成功しました。フロント・フェンダーの流入量一致率は閾値±5mmの場合67%から90%。±3mmの場合44%から69%まで向上しています。また、流入量が向上することで形状一致率も閾値±0.5mmで68%から95%に向上させることが出来ました。 2. AutoForm-Sigmaを使った量産ワレ要因分析 ARGUSによる量産ワレ保証に取り組んでいるが、生産工場で量産ワレが散発してしまう原因がわからず困っているという課題がありました。そこで、実験計画法ではなくAutoForm-Sigmaを活用し、量産ワレが発生している要因をシミュレーションで予測することにしました。ばらつきの主要因は、①材料(特性値、板厚、BL置き位置とサイズ) ②摩擦 ③ダイフェースのクリアランス の3つだと考えています。 そこで、材料と摩擦がどの程度ばらついているかを、生産工場からデータを取り寄せて分析しました。ダイフェースのクリアランスとブランク置き位置は、金型にセンサーを設置してデータを測定しました。AutoForm-Sigmaを使って、集めたこれらの量産変動パラメータを振り、ばらつき変化に弱い部位を特定しました。 ハイスペック・マシンによる並列計算で、下記のホイール・ハウス・インナー・パネルは8時間ほどで結果を取得することが出来ています。結果を見ると、量産で発生しているネッキング領域をAutoForm-Sigmaで検出出来ており、その原因が摩擦のばらつきによるものだと判断できます。不具合の要因分析がしやすいのがAutoForm-Sigmaの良いところだと思っています。 今後の課題 まだAutoForm-Sigmaでワレ検知できていない部品があります。たとえば、ボディ・サイド・アウターですが、金型の状態をより詳細に確認する必要があるかもしれないと考えています。また、工場出荷後に部品形状の変更が入っているケースもあり、どのように対処していくか検討しているところです。 今後に向けて 量産ワレの要因分析の結果を受けて、生産工場の摩擦をコントロールするために、潤滑油の量と粘度の管理するためのシステムを導入し、活用を目指しているところです。 - [GEアプライアンス社のプレス部品の変革](https://japanforming.com/geaのプレス部品の変革/) - シミュレーションと同じとおりに作りこみます はじめに トーマス・エジソンがゼネラルエレクトリック(GE)社を創業したのは130年以上も前のことです。現在ではハイアール傘下にあるGEアプライアンス(GEA)社は2016年以降「ゼロディスタンス」戦略のもとに社内の大改革を行っています。この戦略は同社が提供する製品とお客様のニーズ、アイデアとイノベーション、製品開発や製造場所とお客様の間に隔たりがない「ゼロディスタンス」のコンセプトに基づくものです(1)。ビジネスモデルの変革のみならず、社内外を問わずサプライチェーン全体をデジタル化によってシームレスに連携させる取り組みなどを進めています。GEアプライアンス社はこの急速な変革を通じて米国で最も急成長している家電メーカーです。本稿ではプレス部品の設計および製造部門で実施された変革についてご紹介します。 家電製品の材料や部品の中でもシートメタルは特に重要です。家電業界と自動車業界では、取り組むべき部品設計や製造に関する課題の多くが共通しています。製品開発においては製品形状や機能に注目しがちですが、しかし実は製造性こそが最終製品のコスト、品質、タイミング、ひいては収益性に大きく影響します。GEアプライアンス社の社内改革では、高品質な製品を設計および製造する上で、コストとタイミングのバランスをコントロールすることに早くから取り組んできました。 これまでのプロセス 製品設計者は、形状目標と機能仕様を満たすまで何度もトライ&エラーを繰返しながら設計変更を重ねます。そして最終段階になると外部の金型工場にデータを送り、金型製作の計画作成とコスト見積もりを行います。これまでは慣習的に、製造性評価とコスト見積もりは最終段階で行われていました。製品設計とシートのプレス成形挙動はどちらも複雑なため、評価中には不具合となりうる箇所がほぼ必ず検出され、その対応策として製品設計の修正が必要となります。しかし設計を修正するとアセンブリの合わせ面にも影響が出るため、すべてに対応することはできません。もし修正したとしても、それが「一度で完了」することは稀です。最終的に完了するまで、大抵の場合、サプライチェーン間で何度もやりとりが必要になるため、修正には膨大な時間と労力を要します。 自動車業界と同様にGEアプライアンス社でも、製品修正の開始が遅くなればなるほど、修正に伴うコストが膨らむことが確認されました。またコスト増だけでなく、安定した製造が見込める高品質な金型を製作する時間が圧縮されることにもなりかねません。 GEアプライアンス社のプロセスが効率的でないことは明らかです。そこで「ゼロディスタンス」戦略を展開し、これまで慣習的に行ってきたプロセスを見直しました。そして初期のマイルストーンから設計データの出図と製造性評価の距離(時間)をゼロにし、社内の専任担当者が最先端のデジタルツールを活用しながら評価を行うことになりました。 GEアプライアンス社の現在のプロセス GEアプライアンス社の現在のプロセスは、ディレクタのジョン・カイキスとシニアマネージャのロブ・メイズが開発したものです。金型技術者としての経験を生かし、同社の製品群全体について、設計部門と金型工場の過剰な連絡や確認が不要となるプロセスを作り上げました。 ケンタッキー州ルイビルのアプライアンスパークにある本社に新たな部門が創設されました。ここでは製品設計のデータを製造準備へ送る前に、部品のここではシミュレーション部門と称することにします。 以下にプロセスの詳細と、各関連部門が上手く調和している理由について説明します。 設計部門 設計部門はアプライアンスパークやその他の地域を拠点としています。その担当業務にほぼ変わりはなく、家電の外観と機能を重視しながら部品設計を行います。しかし現在のプロセスでは、部品設計のデータを金型工場へ送る前に、シミュレーション部門にて成形性の確認が行われています。 シミュレーション部門 シミュレーション部門は、設計部門、金型技術者、金型工場の橋渡しの役割を担います。設計部門から部品を受け取ると、その機能に不具合が生じることがないか分析します。 主に製造が最も難しいクラスA部品[1]を中心に扱いますが、インナー部品を扱う場合もあります。シミュレーション部門の担当者はみな金型製作の経験を有しているため、工程の修正について提案を行うこともできます。 このシミュレーション部門では部品設計案の評価にAutoFormソフトウェアを活用しています。工程レイアウトを展開してシミュレーションを実行し、提案された工程における設計のフィージビリティを確認します。また設計や工程に不備が検出された場合には、検討したデータを設計部門に戻します。AutoFormを活用することで、修正が必要な領域やフィーチャーが特定できるだけでなく、その理由もすべて説明することが可能になります。 設計部門は自ら修正を行うか、シミュレーション部門に修正を依頼します。修正案には理由が明記されているため、設計部門、金型技術者、金型工場の間で行う連絡や確認は必要最小限で済みます。過剰なやり取りが不要になるため、GEアプライアンス社の厳しい品質標準に適合した部品の開発から製造までにかかる時間が大幅に短縮されます。 金型工場 シミュレーション、金型、設計の各部門にて部品設計が承認されると、次に金型工場にて金型の見積もり、設計、製作が行われます。GEアプライアンス社の場合、シミュレーション部門と金型技術者からの申し送りをもとに、金型工場にてさらに成形性解析を行い、最終工程レイアウトを作成します。二次解析を詳細に行うことで、決定した設計や工程が金型工場の要件に適合していることが確認できるため、製造工程のレイアウトに対する信憑性が一段と高まります。そのためこの段階で、たとえば材料タイプを変更しなければならないといった大掛かりな修正を行うことはほぼありません。シミュレーション部門では、形状寸法公差(GD&T)評価や安全性や板減といった品質指標に対する厳しい限界の設定など、作業を前倒しで最大90%まで完了させるため、金型工場では製造を滞りなく行うことができます。金型工場で設計データを確認し、致命的な不具合が検出されることがほとんどなくなりました。しかしもちろん金型工場にてブランクサイズを改善し、ドロービードの高さや設定を変更して面圧を最適化するなど、調整を加えることは十分に可能です。 上述のとおり、シミュレーション部門は製造工程の迅速化に貢献しています。シミュレーション部門、設計部門、金型技術者が協力し合いながら、工程の制限や他の固定条件を考慮しつつ、優れた外観を有する製品製造を具現化する作業を進めています。 GEアプライアンス社の新たなプロセスの利点 GEアプライアンス社に導入された新たなプロセスは非常に斬新で、これまでになく多くの利点をもたらしています。その一部を以下に挙げます。 より分析的な取り組み GEアプライアンス社のプロセスによって設計と製造のワークフロー全体をより分析的に進めることができるため、データに矛盾が生じることがありません。金型工場では部品設計のデータを受け取ると、金型の設計、切削、製作を即座に行うことができるため、トライアウト開始までの時間を大幅に短縮できます。他のOEM企業も金型工場と同様の取り組みを行っていますが、GEアプライアンス社が講じる事前の適正評価は特筆に値します。 大幅な時間短縮 設計部門と金型工場がお互いに連絡や確認を行う時間は、過小評価されがちです。金型工場がシミュレーション結果のみを受け取り、製品設計者と共に修正作業を行う場合、たとえば部品の半径を変更するだけでも長時間を要する場合があります。 しかし工程全体を細部まで把握できれば、コンセプト段階から生産段階に移行するまで(数ヶ月とは言わないまでも)数週間を短縮することができます。GEアプライアンス社では、これまでの工程との比較において50%以上の時間短縮が図れると見積もっています。 収益の増加 GEアプライアンス社では、シミュレーションによる検証作業を中心に据えたプロセスを構築し、製造準備まで行っています。その結果、不良品率の低減と処理能力の向上を実現でき、最終収益が増加しました。 また各作業段階の工数を削減できたことも、大きな収益増に貢献しています。 まとめ シミュレーション部門を創設した技術者たちは、常に現状把握に努め、プロセスの改善について模索を続けています。彼らは金型製作の経験を有するため、製造工程を詳細に把握することができます。よって設計部門が追及する最適な形状や機能を理解し、それを金型工場で生産できるように調整することができるのです。 GEアプライアンス社のプロセスは、わずかな工夫と助言によって大きな改革を実現できることを示す典型的な例です。エンジニアリング業務の90%を前倒して行うことで、プロセス全体で50%以上の時間短縮を実現しています。 用語集 クラスA部品 - 家電製品の外観部品で、多くの場合、複雑なプレス成形やヘミング工程が求められます。たとえば、家電製品の外板、冷蔵庫のドア、洗濯機の蓋などが該当します。 参考文献 Modernising the company Edison built: Applying innovation and digitisation at GE Appliances (henrystewartpublications.com) - [見込み補正のトライ&エラーを自動実行: AutoForm-AutoCompのご紹介](https://japanforming.com/見込み補正のトライエラーを自動実行/) - AutoForm見込み補正機能は、長年にわたり万能なツールとして活用されてきました。この機能を有効活用すれば金型の再切削を減らすことができるため、トライアウトの時間やコストが軽減されます。しかしAutoFormで見込み補正を何度も繰り返すことが、ユーザーにとって、手間となることが唯一の難点でした。R10では見込み補正を自動で実行できるAutoForm-AutoCompフィーチャーが搭載され、ユーザーの手間をかけることなく、この見込み補正のトライ&エラーを迅速に進めることが可能になりました。ここでは、AutoForm-AutoCompの設定方法と結果の確認方法について簡単に説明します。 AutoFormにAutoForm-AutoCompが搭載されましたが、まずは設定方法を理解しなければ、シミュレーションを開始することができません。金型の見込み補正機能(Compensator)をすでに使用している方であれば、この新たなツールも簡単に操作できます。見込み補正方案の設定(直接、つなぎ、固定領域の定義)は、AutoForm-AutoCompでもこれまでと同様に行います。図1はこの事例で使用しているAピラーの断面で、元の形状と見込み補正後の形状を比較したものです。見込み補正方案を定義したら、次にシミュレーションの設定ページでAutoForm-AutoCompを有効にします。ここでは見込み補正の繰り返し回数を決定し、アンダーカットの確認を有効または無効にすることができます。これを有効にすると、次の見込み補正を実行する前にアンダーカットの確認が行われ、アンダーカットが検出された場合にはシミュレーションが停止します。これらの設定を終えたら、あとはシミュレーションを開始して結果を待つだけです。 図1- Aピラーの断面 シミュレーションが完了したらファイルを開き、どの結果が最も良好であるかを確認します。この事例ではAピラーを使用し、AutoForm-AutoCompで見込み補正を3回実行しました。図2は初回の見込み補正を行った結果です。図3は2回目の結果で、図4は3回目(最後)の結果です。これらはすべて、この事例で使用した設定に基づいて見込み補正を実行しました。シミュレーションが完了したのち、エンジニアはファイルを開き、どの結果が最適であるかを判断する必要があります。シミュレーションを確認した上で、期待に沿う結果がない場合は、新たに見込み補正方案を作成しなければなりません。これは、手動で見込み補正を行うのと変わりません。新たな方案を設定したらAutoForm-AutoCompを再度実行し、結果を確認します。 図2- 1回目 図3- 2回目 図4- 3回目 新たに導入されたAutoForm-AutoCompは、現時点ではまだ比較的シンプルなものですが、今後も使い勝手の向上や機能改善を行っていく予定です。AutoForm-AutoCompを利用すれば、都度手動で行うよりも遥かに時間や手間をかけずに、繰り返し見込み補正を実行することができます。 - [速度と精度の定量化 – Numisheet結果発表](https://japanforming.com/速度と精度の定量化-numisheet結果発表/) - Numisheetは、3D薄板プレス成形工程の数値シミュレーションと解析の分野において定評のある国際会議です。Numisheet 2022は7月10日から7月14日までカナダのトロントで開催されました。オートフォーム社は当会議に毎回参加して、将来のプレス成形工程に対する我々のソフトウェア・コードの有効性を示すために、アプリケーションを軸としたベンチマークに参加しています 今回のターゲットは、スプリングバック時に部品がねじれやすいことが特徴的な“ツイストダイパネル”と呼ぶ部品のスプリングバック検討です。オートスティールパートナーシップ(A/SP)が金型と部品の仕様を指定し、DP980(板厚1.5mm)と6000系アルミニウム合金(板厚1.5mm)が選ばれました。 図1: ツイストダイパネルとステイクビードの有無、対応するスプリングバック 参加者の目的は2つの加工条件での部品のスプリングバックを予測することです。1つ目の条件は、ダイとバインダの間のギャップを一定にし、パネルの流れを制限するものです。もうひとつの条件はステイクビードの使用です。ステイクビードはドロービードに似た機能でミニチュアパンチのような働きをし、パンチストロークの最後の数ミリでバインダからダイキャビティへのパネルの流れを止めます。これによってドロー成形からストレッチ成形に変化します。このようなパネルタイプでは竪壁に壁そりが発生しやすく、ストレッチ成形と相まってスプリングバックの制御が難しくなります。そのためツイストダイパネルの検証には高度なシミュレーション技術が必要となります。 参加団体 Numisheet 2022ベンチマーク1に参加した団体は以下の5つです。 LS-Dyna Inspire Form AutoForm Forming R10 (AutoFormお客様チーム) AutoForm Forming R10 (AutoForm会社代表チーム) Stampack このベンチマークには、オートフォーム社代表だけでなくAutoFormユーザーのお客様も参加し、計4本のコードにて、一定の条件下でサンプル部品のシミュレーションを競い合いました。 部品は長さ方向に複数の分割断面が設定されました。この中から5つの各断面(1、6、7、8、9)に19の基準点(P0~P18)を事前設定し、スプリングバック前後の座標を記録しました。 Stampackのみがボリューム要素(ソリッド要素)を使用し、その他の団体はすべてシェル要素を使用しています。 結果 プレス成形工程を効果的にシミュレーションする上で、以下の点においてAutoFormが首位を維持していることが明らかになりました。 計算時間 精度 平均断面曲率誤差 計算時間 AutoFormのお客様チームおよび会社代表チームともに計算時間は11分で、1位を獲得しました。この結果はLS-Dyna(126分)の11倍、Inspire Form(220分)の20倍、Stampack(1514分)の137倍でした。 図2: 計算時間 AutoFormのお客様はこのソフトウェアを使いこなし、AutoForm代表と同等の速さで結果を出しています。この点からAutoFormが高速なだけでなく操作も簡単に習得できるソフトウェアであることが分かります。 精度 さらに特筆すべきことは、精度に関してはAutoFormの圧勝であったことです。ステイクビードがあるDP 980(1)、ステイクビードがないDP 980(2)、ステイクビードがある6000系アルミ合金(3)、ステイクビードがない6000系アルミ合金(4)を用いて、合計4回のトライアルが実施されました。 図3: ステイクビードがあるDP 980 図4: ステイクビードがないDP 980 すべてのトライアルにおいてAutoFormは実験結果に非常に近い結果を算出しました。対照的に競合他社の結果は実験結果とは大幅に異なるものとなりました。 これは加工条件が異なる場合でもAutoFormの結果は一貫していることを示しています。 平均断面曲率誤差 竪壁に生じた壁そりの曲率測定については、縦軸の誤差が小さいほど、実験結果に対する予測モデルの精度が高いことを示しています。 この点においてもAutoFormは2つの材料および2つの条件(ステイクビードの有無)で競合他社を上回る結果となりました。 総合結果 Numisheetベンチマーク委員会は、すべての提出物から以下のように評価しました。 ステイクビードがあるDP980では、AutoFormが最高ランクを獲得しました ステイクビードがないDP980では、Inspire Formが最高評価を得ましたが、AutoFormも同程度の高評価を得ました - [AutoForm-ProcessDesigner^ForCATIAを活用した効率的なリバースエンジニアリング手法による解析精度向上の取り組み事例](https://japanforming.com/リバースエンジニアリング手法の取組事例/) - 【はじめに】 近年、金型のリバースエンジニアリングは、製品開発や生産工程において重要な役割を果たしています。金型は製品の品質、コスト、納期などに大きな影響を与えますが、現在でも製作過程の多くを職人技に頼っており、金型開発の効率化やデジタル化にはさまざまな課題が存在します。たとえば、現場で手仕上げされた金型と金型開発データとの整合性がとれないとか、既存の金型の不具合や改良点を3Dのデジタルデータ上で検証したくても実物と一致するデータが存在しないとか、リピート型(たとえば、海外向けのコピーダイ)の整備に工数がかかりすぎる、などがあります。 これらの課題を解決するためには、リバースエンジニアリングが有効です。リバースエンジニアリングとは、物理的なオブジェクトを3Dスキャンしてデジタル化し、CADモデルに変換する技術です。この技術は金型の設計、製造、修復、再製作などに応用できます。しかし、リバースエンジニアリングを行うためには、膨大な工数やコストがかかることが知られています。本稿では、弊社のソリューションを活用した効率的な金型リバースエンジニアリング手法と応用事例ついてご紹介します。 【STLスキャンデータによるベクトル・フィールド生成機能】 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAはCATIA環境上で、金型面設計や、NC加工準備のための面修正を迅速に実施するソフトウェアとして提供されています。最新版R10での新機能の一つとして、見込み補正ソリューションを強化しました。従来は、見込み変形量を決定するためのベクトル・フィールドを、別のCAD環境や解析ソフトウェアで生成する必要がありました。新しく開発されたベクトル・フィールド生成機能では、CATIAの環境内で2つの形状(STL同士、STLからサーフェス、サーフェスからSTLおよびサーフェス同士の4つのパターン)間のベクトル・フィールドを算出できます。生成タイプには、押し付け変形用の偏差ベクトル・フィールドと見込み補正用の逆偏差ベクトル・フィールドの2種類があるため、トリム型ドローシェル形状の作成やハンド再現面、リピート型など、さまざまな場面で幅広く活用できます。また、見込み補正エディタに搭載されている様々な見込み補正オプションと組み合わせることによって、柔軟な見込み補正戦略と高品質な見込み補正面を両立することができます。 【課題:「ハンド再現面」の作成】 多くのお客様が抱える課題の一つである実型の再現データ作成作業においても、本新機能は有効です。たとえば、実際の金型表面をスキャンしたSTLデータと金型のオリジナル設計面の偏差ベクトルを算出し、見込み補正エディタを使ってフィッティングさせることで、「ハンド再現面」や「リピート型」の作成が迅速かつ簡単に実施できます。(図1) 図1:STLによるハンド再現面(リピート型)の作成イメージ AutoForm-ProcessDesignerForCATIAでは、複雑な金型STLスキャンデータを読み込む際、不要な箇所をフィルタリングし、ノイズを取り除くことができます。また、見込み補正エディタでは、形状を変更しない領域を自由に設定したり、曲率維持領域を定義したり、STLが存在しない領域も制御できたりといった高い自由度の見込み補正が可能です。本稿では、この技術を用いて複数の目的で成果を上げた大手自動車部品メーカーである株式会社協豊製作所(以下協豊製作所)の活用事例をご紹介します。 【活用事例:実型製作後に発生する精度変化要因の詳細分析】 協豊製作所では、実物と成形シミュレーションの結果が一致しないという問題が発生することがありました。金型製作の現場では、より品質の高い金型をより早く製作するために、シミュレーションで使用した金型形状に対して経験に基づいて手を加えることがあり、このことが原因でシミュレーションと実際の金型形状には違いがあることは把握していました。この影響を調査するため、ハンド修正された形状を再現したシミュレーションを実施することで、要因分析を行いたいと考えていましたが、ハンド再現面の作成には多大な工数がかかるため、これまで実現することができていませんでした。AutoForm-ProcessDesignerForCATIAに新機能が追加されたことから、現場で仕上げられた金型面または外注先から仕入れられた金型面を再現し、解析によって精度の変化要因の詳細分析することに取り組んでいます。下記に二つの事例をご紹介します。 《事例①》量産品OKの金型面を再現し成形シミュレーションで相関性の分析と確認 本事例では、精度向上の取り組みの一環として、現場で仕上げられた量産品OKの金型面を再現し、(図2)成形シミュレーションとの相関性の確認を行いました。精度の変化要因の分析において、形状の不一致要素を取り除いくことが可能となり、成形条件の影響についてもデジタルで高精度に検討することができるようになりました。 図2:現場で仕上げられた金型面を再現した金型サーフェス 《事例②》トライNGの金型面を再現し成形シミュレーションで精度の変化要因を解析 本事例では、外製金型でのトライNG発生時に金型面を再現し、成形シミュレーションを実施しました。(図3)これにより、成形性検討時の金型形状では発生しなかった問題を再現することができるようになりました。また、現在の金型の状況を正確に再現したシミュレーションを基準とすることで、次回トライに向けて最も有効な対策立案を確実に実施することが可能となりました。 図3:外注先から仕入れられた金型面を再現した金型形状と解析設定 協豊製作所はAutoForm-ProcessDesignerForCATIAの新機能を利用して、シミュレーション予測精度の向上と、より正確で確実な不具合対策の検討手法を確立しました。今後もプロセス全体のデジタル化や検討効率向上を進めることで、金型設計製作の品質向上とリードタイムの削減が期待されています。 【まとめ】 見込み補正ベクトル・フィールド生成及び見込み補正エディタによるリバースエンジニアリングの事例を紹介しました。これらの手法を活用することで、以下のような効果が期待されます。 (1) 現場の職人技による型補正を正確にデジタル化することで、開発データとの一貫性を確保でき、また知見や経験をデータベース化することができます。 (2) ハンド修正の再現面を使った成形シミュレーションで最終確認を行うことができ、精度の変化要因の詳細分析や見込み補正の織り込み率向上を期待できます。 (3) ハンド再現面やリピート型の作成時間とコストを大幅に削減できます。 (4) すべての作業をCATIA環境下で完結することにより、見込み補正やリバースエンジニアリングをCATIA品質で実施することができます。 【企業概要】 株式会社協豊製作所 設立:1949年3月 所在地: 愛知県豊田市トヨタ町6番地 代表者:代表取締役社長 大地 洋三 様 資本金:10億8,800万円 従業員数:1,297名 事業内容:自動車用プレス、溶接部品及びEV関連の精密プレス部品製造、各種自動化設備の開発・設計・製作 URL:https://www.kyoho-ss.co.jp/ - [どうすればマネージャーはプレス成形シミュレーションの結果確認をより効果的にできるのか?](https://japanforming.com/マネージャーに要求される種ミュレーション結果/) - はじめに 米国のオートフォーム社ではお客様から珍しい依頼を受けました。短期集中型のシミュレーションのトレーニングをご希望でしたが、それを部署のマネージャーが受講するというのです。 エンジニアリング部署のマネージャーは、通常、エンジニアの業務を確認して承認を行う立場にあります。しかし業務に使用するソフトウェアを定期的に使用する機会がないマネージャーは、その業務内容を把握することが難しいと感じていたのです。同社ではある部署で完了した業務が次の部署に渡る前に、そのマネージャーが承認すべき業務の内容を的確に理解することで、業務効率がさら高まることを期待していました。またオートフォーム社もこのような取り組みが価値を生み出すという点に同意しました。 本稿ではシミュレーションの確認業務において、マネージャーが直面しうるさまざまな状況への対応策、そしてシミュレーションが実物や製造現場と合致していることを検証する方法について説明します。 マネージャーによる確認内容 製造のあらゆる段階において重要になるのが、デジタルの世界と現実世界の関係を理解することです。エンジニアリング部署のマネージャーはシミュレーションのトレーニングを受けていないため、まずAutoFormソフトウェアのインターフェースに戸惑うかもしれません。そのためシミュレーションの設定や実行にはどのようなものが必要で、シミュレーションの結果が何を意味するのかを理解することから始めます。 図 1: AutoFormにおける考慮すべき項目 エンジニアリング初期段階のフィージビリティ検討と後期段階の最終検証には共通する加工条件が必要ですが、後者には、はるかに詳細な条件設定が求められます。 図2:シミュレーションの必須パラメータと詳細パラメータ 開発のマイルストーンとは別途、マネージャーが担うべき役割として、設定が最適であるか、またシミュレーションが「健全」であるかを確認し、結果を確認する必要があります。またシミュレーションが会社標準に適合しているか、またどの部分が逸脱しているかを特定し、それを修正する方法も理解する必要があります。 マネージャーを対象としたトレーニングでは、このような確認業務を効果的に行い、より優れた設定を提案および導入することで、開発プロセス全体のさらなる効率化を図ることを目的としています。そこでまずはこれまでマネージャーによる確認業務がどのように行われてきたか、簡単に見てみましょう。 これまでのシミュレーション確認方法 エンジニアが扱う技術業務の有用性、機能、目的について、そのマネージャーが十分に理解していたとしても、大抵の場合、マネージャーはシミュレーションのソフトウェアについてまで把握する時間的余裕はないようです。そのためシミュレーションの結果をインタラクティブに解釈することが難しく、また関連する成功事例についても理解不足に陥りがちです。そのためマネージャーは問題を改善または解決に導く提案ができるとは言い難いのが現状です。 シミュレーションをより効果的に確認できる新たなプロセス このマネージャーを対象としたAutoForm短期集中トレーニングでは、AutoFormソフトウェアに触れ、慣れ親しんでいただくことで、以下に対応できるようになることを目的としています: - シミュレーションの加工条件を確認し、標準に適合していることを確認 - シミュレーション結果の確認 - シミュレーション結果の可否に関する判断 - 望ましい結果を得るために必要な設定変更について提案 シミュレーションにおける基本として、設定条件が良好でなければ、良好な結果を得ることはできません。どの会社にも長年の経験から培われた適切な設定があり、それが以後のシミュレーションのベースとなってゆくのです。AutoFormの標準機能はこのような事例を集約し、シミュレーションの設定時に標準を適合させる機能です。これで設定に一貫性を持たせることができます。またこれを活用すれば、マネージャーもシミュレーションの設定が標準に適合しているかを簡単に確認することができます。マネージャーにとってはこの標準機能を使いこなすことで、エンジニアによるAutoFormの活用状況を効率的に監督することができるため、このトレーニングでも重点課題となっています。 クリックを数回行うだけで、正確な結果を得るためにはどのパラメータを変更または含めるべきかをすぐに特定できます。AutoFormにて設定された表示ルールにて確認すると、社内標準から外れている部分がすべて黄色になります。次に標準を適用すると、現実から逸脱しているシミュレーションのパラメータが即座に特定されます。 図3:AutoFormの工程ステージでデザイン標準を適用した例 マネージャーによるシミュレーションの確認業務では、見過ごすと下流工程で重大問題となりうる不具合を発見し、その対策を促すという非常に重要な役割が課せられています。重大な不具合から些細なものまであらゆる不具合は、この段階で修正すべきです。なぜならばトライアウトまで進んでしまうと、修正作業ははるかに複雑になり、また膨大な時間とコストを要することになるからです。 シミュレーションが「健全」でなければ、信頼できる結果を得ることはできません。シミュレーションで警告が出たら、その原因や要因を特定して対策を検討する必要があります。警告の中には無害な通知もあれば、即対応すべき重要情報もありますが、中でも「show stopper」とも呼ばれる致命的問題については、結果が出る前に対応しなければなりません。これは収束に関する警告であり、特にタイムステップが不安定であることに起因します。しわが局所集中していたり、金型のギャップが不十分であったり、特定のタイムステップで材料が過多に変形しているなど、さまざまな状況から生じる可能性があります。 図4:しわの局所集中による収束エラー 警告はシミュレーション実行の最後に多くのことを教えてくれますが、シミュレーションの適切な設定を知ることは、最初の段階で警告を回避し、確かな結果を得るのに役立ちます。この短期集中トレーニングでは、このような警告とその対策だけでなく、さまざまな工程や状況で確認すべき設定パラメータについても学習します。特にインポートした形状のメッシュ設定や対称設定、工程計画の公差や警告、工程ステージで扱う金型動作などを重点的に扱います。 シミュレーション設定が健全であること、また標準に適合していることが確認できるようになると、次にマネージャーに求められるスキルがシミュレーション結果の適正な解釈です。これには反復的かつ体系的なアプローチが欠かせないため、トレーニングを受講していただくことをお勧めします。 新たなシミュレーション確認方法による利点 エンジニアリング部署のマネージャーにAutoFormソフトウェアのトレーニングを受講していただくことには、以下のような利点があります。 改修やトライアウトの回数削減 シミュレーションの段階で不具合を修正できれば、最終部品を設計する段階での修正やトライアウトの回数が削減されます。トライアウトにはそれぞれ数日から数週間ほど要し、コストもかかります。シミュレーションを活用して初期段階から不具合をつぶしてゆくことで、数カ月におよぶ開発時間を数週間から数日まで短縮することが可能になるのです。 不具合や結果の包括的な理解 エンジニアリング部署のマネージャーがシミュレーションの設定をより包括的に理解することで、様々な問題に対処するスキルが向上します。この短期集中トレーニングでは、以下の評価コンセプトについて重点的に学習します。 - 成形性の許容範囲 - 有効な成形荷重の確認 - 部品寸法の評価 - 工程の再現性 図 5:AutoForm の高度な成形性 エンジニアが何を意図してどのような作業を行ったのかを理解する必要は全くありません。マネージャーはただファイルを確認して問題点を洗い出し、それをもとにエンジニアに指示を出すだけでよいのです。 製品化までの時間を短縮 マネージャーによる確認業務を効果的に行うことで創出される最大の利点が、製品化までの時間を短縮できることです。現況の市場は変化が著しく、また競争も激化しています。競合他社よりも早く製品を発表することで、ブランドの認知と顧客の信頼を築くチャンスが高まります。 シミュレーションの確認業務を効果的に進めることができれば、製品の市場投入までの期間を大幅に短縮でき、会社の優位性がさらに高まります。 - [先進高強度鋼(AHSS)のガイドライン: 主要鉄鋼メーカーによる無料オンラインリファレンス](https://japanforming.com/先進高強度鋼ahssのガイドライン/) - WorldAutoSteelは世界の大手鋼板製造メーカーが集まるコンソーシアム(共同企業体)で、長年、自動車の車体構造に適した製品や技術を推進しています。30年前、自動車業界では軽量化による排出ガス抑制と燃費向上、そして高まる安全規制への対応が求められる一方、車体構造の改良によるコスト効率化の要望も高まり、相反する課題に直面していました。こうした課題を克服するために、新たな鋼種の開発が進みましたが、これらは従来使用されてきた軟鋼とは成形、接合、加工の特性が大きく異なるものでした。 これを機に幅広い安全・性能基準を満たす軽量鋼材の車体構造を実証するための超軽量スチール車体(ULSAB/ Ultralight Steel Auto Body)プログラムが立ち上がりました。そしてクロージャーやサスペンションなど、車両部品や系統に関するプロジェクトが次々に実施されました。 これを補完する形で2003年に先進高強度鋼板(AHSS)のガイドラインが初めて刊行され、AHSSの成形や接合に関する世界的な優良事例が紹介されました。2014年に発行されたガイドライン第5版には商的利用されている50種類の自動車用鋼材のポートフォリオが含まれています。そして2017年に発表された第6版では、他に例をみないAHSS、38種が特集されています。業界の先駆者であるスチュアート・キーラー博士は、第6版から冶金/成形分野の技術編集者を務め、最新版ではダニー・シェフラー博士がこの役職を引き継いでいます。 ガイドラインの最新版はAHSSinsights.orgからご利用いただけます。これはモバイル対応のオンラインデータベースとして無料公開されており、情報を素早く検索および閲覧することができます。オンラインのフォーマットは刷新され、新たな技術や鋼種の開発状況に合わせタイムリーに更新が行われています。現在、約150の記事と1000の引用があり、その多くは出典へのリンクがあります。ガイドラインは、冶金、成形、接合の分野を中心に情報を展開しています。さらにウェブサイトから技術系ブログ「AHSS Insights」へアクセスできます。 AHSSガイドラインには超低炭素鋼やAHSSから最新の第3世代鋼まで、15種の鋼板について概要を紹介しています。引張強さが約2000MPa前後の冷間および熱間プレス鋼種は日常的に生産されています。 AHSS鋼種はフェライト、パーライト、セメンタイト以外の組織相を持つマルテンサイト鋼および多相鋼で、引張強度は440MPa以上あります。今や約65種類のAHSS鋼種が商業生産またはそれに近い形で生産されています。 第3世代AHSSは多相鋼で、引張試験、せん断端試験、曲げ試験で測定する成形性の向上を目的としています。この鋼材は一般的にベイナイトまたはマルテンサイトの層中にオーステナイトが残留しており、フェライトや析出物を特定の割合および分布で含有している場合もあります。 鉄鋼メーカーでは各製鋼所の製造能力と生産の優先順位に適した配合や加工手段を模索しながら、さまざまな方法で鋼材の特性強化に努めています。このため、成形性が良好な二相鋼(DH)や複相鋼(CH)、TRIP補助ベイニティック・フェライト(TBF)鋼、カーバイドフリー・ベイニティック(CFB)鋼、焼入れ+分割(QP)鋼など、第3世代と称されるさまざまなタイプの鋼材が開発されてきました。中マンガン(MedMn)鋼の開発も進み、間もなく市場投入が予定されています。 第3世代鋼の成形性向上が進むと、高強度製品の製造や設計の選択肢が広がります。近年の自動車メーカーではBピラーなどの衝突エネルギー管理関連の部品にプレスハードニング鋼を用いる傾向にあります。第3世代はホットスタンプ材(PHS)の強度レベルを目指していますが、この強度レベルを有するその他の鋼種とは異なる冷間プレスの成形性を備えています。 多くの自動車メーカーでは車体構造全体に340MPa以上の降伏強度と590MPa以上の引張強度を有する二相鋼のDP340Y590Tを用いています。あるメーカーは980 MPaの第3世代鋼を車体構造部品に代用し、板厚を0.4 mm削減しても衝突性能に遜色はないことを確認しました。また別のメーカーでは強度が高く板厚が薄い第3世代の鋼種を用いることで、シートレールのより効率的な設計が可能になりました。 規定の引張強度が非常に高い鋼材の中には「超高強度鋼」と称されるものもあります。「超」高強度鋼の定義として980 MPa以上と定める企業がある一方、1180 MPaまたは1270 MPa以上と掲げる企業もあります。しかし生産者やユーザーの間で一般的に共通認識されている定義はありません。実際には「先進高強度鋼(AHSS)」や「超高強度鋼(UHSS)」といった用語は名称が異なるのみで製品に違いはありません。鋼材の製造工程である成形、接合、加工技術は、鋼種、板厚、機械特性を扱うものであり、その鋼材を「先進」や「超」と呼称することは技術的側面とは無関係です。このような根拠はさておき、本稿で紹介したガイドラインでは「超高強度鋼」という呼称は使用していません。ただし文中で引用されている論文には一部そのように記述されている場合があります。 以下の汎用的なグローバル成形性の図表は、鋼材の相対的な強度-全伸びを示しています。この最新版にはホットスタンプ材も追加され、最新の生産情報に基づき(範囲を示す)楕円の大きさと位置を調整しています。 グローバル成形性の図表は、鋼材が有する強度と伸びのバランスを示しています。 世界の鉄鋼業界では図表の右上部に相当する高強度と高成形性を併せ持つ鋼材の開発に取り組んでいます。 AHSSガイドラインの改定版では成形関連のセクションがより充実し、多くの新たなトピックが追加されました。特に真の破壊ひずみや局所的成形性の評価指標について詳しく論じています。またインダストリ4.0および積層造形について扱う論文なども寄稿されています。シミュレーションに関する記事では適切な降伏基準と硬化則を選択すべき重要性について解説しています。スプリングバックおよびその緩和戦略についても多くのページが割かれています。 ホットスタンプ材については、国際的に著名なエレン・ビルール博士が複数の記事を寄稿しています。ホットスタンプ材の歴史、市場の現状と展望、製造工程と必要設備、鋼材の特性、さびの防止策、ホットスタンプを使用した自動車の詳細調査など、ホットスタンプ材について幅広く網羅されています。それぞれの記事には20~30点の図表が含まれているほか、大半の記事には50件以上の引用があり、引用元のリンクも挿入されています。 このウェブサイトにはAHSSと種類が異なる鋼材や非鋼材部品との接合についても多くの記事が掲載されています。特に抵抗溶接について、工程、性能、試験、モデリングについて詳しい説明があります。この接合に関する特集は、前回のガイドラインと同様、オハイオ州立大学のMenachem Kimchi氏が担当しています。 このウェブサイトにはAHSSに特化したブログページがあり、最新の記事が毎月追加されています。また世界中の読者からもコメントや質問が活発に投稿されています。当該分野の専門家がこのブログに記事を寄稿することもあります。 AHSSガイドラインは現場の技術者やユーザーを対象に作成されたものであり、このサイトをご利用いただくにあたり、高い学歴や学位などは一切必要ありません。新たな鋼種の扱いや成形・接合手法の優良事例について、多くの有効な情報を収集できるサイトとして、ぜひAHSSinsights.orgをご活用ください。 著者紹介 ダニエル・シェフラー博士は、板金製品の材料選定、プレス金型の検収、実践的な成形性解析や製造工程の改善に関する分野に30年間従事してきました。Engineering Quality Solutions社の創立者兼社長であり、板金成形において考慮すべき材料特性について、製造会社の新人研修や社員研修を行っています。 シェフラー氏はPrecision Metalforming Association (PMA)が刊行するMetalForming Magazineのコラム「The Science of Forming」を4年間担当し、現在は月間掲載の「Metal Matters」を執筆しています。また自身が経営する4M Partners社でも「Sheet Metal Forming-Engineering and Business Management」の執筆・出版を行っています。 シェフラー氏はSAE国際金属技術委員会の仕様担当部会に所属し、またNorth American Deep - [摩擦だけじゃない!? TriboFormの提供する熱伝達係数モデル](https://japanforming.com/triboformの提供する熱伝達係数モデル/) - 【背景】 SDGsが声高に叫ばれる昨今、自動車業界にはBEV開発に対する強烈な波が押し寄せています。電動車はこれまでの内燃機関エンジン車と比較して全く異なる車体構造が求められるため、構成する部品の設計も大きく異なるものとなっています。これまでも重要だった乗員の保護に加えてバッテリーの保護などの新たな要件も追加され、より高強度な構造が必要となっています。また普及のための最大の障壁が航続距離にあることから、これまで以上の車体軽量化が必要と言われています。高強度化、軽量化のための一つの施策として、熱間成形部品の適用が再度注目されています。 【熱間成形シミュレーションの課題】 熱間成形によって生産される部品は、その部品の最終的な強度が成形中の温度履歴によって決まります。成形中の温度を決定する要因は種々ありますが、シミュレーションで検討する際に実物の条件を取得するのが最も難しいパラメータの一つとして、金型とシート材料間の熱伝達係数が挙げられます。そもそも熱伝達係数は正確な値を測定すること自体が難しく、また材質や面圧、接触状態によって幅広くその値が変化します。しかし、正確な熱伝達係数を使用しないと成形中の材料温度を正しく予測することができず、その結果最終的な製品の強度についても精度よく予測することが難しいといった課題があります。 【TriboFormとは?】 TriboFormは、実際の試験データを使用して、複雑な摩擦現象を高精度な数学的物理モデルとして提供するソフトウェアです。モデル作成には、潤滑剤種類、量、シートメタルの表面粗さ、金型の表面粗さの情報を利用し、複数の加圧、摺動試験を組み合わせて摩擦をモデル化します。 図1 TriboForm摩擦モデルの概要 【TriboFormの物理モデルの概要】 物理モデルには、シートメタルと金型のミクロな接触面積とその面圧や摺動距離に依存した変化と、その形状に対応する潤滑油の分布、潤滑油が担う接触圧力と摺動時の粘性抵抗等が考慮されています。それらの複合的な関係性をモデル化することで、面圧、摺動速度、シートメタルに付与されるひずみ量と温度に依存した摩擦係数を導き出しています。[1][2] このミクロな接触面積とその面圧に依存した変化を取り扱う技術は、熱伝達係数を算出するためにも利用することができます。そのためTriboFormは摩擦モデルに加えて熱間成形用のHTC(熱伝達係数)モデルも提供しています。 図2 TriboFormの提供するHTCモデルの一例(面圧と材料のひずみに依存したHTC) 【TriboFormのHTCモデル適用例】 以下に通常の面圧依存HTCを適用した成形結果と、TriboFormのHTCモデルを使用した非常に簡単なサンプルを示します。材料は22MnB5を使用し、材料を1000℃まで加熱後、ドロー成形を行っています。 図3 左:通常の面圧依存HTC 右:TriboFormモデルを使用したHTC 成形途中における各部位でのHTCを図3に示します。材料の摺動があり、負荷される面圧も時系列的に変化の大きい下部フランジ上において、通常の面圧依存モデルと、TriboFormモデルではHTCに大きな差があることがわかります。異なるHTCが適用されているため、この部分での熱流束も変化することとなり、結果として製品の冷却速度も異なる結果となります。図の時点ではTriboFormモデルのほうが高いHTCを示しているため、冷却速度は速くなっています。 図4 左:通常モデルのマルテンサイト比率 右:TriboFormモデルのマルテンサイト比率 製品冷却後の最終的なマルテンサイト比率を図4に示します。成形中、およびクエンチング中の冷却速度の違いから、最終的に製品に生成されるマルテンサイト比率は全く異なる予測値となります。図3に示す通りTriboFormモデルのほうが早く冷却されたため、最終的なマルテンサイト比率もTriboFormモデルを使用した結果のほうが高く予測されています。 【まとめ】 熱間加工における正確な冷却速度の再現は、最終的な製品強度を正確に予測するため必要不可欠な要素です。一方で、正確な冷却を再現するために必要な熱伝達係数は測定が非常に難しく、また温度や面圧に依存する非常に複雑な挙動を示します。部分的に冷却速度をコントロールして一つの部品内に異なる強度を持たせるテーラード・テンパリングの技術なども広がりを見せており、シミュレーションにおけるHTCの正確な表現能力の需要はますます高まっています。TriboFormを利用することで、複雑な熱伝達係数の変化を物理モデルによって表現することができますので、熱間加工のシミュレーションに取り組まれる際は是非ご利用いただければ幸いです。 【参照文献】 [1] Hol J, Meinders V, de Rooij M, van den Boogaard A. Multi-scale friction modeling for sheet metal forming: The boundary lubrication regime. Tribol Int 2015; 81: 112–128. [2] Hol J, Meinders V, Geijselaers - [シミュレーションの形状修正機能で複数の不具合を同時に解決](https://japanforming.com/シミュレーションの形状修正機能で不具合解決/) - はじめに 物事をより深く理解するためには、両極端を基準に検討することがあるかと思います。誰もが「起こりうる最悪の事態」を想定して考えを巡らしたことがあるはずです。これは最も深刻な問題や不利な結果をもたらす条件を避けるためです。たとえばプレスの工程設計において、あと5ミリのブランクを削減できたはずだと後に判明しても、生産率が十分に高ければさほどの痛みはありません。反対にブランクの単価を0.20ドル削減できたとしても、スクラップが常に30%を超え、頻繁に金型のメンテナンスを強いられる方がはるかに悲惨です。 後者のような事態を望むエンジニアはまずいません。しかしエンジニアごとに視点はそれぞれ異なるため、各人の行動もさまざまです。「実際に部品が生産できなければ、ブランクのコストを心配しても意味がない」といった意見がある一方、「まずコストを検討しないことには、生産工程を改善することはできない」と考えるエンジニアもいます。このような考え方の違いはよくあることです。しかし物事の捉え方が正反対であることの欠点を挙げるとすれば、それはエンジニアリングの時間です。何度も検討を重ね、さまざまな角度から理解を深めるには、ある一定の手法で設計するよりもはるかに多くの時間を必要とします。しかし本稿では、検討対象をある一定範囲に絞りながらも、初期検討の段階からより深く分析ができる手法をご紹介します。また工程設計を担うエンジニアには、成形性の目標を達成させる使命が課せられていますが、多くの場合、同時にコスト目標に対しても責任を負わなければなりません。また生産のロバスト性まで担う場合すらあります。この点について疑問が生じることはないでしょうか。 エンジニアにとっては厳しい品質やコストの目標だけでなく、納期を厳守しなければならないことが大きな負担となっています。一般論としてプロジェクトの工程表は最優先すべきものであり、これが意思決定に影響を及ぼす場合すらあります。限られた時間の中では、ある目的を達成するために別のことを犠牲にし、また理想的とは言い難い選択をせざるを得ないことがあります。このように納期が大きく左右する決断には、多くの場合「コスト」が伴います。しかしエンジニアリングの初期段階から品質やコストの目標を詳細に検討できれば、デザインを成熟させる工程を前倒しで進めることが可能になります。これを実現できる設計手法やツールを活用したシステムがあるとすれば、それはどのような価値を生み出すでしょうか。 大きな問題を扱う際には、まずそれを小さなタスクに分割し、そのタスクに適したツールを使いながら、より大きなタスクに取り組むことが最善策だと考えています。これが先に述べた前倒しの設計工程に必要なシステムの基盤となるからです。そして実際に何をどのように運用するのかについての展望および認識、そして新しい方向性を追求する意欲が原動力となり、この先に述べた「システム」が構築されてゆくのです。これがいわゆる技術革新となります。システムを完璧な状態で運用できるという確証はどこにもありませんが、システムに必要なピースは、ほぼすべて揃っています。常に改善の余地が残るにせよ、ソフトウェアソリューションの進歩と共に、技術進化も着実に進みます。 小さく分割したタスクと、そのタスクに特化したツールを紹介する上で、多くのエンジニアが経験したことがあろう状況を事例として提案します。この事例をもとにディスカッションを始めたいと思います。もしあなたが同じ状況に直面したらどのように対処するか、ご意見をお聞かせください。 事例 金型工場の工程設計者である私は、ドローコンセプトのデザインをほぼ決定しました。工程表には計画通りに従わなければなりませんが、デザインの詳細はまだ決め切れていません。特にサーフェスの品質、ブランクサイズ、成形性のロバスト性に関する検討が必要です。ある領域の結果を以下に示します。主に2つの不具合を解消しなければなりません。まずはサーフェスの伸びがクラスA領域で非常に低いこと、次に後部ドアの内壁にクラックが生じる可能性があることです。 これらの画像から、まだ複数の不具合が解消されていないことが判明しました。しかし疑わしき部分はすべて洗い出され、調査も行われたのでしょうか。そして不具合が生じているドア開口部の下部のみを集中的に検討すればよいのでしょうか。工程設計、開発、成形性を担当するエンジニアとして、私が迅速に決断を下さなければ、デザインを成熟させる工程を進めることができなくなります。日程についても、納期まで一切の余裕はありません。これまでに特定された不具合の修正に加えて、このデザインを最適化できる時間まで実際に確保できるのでしょうか。 ディスカッションでは、まず後部ドアのオーバードロー形状に注目しましょう。私の考えでは、まずプリフォーム形状を修正してドロー成形をできるようにします。またプリフォーム量の均衡をとることで、工程全体の成形性を担保します。同時に、ブランクの最小化とドロービードの位置を確認し、Aクラス部分にさらに伸びを加えます。以下は私自身が検討した設計パラメータの詳細を抜き出したものです。設計パラメータの検討時には、自動形状修正機能とビードのデザイン調整機能を活用しました。パラメータはすべて変数であるため、最適な組み合わせを特定できます。またドロー形状の回転角度には特に注目し、この事例ではモーフィング機能で形状を素早く修正しました。仮にこれだけ多くの修正と評価を手作業で行うとなれば、現実的に最後まで完了させるのは至難の業です。その上、どのように変数を組み合わせるとより良好な結果がもたらされるか、必ずしも直感的に判断できるものでもありません。 設計のばらつきに対する形状と工程パラメータ さまざまなシミュレーションを行った結果、設計パラメータが品質やコストの目標達成に影響するか、また安定した工程を担保できるかを確認することができました。下の図から、クラスAサーフェスの伸びがより均一になっただけでなく大幅に増加し、また壁にクラックが生じる危険性も回避できたことがわかります。さらには流入量が最小まで制限され、最終のブランクサイズを最適化できるようになりました。まだ微調整が必要となるかもしれませんが、しかし考え方自体は有効であり、この工程では実現できることが証明されています。ドロー工程で生じうる変形についてはさらに評価しなければなりませんが、この調査では検討していないその他の形状パラメータや工程パラメータが関係している可能性もあります。いずれにせよ、手作業でおよそ100通りのシミュレーションを作成しなくても、このアイデアに大きな可能性があることが証明されました。 ドローの結果 - パラメータ値の自動解決後 リフォーム/トリム結果 - パラメータ値の自動解決後 質問 読者のみなさまはこのような不具合対策の自動解析をすでに行っていますか。 同じようなシステムをすでに導入している場合、どのようなソフトウェアや手法で調査を行っていますか。 AutoForm Service Centerのウェブサイトには、さまざまな関連情報が掲載されています。またモーフィング機能の使用事例については、過去の関連記事をご参照ください。 - [メキシコにおける金型製作者を対象としたAutoForm実践トレーニング](https://japanforming.com/金型製作者を対象としたautoform実践トレーニング/) - プレス成形業界に関わる若い学生たちはみな向上心が強く勉強熱心です。一方、プレス成形に携わる熟練のエンジニアたちも技術向上を怠らず、常に第一線で活躍し続けることを望んでいます。そこで昨今のプレス業界において、エンジニアにはどのようなスキルが最も必要とされているか、またその専門技術からどのようにキャリアを高めることができるかについて、メキシコの動向をご紹介します。 シューラーグループのセデュアルは、金型・板金分野の資格取得や技術習得を支援する教育機関であり、ドイツ商工会議所の標準(IHK)に基づくカリキュラムを提供しています。 セデュアルではメキシコの最難関大学のひとつであるイベロアメリカーナ大学と提携し、プレス成形エンジニアを対象とした問題解決能力の向上を支援しています。 セデュアルのカリキュラムには、インダストリ4.0に携わるエンジニアを対象とした、冷間プレス成形プロセスに関するディプロマコースがあります。このコースでは、さまざまなトピックを幅広く学び、そこには、AutoFormプレス成形シミュレーションも含まれています。 このカリキュラムを通じて習得した知識をどのように活用しているか、セデュアルに通学するエンジニアに行った調査に対する回答を一部ご紹介します。 -プレス成形シミュレーションのソフトウェアをどのように有効活用できるか、またどのように結果評価を行うか、理解を深めることができました。 -プロセスの改善に関する活発な意見交換を行うことができました。 このクラスではプレス成形シミュレーションのみを学習するのではなく、それが現実世界でどのような恩恵をもたらすかという観点まで学びを深めています。あるエンジニアは「プレス成形プロセスのシミュレーションを通じて、シートの挙動を予測でき、ひいては時間やコストなどを削減できることを実感しました」と語っています。 セデュアルのカリキュラムは、業界の最先端技術を強く意識した構成になっています。エンジニアは業界標準レベルの技術や知識を習得することができるため、万全な準備を整えた状態で即戦力となることが期待されます。 また別のエンジニアは「このカリキュラムから、さまざまな学びを得たおかげで、シミュレーションのレポートを詳細まで理解できるようになりました」と述べています。 次世代のプレス成形業界を担うエンジニアたちがデジタル評価プロセスについて習熟度を深めることで、このような新たなテクノロジーが業界に浸透し、より一層のプロセス改善やコスト削減を導き出すことが可能になります。 AutoFormプレス成形シミュレーションについてご興味をお持ちの方は、オートフォーム社主催のウェビナーをぜひご覧ください。JapanForming.comの定期購読者には最新情報をメール配信しています。また近日開催予定のイベントについては、オートフォーム社までお気軽にお問い合わせください。 - [スプリングバック予測モデルのキャリブレーションに必要な合金シートの引張圧縮試験](https://japanforming.com/スプリングバック予測モデルのベースとなる機械/) - プレス金型の設計開発および製造においては、鋼板の複雑なスプリングバック挙動が技術的課題として挙げられます。スプリングバックはプレス成形作業後の除荷における材料の弾性回復です(図1)。また高強度鋼(AHSS)や高強度アルミニウム合金といった先進的な材料は強度や延性が特に高いため、スプリングバックの予測はさらに難しくなります。スプリングバックの大きさは材料のヤング率に対する流動応力の比に比例するため、一般論として、高強度材料ではスプリングバックは大きくなる傾向にあります。さらにアルミ合金の異方性挙動およびAHSSの多相構造によって引張圧縮の非対称がより顕著になり、スプリングバックの挙動はさらに複雑になります。 図1. スプリングバックした製品(左)と目標形状の製品(右) [World Auto Steel] スプリングバックの予測 金型設計時にスプリングバックを考慮するには、プレス成形工程の材料挙動を正確にシミュレーションできるロバストな予測モデルが必要となります。プレス成形中、材料は負荷と除荷を繰り返すので、引張負荷と圧縮負荷が切り替わります。そのためスプリングバック予測モデルでは、以下の2点を検討すべきです。 (i) 材料を冷間加工すると降伏強度が高まりますが、いわゆるバウシンガー効果[1]と呼ばれる現象によって、反転圧縮時の降伏強度は低下します。 (ii) 塑性変形後に除荷すると、特にAHSSでは応力-ひずみ応答が非線形になります。再度負荷をかけると、材料は再び非線形の弾性応答を示しますが、これはひずみを加えてない材料とは異なります。これは塑性ひずみの増加に伴い弾性係数が見かけ上小さくなるためで、見かけの弾性係数の低下として知られています[2]。 スプリングバック挙動を正確に予測できる(とされる)複数のモデルが発表されています。なかでも繰り返し引張-圧縮および負荷-除荷の曲線を用いてスプリングバックを予測する吉田-上森[3]のモデルは代表的なものです。しかし予測モデルがどれだけ洗練されていても、そのキャリブレーションに使用する実験データの品質が担保されない限り、スプリングバックの予測精度を高めることは不可能です(図2)。 図2. プレス金型開発におけるFE 特にAHSSでは、シミュレーションによるスプリングバック予測の精度を決定づけるのが、材料の引張-圧縮および負荷-除荷の特性評価です。そのため信頼性の高い特性評価を行うことが非常に重要であることは、これまで何度も指摘されてきました[5]。 機械試験による材料モデルのキャリブレーション 一般的なスプリングバック予測モデルのキャリブレーションに必要な試験(単軸引張試験、引張負荷-除荷試験、単軸圧縮試験、繰返し引張圧縮試験)の概要を図3に示します。この種の試験に関するASTM/ISOの規格がないため、繰返し引張圧縮特性と見かけのヤング率低下を決定づける材料特性の評価手法は、いまだ標準化されていません。ヤング率低下の測定には単軸引張の負荷-除荷試験を用いますが、これについては別の機会に記事を執筆しようかと思います。本稿では先進的な鋼板の単軸圧縮および繰返し引張圧縮特性を測定する最新技術についてご紹介します。 図3. 一般的なスプリングバックモデルのキャリブレーションに必要な試験の概要 板金試験片は圧縮負荷下で面外座屈を受けるため、その単純圧縮試験や繰返し引張圧縮試験は非常に難しいです(図4)。材料が純粋に圧縮されない可能性があるので、信頼できる方法でひずみを測定するのは至難の業です。 図4. 圧縮された板金試験片の座屈; 座屈の事例 [Gihyun et al., 2011] 繰返し引張圧縮試験の進歩 この試験について研究が進む中、[4]が提案した最新のセットアップでは、座屈防止装置を用いて試験片を側面から支持することにより、高い圧縮ひずみ(10%以上)を得ることができます。この試験は(摩擦補正に用いる)側面の荷重を測定し、正確に制御することで目的が達成できます。またセルフアライメントとセルフセンタリングのグリップが、板厚の変化に応じて側面の荷重を安定させます。そして試験中に生じるひずみは、試験片の板厚方向に設定された全てのひずみ領域におよぶ3D-DICによって記録されます。このセットアップの最大の特徴は、DICのひずみ信号を用いて負荷範囲をリアルタイムで制御できることです。試験のセットアップ、DICの測定結果、およびリアルタイム制御ループを図5に示します。DICから出力されるリアルタイムのひずみ計測値は、荷重負荷装置に受け渡され、コントローラーが指定の繰り返し荷重をトレースし適切なひずみ値で荷重反転します。 図5. 座屈防止装置とDICを伴う試験のセットアップ。全てのひずみ域におよぶDICのひずみのマッピングとリアルタイムに行う負荷範囲全体のひずみ制御ループ。 自動車の材料として普及しているDP980鋼材とAA6016-T4の材料等級試験から算出された応力-ひずみ曲線を図6に示します。この結果から高い反復性を確認でき、またこれらの材料の間で繰返し引張圧縮負荷に対する応答に相違があることもわかります。 (i) どちらの材料も降伏後に引張圧縮が大幅に非対称となります(黒破線が単軸引張、赤破線が単軸圧縮)。 (ii) AA6016-T4は毎回の繰返し後に流動応力レベルが大幅に高くなりますが、DP980は繰返し負荷に対して顕著な反応はありません。つまり引張圧縮試験のすべての引張の繰返しにおける流動応力は、単調引張曲線に重なります。 (iii) DP980は、繰返しが始まるたびに早い段階で再降伏を示す一方、AA6016-T4は、繰返しごとに高い降伏応力を示します。 (iV) 3D-DICの利用で可能になった全てのひずみ域におよぶひずみコンター(図7)により、2つの材料の異なるひずみレベルでひずみが異なる様を詳細に分析することができます。 単軸引張の場合、材料は局所的なネッキング(一様伸び限界%とも呼ばれる)が始まるまで均一な変形を受けます。しかし図 7 に示した結果から、ひずみの不均一性は、塑性ひずみの蓄積とひずみの反転が加わるにつれて強くなり塑性ひずみが材料の一様伸び限界よりもはるかに低い場合でも、試験終了時には(ひずみの不均一性は)高いレベルに達することがわかります。DP980 鋼のひずみ不均一性は、AA6016-T4 に比べて延性が低いため、より深刻です。(DP980の単軸引張における均一伸びは7%程度であるのに対し、AA6016-T4は25%程度)。これらの結果から、試験にてDICが重要な役割を果たすことは明らかです。 図6. DP980(左)とAA6016-T4(右)の繰返し引張圧縮試験、一軸引張試験、一軸圧縮試験の結果を示す真の応力-ひずみ曲線 図7. (a) DP980および(b)AA6016-T4の板金試験片の繰返し引張圧縮試験中に、注目すべきポイント(ひずみ)で抽出されたひずみのマップ – DIC生成 [4] https://youtu.be/MaYF8_CUtXY 結論 本稿ではプレス部品の設計開発にて課題となっているスプリングバックを取り上げています。なかでもスプリングバック予測モデルのキャリブレーションに必要な機械的特性の試験について概説しました。最先端の単純圧縮試験と繰返し引張圧縮試験について、その実施方法を紹介しています。自動車用のDP980鋼とAA6016-T4の2つの材料グレードにて、複数の連続ループで繰返し引張圧縮試験を実施しました。その試験結果から、負荷モードが反転する応答において、2つの材料に相違があることが明らかになりました。ひずみを正確に測定するだけでなく、DICを導入することで、試験材料が不均一に変形するレベルと、塑性ひずみの蓄積に伴い不均一性がさらに進行することが確認できました。 参考文献 Weiss, M., - [安定したプレス成形に向けて: プレス成形分野における機械特性の役割 – 第2部](https://japanforming.com/プレス成形分野の機械特性の役割-2/) - 第一部はプレス成形分野における機械特性についてご紹介しています。 横方向に拘束を加えた引張試験 横方向に拘束を加えた引張試験(図10)を利用して、材料に平面ひずみ状態を発生させます。図11のとおり試験片の半径rを変更することで、横幅をある程度狭くできます。これで平面ひずみ領域だけでなく、FLDの圧縮領域の一部を網羅することが可能になります。この手法は1972年にRozzoおよびDelucaによって開発されました[5]。 図 10: a) 試験片の形状; b) 平面ひずみ状態から判定される降伏曲面上の位置。出典 [1] 図11: RozzoおよびDeluca[5]が開発したFLD左側の判定方法。出典: [1] 引張圧縮試験 Sachs [6]がウェッジ試験とも称する引張圧縮試験(ドイツ語でKeilzug-Pruefverfahren nach Sachs)では、くさび部の横方向からの圧縮応力を一軸引張と重ねて適用します。可視塑性などの手法で変形を分析できます。 図12: a) 試験で使用するくさび状の材料片。b)試験で再現する降伏曲線上のポイント。出典: [1] この試験では、深絞り加工におけるフランジ領域の応力圧縮状態を再現します。この試験ではくさび部の接触領域に生じる摩擦が結果に大きく影響するため、潤滑条件に非常に敏感であることが難点です。降伏曲面では、試験で再現されるポイントはせん断領域にあります(図 12-b)。 積層板の圧縮試験 Pawelski [7]は積層板の試験片を用いた圧縮試験を初めて実施しました。積層板の圧縮試験は、DIN 50106 [8]の円筒圧縮試験を応用したものです。圧縮試験では材料は圧力下で収縮しないため、引張試験よりも比較的大きな変形が得られます。材料は薄板であるため、試験では複数の試験片を積み重ねますが、圧延方向に対して一様に配列する必要があります。そして摩擦の影響を減らすため、圧縮帯と試験片の界面にはテフロンシートを使用します。円周方向の変形は光学式変形測定器で記録します。また降伏応力は検出された変形荷重と理想的には円筒形とされる試験片の断面積から算出します。板厚方向の圧縮応力により、試験片は一様に膨張します(図13)。x方向とy方向の長さの増加は直交異方性に依存します。 図 13: a) 試験に使用する積層板の試験片。 b) 平面応力状態の特性試験で再現する降伏曲面上のポイント。出典:[1] せん断試験 Brosius[9]に倣ったせん断試験は、薄板材料を最適な状態で単純にせん断するだけの試験です。この試験では、せん断応力下での流動抵抗を測定します。引張荷重と長さの変化は、試験装置の先端部分で計測します(図14)。せん断応力は可視塑性の変形解析から算出されます。 図14: a) 試験前後の試験片。b) せん断に特徴的な降伏曲面上のポイント。出典 [1] バルジ試験 Hill [10] (1950)が開発した液圧バルジ試験は、真ひずみ約0.7までの降伏曲線を決定するもので、図15はその原理を示しています。しっかりと固定された円盤試験片の片側から液体を押し込むと、圧によって試験片は膨張し、最終的に頭頂で破断します。通常は液体(油または水性の媒体)、気体、粘塑性の媒体を使用します。媒体の圧力は圧力センサーで測定し、試験片の頭頂における薄板の半径と板厚は光学的または触覚的に測定します(図16)。 図 15: 液圧バルジ試験の原理と達しうる応力状態。出典: [1] 図16: 組み立てたバルジ試験の写真(出典: IFU Stuttgart) NakajimaおよびMarciniak試験 - [「熱間プレス」と「冷間プレス」の比較に見るCO2排出量削減](https://japanforming.com/熱間・冷間プレスの比較_co2排出量削減/) - CO2排出量の削減は、近年、世界的に最も注目されているテーマの一つです。製造業においてこの動向を後押しする要因は、国際法への準拠、炭素税の高騰、社会的規範、消費者の環境意識変化などが挙げられます。自動車産業におけるCO2排出量削減の取り組みとして、冷間および熱間プレス成形技術を深く考察することで、バリューチェーン全体から生じる排出を把握することができます。冷間プレスと熱間プレスに優劣はあるのか、また将来的に優先的に採用すべきプレス成形技術はどちらであるか、併せて考察します。 図1: 工業分野のCO2排出量は世界最大級 CO2排出量の算出方法 冷間と熱間のプレス成形技術を詳細に比較分析する前に、まずCO2排出量の算出方法について説明します。適正な比較検討を行うには、ガイドラインとなる標準が必要となります。そこで温室効果ガスの国際基準として広く採用されているのが、世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が政府、NGO、企業の協力を得て策定したGHG(温室効果ガス)プロトコルです[1]。従って本稿では、GHGプロトコルの基準、特に「スコープ1~3」のコンセプトをもとにGHG排出に着目した冷間プレスと熱間プレスの比較を行います。 「スコープ1~3」とは バリューチェーンにおけるCO2排出はすべてスコープ1、2、3 に分類できます。スコープ1は調査対象の会社の企業活動で発生するすべての直接的な排出をまとめたもので、たとえば、炉でのガス燃焼などが該当します。電力など、購入したエネルギーの消費については間接的な排出として、スコープ2に分類されます。スコープ3はスコープ2に該当しない間接的な排出で、これはバリューチェーンの上流と下流の活動に分類されます。上流側の例としては購入する鉄鋼材料に関連する排出、下流側の例としては自動車を運転する際の燃料消費などが相当します。 図2: バリューチェーンに沿ったGHGの排出[2] スコープ 1~3とプレス部品の関係性 図2が示すとおり、CO2はさまざまな形態で排出されています。しかし冷間と熱間のプレス成形技術の比較においては、すべてが関連しているわけではないため、いくつかの排出形態を選び出し、より詳細な分析を行いました。 スコープ1の直接的な排出は、熱間プレス成形のみが該当します。シートの焼きなましにガス燃焼炉を使用する場合、プレス工場で燃焼するガスからGHG排出が生じています。しかし電気炉あるいは電気とガス加熱を併用したハイブリッド炉を使用すれば、排出量を削減することができます。冷間プレス成形から直接的なGHG排出は生じないため、CO2排出量削減の観点においては、スコープ1では熱間プレス成形が劣位にあります。 図3: スコープ1直接的な排出 熱間プレスと冷間プレスで生じるガス燃焼の比較 スコープ2の間接的な排出についても、冷間プレスが優勢だと思われます。なぜならば熱間プレスでは、大量の電力を集中的に消費するためです。油圧プレスのみならず、ブランクカッターや冷却器、エネルギーを大量消費する最終切断用レーザーなどの設備にもエネルギーを供給しなければなりません。また部品のサイクルタイムも比較的長くなるため、必然的に部品毎の排出量も多くなります。[3] 図4: スコープ2間接的な排出の比較 スコープ1と2の分析は比較的容易ですが、スコープ3になると分析はより複雑になります。熱間プレスの唯一決定的な弱点は、ガス燃焼炉用のガスを購入しなければならないことです。燃焼用ガスを使用する場合、ガスの抽出と輸送から非常に多くのGHG排出が生じます (ドイツでは12.5%)[4]。しかし一方で、購入する鉄鋼材料の分析はより複雑になります。例えば22MnB5とDP1000を比較する場合、両者には合金にわずかな違いがあるだけで、工程ルートにも大差はないため、材料等級自体がGHG排出に大きく影響することはありません。しかしここで着目すべき点は鉄鋼材料の量です。熱間プレスの利点は、複雑なアセンブリを簡略化でき、また部品を軽量化できることにありますが、これはGHG排出の観点からも非常に有利に働きます。つまり、熱間プレスによって各部品をどれだけ軽量化でき、上流のGHG排出を削減できるかが、スコープ3における比較のポイントにもなるのです[9]。スコープ3の下流側にて熱間プレスが優位にあることは一目瞭然です。最終製品を1グラム軽量化するごとに燃料消費量が減り、アセンブリを簡略化するごとに後続の接合工程の回数が少なくなります。 図5: スコープ3 -排出の比較 (上流および下流) 特記事項 排出の性質を理解することで、プレス成形工程を冷間と熱間のそれぞれで行った場合のCO2排出量を比較することが可能になります。まずは熱間プレスがもたらすメリットとその程度を把握することから始めます。熱間プレスで部品を製造すると、重量はどれくらい削減できるのか、また、冷間プレスで製造した複数のプレス部品を組み付ける代わりに、熱間プレスによる単品部品で代替することはできるのか、といった可能性を検討します。これらはすべて鉄鋼材料の量も関係してくるため、スコープ3の排出量に直接的な影響があります。 熱間プレスのみで生じるスコープ1の排出も、必ずしも発生するとは限りません。例えば炉に再生可能エネルギーを用いるなど、CO2ニュートラルなエネルギーを活用できる場合もありうるからです。ガスをエネルギーとして使用する場合でも、スコープ1~3の分析[5]から外された、別枠として考慮されるバイオガスに切り替えることができます。しかしバイオガスを使用する際には、留意すべき点がいくつかあります。まずバイオガスの生産に使用する土地は、食料生産に使用している土地から転用しなければいけません。またバイオガスの生産時には、有害な物質が排出される可能性があることにも注意が必要です[6]。 複雑な現状を評価することの難しさに加え、CO2削減に関する多くの研究が進んでいることも重なり、状況はより複雑さが増しています。 最新の研究動向と着目点 鉄鋼業を環境に優しい生産へ転換することは重要課題であり、プレス工場のスコープ3の排出にも大きな影響を及ぼします。そのため鉄鋼メーカーではさまざまな手段で脱炭素化を進めています。中でも化石燃料である石炭を使った溶鉱炉での還元の代わりに、環境に優しい水素を使った直接還元に置き換えることができれば、これがゲームチェンジャーとなり大きな変革が進むと予測されています[7]。これが実現すれば、環境に優しい電力エネルギーを利用し、電気アーク炉で銑鉄を生産することが可能となります。 図6: 次世代技術の直接還元[7] また冷間プレスの技術開発としては、熱間プレスに対抗して、高強度鋼から複雑な形状を製造する取り組みも進んでいます。例えば、金型を分割し複雑な機構を与えることで、それぞれ異なる速度で移動する金型コンポーネントを個別にコントロールし、従来の冷間プレスでは対応できなかった部品形状が実現できるようになります。[3] 図 7: アルガイア社のVariotempoプロセス [3] 一方、熱間プレスについては、環境面を改善する取り組みが進んでいます。その一例として、ホンダ社ではエネルギーを多く消費するレーザー切断に代わり、成形時に部品を直接トリミングする手法を推進しています[資料8]。 CO2削減の取り組みにおけるシミュレーションの活用 CO2の排出に関わるパラメータを把握し、定量化する上で、プレス成形シミュレーションが重要な役割を果たします。熱間プレスあるいは冷間プレスの最終決定を行う前にシミュレーションを活用すれば、ブランクサイズ、材料板厚、部品重量、BiWアセンブリ、サイクルタイムなど、すべて徹底的に調べ上げることができます。 部品製造に熱間プレスと冷間プレスのどちらを用いるかを検討する際には、プレス成形シミュレーションのフィージビリティ評価をその根拠として活用することができます。技術的な観点から熱間プレスを用いることが決まれば、スコープ1と2に相当するCO2排出は明らかに多くなります。しかしその一方で、部品を軽量化することで、スコープ3のCO2排出を削減することができます。 図8: AutoForm板減解析 すでに工程が決定している場合でも、ブランクサイズの最適化/最小化によって、スコープ3の排出は大幅に削減されます。使用する材料を1グラム削るごとに、CO2削減に対する大きな貢献となるのです[9]。最小ブランクの検討は、初期の製品開発から部品生産までプレス成形プロセスチェーン全体を通じて、シミュレーションを活用した取り組みが行われています。 図9: AutoFormブランク寸法解析 明確な答えはありません CO2排出量が多いのは熱間プレスと冷間プレスのどちらであるかを厳密に定義することはほぼ不可能です。GHG基準を遵守するには、多くの影響因子を個別に検討しなければいけません。熱間プレスはガスの燃焼が不可避なためCO2排出が多いと思われがちですが、しかし部品の軽量化やアセンブリの簡易化が進むことで部品単位でのCO2が削減されるため、スコープ3のCO2排出を抑制できます。また多くの企業が様々な角度から研究開発戦略に取り組んでいるため、今後数年のうちに明確な答えが導かれるような状況でもありません。そのためシミュレーションを活用して予想されるCO2排出量を把握および定量化し、熱間プレスと冷間プレスのどちらを選択するかを検討するための判断材料とすべきなのです。 参考文献 [1] Green House Gas - [Numisheet 2022: オートフォーム社キダムビ・カナン氏のレポートをお届けします](https://japanforming.com/numisheet-2022-autoformキダムビ・カナン氏のレポート/) - チューリッヒにて1991年に初めて開催されたNumisheet会議は、プレス成形プロセスの数値モデルの発展と進歩に寄与する国際会議で、材料挙動、成形工程、プレス金型、トライボロジ、材料試験および特性評価などの分野に幅広く対応しています。3年おきに執り行われていますが(2016年と2018年を除く)、直近ではコロナウィルス感染症による延期を経て、今年7月にトロントで開催されました。第12回目となる今回の会議は、感染症の余波もあり参加人数こそ減少しましたが、学術界および産業界から熱心な研究者や関係者が一堂に会し、世界各地の研究所や企業からの最新動向を確認したり、また有益な情報交換の場としても素晴らしい機会となりました。 会議では主に次の研究分野に関する発表が行われました。 - 高度材料構成モデルの数値的取り扱い - プレス成形プロセスのモデル作成 - プレス成形プロセスの力学 - 破断判定モデルの作成 - トライボロジ/摩擦の処理 どれも長く研究が行われてきた分野ではありますが、一方では、世界の自動車産業にもたらされた新たなイデオロギの軸となる軽量化、安全性、電動化に関しても最先端の研究開発が進んでいます。先進的な材料等級の開発が進む一方で、マルチスケール解析や結晶塑性法、さらにはAIや機械学習を活用した材料特性評価と材料挙動のモデル作成についても研究は大きく進展しています。これらはすべてデジタルエンジニアリングとシミュレーションツールの精度向上と適用範囲の拡大を目的としています。材料の破壊挙動の検証および特性評価も注目すべきテーマのひとつです。 オートフォーム社テクニカルディレクタのバート・カーレア博士が「デジタルプロセスモデルの効果的活用法(An Effective Way to a Digital Process Model)」と題した基調講演で改めて紹介したAutoFormパレートの原則は、シミュレーションの結果精度に関する指針であり、Numisheet国際会議の研究分野においても大変有意義に活用できるものです。 今年の Numisheet国際会議で取り上げられたトピックが赤枠で示されています。新たに先進的な材料等級のシミュレーションを実行する場合、材料特性を正確に把握すれば、シミュレーション結果の精度向上につながります。またトライボロジのモデル作成もシミュレーションの精度を高める上で重要な役割を果たします。「詳細」に分類された項目の中には、研究開発やそれに伴う投資が活発に行われているものがありますが、それは項目の重要性が高まっていることを示しています。 以下、近年注目を集めている研究分野をいくつかご紹介します。 結晶塑性法とシミュレーション プレス成形中のシート材の挙動は、非常に複雑な関係ではあるものの材料の微小構造が直接的に影響します。原子の配列が結晶粒を構成し、化学的性質に応じて分布する「相」と、そのサイズや形状などのすべてが影響を与えます。 工業分野では通常このような材料の「ミクロスケール」の特徴を考慮することはありません。シート全体が均一なモノリシック材(単一特性を持つ材料)として、シミュレーションに使用する材料の特性を評価するため、特性評価は「マクロスケール」となります。正確な特性評価には、引張試験、バルジ試験、FLC試験など、多くの機械的試験が必要です。一方、結晶塑性法では材料の微細構造、つまり「ミクロスケール」の特性からマクロスケールの機械的挙動を予測します。微細構造の特性評価は、走査電子顕微鏡法(SEM)や関連技術を使用して行われます。これはもはや最先端技術とは言い難いものですが、しかしまだ商業利用ができる段階には至っていません。しかし材料挙動の特性を標準的な数値で評価できる場合があるため、シミュレーション結果の精度が向上します。今回のNumisheet 国際会議にて発表のあった材料特性の評価において、特筆すべきものをいくつかご紹介します。 6000系アルミニウムの異なる調質下でのFLCと、 (下)DP600鋼の圧延方向からの角度差に対応するR値 金型とプレスのたわみがシミュレーション結果に及ぼす影響: 金型とプレスのたわみが、特にスプリングバックに対して大きく影響することが明らかになり、さまざまな手法が検討されはじめています。 起亜自動車はオートフォーム社およびMIDAS IT社の協力のもと、プレス成形シミュレーションを使用して、プレス金型のサーフェスに発生する接触応力から金型構造に生じるたわみを計算する方法を紹介しました。機械加工用サーフェスのデータを出す前に、算出したたわみをプレス成形解析で作成した見込み補正面の上に重ねます。 次の投稿記事では、2022年のNumisheet国際会議で発表したとおり、R&Dプラグインがどのように研究調査で活用されているかをご紹介する予定です。どうぞご期待ください。 - [チューブ成形ソリューションが莫大なコスト削減をもたらす:BOSAL社チューブ部品の製造手法 - 曲げ加工とハイドロフォーミングの比較検討](https://japanforming.com/曲げ加工とハイドロフォーミングの比較検討/) - 1923年にアルクマールにて創業したBOSALグループは、ベルギーのランメンに本社を置くオランダの上場企業です。同族経営の世界的メーカーであり、自動車や産業機器の純正品質部品およびアフターマーケット用の補修部品を扱っています。全世界に16箇所の製造工場、12箇所の配送センター、そして7箇所の研究開発センターを持ち、従業員数は2,500人以上にのぼります。ランメンの研究開発センターでは、プロセスエンジニアリング部門およびCAE担当部署にて2019年からAutoFormが積極活用されています。また当センターでは乗用車およびトラック向けの完全統合型排気系統の開発および生産も行っています。 5つの重要なポイント: シミュレーションを用いた部品/プロセスの最適化によって、部品単価につき数ユーロもの大幅なコスト削減ができます。 経験豊富で独創的なエンジニアでも、AutoFormを用いなければ最適な工程を特定することはできません。 ハイドロフォーミングの代わりに曲げ加工で生産できる部品設計を実現できれば、見積もり金額を下げることができます。 AutoFormシミュレーションの設定および実行は、他のシミュレーション・ソフトウェアの8~10倍以上の速度です。 シミュレーション結果に基づくプロセスの動画、レポート、定量化されたデータをもとにお客様との交渉を進めることで、より細部まで議論を詰めることができます。 CAE担当マネージャのエリック・ハンセンヌ氏は次のように述べています。「BOSAL社はグローバルに事業展開する企業として一定数のシェアを有していますが、業界の最大手ではないことも明らかです。長年の経験とノウハウに基づく専門性と革新性は自動車業界でも広く知られ、全世界の主要OEM自動車会社とお取引があります。BOSAL社の強みは俊敏性にあることを自負していますが、この事業規模では珍しいことです。お客様の要望に即反応できる対応力の高さは、当方のスペシャリストがお客様側のスペシャリストと直にコミュニケーションを図ることによって培われたものであり、これがBOSAL社への信頼につながっているのです。BOSAL社の技術力には定評があり、シミュレーションによって裏打ちされた部品開発にも信頼を寄せていただいています。触媒コンバーターやフィルターについては自社独自の製造手法を開発しており、時にはお客様からこの手法の導入についてご相談をいただくこともあります。また自社開発した熱機械疲労解析技術を世界最大手のOEMに移管した事例もあります。BOSAL社はあくまで部品メーカーであり、このようなコンサルテーションを事業の柱とするわけではありませんが、しかしその高い技術力は多方面で認知されています」 チューブ部品の成形手法: ハイドロフォーミングと曲げ加工のコスト比較 「CAE担当部署はシミュレーションに精通しています。数値シミュレーションのツールを用いて排気系統部品全体のモデルを作成し、性能および耐久性に関するシミュレーションおよび最適化を行っています。しかしCO2排出削減の取り組みが進む中、数ある解決策の中でも特に軽量化が焦点とされていますが、軽量化が進むと材料がより薄くなり、形状もより複雑になります。またハイブリッド車の需要急増とあわせて、バッテリーパックの収納が排気系統のスペースを圧迫しています。無論、排気系統の性能に一切の妥協は許されないため、さらに多くの課題が山積する一方です。以前はチューブ成形シミュレーションをサプライヤに依頼していましたが、お客様からの要求が複雑化するにつれ、このような製造工程のシミュレーションを自社で担うようになりました」 図1: BOSAL社のシミュレーションプロジェクト 「AutoFormのTubeXpertソリューションの研修を受講し、すぐにその利便性を実感しました。長年生産してきた部品を即座に解析しましたが、ここで問題が検出されたのです。解析の結果、この部品にはハイドロフォーミングを用いるべきであったことが判明しました。この結果はまさに核心を突くものでした。これまでチューブ成形には可能な限り、ハイドロフォーミングではなく、生産コストが安価な曲げ加工を用いていました。自社でシミュレーションを行うことで、ハイドロフォーミングを用いずに製造が可能であるかを判断することができます。BOSAL社にはハイドロフォーミングの設備がないため、外注しなければなりませんが、その必要性をシミュレーションで検討すれば、外注を最小限に抑えることができます」 プロセスエンジニアリング部門を統括するヨス・リースケンス氏はさらに次のように述べています。「ハイドロフォーミングと曲げ加工の価格差は、部品単価で数ユーロになることもあります。そして入札時には、この価格差が発注先の決定に大きく影響します。少量生産だと5年間で年間1万~1万5,000個が生産可能であり、大量生産の場合は年間20万個に達することもあります。ハイドロフォーミングの代わりに曲げ加工でパイプを製造できれば、膨大なコストを削減することが可能になります」 「入札では低い価格を提案することが重視されますが、しかし激しい競争下にあるこの市場では、低価格でも品質が担保されていることを証明しなければなりません。そのため当社ではお客様と交渉を進める中で、コンセプトを提案する際にはその根拠として、またその先の営業ツールとしても、シミュレーションソフトウェアを積極活用しています。おかげで非常に早い段階から、ハイドロフォーミング以外でも部品製造が可能であることを証明できています。見積もり段階からプロトタイプを製作し、要件を満たしていることをお見せすることすらできるのです。AutoFormを導入してから、より多くの部品をハイドロフォーミングから曲げ加工へ切り替えています。昨年は15件の部品のお見積もりにハイドロフォーミングを用いましたが、そのうちの12件がハイドロフォーミングを用いることなく製造できたことが、今年判明しています。これにより、ハイドロフォーミングに対応している外部のサプライヤを探す必要がなくなり、また、物流チェーンの規模も縮小できると考えています」 ヨス氏は続けて述べています。「すでに生じている生産上の不具合の対策を検討する際にも、このソフトウェアを活用しています。あるスポーティーな車種のプロトタイプ製作に携わったことがありますが、その車種には4本のテールパイプがあり、左側に2本、右側に2本が装備されていました。このテールパイプの製造には4工程を伴いますが、3工程目でわれの不具合が生じるのです。この不具合に対してまずは接着剤を塗布し、アニーリング処理を施し、さらに厚板の高価な材料を使用するといった対策を講じました。しかしこれでは膨大なコストがかかります。AutoFormのシミュレーションを活用して不具合を正確に把握すると、元の安価な材料と同様の4工程で部品を製造できることが判明しました。このように工程のシミュレーション、不具合の特定、金型の最適化を非常に早いプロトタイプの段階で行うことができたのです。さらにはスプリングバックの最適化まで行うことができました。このソリューションはすぐに量産用金型に組み込まれ、生産中の不具合は解消されました。この出来事は、実物にデジタルツインでの検討内容を適用することの重要性を理解する上で、弊社にとって画期的な瞬間でした。この部品は年間27,000個(さらに4本分を乗じた本数)を販売しているため、削減できたコストは莫大な金額となります。また量産用金型の製作準備時間も劇的に短縮されました。実際、このテールパイプ1本の最適化を計算した時点で、ソフトウェアへの投資と回収される利益の問題はすぐに解決しました。当社ではソフトウェアを導入し、2回目のシミュレーション業務からすでに利益を得ています」 図2:曲げ加工部品 ハイドロフォーミングから機械的な曲げ加工への切替 CAEエンジニアのキアノシュ・マランディも別の事例を挙げ、次のように述べています。「非常に鋭い曲げが2か所ある形状が複雑な床下配管がありました。誰もがすぐに『この部品はハイドロフォーミングで加工しよう。この部品を曲げ加工できるはずがない』と考えました。しかしさらに検討を進めると、シミュレーションで検討したことをトライアウトで実現することができ、この部品は曲げ加工ができるという事実をお客様に証明することができました。より安価なソリューションは見込めないと思い込んでいたお客様にとっても朗報となりました」 「このチューブを曲げると、一端に向かって徐々に平坦になっていくため、プロファイルが劇的に変化します。曲げる過程で円形が楕円に変化するため、他の部品のように何ステップが必要であるかを即座に判断できません。そのためソフトウェアが必要だと感じたのです。ソフトウェアは、一般的な回転曲げの代わりに上側からの曲げ加工がより良好な成形性をもたらすことを示しました。その手法は革新的かつ複雑でありながら、最も安価にお客様の要件を満たすことができたのです」 「AutoFormを活用することで、エンジニアリングの創造性が一層高まります。複雑なデザインを検討する場合でも、AutoFormのようなソフトウェアが魔法のようにソリューションを提示してくれるわけではありません。しかし臨機応変に対応できる経験豊富なエンジニアであれば、ソフトウェアを使いこなし、独創的なソリューションを特定することができるのです。また反対に経験豊富なエンジニアであっても、AutoFormがなければ最適な工程の特定には困難を極めます。まず現実世界のデジタルツインとして機能するツールが必要不可欠であり、またそれが使いやすく、簡単に設定できなければ、ツールを十分に活用することができないからです。これらすべてを兼ね備えたAutoFormだからこそ、創造性を発揮する余地が生まれるのです。さまざまな工程を組み合わせて定義してゆく中で、コンセプトを現実的に実現できるかを検討し、それぞれ比較検討を行うことができます。もちろん他社にもチューブ成形をシミュレーションすることができるソフトウェアは多くあります。しかしAutoFormでは、シミュレーションの設定から結果が計算されるまでの所要時間が8~10倍も高速なのです。場合によってはさらに速くなります。つまり1日の作業時間が大幅に短縮されるため、さらに創造性が刺激され、よりさまざまな代替工程を検討することができます」 「というのも、つい昨日、AutoFormの操作方法がわからなくなり、オートフォーム社のサポート担当者に連絡をしました。その回答を待つ間に、社内にある別のCAEソフトウェアを使ってみたのですが、工程設定を完了するよりも前に、すでにオートフォーム社から回答をいただいたのです。つまりサポートサービスを利用する時間を含めたとしても、AutoFormを使用する方がはるかに速いということが証明されました」 CAEマネージャのエリック氏は次のように結論付けています。「当初はAutoFormと他社のソフトウェア・ソリューションを比較検討しました。最終的にAutoFormを選んだ大きな理由は、その速度と使いやすさでした。またAutoFormが市場で獲得してきた信頼の大きさも理由のひとつです。AutoFormを推奨していたお客様やサプライヤにも相談し、最終的には、2つのソリューションに絞りました。AutoFormを選択した理由は、金型サーフェスの作成などすべてを1つのソリューションにまとめることで、シミュレーションのプロセスを簡素化できるからです。また企業レベルでは、シミュレーション結果をお客様に提示することで、プロジェクトの初期段階から部品が製造可能であることを納得していただけるため、より良好な反応をいただけるようになりました。見積もりの提出前にチューブ生成のシミュレーションは完了しているので、その結果をスライドや動画などの形式で利用しています。動画を通じて成形工程を再現すれば、お客様にもすぐご理解いただけます。このようなフィージビリティのデモンストレーションは、非常に大きな力となっています」 - [肩越しに垣間見るプレス金型のサーフェス開発](https://japanforming.com/肩越しに垣間見るプレス金型のサーフェス開発/) - プレス製品の製造工程のシミュレーションは、昨今、その重要性が非常に高まっています。シミュレーション結果を現実と一致させるには、まずサーフェスが高品質であることが必須条件となります。サーフェスがCAD品質であることに加えて、実際の金型形状を忠実に再現している必要があります。シミュレーションで使用する形状は、切削加工後の形状通りでなければなりません。本稿では、金型設計のできるだけ早期段階から、切削加工後の高品質な金型サーフェスを作成してシミュレーションを行い、シミュレーションと現実と一致させるために用いた方策について、お客様の事例をもとにご紹介します。 図1- ドロー金型面 -パンチとバインダー 絶え間ない修正依頼 標準化されたプロセスにおいて、コンセプト検討段階で金型サーフェスを修正することができれば、後の段階での手間を省くことができます。一般的にCADソフトウェアでは修正に時間や工数がかかるだけでなく、その修正がどのような影響を及ぼすかが不明な場合もあります。そのため、修正後にまた設計をやり直すことにもなりかねません。 Vtron設計事務所のエンジニアリング、プロジェクト、シミュレーション担当ディレクターで、自身がソフトウェアのユーザーでもあるアランA. デ・モウラ氏は、その報告書の中で次のように述べています。「設計の検討を重ねる上で、ドローモデルを何度も修正しなければなりませんが、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを活用すれば、このようなトライアンドエラーに効率的に対処することができます。このソフトウェアでのモデル修正作業は非常にインタラクティブで、また一連の作業を簡単に完結できるような画面の構造と機能が提供されています。そのため形状をどのように変更したらどのような影響が生じるかについてさほど気にかけることなく、不具合の解消することに集中できます」 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAの標準化されたワークフローに従ってモデリングすることで、CAD標準のコマンドを使用するよりも簡単かつ明確にカット金型を作成することができます。またトリムやスクラップのレイアウトを設計する際には、専用の解析ツールでトリム角の状態を素早く確認できます。 見込み補正サーフェスの品質 シミュレーションソフトウェアで見込み補正を行うと、形状を補正することで金型サーフェスに不具合が生じ、最終部品の品質に影響を及ぼす場合があります。見込み補正を効率的に行う上で、シミュレーションを活用することに全く問題はありません。しかし、生産用金型の切削加工を行うには、サーフェスの品質を管理しなければなりません。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAとシミュレーション間はスムーズに情報をやり取りすることができるため、シミュレーション結果をCAD品質のサーフェスに最小限の工数で簡単に反映させることができます。 アラン氏は次のように述べています。「点群をインポートしてサーフェスの見込み補正を行うことで、切削加工用のサーフェスを作成する工程を円滑に進めることができます。このソフトウェアは設計工程を効率化できる素晴らしいツールです」 ユーザーのレオナルド・フェルナンデス・ドンピエリは、以下のとおり見込み補正を行いました。 図2-見込み補正ベクトルフィールド まず、ドロー工程で製品上部(デザイン面)を補正するために、シミュレーションソフトウェア上でねじれ方向の変形を加えました。何度か補正を行った後、シミュレーションソフトウェアで生成したベクトルフィールドをエクスポートして、前述のモジュールに適用しました。 シミュレーションで検討した理想の形状を実機で再現するために、基準の金型サーフェスを直接見込み補正しました。そのサーフェスを面品質解析ツールで検証すると、修正した形状の品質には問題がないことがわかり、それをもとに製造を開始することができました。レオナルドは次のように述べています。「ソフトウェアの新機能を活用することで、サーフェスの品質がデザイン面の基準を満たすレベルに達しました。次のプロジェクト以降、面品質不良の修正はまったく不要になると考えています」 図3-デザイン面のハイライト評価 昨今の企業は、事業の成功要因として「時間」と「品質」を重視する傾向にあります。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは時間短縮と品質向上を促進する、プレス金型の開発に不可欠なツールであり、優れた品質と素早い結果でROIに貢献します。 アディルソン・カルモナ・ドゥトラ - マウア工科大学(IMT)機械工学科卒。AutoForm技術チームのメンバーとして、技術サポートや立ち上げのプロジェクトに従事。adilson.calmona@autoform.com.br 取材協力 Allan A. de Moura – Engineering Director of Project and simulation at the Vtron Project Office. アラン・A・デ・モウラ - Vtronプロジェクトオフィスのプロジェクトおよびシミュレーション担当ディレクター。 レオナルド・フェルナンデス・ドンピエリ - Gestamp Paraná社サーフェス・シミュレーション担当エンジニア。 - [プレス部品のプロトタイプ: Formatype社の必勝戦略](https://japanforming.com/プレス部品のプロトタイプ:formatype社の必勝戦略/) - Formatype社では、形状が複雑な金属部品の試作、製造準備、小ロット生産向けに設計、加工、製造業務を担っています。年間100件を超えるプロジェクトの原価計算から開発までを請け負う上で、シミュレーションは今や同社の企業戦略に不可欠なツールとなっています。 1987年にフランスのシュリジーに設立されたFormatype社は、金型製作、機械加工、プレス部品製造、レーザー切断、板金成形、アセンブリ、溶接、3D制御、チューブ曲げの分野で幅広く業務提供を行っています。フランスの自動車メーカーにホワイトボディ部品を供給するTire1サプライヤである一方、排気系統全体、遮熱材、シート部品、ステアリングコラム、ダッシュボードのクロスピースもOEMへ供給を行っています。自動車産業を主軸としながらも、農業機械、鉄道、建設機械などのモビリティや家電製品の業界にも事業展開しています。 Formatype社では従来から試作や中小規模の生産に積極的に取り組んでいましたが、CAD設計、プレス成形シミュレーション、CAM業務のデジタル化によるメリットをいち早く認識し、2015年にオートフォーム社のソフトウェア・ソリューションを導入しました。それ以来、プレス成形工程の設計段階にてシミュレーションを日常的に活用しています。 見積もり作成にAutoFormシミュレーションを活用 Formatype社ではシミュレーションが不可欠なツールとなりつつあります。当初は工程設計の段階でシミュレーションを多用していましたが、近年では見積もり作成においても急速に活用が進んでいます。複雑な部品の見積もりを作成する場合でも、シミュレーションを利用すれば、適正な価格と金型ステーション数などの適用範囲を素早く確認することができます。 お客様と打ち合わせを行う際にも、円滑なコミュニケーションを図る上で、シミュレーションが非常に役立ちます。Formatype社では製品の変更依頼を受けると、まずは変更から生じる不具合をシミュレーションで確認し、それを具体的な根拠として示しながら、お客様に解決策を提案します。このようにしてFormatype社は、お客様の信頼のおけるパートナーとしての地位を築き上げました。 設計/製造チェーンの効率化 受注後にプロジェクトが開始してから初品が生産されるまで一貫してAutoFormを活用することで、開発工程全体を通じてロバスト性を担保することが可能になります。シミュレーションを有効利用すると、工程開発や金型サーフェス設計に費やす時間を短縮できるだけでなく、切削加工前に成形結果を確認することもできます。部品のフィージビリティを検討したり、成形工程終了時のスプリングバックを分析したりすることで、不具合の特定や対応策の検討も簡単に行えます。 AutoFormで作成したサーフェスはそのまま機械加工に使用でき、CADに戻る必要はないため、大幅な時間短縮が見込めます。またトライアウト担当者はシミュレーションのレポートから、荷重やブランクサイズなどの工程パラメータや不具合が生じうる領域を事前に確認できるため、トライアウトを円滑に進めることができます。 Formatype社では早期段階からシミュレーションで問題を予測しているため、トライアウトが開始してから問題対応に追われるような事態がなくなりました。 図1:シミュレーションを活用したバーチャル・トライアウト:AutoFormの形状修正ツールを活用しながら対応策を検討し、最終部品のフィージビリティにどのような影響があるかを確認できます。この事例では、部品のコーナー部を修正し半径を拡大することで、われを回避できました。 Formatype社の戦略的価値 Formatype社CEOのジャン・フィリップ ・ブリュネ氏は、AutoFormを導入してから、提供できるサービスを多様化できるようになったことに大きな意義を感じています。「AutoFormは自動車業界のバリューチェーンの中でFormatype社の貢献度を高めてくれるツールであり、従来の試作メーカーとは一線を画すことができます」このノウハウを有することで自動車メーカーやTire1サプライヤの設計部門と直接関係を築くことができるようになり、フランス国内はもとより、海外、特に欧州自動車産業の中心であるドイツでの取引も増加しています。たとえば、自動車を軽量化するには、高強度/超高強度鋼材を扱わなければなりませんが、このような新しい鋼種では、シミュレーションを有効活用することで、製品や工程の設計を大幅に効率化できます。 Formatype社ではAutoFormから得たノウハウをもとに、このようなお客様の多くに充実したサポートを提供することで、絶大な信頼を得ています。またFormatype社は自動車以外の市場でもAutoFormの積極活用を進めており、たとえば、これまで鍛造や曲げ加工で製造していた部品をプレス加工に切り替える共同設計プロジェクトなどを展開しています。Formatype社はそのノウハウをもって、お客様のプロジェクトを成功に導き、新たなプロセスの確立までサポートします。 コミュニケーションとノウハウ 最後に、社内でノウハウを共有する上で、シミュレーションが有効な手段となった事例をお伝えします。シミュレーションは社内で明確に役割の異なる、コスト見積もり、工法計画、ワークショップなどの部署間のコミュニケーションを一義で円滑にします。それにより、各部署における意思決定の基準として利用されています。 移行期間を経て、コストの見積もりからトライアウトに至るまで、プレス成形チェーン全体のあらゆる関係者がシミュレーションの情報を使って金型を評価し、シミュレーションがもたらす大きな価値を確信するようになりました。 図2:250t油圧プレスの傍で、トライアウト担当者のパトリック・アブラハム氏とAutoForm担当者のグレゴリー・ヴィニュロン氏が意見交換を行っています。Formatype社ではトライアウト担当者がシミュレーションを確認するようになってから、トライアウト中に不測の事態が生じることがなくなりました。 ブリュネ氏は、社内で知識をどのように蓄積してゆくかについて、特に配慮しています。2021年に立ち上げたMAP 4.0 (Mise Au Point 4.0)プロジェクトには「トライアウトを正確に記録し、AutoFormシミュレーション結果と分析的に比較することで、有用なフィードバックを将来の事業展開に役立てることができます」と記されています。 総論としてFormatype社はAutoFormシミュレーションの導入から大きな変革を遂げています。「初回から正しく」業務を進め、手戻りが生じないプロセスを確立する上で、シミュレーションが不可欠なツールとなることに間違いはありません。 - [YJ社の順送金型工場では50%の工期短縮を実現し、金型を再切削することなく高品質な製品を提供](https://japanforming.com/順送金型工場で50の工期短縮実現/) - プレス部品の製造では、従来の金型を順送金型と置き換えることで、部品コストを大幅に削減できる場合があります。先進国では車体部品の30~40%が順送金型を用いて製造されています。中国では現在10%程度ですが、業界の成熟化やコスト競争力の高まりとともに、順送金型の需要が急増しています。そのため部品形状が複雑であっても、高額なトランスファーライン金型よりも順送金型が活用される傾向にあります。本稿では、中国の順送金型工場がデジタルの工程計画の導入を通じて課題に取り組んだ事例をご紹介します。 スタートアップ: 入札準備 長年の経験を有する順送金型サプライヤーの多くは、コストの見積もりや入札準備に関する独自の手法を確立しています。どの会社であっても、通常の見積もり作成は素早く簡単に行っていますが、その反面、その品質は担当エンジニアの能力に大きく依存するという難点があり、またCADやCAEに関する十分な知識も必然的に求められます。 これらの点を踏まえて、オートフォーム社では順送金型のストリップの最適化と機能改善を行い、以前のバージョンでは迅速な対応が難しかったフィージビリティ解析の抜本的な変更を行いました。 事業価値 中国蘇州市にある国内向け順送金型サプライヤーYJ社の事例を紹介します。年間1500個以上の部品、1日平均にして5個の部品の入札を行う同社では、入札業務を数名で担当しています。 AutoForm順送金型ソリューションの導入から、YJ社では年間2400時間以上の工数削減を達成しています。 また、後段階でプロジェクトが実施される場合、見積もりに使用したフィージビリティのファイルを継承して使用することができます。その間に製品に変更が生じたとしても、ウェブやすべての機能が自動調整されるため、同じファイルでそのままプロジェクトを継続できます。エンジニアは最初から作成し直す必要がないため、作業時間を大幅に短縮することが可能になります。 セカンドステップ: フルストリップ工程の検証 フルストリップの工程検証を行う3通りの方法 1. CADで金型設計のみ実施し、バーチャルでの検証は行わない — 簡易的な小型部品のみに適用できますが、トライアウト、再切削のループ、金型の品質は保証されません。 2. CADで金型を設計し、バーチャルで金型を検証 — 金型のトライアウトや再切削のループを削減できますが、CADの設計に膨大な時間を要します。 3. 金型の検証とストリップコンセプトの検討をバーチャル行い、CADの設計と組み合わせる — シミュレーションソフトウェアでストリップをパラメトリックに設計できます。そして作成した金型を使用して、シミュレーションを素早く設定できます。シミュレーションが完了すると、CADでトライアンドエラーを繰り返すことなく、ストリップを設計できます。 YJ社の金型工場でのデジタル工程計画の導入 金型サプライヤーのYJ社は、AutoFormを活用したデジタル工程計画の導入試験を、同社の順送金型プロジェクトで実施しました。対象部品は一般的なマルチドローの順送金型で設計されたものです。まずAutoFormソフトウェアで、ストリップのフィージビリティ検討と結果評価を行い、ストリップの基本設計まで完成させてから、CADにてストリップの設計を行いました。デジタル工程計画を活用すると、従来のワークフローとの比較において、エンジニアリングや設計に費やす時間が50%削減されました。それと同時に、顧客の満足する材料歩留まりを達成しました。その後、金型のトライアウト工場で、金型の切削と試験を行ったところ、デジタルエンジニアリングの段階ですべての不具合が予測および解消されていたため、トライアウトは非常に良好な結果を収めました。最初はトリム金型なしで、次にはストリップレイアウト全体で、2回のトライアウトを行うのみでした。金型の再切削を行わずとも、部品品質の合格率は100%に達しました。 YJ社テクニカルマネージャーの李氏は、次のように語っています。 「順送金型のストリップを設計する際には、まずCADで設計し、それをCAEで検証するという当社独自のワークフローがあります。作業効率化を進めるにあたり、このサイクルをいかに早めるかということを重視してきました。しかし今回のプロジェクトを通じて、このようにAutoFormを有効活用できると学んだことは大きな発見でした。今後、順送金型の設計にAutoFormを使うことで、作業効率は30%以上の改善を見込むことができるでしょう」 金型工場でデジタル工程計画を有効活用することによって、エンジニアリングやトライアウトの時間を短縮できるだけでなく、部品形状が複雑であっても、品質の高い部品を提供することが可能になります。すなわち、急成長を続ける中国の順送金型市場において、高いシェアを効率的に獲得することができます。 - [デジタルダイスポッティング: ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第6部](https://japanforming.com/デジタルダイスポッティング-ホットスタンプの課/) - プレス金型の開発において金型メーカーが直面する難題のひとつが、プレス成形中に生じる板厚の変化を考慮しながら、金型のサーフェスを調整する作業です。この「スポッティング」ともよばれる工程では、金型とシートの接触が工程開発時に定めた状態となるように微調整を行います。板厚が変化するとシートと金型サーフェスのクリアランスに影響し、その接触圧にも大きな影響があります。そのため最終部品の品質を担保するに、金型の当たり調整を適切に実施することで、成形中の材料の流入をコントロールすることが必要になります。 従来のスポッティング工程では、以下の手順で調整を行います。まず部品の公称寸法と板厚に応じて金型を切削し、寸法を確認します。次に金型を組み立て、プレス機に取り付け、初回プレス部品の絞り加工を行います。このとき板厚が変化するため、板厚が増す領域では接触面圧が強くなり、板減の領域では接触面圧が弱くなるか、あるいは接触しなくなります。このような接触状態の変化は、シートに面圧が高いところでは色が薄くなる特殊な塗料を塗布することで判別することができます。次にさまざまなサイズのハンドグラインダーを使い分け、微調整を行います。そして別の部品を絞り、接触面圧の高い部分を再び特定し、接触面圧が均一になるまで一連の作業を繰り返します。 図 1: ドロー加工中の板厚変化 ホットスタンプにおけるダイスポッティング: ホットスタンプの場合、この工程の特性上、スポッティングの重要性はさらに高まります。材料のマイクロ構造をマルテンサイト相に変態させるには、シートと金型の間に効果的に熱を流す必要があるため、シートと金型の接触が良好でなければなりません。接触状態が理想的であれば、焼入れ時間の短縮、ひいてはサイクルタイムの短縮も可能になります。成形中に発生するどんなに微小な板厚変化であっても、シートと金型の接触状態に影響を及ぼしシートの冷却速度が落ちる場合があります。その結果、部品に温かい部分が生じ、マルテンサイトの生成が妨げられ、最終部品の熱ひずみが大きくなる場合があります。この問題はパッチワークブランクでは特に深刻です。異なる板厚が組み合わさっている部分を効率的に冷却することは非常に難しく、また垂直な壁では接触面圧を高めることが難しいため、大きな問題となりえます。 図 2: ホットスタンプ工程中にシートの板厚減少 によって生じるギャップの変化 デジタルスポッティングのメリット: 前述のように、ホットスタンプでは通常、部品サーフェス全体の熱交換をより効率的に行うために、金型サーフェスのあらゆる部分を正確に調整しなければなりません。極度な板増や板減が局所的に生じると、金型の正規寸法と調整後の最終形状の差がコンマ数ミリになることすらあります(下図参照)。シートと金型サーフェス全体の接触を良好に保つために、局所的に板減する部位も補正しながら、わずかに板厚が変化する広い範囲でもあたり調整を行う必要があります。そのためホットスタンプの金型は冷間プレス用よりもスポッティングが難しく、手間がかかります。 図3:ホットスタンプ工程中の部品の板厚変化によって生じるギャップ 金型サーフェスの研磨は手作業で行うため、調整作業は非常に繊細で長時間を要します。また何度も部品の成形を行う必要があるため、消費する材料も膨大になります。つまり、機械加工直後の形状と最終的な金型表面の形状の差を小さくすることができる手段があるならば、スポッティングにかかる時間とコストを大幅に削減することができます。そのためデジタルダイスポッティングを活用し、事前にデジタルで検討することが重要なのです。 デジタルダイスポッティングの仕組み デジタルダイスポッティングの手法は非常にシンプルです。まずはホットスタンプ後の最終的な板厚分布をシミュレーションで計算します。デジタルダイスポッティングの技術は、この板厚分布情報を利用することで金型形状を直接修正します。この、事前にあたり調整されたサーフェスを切削加工することで、金型を製造します。これはスプリングバックに起因するベクトルフィールドを用いて金型サーフェスを調整する「スプリングバック見込み補正」と同様の手法です。ダイスポッティングの場合、板厚分布によってベクトルフィールドが生成されます。 デジタルダイスポッティングでは、上型と下型のサーフェスの両方をスポッティングすることができ、また、調整する領域を選択して板減と板増で異なるスポッティング係数を適用することもできます。つまり板減や板増の値を調整しながらスポッティングの係数を定義し、それを金型サーフェスに反映させることが可能です。また板減と板増のいずれかにゼロのスポッティング係数を適用すれば、その効果は考慮されません。図4では、スポッティングのゾーンごとに異なるスポッティング係数が設定されています。金型サーフェスに施したスポッティングの量も示されています。 図 4: デジタルスポッティングに適用するパラメータが異なる領域 さまざまなツールを活用することで、デジタルでも非常に柔軟な対応が可能になります。板厚の変化を考慮できるだけでなく、上型と下型のどちらを調整するかも指定することができるため、最適なスポッティングの手法でサーフェスを調整できます。また最終のサーフェスは標準3Dファイルとしてエクスポートし切削時に参照することで、ほぼ目標寸法どおりに金型を切削加工できます。そのため軽微なスポッティングを追加するだけで、成形したシートと金型の接触を最適にすることができるのです。これで金型の仕上げに必要な工数を最小限に抑え、ホットスタンプの金型の製造と運用にかかる時間とコストを大幅に削減することが可能になります。 金型のスポッティングは、プレス業界では欠かすことのできない重要な工程ですが、その反面、膨大なコストと時間を要します。またホットスタンプの場合は、その重要性や難度がさらに高まります。しかしデジタルダイスポッティングを有効活用することで、金型の調整作業を簡素化し、時間やコストを効果的に削減することができます。オートフォーム社ではデジタルダイスポッティングの機能強化を図ることで、ますます高度化し競争が激化するプレス業界におけるお客様の成功に貢献させていただきます。 - [摩擦と現実的なトライボロジ:ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第5部](https://japanforming.com/摩擦と現実的なトライボロジ/) - ホットスタンプは今や確立された手法ですが、その工程の数値解析には未だ課題が山積しています。冷間プレスよりも複雑であるため、その工程を正確に説明するには、正しい物理的挙動を考慮する必要があります。工程技術者がホットスタンプのシミュレーションを行う場合、考慮すべき要因は多岐にわたります。 合金鋼の各相における温度とひずみ速度に依存するフローカーブ 高温下でのシートの温度依存と方向依存を考慮した温度依存のR値 温度に依存するFLC 塑性ひずみが相変態に及ぼす影響 スポット溶接を含むパッチワークブランク 金型の3D熱伝導と冷却経路 図1. ホットスタンプ工程の詳細モデル しかし工業分野のシミュレーションで使用するトライボロジシステムの多くは、たとえば、摩擦には一定のクーロン摩擦係数を用いるなど、過度に単純化されています。 ホットスタンプの摩擦は一定ですか? ホットスタンプの摩擦は一定ではありません。数多くの研究結果から、ホットスタンプの摩擦は、温度、接触圧、摺動速度といったさまざまなパラメータによって変動することが証明されています。ホットスタンプの摩擦が「一定値」ではないことは、この研究が始まった2009年、つまり10年以上前から判明していたのです。 ではホットスタンプのシミュレーションには、なぜこれまで一定の摩擦係数が適用されてきたのでしょうか? その理由として、以下の2点を挙げることができます。 シミュレーションの精度を向上させるには、冷却経路やスポット溶接など、摩擦よりも重要な工程パラメータのモデル化を優先すべきだった。 複雑なトライボロジシステムを計算し、モデル化するためのツールがなかった。 TriboFormについて ホットスタンプ工程のモデルを作成する場合、AutoFormは既に重要な工程パラメータのモデル化を詳細に実施することができるレベルに達しており、1番目の理由はもはや当てはまりません。また2番目の理由に対する対策としては、TriboFormを活用すれば、シートと金型間のトライボロジシステムを考慮した摩擦係数を計算できます。もはやホットスタンプのシミュレーションに、一定の摩擦係数を用いる理由はありません。 TriboFormは冷間プレス向けに開発されたソフトウェアですが、後に、ホットスタンプのトライボロジ条件にも対応できるように機能が拡張されています。ホットスタンプでは、塗膜の挙動および微小なクラックの形成が、トライボロジ条件を決定づける重要な要因となります。トライボロジ条件が変動すると、シートと金型間の熱伝達が変化し、その結果新たなカジリや摩耗が生じることでさらにトライボロジ条件へ影響が及ぶ場合があります。他のすべての依存関係を考慮しながら、接触圧力、塑性ひずみ、温度、および摺動速度に応じた4次元摩擦モデルを構築することが効果的です。 図2. TriboFormソフトウェアを活用した冷間プレスとホットフォーム この方策を用いれば、摩擦係数を確認したり、シートと金型の粗さ値の違いを比較することができます。図3は一定の摩擦係数(0.45)を適用することが、いかに問題を単純化しすぎているかを示します。 図3. 摩擦係数の計算 TriboFormからより重要な結果を導き出せるのでしょうか? 工程技術者の中には、TriboFormを活用することで、より重要な結果を引き出すことができるのか、という疑問を持つ方が少なからずいらっしゃいます。これには「場合による」とお答えしています。 その詳細を確認するために、図4のとおり、異なる部品形状を用いて高度な摩擦モデルの効果を調べました。シミュレーションを比較する上で、板減の結果を指標として使用し、板厚方向の公称ひずみをパーセントで表します。左はダイ半径が10mm、右は30mmです。ダイ半径が小さい場合はクーロンモデル、ダイ半径が大きい場合は高度な摩擦モデルを用いた結果がより重大であることがわかります。これは主に半径領域での接触圧に起因します。半径が鋭利であるとより多くの接触圧が生じるため、高圧になるほどシートのサーフェスはより滑らかになります。すると高度な摩擦モデルでは、摩擦係数が減少します。また接触圧が高いということは、金型への熱損失が速いということでもあり、その結果、その部分の材料がより冷たくなり、摩擦係数がさらに低くなります。 図4. 一定のクーロン摩擦とTriboFormによるシミュレーション結果の比較 摩擦は複雑なテーマです。しかしAlSiの薄膜を施したマンガン・ボロン鋼に特化した摩擦モデルに、トライボロジシステムの特性が追加されたことで、工程技術者は余分な手間をかけることなく、この高度な摩擦モデルを直接活用できるようになりました。 以上の成果は、ボルボカーズ社、タタ・スチール社、ドルトムント工科大学との産学共同研究によるものです。より詳細な内容をご希望であれば、今年のIDDRG国際会議で発表した論文をご確認ください: Application of an Advanced Friction Model in Hot Stamping Simulations: A Numerical and Experimental Investigation of an A-Pillar Reinforcement Panel from Volvo Cars – - [株式会社ラピートにおける試作板金加工のプロセス革新](https://japanforming.com/試作板金加工のプロセス革新/) - 株式会社ラピートは岡山県赤磐市にあり、試作板金加工と金型設計製作を主な生業としています。取引先は自動車部品メーカー各社を中心に広がりを見せています。希望製品形状から3次元データ作成、金型製作、製品加工までの社内一貫製作を特長としており、超短納期が求められる中で要求品質を満足する部品を追加費用発生することなく納期通りに仕上げてきた数々の実績を誇ります。 しかしながら、以前の業務プロセスはいろいろな問題を内包するものでした。たとえば、 過去の経験を基に見積もりを実施、判断の難しいものはコンサバな見積もりになっていた。 型製作時にはCADで金型モデリングするも、工程の妥当性はKKDで判断し高リスクの場合は工程追加などの措置を行っていた。 金型を製作してパネル成形して問題が初めて発覚し金型修正を繰り返していた。最悪の場合は工程追加も1回/月くらいあった。 現場での修正回数や工程追加による手戻り有無などが見通せず、生産計画が立てづらく、現場作業に無駄ムリむらが発生していた。 などです。その構図をワークフローで示したものが下図ですが、仕事の上流から下流に渡ってさまざまなプロセスで問題が発生していたことが分かります。 これらの問題を解消するため、株式会社ラピートの経営陣は新しいデジタルツールを導入して業務プロセスの見直しを行う決断をしました。その一つとして白羽の矢を立てたのがAutoForm Formingでした。しかし導入当初は解析担当が明確に決まっておらず他業務との兼任であったことから、解析業務の立ち上がりは緩やかなものでした。その状況を打破すべく重友専務の決断により、CAE担当の市原様と野山様が専任者となり、解析技術の習得とともに解析を活用した業務プロセスへと変えていくことができました。 見直しを行った業務プロセスの主なポイントを以下に示します。 成形の難しい部品は見積もり時からAutoFormを活用して、適正な工程レイアウト・ブランクサイズ・金型サイズを予測するようにした。 見積もり段階ではAutoForm-DieDesignerで工程検討と金型モデリングして解析するようにするようにした。 工程検討・金型設計時に成形不具合を事前に対策して金型製作&トライに移行するようにした。 トリムラインも金型設計時に検討するようにした。 解析で予測された不具合発生危険部位を型製作現場に提示し、トライ時の品質チェック時に活用するようにした。 これらの見直しを織り込んだワークフローを下図に示します。業務フローの早期段階、金型を製作する前にCAE解析によって問題点を洗い出し対策を事前に金型へ盛り込むように変わったことが見て取れます。 一般的な量産用金型とは時間軸が全く異なる極短納期と超効率的な金型製作が求められる試作業務においては、ほんのわずかな手戻りや現場修正が納期遅れやコスト増(赤字に直結)につながります。それがAutoFormを活用した業務プロセスに変えることで、以下に示すような大きな効果を得ることができました。 見積もり精度が上がり、トライ後に工程追加で費用派生することや、逆にリスク回避のため不必要に工程数をあらかじめ増やして高い見積もりになることがほぼ無くなった。 金型サイズの適正化ができた。特に左右2個取り金型では部品配置を適正化できることで、無駄に大きな金型を作らなくて済むようになった。 成形型のトライ改修時間は、30分かかっていたものが10~15分くらいになるなど50%から60% 程度削減できた。 ブランクシートサイズの現場調整が無くなったこともあり、トライで使用するブランク材も以前が5枚使っていたものが2枚くらいで済むようになった。 トライ初回のパネル精度が向上した。従来は簡単部品でも60%くらい難成形部品では30%くらいの合格率だったものが、それぞれ80-90%と60‐70%に向上した。 現場で推定トリムラインを作成してトライ修正することが無くなった。 (付随効果として)型設計者がバーチャルでトライを経験することで成形の知識が深まり、現場作業者との意思疎通がやりやすくなった。 ここに示す図は、ブランクサイズとセット位置の適正化および摺動条件の改善によって2工程を1工程に短縮しながらも板厚減少率を大幅に改善した事例と、製品外にビードと島形状を追加することでスプリングバック量を低減した事例です。 工程短縮しながら板減も改善 スプリングバック低減 紹介してきましたように株式会社ラピートでは、AutoFormを活用して業務プロセスの見直しを行うことで大きな成果を挙げることができました。その成功要因は、下記の4つが挙げられます。 あえて「変革」を目指す高い目標にした。 経営層が選任者を指定するなど変革を主導した。 現場主導で組織の上流から下流まで仕事のやり方を変えていった。 専任担当者が積極的に新技術習得に努め、継続的に改善を進めていった。 まさに会社を挙げてDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んだ結果と言えます。 株式会社ラピートの変革はまだ続きます。下図に示すように、スプリングバック見込みを試した結果では、見込みを入れた金型で打ったパネル精度は良かったので、今後は他部品へも展開していく計画です。しかしながら試作ゆえの難しさが立ちはだかります。たとえば、レーザートリムの前の寸法精度測定に製品形状通りの成形型を使う事で検査具を減らしているが、成形型に見込みを入れると検査具を追加する必要が出てくる、といった具合です。その困難を、品質保証のやり方なども含めた大きな枠組みでの取り組むことで打破していこうとしています。 スプリングバック見込み <企業概要> 株式会社ラピート 設立:1955年3月 所在地:岡山県赤磐市小瀬木50-19 従業員数:30名(2023年2月現在) 事業内容:試作鈑金加工 金型の設計・製作 「熱可塑性樹脂複合材料:CFRTP」の製造及び形成加工 3次元レーザー加工、治具・検具の設計・製作 3次元CADによるデータ作成、リバースエンジニアリング 多品種少量生産にも十分に対応 URL: http://www.rapiit.com/ - [AutoForm-Sigmaによるシミュレーションにより量産ワレに影響を及ぼす因子を特定 ~生産工場と連携しながら改善活動を展開~](https://japanforming.com/autoform-sigmaによる量産ワレに影響を及ぼす因子を特定/) - 「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」をコーポレートパーパスに、革新的なクルマやサービスを提供する日産自動車株式会社(以下、日産)。同社では、生産工場で発生するパネルの量産ワレの削減に向けて、ロバスト性解析シミュレーションソフトの「AutoForm-Sigma」を活用して量産ワレに影響のある要因を検証しました。量産変動をシミュレーションに落とし込むことで、量産ワレ部位を52.9%の確率で再現。ワレに影響を及ぼす因子の推定に成功しました。現在、シミュレーション結果をもとに、生産工場と連携しながら改善活動に取り組んでいます。 生産性の向上に向けて、シミュレーションで量産ワレの原因特定へ 社会の変化や企業に求められる役割の変化に対応するべく、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」のもとで、よりクリーンで安全、よりインクルーシブな世界の実現を目指す日産。2030年代早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とし、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体において、カーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。2022年6月には日産初の軽自動車EV「サクラ」を発売。同車は「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」「RJCカーオブザイヤー」「2022-2023日本自動車殿堂 カーオブザイヤー」の3冠を獲得するなど、EVの世界でも存在感を発揮しています。 EV、e-POWER搭載車、コンパクトカー、SUV、ミニバン/ワゴンなど数多くの車種の生産を手がける同社ですが、さらなる安定した生産に向け、改善活動に取り組んでいます。その中で、プレス部門として重点的に取り組んでいる活動に、プレス生産中のワレの撲滅があります。 プレス工程でワレが発生すると、その後の工程に大きな影響を及ぼし、生産性の低下につながります。同社では車両生産技術開発本部や、工場の生産部門などで量産ワレの発生原因の特定に取り組んでいるものの、真の発生原因はつかみ切れていませんでした。そこで、ワレに影響する因子をシミュレーションソフトで分析することにしました。車両生産技術開発本部 プレス技術部 圧型技術課の佛川正哲氏は次のように語ります。 「ワレが発生する背景には、ハイテン材の増加や生産工程の複雑さなどがあります。部品の形状によっても、割れやすいもの、割れにくいものとさまざまです。そこで、量産ワレに影響を与えると思われる因子を設定し、シミュレーションソフトで分析してみることにしました」 シミュレーションソフトには、ロバスト性を解析するAutoForm-Sigmaを活用し、ばらつく可能性のあるパラメーターを変数として定義し、生産時のばらつきを再現しながら不具合の有無を確認することにしました。 「日産では、2000年代前半にAutoFormを導入して以来、さまざまな用途でシミュレーションを実施しています。今回、2021年9月にAutoForm R8がAutoForm Forming R10にバージョンアップし、解析スピードが格段に向上したことから、オートフォームジャパンの協力を得てAutoForm-Sigmaを活用したシミュレーションを実施することにしました」 影響を及ぼす9個の因子をピックアップし、AutoForm-Sigmaで組み合わせ計算を実行 シミュレーションの実施に向けて、同社はまず量産ワレに影響があると想定する因子を、工程要素展開によって9個ピックアップ。AutoForm-Sigmaで量産変動パラメーターを振り、シミュレーションの中でばらつきの要因を変化させながら組み合わせ計算を実行することで、ワレに対する因子の寄与率を求めることにしました。 「今回は量産ワレに影響のある要因を、材料自体が持つ特性値(板厚、BLサイズ、BLの置き位置)、材料と金型間の摩擦(摩擦係数)、ダイフェースのクリアランスの3要素と考えて、合計で9個の因子をピックアップしました。パラメーターの変動幅(ばらつき量)は工場の実績値を入手して、標準偏差をもとに設定しました。」 シミュレーションを実施する部品は、国内の生産工場で実際に量産ワレが発見されている数車種のド アパネル、フェンダー、ホイールハウスなどの20部品としました。解析期間は、2021年10月から11月までの約2カ月間。各部品に対して、11個の因子を組み合わせた約200通りのシミュレーションを実行してワレが発生しやすい部位を特定し、それぞれに対してワレに影響を及ぼす因子を推定しました。 「シミュレーションは、高性能のワークステーションを約20台使って並列計算を実行しました。AutoForm-Sigmaの実行基盤として、AutoForm Forming R10のAutoForm-Sigma MAXを使って一度に100並列4スレッド解析を行った結果、AutoForm R8で1部品に5日かかっていた解析時間が、約8時間に短縮されました」 量産ワレ部位の再現率52.9%、影響を及ぼす因子の推定に成功 AutoForm-Sigmaによるシミュレーションの結果、実際に発生する量産ワレの部位を再現(検知)できた再現率は、20個の部品に対して52.9%となりました。 ワレに影響を及ぼす因子を推定することもでき、材料、摩擦、クリアランスの3要素に対して、摩擦が一番大きく、次が材料のEL値と続き、クリアランスについては影響がほとんどないことがわかりました。 「AutoForm-Sigmaによるシミュレーションでは、通常の解析条件では検知することができなかったワレを検知することができ、実際にワレのリスクがあることを認知できました。因子の推定についても、ある部品については摩擦による影響が全体の60%、ある部品についてはEL値が影響の50%で、摩擦の影響は0%であるというように、部位毎の影響因子を明らかにすることができました」 一方でAutoForm-Sigmaでワレが検知できなかった部品は47.1%あり、量産ワレの再現には、工具形状やクリアランスなどの量産コンディションの再現が必要になると考察しています。 シミュレーションで得られた結果は、さっそく生産工場にフィードバックし、工場の担当部署とともに改善に乗り出しています。具体的には、最も影響の大きい摩擦の問題を解決するため、新たな設備を導入して金型に塗布する防錆油の量を管理できるようにしたり、防錆油の粘度の変動幅を細かく管理する検討を開始しました。材料については生産技術のサイマル活動において、材料のEL下限値で保証することにしました。 「現在は、ラボ環境で防錆油の塗布量や粘度などを変えながら、従来の生産条件と比べてどの程度の変化があるかを確認している段階です。ラボ環境で検証が終了した後は、生産工場の担当者と協力しながら量産ラインへの適用を目指していきます」 特定した原因をもとに改善施策を実施し、プレス工程の生産性向上へ AutoForm-Sigmaによるシミュレーションにより、量産ワレの原因を特定した日産では、現場の生産性向上に期待しています。 「今回のシミュレーションの効果として大きいのは、要因が特定できたことです。摩擦なら潤滑油を適正に管理することで改善ができますし、材料についても最も悪い状態の材料を使うことを想定して金型を設計することでワレの発生を抑えることができます。これまで現場が疑っていたクリアランスの問題は今回の部品では影響が少ない事が分かり、取り組みの優先順位が明確になりました」 AutoForm-Sigmaの使い勝手についても、手軽に使える操作性の高さを評価しています。 「パラメーターを決めて、ばらつきを設定すれば、あとは自動的に組み合わせ実験を実行してくれるので、非常に簡単です。これまでのように組み合わせ表を自作して、手作業で解析すると大幅な工数がかかりますが、AutoForm-Sigmaなら画面上で設定するだけなので、短時間に解析ができ、作業の属人化を解消することができます。現在、私以外の技術者もAutoForm-Sigmaを日常的に利用してシミュレーションを行っています」 今後は、シミュレーションで利用するパラメーターをより最適化することで、解析精度の向上に取り組む計画です。さらに、プレス成形のラインについては、ラインエンドに設置したカメラとAI/機械学習との連動によるワレの自動検知装置や、ワレのリスクを判定する装置の導入なども視野に入れています。 「生産工場におけるプレス成形の生産性向上に向けて、さまざまな施策を実施していく予定です。オートフォームジャパンとは、引き続き共同研究を実施し、一緒に成果を出していきたいと思っています」 日産とオートフォームジャパンによる改善施策の取り組みは、これからもさまざまな領域で続いていきます。 (企業概要) 日産自動車株式会社 設立:1933(昭和8)年12月26日 所在地:神奈川県横浜市西区高島1-1-1 代表者:代表執行役 社長兼最高経営責任者 内田 誠 様 従業員数:23,166名(単独)134,111名(連結)(2022年3月末現在) 事業内容:自動車の製造、販売および関連事業 URL:https://www.nissan-global.com/JP/ - [新世代のテーラード・テンパリング手法:ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第4部](https://japanforming.com/ホットスタンプ分野で取組むべき課題4/) - 新世代手法について テーラード・テンパリングは新しい概念ではありません。ホットスタンプの分野では、10年以上前からテーラード・テンパリングに関するさまざまな戦略が用いられてきました。その例として、部分冷却、テーラード・ヒーティング、金型の加熱などがあり、これらの技術から最終製品に延性の高いソフトゾーンを作り出すことができます。またシートの温度や冷却速度を変えることで、そのゾーンの硬さも制御できます。しかし従来の手法には注意すべき欠点があります。硬いゾーンと延性が高いゾーンを区切る移行部分には、明確な境界線があるのです(図1)。つまり完全に硬化した部分とそうではない部分がはっきりと分断されます。 図1 : 異なるテーラード・テンパリングの手法を用いた部品の比較 新世代のテーラード・テンパリング手法では、延性の高いゾーンを部品形状上に自由に配置することができるため、この境界線の問題を解消できます。これにより、部品の周囲に延性の高いフランジを配置したり、部品の中央にソフトスポットを配置したり、または衝突エネルギーを吸収するための大きなソフトスポットを作り出すこともできます。 この新たな手法について事例を3つご紹介します: TemperBox®: https://www.aptgroup.com/company/news/apt-launching-temperbox%C2%AE-new-cycle-time-neutral-production-solution-enables-tailored Thermal Printing: https://schwartz-wba.com/products/tailored-tempering/?lang=en PACC: https://www.ebnergroup.cc/en/blog-pacc-module-en 各手法の共通点 このような新たな技術の相違点はさておき、ここでは共通点を中心に説明します。どの手法においても、まずはシートを完全にオーステナイト化します。次に延性を高めたい部分の温度を、一定時間をかけて徐々に下げていきます。最後にブランクをプレス機に移します。プレス成形やクエンチングの工程は、従来の直接的なホットスタンプと同様です。このようにして、相分布や硬さが異なるゾーンを生成することができるのです。つまりどの手法であっても、ブランクの特定部分を対流によって冷却し、一定の時間内に一定の温度にすることに変わりはありません。 工程モデルの作成 このような工程を正しく定義するには、以下の点における柔軟性が求められます。 - 2回目以降の加熱/温度分布の制御工程 - ゾーンごとに異なる加熱/冷却目標温度の設定 - 温度の制御やブランクの移動に要する時間 材料特性に関しては、各ゾーンの温度履歴を追跡し、対応する材料組成の変化を計算することで、最終的な硬さの値を算出する必要があります。ベイナイトとフェライト(そして恐らくパーライト)が混在する延性を高めたいゾーンも成形中に変形するため、相変態と各相に依存したフローカーブ(硬化曲線)は非常に重要な役割を果たします。 図1は成形前の一連の工程における温度分布を示しています。完全にオーステナイト化された後、温度分布を作り出す工程(テンパリング・ステーション)まで3秒の移動時間があります。この間、図に示されたゾーンでは、温度が600℃まで徐々に低下します。その後、テンパリング・ステーションからプレス機まで、さらに移動時間がかかります。 図2: テーラード・テンパリングにおける温度変化 シミュレーションでは、これらのステップをすべて簡単に定義でき、それに応じた相変態も計算されます。図2は異なる状態での相分布を示しています。テーラード・テンパリング・ステーションの直後から延性を高めたいゾーンにベイナイトとフェライトが形成され始め、また硬くしたいゾーンは完全にオーステナイト状態のままであることが分かります。この領域では、最終製品は目標としていた22MnB5の硬さに達していることがわかります。一方延性が高いゾーンには、マルテンサイト、ベイナイト、フェライトが混在しているのがわかります。 図3: プレス機への移動後の相分布(左)とクエンチング後の相分布(右) プロセス・エンジニアリングの効率化を図るために、シミュレーションを活用して実際の工程を再現することで、BIWエンジニアリング業務のワークフローに役立てることができます。シミュレーションから以下のような情報を得ることができるため、日常業務のさらなる効率化を図ることが可能になります。 テーラリング工程を簡単に素早く定義 最終製品の特性(硬さ、相分布、引張強度)の測定 延性を高めたいゾーンの変形を正確に表現(相依存のフローカーブを活用) 部品の現実的な熱ひずみの計算 - [加熱された金型: 金型サーフェスの温度分布に関する問題を解決: ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第3部](https://japanforming.com/ホットスタンプ分野で取り組むべき課題3/) - 1つの金型に冷却部分と加熱部分を混在させることで、均一なブランクから成形するプレス部品に複数の特性を持たせることができる場合があります。本稿では、その手法およびシミュレーションを活用した工程の効率的な定義方法についてご紹介します。まずはこの手法の論理的根拠を簡単に説明します。 ホットスタンプの工程では、完全なマルテンサイト相が形成されると、合金鋼の強度が最も高まります。これを逆に利用することで、一度の成形工程で複数のゾーンを生成しそれぞれ異なる特性を持たせることも可能になります。 初期ブランクを900℃以上に加熱すると、ブランクに完全なオーステナイト相が形成されます。材料の成形後に急冷すると、マルテンサイト相が得られます。ゆっくりと冷却した場合は、フェライト、パーライト、ベイナイトのように硬さや強度が低い相が形成されるため、ここでは急速に冷却することが非常に重要です。図1の連続冷却変態(CCT)図が示すとおり、形成される相は冷却速度によって異なります。 図1 一般的な22MnB5のCCT図 この図が示すとおり、冷却速度は部品の最終的な硬さや強度を決定づける一因であることがわかります。冷却速度に影響を与える手法はいろいろありますが、その1つとして金型を冷却領域と加熱領域に分割する方法があります。この方法では、硬くしたい部分とそうでない部分の移行領域を非常に狭くすることができ、また複数の領域を柔軟に設定することができます。つまり、この手法は、より複雑な部品の成形に適していると言えます。 冷却や加熱のための最適な工程パラメータの組み合わせを特定することは極めて困難であるため、温度が局所的に異なる状態の部品を金型から取り出す場合、熱ひずみが問題となることがあります。また検討の後期段階で金型に修正を加えると、高いコストが生じます。そのため生産中に金型を修正しなければならない事態をエンジニアリングの段階で事前回避し、高品質な生産を担保できる最適なパラメータを特定することが求められます。この検討にはシミュレーションの技術が欠かせませんが、それをサポートするプロセスエンジニアリングの作業には、正確な設定と、精度の良い予測が必須となります。 金型温度を部分的に変更する手法では、一般的に金型のセグメントが一定温度(冷却金型は80℃、加熱金型は300~550℃)で定義されているモデルを使用します。プロセスエンジニアリングの観点からは、この手法から得られる結果は有意義であることが多いです。しかし無論「よくある」ことが「必ずある」ことだとは限りません。工程パラメータの影響を受けやすい複雑な部品の場合、金型の温度を一定と仮定する単純な手法では、十分に高精度で正確な結果を得ることができない場合があります。精度と正確さを高めるには、3D熱伝導を用いて現実を反映させた解析を定義する必要があります。 この問題に対しては、直径と発熱量でカートリッジヒーターを定義し、金型の加熱領域の3D熱伝導解析を行うことが効果的です。これにより、金型サーフェスの現実的な熱伝導と温度分布を考慮することができます。また実際の加工工程と同様、部品を成形することで金型は温まります。実際の量産状況を表現するため、金型温度分布が定常状態に達するまで「サイクル・シミュレーション」を実施します。 加熱金型では、通常、冷却金型のみを使用する一般的な直接ホットスタンプとは対照的に、次のような疑問を念頭に置いています。 最終部品の硬さのゾーンは、それぞれ硬さや引張強度の仕様を満たしているか 形状公差を超える熱変形が発生していないか 硬さの問題を生じさせるホットスポットやコールドスポットが金型上にあるか このような疑問は、金型の機械加工を行う前にすべて解消でき、それに応じて調整を行うことが可能です。 図2:温度分布と最終的な硬さの比較(一定温度と3D熱伝導) 金型の温度分布と温度が結果に及ぼす影響について、温度一定の金型と現実的な3D熱伝導を用いた金型のシミュレーションを比較したものを図2に示します。後者のシミュレーションについては、冷却管とカートリッジヒーター、およびそれぞれの冷却/加熱能力が定義されています。加熱された金型の加熱設計が不十分なため、端の方がわずかに冷たくなっています。そのため、この部分にはかなり硬い相が形成されます。実際の工程では、ソフトゾーンに生じた硬い相を解消するために、加熱力を高める場合があるかもしれません。しかしより高い温度とその温度勾配によって、意図しない熱ひずみが発生してしまうかもしれません。3D熱伝導を用いたシミュレーションでは、部品上の最終的な温度分布を正確に予測できるため、熱ひずみをより正確に表現することができます。そのため金型サーフェスを修正することで、熱ひずみを事前に補正することができます。 結論として、3D熱伝導を用いたシミュレーションにカートリッジヒーターを組み込むことで、シミュレーション結果、特に最終的な部品特性に関する精度が向上します。さらに、金型上の温度分布に関連する問題をエンジニアリングの初期段階で特定することで、実際の金型の作成後にコスト高な修正を行う必要がなくなります。 - [超塑性成形(SPF)加工のシミュレーション手法: ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第2部](https://japanforming.com/ホットスタンプ分野で取組むべき課題2/) - 超塑性成形の「超」とは? 超塑性とは、特定の材料を高温にした際に破断するまでネッキングを伴わずに非常に大きな塑性変形を示す現象です。多くの材料が超塑性挙動を示しますが、商用利用できるものは、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄合金など、ごく一部の材料に限られています。これらの比較的小さい結晶粒径(10-20μm以下)の重圧延材を、制御されたひずみ速度(通常10-5〜10-1秒-1)で材料融点の50%以上の温度にて変形させると、通常の冷間成形工程に比べて10倍の伸び(200%以上)が生じます。Ti 6Al 4Vなどのチタン合金や一部のステンレス鋼は900℃程度、アルミニウム合金(AA5083など)は450~520℃に加熱すると、超塑性の領域に入ります。超塑性変形時に0.1~2.1MPaのガス圧を加えると、材料は部品全体に均一に伸びて薄くなります。そのため通常引張破壊の原因となるようなネッキングや局所的な板減が生じることはありません。超塑性成形(SPF)加工には、金属との化学反応が生じないアルゴンや窒素などの不活性ガスを使用します。 図1. 超塑性成形(SPF)加工の概略 SPFでは、金型、ブランク、成形用ガスがすべて均一な温度に維持された等温加工であることが理想です。加熱したブランクを高温の金型へ配置し、高温の加圧ガスをキャビティに吹き込みブランクを成形しますが、この際にスプリングバックや残留応力は発生しません。航空宇宙産業では25年以上前から、アルミニウムやチタンを使用した特殊製品の製造時に、超塑性成形を利用した加工を行っています。また鉄道関係やバスの部品の製造現場でも活用されています。しかしSPFはサイクルタイムが部品1個あたり30分程度かかるため、特に数秒で部品を製造する高速プレス加工が主流の自動車業界では、あまり採用は進んでいません。しかし自動車メーカーにおいても、たとえば小~中規模の複雑なパネルの場合、従来の成形手法では金型や材料に高いコストがかかる(つまり成形性が低い)ため、経済的な利点からSPFを用いた手法に高い関心が集まっています。 図2. アルミを使用したSPF加工の自動車部品(Verbom社提供) SPF加工モデルの作成方法 SPF加工の原理は比較的単純です。しかしそのモデルを作成するには、その基本要素を正確に考慮する必要があります。シート、金型、成形媒体間の熱伝達を明確に表現するだけでなく、複雑な材料挙動や温度やひずみ速度に依存した硬化のモデルが必須となります。また必要に応じて、温度に依存したr値も材料定義に含めます。 加工条件のモデル作成には、通常、以下2つのケースが想定されます。 ・圧力プロファイルが未知の場合: 加工時間を最適化するために、圧力-時間プロファイルを調整します。SPF加工全般の特性を決めるのは速度であり、加工速度を制御することで、ひずみ速度を超塑性域内に保持することができます。それにはまず、ひずみ速度と最大板減量の目標値を設定します。そして圧力-時間プロファイルの「推測値」から加工を開始し、ひずみ速度の目標値付近で加工を維持することで、最適化を行います。これには、自動化されたシミュレーションを利用できます。 ・圧力プロファイルが既知の場合: シミュレーションの対象となる圧力-時間プロファイルを直接定義します。 本稿では、板厚2.0mmのAA5083材を使用した航空宇宙向けリップスキン部品のシミュレーション結果を例に説明を進めます。図3はSPF加工の最後に成形したリップスキンの断面です。シートは上部緑の金型と下部赤のキャビティの間に固定され、上部からガス圧が加わります。成形工程中、シート、金型、ガスはすべて500℃の一定温度に設定されています。 図 3. 超塑性成形を用いて加工した航空宇宙向けリップスキン部品の断面 このソフトウェアでレート制御オプションを使用すると、ひずみ速度の目標値と最大板減の許容範囲に基づいてガス圧が調整され、本解析ではそれぞれ0.009秒-1と60%に設定されています。シミュレーションの結果は、成形済パネルの最大板減が58.2%(図4.a)、接触距離は0.058mm以下(図5.a)でした。接触距離とは、成形済パネルと金型の隙間のことで、接触距離が小さいほど、適用したガス圧が十分にキャビティに充満していることを示しています。最適化された加工は105秒で完了しました。 2回目のシミュレーションではアクティブなのオプションを使用し、300秒かけて面圧を0.0MPaから2.1MPaまで線形に上昇させました。シミュレーションの結果、パネルの最大板厚は67.3%(図4.b)、接触距離が0.069mm未満(図5.b)でした。両シミュレーションとも、最終部品の品質はほぼ同様です。しかし1のシミュレーションでは、工程に要する時間を1/3まで最適化できました。シミュレーション結果の圧力-時間曲線はエクスポートできるため、実際の製造現場の機械を設定する際に活用することができます。 図4.a. 速度制御および板減のプロット 図4.b. 有効面圧および板減のプロット 図5.a. 速度制御および接触距離のプロット 図5.b. 有効面圧および接触距離のプロット AutoFormのソフトウェアを活用すれば、超塑性成形を用いた加工を非常に簡単にシミュレーションできます。正しい材料カードと加工条件を用いることで、シミュレーション結果を素早く評価することが可能になります。また面圧、ひずみ速度、材料の板厚、金型形状などの工程パラメータを変更することで、シミュレーションを簡単に最適化することができます。 - [新世代の材料を活用したプロセス・エンジニアリング: ホットスタンプ分野で取り組むべき課題 第1部](https://japanforming.com/ホットスタンプ分野で取組むべき課題-1/) - この10年ほどの間に、ホットスタンプ分野にて新世代の材料等級の導入が進んでいます。最近までは材料等級22MnB5が標準的に使用されてきましたが、新たな合金を活用することで、ホワイトボディ部品の設計における自由度がより高まっています。たとえば、Usibor® 2000、MBW®1900、Docol® 2000 PHS、phs-Ultraform® 1800、BR1800HSは非常に高強度(引張強度は1800MPa以上)であるため、特に耐侵入性を目的とした用途に適しています。またDuctibor®1000、Ductibor®500、MBW®1200、BR1200HSなどは引張強度が1500MPa以下と低いため、その延性や柔軟性を変形形状の制御や衝突エネルギーの吸収に利用できます。このような材料の多様化が、自動車メーカーの軽量化および衝突安全性の向上を支えています。 直近の3年間、特にテーラー溶接ブランクやパッチワーク・ブランクといったホワイトボディ向け材料に高い注目が集まっています。しかしこれらの合金に対応する相変態に関する情報が不足しているため、プロセスエンジニアはこのような薄鋼板の挙動をモデル化することに多くの労力を費やしています。 新世代材料の相違点とは? 新世代の材料と標準的な22MnB5では合金要素の割合が異なるため、臨界冷却速度、相変態、最終的な硬さも異なります。このため新世代材料のモデルを作成する際には、連続冷却変態(CCT)図を使用します。これは薄板部品の冷却速度ごとに異なる相変態を図表化したものです。CCT図の情報は材料カードの「心臓部」にあたり、工程条件に応じた最終製品の特性を計算する上で不可欠なものです。 この信頼性の高いシミュレーション技術が新たに確立されたことで、新世代合金を使用した直接・間接のホットスタンプおよび相変態のプロセスを、最適な条件で設計、開発、生産することが可能になりました。シミュレーションでわれ、過度の板減、しわなど、生産中に生じうる不具合をより正確に予測したり、最終部品の金属相の数や硬さを計算したりすることができます。またベイナイト、フェライト、マルテンサイトの混合物を作成するテーラード・テンパリングのさまざまな手法をモデル化し、部品のソフトゾーンを生成することも可能です。 この新しい技術の大枠をご理解いただくために、新世代合金のホットスタンプと相変態のシミュレーションを以下に示します。材料カードにはさまざまな温度とひずみ速度の機械的記述が含まれ、CCT図にはさまざまな冷却速度での材料の相変態の情報が含まれています。直接・間接のホットスタンプ工程シミュレーションで使用する材料カードに含むことができるCCT図の例を図1に示します。部品を異なる速度で冷却すると、どのような相変態(F: フェライト、P: パーライト、B: ベイナイト、M: マルテンサイト)が起こるかを、この図から容易に識別できます(縦線)。 図1-ホットスタンプ向け合金の試験片のCCT図 以下の事例はパッチワーク・ブランクに基づくものです。ホットスタンプのシミュレーションに使用したパッチの材料板厚は1.00mmで、最終的に22MnB5よりも強度が低くなります。金型温度は80℃、初期温度はパッチワーク・ブランクが完全にオーステナイト化する930℃です。ブランクとパッチの寸法を図2に示します。 図2 - パッチワーク・ブランクの寸法 ホットスタンプで成形する部品の最終組織が完全にマルテンサイト化するように、搬送からクロージャ、クエンチング、引抜きまでのサイクル時間を19秒に設定しました。 ホットスタンプ工程では、新世代合金のCCT図から正確な相変態の情報が提供され、その後、入力条件から部品にわれやしわが発生するリスクは示されませんでした。成形後の部品強度は成形前の材料に比べて大幅に高まり、基材が約1470MPa、パッチが約1050MPaの引張強さとなりました。 図3のシミュレーション結果から、部品の全領域で100%のマルテンサイト変態が達成されたことがわかります。しかし右図のとおり、メインブランクとパッチの硬さは値が異なります(基板とパッチはそれぞれ約480HVと350HV)。この偏差は材質の違いによるものです。 図3 – (左) マルテンサイトの含有、(右) 硬 「バックグラウンド」で実行される計算は非常に複雑ですが、材料カードを使用することは非常に簡単です。ワークフローは何も変わることはなく、ただ材料カードを選択し、シミュレーションを実行し、その結果を評価するのみです。 新世代合金の相変態のシミュレーションにCCT図を用いれば、部品や工程のフィージビリティ検討、プレス成形工程および製造工程のパラメーター最適化、最終検証の信頼性が高まります。そして新世代合金を使用したホットフォーム部品の相変態の影響をより深く理解し、機械特性をより適切に制御することが可能になります。また実際の板厚分布、硬さの分布、マルテンサイト、ベイナイト、オーステナイト、フェライト、パーライトといった金属相の分布や局所的な割合など、最終的な部品の特性も正確に計算することができます。 - [フォルシア・クリーンモビリティによる部品最適化の取り組み: 生産の安定化を図るための成功要因](https://japanforming.com/フォルシア・クリーンモビリティの部品最適化/) - フォルシア・クリーンモビリティでは、最適な部品設計と安定した生産を通じてコストを最適化し、同時にお客様のご要望にもお応えするために、高い専門性が求められる日常業務にシミュレーションを活用しています。同社のマルク・べレンコントル氏にお話を伺いました。 フォルシア・クリーンモビリティ(FCM)は、フォルシア・グループの4つの事業部門の1つで、排出ガスを限りなくゼロに近づける「ゼロエミッション」のソリューション開発と生産を専門とする自動車部品メーカーです。1975年にバヴァン(フランス、ドゥー県)に設立された研究開発センターでは、排気系装置の排出ガス制御、エネルギの回生、エンジンの改良、新たな音響設計などのソリューション開発に注力し、また2018年からは水素貯蔵システムの開発にも取り組んでいます。 本稿を執筆している私自身は、アルセロール・ミタル社にて数年間の就業後、FCMに入社して10年になります。プレス成形技術者として部品設計部門と緊密に連携し、お客様が必要とする機能の実装だけでなく、コスト削減やリードタイム短縮も重視し、量産にも適した製品の開発に携わっています。 排気系部品はすべてを特定の(限られた)スペースに収納しなければならないため、自動車部品開発の中でも特に高い専門性が求められます。排ガス規制の厳格化に伴い、多くの部品が追加されてゆく中、このスペースの制約を考慮しながら最適なソリューションを開発することが課題となっています。またコンポーネントをどのように分割するかも重要です。これはたとえば、ハイドロフォーミングやプレス成形といった製造手法の選択にも関わってきます。これらは部品設計者が検討すべき事項ですが、できるだけ早い段階で正しい選択をする必要があります。 排気系部品はすべてを特定の(限られた)スペースに収納しなければならないため、自動車部品開発の中でも特に高い専門性が求められます。排ガス規制の厳格化に伴い、多くの部品が追加されてゆく中、このスペースの制約を考慮しながら最適なソリューションを開発することが課題となっています。またコンポーネントをどのように分割するかも重要です。これはたとえば、ハイドロフォーミングやプレス成形といった製造手法の選択にも関わってきます。これらは部品設計者が検討すべき事項ですが、できるだけ早い段階で正しい選択をする必要があります。 この初期段階の設計を評価する際には、AutoFormを効果的に活用することで、作業を迅速化することが可能になります。部品設計にはCADを使用しますが、設計した部品のフィージビリティはAutoFormで検討することで、信頼できるフィードバックを素早く得ることができます。部品ごとに、アンダーカット、半径、曲率などを確認しなければならず、また、排気の観点から最適なパラメータを特定しても、それが製造には適していない場合もあるため、多くの場合、双方の妥協点を見出さなければなりません。 私自身はCAD担当部署をサポートし、製造工程に関する基礎知識を共有することで、部品に必要とされる機能の実装と、安定した製造の両立を目指しています。つまり良好な部品をできるだけ速やかに生産することを目標としています。 この段階では、チューブ成形とプレス成形の両方にAutoFormをよく活用しています。これは、工程の不具合を特定し、設計をわずかに変更するだけで不具合を回避できるかを簡単に検討できる、非常に優れたツールです。このツールを有効活用すれば、部品を極めて迅速に評価し、不具合の対応策を部品設計者に説明することができます。私はAutoFormを使い、不具合を解消するためにどう部品設計を変更すべきかを即座に検討し、またその変更がフィージビリティにどう影響するかをシミュレーションしています。設計が決定していない段階での検討会議では、AutoFormが活発なコミュニケーションを生み出すツールとなります。私自身としては、意見を伝える際に絵を描いて説明する必要がなくなったことが、特に便利に感じています。AutoFormを使えば、5分足らずで部品を直接修正し、部品設計者にCADファイルで変更すべき点を指摘できるからです(図1)。 図1: 速やかに部品を修正し、CADで部品をどのように修正すべきかを提示できます AutoFormで修正したサーフェスのデータは、そのまま他の関連部署でも活用することができるため、作業の効率化が図れます。AutoFormで修正したサーフェスを.iges形式でエクスポートすれば、それを下流工程で流体解析や熱機械解析に直接適用することができます。下流工程では、CADサーフェスが仕上がるまで待機する必要がなくなるのです。 また、AutoFormを有効活用することで、部品設計者が自信をもって設計を検討し、高品質で安定したワークフローを定義できるようになるだけでなく、社内で知識を深めることにも役立ちます。部品設計者には、AutoFormを使って自分自身で部品を確認し、次の作業に進む上でアドバイスが必要な場合には、私に相談するように伝えています。特に言葉の壁がある異国の同僚とコミュニケーションをとる際には、言葉よりも絵を描いて不具合を説明する方が簡単に通じることも多くあるので、私は特にインドの同僚とやりとりする際に、AutoFormをよく活用しています。 図2: 最初から適正な結果を得る AutoFormのソリューションを活用することで、目指すべき目標を社内で共有し、それに応じて計画を作成することができます。さまざまな部品に必要な材料の消費量や工程計画全体を把握しながら、自信を持ってお客様のご要望にお応えすることができます。弊社の営業部門でも、お客様とのコミュニケーションを促進するツールとして、シミュレーションを活用することを前向きに検討しています。シミュレーションを通じてより詳しく説明し、必要に応じて妥協点を見出すことができます。開発期間の短縮が求められる中、最初から適正な結果を得ることは益々重要になってきています。その観点からもAutoFormはもはや事業成功に欠かせないツールとなっています。 フォルシア社について 1997年に創立されたフォルシア社は、世界の自動車産業を牽引する大手企業へと成長を遂げました。35カ国に266の産業拠点、39の研究開発センター、114,000人の従業員を擁するフォルシア社は、シート、インテリア、クラリオンエレクトロニクス、クリーンモビリティという4つの事業部門にて、グローバルリーダーとして活躍しています。グループの強力な技術提供により、自動車メーカーに未来のコックピットと持続可能なモビリティのソリューションを提供しています。2020年の報告書によると、グループの総売上高は147億ユーロにのぼります。フォルシア社はユーロネクスト・パリ証券取引所に上場しており、CAC Next 20インデックスの構成銘柄となっています。詳細についてはwww.faurecia.comをご確認ください。 - [車両衝突シミュレーションのための部品データの活用](https://japanforming.com/車両衝突シミュレーションの部品データ活用/) - オートフォーム社による革新的な精度向上の取り組み はじめに 自動車業界において、自動車の衝突安全性を評価する際には、一般的に、衝突シミュレーションのソフトウェアが活用されています。これは自動車開発工程の中でも特に重要な試験であり、衝突時の車両強度や乗員の安全性についての貴重な情報を得ることができます。 特に自動車産業の三大国(米国、欧州、日本)では、新型車の開発プロジェクトには厳しい衝突安全性の要件が課されています。そのため衝突シミュレーションは、自動車の研究開発部門の中でも、非常にニッチな分野でありながらも、その技術開発が活発に進んでいます。本稿では、現在の車両衝突シミュレーション技術と、実部品データを使ってシミュレーション結果の精度をさらに向上させる手法についてご紹介します。 図1:車両生産技術の検討段階でシミュレーションされる衝突事故。乗員が負傷しないよう、ドアアセンブリの構成部品である「ドアインパクトビーム」が保護的役割を果たします。 衝突シミュレーションの発展 従来は、車両を物理的に衝突させてデータを収集し、設計に変更を加えることで改善を図っていましたが、この検討業務にはコストや時間の負担が大きくかかります。 レンガの壁面や車両などに対する衝突のメカニズムを解明するには、前面衝突や斜め衝突、また小さな面積を衝突させるスモールオーバーラップ衝突などの重要な試験を物理的に実行しなければなりませんでした。そして設計修正を行うと、再度試験を実施して、検証を繰り返さなければなりません。 しかし衝突シミュレーションの普及が進み、物理的な破壊試験を補完するようになると、衝突試験を、より簡単に、より安価で、より素早く実施することが可能になってきました。やがて実際の衝突試験よりも、衝突シミュレーションから有益なデータが得られることが多くなり、今では大手OEMではいずれも、バーチャルな衝突シミュレーションが実際の衝突試験を圧倒しています。そこで衝突シミュレーションの最新状況と今後見込まれる改善点についてご説明します。 図2:衝突の際に客室が変形せず、乗員に危険が及ばないことが理想的です 現状(as-is)のワークフロー分析 市場にはシミュレーション・ソフトウェアの選択肢が多くあります。中でも2本の衝突シミュレーションが多くのOEMにて採用されていますが、その双方とも、部品ファイルがなければシミュレーションを行うことができません。 多くの企業では、CATIAやSiemens NXなどのCADソフトウェアで作成した部品ファイルを使用しています。この部品データは、材料タイプや板厚の情報を含みますが、部品の加工によって生じるひずみ値や板減などの関連データは含まれません。完全な情報を持たないCAD形状のみを使用したシミュレーション結果は、常に完璧な精度で再現されているとは言えません。 塑性加工によって生産されるあらゆる部品は、加工の過程で板厚、硬さ、剛性、ひずみなどが変化し続けることを経験上ご存じであると思います。フランジの曲げ加工ように単純な工程では、このような変化を容易に追従できるかもしれません。しかし、ドロー、熱間プレス成形、ハイドロフォーミングなどを伴う複雑な工程や複数工程を扱う場合、材料特性は大幅に変化することが想定されます。つまり現在衝突シミュレーションで使用されている材料情報は、実際の部品を正確に再現できているとは言い難い状況にあります。 このような理由で、プレス部品の衝突シミュレーションで使用する部品データは、その精度をもっと高めることができるはずです。たとえば加工硬化や板減の情報を利用して部品の特性を補正すれば、結果精度は高まります。しかしどこまで精度を高めることができるかは、誰にもわかりません。 図3:ハイドロフォーミング工程後の不均一なひずみ分布。衝突シミュレーションでは、材料特性の分布が均一なCADデータではなく、実部品の情報を設定する必要があります。プレス成形シミュレーションの結果データは、一般に普及している衝突シミュレーション・ソフトウェアにシームレスに設定できます。 あるべき姿(to-be)のワークフロー OEMでは部品の開発段階にて、さまざまなシミュレーションを実施しています。プレス成形シミュレーションは、プレス成形工程の実現性を予測するためのものです。 この成形シミュレーションでは、有限要素解析(FEA)を用いて、トライアウトや量産開始に向けた金型製作において、不良がない部品を生産できることを保証します。シミュレーションを実行することで、板減、しわ、クラック、スプリングバックなど、最終部品に発生しうる不具合を特定することができるのです。 AutoFormソフトウェアで算出したプレス成形シミュレーションの結果を、衝突シミュレーションの入力条件として活用すれば、部品の構造および特性を正確に表現することが可能になります。つまり衝突シミュレーションにて、一定の板厚が設定されたCAD形状を設定するよりも、現実的な結果を得ることができるのです。 あるべき姿(To-be)のワークフロー適用例 自動車のAピラー部品を例に考察を進めます。現状(as-is)のワークフローでは、衝突シミュレーションには、設計上の均一な材料特性や板厚を設定しますが、この数値は現実的なものではありません。 あるべき姿(to-be)のワークフローでは、まずAutoFormでインクリメンタル・シミュレーションを行い、Aピラーが熱間プレス成形部品であることを踏まえた上で、正確な硬さを算出します。またプレス成形工程では、材料が複数個所で伸びることを考慮し、均一ではない板厚分布と塑性ひずみを算出します。このように算出した部品情報を活用して、衝突シミュレーションを実行すれば、当然ながら、現在(as-is)のワークフローよりも正確な結果を取得できます。 ワークフローの導入状況 興味深いことに、一部のOEMや(OEMから委託を受けている)Tire1サプライヤは、現在のワークフローには改善の余地があることに気づいています。2020~21年には、複数のお客様からご相談もいただいています。 部品設計の観点から、部品の領域ごとの強度差についてご質問をいただくことがあります。たとえば、ある領域では400MPa級の強度を持たせることができるのに、他の領域では200MPa級の強度しか実現できない理由について、お問い合わせをいただいたことがあります。その回答としては、製造工程では、部品形状全体を通じて変形が生じる割合がそれぞれ異なるため、強度に差異が生じます。そのため、プレス成形工程を終えた部品では、材料特性が不均一になってしまうとご説明しました。 特に工程が複数にまたがり、最終的な材料特性を素早く予測することが難しい場合、このあるべき姿(to-be)のワークフローには、多くの可能性を見出すことができます。 OEMやTire1サプライヤによっては、すでにこのあるべき姿(To-be)のワークフローを導入し、より高精度なシミュレーションを活用しています。とはいえ、まだ広く普及しているとは言い難い状況です。そこでオートフォーム社では、当該業界におけるワークフローの認知度向上に積極的に取り組んでいます。 現状への改善策の適用 CATIAやNXなどのCADソフトウェアで作成した部品ファイルをAutoFormに設定し、フォームチェックのみのシミュレーションを使うか、あるいは完全な増分シミュレーションを実行することで、AutoFormで工程を構築することができます。その結果は一般的な衝突シミュレーションのソフトウェアと互換性のあるフォーマットで出力できるため、データの移行もシームレスに行えます。 そして衝突シミュレーションを担当するエンジニアは、成形の履歴を含む部品データを使用して、実際の衝突に相当するシミュレーションを実行することが可能になります。入力条件の情報が正確であれば、衝突シミュレーションにて、より実物に即した応答を得ることができます。ワークフローをわずかに変更するだけで、そのまま現行の工程に組み込むことができるのです。 AutoFormを活用することには、他にも利点があります。衝突シミュレーションの担当エンジニアは、通常、材料特性を把握せず、シミュレーションでは一般的な材料特性のテーブルを利用します。そのため、実際の材料特性の代わりに、材料特性テーブルの平均値に依存したシミュレーションを実行することになります。 しかしAutoFormでは、冷間プレス成形、熱間プレス成形、ハイドロフォーミングなどのフォーム工程の終了時に材料特性を追跡し、正確な材料特性を取得できるため、より正確な材料特性を適用することが可能になります。 まとめ 衝突シミュレーション・ソフトウェアに対する依存度が飛躍的に高まり、その技術革新が進むにつれて、OEMだけでなく消費者にもさらなる恩恵をもたらします。本稿で紹介したワークフローを活用すれば、より信頼できる高精度な衝突シミュレーションの工程を構築することが可能になります。物理的な衝突試験が減る傾向にある中、安定したシミュレーションを実行するために、そのロバスト性や信頼性をより高めてゆくことが必須となります。 - [安定したプレス生産に向けて: プレス成形分野における機械特性の役割 – 第1部](https://japanforming.com/プレス成形分野における機械特性の役割/) - 概要 品質とは、一般的に生産工程の最終結果である製品の特性を意味します。しかし現代の生産システムにおける品質の概念には、より広範な視点から、最終製品の品質のみならず、最大限の生産性や生産コストの削減といった要因が加味されます。プレス部品の製造においては、これらの要因が相互に影響を及ぼしあっていることは明らかです。生産工程が不安定であると、プレス生産の中断が頻発するだけでなく、生産効率の低下(部品/プレスハブ)、不良品やパネル廃棄の増加なども招きかねません。またプレス機を稼働できない状態が長引くと、生産コストも膨らみます。そのためプレス成形工程の安定化、つまり工程のロバスト性を高めることが絶対的に必要です。それにはまず、製造工程の結果(最終製品)に最も影響を及ぼす要因を、製品開発の初期段階から把握しておくことが極めて重要となるのです。 高強度材の活用が進むにつれ、その高額な金型作成費や維持費など、従来の低・中強度材とは異なる新たな問題が生じています。また高強度材は従来の材料よりも成形が難しいため、製造工程全体を通じて生産のロバスト性を高め、安定化を図ることが、工程全体の品質を担保する上で最も重要になります。 現在、プレス部品の製造計画においてどの材料を使用するかという選択が、その部品をどのように製造するか、またどのくらいの製造コストがかかるかに対してこれまでになく非常に強い因果関係を持つようになっています。たとえばその部品を生産するための工程数、金型のデザインや製作方法、サブアセンブリを組み立てる際の接合方法など、使用する材料のタイプが製造上のあらゆる条件とリンクします。 プレス成形工程における材料の特性評価の重要性 シートの特性は、通常、成形時の挙動のみに関連付けられますが、その影響ははるか広範囲に及びます。(図1) 開発の初期段階では、主に最終製品の靭性と強度の検討時にシートの特性を考慮しますが、同様に、部品設計の形状制限を検討する際にも考慮します。前者では加工後の特性評価、後者では活用する材料の成形性の限界評価に使用します。 方案検討は、製造工程における工程の流れを定義するものです。ここでは、製品の形状(ジオメトリ)と材料(特性)に対応する、金型と機械の特性を成立させます。この段階では、製品をどの工程で製造するべきかを決定します。さまざまな成形ステージの基準サーフェスを作成し、すべての工程で時間と動作を見積もりますが、これは安定した製造工程を構築する上で極めて重要です。工法計画に不具合が生じた場合には、変更や修正を加えなければなりませんが、多くの場合、想定外の支出、原材料や金型コストの増加、プレスの停止など、望ましくない結果を招きかねません。 図1:プレス部品の開発段階における、シート材の機械特性のさまざまな機能 [1]から引用 シミュレーションで材料の成形性を正しく評価できれば、特にヘミング、穴の拡大、スプリングバック、面ひずみといった重大な領域におけるシミュレーション結果の信頼性を高めることができます。(図2) 適用する不具合判定基準は、シミュレーションする工程モデルのタイプや、選択する成形性評価ツールに応じて異なります。 図2:プレス部品の成形性をシミュレーションする上で極めて重要な要因。材料の特性評価を適正に行うことで、その重要性がさらに高まります。 金型製作と組立からトライアウトの段階へ移行すると、材料特性が再び活用されます。材料特性のばらつきを理解しコントロールすることで、トライアウトで測定や調整を正しく行うことができ、その結果製造現場へ問題なく金型を納入することが可能になります。 そして最後に製造現場では、材料特性は工場品質システムの制御・監視計画に組み込まれ、製造上の不具合の原因究明や解消するための重要な要素となります。 プレス成形材の特性評価の手法 シートの成形性を評価する手法については、過去50年にわたり、さまざまな方法論が考案され、一軸および多軸のひずみ状態における弾塑性特性や不具合の状態を判定することが可能になりました。一般的には従来の引張試験が普及していますが、制御された状態で特定の応力/ひずみ状態を再現するには、引張試験以外の手法を用いる場合もあります。どの手法であれ、その唯一の目的は、成形中に生じる様々な応力-ひずみ条件下にて、塑性変形が開始する瞬間とその後のフローカーブの変化を正確に再現する数学モデルを作成することです。 材料の特性評価に使用するモデルは、数値シミュレーション技術の進化に伴い大きく発展してきました。シミュレーションの設定段階では材料モデルを使用しますが、これはシミュレーション結果の信頼性を高める上で不可欠なものです。さらに、図3に示すように、シミュレーション結果の評価段階においても、部品のさまざまな領域で不具合を判定するために材料モデルを使用します。 図3:材料モデルを使用したプレス成形の適合性評価 [1]から引用 シートの成形性限界の特性評価 成形性限界の特性評価は、プレス成形工程の数値シミュレーションの中でも特に重視される項目ですが、前述のように、実際のプレス成形工程における安全性と円滑な生産を担保する上でも極めて重要な役割を担います。成形限界図(FLD)は、面内変形空間におけるネッキングの発生に基づく成形限界を表しています。(図4) 図4:ひずみ平面と限界曲線。FLDは、プレス部品の適合性評価において、シミュレーションと最終部品の品質評価の両方に活用できます。出典: [1] 図の右側の領域は、シートが面内の両方向に引張を受けている状況を表しています(φ1およびφ2が正)。左側の領域は、変形の一方が圧縮(φ1が正、φ2が負)を受けています。FLDは、部品の異なる領域が材料の成形性限界(図4の赤帯部分)に対してどの程度離れているかを可視化することができるため、プレス成形工程の開発に非常に有用です。FLCを決定する技術は標準化されています。 ISO12004-1 [2]. ISO12004-2 [3]. FLDは線形変形経路のみを考慮したものであることにご留意ください。非線形変形経路の場合、限界曲線が大幅に異なる場合があります。 ISO12004のほかにも、FLD変形平面の配置を再現する実用試験には、さまざまなものがあり、シートの成形性限界の特性評価に使用することができます。代表的な試験を以下に列挙します。 標準的な引張試験 横方向を拘束した引張試験 引張圧縮試験 積層圧縮試験 せん断試験 Yoshidaクーポンを使用した引張試験 Nakajima試験(ISO12004) Marciniak試験(ISO12004) クロス形状のクーポンを使用した引張試験 曲げ試験 以降の章では、上記の試験について紹介します。また、それぞれの試験から確認できるシートの成形性の詳細についても説明します。 標準的な引張試験 ISO 6892-1 [4]に準じた標準的な引張試験による機械特性の測定は、簡単に実施できる上に安価でもあるため、シート成形性を特性評価する際によく利用されます。この特性は、シミュレーション、部品設計、製造に使用するシートの品質評価の基盤として活用されます。 一般的に、引張試験で得られる特性は以下の通りです。(図5a) 降伏応力σe0,2 極限強さ(引張強度) Rm 破断点の強度 σBr 均一伸び ネッキング伸び 破断点の伸び 硬化指数 異方性 - [北京のBYD Die and Mould社Hu Chungang氏が、ホイール・ハウス・インナーのトライアウトにてデジタル・スポッティングを有効活用](https://japanforming.com/ホイール・ハウス・インナのトライアウト/) - BYDグループのBYD Die and Mould社は、北京にあるプレス金型のインターナル・コンピテンス・センターです。BYD Motors社や外部OEMを顧客に有し、高品質な金型を製作しています。工程設計業務ではAutoFormシミュレーション・ソフトウェアを活用して、バーチャルに不具合を予測し対策を検討することで、実際の生産現場で発生しうる不具合を抑制しています。 ダイ・スポッティングは、プレス金型の製造・検証の中でも特に重要で長時間を要する工程です。工程検討を行うエンジニアと金型製作技術者は、調整が必要な金型サーフェスに対して初期の寸法と公差を定義します。スポッティングの目的は部品を生産することではなく、成形中や下死点における接触面を確認することであるため、一般的にダイ・スポッティングの作業中に適用される荷重は量産プレス機よりも大幅に低いものとなります。そのため、図2に示すようにバインダを閉じた後のスポッティングの状態には全く問題がなかったにもかかわらず、金型の試作工場でホイール・ハウス・インナーのバインダ領域に、はっきりと波打ちやしわが確認された際には非常に驚きました。(図1)まずはブランクホルダに高い荷重をかけてみましたが、しわは解消されません。このホイール・ハウスの不具合を解消するまでのBYD Die and Mould社Hu Chungang氏とオートフォームチャイナ社Gao Jiangtao氏の取り組みについて、本稿でご紹介します。 図1. 下死点でのバインダの状態 図2. スポッティングの状態 シミュレーションの初期段階では、成形工程でしわやサーフェス欠損高さ、目視での確認を行い、問題は検出されませんでした。図3~5が示す通り、成形工程のシミュレーション結果では、しわの値は基本的に0、サーフェス欠損高さは0.1以下、赤で囲まれたしわのリスクがある領域は現実と一致せず、目立つ波打ちもありません。この結果から、トライアウトでも同様にしわは生じないと判断しました。 図3. しわの結果 図4. サーフェス欠陥高さの結果 図5. 目視確認 図6の減板結果にはバインダ領域のあるラインを境に分布が二分されています。ラインの内側と外側で板減は異なっており、これはドロービードを材料が通過した部分で板減が進んでいることを示します。この部分はパネルにしわが発生している領域とも一致します。最小主応力は不均一な材料の流入を示し、この領域に大きな負の応力があることを示しています(図7)。強い板減によってパネルと金型サーフェスの間に隙間が生じ、その結果、負の応力と相まってしわ発生の原因となっています。 図6. 板減の結果 図7. 最小主応力の結果 しわが生じると判定された領域の断面(図8)を確認すると、板減したパネルと金型サーフェスとの間に波のような形状が確認できます(矢印はパネル上面・下面と金型の隙間を示しています)。しかし波の高さは低いため、面ひずみと判断されることはほとんどありません。 図8. しわが生じた領域の断面 この面ひずみの挙動は初回トライアウトの結果と一致しなかったため、担当者はまずAutoFormシミュレーションの精度を疑いました(初回トライアウトの最初の状態では通常一致しない)。重要なこととして、AutoFormシミュレーション設定では、量産時のような、スポッティングが良好である状態が想定されており、もちろん初回トライアウトにおいて、このような条件を望むことはできません。シミュレーションによる検討を完了したら、次にシミュレーションと量産の条件を一致させることで、はじめて良好な結果を得ることができるのです。 トライアウトの目的は金型の状態をシミュレーションと一致させることであるため、AutoFormシミュレーション結果の接触距離を確認し、ダイ・スポッティングの接触状態を調整しました。通常は金型の検収時にスポッティングの状態が良好でなければならないため、この接触距離については、特に工程技術者からトライアウト担当者へ報告が行われます。 接触距離は、部品の上面・下面と金型サーフェスとの距離を表します。下死点付近または下死点において、接触距離が明らかに周囲と異なる領域がある場合、スポッティングを調整するか、あるいはドロービードの高さを変更して板厚分布を均一にするなどの対策が必要になることを意味します。そこでHu氏とGao氏は、スポッティング領域を接触距離のカラーコンターに従って決定しました。図9に示すように、波の高さ自体はそれほど大きくありませんが、起伏が多いために波が目立ちます。 図9. 接触距離の結果 製造現場のトライアウト工程で波打ちを解消するために、まず板減分布をもとにバインダ領域の再加工を行い、次にドロービードを緩和し、板減を抑制しました。シミュレーションをもとに現場で調整を行った結果(図10)から、不具合が解消されたことがわかります。 図10.(左) ドロービード緩和後の接触距離 (右) ドロービード緩和後のパネルの状態 この事例からBYD Die and Mould社では、これまで使用していた面ひずみのパラメータは、トライアウト時にバインダ下で発生する面ひずみ(波打ち)の状態を表現できるものではないことを明らかにしました。その代わりに、接触距離のマップを活用したダイ・スポッティングを行うことで、量産時の面ひずみを抑制でき、高品質な部品生産が可能になると判断しました。AutoFormのシミュレーションは常に実際の生産条件を再現するものであり、またトライアウトは実際の金型の状態をシミュレーションの条件と一致させるために微調整を行うことが最大の目的となります。BYD Die and Mould社はダイ・スポッティング工程の標準作業として、接触距離のマップを確認することを将来的に追加する予定です。 - [北京ベンツ汽車: トランクリッド・インナーパネルの成形最適化](https://japanforming.com/トランクリッド・インナーパネル成形最適化/) - トランクリッド・インナーパネルの製造工程は、温度や材料特性の変動に非常に敏感であるため、生産中にしわやわれが多発します。北京ベンツ汽車ではこの不具合を解消するために、CAE解析を用いて生産能力を分析的に検討し、工程パラメータ、金型形状、設備設定、材料特性の最適化を行いました。 トランクリッド・インナーは、標準的なボディ・インナーのパネルです。この部品の表面形状は複雑で、全体寸法が大きく、突起や溝が多いため、プレス成形時にわれやしわが生じやすくなっています。この車種のトランクリッド・インナーパネルを生産する際には、図1に示すように、しわとわれが交互に発生することが多くあります。 クッション圧や潤滑などの工程パラメータは、バッチごとに調整が必要です。これは生産効率に影響を及ぼすだけでなく、補修や廃棄も多く生じるため、このような不具合は特に解消が急がれます。 図1. 部品の不具合(しわ、スリップライン、われ) 1.基本情報 1.1 工程計画 以下の通り計画された5つの工程で部品のプレス成形を行います。 OP10 ドロー; OP20 トリム/CAMトリム/ピアス; OP30 トリム/CAMピアス/ピアス; OP40 リストライク; OP50 CAMピアス/ピアス。OP10のドロー形状を図2に示します。 図2. ドロー形状 1.2 シートの形状および特性 図3に示すように、ブランクは円弧のような形状をしています。シートの情報および特性は、それぞれ表1および表2をご確認ください。 図 3. シート形状 表1. シート情報 表2. シート特性 2. 不具合解析 2.1 低い安全マージン この部品のCAE解析結果から、板減25.9%(図4)、マックス・フェイラーは0.9(図5)であることが判明しました。その結果、われの危険性が高く、設計段階での安全マージンが不十分であることがわかりました。 図4. 板減 図 5. マックス・フェイラー 生産検証では、図6に示すように、材料が滑ってしわになるところから部品われに至るまで、材料流入の幅が12mmあることが確認されました。 図 6. スリップラインの金型マージンは約12mm 2.2 温度に敏感な金型 生産初期は金型温度が低いため、スリップラインが大きくなります。生産中盤から後半にかけては、シート材と金型の摩擦によって金型の温度は上昇し続けます。熱膨張と冷収縮の原理によって上型とブランクホルダのギャップが小さくなると、材料の流入の抵抗が大きくなり、部品がわれやすくなります。生産開始から約950個生産するまでに、図7に示すように、スリップラインの位置が約9mm変化しています。 図7. 生産開始から950個の生産時までスリップラインが9㎜変化 2.3 材料特性の変動に敏感な金型 この金型は材料特性の変動に敏感です。図8に示すとおり、生産工程で材料コイルを交換すると、スリップラインの位置も6mm程度変化します。 図 8. - [AutoFormの最新機能と効果的な活用方法](https://japanforming.com/autoformの最新機能と効果的な活用方法/) - はじめに AutoFormでは自動車の開発から製造業務におけるデジタル化を多くの顧客と進めてきており、図1に示すように、プレス部品の設計製造からホワイトボディの組付け設計製造の検討までを可能とするAutoFormのデジタル・ソリューションでシームレスなデジタル化の導入をサポートしています。 本稿では、AutoFormのデジタル・ソリューションの一部であるプレス分野における初期段階の成形検討、スプリングバックの型見込みおよびダイ・スポットのデジタル検討、さらに量産時に散発する不具合のデジタル上での予測手法についてご紹介いたします。 図1.AutoFormのデジタル・ソリューション プレス部品の設計初期段階におけるダイフェース検討 プレス部品設計時の初期検討には一般的にプレス成形シミュレーションが活用されるが、成形に必要な金型形状などはCADで作成されることが多いため、何度も形状変更が行われ金型形状の修正も必要となる部品設計初期では、CADでの工数が増大します。 AutoFormではこれらの問題に対応するためAutoForm-StampingAdvisorとAutoForm-DieDesignerの利用を提案しています。AutoForm内で金型加工面(ダイフェース)を作成し、成形性および適切なブランク形状について、繰り返し検討をクイック解析で効率的に行うことができます。 図2にクイック解析を用いたイメージを示します。一般的なAutoFormの増分計算を実施したこれまでの方法を用いた場合と、AutoForm-StampingAdvisorとAutoForm-DieDesignerを組合せたクイック解析による最適化手法を適用した場合の成形性においてほぼ同じ傾向を確認することができます。そして、これまでの検討初期から増分計算を実施した方法に比べて、クイック解析を使った最適手法の適用は、約25%のリードタイムの削減と、より不良がない加工条件の検討がしっかり行えることになります。 図2.クイック解析を用いた検討手法 効果的な見込み検討とデジタル・ダイ・スポッティング 成形性が確保された上で、次は形状寸法の検討になる。これはプレス加工後に発生するスプリングバックを見越して、スプリングバック後に製品寸法が公差内に入るように金型に見込みを行います。AutoFormではAutoForm-Compensatorによって解析で得られたスプリングバック前後のパネルの変化量に基づき、金型形状を変更することができます。見込み後にさらに金型とパネルの接触を均等にするために型合わせ(ダイ・スポット)を実施することもできます。 図3に高張力鋼板のリストライク型のダイ・スポットの効果を示した。図に示したようにダイ・スポット未実施の場合、金型がパネルに均一に当たっていない状態のスプリングバック量を確認することができます。一方、ダイ・スポットを実施した場合では金型がパネルに均一に当たっており、未実施の場合のスプリングバックとは異なる傾向になっていることが分かります。 図3.デジタル・ダイ・スポットの効果確認 量産不具合予測のための安定性検討 スプリングバックの見込みやダイ・スポットを実施した金型データで切削加工データを作成し、実際の金型作成が開始されるが、もう1つ金型作成前に必須の作業があります。決定したプレス工程と金型形状、加工条件を用いて実施に加工した場合、われ、しわ、寸法精度は、製造現場で材料バラツキがあっても問題のない良品を確保するために、デジタル上でAutoForm-Sigmaを利用して検討します。 図4に一例を示します。この例では実際の加工パネルでわれが発生したが、バラツキを考慮しない増分解析ではわれを予測できていなかった。AutoForm-Sigmaに加工バラツキを入力し、ロバスト性解析を実施してわれに対する工程能力を確認すると、実パネルで発生したわれを確認することができました。つまり事前にロバストを加味して製造現場での不良を発生させないことができることを示しています。さらに不具合に対する加工バラツキの寄与度を確認することができることも図4に示します。 図4.AutoForm-Sigmaによる工程能力と加工バラツキの寄与度 おわりに AutoFormを利用したプレス部品の設計製造の検討を一貫してシームレスな情報を用いて実施できることを示しました。さらにプレス部品の設計製造の検討のみならず、ホワイトボディ組付けの設計製造までAutoFormのデジタル・ソリューションによるデジタル化について顧客とともに効果の実証を開始している。自動車産業のおかれた厳しい状況において、解決しなければいけない課題は山積みです。デジタルで解決できる課題はたくさんあります。AutoFormは、これからも顧客と共に課題解決を行っていきます。 - [スマート・ファクトリのプロセスにおける「一貫性」の問題](https://japanforming.com/iotプロセスにおける「一貫性」の問題/) - スマート・エンジニアリング・モデルに「一貫性」が求められる理由 ISO9001-2015第5版に記載されている品質管理についての原則の中に、プレス成形プロセスに関するものがあります。ここには、プロセス同士の関係性や相互依存性に着目する前に、まずはプロセス全体を理解することの重要性が記載されています。そして一貫性のある品質改善戦略を組織全体が共有することで、製品の品質目標が達成できるとしています。これは理論的には高く評価されるべきコンセプトですが、実際のプレス成形プロセスへ適用するには以下のような課題があり、非常に難しい挑戦となります。 1)全体を把握するには組織が大きすぎる 2)業務が複雑で長期間にわたる(数か月~数年) 3)使用するシステムが多すぎる 4)予測される結果のリスク評価に基づく事前検討 またエンジニアリングの目標を長期にわたり一貫性をもって達成するには、関係組織の共通理解を徹底させる必要もあります。 図1. プレス&ボディ部門のデザインからアセンブリまでの エンジニアリング・プロセス全体 図1に示すエンジニアリングのプロセスを考えた場合、一貫性を担保するためには「明確な目標設定」と「システム化されたプロセス」の2点が成功に欠かせない要因であることがわかります。自動車業界でよく知られているQCDF(品質、コスト、納期、柔軟性)のインデックスを活用すれば、比較的容易に目標を設定することはできます。OEM間の市場競争やエンジニアリング業務の観点からは、品質目標が特に重要視されるため、生産工場の壁に「品質管理」「品質革新」といった標語が張り出されているのをよく目にするわけです。品質管理や工程開発に携わるプロセス・エンジニアには、エンジニアリング段階で品質目標の達成度を測るために、重要業績評価指標(KPI)が導入される場合もあります。 またプロセス・エンジニアは、エンジニアリングで検討したデータが量産品質にどのように影響するか、またシミュレーション結果が生産状態をどの程度正確に予測できるかについても関心があります。このため、シミュレーションの精度はプロセスの成熟度を表す指標とみなされています。精度に関する指標を設定することで、プロセス・エンジニアは製品の品質目標を達成するための精度条件を定義できるようになります。これは品質改善の知見を有するプロセス・エンジニアが、事前調整したチェックリストを活用しながら、エンジニアリング全体の妥当性検証をシニア・エンジニアと共に行います。チェックリストとして活用できるAutoForm正確度指標は、ISO 9001に記載されている一貫性のある品質改善戦略に沿ったもので、プロセスの最初から最後まで精度向上の検証をサポートします。 図 1 に戻ると、エンジニアリングの意図をサポートするソフトウェア・システムの開発においては、製品デザインの詳細度が鍵となることがわかります。まずはスタイリストが作成したフィーチャーラインとサーフェスの初期形状からエンジニアリング・モデルが作成され、それが適切な材料と機能要件を満たすパッケージのレイアウトラインとサーフェスへと発展してゆきます。次にプレス&ボディ部門のプロセス・エンジニアが、形状や材質を含むエンジニアリング・モデルを引き継ぎます。ここでは正確度指標に記載されているすべての条件が考慮されます。事前定義された精度条件を考慮しながら、工程条件を適用した生産計画や金型サーフェスのレイアウト検討を開始するのです。 図1のとおり、スタイリストが作成する形状、部品デザイナが適用する材料、プロセス・エンジニアが設計する工程が、エンジニアリング全体にわたり一貫性を維持するための基盤となります。プレス加工や機械加工の前段階である最終金型設計で品質目標を達成するには、工程設計で生産サポートを視野に入れた生産技術も考慮すべきです。これも正確度指標を通じて対応でき、また一貫性のある品質改善の一助ともなります。 金型がプレス工場へ納入されると、プロセス・エンジニアリングからの情報をもとに、プレス工場で高品質な生産を行います。ボディのアセンブリラインでは、スタイリストや部品デザイナが作成し、エンジニアリングが引き継いだスタイル・モデルが基準となり、生産の品質が担保されます。デジタルで検証されたエンジニアリング・モデルが正確度指標の条件を満たすことで生産の質が高まり、時間とコストの大幅削減にもつながります。デジタルのシステム・エンジニアリングは、生産現場のシステム・エンジニアリングと同様の基本原則を適用することが重要です。デジタルと現実両方のエンジニアリングを統合することで、一貫性を保つための必須条件を満たすことができます。 技術管理部門やICT部門からの懸案事項として、大規模な組織で一貫性を維持することの難しさが挙げられます。品質目標に関連する文書類は膨大な数にのぼり、またそれらには常に編集や変更が加えられているのです。組織内の部署間で確認を行い、一貫性を維持することが求められますが、果たしてそれは可能なのでしょうか。 図2 (a)が示すとおり、ECR(設計変更要求)/ECO(技術変更指示)のループにおいて、エンジニアリングに関する変更管理の一貫性に関する問題点を認識することが、一貫性の利便性を理解することにつながります。 (a)多部門でシミュレーションをベースに作成するECR、(b) 一貫性有無による成果比較 図2. シミュレーションに基づくシステム・エンジニアリングとECRループの一貫性 OEMでは製品開発の過程を共有または記録するプロセスとして、ECR/ECO管理システムを採用しています。これは変更を時系列に文書化する体系的なプロセスの一部です。シミュレーションをベースに作成するECRは主に簡潔なレポート形式で、相手方のエンジニアやマネージャと議論や微調整を行い、承認を得る目的で使用します。文書化が必要となる問題は流動的で、他の諸問題とも絡み合っているため、それを時系列で文書化するプロセスでは、意見や決定事項を収集・分析し、合意を得る必要があるため複雑になりがちです。 このような複雑さを踏まえると、諸問題に対応しながら高品質な生産を行うには、「合意」に関する一貫性をいかに包括的に維持するかが最も重要になります。ECR管理とシミュレーション結果の相関性が高まり、一貫性のある生産品質の向上を実現するには、シミュレーション結果の精度を担保しなければなりません。シミュレーションの標準(CAE標準)を確立することによって、エンジニアは間違いがない高精度なモデルを構築できるようになります。検証の過程において、シミュレーションの標準設定が精度に関して考慮できる条件の数が図2(b)の青い線で表現されています。組織全体で行われるすべての変更に対する一貫性を担保するためには、あらかじめ十分な条件が確保されている必要があります。 最後に、精度の一貫性を担保するには、図 2(b)の左図のようなOEMを筆頭とする階層(パゴダ)構造が必要です。しかし、精度を表現する条件が不足していたり、または目標を共有しない階層外の構造が存在していたりすると、精度条件や標準が異なるために一貫性が維持できなくなります。その結果、ECRの方向性が異なり、複数の結果をもたらすことになります。これは、図 2(b)右図には一貫性がない一方、左図は一貫性があることからもわかります。ソフトウェア・システムが一貫性の要件を満たさない場合、システム全体で一貫性のある精度や品質向上を達成することは不可能です。そして、シミュレーションをベースとしたECR/ECO管理についても、品質目標に対応できない、つまりソフトウェア・システムが適切に運用されていないことになります。 次回は、スマート・エンジニアリングのコンセプト、特にソフトウェア・システムのインテグレーションについてご紹介します。 - [「クラスA」のスキンパネルの実現に向けて取り組むべき課題: Onatus Engineering社の対策とは](https://japanforming.com/スキンパネルの取り組むべき課題/) - 製品全体の品質に対する消費者の第一印象は、「クラスA」サーフェス(外板面)によって決まります。そのため、いかなる欠陥もない完璧な面品質が求められます。しかし理想的な品質を達成するために、欠陥を特定および定量化し、必要な対策を講じるには、非常に高度な技術力が求められます。 そこで筆者の経験から面品質に関する問題を分類し、その対策においてシミュレーションをどのように活用できるかご紹介します。 図1: ドアアウター・パネルのハイライト(ゼブラライン)は面品質を表します 1. しわ 部品の位置決め時にたるみが生じると、ブランクホールドの最中に不要な曲げやひずみが発生し、パネルの外観部にしわの跡が残ります。バインダーのサーフェスやドロービードのレイアウトを最適化することで、このようなしわの問題を解消できます。 図2: バインダー・サーフェスのレイアウトと材料の曲率 図3: 初期のしわから生じる恒久的な面ひずみ 2. ヒケ(デント性) スキンパネルには比較的大きな平面領域がありますが、これは成形後に変形しやすい部分であるため注意が必要です。耐デント性を高め、また油膜の影響を回避するには、アウターパネルを十分に引き伸ばすことが重要です。パネルの厚みを増すと重量増となり、また強度の高い鋼材を使用すると成形性が低くなりますが、むしろ最低限のひずみ硬化要件を満たすことで、パネルの強度を高めることができます。耐デント性には一定の塑性ひずみが必要であり、またデント性そのものの評価にも利用できます。 図4: デント回避のために要求される塑性変形 3. スキッドライン 材料特性によっては、一定の圧力がかかると金属の接触面が変形し、パネルに擦痕(キズ)がつく場合があります。このようなキズが外観面に残ってしまうと、品質上の問題となります。このような品質上の不具合は、精密に潤滑条件をコントロールしたり、金型をさらに研磨したりすることで除去する必要があります。後者の場合、時間とコストが大きくかかります。そのため、スキッドラインを確認しておくことは非常に重要で、特に強い摩擦によって表面欠陥を生み出す小さい半径部分ではより重要になります。 図5: スキッドラインの確認 4. ショックライン(線ずれ) キャラクターラインの頂点付近で成形され局所的な板減が発生した部位が、最終的なキャラクターライン成形時に周辺領域に移動するような状況が発生したとします。このような場合、一度成形された形状が再び平坦に戻ります。しかし、物理法則に従って考えると、完全に元に戻る変形になることはあり得ません。そのためパネルはCADで設計したとおりのシャープな形状にはならず、デザイナーの意図した外観とは異なるものになります。これは塗装後の品質にも影響します。 図6: 局部的な板減によるショックラインの移動を確認 5. 面ひずみ ごくわずかなスプリングバック(~0.1mm)は寸法精度に影響しませんが、曲率が小さいほぼ平坦な部分では面ひずみが生じます。大半の場合は円形、楕円形または自由形状の小さなくぼみが現れます。また、エンボス加工部分の周辺は材料の流れが均一ではないため、局部的な弾性座屈が発生し、面品質が低下します。 このようなくぼみを検出するには、角形の平らな砥石でパネルを研磨し、非接触部分を確認します。面ひずみを補正するのは難しく、一般的には加工硬化を強めたり、またはしごき加工や局所的な形状変化を利用して除去または緩和します。 図7: サーフェスのへこみとストーニング検査 6. フランジ加工などの後工程で生じるしわ 最初のドロー工程でパネルの大枠を成形したら、次にトリムやフランジ加工、リストライクなどの工程が続きます。これらの工程では、成形中にパネルが変形しないよう最小限の接触面積でパネルを保持します。しかし、そのように考慮してパネルを保持しても、応力状態が変化してパネルにさらなるスプリングバックが発生してしまう場合があります。このようなパネルの挙動は注意深く観察し、適切に制御すること必要があります。 図8: 部品の剛性が十分でないと、ドローやトリム後のフランジ加工 がサーフェス形状に作用する場合があります これらはすべて、プレス成形エンジニアがクラスAパネルの工程設計を行う際に遭遇しうる問題です。それぞれ個別に対応しなければなりませんが、ある問題を解消することで、別の問題が悪化する場合もありえます。すべての問題を完全に解消することは容易ではありませんが、許容公差に収まるように最適化することは可能です。 - [自動車業界における材料歩留まりとシミュレーションによる改善アプローチ](https://japanforming.com/自動車業界における材料歩留まりとシミュレーシ/) - 【はじめに】 今日の自動車業界では、安全性と環境問題に対する規制強化への対応の一環として、電動車両開発など、より複雑な設計開発業務が求められるとともに、開発時間の短縮、コスト削減などこれまで以上の高い要求が求められてきています。 プレス部品の設計・製造業務において、成形シミュレーションを中心に単にプレス加工部品の品質確認だけにとどまらず、材料歩留まりの最適化をAutoFormで行う方法についてご紹介します。 【材料歩留まり改善の重要性】 プレス加工部品を多く用いる自動車産業において材料歩留まりの影響は大きいです。 自動車の重量が約1,500kgとしてプレス部品が占める重量も相当量になると思われます。自動車の車体を構成するいわゆるボディプレス部品の合計重量を200kgとした場合、材料歩留まり50%では約400kg(台)の材料を使用することになります。生涯生産台数(約30万台)では120,000tonの材料を使用することになり、その半分の60,000tonはスクラップとして廃棄され、その費用は約70億円近くになると予測されます。 CO2排出量の観点で見た場合、鉄鋼材の生産1tonに対するCO2排出量を約2ton(注1)とすると、スクラップとして廃棄されるCO2排出量は120,000tonとなります。 プレス部品単体で考えたとき、材料サイズをW1,000mm×L1,000mm×T1mmと仮定し、材料4辺共に1mm縮小すると約31gの改善となります。これが生涯生産台数(約30万台)では約9.3tonとなり約100万円の改善が見込め、CO2排出量では18.6tonの削減となります。この1mm改善の積み重ねがコストでは億円単位、CO2排出量では万ton単位の改善に繋がることを考えるは決して無視できません。 (注1) 経済産業省「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ, 2021年10月」 https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211027002/20211027002-1.pdf (2022年11月15日 閲覧) 【部品設計段階における材料歩留まり検討】 部品設計において部品要件を纏める重要な段階であり後の部品形状に影響します。 材料歩留まり検討として、まず確認するのは部品外形寸法です。往々にして部品端部はそのまま材料歩留まりに影響することが多く、その部位を材料歩留まりポイントと呼んでいます。 図1(a)に示したように材料歩留まりポイントを見極めて、図1(b)に示したような材料歩留まりが改善する部品形状を提案します。 図1(a):材料歩留まりポイント 図1(b):材料歩留まり改善案 また、クラッシュ成形部品や順送部品では部品の展開形状を材料歩留まり検討に使用します。AutoForm-StampingAdviserを用いることで図2(a)にあるような部品の展開ラインを作成し、レイアウト確認を図2(b)に示したように行うことができます。さらにこのレイアウトを基に設備・金型要件に適応した材料歩留まり最適化検討をAutoFormによって効率的に行えます。 図2(a):展開ラインの作成 図2(b):レイアウト検討 【工程検討段階における材料歩留まり検討】 工程検討段階は部品要件や生技要件を纏めるいわゆるSE検討段階です。このタイミングの検討はたいへん重要であり後の部品開発への影響は大きいです。エンジニアは成形性や量産性、部品によっては外観品質性等の要件も出し切ります。材料歩留まりについても同様であり、詳細検討を進めながら要件を満たす方案を繰り返し検討しています。 まず検討初期ではプレス方向の検討が重要です。プレス成形にとって成形深さは浅い方が良く材料歩留まりにおいても同様です。それゆえにプレス方向の検討は重要となります。図3(a)にプレス方向の検討の例を示します。AutoFormのティッピング機能を活用することで幾種類の条件によるプレス方向の検討とプレス方向に対して角度の検討が可能となります。 図3(a):ティッピング機能と角度確認 プレス方向を決定した後に金型面データを図3(b)にあるようにAutoForm-DieDesignerで素早く作成します。金型面を作成する上で材料歩留まりポイントの形状は特に重要であり、バインダー面の深さや余肉形状に無駄がないか注意が必要です。金型面を作成した後に金型面を含む材料歩留まりの検討をAutoForm-StampingAdviserで検討することができます。プレス成形に必要な材料寸法を図3(c)に示したようにAutoFormで求め、図3(d)のように量産を想定した材料形状に埋め込みます。これらの検討により量産を想定した材料歩留まりの検討が可能となります。 図3(b):AutoForm-DieDesignerによる金型面作成 図3(c) :金型面を含んだ材料想定サイズ 図3(d):量産を想定した材料サイズと材料歩留まり 【成形検討段階の材料歩留まり検討】 これまでの検討により材料歩留まりが最小となる工程計画となりました。これから成形シミュレーションによる最終検討段階だが注意するポイントは材料歩留まりだけでなく、成形性も同時に確認することが必要です。たとえば図4(a)に示した“成形性”で確認すると一部にグレー領域の範囲で張り剛性が充分とは言えないことが分かりました。また材料絞り上がり位置とビードとの距離(図4(b))に余裕があり材料サイズの縮小が可能であることがわかりました。 図4(a):成形性による評価 図4(b):絞り上がり位置とビードとの距離 この対策にはいくつか方法がありますが、今回はビード張力と材料サイズの調整をおこないました。その結果、図4(c)に示したように張り剛性は十分になったと判断し、図4(d)に示したように材料絞り上がり位置とビードとの距離も改善しました。この条件下における材料歩留まりが検討結果、図4(e)となります。 図4(c):成形性による評価 図4(d):絞り上がり位置とビードとの距離 図4(e):材料歩留まり検討結果 【まとめ】 今回はAutoFormによる部品設計段階から成形検討段階までの材料歩留まり検討例を挙げました。部品検討段階は部品形状が定まらずに形状変更も多く検討回数も増えてしまいます。それゆえに出来るだけ手間を掛けずに短時間で検討を行うことが必要です。工程検討段階では成形要件や金型要件、更に設備要件など、さまざまな要件を勘案し材料歩留まり要件も含めた工程計画を纏めることが必要です。成形検討段階は成形シミュレーション結果から必要に応じて修正を行い最適な結果を導くことが必要です。これら各段階の検討の積み重ねにより最適な回答が得られることになります。AutoFormでは各段階に適した機能を用意しており、これらの機能を活用することで根拠をもった検討が可能となり検討業務の効率化につながります。また検討データの一元化による情報のアンマッチも起きずに検討業務のやり直しを防ぎます。 材料歩留まり最適化方法についてご興味がある方は、ぜひ弊社までお声ください。 - [シミュレーションを活用したシステムの継続的改善](https://japanforming.com/シミュレーションを活用したシステム継続改善/) - 金型業界では品質基準をクリアした製品を効率的に生産することが重要視されます。つまりプレス部品の精度や性能は仕様を満たしながらも、その生産時間やコストは最小限に抑えなければなりません。 今日ではあらゆるアウトプットの改善、特にコスト削減と短納期が求められています。そのため金型業界では多くの企業が競争力を高めるために、開発工程にシミュレーション技術を取り入れています。試作品の製作やその組立の削減を促進し、納期と関連コストを大幅に改善する手段として、シミュレーションの活用が進んでいるのです。しかしシミュレーションに対する信頼をより深めるには、「生産現場で何が起こるか」をシミュレーションで予測できることが大前提となります。 プレス部品生産のプロセス・チェーンをシステム・エンジニアリングの観点から捉えると、まずはバーチャル世界のシミュレーションと現実世界の生産現場を合致させる上で鍵となるコンポーネントを特定し、改善すべきです。インプット(与えられる情報)とアウトプット(成果物)をコントロールすることで、システムの長期的な安定性を高めることが可能になるからです。 システム・インプット まずはインプット、つまりエンジニアリング業務への入力条件について説明します。最初に必要なデータを特定し、それを適切なタイミングでインプットしなければなりません。これにはAutoForm正確度指標を活用して、どのデータを使用すべきかを把握します。そしていつデータを入力すべきかを示すAutoFormパレート図を指針として利用すれば、シミュレーションを効率的に実行できます。 しかし必要なデータを判別できたとしても、それをすぐに入手できるとは限りません。データをどこで取得するのか、またデータの品質レベルをどのように検証するのか、明確にする必要があります。シミュレーションに適したデータは必ずしも準備されているわけではなく、むしろ多くの場合、シミュレーション・エンジニアはその所在を知りません。その時に取得できたデータは、その妥当性を検証することなく、そのままシミュレーションに適用してしまいます。シミュレーションの予測精度をあげるには、この状況に対処しなければなりません。 必要なデータとそれを適用するタイミングは組織間で標準化できますが、データのソースとその検証方法については、組織ごとに定義しなければなりません。エンジニアは組織についてしっかりと把握することで、誰がデータを作成し理解しているのか、そのリソースは内部と外部のどちらであるか、そして必要なデータをそのソースから直接取得できるのか、といった疑問に対応できるようになります。もしデータの取得が困難である場合は、さらに別の対応が必要となります。 データ取得に関する問題を解消するには、大概の場合、組織間の協力体制を構築するのが効果的です。そのためには、たとえばプロジェクトのROI達成など事業上の合理性があること、そして目標達成には情報共有が欠かせないことを、すべての担当者に納得してもらわなければなりません。これは非常に難しく、マネジメントのサポートが必要となる場合もありますが、長期的には功を奏するはずです。最後に、構築した協力体制は持続させることが重要であり、またデータが時間と共に変化してゆく場合は、それにあわせてシステムもアップデートすべきことも忘れてはなりません。 システム・アウトプット 次はアウトプット、つまりエンジニアリング業務の成果について説明します。システムの最適なパフォーマンスを担保し、仕様を満たす最終製品を生産するには、システムのモニタリングおよびメンテナンスが必要となります。アウトプットを重点的に監視し、すでに発生している不具合や潜在的な問題とその根本原因を特定することで、誤差の調整、不具合の解消、機能の追加といった対応策を講じることができるようになります。このようにプロジェクトの進行中はもちろん、あるプロジェクトから次のプロジェクトへと進めていく上でも、システムを継続的に改善してゆくことができます。プロセス・チェーンの中では、あるシステムのアウトプットは、次のシステムにおけるインプットとして利用される場合もあることにご留意ください。 システムの可視化 プロセス・チェーン全体を包括的に考えると、システムのインプットからアウトプットまでを可視化することで、時間経過と共にシステムのパフォーマンスが最適化されてゆきます。 情報を可視化し、下流へ伝達することで、「シミュレーションのとおりに生産現場を構築する」ことが比較的容易になります。また一方では、これが「生産現場を再現できる高精度なシミュレーション」の条件ともなります。エンジニアリングの意図が下流まで明確に伝わり理解されなければ、それを下流で忠実に再現されることはまずないでしょう。 たとえば、(シミュレーションから算出した)ある領域の流入量は30mmでしたが、そのことが下流まで伝わっていなかったとします。すると初回の金型トライアウト担当者は、われを解消するために、その領域の流入量を15mmに調整するかもしれません。これでわれが解消しても、流入量がエンジニアリングの意図と一致しない以上、スプリングバックの結果が変化する可能性があり、ひいては最終製品の品質を担保できなくなります。 徹底的な解析によって検討しつくされたエンジニアリングの意図を、すべての担当者が完全に理解し、それを追従することが、バーチャル世界と現実世界を繋ぎあわせるための第一歩となります。言い換えると、担当者が「何が求められているか」また「なぜそうであるか」をきちんと理解できれば、適切に対応できるようになるのです。また対応できない場合でも、その不備を報告することが徹底されるようになります。 上流の情報を可視化して伝達することで、「何を作れるか」や「何を作るべきか」をシミュレーションできるようになります。これは、現実世界を再現するために必要なシミュレーションの精度を担保するためにも重要です。現実世界の状況が上流で見えづらく、理解が足りないと、それをシミュレーションで正確に再現することはできません。 たとえば、あるプレスラインでは、当初クッション荷重のばらつきが5%であったにもかかわらず、プレスの老朽化によりばらつきが10%に変化したとします。このばらつきの変化をシミュレーション・エンジニアが把握していなければ、生産時の安定性に問題が生じるかもしれません。また反対に、たとえばプレスラインの入れ替えなどによって、プレス技術が高まった場合も同様です。シミュレーションを最適化する際にばらつきの変化や性能強化を考慮しなければ、製品設計やプレス成形の工程設計が過度に安全寄りになり、リソースに無駄が生じるだけでなく、競争力の低下すら招きかねません。そのためシステムの情報を可視化し、シミュレーションを活用して些細な変更の影響を予測することが非常に重要なのです。 システムの継続的改善を始めましょう 最後に、シミュレーションを設定する際に、いくつかの基本的なポイントを確認しておくとよいでしょう。以下のチェックリストをご活用ください。 高精度なシミュレーションを実行するにはどのような情報が必要かは明確ですか? シミュレーションを活用して工程を最適化するには、どのタイミングで条件を確定し、使用すればよいですか? 必要なデータはどの部署、どの担当者に問い合わせれば良いか明確ですか? どの入力条件を毎回高品質で準備できるかは明確ですか? シミュレーション結果を下流の担当者へ伝達し、理解を得ることができていますか? シミュレーションと生産現場の差異について、下流の担当者から定期的に十分なフィードバックを受けていますか? 成形条件に変更が生じた場合、その情報が上流まで伝達され、不具合の再発防止に役立っていますか? このチェックリストに対して1つでも「いいえ」がある場合、それは改善すべき点としてご注意ください。チェックリストの確認には時間と労力を伴いますが、改善点を把握し、システムを段階的に改善してゆくことで、最終的にはより良好な結果を得ることができるのです。 - [シュンデ・カナガタ社、シームレスなデータフローでトライアウト・ループを7回から1回に削減](https://japanforming.com/シームレスなデータフローでトライアウト削減/) - データをシームレスに共有し、面品質と寸法精度を最適に見込んだ金型サーフェスを実現 金型業界では面品質および寸法精度が担保されたパネルを短いリードタイムで納品することが常に課題となっています。金型メーカーのシュンデ・カナガタ社は、CAE-CAD間のシームレスなデータフローをもとに新たな手法を模索し、ドアインナーのプロジェクトにおいて、金型トライアウトのループを7回からわずか1回まで削減しました。本稿ではその手法とシュンデ・カナガタ社の学びについてご紹介します。 現在の金型業界において、プレス成形工程のコンセプトを作成するCAEとプレス金型の切削データを作成するCADの部門間にて、データフローは断絶されています。まずCAE部門ではAutoFormなどのCAEソフトウェアでプレス成形工程の検証と最適化を行います。次にCAD部門にて切削加工用の金型サーフェスを準備しますが、大半の企業ではCAEからデータを移行することなく、CADにて金型サーフェスを再作成しているのです。そのためCAEで検証した工程コンセプトとCADで作成した切削データとの間に相違が生じることになります。その結果、面品質と寸法精度の観点において、実はサーフェスのデザインは最適化されていないことになってしまいます。さらにこの手戻りは、作業負荷の増大や人為的ミスにもつながっています。このワークフローではデータが引き継がれないため、たとえば、工程コンセプト段階で既に解消されている不具合が、切削金型で再び生じることすらあります。 図1:工程コンセプトと最終的な工程デザインでデータが共有されないと無駄や人為的ミスが生じる この課題を念頭に、シュンデ・カナガタ社とオートフォーム社ではドアインナーのパイロット・プロジェクトにおいて、AutoForm見込み補正技術の有効活用、そしてCAEコンセプト段階からCAD切削段階までシームレスなデータフローの構築を行いました。「エンジニアリングから切削準備までデータをシームレスに共有することによってのみ、サーフェスや寸法精度が最適化されたデジタル・プロセスを実際の金型工場に直接適用し、現場で同じプロセスを構築できると考えています」とクリストフ・ウェーバー氏は指摘しています。 図2:シームレスなデータフローを活用することで手戻りを減らし、デジタル・プロセスで検証したデータをすべて金型工場で活用できます このドアインナーのプロジェクトには、3つの段階があります。最初の工程コンセプトの段階では、スプリングバックと面ひずみの確認と見込み補正を行いました。次にそのコンセプトとほぼ一致する最終的な金型サーフェスを構築するための情報を、AutoFormの特別なファイル形式でCADに出力します。次の段階では、見込の精度と面品質が最適に調整された金型のコンセプト・データをCAD上で直接サーフェスとして再現しました。そして最後に、シミュレーションで検証された通りに金型を切削し、デジタル・プロセスの設計図に従ったトライアウトを実行しました。その結果、CAD部門のエンジニアリング時間の50%削減を実現し、初回の金型トライアウトから高品質なパネルを提供できるようになったのです。 シュンデ・カナガタ社副社長Chen Xinzhang氏は「ドアインナーのサーフェス再構築と切削データの作成にAutoForm-Process Designer^forCATIAを活用しました」と明かしています。「このソフトウェアを有効活用すると、作業効率を従来のプロセスと比較して50%向上することができます。そしてさらに、初品の寸法合格率85%を達成し、金型トライアウトのループも7回から1回まで削減できました。」と述べています。 (本稿の画像は特定のお客様のデータではなく、本文を補足するためのイメージ画像です。) - [アセンブリの品質を高める次世代のデジタル開発](https://japanforming.com/アセンブリの品質を高める次世代のデジタル開発/) - オートフォーム社は長年にわたり、世界の自動車メーカーや金型・プレス部品のサプライヤから業界標準として認知されています。オートフォーム社のソフトウェア製品は、プレス成形プロセスのデジタル・プランニングおよび検証段階を支援する機能を幅広く備えています。金型設計の改善、金型や部品の品質向上、リードタイムの短縮、コスト削減などに、多くのお客様がオートフォーム社の高い技術力を有効活用しています。 製品製造業では多くの場合、部門ごとに担当する分野が異なるため、いわゆる「サイロ効果」(縦割り組織の弊害)が生じやすく、サイロの枠を超えて情報が自由に共有されない傾向にあります。特にプレス成形においては金型や部品の不具合が事前に解消されないまま、生産開始となる場合が多く見受けられます。このように問題を先送りすることで、後段階でコスト高な修正が必要となるだけでなく、生産遅延の一因ともなりえます。 オートフォーム社のソフトウェア・ソリューションは、プレス成形プロセス全体をつなぐ架け橋となります。フィージビリティやデザインの詳細検討を促進することで、生産上の深刻な不具合を軽減できるのです。関連部門間で事前に問題対応に取り組むことで、ソリューションを下流まで周知させることが可能になります。 デジタル化の有効活用によって、高精度・高品質なプレス部品の生産が可能になりますが、しかしプレス部品は製品全体のごく一部、つまり大きなパズルの1ピースに過ぎません。 プレス部品を組み立てるアセンブリのプロセスを経ることで、製品が完成します。CADソフトウェアで部品をデザインする部品設計者は、パズルのピースをどのように組み立てるかを示すアセンブリのレイアウトを完璧に構築することができます。しかしプレス部品がスプリングバック、公差、重力などの影響を受けると、アセンブリの精度は低下します。多くの場合、アセンブリの精度を高めるために、後段階で金型を修正することになりますが、これは非常にコストがかかり、また納期にも大きく影響します。 こうしたお客様の課題に対応するため、オートフォーム社ではアセンブリのプロセスまでデジタル化を拡大し、プレス部品および車体組立の両部門にて、最終製品のアセンブリに寄与する影響因子を確認できるようになりました。また部品のアセンブリに伴う接合だけでなく、ヘミングも検討できます。究極的にはお客様がプロセスのデジタル・ツインを作成し、そのプロセスの物理的なクローンを実際の生産現場に構築することを目標に掲げています。 このアセンブリのソリューションをポートフォリオに加えると、部門間のコミュニケーションが促進され、より下流までソリューションが周知されるようになります。また高品質な部品のみならず、高品質な製品まで視野に入れた検討が可能になります。 これにより、より的確な意思決定を行うことができ、金型や部品の品質向上、そしてリードタイムおよびコストの削減を実現できるのです。 オートフォーム社によるBiWアセンブリ分野の革新技術を活用し、まずは基準となる部品形状を様々な形式でインポートして必要な材料特性を割り当てます。次にアセンブリの工程数を決定し、各部品の挿入順序と角度、必要なクランプとパイロットの位置、各接合部(溶接)の位置を定義します。最大3枚のシートまで対応可能です。またロボットを使用する場合は、接合順序も調整できます。 シミュレーションが完了すると、基準データからアセンブリの偏差を特定できます。さらに部品の結合に必要なクランプ荷重とそれぞれの結合位置の荷重も確認できます。 この情報から、アセンブリに追加された部品の影響を確認します。基準部品であっても、わずかな偏差が想定されます。下図のように、すべて基準形状である各部品をアセンブリおよびヘミング接合した結果は、全くの基準形状になるわけではありません。ヘミングから生じる物理的な変化を確認することで、詳細に検討すべき情報を得ることができるのです。 ベースとなるシミュレーションが確立したら、基準データをプレス成形結果と置換します。するとプレス成形中に生じる応力とひずみ、そして部品のスプリングバックを、アセンブリ・プロセスと併せて検討することができるため、その影響を把握することが可能になります。 このように詳細に検討することで、アセンブリ全体の精度に影響を及ぼす部品を特定できます。その部品を見込み補正することで結果全体が改善され、最終的にはより高精度でロバストな生産を実現できるアセンブリを実現できるのです。また公差ついても理解がより深まります。 AutoForm Assemblyでは、スキャンした部品データもインポートできます。製造現場で生産した部品をスキャンすれば、その精度状態を取り込めるだけでなく、その部品のアセンブリ後の結果も把握することができるのです。物理的な不具合に対してバーチャルで対策を講じ、必要に応じて、金型や部品の変更依頼を送ることで、組み立ての精度を最適化できます。 AutoFormアセンブリ・ソリューションは、プレス成形およびアセンブリのプロセスのデジタル化をさらに促進する最新鋭のツールです。プレス部品部門とアセンブリ部門の協力関係を促進し、最高品質の製品のみならず、コストおよびリードタイムの削減まで同時に実現します。デジタル・ツインの重要性が高まる中、完全なデジタル・プロセスから実際の生産現場におけるクローンまで構築できるAutoFormソリューションは、お客様のアセンブリ部門に様々なメリットをもたらします。ぜひオートフォーム社までお気軽にお問い合わせください。 - [会心の一撃: ザルツギッター・ハイドロフォーミング(SZHF)社が熱間チューブ成形を導入](https://japanforming.com/熱間チューブ成形を導入/) - 概要 ザルツギッター・ハイドロフォーミング(SZHF)社は、ドイツに拠点を置く熱間チューブ成形部品の大手メーカーであり一次サプライヤです。 昨年、同社ではオートフォーム社のAutoForm熱間チューブ成形シミュレーション・ソフトウェアの精度および適用性の検証を行いました。本稿では、オートフォーム社がSZHF社との共同開発によって、AutoFormソフトウェアの最新バージョンに複雑な熱間チューブ成形工程を組み込んだ経緯をご紹介します。プレス成形業界では比較的新しい工程である熱間チューブ成形は、冷間ハイドロフォーミングよりも優れた部品特性を有します。 熱間チューブ成形とは 熱間チューブ成形は、複雑な中空形状を有するチューブ部品を高温で成形する工程です。マンガンボロン鋼をオーステナイト相(約950℃)まで加熱して成形性を高めてから、金型で成形します。 金型が閉じると、媒体が金属のワークピースを内側から加圧し、密閉された金型形状の外側に押し出します。この媒体は通常、窒素などの気体です。従来の温間成形や冷間成形よりも作業温度が高いため、高圧をかけなくとも、金属を破断させずに伸ばすことができます。そのため気体の圧力を十分にかけて、チューブを成形します。部品形状まで成形したら、急速に冷却またはクエンチングしてマルテンサイト相組織にすることで、チューブの強度が高まります。 熱間チューブ成形では、一般的に1500MPaの引張強度を容易に実現できる22MnB5などの高強度鋼材を使用します。ザルツギッター社ではこの工程を利用して、1800MPaの引張強度を有する超高強度部品をすでに製造しています。 熱間チューブ成形の必要性 自動車業界では、熱間プレス成形を積極活用しながら、高い強度と硬度を併せ持つ自動車部品を製造しています。成形したシートは様々な手法で他のシートと接合し部品形状を作り出しますが、このデザインから強度と耐衝突性を高めることができます。 また自動車メーカーでは、常に革新的なソリューションを模索し、乗客安全性と燃費のさらなる向上を目指しています。コスト、燃費、軽量化、工程の複雑さといった課題のみならず、EV車のラインアップ強化にまで取り組む上で、近年は自動車部品の特性や構造に着目することで、デザインのさらなる改良を試みています。 熱間チューブ成形には、従来の成形工程よりも多くの利点があります。このようなチューブ部品は比較的コンパクトでありながらも、高い剛性や耐衝撃性を有します。Aピラーなどの自動車部品では、占有領域が小さいことが有利に働くのです。次に、これらの特性を比較しながらご説明します。 熱間チューブ成形と熱間プレス成形 熱間チューブ成形は、BiWアセンブリにおいて、熱間プレス成形を上回る様々な優位性があります。剛性、ひずみ、断面間の均一性、耐衝突性の点で熱間プレス成形を上回り、より複雑な部品に対応できます。複雑な形状に成形できるため、総部品数を抑えることができ、またプレス成形したシートには欠かせない接合部(スポット溶接/ライン溶接など)も削減できます。そのため部品やBiWアセンブリの重量が減り、高い強度対重量比を実現できるのです。 熱間チューブ成形にはこのような利点があるため、Aピラーやシル補強材、バンパーやサイド・ドア・ビームなどの部品から、ツイスト・ビームやサブフレームといったシャーシ・コンポーネントにまで応用されています。 熱間チューブ成形と冷間チューブ成形の比較 冷間チューブ成形と比較しても熱間チューブ成形の優位性は変わりません。まず冷間より成形性が高く、より複雑なチューブ形状に対応できます。また必要な圧力も低いので、例えば、高強度鋼材の熱間チューブ成形から得られる強度と同等の強度を持つ材料等級DP1000の部品を、冷間チューブ成形することも可能です。しかしその場合、成形時のチューブ内圧は大幅に高くなります。しかし冷間チューブ成形では、高い伸びや断面差を得ることは困難です。そのため、ワークピースのひずみ能力は熱間チューブ成形の方がはるかに優れています。 BiWデザインにおける熱間チューブ成形の需要 熱間チューブ成形は20年ほど前から研究と最適化が行われてきましたが、まだ広く採用されるには至っていません。現状では、チューブ部品はBiWデザインのニッチであり、熱間チューブ成形はチューブ部品の中でもさらにニッチであるため、熱間チューブ成形はニッチの中のニッチと言えるでしょう。とはいえ、自動車メーカーがこのニッチを意識していない、というわけではありません。 フォード社やセアト社など、多くのOEMがすでに熱間チューブ成形をデザインに取り入れたり、その効果を調査中です。市場の評価では、熱間チューブ成形によるチューブ部品には多くの利点があるため、今後さらなる成長が見込まれています。 ザルツギッター・ハイドロフォーミング(SZHF)社のような一次サプライヤでは、このような熱間チューブ成形を利用した部品製造の案件が急増しています。SZHF社は熱間チューブ成形部品を驚くほどの高精度で製造できる工程を開発しましたが、しかしエンジニアリング段階においては、生産開始前のフィージビリティを確実に検討できるシミュレーション・ソリューションが不足していました。時を追うごとに製造依頼が増える中、信頼できる熱間チューブ成形シミュレーション・ソフトウェアの必要性が益々高まってきたのです。 SZHF社のシミュレーションのニーズを満たすTubeXpert SZHF社にはデザインが複雑な新規部品の依頼が多くあります。熱間チューブ成形工程または冷間チューブ成形を使用したマルチハイドロフォーミング工程が必要となりますが、後者の場合、要求される伸びが大きすぎたり、部品の断面がチューブ長に沿って大きくばらついたりすることがあります。そのためSZHF社ではより良好な製造が見込まれる熱間チューブ成形を推奨しています。 この提案を受けたお客様は、当然ながら、部品製造にかかるコストや精度、時間といった点を気にされます。この疑念を解消するには部品の詳細なシミュレーションが不可欠ですが、SZHF社には信頼できるシミュレーションを実行する術がありませんでした。 しかしTubeXpertソフトウェアの活用を始めてから、シミュレーションを外注することなく、部品設計の製造可能性を社内で判断できるようになったのです。またサイクルタイムを決定して、顧客に信頼できる部品の見積もりを提供することも可能になりました。このような一連の作業をすべて、冷間チューブ成形のシミュレーションと同程度の時間で完了できるのです。SZHF社ではTubeXpertの導入以降、工程全体のモデル化と見積もりの作成を2~3日以内で対応できるようになりました。そしてお客様も各工程のコストを即座に評価することができます。 TubeXpertはマンガンボロン鋼材だけでなく、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼の高精度なシミュレーションに対応しています。間接的な熱間チューブ成形と直接的な熱間チューブ成形の両方について、クエンチングを含む熱間チューブ成形工程全体のシミュレーションを実行できます。 結論 熱間チューブ成形工程を活用することで、部品数とアセンブリを少なく抑えることができるため、SZHF社および取引先のOEMはより機能的で複雑なチューブ部品をより短時間で製造することが可能になりました。また工数や溶接コスト、そして熱間プレス成形に関連するアセンブリの不具合も軽減できます。このため熱間プレス成形と比べると、熱間チューブ成形は長期的には安価になります。 こうした利点から、今後数年のうちに熱間チューブ成形を採用するメーカーが増えることは間違いないでしょう。そしてOEMとサプライヤの双方がTubeXpertを活用し、工程の簡易化が進むことが予測されます。サプライヤは自社の工程能力を適正に判断することができるようになり、またOEMも信頼できる調査結果を得ることができるのです。 - [Rubbish in Rubbish out(ゴミを入れてもゴミしか出てこない): タタ・スチール社ジョージナ・トレハーン氏が語る「データのジレンマ」の解決法](https://japanforming.com/オンラインデータペースで時間短縮と品質向上/) - 「Rubbish in Rubbish out(ゴミを入れてもゴミしか出てこない)」は、1970年代に初めてコンピュータが大学へ導入された頃に生まれた慣用句で、粗悪なデータを入力しても粗悪な結果しか得られないことを意味します。今日のプレス成形シミュレーションや衝突シミュレーションも例外でなく、高精度な結果を得るためには、高品質な材料データを入力すべきであることが示唆されています。 現代は常に時間に追われる生活を余儀なくされています。時間はいくらあっても足りません。たとえば自動車のEV化やサステナビリティ(持続可能性)の取り組みに至っては、変化を助長させるアクセルを誰かが踏み込んでいるとしか思えません。しかしこの急激な変化の裏では、それに見合ったツールが重要な役割を果たしていることをご存じでしょうか。高精度なシミュレーションはそのひとつです。たとえば、シミュレーションを実行することで、複数の選択肢を素早く評価し、不適切なものを切り捨て、必要な部分のみをデザインに取り入れることが可能になります。またTTO(金型トライアウト)や車両試験においても、高精度なシミュレーションを活用して「一発合格」を実現することで、コストや時間を要するトライ&エラーの繰り返しを回避できます。その上で、材料データが正確かつ高品質であることは、シミュレーションの精度を向上させるための重要な要素のひとつとなります。 この高品質なデータはどこで入手できるのでしょうか? もちろん自分で作成することもできますが、それには膨大な工数がかかります。完全な材料データ・シートの作成には1か月の時間と約5万ユーロ(約7百万円)のコスト、シミュレーションに適用できる材料カードまで作成するには、さらに2週間と1万5千ユーロ(約2百万円)がかかるといわれてます。タタ・スチール社では高品質な材料データの重要性をいち早く認識し、Aurora®オンライン・データベースの開発を行いました。このデータ・ベースにはプレス成形の材料等級からAHSSまで、当社が提供する自動車向け製品のデータが包括的に収録されています。これらはPDF形式のパンフレット、Excelデータ・シート(お客様がご自身で処理する場合に活用できる元データ付き)、そしてAutoFormやLSDynaといった代表的なソフトウェア・パッケージですぐに利用できる材料カードの形式で提供されています。Aurora オンラインでは、プレス成形、衝突、疲労などさまざまなデータをご利用いただけます。 Aurora オンラインには、基本、塑性、接合、性能などのデータが収録されています。 データの品質はどうでしょうか? そもそも品質とは何を意味するのでしょうか。タタ・スチール社では、ここでの「品質」を、お客様に供給する材料の代表的なものと解釈しています。そして実際の生産データを確率論的に解析し、コイルの等級ごとに平均的な特性を特定する手法を開発しました。このコイルのデータを使用して、シミュレーションですぐに利用できる材料カードとデータ・シートの大部分を作成したのです。 Auora オンラインでは代表的なソフトウェア・パッケージで利用できる材料カードをすぐにダウンロードできます。 タタ・スチール社が「品質」という言葉に込めたもう一つの定義は、すぐに利用できる幅広いデータです。Aurora オンラインでは当社製品の大部分に関するデータを入手できるだけでなく、ゲージまで選択できます。たとえばDP800GIでは、1つのデータ・セットだけでなく、お客様が関心のあるゲージに応じて3つのデータ・セットを提供しています。別の選択肢は、いわゆる「ワースト・ケース特性」と称されるもので、ある種の性能に対して最も好ましくない材料特性を意味します。たとえばプレス成形の場合、A80、n、rの値が最も低い特性がこれにあたります。前述のとおりタタ・スチール社が開発した「平均的な」コイルを選択する手法を活用すれば、必要に応じて「最悪の」コイルを選択することもできるのです。これは通常の範囲内で、ある等級から提供される材料の中でも成形性が最も低いものを表し、これによって、お客様のシミュレーションにロバスト性の幅を持たせることができます。 時間短縮のテクニック Aurora オンラインのデータをご活用いただくことで、お客様が負担する材料試験コストの大幅削減が実現すれば幸いです。タタ・スチール社では材料試験に多大な時間を費やすことなく、このように膨大な量に及ぶデータの作成に成功しました。これを不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは(当社の優秀な人材が集結し開発した)さまざまな技術に支えられています。この技術によって、単純な引張試験片(ひずみ速度を若干修正したもの)から、FLC(成形限界曲線)、降伏曲線、高ひずみ速度のデータを作成することができるようになったのです。この技術が開発されていなければ、このように広域なデータを作成することは不可能だったでしょう。本稿では割愛しますが、この技術について多くの論文が公開されていますので、ぜひAbspoel、Scholting、Vegterといった名前から検索してみてください。あるいはタタ・スチール社にご連絡いただければ、喜んでご説明いたします。 Aurora オンラインのデータを用いたドア・インナーのFEMシミュレーション結果は、ひずみの測定値とほぼ一致し、シミュレーションが高精度であることが実証されました。 自社開発した材料カードを有する場合でもAurora オンラインは必要でしょうか? 通常OEMには自社開発したデータ・セットがあり、たとえばフィージビリティのシミュレーションなどではこれを活用しています。初期段階ではどの材料メーカーから材料を仕入れるか決まっていないことが多いため、社内にデータ・セットを有することは理にかなっています。ではAurora オンラインはどのような場合に必要なのでしょうか?3つのケースが想定されます。 新製品 - どこかで始めなければなりません。 検証 - 自社開発した材料カードが実際に使用する材料から逸脱していないかを確認する必要があります。Aurora オンラインにアクセスすれば、すぐに情報を得ることができ、電話をかけるといった手間もかかりません。 調査 - シミュレーションの結果が予想に反する場合、Aurora オンラインのデッキで簡単に実験ができます。タタ・スチール社の材料カードで同じシミュレーションを行い、同じ結果が出るかを確認できます。また降伏曲線が異なる材料カード(VegterとHill48)や、ひずみ速度を含めた材料カードなどでシミュレーションを行うことで、さまざまな条件を確認できるため、新たな視点で問題を捉えることができるかもしれません。タタ・スチール社では、主要なソフトウェア・パッケージの材料カードを用意しているだけでなく、基本的な材料モデルとより高度な材料モデルの両方を含む複数のバージョンを用意しているので、このようなことが可能です。 どの材料が最良の結果をもたらすか、すべての関係者が同意しているわけではありませんし、疑問や質問を抱えたお客様がいらっしゃるかもしれません。タタ・スチール社が提供するデータを快適にご活用いただくためにも、Auroraオンラインのリンクから当社担当者まで直接お問い合わせください。あるいはAurora オンラインから元データを含むデータ・シートをダウンロードできます。データの透明性が確保できるとともに、お客様がご納得される方法でデータ処理することも可能です。 タタ・スチール社では、様々な材料やデザインなどのシミュレーションを通じ、お客様のプレス成形のパフォーマンス向上をサポートします。 タタ・スチール社のAuroraオンラインは自社の優秀な人材が集結して開発したデータ・ベースで、社内で管理されているだけでなく、積極的な利用も広がっています。このデータ・ベースが稼動して10年になりますが、広域および広範なデータとその品質について大変ご好評をいただいています。さらに今後もお客様のニーズに見合うデータ・ベースとして構築を続けてゆく上で、ぜひお客様のご意見をお聞かせください。シミュレーションの精度をさらに高めるには、どうしたらよいでしょうか?業務に必要なデータを取得できていない部署はどこですか?お客様の課題について、一緒に取り組んでいきましょう。 Aurora オンラインについて、詳しくはこちらをご確認ください。 - [正確度指標: シミュレーションとトライアウトの設定条件を一致させ、初回トライアウトで高評価を獲得](https://japanforming.com/正確度指標-初回トライアウトで高評価を獲得/) - 韓国のSeoyon-TopMetal社は、HKMC、Daimler、BMW、VW、GMなど国内外の自動車メーカーを顧客に持つ金型メーカーです。1987年に設立された同社には、金型製造に精通した人材と国内最高峰の設備が揃っています。サプライヤとして公式認定されており、常時フル稼働しています。またカーボディ・アウターおよびインナー、さらにはアルミなど多岐にわたる金型製作の実績とノウハウを元にプレス金型製作の技術開発にも力を注いでいます。 図1: CAEチームリーダーによるトライアウトの品質確認 Seoyon-TopMetal社ではAutoFormを長年活用し、信頼性の高い検討を数多く行ってきました。特に2019年には、トライアウトに関する多くの実績からCAE担当部署の存在感が大きく高まりました。実際のトライアウトに適用するために必要な設定条件の指標となる「正確度指標」をシミュレーションに適用し、それらの確認および検証を継続したことで、現在では精度が30%以上向上し、トライアウトの工数が大幅に軽減されたのです。 さらに、Seoyon-TopMetal社が製造したアルミパネルのフロントドア・アウターの初期品質は85%以上、スチールパネルのリアドア・アウターに至っては95%以上という高評価を獲得しています。本稿ではこうした改善に至った経緯についてご紹介します。 図2: トライアウトの設定条件と同様に部分的なベアリングを適用 AutoFormのシミュレーション・モデルと同じ結果をトライアウトで得るには、両者で流入を合わせることが最も基本となります。バインダーのベアリングを調整することで、初回トライアウトでビードを修正する時間を最小限に抑え、流入の傾向をシミュレーション結果と同様にすることができます。AutoFormの「部分的なベアリング」機能を活用すれば、非常に簡単に、関連領域のみを指定して一致する設定条件に合わせることができます。ビードの拘束力はバインダーのベアリングに応じて差が出ます。流入量が多い案件では特に顕著となり、また傾向も様々となります。上図では部分的なベアリングを定義して、ビード外周のハードスポットを除去しています。 図3: トライアウトの設定条件と同様にパッドにリリーフを適用 そして、最も工数がかかる部分が、成形時のパネル変形を予測し、事前に問題を改善する業務です。それには2通りの設定条件を適用できますが、比較的簡単に設定できる条件がパッドのリリーフとなります。成形性に対する影響が少ないため、エンジニアリングの初期段階では適用しませんが、スプリングバック解析を正しく実行する上では不可欠なものです。各工程でシートのR部分に負荷がかかりすぎないように、R形状と工程中に閉じる必要がない領域にリリーフを適用します。「凹半径の削除」機能を適用するだけで、R形状を金型から削除できます。この操作を行うと、シミュレーションでパッドに荷重がかかりすぎることはありません。つまりR形状をこのように設定すれば、パッドが閉じる間にさらに成形が進行することがなくなり、パネルの変形を極力抑えることができるのです。 図4: ドローシェル見込み補正による位置決め状態の改善 また、2次成形時のシートの位置決めを最適化する場合にも、多くの工数がかかります。パネルの変形を回避するには、工程間の位置決めも配慮が必要となります。アルミのようにスプリングバックの影響を受けやすいものでは、次工程の金型を見込み補正する場合、前工程で成形したパネル形状の結果がベースとなるようにしなければなりません。これを確実に行うには、AutoFormのドローシェル見込み補正を活用できます。そしてスプリングバック解析とSigmaのロバスト性解析を実行し、見込み補正について判断を行います。 図5: ドア・アウターの見込み補正戦略 信頼できる結果を得た後、上図のように見込み補正を行いました。最後のスプリングバックを基本に全工程の金型に見込み補正を行い、見込み補正後の位置決め状態を分析し、影響を受ける工程に対してはドローシェル見込み補正を行いました。 図6: 見込み補正後の最終検証におけるスプリングバックの結果 トライ&エラーを重ねながらも工程間で生じる変形を最小限に抑制すると、図6のように良好な結果が得られました。また初回トライアウトでも同様の結果を得ることができました。 アルミパネルの案件を開始した当初には、多くの問題が山積していました。AutoFormのシミュレーション結果と実際の現場で得られる結果には差異があり、問題を解決するためにトライアウトで多くの時間を費やしていました。しかし本稿で紹介したとおり、エンジニアリングの段階にてパネルの変形をシミュレーションで特定し、事前に対策を講じることで、実際のトライアウトにて良好な結果を得ることができるようになったのです。 要旨 プレス成形時に生じるパネルの不本意な変形を事前に改善することで、AutoFormとトライアウトの結果が一致するようになり、信頼性と精度が高まりました。その結果、スチールパネルのリアドア・アウターとアルミパネルのフロントドア・アウターについては、初回トライアウトにて、それぞれ85%以上、95%以上の高評価を達成しました。エンジニアリングの段階ではより多くの工数が必要となりますが、トライアウトの修正に必要な作業量は50%以上削減されました。 - [BIWローンチ・リーダーの舞台裏](https://japanforming.com/biwローンチ・リーダーの舞台裏/) - BIWローンチ・リーダーとしての役割についてお話しする前に、BIWとは何かということについて、皆さんと認識を共有したいと思います。 ホワイト・ボディ(BIW)とは、 自動車 において、塗装前、モーター、シャーシ・サブアセンブリ、トリム(ガラス、ドアロック/ハンドル、シート、内装、電子機器など)が構造体に組み込まれる前に、車体のフレームが接合された段階のことで、アセンブリには、 溶接 (スポット、MIG/MAG)、 リベット、 クリンチ、 接着 、レーザー ・ブレージングなど、さまざまな技術が用いられます。(出典: Wikipedia) 新人のエンジニアに説明する際には、車輪のついた完成車を燃やしたとして、火が消えた後に残ったものがBIWだと伝えています。技術的に適切とは言えませんが、99%は正しく理解してもらえます。 車体製造の初期段階では、すべての部品を間違いなく組み立てるために、製品担当部門と製造技術部門が協力し、多くの業務をこなします。たとえば、部品レイアウトの検討、溶接ガンやパラメータの確認、アセンブリの順序(フローチャート)、治具の取扱い、物流など、アセンブリのライン開始前後および稼働中に管理しなければならない事案は多岐にわたります。 原材料の照合や測定報告などの品質検査を経て、すべてのプレス部品とサブアセンブリが公差を満たすことが確認できたら、BIWアセンブリ工場へ搬入されます。ここには部品の組み合わせごとに、スポット溶接、静的シール、ファスナー溶接、クリンチおよびヘミングといった工程があり、そして塗装工場への搬送となります。このワークフローには非常に多くの部門が関与するため、相互の協力や調整が不可欠となります。 BIWローンチ・リーダーは、実質的にはどのような役割を担うのですか? その前に、ぜひご理解いただきたいことがあります。BIWローンチ・リーダーはスーパーマンではなく、決して一人で仕事をするわけでもありません。また各部門からのサポートがなければ、業務を滞りなく進めることができません。技術部門だけでなく、財務、購買、物流、プログラム・マネジメント、そしてもちろん他のシステム・エンジニアや製造部門全体との協力関係が非常に重要となります。 BIWローンチ・リーダーは車体工場やそのラインで活動することが多く、特に工場の現場担当者と製品技術本部が相互に協力し合い、信頼性の高いコミュニケーションが図れる環境を整える役割を担います。 BIWローンチ・リーダーは自身の故郷や自国から離れた現場で活動することも珍しくはないため、これが最初の試練となるかもしれません。しかしその現場について早くから把握できれば、自信をもって仕事を進めることができます。現地に入る前に、その場所の慣習やしきたりについて学習しておくことをお勧めします。 この最初の役割を全うできたら、次に工場担当部門をサポートし、予定された期日までにBIWに必要なすべての設備を車体工場のラインに整え、量産開始前後の測定管理および品質管理を徹底します。 製造の初期段階からBIW完成品の納入まで、BIWローンチ・リーダーは、車体全体の測定報告書を確認するだけでなく、その後、塗装ラインを経て、次にシャーシ、パワートレイン、インテリア、電装などすべてのシステム・インターフェイスを組み立てるまで、車体アセンブリの管理が行き届き、安定していることを確認します。また塗装後にも測定報告書を確認し、すべてのパネル(主にスキンパネル)が確実に管理されていることを確認します。 BIWローンチ・リーダーには、責任感、回復力、コミュニケーション、チームワークが求められます。裏を返せば、自身が持ちうるソフト・スキルやハード・スキルをすべて最大限に活用できる場でもあるのです。これが非常にやりがいのある仕事だということがお分かりいただけますでしょうか。履歴書に書いた自身の美辞麗句も、いつかは有限実行しなければなりません。まさにそれを示すうってつけのチャンスです。 BIWローンチ・リーダーは、技術本部と製造工場の間に入り、製造に関する問題対応にあたる中心的存在となるため、問題解決はできるだけ迅速に行うように調整しなければなりません。時計は決して止まることがなく、製造が進むにつれて重圧は増すばかりであることを忘れてはなりません。 事例の共有 この写真は、ロシアでフォード社エコスポーツの立ち上げに携わった時に撮ったものです。この当時、アセンブリの構造体、スポットの溶接量、溶解、くぼみや位置などを一つ一つ確認しながら品質レベルが量産に見合うものであるかを見極め、また工程の安定性についても確認を行っていました。この工場では、フレーミング・ステーションの前にあるメインアセンブリのセルが手作業で行われていたため、品質を担保する上で、工程管理をさらに徹底する必要がありました。 こちらも成功事例です。このマニュアル・ステーションではスポット溶接(フォード社では逆デルタ溶接と呼びます)を行いますが、工程のばらつきによってスポットの位置(エッジ)にずれが生じると、適正な品質が担保されません。そのため、作業員が正しい位置で溶接できるようにガイドする新たなブレードを作成するよう依頼しました。ささいな工夫があれば、問題は簡単に解決できるのです。 成功事例をもうひとつ紹介します。このケースでは、サブアセンブリに溶接のバリが発生し、その結果、スキンパネル下の次のアセンブリ構造体に右のくぼみができてしまいました。その結果、部品が損傷し、その近くにある次のスポット溶接部にも大きなくぼみが生じたのです。しかし部品の嵌合とサブアセンブリの溶接パラメータを調整することで溶接のバリが解消し、スキンパネルの適切な嵌合と接合ができるようになりました。 次に静的シールの排出に対応した際の事例を紹介します。シールの排出は、周辺部品の嵌合やコストだけでなく、塗装工程の汚染といった問題にまで発展します。この工場では、ロボットの軌道やポンプ式シールと塗布量を調整することで問題を解消できました。簡単に解決できると考える方もいらっしゃるかもしれませんが、静的シールの問題は、多くの場合、悪夢にうなされるほどの困難を伴います。 BIWローンチ・リーダーとして最も重要なポイントは、問題を洗い出すだけでなく、現場担当者と一緒に問題を解決し、迅速に生産管理を徹底するために、最善の手段を見つけ出すことです。 ティアダウンとプルオフの試験を依頼し、プレス部品、サブアセンブリ、マスターアセンブリの整合性を確認します。現場担当者と密接に連携しながら、すべての部品が適正な品質で適切に配置されているかを確認することは、BIWローンチ・リーダーが担う重要な役割のひとつです。 繰り返しになりますが、このような仕事は、現場担当者との協力や連携なしには達成できません。BIWローンチ・リーダーは現場担当者の一員であることを常に自覚し、そして決してお客様のように振舞わないことが肝要となります。 この先BIWローンチ・リーダーを目指す方へのアドバイスです。 ストレスや重圧に耐えられない人は、この仕事から離れた方が良いでしょう。 現場に近いところで仕事をしたり、手を汚したりするのが苦手ならば、考えを改めたほうが良いでしょう。現場は製品を具現化する重要な場所です。 何か大きな問題に直面したとき、本当に解決できるかどうかわからないことは、決してやってはいけません。各問題に対して弾丸の入った銃を握っていることを念頭に置き、賭けは行わないことです。 問題を解決するための適切なスキルがあるか不安に思う場合は、早急にサポートを依頼し、その状況から学習します。すべてを知らなくても問題はありません(誰にも気づかれることはありません)。自分自身だけで何でも解決できると思い込んでいることが、最大の問題であるかもしれません。 最後に、重大な問題を発見した場合は、生産ラインを止めることを決して恐れないこと。これは問題を発生させるのではなく、会社の時間とコストの無駄を省くことだと認識することです。 BIWローンチ・リーダーになるための特別なトレーニングはなく、現場で学ぶしかありません。仕事に自信が持てるようになるまでは、常に周囲に気を配り、自身が話すよりも周囲に耳を傾けることを心がけてください。 BIWローンチ・リーダーを目指すかどうかに関わらず、美しいネックレスを作るには大きな岩を砕く必要があることを心に留めておいてください。しかしぜひ大きな夢に向かって挑戦してください。 BIWローンチ・リーダーの役割についての説明は以上です。長袖の防護服に保護メガネ、ヘルメットを装備して、「赤ちゃん」が生まれてくるのをじっくり見守るようなものです。製品技術者として仕事にやりがいを感じる中でも、特にローンチでは、これまで机上で必死に作業したものがすべて現実に形となる瞬間を見届けることができます。これに勝る喜びはありません。 本稿を最後までお読みいただきありがとうございます。読者のみなさまのお役立ていただけましたら幸いです。 Daniel Perez | BIW Launch Leader | Senior D&R Body Structures https://www.linkedin.com/pulse/what-biw-launch-leader-does-daniel-perez/ - [ダイスポッティングの現実: イタリアの金型メーカーCF Franci社の事例](https://japanforming.com/ダイスポッティング事例/) - 第4次産業革命、いわゆるインダストリー4.0では、設計・生産の迅速化を最大の目標として掲げています。デジタル化、スマート・ファクトリー、デジタル・ツイン、AIなどは、製品設計から量産までのプロセス・チェーン全体を効率的かつ効果的に進めるための手法です。プレス成形シミュレーション・ソフトウェアの活用が進んでいるとはいえ、金型トライアウトの段階では、依然として手作業が集中的に行われている上、作業者の経験に大きく依存しています。 金型トライアウトは、金型のエンジニアリングから製造までに要するコストの30%、時間の40%を占めています。特にダイスポッティングはトライアウト全体の70~80%を占めるため、この効率化が重要視されています。わずかな時間でも短縮できれば、工数やコストの削減につながります。 金型トライアウトの時間短縮に取り組む上で、プレス成形プロセスのシミュレーション・ソフトウェアが果たすべき役割について、イタリアのレッコにある金型メーカーCF Franci社の金型技術部長マッテオ・ヴァルセッキ氏と金型工場長マルコ・ロタ氏にお話を伺いました。創業60年を超えるCF Franci社は、薄板冷間プレス成形部品の金型OEMサプライヤーで、自動車業界向けのフロント・フェンダー用金型の設計および製造を専門に扱っています。 図1: (左)マッテオ・ヴァルセッキ氏、(右)マルコ・ロタ氏 本稿では、時間短縮の可能性を模索する上で、スポッティング工程全体に着目しました。 「ダイスポッティングは、金型トライアウトにおいて不可欠かつ時間のかかる工程です。部品の寸法適合性を確認する前に、金型の最小面積(通常80%)のスポッティングを担保しなければ、金型の検収に立ち会うこともできません。スポッティング戦略では、まず我々の経験やシミュレーション結果をベースに計画を作成します。そしてお客様と確認や相談を行い、最後に承認をいただきます」CT Franci社 バルセッキ氏 まず、最初の質問は「妥当な期間内に高品質の金型を作成するための必須条件」についてです。これについて、ロタ氏は以下のように述べています。 「品質の良いスポッティングには、金型の切削が肝心です。切削の品質が低いほど、仕事を仕上げて、OEMが要求する通りの金型を納品するまで時間がかかります」CT Franci社 ロタ氏 この言葉は本稿の後半でまた説明します。ぜひ心に留めておいてください! 最初にドロー金型をスポッティングします。まず、閉じた状態のバインダー(下図参照)で作業を行い、次に、底付き時の金型で行います。パンチは「マスター」と称され、通常、スポッティングは行いません。 ここではドロー金型のスポッティング工程について、全体の作業がどのようなものであるかを説明します。 まず、クリーンなブランクをバインダーが閉じるまで成形します。次に、バインダーで覆われた部分に青い塗装を施し、再びプレス機にかけます。バインダーが閉じると、ブランク(と金型の補色部分)に残された青の濃淡が、スポッティングの対象となる場所を示します。 図2 - バインダのスポッティングが不完全な場合 図2は、板厚のばらつきと金型やプレスの柔軟性が、シートのバインダー部分にどのように影響しているかを示しています。シートの塗装がはがれている部分は、接触時に金型へ転写されています。また塗装が残っている部分は、金型との接触が部分的であるか、全く接触していないことを表しています。 この接触部分が、研磨の対象領域となります。 必ずスポッティングが必要となる領域は、ビード・ラインとパンチ・オープニング(PO)ラインの間です。ビードの外側は、板厚を考慮してスポッティングする場合もあれば、単にリリーフする(圧力をかけない)だけの場合もあります。これはお客様と相談しながら判断します。 次に検討するのが、どの程度の材料を切削すべきかという点です。転写された塗装の量を、材料の切削量へ数十ミリ単位で換算することは可能だと思いますか? 「基本的には定性的な解析を行います」とロタ氏は説明します。「0.05ミリづつ切削しながら、都度確認を行ってゆくのです。トライ&エラーを繰り返すため、バインダー部分のスポッティングだけでも1週間かかる場合もあります。ビード半径も設計やシミュレーション通りに再現しなければなりません」 「バインダーをスポッティングできたら、次は金型の作業に移ります。手順はほとんど変わりません」 必要な工数は、まず顧客の要求、次に部品の種類や大きさによって異なります。さらにロタ氏は次のように述べています。「アウター・パネルの場合、美観が損なわれないよう、通常は金型とシートの部品領域が接触しないように配慮しています。ただしスタイルラインだけは例外で、完全な接触が不可欠です。インナー・パネルでも、全領域を完全に接触させることで、部品の剛性を担保するために必要なすべての部位をきちんと成形しています」 「さらに、底付き時のわれも考慮しなければなりません。われが生じる場合、1つ前のタイムステップで接触確認を行い、われが発生するタイミングを特定します。これはもちろん、金型をスポッティングすることで、われを解消できるという前提があるからです。この作業は、お客様から承認をいただく前に行う場合もあります」 興味深いことに、ロタ氏によると、インナー・パネルのダイスポッティングには、アウター・パネルよりもはるかに長い時間がかかるのです。 「カット金型やフランジ金型には時間を要します。トリム金型の場合は、トリムラインに隣接するパッドの部分をスポッティングしますが、フランジ金型では、フランジに隣接するパッドの部分をスポッティングします」この部分の接触が完璧でないと、シートが動いてしまい、シートの切断時にバリ(シートが切れずに破れること)が発生する恐れがあるからです。 図3 - トリム金型パッドのスポッティング領域(インナー・パネル) スポッティングする領域の大きさについては、「インナー・パネルかアウター・パネルかによっても異なります。インナー・パネルのパッド幅は通常15~20mmですが、アウター・パネルの場合、パッドを閉じる際に加わる荷重から面ひずみが生じないよう、パッド幅は通常30mmと、より大きなものが使われています」 図3、図4は、インナー・パネルとアウター・パネルについて、スポッティングしたパッド領域の違いを示しています。 図4 – トリム金型パッドのスポッティング領域(アウター・パネル) 図4では、シートについたパッドの跡が許容範囲を超えていることにお気づきかと思います。 フランジ金型の場合、パッド領域は常に大きくなります(30mm以上)。これは、フランジの加工荷重が大きいためで、特にカムを使用する場合は、動きや変形を避けるために、パッドに高圧力をかける必要があるからです。 図5 - フランジ金型パッドのスポッティング領域 図5は、フェンダー・ホイールとフロント・ランプ部分のスポッティングを示しています。この部分にパッドの跡が残ってしまうと、最終品質が担保されません。フロント・ランプは歪み防止のため、30mmより少し大きくスポッティングしています。「これが必要な解決策の場合は、お客様と相談しながら進めていきます」とロッタ氏は断言します。 当然ながら、このような熟練の技を伴う作業には、細心の注意が必要となります。金型のスポッティング(4つの作業)には4〜5カ月、場合によってはさらに長時間を要する場合もありえます。 工程について明確なイメージを持っていただいたところで、次の問題は、バーチャル・スポッティングによって、どのような手作業の削減が可能になるかという点です。また、切削機の公差やシミュレーション設定などの制約を考慮した場合、どのプロセス・シミュレーションの結果を切削面に反映させるかを判断しなければなりません。 「品質の良いスポッティングには、金型の切削が肝心です」と、ロタ氏は冒頭で述べています。では、どのように切削面を整えているのでしょうか。 図6 – 板厚のばらつきをシミュレーションで算出し、切削面の準備で使用 「採用した戦略では、スポッティングに関与する面にオフセット(オーバーマテリアル)を適用し、CADの基準面に直接関連付けています」とバルセッキ氏は述べています。「残念ながら、オフセットでは板厚のばらつきを考慮する必要があるため、スポッティングした領域を一定にオフセットすることはできません。切削機に送り出すサーフェスの最終品質を考慮しなければなりませんが、板厚のばらつきをCADサーフェスへ自動的に直接転送する手段があれば、スポッティングに要する時間を短縮できて理想的です」と説明しています。 板厚のばらつきを金型サーフェスに反映させ、手作業によるスポッティングを最小限に抑えるには、どのような手段があるのでしょうか。 この問題については、バーチャル・スポッティングの特集記事にて、今後紹介してゆく予定です。 - [デジタル・エンジニアリングとその妥当性確認](https://japanforming.com/デジタル・エンジニアリングとその妥当性確認/) - 技術進歩が著しい今日の製造業では、プロセス・チェーンのステップに沿って業務を円滑かつ効率的に進めるために、多くの企業がソフトウェア・ツールを活用しています。しかし業務に適したソフトウェア・ツールがない場合や、業務を外部委託する場合などは、業務効率や業務フローがボトルネックとなる可能性があります。ソフトウェア・パッケージの中には、特定のプロセス・ステップのみをサポートするものや、他のパッケージとの互換性がないものがあります。一度、現在お使いのソフトウェアを評価してみるのはいかがでしょうか。そのソフトウェアの利点や欠点は何でしょう?業務の完了を促進し、製品設計から部品生産、さらには、必要に応じてアセンブリまでスムーズに進んでいますか?また、そのソフトウェアは効率的で、正確で、使いやすいですか? 業界を代表するソフトウェア・ソリューションは、常に最新技術が取り込まれ、さらには継続的に開発が行われている場合において、企業が必要とするプレス成形、トライアウト、アセンブリのプロセスを完全に支援できます。このようなソリューションがあれば、プロセス・チェーンのほぼ全段階をシームレスに進めることができます(詳しくはウェブサイトのオートフォームの技術革新(autoform.com)をご参照ください)。。これは、製品開発の初期段階におけるフィージビリティ検討から始まり、部品生産に至るまでの各段階にて、エンジニアの業務をサポートします(下図参照)。 製造プロセス・チェーンにおける積極的な活用と各段階をサポートするソフトウェアにより、企業は継続的なフロントローディングの手法を確立できます。この手法について簡単にご説明します。たとえば、製造工程で材料の板減やわれ、スプリングバックといった不具合が発生した場合、製造部門ではこのような不具合を解消する過程で、エンジニアリング部門に相談することが多くあるかと思います。もしエンジニアリング・プロセスをサポートするソフトウェア・ツールから、製造現場で必要な情報を得られるのであればどうでしょうか?製造現場からエンジニアリング部門に対して、不具合を解消するための相談をする必要がなくなれば、それは大きな資産となります。組立工場で部品のアセンブリを行う前に、アセンブリに関する問題を予測および評価できるのであれば、どうでしょうか?トライアウトとアセンブリをサポートするソフトウェア・モジュールによって、企業はシームレスなプロセス・チェーンを実現できます。 オートフォーム社が提供するトライアウトを支援するソフトウェアを活用すれば、エンジニアリング・プロセスで実行したシミュレーションの履歴から、どのような変更が行われたかを確認できます。それをもとに調整を行えば、製造プロセスで発生した不具合を解消することも可能になります。アセンブリする部品によっては、部品単体の段階とはスプリングバックが異なり、アセンブリ工程でスプリングバックが変化する場合がありますが、これもアセンブリのシミュレーション・ソフトウェアで予測や修正ができます。オートフォーム社ではトライアウトとアセンブリのソフトウェア・モジュールを提供し、プロセス・チェーンで発生する問題を解決するためのより積極的なアプローチを取るのに役立ちます。基本的なところでは、プロセス・チェーンに関与する部門間のデジタルな情報共有およびコミュニケーションを促進することで、より健全で効率的なプロセス・チェーンの構築をサポートします。 下の画像は、トライボロジー、トライアウト、BiWアセンブリをサポートするソフトウェア・モジュールを示しています。 比較的規模が小さい金型メーカー、あるいは大企業のOEMであっても、あらゆる要件に対応でき、必要に応じて将来の成長にも寄与するソフトウェアを活用すべきです。今日のソフトウェア技術を活用すれば、企業がボトルネックや継続的な障害に直面する必要はありません。またソフトウェアを操作するために博士号を取得する必要もありません。ソフトウェア・ベンダーは、お客様の時間、材料、コスト削減のサポートに全力を尽くします。 AutoFormのソフトウェア・モジュールや機能に関する情報は、こちらをご覧ください。 プレス成形とBiWアセンブリ分野のソフトウェア・ソリューション 米国オートフォーム社 シニア・アプリケーション・エンジニア マット・クルイトフ - [BiWアセンブリのDX化~新たなアプローチ"VARプロセス"とは~](https://japanforming.com/biwアセンブリのdx化/) - 過去のニュースレターでも何度かご紹介してきたAutoForm Assemblyソリューションですが、今回はAutoForm Assemblyを使った新しいアプローチ:VARプロセス(バー・プロセス:詳細は下記)をご提案いたします。 唐突ですが… 現在のBiWアセンブリへの取り組みは、プロアクティブとリアクティブのどちらだと思いますか? “プロアクティブ” トライアウト時の問題を最小限にするために、 結果を予測・シミュレーションし、プロセスを改善する。 OR “リアクティブ” トライアウトを待って、その結果に基づいて 工程や部品を調整する。 もしプロアクティブな取り組みが必要な場合、どんなツールとアプローチが必要なのでしょうか? 私たちの答えは、AutoFormとVARプロセスです。 * VARプロセスとは 図1のフード・コンポーネントを使って、現在の典型的なアプローチとここでご紹介するVARプロセスの概要と違いをご説明いたします。VARプロセスは、プレス単品の公差保証ではなく、BiWアセンブリ・コンポーネントの寸法精度が公差内に入るような目標形状を工程検討段階で新たに定義することで、より早く、低コストでプレス成形とBiWアセンブリ工程を仕上げることを可能にするものです。 図1. 工程検討 – フード・コンポーネントの見込み戦略 まずは、図1のa. 現在の典型的なアプローチで何が起こっているかを分析してみます。ここでは寸法精度が公差内に収められたフード・アウター・パネル、フード・インナー・パネル、インナー・パネルの補強部品2つの計4部品があります。プレス成形担当者としては目標を達成しているケースです。しかし、BiWアセンブリ工程で補強部品をフード・インナー・パネルに接合し、アウター・パネルにヘミング後、アセンブリ後の公差内に収まらない結果になりました。…なぜでしょうか?その原因として、次の2点が考えられます。 自重の影響:コンポーネント内のすべての部品重量が寸法測定治具上に負荷され、自重を負担するインナー・パネル部品に作用した。 工程の影響:スポット溶接などの接合工程とヘミング工程で生じる応力が寸法精度に影響した。 などがあります。これらの要因への対応策として、以下が一般的です。 アセンブリ後の変形を考慮した部品形状の決定。 アセンブリ工程の修正。 通常、これらの問題は実際にBiWアセンブリ工程のトライアウトを行うまで発見することができない上に、現場でさまざまな選択を迫られることになります。ヘミング前の部品の接合状態を調べて部品のクランプ条件を修正したり、ヘミング工程を調整したりします。それでも問題が解決しない場合は、部品形状を補正して精度を上げるしかありません。フード・コンポーネントでは、通常インナー・パネルが形状補正の対象になります。しかし、どのような部品形状にするのが良いのでしょうか?それをどのように決めれば良いのでしょうか?これまでの経験やノウハウ、試行錯誤の組み合わせを用いて、なんとかモノにすることになりますが、この“従来の方法”では“時間とコスト”がかかってしまいます。 そこで、AutoFormの新しいアプローチである、 VARプロセスの出番です。図1のb. VARプロセスをご覧ください。4つの部品それぞれのシミュレーション結果を活用して(*シミュレーション結果がない部品はCAD-0データを使用します)、AutoForm AssemblyでBiWアセンブリ工程をシミュレーションします。予想通り、寸法精度が公差内に収まらない結果になりました。そこで、下記の手順で工程検討します。 どの部品の形状補正をするかを、AutoForm Assemblyを使って決定する。 1.で決定した部品の、新しい目標形状をAutoForm Assemblyで決定する…これが、バーチャル・アセンブリ・リファレンス(Virtual Assembly Reference):VAR さらに、AutoForm Formingを使って部品形状を得るためのプレス成形工程で、金型の見込み補正作業を行う。 この新しい目標形状を他の部品とアセンブリすることで、フード・コンポーネントの寸法精度が公差内に収まり良い結果となります。BiWアセンブリ工程を考慮したこの新しい目標形状:VARを活用することで、より早く、低コストのプレス成形とBiWアセンブリ工程を仕上げることができます。これはコストがかかる現実世界ではなく、バーチャル世界のソフトウェアによるエンジニアリングでのみ実現可能なものと考えております。 *BiWプロセス・チェーンにおけるVARプロセス AutoForm Assemblyは初期段階のフィージビリティ・スタディ、プロセス・エンジニアリング、BiW量産までのBiWプロセス・チェーン全体をサポートします。BiWアセンブリ工程にAutoFormソリューションを導入することで、車体製造工程を深く理解し、部品公差やアセンブリ工程設計を迅速に評価し、寸法偏差の要因を特定することができます。また、効果的な対策を取っていくための検討を効率的に行うことができます。その結果、BiW全体の寸法精度を達成することができます。 図2. BiWプロセス・チェーン 図2のプレス成形とBiWアセンブリの間にある赤いゾーンでは、何が行われているかを考えてみます。プレス成形の領域で行われているタスクと、BiWアセンブリの領域で行われているタスクがあります。これは、関連するプロセス・チェーンの中で、異なる担当者が異なる仕事を行う可能性があることを意味しています。各部門やシステムがそれぞれ自己完結し、部門やシステム間の連携がうまくいかないサイロ化(図2左下)の状態になると、業務効率の低下、意思決定スピードの鈍化、不要なコストの発生など、多くのデメリットがあります。システムのサイロ化解消には、データ統合による一貫したデータ・マネジメントが必要です。また、ここでご紹介しているVARプロセスで最大限の効果を得ていただくためには、以下の条件が必須と考えています。 部品にフォーカスする 良好なコミュニケーション コラボレーション ここからは、現在のワークフローでは得られない有益な情報を、VARプロセスを使ってどのように得るかを考えていきたいと思います。 図3. CAD-0データを用いたBiWアセンブリ工程のフィージビリティ・スタディ・シミュレーション できるだけ早い段階で、工程のロバスト性が担保された実現可能なプレス成形工程のシミュレーションを、プレス成形担当者から引き継ぎます。プレス成形部品のシミュレーション結果を得ることで、材料成形時に発生する応力やひずみが含まれた、より現実に近いBiWアセンブリ工程のシミュレーションを実施することができるようになります。図3の通り、BiWアセンブリ工程のフィージビリティ・スタディでは、CAD-0データを用いて検証したプロセスが機能するかどうか、具体的には部品間の力やギャップが適切かどうかを確認します。また、最終的なコンポーネントの寸法精度が公差内に収まっているかを確認します。もし結果が思わしくない場合には、BiWアセンブリ工程のクランプ条件、接合、ヘミングを調整することで、結果が改善されるかどうかを確認する必要があります。それらの調整でうまくいかない場合には、プレス成形部品の形状補正について考える必要があります。 - [6000系および7000系アルミニウム部品の新たな熱間プレス成形ラインと金型: ファゴール・アラサテ社の取り組み](https://japanforming.com/新たな熱間プレス成形ラインと金型/) - スペイン、ファゴール・アラサテ社提供 自動車部品の軽量化は、低燃費や環境保全といった要望に応えるための最優先課題です。戦略的に安全を考慮した自動車部品の材料に熱間プレス成形の鋼材が選ばれる傾向にある中、比強度が高く低密度の6000系および7000系アルミニウム合金に注目が集まっています。しかしこれは軽量化が期待できる反面、鋼材に比べて成形が難しいという問題があります。成形温度が高い熱間プレス成形を用いることで成形性は向上しますが、熱処理ができるアルミニウム合金の場合、溶体化熱処理(SHT)、焼き入れ、時効硬化を含む熱サイクル内で成形工程を行わなければなりません(図1)。通常はチルド金型を使用して、成形金型内で焼入れ工程と組み合わせて一度に成形します。 図1:熱処理できるアルミニウム合金の熱サイクル しかしアルミニウムの熱間プレス成形には課題が山積しており、信頼できるプロセス開発を進めることが難しい状況にありました。そこでモンドラゴン大学と、熱間プレス成形ラインのサプライヤであるファゴール・アラサテ社、そして金型メーカーのBatz社が共同プロジェクトを立ち上げ、高強度アルミニウム合金を用いた自動車バンパー部品の熱間プレス成形の準工業的なトライアルを実施しました。このトライアルを通じて、各工程パラメータの役割を理解し、金型設計の基準を確立できただけでなく、顧客の仕様に応じてさまざまなアルミニウム熱間プレス成形ラインのレイアウトを定義することが可能になったのです。 使用事例および設備 このプレス成形のトライアルは、ボロン鋼の熱間プレス成形に用いる金型を改良して行われました。この金型はもともとパッシブセーフティ技術の基幹部品であるリアバンパーの製造用として作成されたもので、板厚2.3mmのプレス硬化鋼(USIBOR 1500)の熱間プレス成形に対応しています。本件ではアルミシートAA7075とAA6083の板厚として、金型サーフェスを公称ギャップ3mmで加工するため、金型の調整を行いました。自動車メーカーの機械的および形状的な条件を満たし、同時に軽量化も実現できるアルミニウムのバンパーの製造に使用するのです。以下に再調整の手順を説明します。 板厚3mmのバンパーの古い3Dサーフェスを、3mmのバンパーの新たな3Dサーフェスにクローンします(図2)。 AutoFormを使い、3mmアルミニウム合金バンパーの熱間プレス成形をシミュレーションし、最適な金型サーフェスを生成します。 金型工場のトライアウトにてサーモグラフィの調査を行い、急冷効果が高いサーフェス形状へ最適化します。 最適化した新たなサーフェスに合わせて、古い金型サーフェスを加工します。 新たな形状に合わせて、すべてのフィーチャーを再調整します(プレート、プレスベンチ、トランスファ・フィーダーの爪、シート・サポーター...)。 金型のアセンブリを行い、最終部品の品質に達するまで、ダイスポッティングの成形トライアルを実行します。 図2:2.3mmのボロン鋼と3mmのアルミバンパーの比較 トライアルはBatz社にて、HOTTEKNIKが設置された施設の熱間プレス成形ラインで実施しました(図3)。このラインにはファゴール・アラサテ社が特許を取得したサーボ機械式ホットプレス、オートフィード・システム、マルチレベル炉が備わっています。このラインは鋼材の加工硬化用に設計されているため、フィード・システムなどの周辺機能をアルミニウム合金用に調整しました。 図3:世界初のサーボ機械式ホットプレスを搭載した熱間プレス成形ライン FEMシミュレーションとセットアップ 高精度なFEMシミュレーションのモデルを作成するには、材料と工程の特性評価を詳細に行い、それを入力パラメータとして設定する必要があります。モンドラゴン大学研究所とBatz社の施設にて、以下の試験および測定を行いました。 ・GOM Atosソフトウェアを用いて加工した金型サーフェスを3Dスキャンし、モデル化します(図4)。スキャンしたサーフェスのデータはAutoFormへ直接インポートし、シミュレーションの結果からより正確な接触分布を取得します。 図4:GOM Atosを用いた金型サーフェスの3Dスキャン ・機械的特性評価: 硬度、引張試験、エネルギー吸収能力の試験を行います。 ・20~550 ºCの熱物理学的特性評価: 密度(膨張率測定)、熱容量(DSC、 示差走査熱量測定)、拡散率(レーザーフラッシュ法)、最後に導電率を測定 します。 ・準静的な0.001 s-1から10 s-1までの様々なひずみ速度における20~550 ºC の熱力学的特性評価 ・0MPaから35MPaの圧力におけるアルミニウム-空気およびアルミニウム- 金型間の熱伝達係数(HTC)。 ・摩擦係数:乾燥状態および湿潤状態でホットリング試験を行い、摩擦係数を 算出します。 ・干渉法による光学式プロフィルメーターでアルミシートのサーフェス・ トポロジの特性評価を行います。また再調整した金型の粗さも、樹脂を用いた 複製手法で測定します。 ・さらに、プレス速度とストロークも、上下の金型表面間に設置したドロー ワイヤー変位センサーで計測し(図5)、実際の動作をシミュレーション・ モデルで使用します。 図5:ドローワイヤー変位で測定したプレス運動量 すべての入力データをFEMモデルへインポートした後、AutoFormのシミュレーションで成形性の不具合を予測しました。図6(左)に見られるように、AutoFormの塑性ひずみと板減の結果から不具合領域が特定されたのです。ラインのセットアップ時に初回部品を熱間プレス成形すると、シミュレーションの予測と同じ領域でわれが生じました(図6、右)。 図6:AutoFormで予測した塑性ひずみ場の結果(左)、最適化せずに成形した初回のバンパー(右) 良好な機械的特性と正確な形状公差を同時に満たす熱的条件を維持しながら成形性の不具合に対処するために、工程パラメータを修正しました。モンドラゴン大学博士課程で実施されたアルミニウム合金の熱間プレス成形に関する研究から得られた知見をもとに、炉内温度と均熱時間(SHT温度と時間)、フィーダーの搬送時間、成形速度、潤滑タイプ、潤滑量と分布、プレス荷重、急冷時間などに変更を加えたのです。試験片がわれずに成形されるように工程パラメータを修正すると、熱間プレス成形ラインで最適化試験を行う準備が整いました。 ライン最適化のトライアル 最適化試験では、熱監視および画像確認によるモニタリングを行いました。以下の戦略をもとに、シートの熱サイクル全体を追跡したのです。このライン設定ではフィーダーの移動があるため部品に取り付けた熱電対が使用できないため、プレスベンチと加熱炉テーブルでそれぞれフレーミングした高解像度FLIR(図7、dとe)およびOPTRIS(図7、bとc)のサーモグラフィを使用しました。非接触で正確に温度を測定するために、表面温度や視野角、そして潤滑、乾燥、コーティングなどのプレカット条件に応じてサーフェスの放射率を調整しました。金型内の焼き入れ工程での冷却は、下型の最重要ゾーンに戦略的に取り付けた接触型熱電対を用いて追跡しました(図7、a)。これでほぼすべての熱サイクルを記録することが可能となったのです。 プレスの動作はドローワイヤー変位のセンサーで測定し,変位とプレス荷重はサーボ機械式プレスから直接エクスポートしました。 図7: a) サーフェスに熱電対を取り付けたアセンブリ後の金型、b)およびc) SHT前後のアルミシートのOPTRISサーモグラフィ画像、d)およびe) - [プレス成形金型における局所的な粗さの影響](https://japanforming.com/プレス成形金型における局所的な粗さの影響/) - 薄板プレス成形プロセスの数値シミュレーションは、いまや業界必須のツールです。そして複雑な摩擦挙動は、予測精度を左右する重要な要素ですが、一般的にシミュレーションでは、金型全体に一定の摩擦係数が適用されています。また摩擦挙動に対する金型の粗さ分布の影響も考慮されません。最近の研究では、モンドラゴン大学が、高度な摩擦モデルで金型の局所的な粗さの影響を評価し、成熟した先進的なプロセスの検証を行う新たなモデルとしてTriboZoneを提案しています。 この研究では、自動車部品の深絞りの数値シミュレーションにおいて、金型の局所的な粗さがどのような影響をおよぼすかについて、評価を行いました。そして局所的な粗さの影響を考慮することが有効であるかを検証したのです。 モンドラゴン大学では、まず一般的なデータを収集すべく、25種類以上の産業用金型を用いて、190以上の測定点の粗さを測定しました。各金型は、その形状、特徴、局所性に応じて3つの有効領域に分割しています(図1)。 図1. 金型の領域ごとに測定: (a) 外側の平坦な領域、(b) 内側の平坦な領域、(c) 半径領域 分析した一般的な表面領域から、表面特性を平均の面粗さ(Sa)、線粗さ(Ra)、表面の山から谷までの最大距離であるSz/Rzで表します。この測定値を用いて、TriboForm Analyzer®で対応する金型の表面粗さを定義し、TriboForm摩擦モデルを作成しました(図2)。 図2. 3つの調査領域で測定した平均粗さ(Sa/Ra)と最大高さ(Sz/Rz) 3つの深絞り部品に4つの異なる摩擦モデルを割り当て、成形性を比較することで、その潜在的な影響を確認しました(表1)。図3が示すとおり、ベンチマークの金型設計はすべてドロービードでモデル化しています。そのため材料の流れはブランク拘束領域の摩擦とドロービードの両方によって拘束されます。これが絞り工程とロバスト性をコントロールするのです。 図3. 選択した産業用ベンチマーク: a) アルミフェンダー、b) スチールドアインナー、c) スチールフェンダ― 表1: 摩擦モデル 一定 面圧依存 TriboForm TriboZone 従来型0.15/0.12 面圧依存 摩擦係数 産業用として検証済 TriboFormモデル 局所的な粗さに依存する TriboForm強化モデル 図4. FLCとひずみポイントを4つの摩擦モデルで表したベンチマーク部品のFLD 図4は、成形性­に対する摩擦モデルの影響を示しています。この調査で確認された一般的な傾向として、一定摩擦のモデルを用いた場合、他の3つのモデルよりもより高い制限が予測されました。面圧依存モデルを用いると、制限が若干緩和されます。しかしTriboFormやTriboZoneを使用した場合には、より大きな差異が生じ、制限は緩和され、2つのケースでのみ不具合が予測されたのです。この結果と4つのモデルすべてを実装した場合のコスト効率を考慮すると、フィージビリティの検討にはTriboForm摩擦モデルを推奨します。局所的な粗さの影響は中程度であるため、成熟したプロセス最適化(検証)を行う段階では、局所的な粗さを考慮すべきであることが示唆されています。引き続き次の調査では、この調査結果と産業用実験データをもとに、その影響の比較を行う予定です。 本調査の報告書: Numerical study of advanced friction modelling for sheet metal forming: influence of the die local roughness (https://doi.org/10.1016/j.triboint.2021.107259) 調査メンバー: - [イタリアのフォンタナ・グループがオートフォームアセンブリ・ソリューションを活用してBiWアセンブリの手法を刷新](https://japanforming.com/biwアセンブリの手法を刷新/) - 序論 自動車製造業界では、部品を組み立て、基本構造を完成させる製造段階をBiWあるいはホワイトボディと称します。この部品を組み立てるアセンブリ工程の代表的な工法には、溶接、リベット、ロウ付け、ヘミングなどがあります。完成したボディは、塗装工程を経て、最終的な組み立てが行われ、完成車となります。 アセンブリ工程では、部品を設計通りに組み立てることができない不具合が頻繁に生じます。たとえば、設計通りに作成した金型で公差に収まる単一部品を製造しても、これらを組み立てる際に部品同士がうまく嵌らない場合があるのです。このような不具合に対応するには、アセンブリ工程を調整するか、あるいは金型形状を修正して、部品のプレス成形シミュレーションをやり直す必要があります。専門知識や熟達した技能を有するエンジニアであっても、実用的な解決策に至るまで、多くの場合、何度もトライ&エラーのループを重ねなければなりません。これはコストがかさむだけでなく、時間の浪費にもなります。 本稿では、イタリアのフォンタナ・グループがオートフォーム社のアセンブリ・ソリューションの活用を通じてトライ&エラーのループを排除し、デザインの迅速な最適化と市場投入までの時間短縮に成功した事例をご紹介します。 アセンブリ・シミュレーションの現状 20年強の期間を費やし、単一部品のプレス成形シミュレーションは飛躍的に進化しました。しかしアセンブリ・シミュレーションは事情が異なります。オートフォーム社はBiWアセンブリ・シミュレーションの市場調査を行い、2つの見解を導き出しました。 BiWアセンブリ分野のシミュレーション・ソフトウェアは性能が不十分であり、作業工程を効率的にモデル化できていません。 新車種リリースのコスト削減と市場投入までの時間短縮を促進するシミュレーション・ソリューションの需要が高まっています。 数十社に及ぶ自動車業界のお客様への調査から、現状のシミュレーションを活用したソリューションと製造現場のアセンブリ工程を比較検証したところ、シミュレーションの精度が十分でないことが明らかになりました。そのためアセンブリ工程の最適化を目的としたシミュレーション・ソフトウェアを利用しているお客様は、ほとんど皆無であることも判明しました。 BiWアセンブリの重要な要因を解析できるソリューションは、溶接の品質保証を目的としたものがほとんどです。適用荷重や治具などを評価できる反面、適用できるのは基準CAD形状のみです。 実際の製造現場で生産されたプレス成形部品では、残留応力やひずみが生じ、あるいは板厚が不均一となる場合もあります。また自重の影響だけでなく、アセンブリ工程そのものが、最終アセンブリの品質に大きく影響する場合もあります。 検証チームの発足と検証目的 オートフォーム社はフォンタナ・グループと提携し、効果的なソリューションの開発および検証に着手しました。フォンタナ・グループはアルミニウムの取扱いに65年以上の実績があり、3カ国11工場に1200人以上の社員が従事しています。高級車やスポーツカーの生産技術、金型製作、薄板部品のプレス成形(Fontana BLOW工法を含む)、アセンブリ分野を世界的に牽引し、フェラーリ、ロールスロイス、ランボルギーニ、マセラティ、アストンマーティン、アルファロメオ、ジャガー・ランドローバー、ダイムラー、フォード、アウディ、BMW、フォルクスワーゲンなど、世界有数のOEMの戦略的パートナーとして活躍しています(出典: https://www.fontana-group.com/en/)。 図1に示すように、オートフォーム社ではロバストなソフトウェア・ソリューションを構築する上で、フォンタナ・グループから業界の専門的知見およびプレス成形やアセンブリの工程に関する経験的知見を含むさまざまな情報提供を受けました。そして両社は、製造工場で扱う部品やその制約条件、アセンブリの順序に関わる計算をすべて処理できる信頼性の高いソフトウェア・ソリューションの構築という共通目標を掲げたのです。 図1: オートフォーム社アセンブリ・ソリューションを活用したフォンタナ社アセンブリ-ヘミング工程例 (画像提供: フォンタナ・グループ) 目標達成における重点分野 オートフォーム社では、適正な工程を妥当な精度でモデル化できるソフトウェアを構築すべく、3つの重点分野を特定しました。 まず、ソフトウェアは適用するアセンブリの全工程を網羅しなければなりません。BiW溶接などのアセンブリでは、部品ごとに正確な位置決めと拘束を行いますが、これは手作業またはロボットで実行します。そのため最終のアセンブリに必要な治具および金型と工程関連要因もソフトウェア上で表現する必要があります。 次に、部品、金型、治具のすべてを適用しアセンブリ工程を実行しますが、できるだけ製造現場の工程に近い形とすることを目標としました。この段階で効果的なモデルを構築することができれば、それがソフトウェアの付加価値となり、お客様の購入意欲を高めることができます。 最後に、図2が示すとおり、最新の製造/アセンブリ工程に対応したあらゆるテクノロジーやプロセスを取り入れ、どのような工程にも柔軟に対応できるモデル化の構築を試みました。また、バーチャル解析をくまなく実行するには、スプリングバック、公差の積み重ね、接合順序、自重、ヘミングの影響、部品の位置決めから生じる不具合を特定できなければなりません。また工程最適化を行う上で、工程パラメータ、金型、アセンブリ順序の修正における柔軟性も重視しました。 図2: アセンブリが複雑な構成部品のシミュレーション ソリューション開発のロードマップ オートフォーム社では、開発のマイルストーンを設定後、それを確実に遂行できる開発計画を立て、「工程開発」と「アセンブリ検証」のフェーズを定めました。 ・工程開発 初期段階では、実際の部品や工程、アセンブリをモデル化できるソフトウェアの開発を中心に行いました。プレス成形したシートだけでなく、シートに接合するチューブ、鋳造部品、押し出し材、複合材といったボディ部品のモデル化も開発を進めました。 開発当初から複雑な工程を扱うことはできなかったため、形状が簡素な部品から始めました。またプレス成形シミュレーションのデータがなかったので、基準CAD形状を適用しました。まずはこのデータでシミュレーション工程を設計し、プレス成形シミュレーションによる正確なデータを入手できた時点で、初期のデータと置換したのです。このシミュレーション・データを適用したことで、残留応力、板減、スプリングバック、材料のばらつき、形状の修正などの要因を考慮できるようになり、アセンブリ・シミュレーションの精度がより高まりました。 ・アセンブリ検証 開発の後期段階では、シミュレーションと製造現場のアセンブリの比較検討を中心に行いました。オートフォーム社では実際に金型開発や部品製造を行う部門はないため、プレス成形やアセンブリに精通した技術力を有し、また評価用の部品やアセンブリを提供できる企業と提携することが、プロジェクトの成功に欠かせない重要なポイントでした。そこでオートフォーム社はイタリアのフォンタナ・グループと提携し、同社の工場で生産しているフードのアセンブリで評価を行いました。 フードを測定治具に置き、詳細な精度報告書を作成し、また部品の外面のスキャンも行いました。嵌合部品付近のアセンブリ精度が特に重要なため、フードのグリル、ウィンドウ、フェンダー部分を重点的に測定しました。 図3に示すとおり、実際の工程は複雑で、内側部品を組み立てる3つのアセンブリ・ステーションと、外側部品と内側部品を接合するヘミング工程で構成されています。ここでは機械的工程のみを検討し、熱の影響は割愛しました。またシミュレーションでは、基準CAD形状ではなく、プレス成形シミュレーションの結果をインプットとして使用しました。 図3: フードのアセンブリ工程図 比較の結果、ソフトウェアの結果は最終アセンブリの測定値と一致し、シミュレーションと実際のアセンブリの差異はわずかコンマ数ミリ以内であることが判明しました。これでソフトウェアが実際のアセンブリの特性を高精度でシミュレーションできることが証明されました。基準CADデータをプレス成形シミュレーションのデータと置換するという判断によって、シミュレーションと製造現場の結果を一致させることができたのです。 結論 自動車開発においては、生産開始前にさまざまなシミュレーションで事前検証を行うことが大きなメリットを生み出します。アセンブリを円滑に進めるために、部品設計の微調整に長時間を費やしたご経験をお持ちのエンジニアのみなさまには、アセンブリ・シミュレーションのソリューションがいかに重要であるか容易にご理解いただけるかと思います。このアセンブリ工程の検討は、大手自動車メーカーの工場ですらほぼ人間の手を介して行うことが大半であり、膨大なリソースの無駄遣いとなっています。 オートフォーム社のソリューションを活用することで、新製品のみならず、すでに生産中の製品のシミュレーションと最適化を効果的に実行できます。また最終アセンブリが仕様を満たすまで、さまざまな反復作業を柔軟に行うこともできます。その結果、自動車開発および生産工程を、より短時間で効率よく進めることが可能となります。 このプロジェクトの詳細は、今年後半に開催されるカンファレンスで発表予定です。オートフォーム社のBiWアセンブリ・シミュレーションをぜひご活用ください。 末筆ではございますが、オートフォーム社ではこの有意義なプロジェクトに全面的にご協力いただいたフォンタナ・グループに心から感謝の意を表します。 - [製造プロセスにおけるデジタル・プロセス・モデルの重要性](https://japanforming.com/デジタル・プロセス・モデルの重要性/) - デジタル・プロセス・モデルとは、その言葉通り、プレス成形の製造プロセスをデジタルで再現したもので、材料カード、金型形状、工程、工程で実行する操作、ブランク、検査治具などのコンポーネントで構成されます。これらはシミュレーションの実行に欠かせない構成要素であり、またそこからシミュレーションを評価するために必要な結果変数が提供されます。 ではこのデジタル・プロセス・モデルはなぜ重要なのでしょうか?金型業界には特有の文化として、問題に対するアプローチが後手に回る傾向があります。そのため長年金型に携わっている筆者は、何か不具合が生じるたびに工数やコストをかけて対処していました。しかしツールを利用し始めてから、潜在的な不具合を事前に予測して対策を講じることができるようになったのです。その結果、バーチャル環境を積極活用し、現場で対応するよりもはるかに低いコストで不具合を処理できるようになりました。 上流エンジニアリング工程のデジタル・プロセス・モデル デジタル・プロセス・モデルを定義するには、実在する物体(最終部品)、ソフトウェアの形式(シミュレーション)、そしてその2つを結びつけるデータ(結果)が必要となります。さらに設定項目と結果の個別照合を行い、データのリンク(マッチング)を付加すれば、モデルの有用性はさらに高まります。またAutoForm正確度指標のコンセプトを効果的に活用して、モデルを検証することもできます。 以下にデジタルによる部品検収のプロセス・モデルを作成する手法を紹介します。この手法は、正確度指標が提唱する8つの項目を遵守しています。これが正確なプロセス・モデルを作成するための基盤となります。 1- 全製造プロセスにおいて金型形状を設計の通り正確に再現する『形状指標』 ドロー金型 CADなどのソフトウェアで形状を作成する場合でも、サーフェスとパンチ開口部は正しい姿勢で再現します。 材料の収縮(ヤング率-引張弾性率)を考慮して、ドロー金型を拡張(スケーリング)します。 ドロービードを最適化して、塑性ひずみをなるべく均等に分散させます。 ライン金型 トリム金型の製造工程を設計通りに再現します。下側ポスト、上側パッド、トリム刃、スクラップカッター、パイロットの位置なども同様です。 フランジ金型や2次工程についても、製造工程の設計通りに再現します。機械のクリアランスに組み込むワイピングやアイロニングも同様です。 2- 材料を正確に定義する『材料指標』 プロセスの設定条件の中でも材料特性は特に重要です。材料定義に150ドル(約21,000円)を投資すれば、研究所が引張試験を実施し、材料特性の最,新データをわずか2日で提供してくれます。さらにシミュレーションで検討するのは成形性だけではありません。プロセス・ウィンドウ(最適な工程条件の範囲)を考慮して、材料特性のばらつきに対する見込み補正やロバスト性の戦略を検討します。 3- 製造基準を遵守した健全な製造プロセスを担保する『プロセス標準指標』 4- 金型とシートの摩擦を正確に再現する『トライボロジ指標』 5- 測定ステーションにてGD&Tの設定を担保する『評価指標』 6- シミュレーションの工程パラメータの標準遵守を担保する『シミュレーション標準指標』 7- 拘束力、ブランク、移動、圧力などの最適化ループを金型設計と製造設備で担保する『材料・形状・金型動作・工程指標』 8- 工程に影響するすべてのノイズ変数を考慮したシミュレーションを実行する『ロバスト性指標』 影響が大きいノイズ変数を緩和します 見込み補正を行い、寸法精度を高めます(Cpの安定後に平均シフト) 見込み補正した形状でCp(工程能力)とCpk(工程能力指数)を再検証します 一般論として、ほとんどのシミュレーションはデジタル・プロセス・モデルの基準を満たしていません。シミュレーションが再現しているのはプロセス・ウィンドウではなくプロセスのポイントであり、あるポイントが検収基準に対してどの位置にあるかを示しているのです。(図1) 図1-プロセス・ポイント この例では、シミュレーション結果はプロセス・ウィンドウに収まっているため、安全圏にあります。しかしポイントが枠内にあればシミュレーションに問題はないと断言できるのでしょうか?答えはノーです。なぜならシミュレーションに与えるノイズ変数の影響を考慮していないからです。 ノイズ変数とは ノイズ変数は潤滑や材料など加工条件のばらつきを表す変数です。設計・製造レベルでは制御が困難または不可能ですが、解析レベルでは制御ができます。ノイズ変数は分布で指定された公称値を持ち、その分布に正確に追従しています。 プロトタイプや生産用金型の製造に長く携わる筆者は、35年にわたり金型製造工場のあらゆる場面に立ち会ってきました。しかし今日ほどプレス成形部品のエンジニアリングと製造の在り方が変わる大きな変革期を経験したことはありません。これは切削機が初めて導入された40年前以来のパラダイムシフトだとも言われています。この大きな変革をもたらすツールについて話を始める前に、まずは製造プロセスに隠れた巨大な「未知数」を認識しておく必要があります。 金型業界の従事者はみなプレス成形金型の設計と製造に何が必要かを熟知しており、その部分にかかるコストを見積もることができます。しかし従来、部品検収の基準(Cpk)である寸法精度と工程精度(Cp)を満たすために必要な時間、手直し、コストまでは考慮しませんでした。そのため金型の納品までに必要な手直しの工数やコストを算出せず、また見積もりに含めることもありません。しかしここに大きなリスクが潜んでいたのです。もし金型の納品前にCpやCpkを担保することに苦慮している方がいらしたら、ぜひ本稿を読み進めてください。一読するに値する内容を掘り下げてゆきます。 本稿で概説するノイズ変数(制御不能なもの)はほんの一部でしかなく、実際には様々なばらつきがお客様のプレス成形環境に存在していることをご理解ください。例えば、自動化が寸法精度に与える影響などもあります。このようなばらつきを特定しロバスト性のシミュレーションで考慮すれば、プロセス全体への影響を分析できますが、どの変数を検討するかはお客様次第です。 ノイズ変数を検討するにあたり、材料特性、摩擦、ブランクの位置などをすべて考慮した「ロバスト性」シミュレーションを実行すると、最適な工程条件の範囲を示すプロセス・ウィンドウが作成されます。(図2) 図2- プロセス・ウィンドウ これは成形性を担当するエンジニアにとって、どのような意味があるのでしょうか。 図2のプロセス・ウィンドウが板減基準を表すものであれば、プロセスのポイントは健全だと判断できます。しかし材料特性がばらつくことによって、約20%の確率で不良が発生することがわかります。 念のために申し上げると、この「不良」(Cp/Cpk)は、成形性またはスプリングバックのどちらであれ、あらゆる結果変数に適用されます。 シミュレーションの結果が当初の予想ほど健全でないことが判明したので、金型の切削を始める前に、この問題に取り組むことになりました。 では、どのような対策を講じればよいのでしょうか。 具体的にお答えすることはできませんが、様々なアプローチを駆使して、プロセスに内在するばらつきに対して包括的に影響を与えることができます。 図3- 包括的なばらつきの縮小(前後) 図4- プロセス・ポイントのセンタリング 読者の皆さんのお考えはわかりませんが、筆者がかつて金型業界の最前線で活躍していた頃にこの事情を理解していたとすれば、これに惜しむことなく投資していたことでしょう。私が携わったのはプレス成形金型の製造のみでしたが、部品が検収されるまでにどれだけのコストがかかるのか、当時はまったく考えが及びませんでした。初回のパネルを測定する際に、この先まだどれだけのコストが必要になるか、ほんの表面部分しか理解できていなかったのです。以下、サッカーを例に説明します。 図5- - [バーチャル環境を活用した金型の検収: プレス金型のコストおよびリスクの軽減](https://japanforming.com/バーチャル環境を活用した金型の検収/) - 2008年にミシガン大学交通研究所がOEMやTire1サプライヤのプレス金型製作部門を対象に実施した調査から、プレス金型のトライアウトに伴う再加工の回数について、次のような統計が発表されています。 当時のプレス金型業界の関係者には、この結果は驚きに当たるものではなく、むしろ、サプライチェーン全体が抱える深刻な問題が数値化されたものだと受け止められました。 この調査では、再加工が必要となる主な要因として、以下が挙げられました。 ドロー型の開発が「不十分」: 限界の安全性、パネルの伸び不足、など。 製品設計の変更 材料の複雑化 プレス部品の寸法規格と外観品質 そして再加工を削減するために常識的に行われている取り組みの「全体像」について、以下を挙げています。 再加工の必要性を削減 - トライアウトの初回パネル評価で、部品の品質目標をクリアできる金型を製造する 不必要な再加工を削減 - アセンブリに大きく影響する部位のみを再加工する 再加工の失敗を削減 - 金型見込み補正の設計目標と、その金型で生産した部品を検討し、再加工すべき箇所を的確に判断する 想定しない結果の回避 – 部品の一部を再加工することが、他の部分に悪影響を及ぼすか(ある問題を解消することで、別の問題が誘発されるか)を確認する 非効率的な再加工の削減 – 物理的な金型の再加工において、事前に指定された量の修正が行われるかどうかを見極める 金型の再加工を削減するために「有効だと思われるツール」と、それに関連するコスト・品質・納期の優先順位について調べたところ、調査回答者から以下のような結果を得ました。 金型プレス成形シミュレーション・ソフトウェアの進化(特に複雑な材料向け) バーチャル・アセンブリ・ツール 3D非接触測定技術の進歩 製造評価プロセスの改善 サプライヤと顧客間のコミュニケーションと信頼関係の向上 この調査が行われた当時から、バーチャル・エンジニアリングとシミュレーションの技術は大幅な進化を遂げ、自動車部品のプレス成形エンジニアリングに広く採用されるようになりました。しかし、今日のプレス金型業界では、コストと納期のリスク軽減の観点において、これらのツールが十分に活用されていないことが、事例として示されています。以下にクラスが異なるパネルのプレス金型について、標準的な再加工の工数を見積もりました。 中型補強パネル – 4工程 最低4回の再加工(通常は7回以上)、1回につき$25k(約¥368万)の再加工コスト フード・インナー/アウター - 4工程 最低4回の再加工、1回につき$ 50k(約¥740万) ボディサイド・パネル - 5工程 最低4回の再加工、1回につき$ 125k(約¥1,840万) そしてこれらのコストには、以下のような要因が絡んできます。 軽量化と乗員安全の観点から材料等級が複雑化 アルミニウム 5xxx、 6xxx AHSS / UHSS: DP、CP、TRIP、.. 薄型ゲージ - [鉄鋼とアルミニウムの相違点:実践レビュー](https://japanforming.com/鉄鋼とアルミニウムの相違点:実践レビュー/) - 多くの企業では、主要顧客に予期せぬ製造上の問題が生じた場合の財政破綻を回避するため、顧客基盤の多様化を図っています。2020年初頭、軽自動車の製造において世界第6位、航空宇宙部品の輸出では世界第12位となったメキシコでは、自動車用薄板部品の製造に長年携わる企業の多くが航空宇宙産業の顧客開拓を試みるなど、事業の多角化計画が進んでいます。航空宇宙産業は、軽量部品、少量生産、そして部品点数の多さが特徴的です。薄板部品に使用される主な金属は主にアルミニウムとチタンですが、メキシコのほとんどの企業では取り扱った経験がありません。 低強度鋼(LSS)や深絞り鋼(DDS)のみを扱ってきた企業がアルミニウム部品を含む新たな事業展開を図るにあたり、本稿では鉄鋼とアルミニウムの明らかな相違点について以下に紹介します。 磁性 ヤング率 ネッキング後の変形能力 ランクフォード係数(R値) ひずみ硬化指数(n値) 拡張真ひずみ-応力曲線の傾き(飽和状態) 絞り工程の変形能力 磁性 鉄の分子構造は常温でBCC(体心立方)ですが、アルミニウムはFCC(面心立方)です。この違いを簡潔に説明すると、たとえば磁石を用いると、鉄は磁力によって強く引き付けられますが、アルミニウムは引き付けられません。このため、材料、コイル、ブランクの取扱いやプレス機の加工センサーに調整が必要となるのです。一例として、鉄鋼を扱う際には材料フィーダーに磁石を使いますが、アルミニウムには磁石を使えないため、ロボットの先端を吸引装置に置き換えなければなりません。 ヤング率 固体材料の引張剛性を測定する機械的特性です。線形弾性領域における引張応力と軸方向ひずみの関係を定量化しています(図1)。 図1. 鉄鋼とアルミニウムの公称硬化曲線における弾性域の相違 この機械的特性はスプリングバックの結果に反比例するため、材質が異なるブランク(鉄鋼とアルミニウム)をそれぞれ同じ金型でプレス成形すると、最終形状に違いが生じます(図2)。アルミニウム部品は、鉄鋼部品よりもスプリングバックが高くなるのです。 図2. 鉄とアルミニウムの絞り加工後の最終形状の比較 ネッキング後の変形能力 近年、ネッキングは絞りパネルの不具合とみなされています。ネッキングはわれの前に生じます。図3によると、鉄鋼の場合、均一伸び(UE)が限界に達しネッキングが発生しても、変形は保持され、均一伸び限界値のほぼ2倍となる場合もあります。一方、アルミニウムでは、均一伸びが限界に達すると変形は保持されません(均一伸び値の10%以下)。 図3. 鉄鋼とアルミニウムにおける公称ひずみ-応力曲線の伸び(E)と均一伸び(UE) ランクフォード係数(R値) R値とも称されるランクフォード係数は、引張試験時の幅方向のひずみと板減の比を表します(図4)。この係数を利用して、材料の絞りにおける表面変形と板厚変形の分布を予測できます。図5で検証したように、R値が減少値を示す場合、薄板表面の変形は板厚方向に集中しています。板増についても同様で、たとえばブランクホルダの下で材料が圧縮されると、R値が小さい材料は絞り加工中に板厚が大きくなります。 図 4. ランクフォード係数(R値)の計算式 図 5. 引張試験における各材料の15%長さひずみの分布 ひずみ硬化指数(n値) 公称ひずみ-応力曲線における弾性域のモデルは非常に単純で、ヤング率を傾きとする1次方程式で表されます。しかし、均一伸びの限界やネッキング・ポイントまでの塑性域は直線ではないため複雑になります。深絞り鋼の塑性域をモデル化するには、通常、べき乗則の式(Hollomon)を用います。図6は実ひずみ-応力曲線上のn値をグラフ化したものです。実ひずみ-応力曲線を対数スケールに変換することで、塑性域のモデル化の改善を図っています。 図6. 対数スケール上のひずみ硬化指数(n値)のグラフ化 n値は、材料がいかに応力を薄板全体に分散させ、局所的なネッキングを回避するかを表します。図7は、DC05とアルミニウム5754のn値を、均一伸び(UE)に達するまでの塑性変形に沿って比較したものです。DC05のn値は一定と考えられますが、アルミニウムのn値は変化し、ひずみが均一伸びに達すると急激に低下します。このような塑性域の動的挙動は、塑性域の初期には応力を分散させる能力が高く、ひずみが大きくなると局所的なネッキングやわれが発生する傾向があることを示しています。 図7. 鉄鋼DC05とアルミニウム5754の均一伸びまでの塑性変形に沿ったn値 拡張真ひずみ-応力曲線の傾き(飽和状態) 有限要素法の計算を容易にするには、真ひずみ-応力曲線を100%変形まで拡張しなければなりません。拡張された2本の曲線は、図8に示すとおり傾きが異なります。アルミニウムの傾きの減少は、均一伸びの付近とその後に変形能力が減少することを表しています。つまり、材料に対する応力が増加するとひずみが増大し、金型トライアウト時の調整が難しくなるほか、場合によってはわれの解消も難しくなります。 図 8. 鉄鋼とアルミニウムの真ひずみ-応力曲線の傾き 絞り工程の変形能力 成形限界図(FLD)は、薄板プレス成形工程の不具合予測に用いる最も一般的な基準で、薄板が破損することなく適用できる最大主ひずみと最小主ひずみの組み合わせを示すものです。ISO 12004の規格では、局所的なネッキングの発生が薄板破損の基準となります[1]。アルミニウムは均一伸びに近いほどR値とn値が小さくなるため、成形限界曲線(FLC)の最大値はDDSよりも小さく、ひずみの許容量も小さくなります(図9)。 図9. アルミニウムとDDSのFLC [1] S. Bruschi, T. Altan, D. Banabic, P.F. - [多様な技術・文化・部門の連携がもたらす プレス工場の未来](https://japanforming.com/プレス工場の未来/) - デジタル・ツインの技術や第四次産業革命が提唱される中、今回はプレス工場の未来について考えてみましょう。本稿は製品開発や金型開発における技術の重要性、そして技術の有効活用による利便性の向上やコスト削減について考察した以前の記事を補足するものです。 ブラジルのプレス成形およびアセンブリ業界では、山積する問題や設定された目標に対して、製造モデルの有効性とその積極活用について議論が活発に行われています。前稿では、デジタル製造技術が世界的に広く認知され、導入が進んでいるにも関わらず、ブラジル国内には、自己主張、品質、納期、そして製品や金型にかかるコストなど、未だ多くの障壁が残る点について指摘しました。 ブラジルの産業界では迅速な生産が重視されますが、それが必ずしも効率的だとは限りません。またエンジニアリングや開発といった重要分野はコストとみなされ、積極的な投資が行われることも多くはありません。反対に、ダイレクト・リターン型の製造ソリューションに重点が置かれています。 ブラジルでは、未完成なものを非常に素早く効率的に作り、実際に問題が発生してからのみ、対応策を検討する傾向にあります。そのため、納期に間に合わせるために複数の項目を同時進行させ、本来なら避けられたはずの問題が起きた場合には、その修正に膨大な時間を費やしています。たとえば、後工程で問題の修正や調整にかける時間を確保するために、計画立案やエンジニアリングの段階をできるだけ短縮します。つまり、早期段階であれば簡単に修正できる問題も十分に検討しないまま生産計画を短時間で作成し、その一方では、生産時にどのような問題でも素早く対応できるよう、効率的な生産設備により投資を行うのです。 デジタル・ツインおよびプロセス・シミュレーション、そして以前紹介したワークフローを導入し、プロセス全体をバーチャル化すれば、利便性が高まるだけでなく、最適化も大きく促進されます。そして、プレス成形部品の構想、予算作成、工程定義、金型製作、および不良品率の低下を、新たな基準へと高めることができます。この技術を十分に活用すれば、飛躍的な利益がもたらされますが、しかし実現には、エンジニアリングや計画立案の段階への投資、そして部門間の連携が不可欠です。(図01、図02) 図01 – 投資と削減の推定比 図02 – プロセス全体のバーチャル化 上述の点からのみでも、シミュレーションの活用について検討を進めるに値します。反対に、金型作成、トライアウト、製造を旧来の手法で統括するエンジニアリングのパッケージは、導入をお勧めしません。なぜなら、製造現場、エンジニアリング、生産チェーンのリンクをすべて連携させる技術は、近年、飛躍的な進化を遂げているからです。 目線を上げて水平線を見渡せば、プレス工場の未来と関連技術は、すでに目前にあるとお気づきになるでしょう。先日、ドイツのシュトゥットガルト大学プレス成形技術研究所(IFU)から発表された「Smart Press Shop GmbH & Co. KG – efficient, innovative, flexible」という論文に指摘されているとおりです。これは、現在のプレス成形技術を横断する橋渡しとなるコンセプトなのです。 なお、このことはすでに議論が活発に行われていますが、まずは現在の技術について理解を深めることで、未来に向けた一歩を踏み出すことが可能になります。 プレス工場4.0のコンセプトおよび関連技術: 現在のプレス工場は大きな進化と改善を遂げていますが、接続性の強化、より包括的なリソースの活用、そしてAI(人工知能)の導入など、今後もさらにプロセスの充実が図られてゆくことに間違いはありません。事実、世界中の国々でこのような取り組みは進んでいます。 スマート・プレス工場に関する前述の論文では、プレス成形部門の将来像と、デジタル化、デジタル・ツイン、AIからインダストリ4.0まで、さまざまな技術との関連性について述べています。この将来的展望をもとに、あるプロジェクトが立ち上がりました。以下、効率化の目標達成に向けて、これらの技術をどのように関連付けてゆくべきかを考えます。 図03が示す流れに沿って、現在活用されている技術とその関係性についてご説明します。 01 レーザー・ブランキング・ライン 01 サーボ・コントロール・プレスライン 以下に示された自動化機器および制御監視システム 図03 – スマート・プレス工場 プレス成形を実行するラインに複数の制御ポイント(プロセス入力データを取得するポイント)を追加し、自律的最適化システム ⑨で情報をオンライン処理できるようにしました。たとえば:②ブランクのマーキングと識別、そして材料板厚、粗度、圧延方向、潤滑、材料特性など、プレス成形工程に必要な情報を、ポイント③④⑤で取得します。この情報をシミュレーションの入力データとして使用し、後続の成形工程にて材料挙動を予測することで、精度と予測性能が高まります。さらにTriboForm®、AutoForm Material Generator、AutoForm Sigma®などのソフトウェアを併用すれば、データの実効性はさらに向上します。その結果、製造上の変数やノイズ(板厚や材料特性など、制御不可能な変数)のリスクが緩和され、よりロバストで適応性の高いプロセスを構築することが可能になります。 上記の入力データは、健全なシミュレーション・モデルを作成するために不可欠です。デジタル・ツインは、金型製作の基準となり、製品の生産期間中の挙動を決定します。また、自律的最適化システムを支えるインテリジェンス・ベース⑨としても機能します。 エンジニアリングの初期段階から、このような変数を考慮しながらプロセスや金型製作の特性やリソースを定義することで、早期から多くの問題を解消することが可能になるのです。 図04 – 材料特性 図04は、材料の仮想的な基本特性カーブです。これらは、コンピュータのシミュレーションに欠かせない最も重要な入力データであり、シミュレーションの結果が実験結果と一致するか否かに直接関わるものです。1つは応力と変形のカーブで、工学分野で広く研究されています。もう1つは、降状局面と呼ばれるカーブです。認知度はさほど高くありませんが、重要性は変わりません。このカーブは材料の異方性を表し、異なる方向に応力を受けたときの材料挙動を示します。これは応力、特に外装部品のしわや陰影といった面ひずみを正しく計算する上で非常に重要です。 図05 – 摩擦モデルの影響 図06 –シミュレーションした摩擦モデル 図05と図06は、コンピュータでシミュレーションを実行するときに、摩擦特性の評価に利用できるオプションを示しています。異方性と同じく、このデータは見落とされがちであり、それが結果の精度を左右する場合もありえます。 このデータを確認してシミュレーションに組み込み、必要な出力データを得ます。そのデータをもとに、後工程で調整を行うことで、スマート・プレス工場を適正に稼働させることができるのです。一見遠回りのようですが、これを実現する技術はすでに確立しています。あとは製造ラインへの導入を進めるのみです。 ブランクの特性評価および定義が正しく行われると、この入力データからトラッキングと測定が可能になり、成形工程で読込みと検証が始まります。ロバストな結果を得るには、ブランク全体の最適化プロセスのシミュレーションが必要です。そして柔軟なレーザー・ブランキングで、データのフィードバックに応じて調整を行います。 - [インサイド・ストーリー: OEMとサプライヤーの関係性に変革をもたらすデジタル・ツール](https://japanforming.com/変革をもたらすデジタル・ツール/) - バリュー・エンジニアリング・ソフトウェアがサプライ・チェーンのコスト効率化を促進 あるOEMが迅速なバリュー・エンジニアリング・システムを導入したことで、コストの予測精度が向上し、自動車プロジェクトの初期段階から的確な判断が下せるようになった事例をご紹介します。いまではバリュー・エンジニアリングのソフトウェア・システムが算出する正確なデータをもとに、プロジェクトの継続あるいは中止を決定しています。さらに、OEMはサプライヤーと入札交渉を行いますが、ここでもコスト・データベースを利用した明瞭で信頼性の高い工法計画が交渉のベースとなります。本稿ではオートフォーム社のファブリシオ・ティンティが「AutoFormソフトウェアの導入前後」を比較します。 明瞭なコスト分析と整合性の高いオーバータイム分析を維持し、内部コストと利益を均衡させるには、自動化されたソフトウェア・システムを活用しなければ実現できません。視野の広い交渉や議論が促進されることで、問題が大きくなる前に回避することが可能になります。非効率な作業やデータ損失を削減することが、長期的な事業成功の鍵となり、またOEMとサプライヤーの関係性も向上します。 従来のコスト分析手法の問題点(「AutoFormソフトウェア導入前」) コスト分析を手作業で行う場合、通常はExcelなどの表計算シートを使用しますが、計算の明瞭性や整合性は担保されません。多くの場合、OEMによる工法計画の策定やサプライヤーの入札活動において、3D部品形状が活用されることはなく、また2D工法計画の情報概略にも解釈の余地や不確定要素が多く残ります。 一般論として、コスト効率は総額の一律削減という形で促され、具体的な削減対象の特定はサプライヤーに任されます。しかし各工程や生産品目のコスト内訳を把握することはほぼ不可能であり、代わりに、部品開発、製造コスト、材料使用率といったマクロな数値のみを元に検討が行われます。 サプライヤーがExcelなどの表計算シートで作成したコスト見積もりをOEMへ提出すると、最終価格を決定するための入札交渉が始まります。サプライヤーが提示する最終価格がOEM購買部門によって社内で定めたコスト目標値を下回れば、そのサプライヤーは製造Tire1の候補リストに追加され、交渉は次段階へと進みます。 図1:自社独自の表計算シート/コスト見積もり方法に基づく入札交渉 この段階においてOEMは最終候補のサプライヤー数社と面接を行い(技術審査には、コスト・エンジニアリング部門、購買部門、プレス技術部門が参加する場合もあります)、一定の品質で所定の期日までに納品が可能であるかを見極めます。 この個別審査は、OEMがサプライヤーを決定し、発注をかけた時点で完了となります。 その後の製造工程において、サプライヤーが入札段階で予測できなかった問題に直面すると、その問題に対処すべくOEMと新たに交渉を始めます。問題を解消し、納期を順守するには、たとえば部品の形状変更、工程の追加、金型の設計変更といった追加作業が必要となります。サプライヤーはOEMへ予算増額を提案しますが、追加コストの負担をどのように対処するか、交渉が長引くほど、サプライヤーとOEMの双方にさらに余分なコストが生じるのです。 OEMではプレス技術部門やコスト・エンジニアリング部門へシミュレーションやコスト分析を依頼し、成形性の問題を調査することになり、またサプライヤーは合意した予算や納期を順守できなくなります。初期段階のコスト見積もり作成時に特定できなかった隠れコストは、最終段階のコストに大きく影響し、またターゲットの軌道修正も必要となります。これはOEMにとっても複数年にまたがる大打撃となりかねません。両社ともが表計算シートと経験のみを頼りに判断を下さなくてはならない場合、どちらも圧倒的優位に立つための根拠がないため、最終決定をまとめることが難しくなります。交渉は難航し、今後の関係に支障をきたすことになるかもしれません。 その結果「ubi maior, minor cessat(弱者は強者に屈する)」という駆け引きの法則のとおり、サプライヤーは合意した価格での納品を余儀なくされる場合が少なからずあります。すると次の交渉機会において、そのサプライヤーは、コストを多めに見積もることで、前回の損失を回復しようとするのです。しかし別の機会では、サプライヤーが提示価格を収益限界以下まで下げて、固定費のみを回収することで、OEMの希望価格を優先させる場合もあります。なぜなら仕事の効率が高いサプライヤーとしての地位を確立できれば、今後の新たな入札にまた参加できるようになるからです。またOEMが製造拠点を人件費が安価な海外へ移管する可能性も否定できません。しかし価格交渉に関する予測が立てられないと、コストやキャッシュ・フローに変動が生じるため、安定した事業計画を立てることができません。 目標価格(コスト分析の最終数値)だけを中心に交渉を進めると、それが政治的な駆け引きなのか、あるいは純粋に技術的な製造コストに基づくのかをOEMが判断することは極めて難しくなります。フィージビリティの分析、金型設計、製造を予測できる専門家を集めるだけでは、たとえキャリーオーバー部品であっても、そのコストは管理できません。また、たとえ同じ製品をサイズ違いで生産していたとしても、次回に予測不能なコストが発生しないとは限らないからです。技術的な生産コストの分析が、OEMとサプライヤーの財務的および政治的な駆け引きとなってしまうのです。駆け引きの進め方次第によっては、サプライヤーの事業体としての存続や消滅に直結する場合すらありうるのです。 交渉から工法計画とコスト見積もりの新時代へ(「AutoFormソフトウェア導入後」) コスト・エンジニアリング部門がコスト計算を管理し、大幅なコスト削減を実現したオートフォーム社のお客様の成功事例をご紹介します。あるOEMではオートフォーム社のコスト分析ソリューションを導入し、明瞭で整合性が高い手法でコスト見積もりと工法計画の分析ができるようになりました。コストの内訳を定義できるだけでなく、3D工法計画とフィージビリティのシミュレーションが連携され、コスト管理における大きな一歩となっています。 AutoForm-CostEstimatorではボトムアップの計算方式を使用しているため、最初から複雑な3D部品を完全に解析し、適切な工法計画を作成することが可能になります。また部品形状の寸法やプレスラインの選択に直結する金型設計から、金型のコスト要因をすべて検討することもできます。このようにコスト見積もり分析の信頼性が高まるため、サプライヤーが作成する見積もりに対しても、AutoForm-CostEstimatorを導入したOEMの発言力がより高まるのです。 コストの各項目はそれぞれが分析可能であり、また金型設計や工法計画の各作業も最終コストに直接的な影響がありますが、しかしExcelなどの表計算シートを使用して限られたカテゴリやマクロの計算から部品を見積もると、このような詳細まで検討することができません。このように経験をベースに構築したマクロ計算で作成した見積もりに対して、ソフトウェア・ソリューションを活用した不変で信頼できる見積もりは、交渉の場でも受け入れられやすく、承認されやすいのです。 図2: AutoFormによって集約された分析および計算に基づく入札交渉 AutoFormソリューションの導入によって交渉段階が大変革を遂げ、各セッションにかかる時間が劇的に短縮されました。たとえば、サプライヤーの入札段階からOEMは根拠に裏付けされた判断を下し、コスト最適化を実行することが可能になります。さらには、さまざまなコスト計算/金型作成の基準を定義し、時間当たりのレートを現場の状態に応じて調整することで、意思決定に欠かせない要因を効率よく割当てることができます。 社内見積もり作成とサプライヤーの入札時に比較検討を行うAutoFormソリューションの導入後、コスト・エンジニアリング部門では、これをサプライ・チェーン全体へ拡張および標準化することが可能であるかを検証するプロジェクトを立ち上げました。その目的はコスト報告書のやりとりに関する独自の認証システムを確立し、明瞭なコスト分析を可能にすることでした。 市場成長とサプライ・チェーンを維持および発展させる上で、この明瞭性こそが鍵となります。新たなコスト見積もりシステムがサプライヤーに浸透するにつれ、OEMはサプライ・チェーンに沿って入札交渉を進めてゆく新たな可能性について模索し始めました。 サプライヤーへ過去に支払った最終価格を確認し、そこに調整を加えることで、OEMは各サプライヤーの収益目標を特定できるようになりました。オートフォーム社のソフトウェアを活用し、部品製造にかかる技術的なコストを正確に算出後、サプライヤの純収益として一定の割合を追加することが可能になったのです。無論、その割合についてOEMとサプライヤーが事前に合意する必要がありますが、コミッションの分配後に、サプライヤーから隠れコストについて報告が上がることはもはやありません。工法計画、金型設計、材料利用を考慮に入れた、技術的に信頼できる明瞭性の高いコスト見積りをベースとしているためです。 製造段階において、サプライヤーから想定外の隠れコストが挙がることはなくなりました。OEMは、部品製造において何がどれだけ必要かを事前に把握することができ、サプライヤーの安定した長期収益を担保することで、サプライ・チェーンのコストを予測することができます。またこれを維持するために、サプライヤーは自社組織の客観的な検討を進め、手順やワークフロー、事業運営をスリム化することが求められます。製造工程が非効率であると、その固定比率の価値が下がり、事業の収益性が悪化するからです。 総論:明瞭性、信頼性、信用性 入札段階を標準化するソフトウェア・ソリューションの導入は、オートフォーム社のお客様であるOEMに新しい時代の到来を告げるものでした。OEMおよびサプライヤーの双方にコスト削減をもたらすだけでなく、両社の関係における明瞭性と信頼性、そして信用性が高まったのです。標準化のツールを構築することで、工法計画、金型のコスト見積もり、部品のフィージビリティ分析、材料利用の比較が可能になりました。これにより、入札交渉を効果的に進めることができ、究極的には生産プロセスの成功を導くのです。 - [AutoFormのデジタル・プロセス・ツイン:型合わせの無駄を最小化](https://japanforming.com/型合わせの無駄を最小化/) - 今日の自動車業界では、安全性と環境問題に対する規制強化への対応の一環として、急速な車両EV化が進み、より複雑な設計開発業務が求められるとともに、開発時間の短縮、コスト削減など、これまで以上に高い要求が求められてきています。これらに対して、DXやIoTなど業務のデジタル化は加速され、デジタル・ツールは無くてはならないものになってきています。 プレス部品の設計・製造業務においても成形シミュレーションを中心に、単にプレス加工部品の品質確認だけにとどまらず、加工荷重、板厚分布、接触荷重など、さまざまな情報が金型設計や製造に利用されるようになってきています。 本稿ではプレス部品のデジタル・プロセス・ツインの利用による型合わせの無駄を最小化する方法についてご紹介します。 AutoFormが考えるデジタル・プロセス・ツイン デジタル・プロセス・ツインとは、図1に示したAutoFormソリューションを用いて、バーチャルにおいて生産準備を行い、その加工条件や金型形状などのデジタル上のデータを厳密に現実世界に再現することにより、トライや量産時の不良対応の手戻りの無駄を最小化する考え方です。AutoFormでは、プレス部品とそれらを組付けたアセンブリ部品の工程検討をデジタルでサポートできます。たとえば、プレス成形のエンジニアリングはバーチャル世界で実施されるが、ここでは、プレス加工において良品を加工するための検討が行われます。検討には、プレス加工における被加工材の成形性や寸法公差の問題解決だけにとどまらず、材料歩留まり、金型コスト、量産安定性までの検討が含まれます。一方、アセンブリのエンジニアリングにおいては、部品設計時の組付け条件、プレス成形シミュレーション結果を用いた組付け&ヘミング加工の最適条件の検討および加工治具の最適化などを実施することができます。 図1 AutoFormソリューション 現状の型合わせ 現状では、現実世界におけるトライ現場において、型合わせを人の手によって実施していることが多々あります。型合わせは次の2つが主な役割となっています。 ①作成したプレス金型の上下型のクリアランスが一定になるように調整。 ②成形中の加工材料の板厚分布による金型への非均一あたりの成形性悪化の対応のために調整。 これらはトライ時において熟練した技能者が手動で調整しますが、調整量については経験と勘によるところが多く、手の内化や標準化が困難な作業になっています。さらに、手動による調整なので、金型の分解、調整時間がかかるとともに、危険が伴う作業になっています。 デジタル・プロセス・ツインの利用による型合わせ ここでは、デジタル・プロセス・ツインを用いた、上記②の対応について型合わせの業務の解説します。図2に全体の流れを示しました。 図2 デジタル・プロセス・ツインの利用による型合わせの流れ STEP1:AutoFormによるプレス成形シミュレーションにおいて、われやしわ、さらにスプリングバックの見込みを型形状に入れて、成形性および製品寸法が問題ない状態にします。さらに、AutoForm内の加工バラツキによって、われ、しわなど成形不具合、寸法精度が大きく変化せず、問題が起きない工法を検討します。 STEP2:STEP1のシミュレーション結果においてデジタル・ダイ・スポットを実施します。ここでは下死点手前数ミリ程度のプレス・ストロークの板厚分布をダイ・スポットに利用します。AutoForm内で求めた板厚分布を基に、プレス成形シミュレーションで用いられたCADで作成された金型面をモーフィング機能にて板厚分布になじむように変形させます。この時、図3に示したように金型面の領域を必要に応じてモーフィングを実施しない領域(固定)と実施する領域(変更)に指定することができ、その間をつなぎ面(つなぎ)とするように定義し、変形を実施します。 図3 デジタル・ダイ・スポット STEP3:AutoFormで作成したデジタル・ダイ・スポットを行ったダイフェースのモーフィング実施前後の面の変化量ベクトルをAutoFormのCATIAのAdd-OnソフトであるAutoForm-ProcessDesignerforCATIAに取り込み、最終的なNC加工が可能なCAD品質な金型面データを作成します。 STEP4:上記STEP3のデータを使って切削加工を実施、金型作成を行うことで、デジタル型合わせを実施した実際の金型によるトライが実施されます。 デジタル・ダイ・スポットの事例 ①フード・アウターの曲げパッド型 図4にフード・アウターの曲げパッド型にデジタル・ダイ・スポットの有無による効果を示します。図上段は、曲げ加工時に加工材料を抑えるパッド型と加工材料の隙間量を示しています。ダイ・スポット未実施の場合、最大0.022㎜の隙間が発生し、曲げ加工時にパッド型で押さえられていないことが分かります。一方、ダイ・スポットを実施した場合、隙間なく均等に当たっていることが分かります。その結果、面ひずみへの影響が顕著に表れ、ダイ・スポット未実施では強い面ひずみが発生しているが、ダイ・スポットを実施した場合において面ひずみは緩和されていることが分かります。 図4 フード・アウターの事例 ②ハイテン構造部材のリストライク型 図5にハイテン構造部材向けのリストライク型に対するダイ・スポットの効果を示しました。図の左側がダイ・スポット未実施で、リストライク型と加工材との間に隙間が多く発生していることが分かり、この結果リストライクの効果が薄れ、スプリングバック量が減少していないことが分かります。一方、ダイ・スポットを実施した結果、リストライク型が加工材にほぼ均等に接触していることにより、スプリングバック量が小さくなる効果が出ていることが確認できました。 図5 ハイテン構造部材の事例 おわりに AutoFormソリューションを用いて型合わせ作業の無駄を最小化することは、実際に幾つかのユーザによって実証されています。ここでは具体的なユーザ名を申し上げることはできないが、AutoFormの提唱しているデジタル・プロセス・ツインでデジタル・ダイ・スポットを実施することにより、実トライでの型合わせ作業は50%~70%の作業時間の削減が可能なことは証明されています。現実世界では切削の影響による仕上げ精度の影響や型たわみ、実板厚の差異など考慮する必要があり、まだ型合わせを完全になくすことは困難ですが、大きな効果があることは実証されていることから、利用価値は大きいと言えます。 また、今まで現場で実施していた作業をバーチャルで実施する必要があるため、エンジニアリング業務の作業量は増加する傾向になります。この場合、企業間、部門間の垣根を越えて効率的に良いものを作ることの意義と効果を理解してデジタル・プロセス・ツインの実現を加速する必要があると考えられます。なぜならば、デジタル上のバーチャル・トライでは検討の条件はほぼ無限にあり、エンジニアの思うまま検討を実施し、シミュレーションによって得られた物理的な結果を理解し、検討を簡単に行えるからだ。バーチャルの良さは、テストによる材料破棄の無駄や制限的な検討項目、シミュレーション結果による物理量による現象の理解を容易に行えるなど多くのメリットがあります。このようにデジタル・プロセス・ツインに基づくモノづくりはこれまでの方法論とは異なる概念で全体の効果を最大限にすることに注目して取り組む必要があるといえます。 AutoFormではこれらのデジタル・プロセス・ツインを基本にした取り組みを多くのユーザとともに実施しています。また、ユーザが持っているこれまでのモノづくりのノウハウや製品提供への価値観を共有しながら、どのようにデジタル化を進めるかについて、お手伝いする準備ができています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。 - [ロバスト性解析を基軸とするインライン・プロセス・コントロールを活用した「不良品ゼロ」の生産プロセス](https://japanforming.com/ロバスト性解析のインライン・プロセス/) - イタリア・バーリ工科大学の論文発表について 近年、自動車業界は目覚ましい進化を遂げ、同時に製品品質も著しく向上しています。この品質向上は安全性やコスト削減といった厳しい要件を満たす上での基盤となります。そして不良品がほぼゼロの状態を達成できれば、お客様の仕様に応じた製品製造において無駄をなくすことができ、お客様の満足度やロイヤリティの向上、ひいては売上や利益の増加につながります。 一方、不良品ゼロという目標を掲げると、現実には達成不可能な完成度を追い求めることになります。このブログで以前に紹介したフランケ社の記事にて「経験豊富なプレス成形の作業員でさえ、パネルのスクラップを完全に抑えることはできない」と述べています。なぜならすべてのプロセスには「ランダム性」が内在しているからです。不良品ゼロを達成するには、まずシミュレーション担当の技術者がエンジニアリングの段階で、そしてプレス成形の作業員は生産段階で、このランダム性を考慮する必要があります。言い換えると、エンジニアリング部署では、ロバストな(安定して公差内に収まる)製造プロセスを設計し、プレス成形の現場では、たとえば材料単位の違いなど、入力パラメータが変わるたびにプロセスを「調整」するのです。こうすることでプロセスを工程能力の条件内に維持することが可能となり、生産が安定します。 しかしロバスト性解析がバーチャルで簡単に実行できたとしても、プロセスの調整には、通常、膨大な時間と工数を要します。 事実、昨今の自動車業界、特に金属部品の生産工場で採用されている制御システムの大半は、フィードバックのみを基軸とした制御手法です。つまり作業員が制御できる入力は、前の結果(フィードバック)に応じて調整されます。しかし、その他の作業員が制御できない入力、つまり想定外に変化する「ばらつき」までは考慮されないのです。 図1 フィードバックを基軸とした制御システム フィードバックのみを基軸とした制御システムにおいて、プロセスを適切な状態(設計通りの流入、われなし、しわなし、最適なスプリングバックなど)に維持するには、プレス成形の作業員は、まずプレス成形部品(出力)を確認しながら偏差を特定します。そして結果に影響する制御可能な変数を修正してから、改めてプレス成形部品を確認するのです。このトライ&エラーを繰り返しますが、この作業から成果をもたらすには、作業員の経験値のみが頼りとなります。また以下のような限界もあります。 たとえ作業員がプロセスを十分に理解し、適切に対応できたとしても、これは不具合が生じた後(パネルのスクラップ後)のみにしか対応できません。 安定した作業条件に達するまでには、通常、複数回の調整が必要となります。 このような制御手法の場合、以下のような問題が生じることがあります(図2)。 調整がオーバーシュート(過剰調整)となり、公差内に収まる安定した状態に達するまで、複数回のループを要する場合があります。 調整に工数がかかりすぎる(設定値に達するまで、部品を何度もプレス成形する)場合があります。 図2:フィードバックを基軸とした制御システムで想定される応答 もちろん、最小限のトライ&エラーで生産を許容範囲内(設定値)にすることが理想的です。廃棄部品が増えるほど運用コストがかさみ、また全体の効率も悪化するからです。 これらの解決策として、フィードフォワード制御システムの活用が挙げられます。この手法では、制御変数を調整する上で、エラー(のみ)が基軸とはなりません。フィードフォワード制御システムでは、予測が基軸となるのです。そのため包括的なプロセスの知識(入力のばらつきà 出力のばらつき)と入力パラメータのインライン測定がベースとなります。またプロセス変数は相互に作用するため、ある変数がプロセスの外乱として別の変数に影響を及ぼす場合があります。変数の相互作用やプロセスへの影響をエンジニアリングの段階で検討することで、「プロダクション・マップ」(プロセス・パラメータと最終結果への影響を表すモデル)を作成することが可能になります。 つまり、フィードフォワード制御システムでは、入力変数を測定し、プロダクション・マップをベースに調整することで、実際にプロセスに影響を及ぼす前に、問題を是正することが可能になります。 図3:フィードフォワードを基軸とした制御システム このような制御システムでは、プロセスの微調整に必要なループ(ストローク)の回数が大幅に削減されます。 図4:フィードフォワードを基軸とした制御システムで想定される応答 この手法は膨大なデータの調査、処理、分析を伴うため、煩雑な作業を想像される方がいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、それほど大きな工数は必要ありません。ここではロバスト性解析が重要な役割を担います。プロセスに小さな乱れが生じても安定しているか、また、その乱れが相互に作用することで最終結果にどのような影響を及ぼすかを予測することができるからです。 金型製造前に工程能力(フィージビリティおよびリピータビリティ)を確認することで、工程の設計者は最小限のコストで問題を解決できます。さて、ここまで説明したら、生産中にロバスト性解析データをフィードフォワード制御システムでどのように活用するのか、疑問に感じる方もいらっしゃることでしょう。 この疑問にお答えするため、バーリ工科大学では、自動車シャーシ上前部クロスメンバーのプレス成形に関する活用事例として、深絞り工程をリアルタイムに制御する手法について研究論文を発表しました。論文はこちらからダウンロードできます。 - [アドバンスト成形性解析 : 従来の成形限界図による予測限界を超越し、高精度で合理的な成形性解析を実現](https://japanforming.com/アドバンスト成形性解析/) - プレス成形の工程が、かつてないほど複雑化しています。美観や省スペースといった要件に対応するため、従来は不可能とされていたシャープ・エッジや急激な曲率変化を検討せざるを得ない状況になっています。また環境問題に対する意識の高まりから、超高強度鋼やアルミニウムなどの材料等級の採用も進んでいます。このようにプレス成形金型の設計や製造がより複雑になる一方、これまで以上に短納期化も求められています。成形性予測について述べると、成形限界図(FLD)を基軸とする従来の成形性解析では、この複雑化に、もはや対応することができません。本稿の前半では、従来の成形限界図と、その成形性予測の限界について説明します。後半では、AutoForm R10から実装されているアドバンスト成形性解析について説明します。この新たな手法では、従来の成形限界図の欠点が解消され、不具合予測が大幅に向上しました。図1に示したアドバンスト成形性とサーフェス・フェイラー、この2つの観点のビューとダイアグラムのみから、不具合をより正確に予測することが可能になりました。 図1: アドバンスト成形性解析(AFA)の概略 従来の成形限界図:期待される予測範囲(および注意点) 従来の成形限界図による解析の限界を理解する上で、まずは成形限界曲線(FLC)をどのように算出するかご紹介します。図2が示しているのは、試験片に局部的なわれ(ネッキング)が生じる時点の最大主ひずみと最小主ひずみを特定した中島試験の結果です。 図2: 中島試験と従来の成形限界図 これらのポイントを結ぶと、それが成形限界曲線となります。この手法による成形性の判断には以下の特性があり、限界が存在します。 中島試験は1回のストロークで行い、ネッキングが発生するまで連続的に材料を引き伸ばします。この状態は、主にプレス成形工程における最初のドロー・ステップに対応します。しかし注意点として、荷重条件が大きく変化する多段工程には適用できません。いわゆる非線形性を伴う変形や非比例荷重の条件下では、従来の成形限界図による予測能力は著しく低下するためです。 中島試験では、(曲げがない)純引き伸ばしを想定しています。実際の試験で使用したパンチの半径は50 mm程度ですが、ブランクの板厚は数ミリあります。したがって測定した成形性の限界は、部品が強く曲がる領域では一般論として控えめなものとなっています。実際には、ドロービードに沿った領域や、材料を比較的小さな半径で曲げるフランジ加工やヘミング加工などで、限界が生じます。 中島試験は、オープンな金型で実施しています。つまり材料は、板厚方向には荷重がかかりません。通常の深絞り加工では、この条件は現実的だと言えます。なぜなら、両面接触は通常ブランクホルダの下部でのみ生じますが、そこでは圧縮変形による不具合は予想されないからです。しかし工程にしごき加工または印圧加工が含まれる場合、従来の成形限界図では現実に則した限界を表すことができません。これは、スプリングバックを最小限に抑制するために半径を印圧加工(リストライク)するときや、フランジの高さを増すためにしごき加工するときなどに、よく生じる状態です。 中島試験では、局部的なネッキングによる不具合をとらえることを目的としています。金属材料は張力をかけて引き伸ばすと、突然破壊することはなく、まず局部的なネッキングと呼ばれる境界領域で強い板減が発生します。しかしプレス成形では、ネッキングが妨げられる状態があり、このような場合、実際の破壊限界まで材料を変形させることができます。局部的なネッキングが発生しないため、成形限界曲線は適切な限界とはなりません。よって、別の破壊曲線/モデルを定義する必要があります。幸いなことに、プレス成形の場合、この種の直接破壊は、以下のような明白な状況下のみで生じます。 a. サーフェス・クラック:前述したように、曲げ加工は変形を安定させるので、ネッキングが遅延または阻止される可能性があります。ただし、超高強度鋼およびアルミニウム材は、板厚方向では安定を保ちますが、材料表面で破壊限界に達する可能性があります。これによりサーフェス・クラックが生じますが、成形限界曲線では確実に予測することはできません。 b.せん断クラック:材料が成形限界図の左斜め方向に変形すると、シート面には等しい量の引張と圧縮が発生します。そのため板厚は変化せず、ネッキングも発生しません。事実、この領域では成形限界曲線は定義されていません。しかし、大きく引き伸ばすと、材料はやがて破壊限界で破壊します。このようなせん断クラックは、キッチン・シンクや燃料タンクなど、絞りがとても深い形状のダイ半径で見られることがあります。 c.エッジ・クラック:ブランクのエッジの応力状態は一軸であるため、引張りでは破壊前にネッキングが生じます。しかし、ブランクのエッジは通常せん断されるため、材料特性と表面状態が大きく変化します。特に繊細な材料では、実際に材料のネッキング限界に達する前に、微細な特徴(または不良)に応じて、エッジで異なる不具合が発生することがあります。 d. 板厚内圧縮:しごき加工および印圧加工で発生する負の静水圧応力状態によって、ネッキングが阻止されるため、材料は実際の破壊限界まで変形します。 アドバンスト成形性解析 AutoForm R10のアドバンスト成形性解析(AFA)では、従来の成形限界図を拡張して、上述すべての物理現象を考慮します。最新の科学文献から、これらの物理現象を捉えることができる手法やモデルを慎重に選択した上で、実装に至りました。本稿では、採用したモデルの詳細な説明は控えますが、ご興味があれば、AutoFormサービス・センターからAutoForm R10ホワイト・ペーパーをダウンロードし、該当章をご覧ください。 ここでは、アドバンスト成形性解析が提供する高度な物理モデルの利点を、実例を挙げて説明します。 2ヶ所に局部的なネッキングが発生しているフェンダ―を、図3に示します(画像提供: ボルボ・カーズ社マット・シグヴァント博士)。従来の成形限界図による解析ではこれらの箇所を特定できませんが、アドバンスト成形性解析はその箇所を正確に特定しています。このケースでは、成形性の予測を可能にした決定的な物理現象は、非線形変形です。ブランクは最初、パンチによって両平面方向に引き伸ばされますが、ホイールライン周辺に小さな半径が成形されると、すぐに材料は接線方向に固定され、さらに半径方向にのみ変形します。これにより、図3のアドバンスト成形限界図のプロットのとおり、典型的な非線形変形経路が生成されます。またアドバンスト成形限界図では、ポイント・マーカーの色が従来の成形限界図の領域境界に必ずしも沿っていないことに注意してください。成形限界曲線を大幅に下回っても、このポイントが重要となります。高度なアルゴリズムからマーカーの色が決まり、ポイントの重要性を正確に評価しているためです。一方、マーカーの位置は従来の成形限界図と同じであるため、この手法と直接比較できます。 図3:非線形変形におけるネッキングの予測 (画像提供: ボルボ・カーズ社マット・シグヴァント博士) 図4は、従来の成形限界図が強い限界を示しているドロービード部です。ご存知のように、ビードの直後で不具合が発生することはほぼ皆無であるため、この臨界からも、ビードのような小さな半径部の曲げや再曲げが正しく考慮されていないことわかります。一方、アドバンスト成形性解析のビューは、現実に則した状態を示しています。 図4:改善されたドロービード直後の成形性予測 図5は、円形フランジのしごき加工を示しています。このケースでも、従来の成形限界図では、この状況が限界だと評価されます。しかし実際には、板厚方向に強い圧縮応力がかかった状態で変形するため、アドバンスト成形性解析で正しく予測されたように、ネッキングは発生しません。 図5: 改善されたしごき加工フランジの成形性予測 図6は、構造部品の一部分を示します。材料は板厚1.8 mmで、3.3 mmの半径で曲げられます。アドバンスト成形性解析では、ネッキングは発生しないと予測されました。なお、この場合、シートの中間レイヤーのひずみは非常に小さいため、板厚方向のネッキングは予測されないので、従来の成形限界図でも同じ予測結果が得られることに注意してください。それでも、比較的低い破壊曲線に反映されているように、このUHSS材料は直接破壊に対してかなり敏感です。その結果、サーフェス・フェイラーのビューは、材料のサーフェスにクラックが発生することを正しく予測しています。 図6: 厚いUHSSシートを小さな半径で曲げると、板厚方向でネッキングが 発生しなくてもサーフェス・クラックは発生します 結論 ほぼ全てのプレス成形工程の設計において、成形性解析は欠かせないものであり、慎重に行う必要があります。そのため近年は、成形性予測の精度や信頼性を高めるための研究に大きな投資が行われています。本稿では、数値解析による成形性予測を大きく改善させる目的において、この検証結果を実業務へ転用および適用する方策についてご紹介しました。 - [ロバスト性に注目: AutoFormパレートの法則 (パート5)](https://japanforming.com/autoformパレートの法則-パート5/) - シミュレーション正確度の担保に不可欠なロバスト性 本稿はAutoFormパレートの法則を活用してシミュレーションの正確度向上を図る連載の第5回です。正確度指標の包括的な拡張を担うロバスト性解析の追加による、プレス成形シミュレーションの強化について紹介します。 これまでの連載記事では、必須パラメータ、重大パラメータ、重要パラメータについて詳説してきました。これらのパラメータ・グループからシミュレーション最終結果の正確度の95%が担保されるため、シミュレーションで実際のエンジニアリング工程を確実に表現することができます。しかし、最終レベルの詳細パラメータ(次回の連載記事を参照)の検討を行う前に、すでに確立したプロセス設定全体のロバスト性を確認する必要があります。 図1: シミュレーションのインプット・パラメータとシミュレーション結果に対する影響 重要パラメータは、必須パラメータおよび重大パラメータの上に構築されます。たとえば、重大パラメータを変更したら、重要パラメータの微調整を初めからやり直さなければなりません。しかし後続の詳細パラメータについては、ロバストな結果の達成には限定的な影響しかないため、まださほど重視する必要はありません。 初期の金型トライアウトでは検査治具を使い、最初にプレス成形したパネルが寸法公差に適合しているかを確認します。これまでは、金型のスポッティングをすることで、 金型の実用性を高めてきました。この段階では、データを収集し、複数回プレスを実行して、工程能力、工程感度、または 工程精度を検証します。これは、一連の部品が必要公差にどの程度まで適合しているかを表わします。通常は30個以上の部品、場合によっては最大300個ほどの部品をプレス成形して、工程精度を検証します。 すべての部品が公差に収まらないと、工程能力は保証されません。プロセス・ウィンドウが不明か明らかに小さい場合、公差に収まらない部品がでてきます。ここからコストが飛躍的に高まりはじめ、次の段階も非常に厄介になります。トライアウトに精通した担当者たちを招集したら、担当者それぞれの立場から金型のスポッティングやネスティングを続けるように勧告されるかもしれません。しかし、これには時間がかかり、またコストもかさみます。その上、工程の再現性が脆弱になり原因の特定も困難になります。金型に対する作業が問題解決に直結しないことは明らかです。最悪の場合は、再現性を確保するソリューションを特定できないまま、時間、費用、助言のすべてが尽きるまで作業をやり尽くすことになるでしょう。 プレス成形シミュレーションは、実際のプロセスを表現しなければ意味を成しません。実際のプロセスを確実に表現できた場合のみ、シミュレーション結果によってコストを伴う試行錯誤を回避できます。そこで、最初のブランクをシミュレーションし、そして金型を切削および加工する前に、エンジニアリングで工程精度を評価すれば、トライアウトで推測を重ねる必要がなくなります。このロバスト性解析によって、実際の工程の精度(または能力)を表す一連のデータ・ポイントを作成できます。結果的に、ロバスト性解析は非常に有効な情報源となり、エンジニアリングの意思決定プロセスをサポートします。 ロバスト性解析の入念な検討 基準シミュレーションからロバスト性解析を実行する場合、変動する一連のインプット・パラメータを定義する必要があります。実際のところ、 明確に定義された量産工程では、ばらつきは通常極めて小さく±10%程度です。 基準値付近のパラメータ値がもっとも多く、この基準値から離れるにつれて、このようなパラメータ値が発生する確立は低くなります。板厚、引張強度と相関性がある降伏応力、r値、潤滑量、バインダ荷重、ブランク位置などのパラメータのばらつきは、すべてが解析で考慮されます。実際のパラメータは公差内で変動するため、これらを誤差因子パラメータと称します。パラメータは特定の範囲内のみ制御可能で、公差で定義されます。つまり、正確な「真」の値がありません。 入力のばらつきから出力のばらつきを予測でき、また解析結果にもばらつきが生じます。そして結果の評価時に、結果値のばらつきが指定した限界を越えているかを検証します。この結果変数は、工程能力指数(CPK)と呼ばれます。ここでトライアウトや生産段階と同様に、シミュレーションでも同じ条件を適用します。このように、生産および品質保証と同じプロセス・コントロールの統計的手法をエンジニアリングでも適用します。 結果のばらつきが仕様限界を越えない場合、工程はロバストだと称されます。実際には、どのようにインプット・パラメータが(想定されたばらつき範囲内で)変化しようとも、このプロセスでは許容範囲内の部品が生産できることを意味します。数学的には、工程能力指数あるいはCPK値が1.33より大きくなります。結果のばらつきが仕様限界を越えると、プロセスはロバストではないと称されます。 今日、世界の多くの会社がエンジニアリング工程で、このロバスト性解析を採用して、トライアウトや生産時のコストの試行錯誤を回避しています。ロバスト性解析だけが部品生産の工程能力を定量的に予測できるため、これは有効活用すべきです。また量産工程のエンジニアリングの最終的な目標は、生産工程の安定性と生産量を担保することです。生産の不具合と失敗を予期し回避するには、ロバスト性解析に代わるものはありません。 ブラジルのOEMにおけるインナー・ドアの「われ」の事例 ブラジルのOEMにて、ドアインナー・パネルの生産で生じた「われ」の不具合を解決した実例をご紹介します。何度か対応策に取り組んだ後、OEMからオートフォーム社に連絡が入り、新設された工場でプレス成形部品の生産中、不良品率が最大25%に達したと報告がありました。不具合は、最初のドロー工程における「われ」から生じています。そこでドロー工程の結果に寄与する材料特性や潤滑などのパラメータについて徹底的な調査を実施しましたが、残念ながら「われ」の決定的な原因は不明のままでした。部品背面の上角部は非常に重要ですが、シミュレーションで特定した重大なポイントと、実際の生産で「われ」の高い発生頻度のある領域に、明確な関係を特定することができません。しかし75%の部品生産は成功しているため、このシミュレーションはプレス成形工程を妥当な範囲で表現していると評価し、このまま生産段階に適用しました。とはいえ、25%の不良品が生じる根本的な原因を突き止めることができれば、さらなる効率化を図れます。 そこでロバスト性標準が基本シミュレーションに適用され、ここで、オートフォーム社が実施したロバスト性解析から新たに特定された着目ポイントを比較することになりました。この結果と生産統計を比較すると、ロバスト性解析が特定した着目領域は、現場で確認されたものとぴったり一致しました。簡単に言うと、エラーの特定および問題の原因を解明に成功し、そして不具合を解決できたのです。 お客様にとって、この事例はAutoFormロバスト性評価の精度を実証するものであり、生産時の不具合に対する最善のソリューションを検討する上で、有用な情報を得られることも確認できました。問題の解決後は、これまで不具合が発生していた部品にも不良がなくなり、順調にプレス成形が行われています。ある特定のプロセス・ポイントだけを確認するのではなく、プロセス・ウィンドウ全体を確認することの重要性が改めて認識されました。 韓国Jim Yung Precision社の事例 Jim Yung Precision社では、エンジニアリングの工程を問題なく完了しましたが、初期の金型トライアルでは3か所でクラックが生じました。基準シミュレーションの結果では、問題のある領域を特定できませんでした。しかし、実際の生産工程における想定外の工程条件のばらつきを考慮に入れたロバスト性解析から、まったく同じポイントでCPK値(工程能力)が劣っていることが明らかになりました。この結果に感銘を受けたJim Yung社では、AutoForm-Sigmaの活用を進め、数か月にわたってロバスト性解析を実施することで、トライアウト・ループ数を削減し、またすべてのトライアウトが問題なく完了するようになったことで、大幅なコスト削減も実現しました。 3年間も「われ」が発生していないVolvo Trucks社 デジタル化によるプレス成形工程のロバスト性の改善について、Volvo Trucks社からオートフォーム社に打診がありました。既存の工程ロバスト性に関する金型サプライヤとの契約では、短期間での工程能力の簡単な評価に限られていました。生産の初期段階では少量の部品のみを生産するため、材料公差の範囲全体にわたる生産の品質は確認できません。調査の初期段階では、部品の寿命を通してより大きな生産工程能力が可能になるプロセス・ウィンドウの特定を目標としました。 あれから3年が経過しましたが、AutoForm-Sigmaのロバスト性解析はプレス成形の生産性の5%増加に貢献しています。また、金型の不具合に関連するダウンタイムは2.5%から1.5%に低下しました。いまではデザインの検討は、ソフトウェアを使いながら実行しています。ソフトウェアを使わずに、実験から同様の統計的なフィードバックを得るには、少なくとも5年分の生産が必要となるでしょう。 これらの事例から、ひとつのプロセス・ポイントのみに依存したエンジニアリングは、トライアウトや生産の実施および量産部品の担保には不十分であることがわかります。工程ロバスト性の確認は、エンジニアリングを効率的に行う上で不可欠であり、プレス成形シミュレーションの究極の精度を実現するために考慮しなければならない重要なパラメータの1つです。 - [ガイドラインと標準の活用: 成形性検討を担うエンジニアを短期間で育成し、業務の効率改善を実現](https://japanforming.com/ガイドラインと標準の活用/) - シミュレーションのノウハウを全ての社員と効果的に共有しましょう オートフォーム社へ転職するまで、私は某OEMで成形性検討を担当するエンジニアのチームを管理していました。ある時、チームとしての業務品質は、エンジニアの経験値によってばらつきが生じることに気づきました。エンジニアが新たに加わると、業務に必要な能力が一定のレベルに達するまで、業務品質が低下する傾向がよく見受けられたのです。そのため、新入社員を短期間で育成することの重要性を強く感じるようになりました。 成形性検討のスキルは、何を評価するか、どのように評価するか、合否判定の見極めの3本柱が基本となります。これらについて成形性検討を担うエンジニアに教え込むために、さまざまな方法を試しました。その結果として、これらのノウハウをわかりやすく伝えるには、多くの工数と努力を伴いました。しかし、何より困難を極めたのは、スプレッドシートからパワーポイントのスライドまで、多岐にわたる情報を管理し、使用する情報が常に最新であることを確認する作業でした。その当時からガイドラインや標準のようなツールがあれば、膨大な工数を削減できたはずであると、今は確信しています。 図1: シンプルなガイドライン AutoFormのガイドラインは、ユーザーが行う操作の大枠をインタラクティブ(双方向)に提供する機能で、複雑なタスクに明快さと透明性をもたらします。このガイドラインは、自動化されたチェックリストのようなものです。ユーザーは必要な情報をプログラムのGUI上で直接得ることができるため、ネットワーク・ドライブのゴミ箱から正しいドキュメントを探し出す必要がなくなります。ガイドラインには「ステップ」「アクティビティ」「インジケータ」の項目があり、工程ごとにユーザーがどのようなアクションを完了すればよいかを概略的に示します。またガイドラインは、いかようにもカスタマイズできます。たとえば、ガイドラインを定義するファイルに特定のクエリを含めることで、シミュレーションの中で、パラメータの値や状態を能動的に検証し、適切なフィードバックを得ることが可能になります。その他のステップやインジケータは受動的で、ユーザーが値を選択します。また、コメントや画像を追加することで、情報をより分かりやすく整理することもできます。 標準は、業務上の規定や要件に準じて、矛盾のないパラメータの値や設定を伝達および実行するためのものです。解析やシミュレーションの設定は、できるだけ現実に則していることが理想的です。しかし現実を正確に反映させるには、シミュレーションの設定項目や評価基準を適正に定める必要があります。しかし企業やユーザーごとに経験やリスクのレベル、既知のインプットは異なるため、それを合致させるのは至難の業です。そこで、設定項目や評価基準をすべて効率的に適用あるいは識別し、見落としがないようにできれば便利だと思いませんか?ここで活用すべきものが標準です。 あるお客様がアルミ外板部品の加工を始めた当初は、参照材料から得た一般的な成形限界値(たとえば、ドロー工程の板減限界値は15%)を適用していました。すべて円滑に進んでいましたが、お客様がアウターパネルと対応するインナー部品をヘム加工したところ、ヘム半径の表面の一部にわれが生じたのです。この不具合を検証した結果、ヘム加工が必要な6000系アルミのパネルにかぎり、板減の限界を10%に引き下げることになりました。このアルミニウムの表面われに関する知識とノウハウを適正に掌握することで、これを標準として今後活用することができます。 標準を活用すれば、外部のアプリケーションや情報源を介することなく、作業環境の中で直接ユーザーに通知が届きます。あたかもカーナビが運転手に右折や左折を直接指示するように、ユーザーが標準と異なる設定をすると、即座に通知されるのです(下図参照)。標準に合致しない状態では、右の画像のように文字が黄色で表示され、ユーザーに確認を促します。この配色はソフトウェアの最上位まで一貫しており、標準からの逸脱を簡単に見つけることができます。またドットのインジケータが、標準が適用されているプログラム設定をすばやく表示します。設定した標準と一致しないパラメータの値は、強調表示されます。 図2:全項目を確認 新たに社員を迎えたり、専門知識を取り入れたりする場合や、事業部内で最適な手法を適用してゆく上で、標準とガイドラインは、非常に有効な手段となり得ます。標準とガイドラインを一元的に保管・管理することで、実用的で効果的なナレッジマネジメントのツールセットとして活用できるのです。 - [業務プロセスのアセスメントで課題を洗い出し~技術レベルの向上とトライ回数の削減に取り組む~](https://japanforming.com/業務プロセスの見直しで業務課題へ取組む/) - 大阪と福岡に拠点を置き、トヨタを中心とした自動車用ボディー部品のプレス金型の設計・製作を手がける株式会社ウチダ。長年にわたりAutoFormのシミュレーションソフトを活用している同社は、効率的な金型製造を目指して、オートフォームジャパンと共に既存の業務プロセスの課題を洗い出しました。100年に一度といわれる変化の激しい業界において、さらなる成長を求めるウチダは、社員1人1人のレベルアップ、特にエンジニアの技術力の強化によりトライアウト工数、コスト改善が進むことを強く認識し、“あるべき姿”の実現に向けた取り組みを始めています。 EVの台頭など「100年に一度」の大変革期、プレス金型メーカーにも大きな影響 自動車ボディー部品用のプレス金型を設計・製造するウチダは、業界のパイオニアとして常に新たな取り組みにチャレンジしています。車体の軽量化に欠かせないハイテン材(高張力鋼板)の金型成形にはどこよりも早く取り組み、超ハイテン材のセンターピラーの金型を世界で初めて実現しました。現在の主な取引先は、トヨタ・ダイハツを中心としたTier1のサプライヤーです。2020年には同社の技術力が評価され、中小企業庁による「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出されました。 現在、世界中で電気自動車(EV)の開発競争が激化し、自動車業界全体が「100年に一度の大変革期を迎えています。EVシフトが進めば、自動車の部品点数は大幅に減ると言われています。エンジン車がすぐになくなるわけではないものの、中長期的にはEVの勢力が大きくなり、エンジン系、ブレーキ系、排気系の部品は厳しい状況に陥る可能性が高いと言われています。市場参入者の多様化で、日本の自動車メーカーは、EV先進国の中国、韓国、さらにはヨーロッパ、アメリカ等のライバルとの競争を勝ち抜いていかなければなりません。こうした状況に対して、代表取締役社長の内田祥嗣氏は次のように語ります。 「ボディー部品の金型成形を中心とする当社は、EV化の波を今すぐに受けることはないと想定しています。とはいえ、プレス金型メーカーは、OEMメーカーや、Tier1のサプライヤーの影響を大きく受けることになり、先行きが見通せない不安は抱いています。EV化で製品ラインナップが増えれば、ボディーのデザイン変更が多く発生するかもしれませんし、短サイクルで市場に出したいという要望も増えてくるかもしれません」 目の前にある経営課題としても、カーボンニュートラルやCO2削減への対応があり、加えて資材の高騰や円安の影響も大きくなっています。こうした中、内田氏が将来に向けて最も重視しているのは、会社全体の技術レベルの底上げです。 「世の中がどのような方向に行こうとも、作る人を育て、技術レベルを高めることが一番です。私たちのミッションは取引先の期待に応えることであり、エキスパート集団としてさまざまな課題をクリアする新しいプレス金型の開発に取り組みながら、サプライヤーの成長に貢献していくことです」(内田氏) 業務プロセス(As-Is)を見直して、あるべきプロセス(To-Be)を議論 世界トップクラスの技術力を目指すウチダでは、シミュレーション技術の採用にもいち早く踏み切り、2002年にAutoFormを導入しました。現在は、AutoFormを4台、他社のシミュレーションソフト1台を利用し、AutoFormでは成形性検討を、他社ソフトでは精度見込みを行っています。 AutoFormを導入以来、オートフォームジャパンと定期的にコミュニケーションを取ってきたウチダは、両社による新たな取り組みのひとつとして、トライアウトの改善に向けたシミュレーション設定と業務プロセスのアセスメントを2021年7月から開始しました。アセスメントを通して業務プロセスの課題を洗い出し、“あるべき姿”の実現に向けて改善を図ることが目的です。デジタル技術を活用してリソースを創出し、エンジニアの技術力の向上を実現することで、金型成形の付加価値は高まり、「100年に一度」の変革期を乗り切る競争力を強化することが可能になります。次長の國原 斉氏は「シミュレーションの専門家に客観的な視点で評価していただき、改善点が洗い出せることは非常に有益だと思い、アセスメントを受けることにしました」と振り返ります。 アセスメントは、「ディスカバリー・フェーズ」として、現在の業務プロセス (As-Is)を洗い出すところから始まります。そして、あるべきプロセス(To-Be)を議論し、As-IsとTo-Beのギャップをどのように埋めていくことができるのかを考えていきます。ウチダでは、見積、受注から、見積、成形性検討、精度見込み、型製作、トライアウト、ホームライントライアウトまですべてのフローを洗い出し、業務フローの個々のフェーズに対してシミュレーションソフトをどのように活用しているか、そこではどのような問題が発生しているかなど、デジタル活用の実態を掘り下げていきました。 「業務フローの洗い出しや精査の作業は、2021年9月から3~4カ月かけて実施しました。具体的には、見積から型製作データ作成までの業務プロセスを、数回のインタビューをもとに作成。シミュレーション設定がトライアウトを再現するために妥当であるかをアセスメントしました。逆に、トライアウト現場を確認し、シミュレーション通りのトライアウト実施になっているかをアセスメント。さらにトライの回数、精度の修正回数、部品、顧客ごとの収益など、詳細な情報を過去1年にさかのぼって調査し、すべての資料をオートフォームジャパンと共有して現状分析を行いました」(國原氏) SE検討における設計提案プロセスの追加でトライ回数の削減が可能 アセスメントによって自社の技術力を客観的に評価し、技術レベルの向上へ 2022年3月、オートフォームジャパンは分析した業務プロセスをもとに“あるべき姿”のプロセスを提示し、改善のポイントと、それによる見込み効果を提示しました。評価結果について、係長の桑原 拓也氏は次のように語ります。 「業務プロセスについては、今までの見積工程の前に、成形性やロバスト性をシミュレーションで確認するSE検討を追加し、必要に応じて部品サプライヤーに製品形状の変更提案依頼をかけることでトライアウトの回数が減らせるという報告でした。さらに、既存の精度見込みに改善余地が多くあり、成形性検討から精度見込みまでを1本のシミュレーションソフトで統一することで効率化が進むことが分かりました。また、シミュレーションをやり切りデジタル上での金型バイオフを行うために品質基準の見直しも含めてトライアウトの回数が減らせるという分析もありました。結果として、AutoFormのソフトの追加、新たなリソースの投資が必要だとしても、数千万円のコスト削減ができることが提示されました」 SE検討における設計提案プロセスの追加は、事前の問題消し込みによる後工程の負荷軽減につながり、計り知れない効果を生む可能性を秘めています。一方で、SE検討ではOEMメーカーやTier1サプライヤーの理解と協力が不可欠であり、ウチダ単体で進めることが難しい取り組みです。 「SE検討の問題を解決するのは、簡単なことではありません。しかし、たとえばOEMメーカー、Tier1のサプライヤー、プレス金型メーカーの3者がAutoFormを共通のプラットフォームとして活用できれば、3者がAutoFormを共通言語として会話することが可能になり、全体的な効率化が実現できるのではないでしょうか」(國原氏) 一方、アセスメントの実施に対して内田氏が大きな価値を見出したのは、それが会社全体の技術力の底上げにつながることでした。 「ITツールを使うのはあくまでも人であり、ITツールによって効果的なアウトプットをすることが最終目的です。その点において、私たちはAutoFormの潜在能力を十分に使いこなせていないのではないかと不安を抱いていました。そのような中でオファーをいただいたことから、オートフォームジャパンには技術力向上への貢献を期待してアセスメントを依頼しました。今回のオファリングを通して、技術的な改善点を多く指摘していただき、解決の道筋が明確化できたことは高く評価しています」(内田氏) 内田氏の発言を裏付けるように、アセスメントの多くの過程に関わった桑原氏は「これまで私たちが独自手法で行ってきたシミュレーションとプレス品の評価方法を詳しく分析していただけたことは安心感につながりました。さらに、トライに立ち会っていただいたオートフォームジャパンの担当者が、AutoFormを使ってより詳細かつ丁寧に分析・評価している姿を見て感銘を受け、私たちも見習うべき点が多いことを改めて感じました」と語っています。 あるべきプロセス(To-Be)に向けて、さまざまな取り組みにチャレンジ ディスカバリー・フェーズを終え、オートフォームジャパンと取り組みの実現可能性を議論したウチダでは、複数の提案の中から、第一ステップとして精度見込みフェーズにおけるAutoForm-Compensatorを使ったスプリングバック見込み業務プロセスの最適化とデジタル・スポッティングの適用によるトライアウト工数削減に取り組んでいます。 「他社ソフトとCADを使ったモデリングでシミュレーションを行う場合と、AutoFormを使った一連の流れの中でシミュレーションを行う場合のリードタイムと精度を比較するテストを実施して、ソフトをAutoFormに一本化すること、シームレスなデータフローの優位性、実際の業務プロセスに組み込む場合の実現性を探っているところです」(國原氏) その後もあるべきプロセスに向けて、さまざまな取り組みにチャレンジしていく予定で、オートフォームジャパンには引き続きAutoFormの活用方法のアドバイス、情報提供、自動車業界に対する情報発信を期待しています。 「私たちプレス金型メーカーがSE検討に参画することで、事前の問題消し込みによる後工程の負荷軽減につながり、大きな効果が得られます。この点を業界全体にアピールしていただけばOEMメーカー、Tier1サプライヤー、プレス金型メーカーの3者がWin-Winの関係になれると思っています」(内田氏) あるべき姿に向けて第一歩を踏み出したウチダの取り組みは、これからも続いていきます。 (企業概要) 株式会社ウチダ 設立:1964年4月 所在地:大阪府大東市新田本町12番6号 代表者:代表取締役会長 内田末男様、代表取締役社長 内田祥嗣様 資本金:3,000万円 売上高:28億円(2021年度) 従業員数:125名(2022年6月現在) 事業内容:トヨタ・ホンダ・ダイハツ・三菱・スズキなど、自動車用ボディー部品のプレス金型の設計製作全般 URL:https://www.uchidanet.co.jp/ - [ロシアにおけるプレス成形の進化: Per Aspera ad Astra (困難を克服して星を目指す)](https://japanforming.com/ロシアにおけるプレス成形の進化/) - Alpha Automotive Technologies社ウラジーミル・キリチェンコ氏がロシア国内産業の発展を確認 ブラジルからロシアまで、世界のさまざまなOEMと事業取引がある場合、円滑で運用性に優れたビジネス・モデルが成功の原動力となります。Alpha Automotive Technologies社のプロセス・エンジニアであるウラジーミル・キリチェンコ氏とデーヴィッド・ハチャトゥリアン氏は、データの整合性こそが必須条件であると提唱しています。“Per Aspera ad Astra”、つまり「困難を克服して星を目指す」ということです。本稿では、あるロシアの部品製造メーカーが、欧州OEMに部品供給を行う上で、シミュレーションの活用を通じて問題解消に至った事例をご紹介します。 ロシアのAlpha Automotive Technologies社では、金型を海外から輸入し、国産の材料を使用した自動車プレス成形部品の製造を行っています。ボディ・サイドの外板パネルを中心に、ルーフ、ボンネット、トランクなど、幅広い自動車部品を専門に扱っており、ボンネット・インナーやドア・インナー、そして各種補強材など、大型の構造部品も納入しています。かつてモスクワの中心部にある旧ZIL工場から工業地帯にプレス工場を移転する際、部品納入に遅延を生じさせないことが大きな課題となっていました。またこの移転の時期に納入需要が過去最高であったことも、納入遅延が懸念される一因でもありました。このような時期においても高い業績を維持できたのは、チーム全体の功績です。またデジタル・エンジニアリングも、大きな役割を果たしました。 Alpha Automotive Technologies社では、営業部門と事業開発部門が一体となり、シームレスな運営を行う、非常に実践的な手法を用いています。さまざまなクライアントから打診をいただくだけでなく、当社からも新規事業の開拓を積極的に行っています。当社のプロセス・エンジニアリング部門では、営業や事業開発担当者から新規プロジェクトのデータを受け取ると、正確なエンジニアリング・コストの算出および適切な見積りの作成といったフォローアップを行います。これがエンジニアリング検討の第一段階となります。この見積りが適切であれば、クライアントとの取引が始まります。当然ながら、製造と価格の両面を正確に推定するには、ソフトウェアが不可欠です。AutoFormソフトウェアを活用すれば、必要なブランク・サイズとプレス荷重を正確に計算できます。ソフトウェアがなければ、特にボディ・サイド・パネルのような大型部品の場合、当社のプレス機で十分な荷重を担保できるかの判断に困ります。自動車は、約5年おきに大型化しています。Alpha Automotive Technologies社では対応できる最大荷重が明確に規定されているため、プロジェクトの入札時には、AutoFormを活用して必要な荷重要件を推定しています。高張力材で厚みのある小物部品が増える中、この機能は非常に有用です。そして、入札時の案件に責任をもって取り組むことができます。 Alpha Automotive Technologies社が大きな成功を収めたプロジェクトには、ロシア市場にて圧倒的優位を誇る大手OEMのボディ・サイド部品生産があります。新たな軽量自動車の安全性と性能を高めることが最重要課題であることから、この大手OEMが最も信頼のおける製造メーカーと提携することは明らかであり、またそのメーカーにはあらゆる面で高精度なエンジニアリング・プロセスが要求されます。当社ではすべての金型のエンジニアリングにAutoFormソフトウェアを活用しています。しかしその金型は、ここモスクワで製造するわけではなく、主に中国および韓国に発注しています。 AutoFormを活用したデジタル・エンジニアリングは、ワークフロー全体に関わる重要なステップであり、ロシア国内のプレスラインで実施するトライアウトに不可欠な役割を担っています。多くのプレス工場に共通する問題として、金型メーカーの工場でトライアウトが成功しても、生産現場のプレスにおいては不具合が生じる場合があるのです。不具合発生時にはAutoFormで分析を行い、適切な判断を行っています。シミュレーションによる分析結果から、金型成形面の修正が必要だと判断された場合には、AutoFormで作成したデータを、機械加工用データを作成するNX、CATIAまたはAutoCADへ転送します。また当社では、スキャンしたデータをAutoFormシミュレーションに適用した事例もあります。稀に、金型メーカーのトライアウトで行った修正が金型のCADモデルに反映されていない場合には、リバース・エンジニアリングを行うこともあります。 図1:金型のスキャン 図2:ドロー工程の終盤(0.7 mm手前)に不具合が発生 図3:赤丸のエッジ形状を削除して板減を回避 図4:(左)オリジナル形状(右)カウンタ・バーをカットした結果 このようにお客様の品質基準をクリアした時点で、初めて生産開始にゴーサインが出るのです。国内市場向け部品製造の品質を担保することが、欧州および南米向け部品製造の機会を引き出し、またその品質基準を満たすことも証明できたのです。 デジタル・エンジニアリングを活用すれば、海外から輸入した金型でも安定した生産を行うことができます。たとえば、ボディ・サイドのリヤ・ドア開口部のトリムラインを正確に定義するという課題に取り組んだときのことです。プロセスの開発段階において、金型メーカーはお客様から指定されたOEMデータベースの材料カードを使用し、AutoFormでシミュレーションを行いました。OEMデータベースの理論値と同様のパラメータが設定された材料を使用したところ、シミュレーションの結果は良好であり、ブランク形状の計算も非常に正確で、金型メーカーによるトライアウト中にわれは発生しませんでした。 図5:ボディ・アウター側のドロー工程でわれが発生しました 図6:初期ブランクでは、複数の半径でカットアウトを試しました 図7: 最終的に、R120以上で不具合が解消 しかし金型の納入後、自社工場でトライアウトを開始したところ、リヤ・ドア開口部の下角部に大きなわれが発生したのです。分析の結果、ロシアで生産された材料と国外の材料では、機械的特性に相違があることが判明しました。そこでロシアのコイル・サプライヤーに、その材料等級と板厚が反映された材料カードの提供を依頼しました。その後、さらにシミュレーションを重ねることで、トリムラインの正確な形状と位置を特定することに成功しました。 この事例から、ロシア国外の金型メーカーでトライアウトを行う場合は、材料データの相違に注意すべきであることが明らかになりました。主に材料の範囲と公差で、特性が若干異なる場合があります。材料を詳細に調査し、新たな材料を作成することで、われなどの不具合を回避でき、納期を厳守することが可能になります。特に海外から材料を輸入する場合は、材料のばらつきに対応するため、ロバスト性の検討を行うことが重要になります。 別の事例として、6年前にOEMから材料データベースを入手すると、その材料は当社が使用しているロシア産の材料と大きな相違があることが判明しました。残念ながら、熟練の技でさえ、正確な材料特性に代わるものではありません。シミュレーションの精度を高めるには材料試験が必要ですが、当時のAutoFormデータベースには、まだロシアのサプライヤーから材料データは提供されていませんでした。その後、当社のサプライヤーとオートフォーム社が協議を重ねた結果、Severstal社やMMK社といった企業の材料がデータベースに登録されるようになりました。 国際的なOEMと協働する他のTire1サプライヤーと同様、私たちもお客様の指示する手順に沿って業務を行う必要があります。大手OEMとのパートナーシップの中で、その多くが独自のフォーマットやチェックリストの手順を持っており、多くの新しいシミュレーションの標準が確立してゆきました。そのため、サプライヤーがシミュレーションのパラメータを調整したり、独自の結果を出したりするときは、お客様との一貫性を保つために、サプライヤーも同じ手順を守らなければなりません。シミュレーション結果の画像を用意し、メモを添付し、不具合があれば、その不具合をどのように特定したかを明記します。その後、必要に応じて報告書を確認し、さらに詳細に調査を行います。このように定型化された手順を踏むことで、上流へ提案書と併せて十分な情報を伝達することができ、変更依頼を行うことができるのです。 Alpha Automotive Technologies社では、現在、多くのOEMと取引を行っているため、複数の納品方式を効率的に統合できる柔軟なエンジニアリング・ソフトウェア・ソリューションを必要としています。そのために、社内外のコミュニケーションにおいて、下請け会社から当社、そして上流のお客様まで、スピードや生産性が担保されたシームレスな情報伝達が不可欠なのです。そこで、大きな効果を創出できるソフトウェアこそが、成功への鍵となるのです。AutoFormのソフトウェアの優れた柔軟性、正確性、応答性のおかげで、プレス工場の移転期間中も、クルーズ・コントロールを使ったような操業が実現しました。Alpha Automotive Technologies社は、AutoFormソフトウェアの強力なサポートに支えられてこそ、長期的な事業発展を継続できると確信しています。 ロシアのことわざに、当社の仕事に対する姿勢を見事に言い表しているものがあります。“Дорогу осилит идущий.” これを直訳すると、「道は歩く者が究める」という意味になります。つまり、実際にプロジェクトをスタートさせ、物事を進めていくことでしか、成功を収める道はないのです。今後の展開としては、今はプレス成形部品の納入で成功を収めていますが、次はアセンブリに意欲を燃やしています。 AutoFormのおかげで、Alpha Automotive Technologies社は優れたプロセスの開発に成功し、生産を開始することができました。 - [北京汽車社のデジタル・ヘミング・ワークフロー](https://japanforming.com/北京汽車社のデジタル・ヘミング・ワークフロー/) - クロージャ部品の衝突安全性を高め、現場のトライアウトを2ヶ月短縮! 自動車のクロージャ部品生産では、インナー・パネルとアウター・パネルの接合にヘミング工法が用いられます。ヘミング工程の品質やロバスト性を高めることで、車体全体の安定性を担保でき、また乗員の衝突安全性も向上できます。北京汽車社では、ヘミング生産の増産時に、よく不具合が生じていました。そこで同社はオートフォーム社と共同で、製品設計とエンジニアリング・ワークフローの最適化に取り組みました。 ヘム幅は、ヘミング工程の品質を左右する重要な工程パラメータです。部品設計段階でヘム幅を正しく定義できれば、ヘミングのトライアウト・ループを削減できるだけでなく、アウター・パネルのカット金型を後期段階で修正する時間やその諸費用も節減できます。 アウター・パネルは、通常、ドロー、トリム、フランジの工程を経てからヘミングを行います。工程設計段階にて、アウターのフランジ高、フランジ角およびオーバーベンド量をすべて定義します(図1)。アウターのフランジ高については、シートのヘム加工時にシート・パネルに生じるしわやわれを確認しながら、原則的にはヘム幅に応じて拡張します。またヘムの品質を担保するために、アウターのフランジ角は90~105°に調整します。ロール・ヘミングを適用する場合、フランジ角の要件は緩和できますが、一般論として、フランジ角が大きいほどラウンド数が多くなります。オーバーベンド量はヘム加工時の巻き込みを相殺するための補正方法で、もう一方のアウターとのギャップ・クリアランスの精度を決定するものです。 図1. ① ヘミング部品、② インナー部品、③ フランジ部品、④ オーバーベンド、 ⑤ フランジ角、⑥ ヘム幅 アウター・パネルのヘム幅は、現状、設計者の経験値に頼る形で決定しています。しかしアウター・パネルが多様化し、また多くの制約が課される中で、この手法が適切だとは断言できません。フランジ高のわずかな差で、しわやわれが生じますが、その場合、アウター・パネルのトリム金型へ戻り、トリムラインを調整しなければなりません。またアウター・パネルのモデリングまで修正する場合には、大幅な再作業に伴う工数やコストがかかります。 AutoFormソフトウェアを活用すれば、初期の部品設計段階で定義された値をもとにフランジ高を検討できます。しわとわれの評価を通じて、フランジ高が適切であるかを判断できるのです。 北京汽車社では、フード・アウター生産におけるヘミングのトライアウトで常に不具合が生じていました。そこで北京汽車社は中国のオートフォーム社と提携し、サンプルのフード・アセンブリを調査しました。この事例では、フードにはロール・ヘミングを適用しました。初期のヘム幅は、フラットな直線部分のほとんどが8 mm、凸型の円形領域が6 mm、鋭角位置が4 mmと設定されています。AutoFormソフトウェアの展開機能(図2)でヘム形状をフランジの状態まで素早く展開すると、ヘミング計画のとおりにヘミング工程をシミュレーションすることが可能になります。初期の解析では、フードの3つの領域でしわが予測されました(図3)。 図2.展開機能 図3. 初期のしわ ヘミング工程中に半径で板減が生じることが、解析から予測されました。体積一定の原理によると、板厚方向に生じる板減によって、曲げ方向に伸びが生じますが、その板減がばらつくと、伸びもばらつくのです。シミュレーションで解析を行わないことには、この領域のヘム幅を正しく設定することは不可能だと言っても過言ではありません(図4)。 図4. 曲げ領域の板減によるシートの伸び AutoFormソフトウェアでしわを詳細に確認することで、いつどこでしわが発生するかを特定できます。さらにはヘム幅を簡単に変更できるため、良好な結果が得られるまで、成形性を何度でも確認できます。ヘム幅を変更することでしわを解消できる場合もあれば、図5(A)の鋭角のようにヘムを適用すべきでない場合もあります。 図5. ヘム幅の修正 図6に示すように、領域(B)ではヘム幅をわずかに調整するだけで、しわが大きく変化することがわかります。 6mm - [ブラジルのEngenharia Sigma社が38%の材料削減に成功し、高いスクラップ率を克服](https://japanforming.com/材料削減に成功とスクラップ率克服/) - 1998年からCAD/CAMサービスを提供しているEnginharia Sigma社は、2008年にプレス成形シミュレーションの分野に参入し、中小企業への技術の普及に努めています。 本稿ではEngenharia Sigma社がクライアントのプレス部品メーカーINDAB社と取り組んだスクラップ率改善プロジェクトについてご紹介します。Engenharia Sigma社では、生産現場で稼働している金型について、材料のオーバーラップやクラックに起因する高いスクラップ率に着目し、最適化プロセスについて提案を行いました。 最初のプレス成形ステージは、プリカット・ブランクを伴うドロー工程ですが、この工程にて、すでに破断が発生していました(図1)。 この部品ではドローが標準的な成形方法であると、まず経験則から判断しました。しかし、シミュレーションを活用しながら検討を重ねた結果、最初のステージでは部品の最重要部位を成形すべきであることが判明し、まったく新しいプロセスを定義することになりました。 図1:ドロー中に生じた破断 この新たなプレス成形プロセスでは、領域の維持だけでなく、クラックを解消し不良率を抑えることで、原材料の38%削減に成功しました。ドロー型、シートのプレス領域、ドロービードの調整など、さまざまな最適化を行った結果、プリカット・ブランクの面積を縮小できたのです(図2)。 さらには、カット、成形、フランジのバランスを分析し、全工程の手順を再構成することで、1ステージ分の削減を実現できました。 この最適化に取り組んだ部品は生産量が高いものであったため、新たな金型一式への投資は6カ月で回収でき、今後、相当の利益に転じることが見込まれます。また最終製品の品質向上と、不良品数の大幅削減も期待されます(図3)。 図2:新旧プロセスの比較 このような工程改善をプロトタイプ(原材料、標準部品、機械加工、調整、トライアウト、応答時間など)で検討するとなると、開発コストが高騰するため、現実的にはほぼ不可能です。そのためシミュレーションを用いてのみ、工程改善を検討することが可能になります。またシミュレーションを用いない場合、投資収益率の計算も難しくなるため、トライ&エラーを繰り返しながら経験則を構築してゆく必要があります。 図3:以前のプロセスと現在のプロセスの比較 図4:シミュレーションによる検討前の初期の工程(左)とシミュレーション を活用した検討後の新たな工程(右)でそれぞれ製造した部品。 生産現場のプロセスに合致するデジタル・プロセス・モデルを構築することで、容易に検討を行うことが可能になります。実際に媒体を構築することなく、意思決定と投資収益率の計算を素早く行うことができます。上述の事例から明らかであるように、改善を継続的に行うことは、部門の効率性と競争力を高める重要な要因であると言えます。 デジタル・モデルおよびプロセス・シミュレーションの活用は、製品と金型開発、およびプレス成形工程の日常的な改善管理において、明確な利益をもたらすことができると断言できます。 - [スマート・エンジニアリング・モデルを活用したスマート・プロダクション](https://japanforming.com/スマート・エンジニアリング・モデル/) - スマート・プロダクションの礎となるのがエンジニアリングである理由:プロセス・エンジニアの好機到来 今日の自動車業界では、デジタル化やオートメーションなど、生産品質の向上を目的とした生産技術に大きな注目が集まっています。「スマート・ファクトリ」のコンセプトをベースに自律的な生産環境の構築を目指し、これを支える生産技術には、センサー検出、人工知能(AI)、データの集約、プロセス・オートメーション、IIoT(産業分野を対象としたモノのインターネット)などがあります。 初期品質を向上させ、ばらつきを排除することで、量産の安定化を実現でき、製品品質を担保することが可能になります。このスマート・プロダクションを推進してゆく上で、生産工程に途切れがないことは無論、生産の立ち上げが円滑で効率的であることも、生産技術の成熟度を示す第一の指標となります。 スマート・ファクトリの構築においては、プロセス・エンジニアリング(あるいはプロセス・チェーンのいずれかの段階)に携わるエンジニアの担当業務に、今後どの段階でどのような影響があるのか、疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。またこの難解そうなコンセプトに、漠然とした不安を感じている方もいるかもしれません。あるいはこのようなコンセプトが浸透してゆくと、ご自身が有する技術の有用性や雇用価値が薄れ、組織内の居場所がなくなることを心配される方もいるでしょう。しいてはスマート・ファクトリが雇用不安をもたらすと、あえて関心を示さない方もいるかと思われます。 そこでこのような疑問を解消すべく、スマート・ファクトリの構築によって、スマート・プロダクションに至るまでのプラニングやエンジニアリングのプロセスにどのような意義がもたらされるかを、プレス成形プロセス・チェーンの観点から探ってみましょう。 スマート・ファクトリ(スマート・プレスライン) プレス成形分野におけるスマート・ファクトリ(スマート・プレスライン)では、プランニングやエンジニアリングのデータ、そして製品開発で定めた品質仕様を織り込んだデジタル・プロセスのレプリカを活用し、設計を順守した生産を行います。同時に、生産データを継続的に収集・解析しながら、生産時の不具合予測も行います。このようにIIoTシステムがスマート・プロダクションを支えています。もちろん、データ解析や不具合予測はエンジニアリングの意図と相関させる必要があり、またそれをエンジニアリングおよびプラニングの部門にフィードバックとして伝達することで、今後のプロセス改善に役立てることもできます。スマート・プロダクションを会社全体で導入する際には、プロセス・エンジニアとそのマネージャーが重要な役割を担います。 コストやプロセスのプランニング段階では、材料利用や作業手順、品質管理などをすべて定義および設定します。一方、生産管理システムではプロセスの品質確認を行い、規定から外れた場合には即時検知することで、プランニングされた意図の常時順守を担保します。データ解析においては、ビッグデータを活用した統計手法や機械学習システムを用いてKPIや業績目標の達成度を測り、また相関性や根本原因の解析も行います。解析結果は、生産品質の予測や品質不良の回避策の検討などに活用されます。この予測精度は、デジタルに対応したモデルの品質と有用性だけでなく、人工知能システムの構造にも左右されることにもご留意ください。 スマート・ファクトリの前提となるスマート・エンジニアリング プレス成形のエンジニアリング部門は、スマート・ファクトリの運用において重要な役割を担います。デジタル・エンジニアリング・プロセスは、車両開発プロジェクトや品質仕様をもとに、コスト計画や工程計画を作成することから始まります。次にプロセス・エンジニアリングにて、生産管理、品質管理、不具合回避策などを定義します。また生産現場の諸条件を反映させたシミュレーション・モデルを構築し、統計的手法を用いたロバスト性解析を行うことで、プロセスの不確定要素を定量化し、品質や保守管理の予測に必要な参考データを算出します。生産現場のIIoTシステムに通知するデータの整合性を担保するには、エンジニアリング・プロセス・チェーンをすべて網羅する集約型のソフトウェア・プラットフォームが必要となります。 スマート・ファクトリの構築において、エンジニアやマネージャーが担うべき役割について、おわかりいただけたでしょうか。改めて単刀直入に申し上げます。もどきではない真のスマート・ファクトリには、スマート・エンジニアリングが不可欠です。エンジニアリングのデータ、モデル、アクティビティこそが、スマート・ファクトリの成功に大きく寄与するのです。 とはいえ、生産時の不具合をすべて排除し、円滑な生産を担保するには、エンジニアリング・モデルをベースに適正な予測能力を備えなければなりません。これには、エンジニアリングと生産のプロセスに特有の煩雑さやデータ伝達および情報交換に関わる問題を超越した、適切な解析手法や解析モデルが欠かせません。確固としたエンジニアリング・モデルの基盤が整った時点で初めてスマート・ファクトリの構築を開始できるのです。この先の話を進める前に、このスマート・エンジニアリングをベースに構築したスマート・ファクトリの利便性についてご紹介します。 図1.スマート・プレスラインのコントロール・ループ(情報通信技術を活用したデジタル支援) プレス成形プロセスにスマート・ファクトリを導入する場合、IIoTがすべてのプロセス・データやエンジニアリング・データを連結および集約するデジタル・データ・プラットフォームとして機能し、これがスマート・ファクトリのバックボーンとなります(図1)。 注目すべきは、図1に示したプロセスがスマート・エンジニアリングのプロセスを表しているだけでなく、従来のプロセスにも正確に対応していることです。従来のエンジニアリングとスマート・エンジニアリングの大きな違いは、完全集約型の電子化が行われているという点にあり、ロバスト性モデルやデータの相関性も重視されます。これはシステム・ソフトウェアのプロトコルに基づくデジタル化を通じて行います。このデジタル化はスマート・エンジニアリングの必須要件であり、図2のバックボーンとして示されています。 図2.スマート・プレスラインのレプリカと先行検討: システム・ソフトウェアのテクノロジを用いたスマート・エンジニアリング この図から、バックボーンのヒレ部分を置き替えるだけで、スマート・エンジニアリングがスマート・ファクトリを先取りしていることがわかります。つまりプロセス・エンジニアリングで行うロバスト性解析は、スマート・エンジニアリングのセンサー検出、機械学習、確率論的解析に相当するものであり、すなわちデジタル・エンジニアリングのプロセス・モデルから生産管理や解析データと同等のものを作成できるのです。 図3.量産不具合を排除するセンサー検出および生産管理 一般的な生産管理システムのデータを図3に示します。スマート・エンジニアリングのシステムを活用すれば、ほとんどの生産不具合をエンジニアリング段階で予測、特定、定量化することが可能になります。スマート・エンジニアリングでは、パラメータの変動幅を定義してロバスト性解析を行うことで、生産時の不具合を予測し、かつ適切な対策を講じることができます。これは金型のトライアウトやプレス生産中に対応策を模索するよりもはるかに効率的です。金型設計のロバスト性解析を用いて、たとえば、ブランクの位置決めや機械的特性、金型クリアランスのばらつきに対する感度、ブランクホルダやクッションの荷重に対する感度などをすべて評価・予測できます。また生産実行システムでは、この解析結果を基準状態として直に適用すれば、生産ラインの調整にも活用できます。 スマート・エンジニアリング・プロセスは、実際の生産プロセスをすべて集約しデジタル化しているため、完全集約型の(スマートな)デジタル・エンジニアリング・プロセスで作成したプロセス・モデルは、スマート・ファクトリ管理システムの運用に役立てることができます。その結果、実際の生産に役立つ情報を提供し、指針を示すことができるのです。 結論として、プロセス・エンジニアリングは、未来の不確実性を考慮し、デジタル技術で定量化されたデータを生成することで、スマート・ファクトリの実現に大きく貢献することは明らかです。これは、技術的に実現可能なだけではありません。これは、スマート・ファクトリの運用や失敗のない生産コンセプトを確立する上で、最も費用対効果の高い方法なのです。 - [部分最適からの脱却 → 全体最適に向けたAssembly評価](https://japanforming.com/部分最適からの脱却-→-全体最適に向けたassembly評価/) - 【背景】 急速に進んでいる少子高齢化による労働人口の減少、並びに匠の技と呼ばれた高いスキルを保有したエンジニアのリタイヤが進んでいます。そのため、人手不足、技術伝承を補完し企業成長を促進する施策の一環として、DXが取り沙汰されています。 もう一つ重要な側面として、古く日本の製造業は、ボトムアップ改善活動に代表される部分最適を強力に推し量り高度な成長を遂げてきました。一方、部分最適におけるデメリットとして、手法、組織、人財、ノウハウの部門間の差が進み、企業成長への大きな壁となるケースが散見されます。昨今の自動車業界は、EV化が加速し、従来の手法にとらわれない新規メーカーの参入も盛んで、既存メーカーにおいては、“木を見て森を見ず”という言葉で表現されているように、部分最適から全体最適への方針転換が必要であり、その活動を加速させるためのDXソリューションの重要性が増してきています。 【問題提起】 プレスエンジニアリングの世界では長く、単品公差を遵守するモノづくりが行われてきました。単品部品が高精度であれば、当然、組付け精度においても高い品質を担保する事が可能になります。しかしながら、もう少し俯瞰的に製品を見つめた場合、組付ける部品によって求める公差は違っても良いのではないか?という発想に至ります。この発想こそが全体最適への第一歩であり、我々のデジタルツールであるAutoForm Assemblyが強力なサポートを可能にします。 【AutoForm Assemblyについて】 AutoForm Assemblyは、BiWアセンブリのワークフロー:公差や品質の管理、プロセス・エンジニアリングから、生産のトライアウトおよび修正ループまで、全てをサポートするソフトウェアです。図1に想定する3つの運用ケースを示します。 図1:運用ケースとワークフロー ① 部品データ(Nominal)のみでの組付け精度検討 【対象部署】 組付け検討部署 【検討内容】 ・Process Feasibility(工程の実現可能性)、アセンブリの組み合わせ、 ジグとの干渉検討、クランプ、接合位置及び順番、溶接位置検討 ・測定工程の評価 ② 単品シミュレーション結果を運用した組付け時の精度、対策立案 【対象部署】 組付け検討部署、プレス生産技術部署 【検討内容】 ・単品結果(シミュレーション)を、アセンブリへ組付けた際の精度変化確認 ・アセンブリ時の部品感度調査 ・組付け時、精度担保の金型への見込み補正 ③ 実物単品パネルのSTL(例 非接触測定)から組付け時の精度、対策検討 【対象部署】 プレス生産技術部署、金型・組付けトライアウト部署 【検討内容】 ・実物プレス部品の寸法偏差がアセンブリに寄与する影響調査 ・アセンブリ工程でのスポット打点位置、スパン、順序検討、治具位置検討 プレス品においても、例外なく難成形部品は存在し、時には単品精度を担保するのが難しい場合も存在します。その際の公差緩和の一例として、経験則的に、相手側組付け部品との“相性”という抽象的なものさしに依存し、実物でしか確認できない状況が発生する場合があります。プレスエンジニアリングでは、単品精度を公差内に収束させるため、多くの時間、工数を費やしているにも関わらず、なぜ最終的に、曖昧な経験則的な判断に委ねられるのか?答えは事前に確認するツールが無かった、もしくは存在していたとしても、検討に過剰な工数がかかるといった背景が含んでいると考えられます。このような状況に、AutoForm Assemblyを活用すれば、事前にAssy組付け精度確認が可能となり、必要なAssy単位での公差検討もしくは、各単品部品の組付け精度への感度解析も可能になり、より生産的なエンジニアリング工数の確保に繋がっていくと考えられます。 では、どのようにワークフローに適用していくか?という点についてです。 冒頭で“全体最適”が急務であると述べましたが、乗り越えなくてはならないハードルが存在するのも事実です。部分最適(従来型:単品精度)でのワークフローから、全体最適(理想型:組付け精度)に移行するには、組織間のギャップ、個々のマインドセット、導入への時間&コストを明確にして進めていく必要があります。その為には、強いリーダーシップが必要であり、時にはトップダウン的な活動として、全員で意識合わせを実施しながら行っていく必要があります。 いくつかのユーザーにおいて、先述した③実物単品パネルのSTLから組付け時の精度、対象検討を目的にした導入ケースが多くみられるようになってきました。理由として、実物単品パネルのSTLデータを、AutoFormに取り込み組付けた際の精度確認と問題解決の検討ができるためです。この時、打点位置、治具位置の検討により最適な組付け条件などをバーチャル上で確認できます。これらの業務を通して、関係部署とのコミュニケーションを拡げ、部分最適からの脱却につながります。 このようにDXの促進のきっかけづくりはトップダウンで行われるかもしれませんが、日々の活動の中で業務に従事している方が最終的に効果を実感し、ボトムアップで活動を加速させていく必要があります。単純なデジタルツール導入ではなく、良品生産に向けて、一連の工程を適正化していくのが本来のDXであると認識しています。AutoFormでは、単純なデジタルツールの紹介に留まらず、課題が山積されるDX促進に対して、課題点抽出~定義~解決方法提案まで、包括的なサポートも始めておりますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。 - [最新技術による見積り業務支援: CAEを活用したプレス成形金型部品コスト目標の最適化](https://japanforming.com/caeを活用したプレス部品コストの最適化/) - 自動金型原価計算とExcelスプレッドシートの比較 自動車部品業界の市場競争が激化する中、企業は厳しい予算で事業活動を行い、収益を上げることを余儀なくされています。一方、プロジェクトの価格が市場平均を上回るとそのプロジェクトは採用されませんが、平均を下回る価格では企業の利益率に影響を与えます。そのため最適なコスト目標の設定は、OEMが直面する大きな課題となっています。プロジェクト・パッケージの市場展開前に適正な予算を定め、各項目の価格が妥当で矛盾もないことを確認する必要があります。 金型工場の場合、見積り作成を担当するエンジニアは、製品の複雑さを考慮しながら、全工程の詳細を予測しなければなりません。この作業は、予算が決定して初めて採算が合うようになることを覚えておいてください。企業の経費を最小限に抑えるには、迅速に業務を進めなければなりませんが、同時に、詳細まで確実に検討する必要があります。予算案が決まったら、次に予算と実際の金型製作費の整合性をとり、金型工場の利益を確保できるかを判断します。 市場競争が穏やかでコスト目標も明確ではなかった時代には、従来の金型のコスト見積りの手法が十分に機能していました。しかし今日では時代が進み、企業には競争力と利益が求められる中、素早く正確に予算を作成できる新たな手法が不可欠となっています。技術の進歩によって、さまざまな企業活動の効率化と高精度化が促進される中、予算作成についても、CAEシステムというデジタル・ソリューションをご利用いただくことができます。オートフォーム社では、製品の3D形状を使用してフィージビリティ(実現見込み)を計算し、ブランク、金型、および最終部品コストの見積りを作成するソフトウェア・ツールを提供しています。このソフトウェアをご活用いただくことで、迅速かつより正確な予算作成のプロセスを構築することが可能になります。(図:1A – 部品形状/ 1B – コスト見積り) 応答時間と精度にこだわったこのソフトウェアは、ドロー工程のみならず曲げ工程までの成形性を高速でシミュレーションし、材料特性と板厚を考慮した応力状態やひずみ、そして推定ブランク・サイズを算出します。これが複雑な製品を評価する上での基盤となり、これをベースに、金型コストに大きく影響する工程定義や製品修正の提案を行います。AutoFormソフトウェア内で製品を修正でき、この操作にCADの知識や経験は必要ありません。(図:2A – 迅速なシミュレーション結果/ 2B – 製品の修正/ 2C – 修正後の迅速なシミュレーション結果) 図2A: (左)迅速なドロー・シミュレーションの結果(赤の領域 – われの危険性) 図2B: (右)製品の修正と拘束の調整 図2C: 修正後の結果 見積り業務のフィージビリティ検討について特筆すべき点として、自動車の軽量化が求められる中、鉄鋼メーカーが長年にわたり、平均材料強度を(AHSSやマルテンサイト系鋼材まで)高めてきたことが挙げられます。材料の強度を高めることで、衝突安全性を低下させることなく、板厚を薄く軽量化することが可能になります。しかしその一方で、プレス成形工程は、不具合予測や工程定義が非常に複雑になってきています。そのためプレス成形工程を詳細まで検討するには、AutoFormなどCAEソフトウェアの非線形シミュレーションが不可欠です。また予算作成においても、エンジニアリングよりも時間単価の高いトライアウトでの不具合を回避するには、成形性の検討は非常に重要です。これは白物家電業界でも同様で、ステンレス合金でもこのような問題に直面し、場合によっては表面品質を悪化させる要因になるからです。 製品のフィージビリティを確認し、工程定義まで行うと、製品の3次元形状の特性をベースに金型コストが自動的に算出されます。AutoFormソフトウェアの3Dアプローチは、従来のExcelを用いた手法よりも利便性が高く、コスト見積りの精度も高まります。 次の例では、ある製品に長方形の穴を開けるための工程を定義します。 AutoFormソフトウェアでは、このカットに必要な部品のコストを穴の周長から計算し、その後、設計時間、2D/3D加工と調整、鋼材量などを含むすべての製造ステップを算出します。このように製品の特性に応じた工程計画を策定すると、次に、金型一式のコストおよび各工程のコスト、そして使用するリソースや設備のデータを含む詳細なリストを作成します。データは金型や機械加工の計画および生産管理に有用であり、また各部門の稼働率を予測することも可能になります。(図:3A – 方法計画/ 3B – 製造ステップ/ 3C – 金型コスト) 図4:ブランクの見積りと材料利用率およびブランクの単純化 見積り作成を担当するエンジニアの責務として、部品コストの評価も重要です。金型コストの作成と同様に、評価も素早く正確に行わなければなりません。なぜなら、この段階でコストが変動すると、それが見積りに大きく影響するからです。見積りが正確でなければ、プレス工場に大きな損失をもたらすことになりかねません。部品コストを最適化するには、ブランクも最適化した上で見積ることが何より重要です。ここでもCAEソフトウェアを有効活用すれば、3D形状の材料データとドロー形状をベースに、ドローまたは曲げによる引き伸ばし状態をシミュレーションし、正しいブランク形状を推定することが可能になります。また、材料利用率やせん断ブランクの作成も評価できるため、ブランクのブランキング工程も回避できます。 図5:金型一式の償却を考慮した部品コスト 一般論としては、あらゆる業界の競争の激化により、企業は多くの困難に直面しています。競争力を維持するには、ソフトウェア・ツールを活用して、各部門の効率を最適化しなければなりません。AutoFormのようなCAEソフトウェアを導入することで、部品や金型の見積り業務の標準化、迅速化、そして訴求力の強化を確立でき、これは企業の収益性を担保するための最初の一歩となります。Excelベースの見積り作成は、もはや前進的なソリューションではありません。見積り業務は、単にコストの最終金額を算出するだけでは済まされないのです。 以下、Bruning社の金型解析のスペシャリストであるロジェリオ・モウラ・マチャド氏と、Voa Indústria社エンジニアリング・マネージャのブルーノ・オルネラス氏による報告書からの抜粋です。ぜひご一読ください。 ロジェリオ・モウラ・マチャド氏: 「プレス成形部品のフィージビリティ検討、プレス成形工程の定義、金型予算の策定に割当てられる期間は確実に短縮されています。それ故に、予算編成の適正確認や標準化に対する要望は高まる一方です。 このような重圧の中、必要なPLMとプレス金型の投資額を策定する上で、AutoFormソフトウェアを積極活用しています。このソフトウェアを導入してから成形性を素早く検討できるようになり、重要なポイントの特定や、工程定義に必要なブランクの推定に役立てています。プロセスの詳細を簡単に整理できるため、正確なレポートを作成してお客様と共有したり、プロジェクトのキックオフに活用したり、また金型製造の検証にも役立てています。 当社ではプレスラインのセットアップ、金型サイズの見積り、会社のコスト・センターをベースとした自社コスト標準などを通じて、コストを見積もっています。エンジニアリング、原材料、機械加工、アセンブリ、トライアウトなど、金型製造の各段階で予算化されたコストを評価し、そして開発した金型のコスト予算を分析しながら、コストの調整を続けています」。 ブルーノ・オルネラス氏: 「当社では予算計画部門にAutoFormソフトウェア・ソリューションを導入し、業界で競争力を維持するために必要な2つの大きな柱である「コスト」と「製造時間」の観点からプロジェクトを管理しています。この技術のおかげで俊敏かつ機敏に対応することができ、市場に見合う条件を提示できるため、結果、激化する競争に打ち勝つことができるのです」。 ウェスリー・アパレシド・ダ・シルヴァ: オートフォーム社カスタマー・サポート所属のアプリケーション・エンジニア。プレス成形、生産、品質、プロセス・エンジニアリングおよび金型製造の分野における機能開発の分野で11年以上の経験を有しています。+55 11 4121 1644 - [小さな作業を積み重ねで、部品設計の改善目標を明確に!](https://japanforming.com/小さな作業を積み重ねで部品設計の改善/) - 簡単で使いやすい形状作成ツールを活用した素早い問題解決の取り組み 金型の工程設計エンジニアは、担当するプロジェクトについて何度も見直しを重ねるうちに、これが終わりを迎える日は永遠に来ないのではないかと感じる瞬間があるかもしれません。過去に似たようなプロジェクトを担当したことがあったとしても、以前にも増してタスクは増える一方だと弱音を吐きたくなることもあるでしょう。これは往々にして、過去の成果を上回り、「より良いもの」を目指さなくてはならない、という強迫観念があるためです。業界首位を堅守するには、どのような工程設計であれ、常になんらかの形で改良を施さなければなりません。たとえば、ブランクサイズの縮小、より薄い板材の使用、金型の短納期化、初期部品の品質向上、新たな材料の導入、工程数の削減など、改善が求められる分野は多岐にわたり、例を挙げればきりがありません。 ではここで視点を変えて、これをたとえ話に置き換えてみましょう。「あなたは、象をどのように食べますか?」このたとえ話についてはご存じの方も多いと思いますので、端的に結論だけを述べます。その答えは「さばいた肉をひとつずつ食べる」です。大きな成果を得るには、小さなことを一歩一歩、着実に進めてゆくことが肝要です。もちろん、実際に象を食べることはないにせよ、象なんて食べられないと、最初は誰もが思うでしょう。しかし大きな問題は、小さく分解することで、威圧感は和らぎます。つまり、適切なツールを活用しながら、課題を少しずつ解消してゆけばよいのです。 では新たなプレス成形金型の工程設計を例に考えてみましょう。工程設計の目標をほぼ満たした矢先に、部品の成形性に不具合が検出されました。下図のとおり、角度のついた壁面にわれがはっきりと確認できます。 この場合、手順をさかのぼり、バインダ、余肉、ドロービードの設計を見直せば、この不具合を解消できるかもしれません。しかしこれは検証を行った10個のモデルの中でも材料利用率が最も高く、効率も良いため、まずは他の選択肢を模索することになりました。まだ工程設計の初期段階なので、製品設計部門に変更を依頼できる可能性も残されています。部品のフィージビリティを簡単かつ効果的に判断し、それを製品設計の担当者に伝えるには、どのような対応策を取るべきでしょうか?これが「象の最初のひと切れ」となります。 まずはモーフィング機能を活用し、部品設計を見直すことになりました。剛体領域モーフィングで壁を回転させ、局部的な深さを浅くしたり、部品の全体的な深さを調整したりと、複数の修正案を試していきます。 部品性能の観点から、提案によっては製品設計部門が却下することもありえるため、部品の修正依頼は、不具合を確実に解消し最小限に抑える必要があります。これは複数のパラメータを組み合わせながら検証を進めるトライ&エラーで、それぞれのパラメータには候補となる値の幅があるため、「あたりをつけては確認する」という従来の方法は、非常に煩雑で膨大な時間を要します。代替策として、AutoForm-Sigmaを活用すれば、すべてのパラメータを効率的に検証することが可能になります。あらゆる修正案を含むひとつのデザイン・ファイルを設定するだけで、その他の操作は一切必要なく、その計算結果から明確な方向性が提示されるのです。 この事例でも、最小限の工数で対応できる最小限の部品修正について、効果的な対応策が特定されました。専用のモーフィング機能で、フィージビリティが担保された修正を行えることが判明しただけでなく、領域の限界も把握できたのです。これで製品設計部門に対して、簡単かつ正確に情報を伝達することが可能になりました。下図の結果は、左側が修正なしの基準設計、右側が深さを調整した設計です。深さを約4.38 mm緩和すると、われのリスクが解消されます。 この事例に用いた設計工程は、特筆に値します。これは特定の機能やソフトウエア製品のみを活用することで成し得た結果ではありません。部門間をまたがる効率的な情報伝達、プレス成形技術の深い知識、そしてユーザーの判断力といった貢献によるところが非常に大きいのです。これらが有効に相まってこそ、ターゲットをすべて満たす設計を実現できるのです。あまりにも多くのリソースがあるために、有効な手段をつい忘れてしまったり、ひとつの問題に気を取られすぎたりすることがあります。業界を主導していくには、日々の業務で積極的に課題を解消していく姿勢が重要です。すべての業務を同じ手順、同じ順序でこなすことはできません。材料の削減、あるいは工程の効率化や安定化といった課題について、日頃からより深く意識を向ける必要があります。あらゆるツールを駆使して、自分だけの革新的な成功への道を切り開いてください。 モーフィング機能の詳細については、AutoFormサービス・センターをご覧ください。AutoFormサービス・センターは、E-ラーニング、知識ベース(FAQ)、「ベストプラクティス」などのオンライン・サポートをご活用いただけるお客様専用のウェブサイトです。ご質問とご要望につきましては、ご遠慮なくオートフォーム社テクニカル・サポートまでお問い合わせください。 - [中国のHuizhong社がソフトウェアの自動化で、工程設計時間を50%削減し、手作業によるミスを回避](https://japanforming.com/工程時間半減と人為的過誤の排除を達成/) - Huizhong社は中国の大手自動車部品メーカーです。SAICグループ(上海汽車集団)の傘下企業として、SAICゼネラルモーターズ、SAICフォルクスワーゲン、上海汽車集団などのグループ企業のみならず、関連会社以外のOEMにも、シャシー部品を広く供給しています。同社におけるプレス成形工程の設計業務は、プレス成形金型の切削直前にあたるエンジニアリングの最終段階で行うため、厳しい時間的制約にさらされています。そこでHuizhong社はセミオートマチックなワークフローを導入し、工程設計業務の20~50%時間短縮に成功しました。本稿では、Huizhong社における従来のワークフローと新たなセミオートマチックのワークフローの比較を交えた導入事例をご紹介します。 従来のプレス成形の工程コンセプトは、プレス加工用金型のデザインに紐づけられていません。そのため「工程設計」では金型サーフェスのデザインをゼロから(あるいはCADライブラリから)再構築し、それをもとにプレス加工用金型の切削を行います。これは煩雑な作業で、単純な部品であっても数日を要します。また手作業で行うためにエラーも発生しやすく、コンセプト段階で問題を解決しても、最終設計の段階で再び問題が発生する場合もあります。そこでHuizhong社では、オートフォーム社のAutoForm-ProcessDesignerforCATIAをベースとした工程設計のセミオートマチックなワークフローを導入し、20~50%の時間短縮に成功しました。 Huizhong社とオートフォーム社は、ワークフローの検討段階において、セミオートマチックの手法と従来のCADネイティブ機能のみを用いる手法を比較しました。 このプロジェクトに使用した部品はHuizhong社サスペンション・システムのフロント・クレードルです。サスペンションの剛性をサポートする部品で、製造にはクラッシュフォーミング、トリム、フランジの工程を用います。 両社がAutoFormソフトウェアを活用し、工程コンセプトのシミュレーション、計画、開発を行い、その後、デジタル上でデータを共有しました。特定の工程に関するデータを、素早く明瞭に、詳細まで伝達できるため、すぐにサーフェス作成や他の形状編集の作業に着手し、最終工程設計を進めることが可能になります。その上、このソフトウェアはプレス成形の工程設計に特化した機能を備えているため、非常に便利です。また従来の手法であるソフトウェアの一元化やサーフェス専用機能に対応していないCATIAネイティブを使用した場合と比較すると、作業時間は半分程度になります。さらには、この手法はセミオートマチックであるため、高精度なサーフェスを作成できるだけでなく、手作業によるミスも回避できます。またデータの関連付けと、部品設計の変更に応じたアップデートも可能です。 Huizhong社金型センター長のチー博士は、以下のように述べています。「AutoFormのシームレスな統合ワークフローを導入してから、作業効率が約20%向上しました。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのデザイン・テンプレートを使用した事例では、製品の品質と安定性を担保しつつ、効率の50%向上を実現できました」。 Huizhong社ではこの評価プロジェクトの完了後、AutoFormをベースに統合されたセミオートマチックの方式をワークフローに導入しました。 - [[ユーザー様向け]AutoForm-Sigmaを使用した量産ばらつき検討における効率的な設定のヒント](https://japanforming.com/量産ばらつきの効率的な設定のヒント/) - はじめに AutoForm-Sigmaでは、無数にある加工条件の中から実際の生産時にばらつく可能性のあるパラメータを「変数」として定義することで、生産時のばらつきをバーチャルに再現して不具合の有無を確認できる「ロバスト性解析」を実施することができます。AutoForm-FormingSolverをご契約のユーザー様は有償オプションを追加することなくロバスト性解析を実施可能ですが、「計算時間が長い」・「使うための考え方が難しい」といったお声を頂くこともあります。そこで本稿では、自社業務の時間軸に合わせて効率的にロバスト性解析を実施するためのヒントをご紹介します。 ロバスト性解析の基本的な考え方 通常のシミュレーションでは、一つの解析モデルにつき一つの条件の組み合わせを検討します。一方ロバスト性解析は、前述の通り生産時に現場でばらつく可能性のある加工条件を「変数」とすることで、パラメータにばらつき幅を持たせて設定します。加工条件によって、コントロールが可能なものと、不可能なものがあり、一般的には以下のような条件のばらつきを考慮します。 ・材料の板厚(規格公差内でのばらつき) ・材料の機械特性(規格公差内でのばらつき) ・摩擦/潤滑(生産時の潤滑材の温度変化などによる変動) ・プレス荷重(機械仕様や設置環境による不安定性の考慮) ・材料の置き(投入)位置(ガイドのクリアランスによる投入位置の変動) AutoForm-Sigmaでは統計的な手法を用いて、必要最低限の計算(組み合わせ)数で指定したばらつき範囲の結果を網羅的に評価します。 変数設定と計算時間 仮に、通常のシミュレーションで1時間かかるモデルがあったとします。また前述のパラメータすべてを変数として設定し、ばらつきを考慮するために必要なトータル組み合わせ数を128とします。この場合、AutoForm-Sigmaを利用せずに順番に計算した場合に必要となる計算時間は以下のようになります。 通常のシミュレーション時間:1時間 × 変数の組み合わせ数:128 = 128時間 AutoForm-FormingSolverに無償付与されている「s2」のライセンスを使用した場合、同時に2つの計算を実行することができます。この場合必要な計算時間は以下のようになります。 総当たり計算時間:128時間 ÷ 同時実行可能数:2 = 64時間 (≒2日半強) 2日半を超える時間は決して短いとは言えませんので、業務フローに組み込むためには以下のような工夫をすることも考えられます。 たとえば、プレス機が最新のもので、荷重の安定性が保証されているようであれば、荷重のばらつきは考慮すべき変数から除外できるかもしれません。また、材料の置き位置が常に安定する位置決めゲージの採用など、成形性や精度への影響を除外できる設備仕様であれば、同様に考慮すべき変数から除外しても良い可能性があります。潤滑に関しては、ほぼ流入のない成形条件の場合は、除外できる可能性があります。材料特性に関しては、ばらつきを規格以上にコントロールすることは現実的ではありません。ひとつの例として、材料に関するパラメータのみをばらつきとして考慮すると、必要な計算時間は次のようになります。 通常のシミュレーション時間:1時間 × 材料のみ考慮した組み合わせ数:64 = 64時間 総当たり計算時間:64時間 ÷ 同時実行可能数:2 = 32時間(1.3日) 1.3日であれば、週末や他の業務でしばらくシミュレーションを行わないタイミングなどの期間ですべての計算を完了することができます。 材料特性のばらつきのみを考慮したロバスト性評価 計算時間を短縮するための工夫は、本来考慮すべきばらつきがないものとして解析を実施することを意味します。つまり、実際に起こる可能性のある不良を予見できずに見逃してしまうリスクが発生します。そこで、変数の節約がロバスト性評価にどの程度影響を及ぼすか、モデルを使って評価します。解析対象は、Web上に公開されている部品を参考にオートフォームジャパンで作成した、燃料タンクを模擬した形状です。ここではFLC(成形限界曲線)に基づいてわれを評価するマックス・フェイラーとそのばらつきを分析することで、ドロー工程における突発われ不具合を評価します。 マックス・フェイラー(詳細)は、材料の主ひずみ状態がFLC上にあるとき1を取る結果評価値で、0.8の場合は成形限界線までの最大主ひずみの余裕度が20%あることを示します。AutoFormでロバスト性評価を行う場合、われのしきい値は0.9として評価します。 図1 ドロー成形後のマックス・フェイラーによる割れ評価(材料ばらつきのみ考慮) 図1のラベル左側の数値がばらつきの基準となる条件での結果を示しており、0.79はマックス・フェイラーにおけるわれ判定基準を満たしています。一方、図1のラベル右側のグレーの数値は加工条件がばらついた場合の最大値と最小値を示しており、材料パラメータのばらつきがあった場合、量産時に不良パネルが出る可能性があることを示しています。(マックス・フェイラーが最大で0.983>0.9となる可能性を示しているため) 図2 ドロー工程における量産時突発われ発生率(材料ばらつきのみ考慮) 図2は設定されたばらつきに基づいて予測される、われに関する工程能力指数(Cpk)と不良発生率を示します。Cpkが0.333、不良率は15.9%と予測され、通常の品質管理基準から考えると、さまざまな加工条件のうち材料特性がばらついただけで、容認できないレベルの不良率であることを示しています。このように、成形性に対して材料特性の影響が支配的であることが分かっている場合には、考慮すべきばらつきを最小限として計算時間を節約しても、量産不良予測における一つの品質管理基準として、十分役立てることができます。 すべてのばらつきを考慮したロバスト性評価 前項では、計算時間を少なくするため材料に関するパラメータのばらつきのみを考慮してシミュレーションを実施しました。これは前述の通り、本来の生産条件と比較すると「甘い」ばらつき条件での不良予測結果で、この数値をそのまま不良率の予測結果として利用するにはリスクがあります。節約した条件での判定を信頼できるものとするためには、実際の業務フロー外で時間があるときに、すべてのばらつきを考慮したロバスト性解析結果と比較して、不良の程度や部位の予測が十分なものであることを確認しておくことを推奨します。 図3 ドロー成形後のマックス・フェイラーによる割れ評価(全ばらつきを考慮) 図3はすべてのばらつきを考慮したロバスト性解析の結果を示します。マックス・フェイラーの最大値は1.123となり、材料のみを考慮した場合と比較してより厳しい方向の予測となります。ただし、突発われが予測される部位についてはどちらも変わらない評価となります。 図4 ドロー工程における量産時突発われ発生率(全ばらつきを考慮) 図4は全ばらつきを考慮した場合の突発割れの発生率予測結果を示します。図2と比較して予測される不良率はおよそ倍となり、いずれにしても許容できない程度ではあるものの、率そのものの評価としては大きく異なるものになります。 以上のことから、評価すべき部位や、突発不具合の要因となる誤差因子についてある程度あたりがついている場合は、考慮すべきばらつきをある程度限定して業務フロー内で小規模なロバスト性解析を行うという選択肢もあるのではないでしょうか。もちろんこのような運用のためには事前にその有効性を確認しておく必要があります。時間的制約の少ないタイミングでこういった確認を行っておくことで、シミュレーション業務全体の負荷を平準化し、効率的に業務の付加価値を高めることが可能となります。 AutoForm-Sigmaの製品構成のご案内 AutoForm-Sigmaの設定と評価機能は、AutoForm-Explorerの標準機能です。AutoForm-Sigmaの計算を実行する機能は、AutoForm-FormingSolver 1本につき同時実行可能数2のモジュール(s2)が標準機能として実装されています。 同時実行可能数を拡張するためのオプション製品としてs 8、s - [北米における自動車向け鋼材に関する最新情報](https://japanforming.com/北米における自動車向け鋼材に関する最新情報/) - 2021年度GDISシンポジウム概略 GDIS (Great Design in Steels)は、長年にわたりデトロイト地区の鉄鋼業界が毎年春に主催している1日間のシンポジウムです。このシンポジウムには多くの参加者が集まり、自動車業界における鋼材の新たな活用方法やトレンドについて情報交換が行われます。多くの産業フェアと同様に、2020年のGDISは開催が見送られましたが、2021年はバーチャル開催ながらも、多くの参加者が集い、盛況を博しました。 本稿では、2021年5月19日に開催されたGDISについて、概略をご報告いたします。当然ながら、この概略報告はオートフォーム社の視点で捉えたものであり、また自動車用板金のエコシステムという特定分野に焦点を絞った主観的なものでありますこと、あらかじめご了承ください。 オートフォーム社およびCleveland Cliffs社(旧A K Steel社)は、第3世代AHSS鋼板パネルのスプリングバックをどのように管理・緩和できるかを調査する自動車および鋼材業界の共同プロジェクトに参画し、一定の成果を収めました。このプロジェクトでは、パネルに流入ビード(flow bead)およびステイク・ビード(stake bead)を追加することで、プレス成形中に生じるスプリングバックを効果的に制御できる、という仮説をたてました。プロジェクトの前半では、流入ビード高とステイク・ビード高のマトリックス全体を網羅する多数のパネルを製作しました。次にこれらのパネルをスキャンしてパラメータを記録し、パネルのひずみをビード寸法の関数として、特性を算出しました。 図1:クリックして拡大表示 この特性評価から、パネル形状の異なる要素のひずみを緩和する効果的な方法について、試験に適用したマトリックスの範疇における結論が導かれました。このプロジェクトの後半ではAutoForm-Sigmaを活用し、ビード寸法の範囲全体を網羅する包括的なシミュレーションを通じて調査を行いました。このバーチャルでの調査から明らかになった点として、シミュレーションの結果と実パネル分析結果の相関関係、パネルの面品質不良に対する流入ビードとステイク・ビードの影響、および明確に裏づけられたこれらの影響範囲などが挙げられます。ひいては、今後の金型・プロセス開発では、このバーチャルでの調査を先行実施することで、最も効果的なスプリングバック緩和方法を検証することが可能になります。 図2:クリックして拡大表示 GDISでは多岐にわたる分野について、オートフォーム社のみならず多くの参加者による展示や発表がありました。 特にOEMによる材料活用やエンジニアリング業務の進化に関する展示は必見の価値があります。バッテリー電気自動車(BEV)の台頭もあり、課題が山積している軽量化と安全性については、さまざまな方策が提示されていました。 図3:クリックして拡大表示 シンポジウムで取り上げられたテーマについて、いくつかご紹介します。 高強度および高成形性を兼ね備えた第3世代AHSS鋼材が注目を集める中、PHS(プレス硬化鋼材)の活用も広がっています 主にPHSの中でもテーラー・ロールド・ブランクが採用される傾向にあります 第3世代に顕著な、たとえば、局部的な成形性(エッジおよびサーフェス・クラックの対応策)、溶接接合中に生じるLMEクラックの緩和といった問題の解決に取り組んでいます 上記の詳細について、あるいはGDISで発表されたプレゼンテーションについてご興味のある方は、以下のページをご覧ください。 https://www.steel.org/steel-markets/automotive/gdis/2021-gdis-presentations/. 最後に、シミュレーション結果の信頼性を高めるために不可欠な材料試験と特性評価について、ゼネラルモーターズ社グローバルR&D部門のトム・ストウトン氏による示唆に富んだ問いを紹介します。 図4:クリックして拡大表示 このようにレトリックな質問に対する「答」は簡単に推測できるかと思われます。詳しくは、ストウトン氏のプレゼンテーションをご覧ください。 - [金型見込み補正前の工程ロバスト性検証の重要性](https://japanforming.com/金型見込み補正前の工程ロバスト性検証の重要性/) - 手遅れになる前に予測できない不確実な要因を取り除く 中強度鋼によってはスプリングバック挙動を予測できるものもありますが、ほとんどの高強度鋼、デュアルフェーズ鋼、さらにはアルミニウムなど、その弾性挙動が比較的大きいことから、スプリングバックの予測は非常に困難です。そして、スプリングバックの予測の難しさは、プレス成形業界が抱える大きな課題となっています。金型を正確に見込み補正できなければ、膨大な費用的損失につながるおそれがあります。本稿では、なぜ金型を見込み補正する前に、工程のロバスト性や感度を確認すべきかについてご説明します。これは見込み補正と密接に関わるものですが、ユーザーの多くは無関心です。 金属プレス成形工程チェーンの設計段階では、シミュレーションにて、まず成形性を確認し、次に金型の見込み補正をします。しかし、特定の条件下におけるシミュレーション結果に基づく仮想的な見込み補正は、現実世界の生産現場で生じる制御不能なノイズから生じるばらつきを考慮しないため、シミュレーション結果と現実のシートの動作に差異が生じるのです。特定の条件下におけるシミュレーションでは、材料特性、ブランク板厚、潤滑などのパラメータには固定値が設定されています。しかし現実の量産では、材料供給元によりコイルに若干の違いがあるため、材料の特性は一律ではなくばらつきます。このような変動は顕著であるにも関わらず、ほとんど制御することができません。その結果、現実に生じるパネルのスプリングバックはシミュレーション結果と異なることになり、そもそも見込み補正の意味がなくなってしまうことになります。そうなると必然的に何度も金型の再切削を繰り返すことになり、時間的にも資源的にもコストがかさんでしまいます。 オートフォーム社では、ノイズから生じるばらつきを考慮しながらロバストな見込み補正を行うことができる包括的な手法を開発しました。アンダーボディ・クロス・メンバーの簡易的な事例をご紹介します。この部品は設計段階にてシミュレーションにおける成形性試験に合格しています。ここで重要となるのが、工程のロバスト性や感度の検討です。 マウスを何度かクリックするだけで、工程に共通するばらつきを許容範囲内で考慮したロバスト性のシミュレーションを設定できます。ばらつきには降伏応力、引張強度、r値、潤滑、ブランクの板厚などの材料特性が含まれ、ばらつきの範囲はオートフォーム社がこれまで扱ってきた材料の80%程度から自社規格を作成しあらかじめ定義されています。ただ理想的には、採用する材料のばらつきの範囲について、プロジェクトごとに材料供給元のログ・ファイルから過去数ヶ月~数年分のデータと照合して検証し、必要に応じて範囲を調整しなければなりません。AutoFormソフトウェアによるロバスト性の設定例を表1に示します。材料の降伏応力と引張強度は、AutoFormが自動決定する相関係数にて、常に相互依存になっている必要があります。範囲はパーセンテージまたは絶対値で定義できます。 相関係数 最小 最大 標準偏差 降伏応力 315 385 3.33% 引張強度 1 624 694 3.33% 潤滑 -10% 10% 3.33% ブランクの板厚 -10% 10% 3.33% 材料のr値 -10% 10% 3.33% 表1: AutoFormのロバスト性設定 シミュレーションの完了後、AutoFormの工程ロバスト性分析オプションにより検証します。見込み補正前に検証すべき重要な機能として、工程能力(Cp)があります。基本的に、Cpは工程の一貫性または再現性を表します。複数回のプレスでシートのスプリングバックが再現できなければ、スプリングバックは不安定だということになるため、見込み補正をしても無駄になります。サッカーのペナルティキックの練習を思い浮かべてみてください。もし離れた場所からボールを蹴ったとして、毎回同じ場所に蹴ることができれば、シュートは予測可能になります。最終的には、ゴール・ポストに安定してボールを蹴ることができるように、技術を調整すればよいのです。オートフォーム社の手法も同じ仕組みです。見込み補正前に大量のデータセットでスプリングバックに一貫性を持たせることで、安定した金型の見込み補正を行うことができるようになります。つまり、寸法公差内に収まるように再調整することが可能になるのです。 下図のCp機能が示すとおり、このパネルのスプリングバックはばらつきが大きいことがわかります。また併せて、同じ感度で工程を進めた場合の潜在的なスクラップ率も示されています。この場合、ある領域の平均スクラップ率は約7%です。平均的な自動車生産台数を年間30万台と想定すると、工程パラメータの変動からスプリングバックが不安定になることで、なんと21,000個もの部品が廃棄されることになります。 図2: AutoFormによるロバスト性評価 さらにはこの解析から、もっとも寄与度が高いパラメータについて、理解を深めることができます。この例では、寄与度がもっとも高いパラメータはブランクの板厚です。つまり、製造されたコイルがシミュレーションで設定した板厚よりも薄いと、スプリングバックが非常に変則的となり、結果的にスクラップ率が高まることを意味しています。 設計段階のこの時点において、潜在的な問題をシミュレーションで予測し、工程に修正を加えることで、時間、コスト、資源を大幅に削減できます。たとえばこの事例では、スプリングバックのばらつきが大きい領域に隣接するビードの剛性を上げるといった対応策が考えられます。ビードを強めると、さらに塑性ひずみが誘発され、この不安定なスプリングバックの問題が解消される場合があります。 修正を加え、工程のロバスト性を再評価する「オールインワン」の手法は、1つのシミュレーション・ファイルで実行できます。この手法は既存のロバスト性の設定と最適化を組み合わせたもので、再現性(Cp)を再評価しながら、より高度な塑性ひずみを誘発するようにビードを最適化し、同時にわれのリスクを抑制します(下図参照)。 図3: ロバスト性プロセス改善 この初期の手法は時間を要すると思われるかもしれませんが、工程チェーンの早い段階で実行すれば、コストや資源の節減だけでなく、大きな時間短縮も実現できるのです。米国では多くのユーザーにこの包括的な手法をご活用いただいています。本稿から、見込み補正前のロバスト性検討により多くの恩恵を受けることができることを、ユーザーの皆様にご理解していただけると幸いです。 この記事に興味をお持ちになった読者の方には、「マヒンドラ社の金型およびダイ工場: スプリングバック見込み補正なしでのフード・アウターのスプリングバックの緩和」の記事もぜひご一読ください。 - [熱間プレス成形シミュレーションと高度な摩擦モデル](https://japanforming.com/熱間プレス成形シミュレーションと高度な摩擦/) - 熱間プレス成形シミュレーションの精度が飛躍的に高まります 熱間プレス成形の摩擦挙動の研究は、これまで科学論文を通じてのみ行われてきました。その理由は、冷間プレス成形のように高度な摩擦モデルをプレス成形シミュレーションに組み込む産業向けソリューションがなかったからです。本稿では、熱間プレス成形シミュレーションの盲点となっていた摩擦の概念と、それを具体化に導く近年の画期的な開発について、AutoFormプレス成形シミュレーションに精通したアルパー・ギュナー博士とTriboForm高度摩擦モデルの開発を担うジョハン・ホール博士が解説します。科学論文を通じた研究から、摩擦は熱間プレス成形に大きな影響を与えることが示唆されているため、これは見過ごすことのできない重要な研究分野です。 熱間プレス成形の進行中に摩擦係数が変化することは、実験に裏付けられた証拠が揃っています。しかし一方、熱間プレス成形シミュレーションには、これまで一定の摩擦係数が用いられていました。よってこの業界標準を改善すべきことは、鉄鋼メーカーやOEM、それにオートフォーム社をはじめとした多くの関係者に喫緊の課題となっていました。その中、タタ・スチール社、ボルボ・カーズ社、トライボフォーム社が開発プロジェクトを立ち上げ、熱間プレス成形シミュレーションに実際の正確な摩擦条件を適用することを目標に掲げました。このプロジェクトでは、摩擦モデルだけでなく、シートと金型間の熱伝達係数の説明についても取り組みが進められました。 そして新たに画期的な熱伝達モデルが開発されたのです。成形工程の進行中、シートと金型の間で熱伝達が生じますが、部品の最終的な材料特性は、シートの冷却中に決まります。これは冷間プレス成形における高度摩擦解析と同様ですが、これまで熱間プレス成形では考慮されたことはありませんでした。 熱間プレス成形シミュレーション、最大の弱点 … 今日までは プロセス・エンジニアは温度依存のR値を伴う非常に高度なモデルを採用することで、温度に依存したFLCを算出できるようになりました。これによって熱間プレス成形シミュレーションは、通常の冷間プレス成形シミュレーションと同等の精度が担保されます。しかし高度なモデルを採用しているにも関わらず、未だにエンジニアの多くは、摩擦には一定のクーロン値(一般的には摩擦係数= 0.45)を適用しています。しかし実際の摩擦が固定値でないことは、プロセス・エンジニアならば誰もが認める事実です。 また熱間プレス成形工程では摩擦が一定になり得ないことは、直感的に考えても疑いようがありません。加熱炉の高温下で煌々と輝くシートの温度は、約930°Cにも達します。加熱炉から抽出され8〜10秒の移動時間を経ると、金型に載せる時点におけるシートの温度は800°C前後となります。また高温に熱された素材がプレス成形金型と接触する際のコーティングについても考慮が必要です。プレス成形工程を通じて、温度、接触条件、速度のすべてが変化してゆきます。このような中で固定値の摩擦係数を用いると、物理的な変動が単純化されすぎてしまい、正確な数値を算出することができません。 最初の一歩: 高度摩擦モデルの開発と初回検証事例 タタ・スチール社、ボルボ・カーズ社、トライボフォーム社による共同プロジェクトは2年に及びました。熱間プレス成形における摩擦特性について、タタ・スチール社が実験的試験を行い、その結果をもとにトライボフォーム社が4次元摩擦モデルを開発しました。そして初期検証段階にてボルボ・カーズ社の様々な車体部品を使い、シミュレーション精度の改善を検証したのです。 このモデルをシミュレーションに適用することで、シートのコーティングの影響、材料特性、シートと金型の間の接触挙動の影響のみならず、接触面圧、シート材のひずみ、界面温度、スライド速度などの加工条件まで幅広く考慮できます。冷間プレス成形のシミュレーションでは、温度の影響を考慮した同様の4次元摩擦モデルがすでにサポートされていました。しかし冷間と熱間のプレス成形では、摩擦に対する温度の影響はまったく異なるため、トライボフォーム社が摩擦モデルの開発をさらに進めました。 トライボフォーム社が開発した熱間プレス成形の高度摩擦モデルは、4つの加工条件を考慮します。一つ目は、温度が上昇すると材料強度が低下するといった温度依存の影響です。二つ目は、材料が型材質に接着する現象やシートと金型のせん断強度などの界面効果も、温度依存と併せて考慮できます。三つ目は、材料の強度を含む材料特性とシートのコーティング(通常、ケイ酸アルミニウム)に対する温度の影響です。そして4つ目は、接触面圧や材料の伸びなどひずみによる摩擦条件の変化や、工程中の速度依存性も考慮します。 最新のAutoForm R10のリリースから、摩擦係数と熱伝達率の両方を直接適用できるパッケージをご利用いただけるようになりました。もはや摩擦に関する検証実験は必要なくなり、また理論的・実践的な知識について頭を悩ませることもありません。ソフトウェアに用意されたボタンをクリックするだけで、諸問題を解決に導くことができます。 複雑なトライボロジを簡単に解き明かすTriboFormをぜひご活用ください。 詳細は の『Application of an Advanced Friction Model in Hot Stamping Simulations: A Numerical and Experimental Investigation of an A-Pillar Reinforcement Panel from Volvo Cars - IOPscience』(ボルボ・カーズ社、タタ・スチール社、ドルトムント技術大学共著)でご覧いただけます。 また、トライボフォーム社テクニカル・プロダクトマネージャ、サナズ・ヘラフマニ博士が、Forming in Car Body Engineeringのイベントで、"How important is advanced friction modelling for - [教科書と最新技術シミュレーションのせめぎ合い](https://japanforming.com/教科書と最新技術シミュレーションのせめぎ合い/) - シミュレーションの活用が進む中、教科書の計算式はいまでも有用でしょうか? 過去からの変遷 チューブ・ハイドロフォーミングは、複雑な部品を低コストで製造できる技術としてかなり以前から存在し、常に進化を続けています。これは、チューブ・ハイドロフォーミング工程を複雑な数式で表すことに成功した先達のエンジニアたちの努力によるものです。難しい概念を計算式という形に簡略化することで、金型エンジニアが適時に現象を把握し、応用できるようなったのです。金型の作成前に、この計算式に金型のデータを当て込むことが、部品生産を安定して行うための原点となります。しかしシミュレーションの技術進歩が著しい中、計算式をもとに試行錯誤する必要はなくなりつつあります。では従来の計算式は、新たな技術に対してどのような役割を担うのでしょうか。その一例をご紹介します。 チューブ成形工程の最適なパラメータを算出するには、アルタンが確立したキャリブレーションの計算式を活用できます(図1)。 図1 – アルタンによるキャリブレーション圧の計算式 算出される圧力は、材料の降伏応力、最小部品半径、壁の板厚、といったパラメータによって異なり、たとえば均質なチューブを使用するなどの前提条件も考慮しなければなりません。この計算式である程度までは問題なく対応できますが、部品が複雑になるにつれ、作業が込み入ってきます。そこで教科書に説明がない応用編として、シミュレーションの使用が効果的です。シミュレーションでは複数のキャリブレーション圧をわずか数分で試せるため、瞬時に判断を下すことができます。 例として、構造が比較的簡素なブレーキ・ペダル部品をシミュレーションしてみましょう。まずアルタンの計算式で算出したキャリブレーション圧79.1 MPaでシミュレーションを実行しました。すると部品と金型の間の接触距離は5 mmとなり、現行の基準では許容範囲外となります(図2参照)。 図2 – アルタンのキャリブレーション圧を適用した場合の接触距離と非線形マックス・フェイラー アルタンの計算式は十分なキャリブレーション圧を推測するために使用しますが、シミュレーションでは必要な圧力を正確に特定します。分析的に最適化を行うシミュレーションでは、複数のパラメータを同時に解析することができます。この事例では、調査した工程の変化はキャリブレーション圧のみですが、金型とチューブの接触距離を1 mm未満に収められました。 図3 – 接触距離と圧力(左上)、マックス・フェイラーと圧力(右上)、最適化された接触距離(左下)、最適化されたマックス・フェイラー(右下)。図3の下に示す通り、材料はFLD(成形限界図)の不具合限界未満に維持。 これらの結果は、プロセス限界ウィンドウに明確に可視化されます。適用する圧力には、ほとんど変更の余地がありません。高すぎれば部品はわれ、低すぎると1 mmの部品公差を満たせません。このシミュレーションの結果から、アルタンの計算式から算出した79.1 MPaではなく、96.5 MPaのキャリブレーション圧が最適であることが判明しました。部品にわれが生じる時に接触距離が公差内になければ、工程を修正しなければならなかったでしょう。 しかしシミュレーションは、これまでエンジニアが積み上げてきた経験をそのまま置換できるものではありません。むしろシミュレーションを活用することで、エンジニアの工数とシミュレーションの時間だけでトライアルができるため、現場で試行錯誤しながら金型を切削する手間が省かれ、またその他のコスト削減にも貢献します。アルタンの計算式は、簡単な部品や工程であれば初期概算値として有効です。しかし自動車業界では、より複雑な部品を短納期かつ低価格で提供することが求められているため、この計算式では対応しきれません。シミュレーションを効果的に用いることで、より良い部品が得られるだけでなく、コストも削減できます(以下の図4を参照)。 図4 – 金型生産前にシミュレーションを活用した場合に見込まれる節減 金型や工程に関する一連の修正を素早く計算できるため、金型を再切削したり、設計の不備が発覚してから工程を再設計するといった煩雑な作業がなくなります。 - [生産時のばらつきを考慮した効率的な見込み補正検討業務事例](https://japanforming.com/生産時のばらつきを考慮した効率的な見込み補正/) - 自動車業界全体において環境負荷低減の要求が高まるなか、車体軽量化の一つの方策として超高張力鋼の適用範囲がますます拡大しています。超高張力鋼を採用するにあたっては、スプリングバック見込み補正の困難さが、コストやリードタイム削減の大きな障壁となっています。見込み補正量の決定方法や、補正面の作成方法が大きな課題であることに加えて、スプリングバック挙動のばらつきが問題となるケースも多く見受けられます。このようなケースでは、製品の設計変更や加工のコンセプト変更など、成形性検討の早期段階におけるばらつきの確認と対策検討が不可欠となりつつあります。弊社のお客様の中でも、成形性検討の早期段階において製品寸法精度のばらつきに対して最も有利なダイフェースコンセプトを採用することで、見込み補正業務の効率化が進んでいます。本稿では、成形性検討の早期段階からばらつきを考慮することで、効率的かつ確実な見込み補正ワークフローを弊社で再現した事例をご紹介します。 検討する部品はDash SideというBody Side部品の前側、または、アクセル、ブレーキ位置の側面に位置する高強度鋼板を使用した部品です。(※モデル形状はWebで公開された部品形状を参考にAFJPが作成)。今回の材料は780Mpaの材料を用いた検討を実施します。 高強度鋼板は、強度が上がるにつれて成形性では板減のしきい値が軟鋼に比べてより厳しく、プレス機の加工荷重も不足しがちになります。また、凍結形状の有無によりスプリングバック傾向が反転することもあり、非常に検討が難しい材料です。生産時には材料のロットが変わることで成形性や製品の寸法精度がばらつき、不良が発生するといった問題も日常的に耳にします。これらの問題を解決するには、成形性、スプリングバック量、およびそのばらつきを考慮した検討が重要となります。 AutoFormで見込み補正の検討を行う場合、次のワークフローに則った検討が推奨しています。 今回の事例では、上記ワークフローの1~5までの検討内容、結果をご紹介します。 1.ベース・シミュレーションの実行 まず初めに、部品形状データから工程検討を行い、設計要件、仕様に基づいて成形性、スプリングバックを評価します。(図1) 今回はAutoForm-DieDesignerを使用し、いくつかの方案から成形性が良好なものを選定します。 2.ロバスト性(ばらつき)解析 選定した方案のロバスト性を確認します。(図1) ばらつきを考慮する項目は材料特性、摩擦、材料位置、荷重を設定し、成形性とスプリングバック量がしきい値、公差内に収まる、または最もばらつきのない安定した結果を選定。 Case 1:絞りが比較的浅い、成形性優先モデル Case 2:絞りが比較的浅く、プロファイルをオープンにしたモデル Case 3:絞りを深く、Case 2とは異なるオープンプロファイルのモデル 図1.ベース・シミュレーションの実行とロバスト性(ばらつき)解析 今回はCase 3の結果が最も成形性とスプリングバックの結果およびばらつきが良好だったため、Case 3の方案で検討を進めます。 3.見込み方案の検討 正確な見込み補正を行うため、AutoForm-DeiDesignerで作成したCase 3の全工程の金型をCAD品質で作成し、見込み補正検討を行います。 用意したCAD品質の金型データを用いたシミュレーションを行い、Case 3の各工程後のスプリングバック量を確認し、見込み補正を行う工程を検討します。図2は、各工程の成形後のスプリングバックを示します。 図2-1. 各工程の成形後のスプリングバック この結果から、最初のFormingおよびトリム工程はスプリングバック量が多く、このまま見込み補正を適用すると加工量が多すぎるため、最後のForming工程に見込みを実施します。 見込み補正を実施し、成形性はしきい値内に、スプリングバックは公差内に収まるよう見込み補正を繰り返します。以下の図は見込み法案と見込み補正を公差内に収まるまで繰り返した最終工程の金型の総変位量(見込み量)を示します。 図2-2.最終工程の総変位置(見込み量) 4.CAD品質の見込み金型データの作成 見込み補正後、加工用のCAD品質の正式データを作成します。 見込み補正データは、IGES、STEPのサーフェス形式、AF、STLのメッシュ形式、TXTのベクトルフィールド形式で出力できます。これらの情報と、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAなどを利用して、見込み補正後の金型面データをCAD品質で再作成しますが、本稿では詳細を割愛します。 5.CAD品質の見込み金型データでの成形性、ばらつきの最終確認 CAD品質で作成した見込み補正後の金型データを用いて最終的なスプリングバック、ばらつきの結果を確認します。 図3.最終的なスプリングバック、ばらつきの結果確認 見込み後の金型にて再度ロバスト性を確認します。正規寸法との一致度は±1.0mm以内に収まり、加工条件がばらついたとしても寸法精度のばらつき幅は±1.0mm以内に収まっています。また、ロバスト性のシミュレーションをすることでCpk(工程能力指数)も同時に評価ができ、この部品の寸法精度不良率は0.007%と予測されるため、十分安定した加工条件であることが確認できました。 6.金型加工およびトライ・アウト、生産 本事例では金型の加工は実施しませんが、実際加工する場合はシミュレーションで検討した諸条件とトライ・アウト、生産の条件を一致させ、安定した加工条件を実際の加工でも再現する必要があることに留意すべきです。 シミュレーションに入力された加工条件と実際の諸条件がイコールとなるように、シミュレーション検討業務以降の担当者や現場と連携し、諸条件を確認しつつ業務を進める事が推奨されます。 本稿では成形性、スプリングバック量、およびそのばらつきを考慮した効率的な検討業務の概要をご紹介しました。 - [薄板プレス成形における人工知能(AI)の活用: ユン・ジョンファン教授の見解](https://japanforming.com/薄板プレス成形における人工知能の活用/) - フィジカル・モデルとAIをベースとしたモデルのバランスについて 本稿では、薄板プレス成形分野に人工知能(AI)を適用する取り組みについて、ユン・ジョンファン教授に4つの質問に答えていただきました。 AIはエンジニアリングの分野において、これまでになく大きな技術革新をもたらすパワフルなツールです。プレス成形においては、AIがどのように活用されていくとお考えですか? AIはプレス成形を含むほとんどのエンジニアリング業務で活用されています。プレス成形では、プロセス最適化と構成モデルの両方に適用が可能です。最初に紹介したいのは、電気モーターの構成部品に必要なヘアピン成形です。この成形は、R曲げ、V曲げ、U曲げの工程を伴います。特にU曲げ工程ではステータにヘアピンを公差内で取り付ける必要があるため、スプリングバックを厳密にコントロールしなければなりません。U曲げ工程中にダンパーの位置を変化させることで、スプリングバックをコントロールできます。ヘアピンのスプリングバックが公差を超えると、生産モードがAIモードに切り換わり、新たなダンパー位置が提案されます。そしてスプリングバックが安定して公差内に収まるようになると、生産モードに戻ります。 AIモードによるヘアピン成形のスプリングバックのコントロール 別の例として、形状が複雑なTV背面カバーの成形限界をAIがどのように予測するかご紹介します。新たな製品形状を作成する場合、設計者はその製品の形状を実際に成形できるかを判断しなければなりません。混同行列はシミュレーションによるFLC(成形限界線)を用いて学習していきます。AIシステムは、機械学習ベースの分類システムです。さまざまなパターンを学習することによって、実際に形状が修正される際に、それが安全か、注意が必要か、あるいはクラックを引き起こすかを判断し、通知する能力を備えます。一般論として、このタイプの分類システムは非常に高い精度を誇ります。 TV背面カバーに適用した機械学習ベースの分類システム 構成モデルでは、複雑な硬化データを適合する用途として、AIがすでに活用されています。たとえばJC硬化モデル(静的/動的/温度)は、動的硬化と温度硬化が本質的に切り離されているため、ひずみ速度と温度の連成挙動が適合しません。しかしAIはモデルを的確に適合させる能力を有しています(International Journal of Plasticity 135 (2020) 102811 by Jordan, Gorji, Mohr)。 AIの手法は柔軟性が高い反面、従来のフィジカル・モデルが有する物理的な情報の把握は苦手としています。フィジカル・モデルとAIベースのモデルのバランスについて、ご意見をお聞かせください。将来的には、技術的な問題を解消する上でAIベースのモデルのみが使われるようになると思いますか? AIは学習を伴う内挿システムです。学習していない分野では精度が保証されないため、十分な学習が必要となります。AIが外挿されると、AIの弱点が露呈します。そのため、学習済みの分野以外への外挿は危険であり、システムは予測不能になります。また、AIが工学的な問題を直接解決するために使用される場合は、問題に依存します。たとえば円形カップの成形について学習させたAIシステムは、四角形のカップには対応できません。AIの学習は物理学に基づいていないからです。ただしAIが物理的な情報を保持できれば、数値的な問題の解消において威力を発揮します。たとえば弾塑性解析には、リターン・マッピング法が必要です。弾性予測は線形ですが、塑性の是正には非線形の反復が伴います。硬化する降伏曲面のすべての主なポイントをAIに学習させることで、非線形の反復を置換でき、問題に依存しない構成則を導くことができます。そのためプレス成形では、AIと物理学的アプローチを組み合わせることを推奨しています(International Journal of Plasticity 138 (2021) 102919 by Jang, Fazily, Yoon)。 図3.ANNベースの構造モデル AIを活用したオンライン・コントロールやエキスパート・システムに関するプロジェクトについてお話を伺いました。AIの適用にはビッグ・データが欠かせませんが、このような特殊な用途ではビッグ・データの取得は難しいかと思います。ぜひ教授の戦略を教えてください。 AIを活用したオンライン・コントロールにおいては、ビッグ・データの蓄積が大きな問題となります。AIシステムの初期稼働時に精度を確保するには最低限のデータが必要となりますが、この点において、シミュレーションが大いに役立ちます。AIの学習に使用する前段階として、シミュレーションのデータを基本的な実験のベンチマーク・データで調整すれば、AIモデルを実行する上で十分なデータをシミュレーションで蓄積できます。そしてAIモデルを実際の生産現場で稼働するようになれば、現場で修正された実験データを追加して、さまざまな工程条件をコントロールできるようになります。AIシステムは、ヘアピンの例のように、生産を通じてビッグ・データを蓄積することでますます精度が高まります。同様に、サーボ・プレスの動きをコントロールすれば、成形限界を最大限まで確保し、またスプリングバックを最小限に抑制することも可能になります。 現在はAIを適用したプレス成形技術の第1世代にあります。次世代はどのようになるでしょうか?世代交代を促進する技術についてご教示ください。 第1世代におけるAIの役割は、感知と予測です。たとえばFEMでは膨大なインプットを使用し、また膨大なアウトプットも行います。しかし設計の観点から必要とする情報は、そう多くありません。たとえば成形限界予測では、ユーザーが必要とするインプットは異方性と硬化曲線のみで、アウトプットは最大および最小主ひずみのみです。この入出力プロセスについてAIに学習を施すことで、必要なインプットとアウトプットを繋げることができるのです。しかし第2世代では、AIの手法には逆設計の手法が求められます。製品の設計仕様が決定したら、次に材料や工程条件をどのように設計すればよいのでしょう?AIに逆設計の学習を施すことで、最大と最小主ひずみを指定すれば、そのひずみを適切に生成するために必要な異方性と硬化曲線が通知されるようになるのです。第2世代AIの手法は、プレス成形業界に新たな革新をもたらすでしょう。 第1世代のAIモデル 第2世代のAIモデル ユン・ジョンファン教授について ユン・ジョンファン教授は、韓国KAISTの機械工学教授であり、またオーストラリアのディーキン大学にて応用力学の教授も務めています。またゼネラルモーターズ社と共同で、革新的製造を主導する国際コンソーシアム(ICIM)を設立し、軽量な材料や構造材の製造に関する取り組みを進めています。さらにスウィンバーン大学でボーイング社が主導する製造業研究(AusAMRC)を指揮し、国際的なジャーナルやカンファレンスに200本以上の技術論文を発表し、またそれらの論文については8500回以上の引用が確認されています(h指数: 47)。ユン教授は塑性の分野での優れた貢献に対して2008年にInternational Journal of Plasticity Awardを受賞し、2019年から同誌の共同編集者を務めています。LG電子(韓国)、MSC Software社(米国)、Alcoa Technical Center (米国)など、多岐にわたる業界の経験を有するユン教授は、オーストラリアのメルボルンで開催されたNUMISHEET2014や、韓国の済州島で開催されたAEPA2008にて議長を務めました。また1997年にKAISTで博士号を修得しています。 - [シミュレーション・コンサルタントの雇用: 英国EU脱退後のポスト・コロナ時代におけるトレンドとなるか](https://japanforming.com/シミュレーション・コンサルタントの雇用/) - AutoForming Solutions社の創業者ニック・セフトン氏が語る舞台裏 Tire1サプライヤーが社外のシミュレーション・サービスを活用するトレンドが高まっています。エンジニアリング・シミュレーションのコンサルタント業界に新たな事業機会がもたらされるか、英国の金型製造に精通したニック・セフトン氏の見解を紹介します。この上昇気流にある市場にてトレンドの波に乗り、新たにシミュレーション・サービスを立ち上げたセフトン氏に、その経緯と動機についてお話していただきました。 1995年にシートメタルを扱う企業に就職しましたが、実はすぐに、その仕事に向いていないと確信していました。ただもともと木材を扱う仕事を希望していたため、金型を手作業で製作するひな型製作者として4年間過ごしました。その業務を通じて、金型形状を作成するための技術的な図面が読めるようになると、いつしかプロトタイプの金型設計を任されるようになり、CADルームでCATIAの使い方を学ぶまでになりました。このソフトウェアを習熟するまで、それほど時間はかかりませんでした。 しかし2004年になると「プレス成形金型を設計してくれる新しいソフトウェアが発売された」と上司から告げられたのです。当初は「何年もかけて学んだスキルがすべて無駄になる」と感じた同僚もいましたが、このソフトウェアは、これまでの金型製造のノウハウを置き換えるものではなく、むしろその経験値を活かしながらプロトタイプを作成するものだということに、すぐに気付きました。 初めてこのAutoFormソフトウェアのワークショップに参加したとき、6名の受講者の中で私が最年少でした。金型設計で有限要素解析(FEA)を扱うのは、一時的な流行りでしかないとみな固く信じていました。しかしワークショップの受講後、間もなく私は金型設計をデジタルで扱うようになっていました。短時間でこのソフトウェアを使いこなせるようになり、設計者が作成した設計図が実際には機能しないことを突き止めた場合は、それを相手の気分を害さないように伝える方法も学びました。設定されたパラメータをデジタルに実行すると、実際に生じうる不具合を簡単に特定できるのです。数年間は設計者との間で「一進一退」が続きましたが、当初の抵抗感はいつしか受け入れられ、信頼へと変化しました。 その当時、私は英国のコベントリーで金型製作者として勤務していました。配属先のCADルームは金型工場の上にあったので、実際に金型でプレス生産を行うオペレータがシミュレーションしたプロセスに違和感を抱いていないかを確認しに行くことで、信頼関係を築いていきました。私はCNCのプログラミングにも携わっていたので、鋳造工程を除くすべての初期の金型開発に関わっていました。 2008年、業界が破綻の危機に追い込まれ、私を含む熟練の金型製作者たちが解雇されたのです。私たちは収入を得るために、電気技師や建設業の補助的な肉体労働を強いられました。しかしわずか6週間後、私たちは再び雇用されることになりました。この経験から「会社がこの先また従業員を解雇するのであれば、いっそのこと会社から独立して仕事を請負う方がいいんじゃないだろうか」と思い立ちました。そうすれば雇用の安定性は変わらぬまま、収入は増加します。これまでTire1サプライヤーに勤務していましたが、辞表を提出し、大手OEM企業との契約を試みました。そして現在の会社に請負業者として採用されることとなったのです。新たな契約で同じ仕事を請け負い、フィージビリティ全般の検討と金型形状の開発を担当しました。 後に中国のOEM企業と契約を結んだ際にも、常にアンテナを張り巡らせていました。フィージビリティの検討中に形状を変更したり、仕様をアップグレードする際には、パッケージングや電気系など、プロジェクトを構成しているさまざまなチームへの影響を考慮しなければなりませんでした。ホワイトボディで対応すべき不具合だけでなく、他の部門が行った修正についても調整しなければならず、すべて初めての経験ばかりでした。また、量産用の金型を初めて扱ったのもこのときでした。経験豊富なプランナーと一緒にコンセプト工程を作成していたので、些細な修正であっても、金型全体のコストにどれだけ影響するかをすぐに理解することができました。 近年は英国のEU脱退による余波を受ける一方、新型コロナウイルスが世界のOEMのボトルネックとなっています。これは金型製作者が大量解雇された2008年の再来となるのでしょうか? あるいはチャンスの到来となるのでしょうか? 英国のEU脱退やコロナ禍への対応策として、私はコンサルティング会社を設立し、市場の変化に備えました。今後は多くの人々が仕事の確保に奔走する一方で、熟練の金型製造者たちはフリー・エージェントへと転身し、会社を立ち上げるのではないかと予想しています。チャンスは目前にあります。契約書や請求書に終われつつ、気難しい顧客や未知の状況にも対応しなければならず、これまで以上に仕事が増えるように思えるかもしれません。しかし適切な対人スキルさえあれば、チャンスの瞬間を捉えて利益に転じることができるのです。 シミュレーション・ソフトウェアのコストが、金型製造の専門家にとって特殊な市場ギャップを生み出していることが明らかになってきました。これは、シミュレーション・サービスを必要とするサプライヤー、またはプロジェクトを完了するために1年のうち数ヶ月だけシミュレーション・ソフトウェアを必要とするサプライヤーにとって、ライセンスの価格が高額すぎるようになってきていることが原因です。さらに、FEAシミュレーションを専任で扱う担当者を正社員として雇用するコストもあります。従業員がトレーニングを受けてソフトウェアを使いこなせるようになる頃には、私ならすでに仕事を終えているでしょう。このような理由から、このポスト・コロナ時代には、外注のシミュレーション・サービスが活躍する「ブルー・オーシャン」の状態が形成されつつあります。 - [明日の天気とシミュレーション](https://japanforming.com/明日の天気とシミュレーション/) - 前書き シミュレーションの予測精度向上についてさまざまな取り組みが紹介されていますが、本稿では予測技術の精度向上とその活用に取り組む意義や動機について、最も身近に利用されている天気予報と対比しながら考えていきます。 天気予報の予測の仕組みとは? まずは、天気予報の仕組みについて簡単に調べてみます。気象庁のHPには以下のような説明が書かれています。大まかな流れとしては、人工衛星などを含む多種多様な観測データである入力情報をもとに、全国の気象台の予報官とスーパーコンピュータによる天気の予測を行っています。ここで、入力情報の一部である宇宙からの情報は、製作、打ち上げ、運用を合わせて約850億円をかけた気象衛星から収集され、データ集計やシミュレーションは7~8億円かけて整備したスーパーコンピュータによって行われています。そして、最先端のテクノロジーを駆使していても、最終的な判断は人間が行っています。ここで紹介している費用はあらゆるもののうちごく一部でしかないことは言うまでもありませんが、いかに「実測」、つまり入力条件の収集と実際に起きていることからの情報収集に力を注いでいるかは規模感から明らかと言えるでしょう。 一方製造業においては、必要な入力データを準備し、順番にGUIに入力し、必要最低限のデータがそろった時点で計算を実行することができ、結果が得られます。天気予報も一種のシミュレーションととらえることもできますが、どの程度の入力情報を用意できるかが予測精度に大きな影響を与えるという点では同様と言えます。現在日本の天気予報においては、雨(時間雨量1mmを超える降水の有無)の予想的中率は近年85%を超える精度と報告されています。なお、AutoFormに対する入力情報の品質と期待される予測精度については、当ブログの別記事やWebinarでも紹介しているため、本稿での紹介は避けますが、予測技術におけるインプットの重要性については分野を問わず重要であることが分かります。 天気予報の利用 天気予報をまったく参考にしないという方は少ないのではないでしょうか。明日傘が必要かどうか、週末屋外レジャーを楽しめるかどうか、車で外出するにしても、渋滞するかどうかは天気に左右されることもあるので、多少なりとも天気予報は生活の一部に取り込まれているはずです。とはいえ、普段の生活においては晴れの予報で傘を持たずに出かけたときに雨が降ったからと言って、それほど困るわけではございません。雨宿りするか、多少濡れるのを我慢すればいいからです。本稿では、命にかかわる場合と、ビジネスにかかわる場合の二つに注目して例を考えてみましょう。 天気が命にかかわる場合 天気予報が命に係わる例として、登山があげられます。挑む山の難易度や季節にもよりますが、たとえ天気予報が晴れで、日帰り登山であっても雨具や着替え、体温を保つためのシート、非常食などの傾向が推奨されています。もし何かがあった場合に命を守るための備えであり、このコストを惜しむと大変なことになる可能性があります。なぜなら山の天気は変わりやすいからです。このケースではリスクの対象が命であり、また予測が難しいことが広く知れているため、備えが必要なことが非常にわかりやすいです。 同様に、ハイテンのスプリングバックは変わりやすく、大外れすると致命傷になる可能性があります。我々AutoFormは言うまでもなくシミュレーションによる十分な検討と、一度のシミュレーションでは予測できないばらつきまで考慮した、ロバスト性解析の実施を推奨しています。 シミュレーションのインプット・パラメータとシミュレーション結果に対する影響 天気がビジネスにかかわる場合 民間の天気予報会社の記事によると某コンビニチェーンでは以下のように天気予報を利用しています。 コンビニの商品は、店長や従業員が発注しています。その際に参考にするのが、本部から提供されるストアコンピュータの天気予報です。「天気予報は店舗ごとにピンポイントで1週間先まで提供しています。店舗はその天気予報を基に、日々仮説を立てています。時間ごとの天候、最高気温や最低気温、前日差しや湿度による体感気温、さらに近隣の催事などの情報、近隣施設の情報、曜日特性などさまざまな情報から品目ごとの発注個数を決めています」(一部抜粋) ここで重要なのは、天気予報は仕入れ量を決める一つの基準でしかなく、それをもとに人間が仮説を立てて評価をしていることです。利益を上げられるかどうかは、天気予報をどのように解釈して仕入れ、販売するかにかかっていると言えます。 このケースにおいては、一度の失敗では致命傷にはならないことが多いため対策検討の必要性が認識されにくい一方で、日々の積み重ねが多店舗との差を生み将来的な経営の成否を左右することとなります。 シミュレーションの領域においても、ソフトウェアそのものの操作に加えて、結果の解釈や対策検討にとどまらず、ソフトウェア以外の部分も含めた運用方法の検討、スケジュール管理、実物からのフィードバックなどの活用が進んでいるユーザー様のほうが、予測精度自体も高い傾向にあると感じるのは、単なる手前勝手な思い込みだけではないのかもしれません。 まとめ 昨今地球温暖化の影響からか、従来の天気予報では予測することが難しい、これまでにない天候が多発しています。同様に自動車業界においても、持続可能な社会の実現を目標に掲げ状況は大きく変わりつつあります。シミュレーションは限られた領域のマニアックで専門的な技術ではあるものの、新たな規制への対応や、さらなる価値の創出による継続的な発展に、微力ながら貢献できることを願っています。 - [デジタル・ツイン: 理論と現実](https://japanforming.com/デジタル・ツイン-理論と現実/) - 最近ようやく産業界に浸透してきた「デジタル・ツイン」という用語は、1992年に出版されたデヴィッド・ゲランター著『ミラー・ワールド』に初めて登場しました。当時は、パソコンが台頭し、ソフトウェアの開発が急速に進むなど、技術の進化が著しい時代でした。ゲランター氏はその著書で、この技術革新がもたらす未来を予言したのです。「ソフトウェアが宇宙を靴箱に入れる日...どのように生じ、それが何を示唆するか」 同書の出版から30年を迎えた今、ゲランター氏の予言は見事に的中しました。「靴箱の中の宇宙」は、世界中にクモの巣を張り巡らしたような「ワールド・ワイド・ウェブ」すなわちインターネットの世界を表すまさに的確な比喩表現となっています。 また出版から10年後にも、この予言は別の形で提示されています。2002年、フロリダ工科大学のマイケル・グリーヴス教授によって、デジタル・ツインのコンセプトが初めて製造プロセスに応用され、製品ライフサイクル管理 (PLM)の基礎となるモデルとして世に紹介されました。 プロセス、人材、場所、システム、装置など、現実世界の物的資産をデジタルで複製したレプリカは、今日ではデジタル・ツインと呼ばれ、さまざまな用途に利用されています。産業界ではいくつかの分野で製造プロセスから生じる結果をバーチャルに予測できるツールとして、デジタル・ツインが活用されています。 本稿では薄板プレス成形を用いたパネル製造におけるデジタル・ツインの概要を説明し、デジタル・ツインのメリットや活用する際の支援ツールについて簡単にご紹介します。 目標: 「デジタル・ツイン」のコンセプトをアセンブリとプレス成形が絡み合う複雑な金属部品の製造プロセスに適用する このような大きな目標に取り組む場合、問題の核心部分を定義するのは至難の業です。専門技術だけでなく行動様式においても、乗り越えなければならない壁が存在します。ここではプロジェクト管理が非常に重要となります。技術的な基盤は必要ですが、それだけでは不十分です。開発チェーンに関わる全員が、ハード・スキルとソフト・スキルを適宜使いこなせなくてはなりません。 このコンセプトを確実に運用するには、建設的な人間関係、健全なコミュニケーション、そして情報交換のスキルが必要不可欠です。 デジタル・ツイン・モデルを運用する上で、プレス成形部品の開発および製造には複数部門の協力体制が欠かせないため、コミュニケーションが重要な役割を果たします。しかし各部門にはそれぞれ異なる目標が設定され、また一般的な縦割りの組織構造では、多くの場合、激しい内部競争にさらされているため、円滑なコミュニケーションが難しい場面も多くあります。 デジタル・ツインは、バーチャル世界と現実世界をつなぐモデルで、以下のプロセスから構成されます(図1)。 デジタル・マスター – 設計およびエンジニアリング段階において、バーチャル世界で構築します。これはプロセスやモデルの「設計した通り」の意図を表すものです。 現実世界のツイン – 製造現場にてデジタル・マスターを現実化したもので、「製造した通り」のデータを提供します(そして最終的にデジタル・マスターにフィードバックします)。 まずはバーチャル世界にて、製品、プロセス、製造分野の各エンジニアリング部門が協力して、「実現可能な製品」と「ロバストで製造可能なプロセス」を開発します。 次に現実世界の金型工場では、デジタル・ツインで開発されたことを実際の現場で構築します。ここで最大の難題となるのが、エンジニアリング部門がバーチャル世界で開発したものを、現実世界の金型工場でどのように再現できるかという点です。十分な精度で実行しなければ、期待どおりの結果を得ることはできません。 ソリューション: 部門間にまたがる統合プラットフォーム アセンブリやプレス成形部品の開発には多くの部門が関与しますが、各部門の目的や目標はそれぞれ異なります(図1)。製品のエンジニアリング段階では、車両の型式認証仕様を満たす設計を行うことを目標とし、製造のエンジニアリング段階では、最高品質の部品を繰り返し製造できるロバストな金型を作成することが目標となります。そして金型工場の目標は、最小限の消費材料で要件を満たすプロセスを開発することです。このように各部門の目標設定がそれぞれ異なるため、利害の衝突や変化への抵抗、そして内部競争が生じうるのです。しかし例外なくすべての関係者が、効率化と製品化までの時間短縮、つまり最大の費用便益比を目指していることも忘れてはなりません。 すると図2が示すとおり、どのようなプレス成形部品の製造プロセスでも、同じような段階を経ることになります。 デジタル・マスターは、図に示された「バーチャル世界」のあらゆる段階を通過するデジタル・モデルです。製品開発の初期段階から金型製造の最終検証まで、部品の認証に必要な要件をすべて満たすように開発しなければなりません。このコンセプトの中で、デジタル・マスターは、すべての修正が記録される固有のファイルとなります。次にERPシステムを介して全ての関係者が修正に関する率直な意見交換を行い、必要な処置を適宜行うことで、実効性のある製品ライフサイクル管理(PLM)が実現します。AutoForm®などのソフトウェア製品には、構築に必要なすべてのステップを示すガイダンス機能が搭載されています。このような管理システムには、プロセス全体にわたるすべての修正履歴やコメントを含むファイルを保存することもできます。 図1: 関連する部門の概観 図2: プレス成形部品の開発段階 従来のモデルのように後段階でプロセスや製品を修正すると、非常にコストが高くつき、また遅延の原因ともなります。しかしデジタル・マスターを活用することで、このような後段階の修正を回避することが可能になります。図3では、赤の曲線がプロセスの成熟度を鑑みた修正のコストと時間の関係を示し、緑の曲線は修正を実行する能力を示しています。どちらも異なる戦略を反映していますが、最新の技術を活用してリソースを最適な構成で正しく使用すれば、プロセスを設計する傍らで問題を予測および軽減することができます。すなわち緑の曲線の実行可能性を高めることができるのです。 シームレスなワークフローから安定した結果が得られる統合プラットフォームの利便性はいくつも挙げることができますが、中でもコストと時間の削減は測定可能であるため、その効果をすぐに実感していただけます。 図3: 修正のコスト 図4: 正確度指標 マスター・デジタル・プロセス・ツインの構築にはいくつかのステップがあり、正しく運用するために必要なトピックやパラメータも検討しなければなりません。 信頼性の高いデジタル・マスターを構築する際の注意事項として、2つのトピックを図4と図5に示します。 まず図4は「正確度指標」です。ここでは現実を反映し、かつ現実世界で再現可能なデジタル・ツインを構築する上で、考慮すべきさまざまな項目を示しています。この図は簡略化されていますが、実際にはそれぞれが独立した論文のテーマとなり得るほどの奥深さがあります。 そして図5は「パレート」です。 図5: パレート これは対象分野(プレス成形プロセス)の現実に即したデジタル・モデルを構築するために必要なエンジニアリング業務を示しています。 このグラフは、しわや破断などの単純な解析から、スプリングバックや目視で確認する外観不具合といった高度な予測まで、エンジニアリング業務(モデル構築に費やす時間)に対して、予測力がどれだけ向上するかを示しています。デジタル・モデルを構築する目的は、主観が排除された正確で高精度な情報を得ることのみに限られます。この情報はバーチャル世界で修正を行う際に必要となります。信頼できるデジタル・マスターを構築すると、現実世界で生じる結果を高い精度で予測できるようになるため、プロセスを承認することが可能になります。しかし次に直面する問題があります。それはデジタル・マスターの結果を現実世界の金型工場でどのように再現するか、という点です。 図6: ドロービードの形状変更に応じたスプリングバックの結果 デジタル・マスターを現実世界で構築するには、情報交換と統合されたプラットフォームが不可欠です。関与する部門間で密にコミュニケーションを取り合う必要がありますが、これにはトライアウト・マップと生産マップを活用できます。それぞれ運用するタイミングは異なりますが、両方とも、デジタル・マスターが提示するものを現実世界で再現する上で、必要な情報を提供するという目的は共通しています。 トライアウト・マップには、たとえば材料の機械的特性のばらつき、パッドやブランクホルダ荷重のばらつき、異なるトライボロジ条件など、オペレータが制御できない複数のシナリオを考慮しながら、金型工場で何が生じるかを予測するための情報が含まれています。 またトライアウト・マップを使い、金型を修正した場合に生じる結果を予測することもできます。たとえば、ドロービードの寸法を変更した場合に、その変更が部品のスプリングバックに与える影響を特定できます(図6参照)。 これにより、金型の調整時間が大幅に短縮されます。トライアウト・マップを活用して、修正がプロセスや金型に悪影響を及ぼすことが確認された場合、その修正は行わず、問題を解決しうる修正のみを行うことで、再加工の経費や時間を省けます。 図7は、産業プロセスをデジタル化するための段階を簡略に表しています。 図7.デジタル化の段階 現在、ブラジル産業界の大部分は、何ができるか、それを実現するために何が必要か、それをどのように実現するか、といった「理解」を進めるステージ4にあります。トライアウト・マップと生産マップは共に、何が起こるかの情報を収集し、その不一致を是正する行動をおこすステージ5に属します。 トライアウト・マップと生産マップの作成を支援する、便利なソフトウェアがあります。このソフトウェアを活用することで、ある一定の条件から生じる結果を予測する決定論的数値シミュレーションから、確率論的数値解析まで行うことができます。つまり工程ロバスト性を検討することが可能になるのです。 このような解析では、ユーザーが条件の範囲を定義すると、それをソフトウェアが統計的に組み合わせ、反復回数nを並行して個別に計算し、独自のファイルに統合し、複数の初期シナリオから生じる結果を提示します。そのため、トライアウト開始時(トライアウト・マップ)や、生産での問題発生時(生産マップ)など、そのシナリオで必要となる対応を把握することができます。 今後の展望: - [短時間でのブランク・サイズ見積作成とスクラップ率削減がTire1サプライヤーの入札に貢献 ~Curve Engineering社~](https://japanforming.com/迅速なブランクサイズ見積とスクラップ率削減/) - スティーブ・ハケット社長が社員8名の部品プレス成形コンサルティング会社を事業成功に導いた秘訣とは 英国のCurve Engineering社は、OEMやTire1サプライヤー向けに部品プレス成形シミュレーション、歩留まり検討、金型設計、および試作に特化した社員8名のコンサルティング会社です。本稿では、Tire1サプライヤーがブランク・サイズを見積もる際に、まずCurve Engineering社へ外注する理由について、創業者で社長のスティーブ・ハケット氏にお話を伺いました。OEMからの見積リ依頼には、通常、多数の部品が含まれています。Curve Engineering社では、デジタル・エンジニアリング・ソフトウェアを使用して短時間で見積リを作成できるため、同社のお客様であるTire1サプライヤーは、OEMが主導するプロジェクトの入札に素早く対応できます。たとえば最近のプロジェクトでは、Curve Engineering社がブランク・サイズを見積った部品数は327個にも及びました。入札のペースを考えると、この数字は驚異的です。実際にCurve Engineering社では、どのような作業を行っているのでしょうか。 Curve Engineering社では、初期のフィージビリティ検討と既存のプレス成形工程の最適化にシミュレーションを用いています。デジタル・エンジニアリングのコンサルティング会社として、Curve Engineering社は製造段階に幅広く関与しますが、しかし実際の製造には一切携わりません。 ハケット氏は、初期のフィージビリティ検討と既存のプレス成形工程の最適化におけるシミュレーションの役割を説明してくれました。 「正確なブランク・サイズを特定するには、まず初期段階でフィージビリティを検討します。部品を実際に製造することができるか、または設計を若干修正すれば可能になるかを確認するのです。あるいは根本的に製造が不可能であれば、部品を不合格とします。さらに部品を分割して、それぞれプレス成形しアセンブリを行うべきであることを報告します。膨大な部品数に対応しなければならない場合、AutoForm-StampingAdviserが非常に役立ちます。特に順送金型の正確なストリップ・コンセプトを検討する場合に有効です。このソフトウェアを使用しないと、工程をレイアウトする作業に相当な時間を費やすことになります。すべての部品に対してブランクの展開を予測し、手作業でストリップに並べてゆく作業は、手間がかかりすぎます」。 「以前は経験に頼りながら、ブランクのサイズを見積もっていました。Curve Engineering社の社員たちはみなプレス成形に精通したエキスパートです。現実問題として、部品を単純に展開するだけの作業を任せてしまうと、プレス成形の専門性という価値の無駄遣いとなってしまいます。ブランクを展開し、ストリップ・コンセプトの簡潔な報告画面を作成する機能を備えたAutoForm-StampingAdviserを活用すれば、わずか10分でブランク展開が完了し、手作業と同じ結果を得られるのです。一方、CADで展開作業を行うと、2時間はかかるでしょう。もちろんスキルの未熟なエンジニアを雇うという手段もありますが、しかしこのソフトウェアだけですべての作業を完了できるのです。目標はブランクを最小限に抑えることですが、工数も抑えることができれば、Curve Engineering社の利便性が高まるだけでなく、1次サプライヤのお客様が入札で契約を獲得できる可能性も高まります。当社の正確なブランク・サイズの見積もりは、高い評価をいただいています」。 「Curve Engineering社は短時間で見積もりを作成できるため、どのお客様にも第一の選択肢として当社をご利用いただいています。Tire1サプライヤーのお客様は短期間で受注し、すぐに金型工場で製造を始めることを望んでいます。量産するOEMの仕事を請け負う場合には、ピッチをわずか2 mm詰めるだけで、契約を獲得できる可能性が飛躍的に高まるのです。またCurve Engineering社が提供するサービスの品質にも定評があります。お客様が当社に繰り返しご依頼くださっていること、またお客様が繰り返し受注をされていることからも、品質の高さは明らかです。精度を疑問視される方がいらっしゃるかもしれません。実際には、お客様が受注後に製造した部品をいただいて詳細な調査を行い、初期見積もりと実部品の差異を確認しています。このプロセスは興味深いものです。初期段階では、Tire1サプライヤーは自社のプレスラインに適した部品にターゲットを絞りますが、これは入札前にブランク・サイズを見積もった部品に相当します。当然のことながら、OEMは1社のみにすべての部品を発注するわけではありません。Tire1サプライヤーのお客様は、全体の約50点程度を受注するのです。そのため、最初にブランク・サイズの見積りを作成した部品が戻され、総合的な分析を行うと、部品設計の修正依頼が必要になる場合もあります」。 図1: 難成形形状のバッテリー・トレー 「Curve Engineering社ではプロジェクトの引き渡しまで金型メーカーと連絡を取り合うため、OEMとも関係が近づきます。金型メーカーから修正依頼が出る場合もありますが、それでも引き渡しまでには、プロセスおよび部品の製造可能性は必ず担保されます。これまでを振り返ると、以前はこのようではありませんでした。金型メーカーがフィージビリティをすべて検討していたのです。そのため、Tire1サプライヤーのお客様には多くの問題が生じていました。本来ならば金型設計に取り組むべきところ、部品設計の製造可能性を担保する作業に長時間が費やされてしまうからです。そのためTire1サプライヤー向けプロバイダの先駆けとして、Curve Engineering社がサービスの提供を始めました。ビジネスとしては、パッケージやデザインに縛られない開発段階の方が流動性は高く、フィージビリティに関する修正依頼に対応しやすいため、この段階でサービスを提供するのが適しています。重要なのは、部品を金型メーカーに引き渡す時点で、OEMはある金型メーカーにその部品製造を依頼し、そして対となる部品については、全く別の金型メーカーに依頼するという点です。この時点で、もし金型メーカーのA社がB社の部品に影響を与えるような修正を行う場合、B社は設計の修正にかかる費用を速やかにOEMに請求することになります。Curve Engineering社は特定のモジュールを構成するすべての部品に関与するため、全体の概要を把握できます。一方、金型メーカーが関与するのは、多くの場合、モジュールを構成する部品の一部のみです。よってCurve Engineering社のサービスが優れている点は、ある部品を修正すると別の部品にも影響が出る場合でも、両方の部品に対する修正を依頼することができ、余分な費用も生じないことです。透明性の向上はもちろんのこと、金型メーカーが修正を依頼する度に生じるコストは、Curve Engineering社が実行するシミュレーションのコストのみに抑制できます」。 「Curve Engineering社では既存のプレス成形工程の最適化に関するサービスも提供し、お客様のスクラップ量の削減に貢献しています。このサービスでは、対象をお客様が扱う部品や工程の範囲に限定できないため、適応性が課題となります。あるプロジェクトでは、順送金型の曲げブラケットの作成、別のプロジェクトではボディの両側、さらに別のプロジェクトではヘミングのシミュレーションを依頼されます。いま作業を行っているジョブの中でも、ブランク・サイズを最適化するにはさまざまな方法がありますが、Curve Engineering社には競争力を高めるための独自の企業秘密があります。作業中のジョブでは、金型をスキャンしてブランクを分析し、AutoForm-Sigmaを活用してブランク・サイズを可能なかぎり小さくします。このソフトウェアでは、異なるブランク・サイズのロバスト性を比較することができます。小さなブランクで大きなブランクと同じ結果が得られた時点で、この業務は完了します」。 「しかし、その際に気をつけなければならないのは、単にプレス部品を作成したら終わりではないということです。金型はトランスファー・ラインで毎分20回以上のストロークで動作しています。稼働率も重要であることも忘れてはなりません。部品を検討する際には、部品を成形できるかのみを確認するのではなく、最小のブランクで良い稼働率を担保することも視野に入れています。これが部品サプライヤにとって利益を確保できるかの分かれ目になります。 「いま進行しているプロジェクトでは、スクラップ率が高い生産ラインの修正作業を行っています。金型のスキャンとシミュレーションを行い、スクラップ率を下げるために必要な修正を提案しました。信じがたいことに、多くの場合、ブランクの位置を変更すればよいだけなのです。このような業務では、お客様にブランクの位置、金型形状、ビードの位置、ブランク・サイズなどを調整するようアドバイスします。しかしたとえば、すでに作成した金型のブランクホルダの形状は修正できないなど、調整にも限度はあります。ブランクの在庫を使い切らないうちに、すぐに実現できる解決策を見つけなければならず、迅速な対応が求められます。だからこそ1次サプライヤは、エキスパートと常に良い関係を維持するのです。高いスクラップ率が問題となっていたある部品の場合、(他社が実行した)シミュレーションの設定が根本的に不適切だったことが原因でした。作業を急いだことが一因だったのかもしれません」。 このようなシミュレーションの精度問題について、ハケット氏は次のように述べています。「精度問題が10回あれば、その9回は、プレス成形シミュレーションの設定が適切でないか、あるいはシミュレーションを十分に行っていないことによる人為的なミスです。しかし納期に間に合わせるために、見切り発車で金型を作成してしまうのです」。 「成形が難しい部品形状を検討する場合にもAutoForm-StampingAdviserを活用しています。たとえば現在進めているバッテリー・トレーのプロジェクトでは、いくつかの難点があります。この部品の難しいところは、形状が平坦で、電気ケーブルやカップリングの出口となる反対側の端部に大きなこぶ状の形状があることです。つまり平坦な領域が広がる一方で、反対の端は深く絞らなければなりません。このような形状はスプリングバックの不具合が生じやすいため、製造がとても難しいのです。部品の大部分が平坦ですが、平面形状には見込み補正ができません。そのためリブなどの形状部位を追加して、部品の剛性を高めることもできます。しかし、部品高さが増し深絞りを行うため、浅く絞った後にさらに絞り直しが必要になります。部品自体に多くの形状があるため、2度目は初回よりもトン数が少ないプレス機を使用しますが、部品の深絞りに必要な定義をすべて行うと、トン数が不足するのです。防火上の理由から密閉性を求められる部品のため、形状が細部まで指定されています。また部品の片側にバリが生じないよう、反転して絞らなければなりません。実際にはトグル・ドローのように上下を逆にします。絞りさえ完了すれば、部品の残りの部分は平坦であるため、作業は簡単です。 図2: フィージビリティ解析と工程改善 「Curve Engineering社では8コアのCPUを使用していますが、しかしそれでもこのようなプロジェクトでは、シミュレーションに時間がかかります。詳細形状が多くあり、またメッシュ・リファインメントで要素も小さくなるため、このバッテリー・トレーのシミュレーションには4~6時間を要します。たとえば、最初のシミュレーションで、われの不具合が検出されたら、次にAutoForm-StampingAdviserのフォームチェック機能を活用し、半径などを修正しながら、われを解消できる状態を確認していきます。この機能を活用すれば、都度シミュレーションをすべて行わなくても、迅速に作業を進めることができます。修正の度にシミュレーションに6時間も待ちきれませんし、もし退勤後の夜間にシミュレーションを行うとしても、1日に1回しか実行できないため非効率です。フォームチェックを活用すれば、プランを短時間で確認できます。すべての修正が整ったら、夜間に完全なシミュレーションを実行して、細部まで再確認します。こうして、上手くいかないプロセスやアイデアに対して、時間やリソースを浪費することがなくなりました」。 Curve Engineering社には、シミュレーションやプロセスを担当する部署だけでなく、金型設計を扱う部署もあり、順送金型、そして外板パネルや構造部品用の大型のタンデム金型およびトランスファ型など、あらゆる部品やプロセス、そして量産および少量生産の両方に対応しています。また金型の試作を担う部署では、お客様の現場へ出向き、納入されたばかりの金型で部品の複製やスポッティングの作業を行い、パネルの最終確認および金型の検収に立ち会っています。この部署は、現場の作業を開始する前に、エンジニアリングの段階で収集された情報を活用して、不可逆的な金型の修正を確認することができるため、他社にはないアドバンテージを持ち合わせています。詳しくは、Curve Engineering社へお問い合わせください。 - [現場で扱うドロービードがエンジニアリングの意図と相容れない場合](https://japanforming.com/現場で扱うドロービードがエンジニアリングの意/) - ドロービードの分析的工程改善と経験則に頼った試行錯誤型の手法を比較します 金型トライアウトは、エンジニアリングの意図に応じた部品を生産する上で、必要となる金型を作り上げるための反復工程です。この工程に要する時間を判断するのは至難の業です。金型がエンジニアリングの意図やエンジニアリングの品質(またその他の変数)にどの程度一致しているかによって大きな違いが生じるためです。 トライアウトではパネルのプレス成形を繰り返しながら、実際に行うプレス成形の結果とバーチャルに行ったシミュレーション(エンジニアリングの意図)を比較し、不具合や重大な差異が検出された場合には金型を修正していきます。 筆者の経験上、10回のトライアウトでは10回ともすべてアウトプットである結果は比較しますが、しかし一方、インプットである入力データは軽視されるか、あるいは確認されません。設定や形状などのインプットについては、トライアウト現場の条件とバーチャルなシミュレーションの設定は、全く同じだという前提が受け入れられています。しかし実は、そこに問題が潜んでいるのです。 つい先日も、トライアウト部門の担当者が「トライアウトの目標は、インプットではなくアウトプットを一致させることでしょう」と言っていました。これは、現場でトライアウト担当者がプレス成形を行う前に、受け取った金型の形状やドロービードをきちんと確認しているか訊ねた際に返ってきた言葉です。「切削部門から届いた金型には、きちんと検査されたことを証明する書類がついています。すでに完了している仕事を改めて確認するのは時間の無駄ですし、トライアウトのコストもかさむだけです。さらに言うと、それを修正することがトライアウトの役割なのですから」と彼は言い切りました。それでも、修正が必要になる以前に、問題を未然に防げたらどうでしょう?ほとんどの問題は、実際にトライアウトで使う金型のドロービード形状が、エンジニアリングの意図とは異なることに起因します。 すでに金型トライアウトの段階で問題が生じたとすれば、この考察に間違いはありません。いずれにしても、修正が必要になります。しかし、もし、どこに大きな差異が生じるかを把握できれば、エンジニアリング部門がすでに検討したドロービード設定を、改めて「使える」設定に修正する必要はなくなります。するとトライアウト時間を大幅削減できるだけでなく、コスト削減や金型検収の遅延回避なども実現できます。 写真提供:シューラー・グループ 問題に直面すると、いつも同じ疑惑が生じます。「どうしてこんなに違うのだろう?」「きちんと仕事をしなかったのはどの部門だろう?」「切削部門か?」「いや、あるいはどこだ?」より建設的に言い換えると、「これは作業者の過ちなのか、それとも工程の不具合か?」という疑問に変わります。 それではまず、エンジニアリングの意図と金型構造の不一致がどのように生じたかを検証してみましょう。 問題のひとつとして取り上げたいのが、切削部門では、ドロービードが強い状態から作業を始められるように、ビードの寸法を意図的に変更することがあります。後段階でドロービードを強めようとしても、肉盛りを避けるため、この慣習が長年にわたり続いています。ビードは後で強めることができないため、想定よりも強めのプロファイルから作業を始めるのです。そしてビードを削り寸法を小さくしながら、必要な強さに調節していきます。 たとえばエンジニアリング部門では、バーチャルなシミュレーションで検討した結果、ビードの高さを7 mmに決定したとしましょう。切削部門ではその数値を引き継ぎますが、実際の現場で金型を作成する際には、8 mmか9 mmのビードから始めます。その論理としては、もし7 mmが適正なサイズであれば、経験則を頼りに高さを削り込んでいくと、この数値が正しいことがやがておのずと証明されるはずだというのです。 オートフォーム社が提供するソリューションは、シミュレーションと現場が1対1で対応していることが前提となります。シミュレーションは、実際に製造されるものと正確に一致しなければなりません。それが意図するところは、作業開始時のビードを強めるといった「実用的」な対策は、もはや必要ないということです。不確実なシミュレーションをもとにトライアウトを行うといった前提はもはや過去の考え方であり、オートフォーム製品をご愛顧いただいているお客様の多くは、このような慣習をすでに廃止しています。 インダストリー4.0の促進に伴い、シミュレーションも常に改良が進められています。そしてシミュレーションの精度が高まるほど、作業時間を短縮することが可能になります。デジタルな拡張機能をトライアウトの現場で活用しなければ、すでにシミュレーションで検証されている寸法まで切削する作業に、何時間も無駄な時間を費やすことになります。 これとは対照的に、既存のドロービード標準を設定しているお客様もいらっしゃいます。つまり会社の規則として、エンジニアリング部門ではトライアウトで使用すべき寸法は決定しないのです。トライアウトで決定したドロービード標準が基準となるため、エンジニアリング部門が、事前定義されたビードに応じて最適な流入金型の形状を検討しなければなりません。たとえば、トライアウトでビードを5 mmに切削する場合、これに応じてその他すべてのパラメータを調整し、部品がわれないようにするのです。その結果、エンジニアリング部門は切削部門の依頼に応じて計算を調整しますが、これも理想的とは言えません。 現実を理想的な設定に合わせるよりも、むしろシミュレーションに制約を追加することになります。事実、エンジニアリング部門が作業を完了した後にトライアウトの結果が一致しない場合は、ドロービードの使い方に問題があることが多いのです。オートフォーム社には、この問題を解決に導くソリューションがあります。しかし当社のソフトウェア上で手軽にビードを変更して、その結果を比較するよりも、膨大な手間がかかる経験則に頼った試行錯誤による調整を余儀なくされているのです。 また、いまだにすべての図面をCADで描く方々もいらっしゃいますが、この場合、クリアランスに沿って、シートがどのようにビードに収まるのかを把握しなければならないため、とても時間がかかります。これらの要因から、現実には多少であれシートの長さを確保する必要があります。また溝とビードに矛盾がないことも確認しなければなりません。シミュレーションでも対応していますが、形状ビードのみを使うため長時間を要し、場合によっては丸1日かかることもあります。われやしわが発生すると、エンジニアは経験則をもとにビードの設定を調整しながらリストライクを行い、またシミュレーションを最初からやり直します。この手法では、エンジニアは基準シミュレーションを何度も実行しなければならないため、手間のかかる作業に癖々することでしょう。もしシミュレーション・ソフトウェアを使ったとしても、すべてのソリューションにドロービード・ジェネレータが搭載されているわけではありません — これが何よりお伝えしたいポイントです。 オートフォーム社では、拘束力としてのビードを一定の範囲で変化させる(つまり形状に何らかの変更を加える)工程改善の解析が必要だと確信しています。そこからドロービードの寸法に対してロバスト性解析や感度解析を行うことで、われおよびしわを回避できる最適な設定を検討するのです。 通常は、問題が発生すると、エンジニアリング部門は金型工場を責め立て、またその逆も然りです。しかし両部門が共通して使えるソフトウェアを導入して、部門間のつながりを強化する方が遥かに効率的です。 お客様が必要としているのは、エンジニアリング部門、切削部門、トライアウト部門の間で、同じ原語を理解できるソフトウェアです。ドロービードの設定だけでも、非常に多くのパラメータが関わってきます。部門間に生じる差異をなくすため、CAEとCADの両方で同じパラメータを使い、同じドロービード形状を作成できるソフトウェアが必要です。そうでなければ、シミュレーション結果と実際に製造されるパネルの間に差異が生じてしまいます。 エンジニアに必要なのは、荷重係数を使ってドロービードを再現するだけでなく、この荷重係数を実行できるドロービード形状も設計できるシミュレーション・ソフトウェアです。また一貫性を保つため、切削部門のユーザーにとっては、まったく同じドロービード形状をCAD品質のサーフェスで設計できるソフトウェアが必須となります。最後にトライアウト部門では、最初の部品をエンジニアリングの結果に合わせて調整できるソフトウェアが必要です。しかしこの最後のソフトウェアが同じドロービードの言語に対応しないかぎり、適正な調整は見込めません。 結論を申し上げると、各部門の担当者全員が協力して作業することが非常に重要なのです。すべての部門をつなぐソフトウェアを使うことで、意思疎通がスムーズになり、より一貫した形状のワークフローが生まれます。当然、これは時間とコストの大幅な削減につながります。 - [2021年 AutoForm Assemblyをリリース: パズルのピースをはめ合わせる](https://japanforming.com/autoform-assemblyをリリース-パズルピースをはめ合せる/) - 以前のブログにて、オートフォーム社で進めているホワイトボディ・アセンブリの精度改善に関する取り組みについてお伝えしました。また昨年の3月から4月にかけて、新たなソリューションとなるAutoForm Assemblyの発表会が開催されました。その発表会には数百名ものエンジニアや製造分野のプロフェッショナルが出席し、製造プロセスの改善について高い関心が寄せられました。このソリューションに対する反響は大きく、すでに多くのお客様に効果を実感していただいています。 ソリュ―ションの活用事例については、リリース時に開催したウェビナー・シリーズにて、以下の内容をご紹介させていただきました。 最初のプロセス・エンジニアリングに関する活用事例では、AutoForm Formingでシミュレーションした単品部品の結果をインポートして、応力、ひずみ、板減、スプリングバックがアセンブリに与える影響を確認しました。さらには見込み補正を考慮しながら単品部品を修正することで、アセンブリの改善につながりました。 2番目の活用事例では、実際の部品と金型ができた段階のプロセス改善に着目しました。シミュレーションを活用しながら実際の問題に応じたバーチャルでの方策を開発し、生産段階のトライアル・アンド・エラーを削減する取り組みをご紹介しました。またシミュレーションにて実際の単品部品を正確に表現するために、スキャンした部品データを取り込むことにも触れました。 最後は、プロジェクトの初期段階でアセンブリ工程を検討できるプロセス・フィージビリティの活用事例で締めくくりました。ここでは、基準部品がいかに完璧であっても、自重と公差の蓄積に起因する影響から、完璧なアセンブリを目指すのは困難であることを説明しました。しかしこれをきちんと把握することが、部品設計およびアセンブリ工程計画に直接的な影響を及ぼし、アセンブリの品質を包括的に改善できることもお伝えしました。 このウェビナー・シリーズの終了後、オートフォーム社では多くの資料を整理し、一般のお客様を対象に、AutoForm Assemblyのリリースと連動させた2部構成のウェビナーを実施しました。これらのウェビナーでは、金型や設備がまだ存在しない準備段階におけるバーチャル世界と、部品の製造や組付けが行われる現実世界を往来するアセンブリ・ソリューションについて紹介しています。 このソリューションの活用方法について詳しくお知りになりたい方は、AutoForm-ServiceCenterにご登録いただき、以下の2部構成のウェビナーをご視聴ください。 *バーチャル世界のアセンブリ・シミュレーション *現実世界のアセンブリ・シミュレーション AutoForm Assemblyを有効活用し、複雑な3Dパズルをより効率的に組み上げる手法をご紹介します。 下記の、AutoForm Assemblyを活用したプレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのプロセス・チェーン統合について簡潔にまとめた動画もぜひご覧ください。 - [ベスカー鋼として適用可能な材料特性を見極める — 材料カードの代用](https://japanforming.com/適用可能な材料特性の見極め/) - 「相当ではない相当材」から考察する相当材料等級の課題 オートフォーム社ソーシャル・メディア・マーケティング部門のスタッフが、世間を賑わせたテレビシリーズ、マンダロリアンのヘルメットをプレス成形で製作した記事を投稿したところ、これが大きな反響を呼び、このヘルメットの製作に関するさまざまな意見や質問が寄せられました。中でもぜひ紹介したい興味深い質問がこちらです。「マンダロリアン鋼(いわゆる「ベスカー鋼」)の材料カードはAutoFormで選択できますか。あるいは代用できる相当等級を教えてください」 図1: マンダロリアンのヘルメット - 製作を実現できるかAutoFormで検討 地球に住む人間の生活には何の関連もない話だと、戸惑う人もいるでしょう。しかし実は大いに関係があるのです。オートフォーム社では「この材料等級の材料カードはAutoFormに適用できますか。もしできない場合はどの相当等級を推奨しますか」というお問い合わせをよくいただきます。 一般的な相当等級をご案内することもできますが、それには重要な注意点があります。世界のさまざまな材料の名称を比較することは、ミレニアムファルコンが帝国軍艦隊に封鎖されたケッセル・ランを12パーセクもかからず飛びぬけるのと同じくらい難しく危険なことなのです。オンラインで閲覧できる比較表の多くは、相当特性の一致率が75%程度にしかなりません。しかしこの材料特性の裏事情をご理解いただくことで、この一致率にも納得していただけるかと思います。材料の名称は、一般的に、材料の機械特性に由来するものと、化学特性に由来するものがあります。たとえば前者には鋼材、後者にはアルミが該当します。 詳細は省きますが(後日改めて記事を執筆するかもしれません)、一般的にアルミなどの材料にはアルミニウム協会の記号(例: AA6016、AA5182)が採用されています。これはその材料等級の機械特性ではなく、製品の化学特性に基づくものです。アルミのメーカーは複数の等級(特に6000系材料)の生産を巧みに調整して、成形、曲げ、焼付塗装反応などの用途に優れた材料を生産し、自社ブランドとして販売しています。しかし本質的に、複数のアルミ等級がすべてAA6016-T4であっても、機械的特性もすべて同じであるとは限りません。ただしアルミニウム協会を非難する前に、ステンレス鋼の業界もまた同様であることをご理解ください。ステンレス鋼の場合、たとえば同じ等級でもDQ、DDQ、EDDQといったバリエーションがあります。 鋼材の分類はもっと明快だと思われる方もいらっしゃるかと思います。鋼材は降伏応力がX以上、引張強度はY以上Z未満といった機械特性の仕様に基づいて生産されます。このように考えがちですが、しかしASTM、ISO、JISといった国際規格に目を向けると、捉え方が異なってきます。まず引張試験については、たとえば試験片の寸法(A50とA80のドッグボーン型試験片)や圧延方向に対する試験片の姿勢だけを考えても、すべて同じ条件下で試験が行われたとは考えられません。つまりこれは全く異なるリンゴとミカンを比較しようと試みるようなものです。これをスター・ウォーズのたとえで言い換えると、旧3部作と特別篇と新3部作を比較するような無謀さです。さらには、どの国際規格にも該当しない材料が相当数あることもお伝えしなければなりません。多くの場合、ある大手OEMの要件を満たすために数社のメーカーが開発した特殊なニッチ製品です。 いやはや、ため息が出るばかりです。しかしこれだけではありません。材料特性の仕様が国際的に規定されていても、その境界が重複していることも特筆するに値します。それがために、A社がある材料をASTM相当と指定しても、B社では異なるJISに相当する等級を指定するようなことが起こりうるのです。さらに蟻地獄と化したサルラックの巣穴に飲み込まれていくような深みにはまっていくと、同じ会社の製品であっても、製造工場によって使用する機械設備やその使用年数が異なることで、材料特性に違いが生じることにもお気づきいただけるかと思います。ただしここまでくると、本稿の趣旨から脱線してしまいますね。 というわけで、スターウォーズのファンたちの間で長年続く「ハンが先に撃った」論争と同様に、多くのお客様が材料カードについてさまざまなご意見をお持ちのようです。本稿では、オートフォーム社独自の材料等価テーブルがオンライン・サービスセンターに追加されたことを機に、お客様からよくお問い合わせいただく疑問のいくつかにお答えすることができました。しかし残念ながら、ジャー・ジャー・ビンクスが登場した理由まではわかりかねること、ご容赦ください。この材料等価テーブルは未だ初期の構築段階にあり、今後数ヶ月かけて整備していく予定ですが、現時点では、鋼材、ステンレス鋼、アルミニウムの基本等級について掲載しています。ただし、ベスカー鋼やデュラスチールなどの特殊素材に相当する材料を含められるようになるのは、数世紀先になるかもしれません。 画像: Allgaier社提供 - [ホワイトボディの組み立てとジグソーパズル](https://japanforming.com/ホワイトボディの組み立てとジグソーパズル/) - ...そしてこの3Dパズルを完璧にはめ込むために... 2020年は長い年となり、多くの人々が意に反して、自宅で大半の時間を過ごしました。ソーシャル・メディアでは、ジグソーパズルをしながら時間を過ごす家族をよく見かけました。パズルは18世紀に始まった世界的な娯楽で、数百ピースから数千ピースまで幅広い難易度のものがあります。 友人たちがパズルに興じる姿を眺めていると、私自身が自動車業界のエンジニアであった時代を思い出しました。私はOEMに20年勤務し、車体部品のプレス成形金型の設計に携わっていました。プレス成形したすべての車体部品を、2Dパズルのようにすっきりと組み立てられたら、それほど素晴らしいことはありません。溶接した部品が初めから隙間なくぴたりと収まり、継ぎ目が平たく滑らかになるのであれば、どれだけストレスのない人生を送ることができたであろうか、想像するだけでも楽しくなります。 そう考えてみると、自動車のプレス成形部品を扱う会社は、パズルのピースを作るのが仕事です。複雑な3Dパズルのピースです。プレス成形した部品が最終製品であることはほとんどありません。部品をパズルのように組み合わせることで、最終製品に仕上げるのです。もちろんCADで作成した設計図をみれば、どのように組み合わせるか詳細までわかります。しかし自動車部品の「パズル」を正確に仕上げることは、なぜそんなに難しいのでしょうか? まず普通の自動車は、約30,000個の部品で構成されます。それだけでも、巨大なパズルです。すべての金属部品を溶接した基本の車体構造をホワイトボディと呼び、これが自動車の土台となります。一般的なホワイトボディの構成部品は300~350個ほどあり、平均4,500ヶ所をスポット溶接して組み立てられています。この点だけでも、卓上のパズルに勝ち目はありません。 また車体部品は、すべて同じメーカーが作っているとはかぎりません。500ピースのジグソーパズルのピースを、20~40社のメーカーが製造していると想像してみてください。すべてのピースがすべて綺麗に適合するとは考えづらいです。 それぞれのメーカーが、工程のばらつきに対処する必要があります。鋼材のコイルを入れ替えたら、材料特性が変わり、そして部品のスプリングバックも変化するため、部品に新たな適合問題が生じます。潤滑剤を変えると、材料の流れが変化し、成形中の応力とひずみが変わります。それがスプリングバックに影響して…もうお分かりでしょう。 部品の組み立てを困難にする要因は、その他にも数多くああります。公差の累積、自重の影響、部品の位置決め、クランプ拘束の方案など、枚挙に暇がありません。部品をヘミング接合する場合だけでも、その影響に対処するのはとても煩雑な作業です。考えてみれば、CADモデルは真空中に存在するようなものです。形状に影響を及ぼす外的要因は何もありません。製造した部品がCAD形状と100%の正確度で一致した場合でも、組み立て工程中には現実世界の物理特性が作用するため、組み立てられた製品から不正確性を完全に排除することはできません。 そこから多くの疑問が生じます。精度の問題は、どこから生じているのでしょうか?ある特定の部品は、他の部品に大きな影響を与えているのでしょうか?組み立ての精度を改善するには、どのように部品を見込み補正するべきでしょうか? 公差を調整することで部品の精度を高め、組み立ての品質目標を満たすべきでしょうか? オートフォーム社は、組み立て工程の精度を改善するための手段をご用意しています。パズルのような組み立て工程をより快適に作業できるよう、お手伝いさせていただければ幸いです。今後のブログ投稿にて、より詳細に説明させていただく予定です。 - [プレス成形が完璧でもアセンブリが完璧にならない理由](https://japanforming.com/アセンブリまでのデジタルワークフロー/) - 「何を変えたら、上手くいくのだろう?」 ドア・サブアセンブリの内板および外板パネルのヘミングを初めて行い、それに失敗すると、まず生じるのがこの疑問ではないでしょうか。 これはヘミング金型工場でトライアウトを開始したときに、誰もが頭を悩ます問題です。最初から成功するなど、まずありません。しかし同じことが何度も続くと、数日後(あるいは数ヶ月後)には、「これは誰のせいだろう?」と新たな疑問が膨らんできます。どんな対策を講じてもアセンブリを公差内に収めることができないと、この疑問がますます強くなってきます。 オートフォームでは、このような問題について問い合わせの電話をいただいた時、絶対に誰があるいはいつといった詳細をお尋ねすることはありません(いずれにしても、まだ煙が出ている拳銃を持って突っ立っているような犯人はいるわけがありません)。そうではなく、なぜその問題が生じたかを調査し、そして、その解決方法を検討することに努めます。 まず根本原因を深掘りすると、体系的なソリューションを導く包括的な分析が可能になります。 プレス成形工程とヘミング工程をエンジニアリングからトライアウトまで検討すると(図1を参照)、ほとんどの場合、プレス成形工程の設計者同士あるいはヘミング工程の設計者との間で、まったくデータ交換が行われていないことがわかります。つまり内板と外板のプレス成形工程の間で情報交換することなく、作業が同時進行しているのです。 図1: プレス成形からアセンブリまで - 現在の一般的なワークフロー プレス成形の工程設計者は、いわゆる「CAD-0」形状を参考として考慮し、幾何公差からたとえば±0.5 mmなどの公差を定義します。しかしその部品に別の成形工程(ヘミング)が行われることは想定せず、その結果に対する保証は何もありません。 ヘミング金型もCAD-0形状をベースに製作しますが、自重や残留応力といったパネルの物理学的な要素は考慮されません。 「プレス成形が完璧でもアセンブリが完璧にならない理由」と題したこのウェビナーで、この問題について検討しました。プレス成形工程の設計中に前もってヘミング工程の結果を検討し、その結果を考慮しながらプレス成形工程の設計を行うことで、時間や費用がかさむ再設計のリスクを最小限に抑制できることを、実例を使って示しました。 オートフォームがプロジェクトに参加した時点では、ドア・アセンブリのプレス成形金型およびヘミング金型(図2)の製作は、すでにすべて完了していました。 数週間もトライアウトを行ったにも関わらず、ドア・サブアセンブリを公差に収めることはできません。 図2: ドア・サブアセンブリ(プロジェクトの対象部品) ヘミング金型のトライアウトの回数を追うごとに、内板/外板パネルの修正こそが唯一のソリューションではないかという疑惑が広まってきます。こうなると、まず初めに担当者一同がはっきり確認したはずの、プレス成形工程では内板と外板のパネルが両方とも公差内に収まり、「グリーン」の部品であるという事実がすでに抹殺されていることは、特筆するに値します。 そして実際のヘミング工程をシミュレーションですべて分析した時点で、この疑惑が現実として決定づけられます。シミュレーション環境でヘミング金型を可能なかぎり正確に再現したことで、工程パラメータが結果に与える影響を短時間に総合的に確認でき、どのようなパラメータ値や金型形状を使っても、公差内に収まるサブアセンブリの面積の割合はターゲットを下回る結果となりました。そして品質管理部門によって、不良品という明確な評価が下されました。 この時点で、不具合を解決するには、公差の変更を含めて部品を設計し直すべきか、また金型ラインを削減することで、数十万ユーロ(約千万円)を節減できるか、そして対象になるのはどの金型ラインであるか、といった問題を検討しなければなりません。 そこでまずは、両部品のプレス成形工程の分析から始めました。アセンブリされた部品まで検討するために、最初からヘミング工程まで組み込みます。 ここで採用したワークフローを図3に示します。これは従来のワークフロー(図1を参照)を本質的に置き換えるものです。初期の工程フィージビリティ検討時にヘミング結果まで確認し、ヘミング工程のシミュレーション結果まで考慮した上で、実際の決定を行いました。 図3: ヘミング結果を考慮したプレス成形工程 ヘミング工程のシミュレーションを行い、結果を評価した上で、両方の金型を見込み補正するか、いずれか1つを見込み補正するかをはっきり決定することができました。つまり、部品単体の挙動からアセンブリの挙動の傾向を定義することを目標としたのです。 ヘミングのバーチャル・トライアウトは、最初に「見込み補正なし」の金型で成形したパネルで行いました。個別部品のスプリングバックと、サブアセンブリのスプリングバックを比較することで、支配的なパネルの有無を確認しました。 図4に示したように、アセンブリしたドアのスプリングバック結果は、内板パネルのスプリングバック結果とより合致していました(緑の領域は公差±0.5 mm内の部分を示します)。 図4: 部品個別のスプリングバックとサブアセンブリのスプリングバックの比較 サブアセンブリの結果を確認すると、総面積の68%が公差内でした。つまり内板パネルが、外板パネルを公差内に引き込んでいると考えられます。この考察からも、さらに詳細な分析が必要であることは明らかです。 外板パネルの金型のみを見込み補正すると、 (現実と同じく)外板パネルは公差内に収まったままであり、最終ヘミング結果に対する外板パネルの影響は小さいことが確認されました。見込み補正した金型で作成した外板パネルと図4の内板パネル(見込み補正なし)をヘミングすると、アセンブリの公差内に収まる総面積は大きく変化しませんでした(図5を参照)。 図5: 外板パネル見込み補正の影響はごくわずか これまでの時間は無駄だったのでしょうか? いい質問です。正直に言えば、外板パネルを公差内に収める最善の見込み補正方案の検討に多くの時間をかけましたが(もちろんこれはプレス成形の目標を達成するために、エンジニアとして避けては通れないことです)、最終サブアセンブリに対する効果は得られないままでした。その意味では、時間を無駄にしたことは事実です。 しかし、分析の結果、興味深いことがわかりました。プレス成形を行う会社は、過剰な工程設計を避けることで、時間とコストを節減できたはずです。また、厳しい公差を満たすために金型トライアウトのループが増えることもなかったはずです。 つまり言い換えると、数十万ユーロ(数千万円)を節約することが可能になるのです。 さて、話をプロジェクトに戻します。内板パネルのみを見込み補正した以前の分析をベースに、内板パネルのプレス成形工程のみを修正して、外板パネルの金型ラインは変更しないことにしました。 ここで新規の参照ターゲットを定義します。 そして、内板パネルのみを見込み補正することにしましょう。しかし問題は、どのスプリングバック測定から、金型を見込み補正するかということでした。 そこで実際に組み立てた内板パネルのスプリングバックを測定して(スキャンデータとアセンブリ参照形状を比較)、参照からの偏差で金型を見込み補正することにしました。 実際に金型を再切削する前に、またすでに作成した金型を破棄する前に、この作業をバーチャルに検証する必要がありました。 最後に内板パネルのプレス成形工程をシミュレーションし、内板パネルを実際の(スキャンした)外板パネルと一緒にバーチャルのヘミング金型に配置しました。外板パネルの金型は変更していないため、「旧」外板パネルと「新」内板パネルを併せて使用できることを確認する必要がありました。 このバーチャルな工程検証の結果を図6に示します。アセンブリのCAD-0形状を基準として、±0.5 mm内の部分と±0.7 mm内の部分の割合を確認しました。 図6: 工程検証の結果 完了! この結果から、内板パネルの金型ラインのみを再切削して、既存の外板パネルの金型ラインはそのままにすることにしました。 生産に適した設計 これもしっかりとご留意いただくべきコンセプトです。金型の設計から製造まですべての活動に共通する最終目標は、部品とサブアセンブリの量産です。究極的には、車体全体を最善のコスト/品質比で製造することを目指さなければなりません。これはつまり、効率の追求です。 生産における効率とは、単に不具合が発生した際に、できるだけ迅速に、効果的に対応することだけではありません(不具合は必ず発生するからです)。効率は設計するものであり、製造(トライアウト)全般において、効率は維持しなければなりません。つまり、効率はプロセス・チェーン全体、すべての部門および金型工場で達成する必要があります。これこそが、本当の意味での効率的な生産です。 この原則に留意しつつ、安定性の調査を行いました。技術的に言い換えると、不要かつ制御不能なパラメータの変動幅を考慮した上でプレス成形工程能力を確認しました。見込み補正前後の安定性を確認し、結果を図7に示します。 図7: 見込み補正前後 - [差厚鋼板の種類と設定~車体部品の軽量化への取り組み~](https://japanforming.com/差厚鋼板の種類と設定~車体部品の軽量化への取/) - 【はじめに】 自動車産業は100年に1度の変遷期と言われており、自動車の多機能・高機能化が進んでいます。(図1) 車両の構造が変わり重量が増える傾向にある一方で、従来車より重量を軽くする軽量化への取り組みも同時に求められています。 図1. 自動車産業を取り巻く変化 車体部品の軽量化に対して、どのような検討が行われているでしょうか?センター・ピラーを例に、使用される技術・工法・材料を見ていきたいと思います。 【センター・ピラーの軽量化】 各部位に必要な性能を保証しつつ軽量化のための最適な材料と工法を検討します。 <強度> サイドクラッシュやルーフクラッシュなど外部の衝撃から乗員を守るために、元の形状を維持し続けるだけの十分な強度を保証しながら、軽量化を検討します。 冷間超ハイテン材やホットスタンプを適用することで板厚を下げる事が考えられます。近年では鋼板以外の材料、たとえば炭素繊維(CFRP)の活用も検討されています。 <補強> 乗員の頭部や肩まわりはセンター・ピラーの少しの変形でも重大な負傷につながる可能性があります。そのためセンター・ピラーの上部には追加の補強が検討されます。一般的にはセンター・ピラーの内側にレインフォースメントを追加しますが、レインフォースメントをセンター・ピラー本体に統合する技術として、ブランクの上に異なるブランクを重ねてプレス成形するパッチワーク技術や、一枚のブランクの中で任意の板厚に変化させるテイラー・ロールド・ブランク(TRB)を使用して強度が必要な位置の板厚を上げることが考えられます。(図2) 図2. センター・ピラーの補強 <強度差> サイドクラッシュでは衝突の際に、相手側の車のフロントバンパーから接触が始まります。フロントバンパーが当たる位置、つまりセンター・ピラーの下部はあえて折れやすくなるように設計されます。理由は部品下部で衝突エネルギーを受け止め、上部の形状をできるだけ原型を保つようにするためです。具体的には、折れの起点となるようなビード形状の追加、板厚や材質が異なるブランクを繋ぎ合わせるテイラー・ウェルデッド・ブランク(TWB)の使用、前述のTRBの使用、ホットスタンプでは部品下部がマルテンサイト化しないよう焼き分け技術を用いています。(図3) 図3. センターピラーの強度差 実際に市場に出ている車を数台みるだけでも、そのコンセプトはさまざまです。(図4) 図4. センター・ピラーのコンセプト例 上記はあくまで一部の例で、実際の市場には、より多くのコンセプトが存在するかと思います。本稿では、どれがベストの組み合わせかの議論はいたしません。最適解は設計車両のセグメント、計画台数、仕向け地、調達性などによって異なるからです。 【早期検討の必要】 設計・開発活動の効率化が求められる中で複数のコンセプトから最適な構造を決めるには、設計自由度が高い開発活動の初期段階からそれぞれの工法や材料などの仕様検討を行う必要があります。 AutoForm-StampingAdviserはプレス部品の初期検討に必要なフォームチェック、展開ブランク検討、そして歩留まり検討を可能にします。 <フォームチェック> 図5に示すように、部品形状から簡易的な成形性解析が行えることに加えて部品を平面外形線に展開することが可能です。 図5. フォームチェックによる簡易成形性解析 <展開ブランクと歩留まり検討> フォームチェックの結果から展開ブランク形状を作成します。作成した展開ブランクをコイル材から取得するためのネスティングのレイアウトや、定型ブランク内への埋め込みを計算することが可能です。(図6) 図6. 作成した展開ブランクとネスティング・レイアウトの検討 【差厚鋼板】 話を少し戻して、差厚鋼板の話を続けたいと思います。 差厚鋼板には以下の違いがあります。(図7) 図7. 各差厚鋼板の特徴 テイラー・ウェルデッド・ブランク (Tailor Welded Blank (TWB)): 異なる板同士の端部をレーザーやプラズマ溶接などで接合したブランク材です。 溶接が可能な範囲で異なる板厚や材質を組み合わせる事が可能です。 パッチワーク: ブランク材の上に別のブランク材を乗せてスポット溶接した後にプレス加工する技術です。溶接が可能な範囲で異なる板厚や材質を組み合わせる事が可能です。 テイラー・ロールド・ブランク (Tailor Rolled Blank (TRB)): 一枚の板の中で板厚が変化するブランクです。 TWBとの違いは、TWBが溶接によって異なる板厚や材質のブランクを接合しているのに対してTRBはコイル材の圧延時に差厚加工を行うため溶接による接合がなく、異なる一定板厚区間の間に徐変区間が設定され、なだらかに板厚が変わるのが特徴です。 【設定方法】 オートフォームでは上記で紹介した差厚鋼板を設定することが可能です。先のセンター・ピラーのコンセプトの例を用いてオートフォームでのTWB、パッチワーク、TRBの設定方法を紹介します。 図8. - [デジタル・プロセスの効率化: AutoForm-ProcessDesigner^forCATIAが成功を導いたCurve Engineering社の事例](https://japanforming.com/デジタル・プロセスの効率化/) - OEMがCATIAデータのみを扱う場合について【スティーブ・ハケット氏の談話】 Curve Engineering社は、部品プレス成形シミュレーション、歩留まり検討、金型設計、および試作を専門としたコンサルティング会社で、OEMや1次サプライヤを顧客に有しています。社長であり創業者でもあるスティーブ・ハケット氏は、リードタイムを短縮しながら、エンジニアリングでフィージビリティを担保できる手段を常に模索しています。Curve Engineering社ではCATIAの使用経験がない社員もいる中、ダイフェース設計ソフトウェアとしてAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを最近導入しました。その効果をどのように実感したか、ハケット氏にお話を伺いました。 お客様とのデータ交換は、当然のことながら、お客様が使用するCADシステムに依存することは周知のとおりです。Curve Engineering社では多くのOEMやサプライヤと取引がありますが、お客様とのデータ交換に関しては、データ変換に起因する不具合を回避するため、エラーがないサーフェス・データと全工程モデルを要求しています。大手OEMの場合、この要件を満たさなければ、入札に参加できません。当社ではCATIAの使用経験がない少数派の社員のために、CATIAとAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの両方を同時に導入するという、独自の立場を取っています。同社ではプレス成形シミュレーションでもAutoFormを積極活用しているため、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAはまさに理にかなった選択でした。 ハケットさん、最近お客様から受けた依頼について、お話を伺えますか? このコロナ禍において、データ転送が重要な役割を担ったことがきっかけとなり、新規のお客様からご依頼をいただきました。ある金型メーカーがドイツで新しい金型を作成し、それを英国の工場に設置する予定でしたが、コロナ禍で旅行や出張が制限される中、エンジニアを英国へ派遣できなくなったのです。担当者を10日間隔離することは論外でした。そこでCurve Engineering社が、ここ英国の工場に金型を設置する作業を請け負うことになったのです。仕上がったばかりの金型を受け取ると、それをラインへ設置し、滞りなく部品の量産を開始することができました。この事例の核心となる要素は、信頼できるデータ転送を確実に行う、という点です。 高い技術を有する金型メーカー、機械技術者、金型設計者に仕事を外注する1次サプライヤにとって、どの段階においても高精度が担保されるロバストなオペレーションを構築する上で、情報の伝達は重要な役割を担います。その点、Curve Engineering社は、高い評価をいただいています。当社が厚い信頼を得ているのは、お客様のプロセス効率化を徹底的に支援することで、再切削の回数を最短時間で最小限に抑制することの重要性を理解しているからです。Curve Engineering社は、品質に妥協することなく、業界随一の納期をお約束します。これを可能にしている原動力は、当社がプロセスのあらゆる段階に関与し、それぞれ適切な設計ツールを当社の経験則と併せて適用していることにあります。金型メーカーが現場で金型の調整作業をするとき、当社では同時にエンジニアリング部門をサポートします。たとえばトライアウト担当者がドロービードを調整する場合、その元に戻すことができない調整作業を行う前に、まずエンジニアリング担当者がシミュレーションを実行するのです。データ転送を確実に行うことが大前提となりますが、この点において、当社は企業としての信頼性を高めてきました。ありがたいことに、いまでは多忙な毎日を過ごしています。 数年前まで、サーフェスのデータをお客様と共有する場合において、苦労話が尽きることはありませんでした。以前に利用していたCADパッケージでは、ある問題に苦慮していました。ネイティブの形式では問題なく作業できるのですが、データをCATIAに転送すると、データが適切に変換されないのです。データ変換の不具合によって、サーフェスの品質に問題が生じると、これまでの作業が水の泡となる危険性があります。ここでCurve Engineering社が、データの損失やデータ形式の変換不良を回避することに着目した点が、ビジネスの観点において大きな契機となったのです。たとえば、いまここで工程モデルを完成させ、成形工程を設計し、デジタルのスプリングバック見込み補正を完了したと仮定します。これからデータを別の金型設計パッケージに転送しなければなりません。データに履歴がなければ、サーフェスは完璧に近い状態です。0.001 mm程度の小さな隙間があったとしても、実際に加工する上で問題にはなりません。しかしソリッドで金型設計を作成しようとすると、頭の痛い問題が生じる可能性があるのです。 Curve Engineering社が成功を収めた一番の理由を教えてください。どのように、これほどの急成長を遂げたのでしょうか。 正直なところ、私たちの評判はトレードオフで得たものです。お客様からは、当社の仕事はブランクのサイズ見積もりや最適化の初期段階から非常に迅速で、しかも品質も非常に高いと評価をいただいています。これこそが鍵となります。質の高い仕事を続ける限り、お客様から次回も引き続きご依頼をいただけるのです。このようにして、非常に多くのお客様にご愛顧いただいています。Curve Engineering社では、可能なかぎり作業を突き詰め、ほぼ完璧なデジタル・マスターを作成します。大切なのは、お客様に満足していただくこと、そしてお客様のプロセスを効率化して再切削の回数を最小限に抑制することです。 Curve Engineering社では、AutoForm製品に多額の投資を行っています。当社のホームページを見ていただければ、あらゆる案件にAutoFormを活用していることがお分かりになると思います。特筆すべき点は、AutoFormによって、プレス成形シミュレーションとCADの世界がシームレスにリンクされることです。両者の互換性が高いために、プロセスが効率化され、データの処理がとても容易になったと感じています。これもAutoForm-ProcessDesignerforCATIAとAutoForm-QuickLinkforCATIAの導入を決めた一因です。 もちろん、AutoFormがあればCATIAを理解する必要はなくなる、とは言いません。しかし強調させていただきたいのは、AutoFormを活用することで、必要な作業にさらに集中して取り組むことができるという点です。AutoFormは薄板のプレス成形に特化したツールです。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境に必要な作業に応じて一連のツールが組み込まれており、さらには金型設計やその後のエンジニアリング段階におけるデータ効率も担保されます。特にNCの事前作業に関するAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの機能は素晴らしく、たとえば見込み補正の他にも、半径やベアリングの領域を緩和して良好なスポッティングを得ることができるため、非常に効率よく作業を進めることができます。 ソフトウェアの習熟期間についても述べておく必要があると思います。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使いこなすまで長時間をかけることなく、その効果を実感することができました。他のCADパッケージを導入していたら、長期間におよぶ習熟期間が深刻な問題となったはずです。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使うことで、非常に短時間でドロー・モデルを作成できます。もしCATIAの使用経験がない社員がCATIAでドロー・モデルを作成しようとしたら、まさに今この瞬間にも、まだサーフェス作成機能の詳細について勉強の真っ最中だったことでしょう。幸いなことに、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAの機能群と包括的なテンプレート・ガイドのおかげで、作業はすでに完了しています。 2年前に3名で始めたこの仕事が、いまや繁忙期には17名にもなり、多岐にわたる分野で精力的に活動しています。英国では「ブラック・カントリー・ボーイズ」と呼ばれている私たちですが、それは全員がウェストミッドランド州出身で、この地域に特徴的な「なんでもやってのける」精神を継承しているからでしょう。Curve Engineering社では、金型の製作やトライアウト、製造現場などで経験を積み、その後、プレス成形シミュレーションやプロジェクト管理に進んだ人材を採用しています。つまりプロジェクトの担当者は、AutoFormをバーチャル・トライアウトのツールとして使いこなせるだけでなく、成形性やスプリングバック、さらには金型製造、曲げに対する強さや抵抗力、そして金型の寿命まで包括的に考慮できるスキルを持ち合わせているのです。しかし良好なダイフェース・モデルを作成する上で、高いスキルを有する担当者全員がCATIAを高度に使いこなせるとは限りません。そのためAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを導入することで、全員がこのスキルを最大限に有効活用できるようになりました。Curve Engineering社の成功には、数多くの要因が存在しますが、とりわけ、新しいアイデアを躊躇なく取り入れ、与えられた仕事に妥協なく取り組み、素晴らしい成果を引き出すための経験を日々積み重ねているエンジニアたちによる貢献は計り知れません。しかし、どんなに秀でた職人でも、適切な道具がなければ仕事をすることができません。同様に、Curve Engineering社では、AutoFormのソフトウェア・ソリューションおよび技術サポートに支えられ、この継続的な成功を収めることができているのです。 - [フランスのProform社がAutoForm TubeXpertを活用して生産性を向上](https://japanforming.com/tubexpertを活用した生産性向上/) - チューブ・ハイドロフォーミングのシミュレーションでプロセス・チェーンに沿った改善を実現 Proform社はフランスのリヨン校外にあるGPグループの企業です。複雑なチューブ形状(図1)の成形を専門とし、チューブの冷間曲げおよびハイドロフォーミング、そして様々な材料を用いたチューブ、シート、セクションの成形、研削、組み立て、および溶接を行っており、化学、パルプ・製紙、食品加工、薬剤、原子力、航空、自動車業界に広く事業展開しています。ハイドロフォーミング工程を採用することで、複雑な形状を高い寸法精度で成形でき、またひずみレベルが大きく、より強固で剛性が高い部品を生産することが可能になります。 図1: 一般的なチューブ成形工程 Proform社では数年前からAutoFormソフトウェア・ソリューションを活用し、リリースされた最新のAutoForm-TubeXpertでチューブ・ハイドロフォーミング工程の設計や検証を行っています(図2)。 図2: 部品のCADサーフェス(左)とAutoForm-TubeXpertでシミュレーションした板厚分布(右) 高度な技術情報を短時間で取得 見積もり段階では、部品が生産可能であるか、また利用できるプレス機に適合するかといった情報を、非常に短時間で見極める必要があります。Proform社ではシミュレーションを活用し、必要な情報をわずか1日で取得しています。 部品のフィージビリティを確認したら、次に部品生産の技術的なソリューションをAutoForm TubeXpertですべて詳細に比較検討し、そして工程を検証します。ソリューションの特定、工程数の決定、複数の計算の実行、型の設計といったすべての情報が1週間以内に出そろいます。Proform社ではシミュレーションを有効活用することで、技術とコストの両面を詳細に検討した見積もりをお客様にご提案しています。 共同開発: Proform社の強み 革新力とソリューションの的確な選定で知られるProform社は、製品開発全体を通じてお客様をサポートしています。お客様が設計の草案をProform社へ持ち込むと、Proform社はハイドロフォーミングの技術的な観点から様々なアドバイスを行います。AutoForm TubeXpertを活用し、お客様のニーズにあわせて対応できる形状とサイズを確認し、チューブ形状の検証を行い、お客様が必要とする機能を具現化するのです。 Proform社ではこのような初期のコンサルティングおよび共同開発段階において、AutoFormソリューションが必要不可欠であると考えています。生産に寄与するパラメータが無数にある反面、与えられた時間は非常に限られているからこそ、このソフトウェア・ソリューションを有効活用することで、お客様に自信を持って信頼できる提案を行うことができます。 依頼から詳細検討まで Proform社がプロジェクトを受注したら、次に開発段階へ移行し、プロジェクトの進展に応じて製品を修正していきます。お客様がその製品をアップグレードする場合には、それに伴う変更をAutoForm TubeXpertで迅速に検証します。 図3: 同時成形する複数部品のシミュレーション この開発段階では、Proform社は生産効率を最適化する上で望ましいソリューションの候補を比較検討します(図3)。特にスプリングバックの予測に着目し、見込み補正金型を定義します。最初のトライアウトで成形する部品が公差に近いほど、ハイドロフォーミング金型のトライアウトにかかる時間およびコストを削減できるからです。 詳細検討から生産開始まで Proform社ではお客様の要望により柔軟に対応すべく、成形用機械や金型の大部分を自社で設計・製造しています。ハイドロフォーミング金型を製造したら、トライアウト段階で部品に不具合が生じないよう最終生産パラメータを調整します。特にチューブ内の圧力上昇の速度と金型の動きを同期させることが重要です。シミュレーションで得た情報を活用することで、この段階の作業を大幅に簡略化できます。 生産不具合 生産中に不具合が生じた場合には、その不具合調査にもAutoForm-TubeXpertを活用できます。さまざまなシナリオを試験しながら、原因を追究していきます。複数の選択肢をデジタルに検討することで、現場のトライアルを最小限に抑制できるのです。 今後の展望: 生産ロバスト性の予測と改善 Proform社では同社が長年にわたって積み上げてきたお客様からの信頼が、シミュレーションの活用を通じてさらに高まったと考えています。必要に応じてシミュレーション結果を参考にしながら、お客様の疑問を先取りで解消し、調整することで、実情に合わせた納期をお約束します。 シミュレーションは成形中の現象を予測するツールですが、生産の不確定要素から現実との差異が生じる可能性があります。AutoForm TubeXpertの最新バージョンでは、この問題に対応しています。たとえば、材料データの入力に生じるばらつきのような生産データの不確定要素、つまり「ノイズ」を再現できます。シミュレーションを行い、これらのばらつきが部品の品質に与える影響を検討し、ロバスト性の入力パラメータを特定することで、安定した生産を実現できるソリューションを導入することができます。このように工程のロバスト性をコントロールできるようになると、Proform社の専門性がさらに飛躍的に高まることに間違いはありません。 - [熱間プレス成形における初期パッチ外形線の決定 - 3つの手法を比較](https://japanforming.com/熱間プレス成形の初期パッチ外形線の決定/) - 本稿ではパッチを伴うブランクの成形をテーマとして取り上げます。部品上のパッチの形状と位置は設計段階で検討し、テスト・エンジニアが検証します。しかし成形前のブランクでパッチ外形線を検討するには、成形工程を考慮しなければならないため、その作業はやや煩雑となります。そのノウハウはプロセス・エンジニアたちの間ですでに確立していますが、中でもよく用いられる手法やそのメリットやデメリットについて調査することになりました。そこで世界各地の様々な企業のユーザーを対象に、使用しているソフトウェア・アプリケーションについて取材し、信頼できる結果が得られる3つの手法を特定しました。 フォームチェック 材料ラインのトラッキング トリムラインの自動最適化 まずこれらの手法について簡単に説明してから、比較検討を行います。 フォームチェック: フォームチェックは、ワンステップの逆シミュレーション手法による解析ツールです。成形性などパラメータの初期評価を行い、さらに部品を平面に展開することで、必要なブランク形状とブランク上のパッチ外形線の両方が得られます。最小限のパラメータを入力するだけで、モデリングと計算に工数をかけることなく、ブランク上のパッチの形状と位置の初期見積もりを算出できます。所要時間はわずか1〜3分です。 図1 – フォームチェック 一連の試験を評価したところ、この手法を用いて特定した成形済部品のパッチ形状には、ターゲット・ラインから平均で約2 mm、最大で約2.5 mmの偏差があることがわかりました。 材料ラインのトラッキング: この手法にはパッチを含まない「ダミー」の初期シミュレーションが必要です。そしてシミュレーション結果に対して、望ましいパッチ形状の外形線を投影します。その外形線はブランク上の固定材料ポイントに自動的に割り当てられ、シミュレーションで初期ブランクに遡ることができます。この固定された割り当てから、初期ブランク上のパッチの位置と形状を特定できます。 図2 - 材料ラインのトラッキング パッチの形状や位置はシミュレーションの結果に影響するため、決定したパッチ外形線は初期シミュレーションの品質によって異なります。成形済部品のターゲット・パッチからの偏差は、フォームチェックで得られた結果とほぼ同様で、平均で約2 mm、最大で約2.5 mmでした。 トリムラインの自動最適化 インクリメンタル成形シミュレーションにおけるトリムラインの自動最適化は、トリムや外形線を最適化する反復手法で、成形済部品の内形線と外形線をそれぞれのターゲット・ラインと比較しながら、トリムと外形線を調整するというものです。必要な境界カーブがすべて自己定義した公差ウィンドウに収まるまで、反復は続きます。これは完全に自動で行われます。 図3 - トリムラインの最適化の反復工程 この手法ではパッチ外形線を最初に見積もらなければなりません。パッチ外形線の最初の見積もりには、フォームチェックを使用することも考えられます。なぜならば初期のシミュレーションが不要で、しかも非常に高速だからです。この手法の精度は定義された公差ウィンドウから決まります。妥当に現実的な公差ウィンドウ(例: 品質仕様から±0.25 mm)であれば、通常2〜3回の反復で望ましい結果を得ることができます。定義された公差が満たされるまで反復は続くため、この手法は連続したアセンブリのプロセスに最高レベルの精度を提供します。 手法の比較 これら3つの手法を比較する上で、単純に「優劣」をつけるだけの評価はできないことがわかりました。エンジニアリング段階では時間要因が情報レベルに大きく左右するため、たとえば部品形状の寸法精度といった単一のパラメータに基づいた評価のみでは十分とは言えません。ご存じのとおり、ほとんどのエンジニアは広範なエンジニアリングのプロセス・チェーンに沿って仕事をしているため、連続した流れの中で適時に仕事を完了させなければなりません。エンジニアリングに費やす時間はきわめて重要な資源であり、無駄にすることはできません。「何がより優れているのか」を検討するのではなく、「いつ、何がより優れているのか」を探るべきです。つまりこれが現実的な評価基準となります。「いつ?」という疑問には、デジタルのエンジニアリング・プロセス・チェーンと現場のエンジニアリング・プロセス・チェーンを組み合わせて、それぞれの段階で求められる精度のレベルを探ることで、答えを導き出すことができます。 図 4 -デジタル・エンジニアリングのプロセス・チェーンと 段階ごとに異なる正確度のターゲット 初期のフィージビリティ検討や計画・コスト見積もりなどの初期段階では、精度はあまり重視されず、また多くのパラメータも確定していない中で高い精度を求めることも現実的ではありません。このような段階では、精度は低いながらも素早く結果を算出できる「フォームチェック」や「材料ライン」の手法が適していると考えられます。これらの手法を直接比較すると、比較的短時間でほぼ同等の結果を得ることができるという点で、フォームチェックが優勢です。 最終検証や正確な金型形状の決定などプロセス・チェーンの最終段階では、高い精度が求められます。そのためトリムラインの最適化が適していますが、望ましい精度を得るには2~3回のシミュレーションが必要となります。 図 5 - 精度の比較 結論として、これらの手法には所要時間や精度に応じたメリットがそれぞれあります。そのためプロセス・エンジニアは段階ごとに重要なパラメータを判断し、最適な手法を選択しなければなりません。エンジニアリングのプロセス・チェーンに沿って精度を高めてゆくには、エンジニアリングの各段階における結果をパラメータと一貫して関連付ける必要があります。 - [AutoFormを活用した慣習的思考からの脱却: インド某企業の顧客事例](https://japanforming.com/autoformを活用した慣習的思考からの脱却-インド某企業/) - 直感に頼ったわれ対策の是非 われの解消方法を問われた場合に「ドロービードを弱める」と直感的にお答えになった方は、本稿の結論に驚かれることでしょう。この「顧客事例」シリーズの最新記事では、生産中に散発的に生じるわれの解消に取り組んだインド某企業の事例について、オートフォーム・インド社テクニカル・アカウント・マネージャのマヤンク・グプタが紹介します。ソリューションを検討する際には、エンジニアリング段階で工程ロバスト性解析を行うことが重要であることを、AutoFormソフトウェアを使って検証した内容です。 問題提起 オートフォーム・インド社のあるお客様は、基幹部品の生産トライアル中の不具合に直面していました。シミュレーションは「グリーン」であるにも関わらず、ドロービードに隣接する領域にわれが検出されたのです。 図1:生産中に検出された散発的なわれ 根本的な原因特定のための解析: 工程ロバスト性 不具合の根本的な原因を特定するため、オートフォーム・インド社はお客様と共同プロジェクトを開始しました。この不具合の発生には一貫性がなく、工程ロバスト性との関連が疑われるため、AutoFormソフトウェアで検証を行いました。 工程ロバスト性を評価する際には、制御不能なばらつきを考慮する必要があります。材料特性、板厚、潤滑、バインダのトン数(若干)などの変動するパラメータは、プレス成形を行う作業者が制御できるものではありません。 またこれらの入力パラメータは生産中に変化します。そのため解析ではパラメータのばらつきを定義し、生産シミュレーションの結果を評価しました。 図2: 入力変数のばらつきを定義(実際のばらつきが不明なためデフォルト値を使用) 結果を分析した結果、以下が明らかになりました。 工程が不安定であることに起因するわれは、実際の生産中にわれが発生した領域とすべて同じように予測されました。 われに対して最も寄与するパラメータは潤滑だと考えられがちですが、ここでは直感的な判断とは異なりました。驚くべきことに、摩擦係数を低くする(潤滑剤を増やす)と、さらに多くのわれが発生しました。 図3: 摩擦係数の低減(潤滑剤の増量)によって高まるわれの危険性 根本的な原因特定のための解析: ドロービードの検討 ロバスト性の初期検討後、ドロービード形状が成形性の結果にどのように寄与するかを分析することになりました。そのためロック・ビード(高いビード高)からフロー・ビード(低いビード高)まで、ドロービード形状を変数として定義し(図4を参照)、寄与度を把握するために改めてシミュレーションを実行しました。 図4: ドロービード形状を変数として定義し、成形性に対する寄与度を分析 結果の分析から、2つの領域でわれの危険性が高いことが判明しました。またこれらの領域では、われに対するビード形状の寄与度が相反することもわかりました。ビードを緩めると、ある領域のわれは解消しますが、別の領域でわれが発生するため、またもや直感に反しています。そこで改めて検証しなければならないのが「両方の領域でわれを解消できるドロービード拘束力の値や形状」であり、つまり、このプロセス・ウィンドウを検証する必要が生じます。 結果を分析すると、両方のわれを解消する小さなプロセス・ウィンドウが特定されましたが、ほんのわずかでも外れると、どちらかの領域でわれが発生する危険があります。ロバスト性解析の結果からすでに明らかなとおり、この工程は非常に敏感なのです。 図5:両方の領域におけるドロービードの強度とわれの傾向を比較。 領域#1では、ビードの強度を下げるとわれやすくなります ソリューション 長方形ビードの代わりにダブル・ビードを使用すると良好な試験結果が得られますが、より大きなブランクが必要となるため、材料の利用率は低くなります。お客様には難しい判断が迫られますが、設計と工程のロバスト性をエンジニアリングの段階で検証することで、設計や工程をより柔軟に変更できるようになります。そのため材料の利用率を妥協することなく、不具合を容易に解消することができるのです。 エンジニアリング段階でロバスト性解析を実行すべき理由 直感的に判断したソリューションから望ましい結果を常に得られるわけではないことが、この事例によって示されました。経験則が誤った方策を導き出す可能性もあります。また生産中に必ず生じる工程パラメータのばらつきを考慮しながら、設計や工程を検証することも非常に重要です。 工程設計中に検討を適切に行っていたら、この不具合から生じるすべてのコストを回避することができたはずです。つまり、一般的な通念には反しても、常識に従い、エンジニアリングの段階で生産のシミュレーションを行うことで、実際の現場にて効率的に生産することが可能になります。適切に検証されたシミュレーションに優るものはありません。 - [トリム刃作成工数30-40%低減~AutoForm-ProcessDesignerforCATIA活用事例~](https://japanforming.com/トリム刃作成工数30-40%低減/) - 本稿では関東の大手金型メーカーである株式会社オギハラ(以下オギハラ)でのAutoForm-ProcessDesigner forCATIAの活用法をご紹介いたします。 オギハラは、常に多くのお客様の要望にかなった金型製作を得意としており、日程、品質、仕様の順守に重きを置いていることで名声を得ております。 その仕様は、お客様の数と同じだけ存在します。そのためお客様の仕様を遵守することは、共通仕様になりづらい一面を持っているため、思いも寄らない、または不慣れな作業故の超過工数を生むことがあります。この作業は避けられないため、日々社内仕様として共有できるように考慮する内容、工数低減の目標となっています。 2016年よりAutoForm-ProcessDesigner forCATIAを活用し、早期検討用のシミュレーションモデルから見込み用モデルまで、他のCADソフトと併用して工数低減並びに品質向上を実現しています。 その作業の1つに、トリム刃のモデル(形状)作成があります。トリムラインを確定した後の、食込み量、シャー、スクラップ部の山下げなどです。製品形状や工程計画により、工数は大きく変化します。トリム刃の数が非常に多く、成形部以外の形状作成には非常に多くの工数を費やしていました。この作業も、仕様の1つにあたります。ただし、詳細な寸法を除けば、共有として工数低減可能な作業となります。 今回ご紹介する内容は、AutoForm-PrcessDesignerforCATIAを活用する事で、トリム刃のモデル作成工数を30-40%削減する事が出来た成功事例です。 【工数低減】 ・現行 1 運用CADにより、絞り形状面から切刃エリア抜き出し 2 トリム刃の食込み並びにシャーをマニュアル作業 (モデル面の上げ下げ) 3 ボカシ区間をマニュアルにて繋ぎ調整 4 余肉・バインダ面へ、先あたりを考慮し面の角度付け並びに逃しを マニュアル作業 5 スクラップ部の面を山下げ (形状によるが工数の掛かる作業であった) 6 複数箇所存在 都度1~5の繰り返し作業 ・AutoForm-PrcessDesignerforCATIA活用による変更 機能名:トリム金型サーフェス定義:(切刃タイミング面の作成機能) 展開フランジ 複合ガイド 等の組み合わせ 1 複合ガイドを使用しトリムラインから切刃エリアを作成、切出し (図1参照) 図1.トリム刃切出し 2 食込み・シャー作成 (トリム金型サーフェス定義) (図2参照) 図2.食込み・シャーの作成 3 作業省略 (トリム金型サーフェス定義の機能により現行の作業不要) 4 作業省略 (トリム金型サーフェス定義の機能により現行の作業不要) 5 同時に食込み・シャー部の山下げ面作成 (図3参照) 図3.トリム刃の山下げ面 6 複数箇所存在 都度1~5の繰り返し作業 【結果】 CADによるモデル作成作業の中で、トリム刃の作成作業を共有作業とし、工数低減を目標としました。 既存CADによる手順に、AutoForm-PrcessDesignerforCATIAを組み込んだ結果、既存CADの手順の(面倒なマニュアルによる繋ぎ・ぼかし)作業を排除し、且つ簡単にトリム刃の形状を作成することが可能となりました。また、この作業により結果として40%超の工数低減を達成しました。これはトリム刃の数が多くまた、難形状であればあるほど、工数低減効果が大きくなるということが出来ます。 【まとめ】 今回、AutoForm-PrcessDesignerforCATIA R9で追加された新機能“トリム金型サーフェス定義”を活用した事例をご紹介いたしました。 1つの機能でも、工数低減を確実にした内容でした。今回ご紹介した内容は、多くのお客様の業務に共通する作業と考えられます。小さな作業範囲のようですが、目標をもって、検討していただくことで、AutoForm-PrcessDesigner forCATIA の機能の有効利用により、目的に叶った活用法を見出だすことが可能となりました。 オギハラは、今回の機能の他、AutoForm-PrcessDesignerforCATIAに実装されている様々な機能を活用することにより、モデル作成作業における工数低減も達成しています。また分業法(詳細は機密)など、新しい手順も検討しています。同時にAutoForm-Compensatorとの組み合わせによる見込みのモデル作成手順なども実行・検討・進行中で、更なる工数低減を目指し、競争力を高めています。 最後に、データの一貫性を持たせることも、大幅な工数低減に繋がります。オートフォームでは、CAEとCAD、つまり、AutoForm-FormingとAutoForm-PrcessDesignerforCATIA に密接な関連性を築いており、本ソフトウェアの活用により更なる工数低減を見出すことが可能であると考えます 冒頭、お客様の数に応じて仕様が存在することをお伝えしました。細かい内容は、大きな差異として存在しますが、作成・製作手順では大きな差異はないと考えます。新技術の対応が難しい昨今、いかに無駄を省き、共有・共通を見出していくかが、工数低減の一つに繋がっていきます。 - [TriboForm ~摩擦問題へのアプローチ~](https://japanforming.com/triboform-~摩擦問題へのアプローチ~/) - 【背景】 プレス成形工程において、シートメタルは、シートと金型間の摩擦力と接触力を伴いながら成形されます。高品質の部品を保証するためには、ブランクや金型材料、コーティング、潤滑剤の特性を含むいくつかのパラメータが適切と見なされる条件を定義することが不可欠であり、且つ、プロセスパラメータは、ブランクホルダ力、パンチ速度、成形温度などが、トライボロジー(摺動条件)に影響を与える可能性があります。成形プロセスにおいて、これらのパラメータをすべて適切に理解し、考慮するには、高度な多次元摩擦モデルを使用する必要があります。しかしながら、成形シミュレーションに適用可能な摩擦モデル構築が難しい為、一定摩擦則での解析が支配的となっているのが現状です。 【必要性】 摩擦課題を取り扱う必要性について、技術的な視点から2点ご紹介していきます。 ①現状のシミュレーション設定では、一定摩擦則の適用が多く見受けられます。しかしながら、プレス成型にて支配的な領域(図2. ハッチング部)では、摩擦係数への感度が高く、変化が大きい部分になり、一定摩擦則での予測が困難になると推察されます。 ②図3は、TriboFormにてご用意しているデフォルトデータの材質間における摩擦係数の違いを示しており、摩擦係数の挙動の違いが見て取れます。且つ、実際の工程を考慮すると、金型表面粗さ、潤滑量の違いも不安定要素として考えられます。 [シミュレーションへの適用】 摩擦モデルをシミュレーションに適用させる為に必要な考え方として、図4に示します。 ①~③ → TriboForm(摩擦モデル化) ④ → AutoFrom (FEM計算) 連成解析により、複雑な摩擦現象を簡便、迅速、高精度化を実現しています。 【摩擦モデル化】 TriboFormは摩擦モデル化において、複雑な摩擦現象を、実際の試験データから数学的物理モデルを使用して、高精度に同定するソフトウェアです。モデル作成に必要なデータとしては、潤滑剤種類、量、シートメタルの表面粗さ、金型の表面粗さが重要な要素となり、複数の摺動試験を組み合わせて摩擦モデル化を実施します。 摩擦モデル化を実施した後、TriboFormソフトのみで、面圧、速度、温度、ひずみ、さらには、金型、シートの表面粗さ、潤滑量の摩擦係数への影響挙動を確認することが可能になります。 FEM計算を実行する前に、摩擦係数の挙動を確認する事が可能になり、手戻りの削減、初期品質向上に貢献できると期待しております。 【活用事例】 ◇1180MPaハイテンにおけるスプリングバック精度向上 キーワード :ハイテン、スプリングバック、金型玉成、B-pillar ◇最新の摩擦モデルが中国の大手金型メーカーの5つの部品を救済 キーワード : 金型メーカー、しわ、Door-inner 詳細は下記弊社ブログよりご覧ください。 https://japanforming.com/category/tribology/ 【お知らせ】 各ユーザー様の摩擦課題解決に向けてのお時間として、毎週水曜日14:00~16:00でオンラインセミナーも開催しております。お申込みご希望の方は、seminar@autoform.jpまでメールにてご連絡ください。 - [高次摩擦係数を用いた成形流入量の予測精度向上](https://japanforming.com/高次摩擦係数を用いた成形流入量の予測精度向上/) - Material flow prediction using Higher-order friction coefficient 日産自動車株式会社 : 村田 智紀*, 阿部 聡**, 舩本 雄二***,佛川 正哲**** 1.諸言 近年、自動車の高意匠化や、軽量化による材料の高強度化などにより、プレス成形難易度は高まっています。従来と同じ試作期間で、不具合の無いパネルを成形するためには、高精度の成形シミュレーションを活用した、デジタル段階の品質保証レベルの向上が必要となります。本報ではAutoFormに適用する摩擦係数を高精度にすることで、成形流入量の予測精度を向上した事例、またそれに伴い寸法予測精度の向上に至った事例について紹介します。 2.成形流入量と寸法予測精度の関係 プレスに求められる要求品質は、大きく分けて、車両組付け精度に影響する“寸法品質”と、製品の見栄えに影響する“表面品質”があります。デジタルフェーズでは成形シミュレーションを活用し、寸法品質と表面品質を保証し、金型製作へと移行します。実金型では、成形シミュレーションで保証した品質の再現作業に取り掛かりますが、その重要な指標の1つとして“絞り成形時の流入量“(以下、流入量)が挙げられます。 プレス成形において、伸びの状態を正しく取り扱うためには、流入量を実金型とシミュレーションで合わせることが前提となります。流入量の不一致は、実金型においてシミュレーションで予測しなかった不具合の発生につながります。 しかし、しばしば製作現場においてシミュレーションの流入予測値と、実金型の初回トライパネルの流入量が合わないため、実金型を予測値へ合わせ込む作業が発生します。流入を合わせることは容易ではなく、大幅な工数が掛かります。 その結果、流入量を合わせ切れず、寸法精度が予測値に対し大きく外れ、現物の結果をもとに、再度見込み作業等が発生します。 参考として摩擦係数を変化させ、意図的に流入変化を起こした際のスプリングバック変化を示します(図1)。ポンチ内で0.5~1.0mm程度差異が見られました。 図1. 流入変化によるスプリングバック量差 3.摺動性が及ぼす流入変化 流入量が、予測値と実金型で合わないため引き起こされる問題点について前述しました。その要因を分析するために流入量に関する4Mを洗い出し、特性要因図(図2)から影響度の大きい要因の推定を行いました。その結果、“摺動性”という推定要因が導き出されました。 図2.成形流入量予測に関する特性要因図 従来は、成形シミュレーションで一般的に利用されているアモントンクーロン則に従い、ラボ試験結果の平均値を用いて、一定の摩擦係数でシミュレーションを行ってきました(図3)。 図3. 摩擦力と引張荷重の関係 しかし、厳密には、大槻、松川らによる“アモントンクーロン則の破れ”2)にもある、摩擦係数の荷重依存性や、一般的に知られている潤滑条件差異によるストライベック曲線に則った摩擦係数の速度依存性などの現象が知られています。 そのような視点で改めてプレス成形の状態を分析すると、流入量を制御するビード形状内部においても面圧分布に差異が見られます。また成形速度もプレスモーションに従って加速度運動をしていることから、実際には摩擦係数の変化が起こっていると推測されます(図4)。 図4-a. 面圧分布 図4-b. 成形速度 以上の事から、AutoFormで高精度に流入量を予測するためには、摩擦係数は一定値ではなく、荷重や成形速度を変数とした高次摩擦係数として扱う必要があります。 高次摩擦係数はTriboFormにより、簡単に設定することが可能です。摩擦係数を決定する因子は、接触形状、接触圧、材種、表面粗さ、油の量・種類によります。TriboFormの標準MAPは、これらの要素が考慮されおり1)、高精度な摩擦シミュレーションが可能です。しかし、弊社の摩擦条件を完全には再現出来なかったため、今回は更なる精度向上の取り組みを行いました。 4.摩擦実験による摩擦係数の測定 前項で述べた面圧と速度が及ぼす摩擦係数への影響を明確化するために、実験によって摩擦係数の実測値を得ました。 金型や成形鋼種ごと、ヤング率やポアソン比が異なることを考慮すると、実際の組み合わせを再現して実験を行うことが重要であり、次の図で示すような実験装置を準備し、摩擦係数の測定を行いました(図5)。 図5. 実験装置概要図 実験装置の摺動速度を可変とし、速度を変化させ速度依存性の確認を行いました。また、押しつけ荷重を変化し圧力依存性の確認を行いました。 得られた実測値を面圧毎に再処理し、各面圧・速度における摩擦係数としました(図6)。 図6. 摩擦係数 面圧-速度グラフ 5.高次摩擦係数のシミュレーションへの適用 取得した摩擦係数の3次元グラフをTriboFormへインプットし、金型表面及び成形鋼板表面を模擬したモデルの摺動解析を行い、押し付け時の表面粗さの変化、それに伴い突起高さが変わることによる油面との境界条件変化を算出1)、連続的な摩擦3次元マップへ変換(図7)しました。 図7. 摩擦3次元MAPの取得 上記で得られた摩擦係数をAutoFormへ適用し得られた結果を示します(図8)。 図8. 高次摩擦係数を適用シミュレーション結果 結果からもわかる通り、面圧依存性によって摩擦係数に高低差が生じ、想定した摩擦変化の挙動を得ることが出来ました。 - [スキッドラインの事前予測](https://japanforming.com/スキッドラインの事前予測/) - 解析手法としてのスキッドライン検出機能をご活用ください。 自動車の外観は売上に直結します。またスタイリッシュな自動車ほど、売上がさらに伸びる傾向にあります。 機能性に加えて特徴的な外観を持ち合わせた自動車が、お客様の心を捉えるのです。この理由から、視覚的に訴求するものづくりが、メーカーにとっての最重要課題となります。つまりシートメタル製品加工メーカーの場合、最終製品の「クラスA」サーフェスにへこみやしわ、そしてスキッドラインが生じないための対策を講じることが重要です。 スキッドラインについて スキッドラインは、金型に対してシートメタルが引きずられることに起因するシート上の損傷です。これは視認可能な引っかき傷として、最終部品のサーフェスに残ります。 図1: 金型半径とドロービードに起因する金型側面の引っかき傷 部品製造において材料の流入を伴う成形手法を用いる場合、この種の不具合は回避することができません。したがって工程設計ではこのような不具合に留意しながら材料の動きを管理し、品質維持に努める必要があります。図2ではシミュレーションで複数のスキッドラインを検出した例を示しています。 図2: AutoFormが検出したスキッドライン スキッドラインの緩和方法 シートが金型サーフェスのフィーチャー・ライン上を移動する際に、スキッドラインが生じますが、材料の流れを次のように制御することで、スキッドラインを緩和できます。1. 余肉のデザインでフィーチャー・ライン両側の引張りの均衡を調整して材料の移動を抑制。2. ビードやバインダのスポッティングによってシートの移動を同様に制御。基本的な手順に従って諸要因を考慮した工程設計を行いますが、しかし緻密に設定されたシミュレーションを用いることで、より確実に評価を行うことが可能になります。オートフォームにはシートメタルに生じるスキッドラインを自動予測する機能があり、実部品との相関性が高いことが証明されています。この自動予測機能のほか、ユーザーが手動で任意の金型にラインを追加し、その金型からシートメタルの特定領域に生じるスキッドラインを予測することもできます。 シートメタルのスキッドラインをオートフォームで予測するには、半径と面圧の入力条件が必要です。スキッドラインが生じない最大の許容半径を用いて、金型形状の解析を行うのです。シートに接触する入力値よりも小さい半径であれば、最初の条件を満たします。金型がシートメタルに加える面圧が指定下限値以上であり、そして金型半径が指定値よりも小さく、そして材料が金型上を移動する場合には、成形中にスキッドラインが生じることが予想されます。図3は材料の流れの断面図でスキッドラインの始点(黄色)と現在の位置(緑色)を示しています。 図3:材料の流れ オートフォームにはそれぞれの条件に応じた推奨値があり、その相関性について多くのお客様から高い評価をいただいています。しかしお客様には、直近に確認された品質データを用いて結果を相関させ、履歴や経験値、また求める品質レベルも考慮しながら、スキッドラインの予測に用いる半径値と面圧値を算出することをお勧めします。外観品質は主観的に評価されるものです。お客様が求める品質要件に応じて、最終的な基準を決定すべきです。 スキッドラインの評価は、ハイレベルなタスクです。前段階の作業がすべて正確であること、また入力パラメータ、材料、処理形状が、実際の金型をすべて正確に表現していることが大前提となります。このような確認作業に関しては、www.formingworld.comの「Basic Simulation Accuracy Requirements and the AutoForm Accuracy Footprint」やwww.japanforming.comの「プレス成形シミュレーションにおける精度は実証できるか?精度指標の基本原則」に掲載されているブログ記事をぜひご参照ください。シミュレーションの準備を綿密に行うことで、スキッドラインを正確に検出することが可能になるのです。 - [デジタル・ダイ・スポッティングを活用した時間およびコストの削減](https://japanforming.com/デジタル・ダイ・スポッティングを活用した時間/) - H.I.T Automotive社によるダイ・スポッティング工数とコスト削減の成功事例 H.I.T Automotive社は、2001年に創業した欧州OEMや金型メーカーのパートナー企業で、AutoFormを活用してデジタル・ツイン・プロセスを構築するスマート・ファクトリーを推進しています。 デジタル・ツイン・プロセスの構築において、H.I.T Automotive社およびパートナー工場のYeanではエンジニアリングおよび製造部門の工数削減に積極的に取り組んでいます。2014年の製造部門編成に伴い、諸問題の解決と品質、コスト、作業条件の改善を行うべく、金型工場に必要な改革について検討を始めました。それまで製造においては、プレス機の状態やNC加工作業といった機器関係の問題に苦慮してきました。また作業員の経験値や習熟度の格差によっても、時間やコストに大きな負荷がかかる場合もあり、熟練した作業員が試行錯誤を繰り返す金型製造の手法が理想的でないことは明らかでした。 図1: H.I.T社の担当者一同 製造現場の作業を検討した結果、金型のスポッティングおよび研磨に長時間を要していることが判明したため、デジタル・ダイ・スポッティング工程を徹底的に調査することになりました。 このデジタル・ダイ・スポッティング工程では修正する領域と加圧量を定義しますが、これには「接触距離」を用います。この「接触距離」は、成形解析中に生じる材料の板減を定義したものです。あるいは別の方策でも対応できたかも知れませんが、この時点では、この手法が大きなメリットとコスト削減をもたらすことを確信していました。 この結果は簡単に検証できますが、しかしNCモデルの適用については更なる検討が必要でした。そしてAutoForm ProcessDesignerforCATIAの独自機能を使って、接触および金型のギャップをモデル化することになりました。シミュレーションにおいて、この手法を金型サーフェスに適用して何度か反復すると、目標とする接触条件に達することができました。 図2: ダイ・スポッティングのデジタル・ワークフロー デジタル・ダイ・スポッティング工程にてAutoForm ProcessDesignerforCATIAを活用することで、金型製造を大幅に時間短縮でき、またコストの削減も実現しました。 かつての金型製造は現場の作業員に大きく依存していました。しかしデジタル・ダイ・スポッティング工程の導入によってエンジニアリング業務が強化されたことで、マネージャや現場作業員は品質管理やスケジュール管理に集中できるようになりました。 H.I.T Automotive社のデジタル・ダイ・スポッティング活用事例 下図は中間部品のダイ・スポッティングを示しています。AutoFormの接触距離機能で見込み補正の領域と量を定義してから、図の黒色の領域を調整します。シートの両側を確認することで、修正すべき領域をすべて検討できます。尚、シートの大部分は接触条件が良好ですが、側壁部分と上面には余分なギャップが多くあります。この金型のダイ・スポッティングを手作業で行う場合、広範なサーフェス領域を調整しなければなりません。 図3: AutoFormの「接触距離」を活用したデジタル・ダイ・スポッティング工程 AutoForm ProcessDesignerforCATIA独自のモデリング機能を活用すると、わずか2~3時間で見込み補正モデルを作成できました。 図4: ダイ・スポッティング見込み補正モデル こちらがデジタル・ダイ・スポッティングのモデル・データとシミュレーション結果です。「接触距離」を選択すると、黒い部分がない結果では、金型のサーフェスとシートのサーフェスが非常に近接していることがわかります。これは大きな改善と捉えることができます。 図5:ダイ・スポッティング見込み補正結果 図6:デジタル・ツインを活用して2日で完成した金型 通常、この規模の金型の場合、製造には20日以上かかります。またハイテン材を使用すると、ダイ・スポッティングの作業はさらに難しくなります。しかしデジタル・ダイ・スポッティング工程を適用することで、ダイ・スポッティングの80~90%をわずか2日間で達成することができました。 さらにデジタル・ダイ・スポッティング工程を活用して製作した別の中間部品の場合、作業時間はわずか15時間に短縮されました。 図7: スポッティングの作業が20日から15時間に短縮され、 コストおよび時間の大幅削減を実現 ボンネット・インナー部品 このボンネット・インナーでは、まず見込み補正の領域と量を定義し、結果を確認しました。 図8: 接触距離が改善しています 図9: 見込み補正の前後と研磨済み部品 この部品の場合、以前はスポッティング(80~90%)に200人時を要していましたが、デジタル・ダイ・スポッティング工程を適用することで、スポッティングと研磨をわずか90人時で完了することができました。作業時間は55%短縮され、研磨の工数も削減されました。またこの作業に携わったのは僅か2名の作業員であったため、大幅なコスト削減も実現できました。 すべての部品にデジタル・ダイ・スポッティング工程を適用することで、さらに大きなコスト削減を見込めます。今後はデジタル・ダイ・スポッティング工程の改善にも取り組み、スポッティングのコストを80%削減することを目指します。 AutoForm韓国、スニョン・ファン、アプリケーション・エンジニア - [航空機コックピットの部品数を200点から1点に削減: 航空宇宙関連部品の爆発成形へプレス成形シミュレーションの実験的応用](https://japanforming.com/航空機コックピットの部品数を200点から1点に削減/) - デジタル・マスターを活用した航空宇宙関連部品の成形と成形時荷重キャリブレーションの独自手法について特別にご紹介します 航空宇宙関連部品の製作において、爆発成形としても知られる高エネルギー・ハイドロフォーミング(HEHF)を用いた厚板プレートの成形をAutoFormソフトウェアで検証した事例について、3D-Metal Forming社研究開発マネージャのウーゴ・フロエネフェルト氏が紹介します。通常200点以上の部品で構成されるエアバス社の機体コックピットを、1枚のプレートから成形部品に落とし込んだ事例について、フロエネフェルト氏が解説しています。本稿はプレス成形業界に携わる読者のみなさまにぜひお読みいただきたい記事です。またデジタル・マスターを活用した部品成形工程のライブ・キャリブレーションについても紹介しています。 3D-Metal Forming社は、特注の板金製品、中でも厚板のプレートを使用した特殊形状の大型部品の製作を専門としています。航空宇宙関連部品や建築上の意匠を反映させた固有部品などを扱い、いずれの部品も、そのデザインの多くは斬新で奇抜です。薄板シートと厚板プレートの両方に対応していますが、英単語では区別される「シート」と「プレート」は、オランダ語とドイツ語では区別がありません。そのため当社では、薄板シートのプレス成形を対象としたソフトウェアを、当社特有の厚板プレートのプレス成形に応用してみることになりました。これを機に薄板プレス成形シミュレーションを斬新かつ独創的に活用するようになったのです。 3D-Metal Forming社では、多くの場合、板金を形状にキャリブレーションする目的のみに高エネルギー・ハイドロフォーミング工程を使用しますが、最初の成形工程は従来の工法で行っています。工程設計にもAutoFormソフトウェアを活用しているため、これらの成形技術の利点を組み合わせたソリューションを検討できます。 薄板プレス成形ソリューションを試用してみることが決まったとき、それが非常に実験的であることは明らかでした。そのため担当者は「まずはできることを試してみれば、何か発見があるかもしれない」という姿勢で臨みました。このソフトウェアを当社の業務に応用できるかは、全くの未知数でした。事実、AutoFormソフトウェアを厚板のシート材にも適用できることは、オートフォーム社に代わり3D-Metal Forming社が証明したのです。 新たな形状のリクエストがあると、速やかにフィージビリティの検討を行い、われやクラックの切迫したリスクを特定します。プロジェクトの開始後、さらにシミュレーションを重ねて、形状をより詳細に検討します。その結果から金型の見込み補正について予想をたて、またブランクの実測値も推定します。ブランクは最大で幅10 m、厚さ120 mmにもなるため、ブランク実測値の推定は特に重要です。またシミュレーションで爆発成形を扱う場合、ブランクはさらに大規模な場合もあります。 オートフォーム社との関係の始まり オートフォーム社と関係を築くことについて、最初は懐疑的でした。しかしISO9001の認証取得を目指す過程において、取り引きのあった会社からAutoFormソフトウェアを熱心に勧められました。また同時期に進めていた建築士主導のプロジェクトでは特殊部品の製作依頼がありましたが、その製造可能性に確証を持てませんでした。プロジェクトに成功しなければ責任をとるべきお客様に、金銭的なリスクを負う余裕はありません。これがAutoFormソフトウェアを試すきっかけとなったのです。最初のプロジェクトでは部品の致命的な不具合が特定されましたが、微調整によって解消できることも判明しました。また建築士たちも、外観上の完全性が維持されている限り、製造上の理由で若干の形状変更を加えることに異存はありませんでした。 図1: 1枚の板金から製作した換気用ダクト(オランダ、レリスタットのスメディングスハウス・ビルディング) この部品の製作がいかに困難であるか、上図からご想像いただけるかと思います。これは長さが2.5 mに及ぶアルミ製の厚板にリブをプレス成形した曲面のパネルです。特にリブに非常に強い引き伸ばしが集中します。ここに破断が生じると大きな問題となりますが、それを判断することはできません。しかしAutoFormソフトウェアから必要な情報を得たことで、初回に問題なく成形を達成でき、トライアウト・ループを回避できたのです。素晴らしい成果を得たことで、大きな達成感を味わいました。 図2: オランダのアイントホーフェンにあるフレイセ・ヘネラアル・ビルディングの装飾的な建築形状 このプロジェクトを通じて、AutoFormソフトウェアを活用することで多くの不確定要素を排除できることが証明されました。それ以来、斬新で興味深いプロジェクトを受注するために欠かせないツールとして、AutoFormソフトウェアを活用しています。3D-Metal Forming社はオートフォーム社と16年間の信頼関係を築き上げ、今後もその関係は強固なものであり続けるでしょう。 デザインが斬新な厚板プレート部品の見積もり作成 当然ながら何を製作する場合も、プレートに厚さがあると、斬新なデザインに成形するのは至難の業となります。厚さのある板金は座屈の危険性が高く、またスプリングバックの問題にも直面します。このような高度なプロジェクトに着手する際には、当社の技術力についてお客様に信頼していただくことが非常に重要です。AutoFormのシミュレーションから専門性の高い情報を得られるため、見積書と併せてシミュレーションの動画や成形限界図のプロットなどを加えた詳細なレポートをお客様に提出します。すると提示した工法の成功率が高いことを、お客様に納得していただけるのです。通常、最初にお客様から3Dモデルをいただきますが、見積もり段階では部品の3D形状を自社で作成することもあります。 厚板プレートを成形するには、独自の材料カードを作成する必要があります。実際には見積もり段階では、使用する板金と同等の材料をソフトウェア・ライブラリから選択しますが、見積書の作成という目的においては、十分な精度を確保できています。そしてプロジェクトを受注後、すぐにシミュレーションの引張試験を行い、材料ファイルを作成することで、最高精度のシミュレーションを担保します。 このソフトウェアを活用すれば数日間で見積もりを作成できるため、至急の案件にも対応できます。高い技術力を要する新たな製品に短期間で対応できるという点において、他のプレス加工会社とは一線を画す独自性を誇る3D-Metal Forming社は、お客様から高い評価をいただいています。当社は業界でも唯一、高エネルギー・ハイドロフォーミングや爆発成形の委託に対応できる企業です。この分野を請け負うことができる企業は、世界にも例がありません。 航空宇宙関連部品成形の統合構造 図3: 爆発成形およびCNC切削によって1枚の厚板プレートから製作したコックピット(2017年パリ航空ショー) 爆発成形を用いた航空機コックピットの外板パネルは、航空宇宙産業に大きな変化を告げるものでした。それは2017年パリ航空ショーで一般展示されました。コックピットの構造上、それぞれ固有の機能を備えた数百点の部品を組み合わせる工法が一般的であったため、この当社の工法は業界に革命をもたらしました。すべての航空機用部品において同様ではありますが、特にコックピットの場合、ウィンドウ・フレーム、補強リブ、スキン・パネル、取付用部品といった各部品は、後に組み立てられます。一般的には品質要件を満たすために、それぞれのユニットを個別に製造します。それぞれの部品製造を総合すると、大変な作業量になります。さらには部品を組み立てる作業も続きます。あるいは、現在の航空宇宙業界で一般的に用いられる工法として、一体型パネルを鍛造で製作する場合もあります。しかし、鍛造で得られる寸法形状には限界があります。当社の工程にはそのような制限はありません。鋳造よりも材料特性が優れているプレートから、全体を1つの部品として仕上げることができます。この高エネルギー・ハイドロフォーミング工程では、世界中のどのプレス機でも実現できないほど高い荷重をかけることができます。これは非常に大きな進展でした。 通常、コックピットには、すべてが組み上がって初めて許容範囲に収まる部品が存在します。アセンブリ全体は、リブで引き付けられているのです。つまりスプリングバックが大きな問題となることは明らかです。組み立て工程がないということは、すべての部品を引き付けることができません。閉じた金型から部品を取り出した後、または爆発後にスプリングバックに対応する必要があります。続いて、本来ならば構造体に取り付けるべき主要なリブを、機械加工で作成します。コックピット用プレートの内側を切削し始めると材料の残留応力も解放されますが、切削工程はきわめて正確です。AutoFormソフトウェアを活用して成形時のスプリングバックを予測し、さらにAnsysで切削後のスプリングバックを予測するのです。 図4: 1枚のアルミのプレートから製作した航空貨物機の扉 航空宇宙関連企業の多くがAnsysやAbaqusを導入し、板金以外のさまざまな目的で使用しています。したがって自動車のプレス成形部品に特化したソフトウェアを航空宇宙業界へ導入すれば、プロセス・チェーンの中でその価値を感じることができるはずだと考えました。3D-Metal Forming社のワークフローにおいては、AutoFormとAnsysの併用によって完璧な補完関係が成立するのです。AutoFormはプレス成形のみに特化したソフトウェアであり、非常に短時間で簡潔に有意義な結果を算出します。そのためAutoFormでプレートの変形をシミュレーションし、Ansysで機械加工をシミュレーションします。またAutoFormはスプリングバック専用ツールも備えているため、すべての大型部品に対して金型のスプリングバック見込み補正を行っています。AutoFormの強みとして挙げられるのが、その計算速度です。たったの30分でシミュレーションの準備が整います。これまで試した航空宇宙業界向けのシミュレーション・パッケージはどれも数多くの変数を入力する必要があり、ミスが頻繁に発生します。特にメッシュ作成においてミスが多発します。しかしありがたいことにAutoFormは、ほぼ自動でメッシュを処理してくれます。感度を検討する場合は、AutoForm標準機能のSigmaを活用すれば、工程ロバスト性を簡単に解析できます。 部品製作から組み立てまで 今日ではシミュレーションのおかげで順調に事業拡張を行っています。医療系企業の爆発成形を請け負っていますが、そのお客様は他のサプライヤから納入された部品の3Dレーザー・カットおよび組み立て作業の下請けを3D-Metal Forming社と契約しています。当社では通常、組み立て作業は受注しませんが、幸運にもこのお客様からご指名を受けてAutoForm-Assemblyのパイロット・プロジェクトに参加することができました。それがきっかけとなり、当社の事業拡張の機会に恵まれました。オートフォーム社のチョヴァフ・モルデカイ氏は、このモジュールでお客様の問題を解決するためのスキル強化に尽力してくださいました。いまではこのモジュールを、別のお客様のプロジェクトにも活用しています。当初の契約では、3D-Metal Forming社が部品を製作し、それをお客様が組み立てることになっていました。しかし当社の部品と他社が納入した部品をあわせて組み立てると、目標とする部品形状とはわずかに差異が生じるのです。今では部品の成形および組み立ての両方を3D-Metal Forming社が行っています。このように、このモジュールがなければ対応できなかった追加業務を提供できるようになったのです。 3D-Metal Forming社は、23年間にわたって高エネルギー・ハイドロフォーミングの手法で部品や製品を成形してきました。しかし最近では、この手法をたとえばスプリング成形、爆発成形、プレス成形などといった高度な成形技術と組み合わせることが多くなっています。それに伴いシミュレーションの重要性も高まり続けています。いまでは自社固有のプレス成形システムを設計・製造するユニークなノウハウも確立しています。中には実際の工程とAutoFormシミュレーションの相関を示すライブ・フィードバックもあります。 デジタル・マスターを活用した荷重と材料フローのライブ・キャリブレーション 従来のプレス成形における荷重のキャリブレーションについて、成形シミュレーションの活用を通じて実現したことは、まったく斬新なものです。 3D-Metal Forming社のコントロール・システム(LabVIEWでプログラミング)では、ブランクの流入時やプレス・ストローク中に、複数の場所で蓄積される荷重のライブ・フィードバックを提供するのです。 成形はラム付きの油圧シリンダーを使って行うため、ストローク中にドロー工程を停止したり、工程パラメータを調整することができます。 自動車業界で使用する材料は数ユーロであるため、プレス機で何度もトライアウトを繰り返して、現実とシミュレーションを一致させることが可能かもしれません。 しかし航空宇宙産分野の部品製作に使用する巨大な形状や厚板のプレートは10,000ユーロを超えることも多く、トライアウトを繰り返すとコスト効率が悪化します。ここで重要なのが、ストロークの途中で工程を調整できることです。 まずシミュレーションを実行して、良好な(「グリーンの」)部品を製造するために必要な工程条件を検討するところから始めます。 次にAutoForm-Sigmaで感度解析を行い、好ましくない結果が出る工程条件を確認します。そしてコントロール・システムの結果とAutoFormシミュレーションを比較することで、問題の原因をすぐに特定し、講じるべき対策を判断することができるようになりました。 実際には、AutoFormから以下の結果を使います。まずは特定のポイントにおけるブランクの材料の流れを検証するのに有用な流入グラフです。バインダーの面圧が十分に高くないと、シミュレーションよりも材料の流れが大きくなりすぎてしまい、後の工程で座屈が発生することが解析から判明しています。対応策としては、バインダ面圧を大きくすることが考えられます。 次に使用するのがプレス荷重とストロークのグラフです。部品を物理的にプレスしている間、リアルタイムで成形荷重を追跡できます。AutoFormのデジタル・マスターのグラフと比較すると、たとえば「ここでは荷重が急激に増加しているが、AutoFormではその増加分は表示されない」といった判断ができます。望ましくない状況である場合は、介入が必要になります。この状況における対策は、直感的ではありません。感度解析の結果、パンチの潤滑状態を改善する必要があることがわかるのです。 デジタル治具 - [「成形検討の効率化」~プレス方向の検証機能~](https://japanforming.com/プレス方向の検証機能/) - 課題 プレス部品開発において成形シミュレーションによる成形検討は必要不可欠なものとなっています。部品開発のリードタイム短縮も然り、コスト削減を要求される状況下で技術者は限られた時間の中でより精度の高い成形検討を行うことを求められています。ここで言う成形検討とは、プレス方向、成形性、歩留まり、パネル搬送、型構造、設備など多くの要素が挙げられます。 その中でもプレス方向の検証は非常に重要となります。それは、プレス方向は工法の中核であり、工程数や成形性、コストへの影響が大きいからです。さらに、プレス方向の選定を誤ると、金型の改修や精度見込みが出来ず、最悪のケースでは金型の再製作となり、開発日程の遅延にもつながります。 また、プレス方向の検証作業の多くはCADを使用して行っていますが、そこには下記の様な緻密で困難な作業となります。 ・負角形状(インバース部)の確認 ・成形中のシワ抑制 ・精度見込み代の考慮 ・パネル姿勢の検討(パネル搬送性、プレス設備要件、型サイズ) ・新工法の検討(脱歴代車の踏襲) 上記の課題はAutoformに実装されている機能を活用し短時間で検証が行えます。これは新工法の検討や新規開発にも活用できます。ひいては成形検討データの一元化による検討業務全般の効率化につながります。 そこで今回はプレス方向の検証に役立つ機能をご紹介します。 機能紹介 まずは自動ティッピング機能を活用し、全体像を把握します。(図1) 例)自動ティッピングのプレス方向に負角(アンダーカット)があるかないかを検討。 図1.AutoForm自動ティッピング 図2.パネル全体のバランスを確認 図3.角度の詳細は3Dビューにて確認 このように全体像、負角(アンダーカット)のないプレス方向を確認します。(図2,図3)続いて、プレス方向の検証には色々な要因を考慮する場合があります。この場合も、平均法線以外の有効な、機能を活用してプレス方向を瞬時に検証できます。(図4) 図4.自動ティップの有効な機能 この中の代表的な機能をご紹介します。 ① 平均法線 ② 最小アンダーカット ③ 最小ドロー深さ AutoFormの自動ティップ機能により、様々な条件のプレス方向を瞬時に検証できます。そこから幾つかの方向を選択し、そのまま成形検討を行う事で、目的にあった、最も成形性の良いプレス方向を早期に見極める事が可能になります。プレス方向を早期に判断する事で繰り返し検討を削減でき、効率のよい成形検討が行えます。 - [分析的工程改善によるボンネット・インナーのスプリングバックの最小化](https://japanforming.com/分析的工程改善によるスプリングバック最小化/) - 早期に講じるべき対策: 初期段階のロバスト性検討でスプリングバックの 対策を確立 本稿では部品最適化の初期段階でスプリングバックの範囲を縮小する手法についてご紹介します。以下の内容は、「第23回ハノーバー成形技術会議」(2020年3月)で発表されたものです。この発表内容は、会議の案内書にも掲載されています。この会議はコロナ禍の2020年にドイツで開催された数少ない会議のひとつで、オートフォームは、この会議中にブースを出展しました。残念ながら下半期に予定されていた会議の多くは感染拡大のため中止を余儀なくされました。筆者は同僚のウルリッヒ・キャスと共に、プレス成形技術の現状について紹介します。 ロバストなスプリングバック 軽量化の手法として一般的に用いられる薄い高強度材料やアルミニウムなどでは、ボディ部品のスプリングバックが増大します。本稿ではボンネット・インナーのスプリングバック挙動に関係づけながら、部品最適化のプロセスについて論じます。図1は成形工程の工程順を示しています。このボンネット・インナーは、アルミのシート(EN-AW-5182-O/H111)で製造します。 図1: 成形工程の工程順 図2は基準シミュレーションのスプリングバック結果を示しています。スプリングバックの最大値はコーナー領域の約2.5 mm(上向き)、部品中央部の材料変位量は約11.0 mm(下向き)です。測定ゲージは実測工程ステップで考慮します。丸穴と細長い穴の2つのパイロットが、部品平面内での部品のずれや回転を防ぎます。部品は4点の支持ポイント上に配置します(クランプ)。 図2: クランプ・コンセプトを考慮した基準シミュレーションの スプリングバックの結果 この部品は剛性が低いため、自重がスプリングバック結果に大きな影響を与えます。つまり次に行うスプリングバック見込み補正は、測定ゲージのスプリングバック結果をもとに行わなければなりません。支持ポイントがずれると部品のたわみが変わるため、スプリングバック結果も変化する可能性があります。そのため、支持ポイントが3点の最小クランプ・コンセプトは、見込み補正に適用できません。 上述のとおり、基準シミュレーションの結果では、後段階で発生しうる寸法精度の問題を十分に評価できません。そのためAutoFormを活用し、工程のロバスト性を検討します。表1はパラメータのばらつきを示します。摩擦条件については、通例の摩擦係数(µ)は使わずに、潤滑量にばらつきを設定します。このブログ投稿サイトには、一定の摩擦係数の代わりにTriboFormを適用する利点について解説している記事が複数投稿されています。TriboFormを活用するとシミュレーションに潤滑量のばらつきを組み込むことができるため、現実の事象をより正確に表現することができます。 表1: ロバスト性解析で検討したパラメータのばらつき パラメータ 最小 最大 標準偏差 潤滑量 0.9 g/m² 1.1 g/m² 0.03 g/m² バインダ荷重 1170 kN 1430 kN 43 kN 降伏応力および引張強度(相関係数=0.8) 120 N/mm² 250 N/mm² 146 N/mm² 205 N/mm² 4.4 N/mm² 9.3 N/mm² 異方性(rm-値) -20% +20% 6.67% xとy方向のブランク位置 -1 - [デジタル・プロセス・ツイン: 自動車OEMのビジネス・モデルとROI(投資利益率)](https://japanforming.com/自動車oemのビジネスモデルとroi/) - プレス成形とホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プロセス・ツイン(パート3) デジタルの時代が到来します。この時代を乗り切るためにも、デジタル・トランスフォーメーションの導入をぜひご検討ください。この自動車業界のデジタル化に関する本連載記事のパート3では、プレス成形とホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プロセス・ツインを取り上げ、初期段階から最終段階までの徹底的なプロセス最適化がもたらす可能性についてご紹介します。本連載記事のパート1はこちら 、パート2はこちらからご覧いただけます。 次に検証すべき問題は、プレス成形とアセンブリのバリュー・チェーンにデジタル・プロセス・ツインを導入すると、上述のようなコスト効率の目標を達成することができるかという点です。これには完全なデジタル化の主なバリュー・ドライバ、すなわちリードタイム、コスト、品質を検討する必要があります(図1を参照)。リードタイムについては、デジタル化によってトライアウトや生産立ち上げに費やす時間を短縮できます。コスト面では、デジタル化から生産、材料、トライアウト、金型のコストを削減できます。また品質においても、デジタル化を通じて部品や工程のフィージビリティ、寸法精度、サーフェス精度を改善できます。これらのバリュー・ドライバを包括すると、完全なデジタル化がOEMにもたらす金銭的価値を提案することが可能になります。バリュー・ドライバによる節減を具体的に定量化および可視化するために、本稿ではOEMのビジネス・モデル例を業界情報、ノウハウ、経験に基づき分析します。 図1: デジタル・プロセス・ツインのバリュー・ドライバ ビジネス・モデルの構築にあたり、計画工程を完全にデジタル化した自動車OEMのお客様に適用できるビジネス・モデルのテンプレートを作成し、またROI(投資利益率)の分析も行いました。ビジネス・モデルの入力データを表1にまとめています。ここでは、年間100万台を生産し、年間4本の新型モデルのプログラムを開発する欧州OEMについて検討します。車両のプログラムごとにA部品(ボディ・サイド、フェンダ、インナー/アウター・ドアなど)およびB部品(補強部品、構造部品など)を対象とします。尚、一般的にC部品は生産を外注することが多く、バリュー計算の対象外となるため、このビジネス・モデルではC部品を検討しません。 表1: ビジネス・モデル例の入力データ 欧州OEMのビジネス・モデル例の分析結果を表2および図3に示します。エンジニアリング段階および金型工場、プレス工場、車体工場の主要業績評価指標(KPI)に対して、達成可能な節減額を示しています。この架空のOEM企業では、完全なデジタル化から創出される潜在的なバリューの合計は、年間約3,100万ユーロ(約40億26百万円)になります。しかし多くのOEM企業では、計画工程はすでに部分的にデジタル化されていて、つまりこの潜在的な節減もすでに部分的に実現されています。部分的なデジタル化とそれに伴う節減は、このビジネス・モデルにも反映されています。総額3,100万ユーロ(約40億26百万円)の滞在的な削減の余地の内、このOEMでは、現状の部分的にデジタル化されたプロセスにおいて、すでに1,570万ユーロ(約20億39百万円)の削減を達成しています。また見方を変え特定された完全なデジタル化により追加で期待できる節減額を図3に示します。 表2: 完全なデジタル化を適用したビジネス・モデルの結果例 ソフトウェア技術への100万ユーロ(約1億3千万円)の投資と、追加のソフトウェア・オペレータの人件費に対する投資を行うことで、金型工場、プレス工場、車体工場でさらに1,510万ユーロ(約19億6千万円)の削減額が追加で見込まれます。この投資の結果、短期的なROIが15になります。プレス成形とホワイトボディ・アセンブリの従来のプロセスをデジタル化することで、すでに自動車産業に大きなバリューをもたらしますが、デジタル・プロセス・ツインの導入によってさらに大きなバリューをもたらすことができます。このバリューは短期のみならず、プロセスに関する継続的な調査と改善によって長期的なものにもなりえます。 図3: 完全なデジタル化を適用したビジネス・モデルの可視化 ここで行ったビジネス・モデルの分析は、デジタル・プロセス・ツインの導入が自動車業界にもたらすデジタル・トランスフォーメーションの潜在的なバリューの大きさを示しています。 まとめ この連載記事では、自動車業界が完全なデジタル化を通じて時代を乗り切るための手段を紹介するとともに、プレス成形とアセンブリのデジタル・プロセス・ツインの導入についても紹介しています。本稿の要点を以下にまとめます。 自動車業界は、目下、未曾有の大問題に直面しています。自動車市場は不況が長引く中、世界の自動車生産台数は下落し、また新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに助長されています。同時に、技術開発やデジタル化のトレンドが自動車業界に影響を与えているため、自動車業界は変革の真っただ中にいます。 今こそ自動車業界はより俊敏で弾力的に対応し、激しく変動する市場と見通しが不透明な未来への準備を進めるときです。本稿では、シミュレーション技術の積極的な活用と、プレス成形とホワイトボディ・アセンブリの従来のプロセスの完全デジタル化によって、自動車業界に十分に定量化されたバリューをもたらすことができることを説明しています。 自動車業界においては、デジタル・プロセス・ツインの導入によって、プレス成形とアセンブリ工程のデジタル・トランスフォーメーションが可能となります。すべての部門間およびすべてのサプライヤとの間でデジタル・プロセス・ツインを適用することで、情報およびデータのシームレスな流れが確保できるようになり、工程の合理化や継続的な改善を促進できます。 自動車OEMにおけるビジネス・モデルとROIの分析は、完全なデジタル化のバリュー・ドライバ(リードタイム、コスト、品質)が定量的な金銭的価値に変換される様子を示します。したがって、自動車業界のデジタル化が有するバリューの潜在性を具体的に示しています。 - [見込み面作成工数10分の1! AutoForm-ProcessDesigner^forCATIAと新見込みフロー適用により工法計画から金型製作工程の全体最適を実現](https://japanforming.com/金型製作工程の全体最適を実現/) - (左から)三菱自動車工業株式会社 鈴木氏(工法計画)、原口氏(CAM)、 林氏(マネージャー)、田中氏(新技術CAE) プラグインハイブリッド(PHEV)からSUV、セダン、ミニバン、軽自動車まで、幅広い車種の開発・製造・販売を手がける三菱自動車工業株式会社(以下、三菱自動車)。見込み面の作成において、面品質や面精度の改善、面作成工数の削減を目指していた同社は、4種類の全面見込み対応ツールの評価を実施。その中から、見込みソフトのAutoForm-Compensatorとの連携により、シームレスな面作成ができるAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを採用しました。あわせて実施した業務フローの改善により、見込み面作成のリードタイムが短縮し、より多くの部品で見込み面の作成が可能となっています。 見込み面の作成において、面品質、外観品質、工数、業務フローの4点が課題に 三菱グループの一員として1970年に設立された三菱自動車は現在、ルノー・日産・三菱アライアンスの一員として、国内外で年間約80万台の自動車を生産・販売しています(2020年度実績)。「新型アウトランダー」「新型エクリプス クロスPHEV」「パジェロスポーツ」など自社開発のPHEVやEV、HEVといった環境技術と4WD技術の強化に加え、アライアンスパートナーの技術を結集することで、人とクルマと自然が共生する社会の実現を目指しています。 同社は、製品パネルの見込み面作成において、従来から面作成ソフトを利用していました。ところが、既存のソフトでは、面品質、外観品質、工数、業務フローの4点で、課題が顕在化していました。 (1)面品質 従来の面作成ソフトでは、作成した見込み面にうねり、ヨレ、折れが多発し、ほぼすべての面要素に対して手張りによる修正を余儀なくされていました(図1)。 図1 見込み面作成時の外観不具合例 (2) 外観品質 CAEのスプリングバック解析の結果をもとに作成する見込み面では、製品形状に対して、部分的に曲率反転した見込み面が出力されることがありました(図2)。曲率反転した見込み面で製作した金型を使ってプレスした場合、製品パネルに曲率反転が転写されてしまい、品質が極端に悪い場合、製品の要求面精度は満たしていても、外観検査がNGとなることもありました。その際は、面品質の修正に多くの時間を要し、曲率反転を修正した面で金型を改修しなければなりませんでした。 図2 曲率反転不具合例 (3)工数 面品質と見込み要件の2つを両立させるためには、作業者のスキルに依存した手作業が必要になり、多大な面修正工数が発生します。作成した全面見込み製品面に対しては、見込み余肉形状の面作成も必要です。生産技術本部 板金樹脂生産技術部 先行計画の原口春水氏は、見込み要件と面品質の関係について、次のように語ります。 「解析を優先して見込み要件を厳しくすると、面品質は低下し、プレスした製品パネルの面に凹凸ができたり、折れたような筋が出たりします。反対に、面品質を高めようとすると、見込み要件を満たせなくなり、面見込みの目的の意図から離れていきます。このようにトレードオフの関係にある両者のバランスを取りながら、どこに着地点を置くかが非常に難しくなっています(図3)」 図3 面品質と見込み要件のトレードオフ例(ドアアウター形状はAFJP提供) (4)業務フロー 従来の業務フロー(図4)は、2~3回の全面見込み面の作成とスプリングバック解析を経て、結果がOKになったものに対して工法図を出図し、その後にCAM部門が金型加工用面を作成していました。このフローでは、面品質と見込み要件の両立が難しい見込み指示となってしまうために膨大な面修正工数を要し、NCデータ作成の期限内で対応できる部品に限界がありました。 「結果として、フードアウター1部品で3週間~1カ月の面修正工数が発生し、全面見込み対応ができる部品は1車種で1~2部品程度に限られていました。限られたリソースの中で、全面見込み適用部品を拡大するためには、業務フローも見直す必要がありました。」(原口氏) 図4 従来の業務フロー 4つの面作成ソフトを評価し、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを採用以上の課題解決に向けて三菱自動車は、従来の面作成ソフトに代わる、新たなソフトの選定に着手しました。生産技術本部 板金樹脂生産技術部 先行計画 マネージャーの林繁幸氏は、「これまでの面作成ソフトでは、製品のデザイン性を損なってしまう恐れもあるため、全面見込みが難しく、部分的な見込みに限定してきました。最近になって、ようやく良質のツールが出揃ってきたこともあり、外観への影響が大きいアウター部品で、なおかつリスクが少ないフードアウターを中心としたドロー型や一部曲げ型に対して、新しいツールを使った手法にトライしてみることにしました」と振り返ります。 評価するソフトは、①従来の面作成ソフト、②社内で保有している別のソフト、③社内では未保有の新しいソフト、④従来から社内で保有していたAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの4つを候補に選定。2017年から2019年にかけて試験研究を実施し、テストピースを用いた全面見込み面の金型加工表面性状を確認しました(図5)。2020年に実製品のアウターパネルを使用し、実機にて金型加工表面性状を確認して最終評価を実施しました。 図5 テストピースでの検証例 同社では、1999年よりAutoForm製品を導入していて、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、2015年に見込み面作成以外の用途で導入済みでした。さらにAutoForm-Compensatorも、CAE解析の用途でちょうど面作成ソフト選定トライアル中の2019年より導入評価を実施していました。 評価した項目は、曲率の維持、見込み要件との乖離、うねり感、面抜け、作業時間、面質調整の作業性、CAEソフト(AutoForm-Compensator)との連携性の7つです。4つのツールを比較した中から、同社が選んだのはあらゆる評価項目で優勢となったAutoForm-ProcessDesignerforCATIAでした(図6)。 「一番の決め手は、AutoForm-Compensatorとの連携に優れていることです。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAなら、AutoForm-Compensatorの見込み情報を、そのまま引き継いで面作成することができるため、大幅に工数を削減することが期待できました」(林氏) 図6 見込み面作成ソフトの選定トライアル結果 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでは、AutoForm-Compensatorで算出した面の離れ情報、変形情報などを、PDMシステムのAutoForm-QuickLinkforCATIAを介して、そのまま受け取ることができます(図7)。そのため、他のツールと比較しても圧倒的な時間短縮となり、作業者の負担を軽減できます。 その他にも、面作成、面品質評価、外観(曲率)品質評価がAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの内部で完結し、効率的な面作成が可能であること、製品形状部と余肉部を要求される面品質で個別に作成してからの埋め込み作業ができること、形状変更前に使用したVector Fieldを流用することで変更部の面要素のみを修正した見込み面が容易に作成できること、金型製作後の設計変更や改修にも対応が可能であること、なども評価してAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの採用を決めました。 図7 AutoForm-CompensatorとAutoForm-ProcessDesignerForCATIAの連携 フロントローディング型の新業務フローにより、見込み面作成のリードタイムが短縮 全面見込み面作成におけるAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの適用により、作業フローも変更し、工法計画の工程においてAutoForm-Compensatorによる全面見込み形状を自動作成することで、新しい業務フローでは、工法計画の工程で従来のような手作業による見込み面作成は行いません。 工程としては、まず作成したベース面をスプリングバック解析したものに対して、AutoForm-Compensatorで見込み面をシミュレーションし、その結果をもとに工法計画部門と後工程のCAM部門が共同で検討会を実施して、面見込み良否を協議します。見込み要件との乖離量が不適合と判断した場合は、再度スプリングバック解析と、AutoForm-Compensatorによる見込み面の反復シミュレーションを2~3回実施して、見込みがOKとなったら次のCAM工程に進み、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAで見込み面を作成します。その後、最終確認解析を行いOKが出た段階で、工法計画部門が工法図を出図し、CAM部門が金型加工用面とNCデータを作成します。さらにその後、治工具部門が金型を加工する流れとなります(図8)。 (図をクリックすると拡大します) 図8 金型加工着工段階の業務フロー変更の概略 実際には図8に示したフローの前に初期検討の製品図、金型鋳物着工用製品図でも見込み検討を実施していますが、新業務フローではCAM部門が初期検討の製品図からAutoForm-ProcessDesignerforCATIAで見込み面を作成することにより、それ以降の製品に対して、見込み面データを編集して見込み面を作成することで、大きな工数削減を実現しました。 また、工法計画段階からCAM部門で面品質を考慮した面作成を行い、CAE解析を実施してから見込みを確認するようになった結果、工法図出図後の見込み面作成のリードタイムが短縮し、より多くの部品で見込み面作成が可能となりました。 「CAM工程における金型加工用面の作成工数は、従来の10分の1となりました。全面見込み面を作成する部品点数も、従来は1車種あたりのフードアウターなどのアウター部品1,2部品ほどでしたが、新業務フローを適用した車種では5部品6工程分に適用、さらに今後予定している新しい車種では、その2倍の10部品19工程への適用を計画しています。今後ノウハウが貯まり、操作にも慣れてくれば、さらに部品点数を増やせるようになると期待できます」(原口氏) その他にもAutoForm-Compensatorとの連携により、うねり、ヨレ、折れのないクラスAサーフェスの出力が可能になりました。曲率反転部においても外観品質基準を満足する面調整がしやすくなっています。 工数の削減は、見込み面の作成以外でも進んでいます。AutoForm-Compensatorによって見込み形状が出力されるため、手作業での面作成が不要となっています。面品質の良いフェアリングも可能となり、面修正の工数が減少しました。さらに見込み要件との乖離量の許容値を工法計画部門と協議することで、面修正工数の最小化が実現しています。 「全面見込みの工数が削減でき、面精度が向上した結果、金型製作工程の全体最適が実現しました。前工程の段階で精度が悪ければ、後工程の金型玉成で精度を出すための時間が長くなり、結果的に全体の工数は多くなっていきます。前工程の解析で時間がかかったとしても、見込み精度が良くなれば、後工程の品質玉成期間を短縮することができ全体最適化に繋がります。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAの導入がすべてではないものの、以前の環境に比べて確実に精度は良くなり、業務全体の質も向上しています」(林氏) より多くのエンジニアが扱えるよう、最適な面作成手法の作業フローの確立へ 今後はスチールパネルのアウター部品だけでなく、ドアインナーなどのインナー系の部品や、アルミ材への適用を検討しています。 「アルミ製品については脱炭素の面で軽量化のニーズがあり、注目を集めています。しかし、スプリングバックの量はスチールより大きいために解析精度を高める必要があり、AutoForm-CompensatorとAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの適用を予定しています。あわせて摩擦や潤滑条件をシミュレーションするTriboFormの検証も現在実施中であり、3者を組み合わせた効果に期待しています」(林氏) 一方、適用部品が増えると担当者の負荷も増加するため、最適な面作成手法の確立と合理化が新たな課題となっています。そのため、今後は外注化も含めて多くのエンジニアがAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを扱えるよう、ルーチン化やマニュアル化を進めていく方針です。 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAとAutoForm-Compensatorの組み合わせにより、大幅な工数削減を実現した三菱自動車のチャレンジは、今後も続いていきます。 (企業概要) 三菱自動車工業株式会社 設立:1970年4月22日 所在地: 東京都港区芝浦三丁目1番21号 - [シミュレーション精度向上に関するご紹介](https://japanforming.com/シミュレーション精度向上に関するご紹介/) - はじめに オートフォームジャパンではシミュレーションの予測精度向上や、より効率的なシミュレーションの活用にご関心をお持ちのお客様を対象に、プロジェクト活動を推進しています。本稿では、精度向上プロジェクトを推進するにあたり「より良いシミュレーションとはどうあるべきか」という基本原理を決める際に参考としている、いくつかの考え方についてご紹介します。(※2021年6月に実施したWebinarの内容より一部抜粋)なお、究極のゴールとしてはよりよいシミュレーションをすることではなく、いかにシミュレーションを実業務に役立てるかだと考えています。その過程として、より精度の高いシミュレーションが必要になることは多くありますが、あくまで一つの要素であることを最初にお断りしておきます。 「Simulation」とは? まず、「シミュレーション」とはそもそも何なのか、言葉の定義に立ち返って確認してみます。 ------------------------------------------------------------------------------------------- 大辞林 第三版の解説 シミュレーション【simulation】 ① 物理的あるいは抽象的なシステムをモデルで表現し、そのモデルを使って実験を行うこと。実際に模型を作って行う物理的シミュレーションと、数学的モデルをコンピューター上で扱う論理的シミュレーションがある。模擬実験。 ② サッカーで、反則を受けた振りをして審判を欺こうとする行為。反スポーツ的な行為として警告の対象になる。 -------------------------------------------------------------------------------------------- ここで注目すべきは、物理的、論理的にかかわらずシミュレーションとは「実験」を意味する言葉であるということです。当然物理的な実験であれば、必要な情報や器具がそろわないと始められないわけですが、論理的シミュレーションの場合はある種「適当」でも実施することができてしまいます。しかし、言葉の定義通り実験を行うという考え方に沿って考えれば、必要な情報や器具は常に可能な限り準備するべきだということは自明でしょう。 またもう一つ注目すべき点としては、物理的、論理的にかかわらず本来現象を調べたい対象に対して、「モデル」を使って表現する実験であるというところです。つまりここには明確に、どんな現象を表現したいかという目的意識が必要になります。 シミュレーションの目的 自動車業界のプレス生産技術領域においては、金型作成前にバーチャルでシミュレーションし、われしわなどの不具合に事前対策を検討したり、あらかじめスプリングバック量を予測したりして、見込み補正を施すために使用されます。実物の金型を作り直しての補正と比較して、何度でもやり直しが可能で、コストが安く(ゼロというわけではない)、リードタイムも短くなります。できるだけ実物に近いシミュレーションを行うことで、事前検討の品質が向上し、知識や経験をデータ化することもできます。 つまり、以下のようなことが重要になってきます。 使用する目的に合致し、かける時間とコストに対して十分妥当なシミュレーションを行うこと 精度が高いに越したことはないが、精度を高めること自体は目的ではない 品質の良い製品(完成車)を安く早く作る補助をするのが目的 では、「十分妥当なシミュレーション」とはどのように検討、検証するべきなのでしょうか?以下の章で一つの例をご紹介します。 妥当なCAEを実施するためのV&Vフレームワーク シミュレーションの妥当性の保証は作業担当者一人の責任にされることも多く、ほとんどのエンジニアにとって非常にストレスのたまる大きな課題と言えます。妥当性を評価し、より良い解析を実施するための枠組みとして、オートフォームでは機械学会の提案する以下のフレームワークを参考にしています。 ※ASME(アメリカ機械学会)チャートの和訳(https://www.asme.org/) 基本的には、シミュレーションを利用した業務を進めるにあたってのステップが定義された図となっていますが、数値モデルによるシミュレーションと並列で実物の製作も進めています。この枠組みのポイントとしてはVerificationとValidationを含む適切なループを回していくことで、シミュレーションの利用価値を高めていくことができるというところです。Verificationには2種類あり、一つはプログラムそのものの検証、もう一つは計算実施の検証です。机上計算ができるようなモデルとの比較によるソフトウェアそのものの検証については開発者側の責任であり、それを実際に試してみるのは一部ユーザー側でも可能です。そして最も重要なのは、Validationのステップです。ここでは、実物と数値モデルについて、「有用であるか」「妥当であるか」をポイントとして比較し、フィードバックを行っています。もし何か問題があればそれをきちんと比較の上見つけ出して、最初の段階に戻り、数値モデルもしくは実物のモデルを修正するループを回すことで、シミュレーションの妥当性を高めることができます。また実物、シミュレーションの両面で常に「不確かさ」があることに留意することも重要なポイントと言えます。 修正の傾向 妥当性検討のループの中で見つかった修正点は、以下に示すようなものが例として挙げられます。プレス金型の歴史は非常に古く、難しい材料や工法でなければ実物の作りこみについてはある程度安定していると言えます。(下図右)一方ソフトウェア領域においては、どのソフトウェアもある程度のレベルに達しているということができます。(下図左)このような状況を考慮すると、最も精度や価値上昇の伸び代があると考えられるのは、ソフトウェアをどう使うか、実物をどうバーチャルに反映するか、という運用の部分になってきます。(下図中央) まとめ シミュレーションの価値を向上し、より有効に活用するための基本的な考え方の一つとして、V&Vのフレームワークをご紹介しました。今後より多くのプロジェクトが進み、実際の成功事例をご紹介できることを期待しています。 - [動画公開: 『車体製造のDXによるサイロ化の解消』](https://japanforming.com/動画公開-『車体製造のdxによるサイロ化の解消』/) - カーボディ・コンファレンス2021におけるクリストフ・ウェーバーの講演をお届けします。 自動車業界では激しい市場変動に備え、新たな技術に対応するために、複数の大手メーカーがこの数か月間に積極的なコスト削減目標を打ち出しました。また部門間の不和を解消し、大きな潜在性を引き出すデジタル・トランスフォーメーションにも大きな注目が集まっています。 従来の慣習が残る車体製造部門にデジタル・トランスフォーメーションを導入することで、サイロ化の解消およびアジャイル型開発がどのように推進されるか、クリストフ・ウェーバーがご紹介します。 迅速なフィードバックと最適化ループによって、品質、コスト、時間を最適化 ホワイトボディの最終結果に着目し、過剰設計と無駄を削減 部署間の連携を強化し、技術部門と製造現場の差異を解消 この不安定な環境下において、大手OEMでは無駄を抹消し、効率と信頼性を高めることで、ROIの創出を実現しています。 以下のリンクから講演の動画をご覧ください。 クリストフ・ウェーバーは、あらゆる大手自動車メーカーを顧客に有するオートフォーム中国を統括し、在上海ドイツ商工会議所の自動車業界のワークショップ・リーダーも務めています。またCATARC世界自動車産業研究委員会に参画する傍ら、国際インテリジェント製造連合の創設にも携わり、中国内外で世界のベスト・プラクティスを推進しています。ウェーバーは精力的に自動車業界の会議等で講演を行っています。 - [電気自動車(EV)への転換点: 2035年までに電気自動車の販売台数がガソリン車を上回る可能性も!](https://japanforming.com/中国の電気自動車evへの転換点/) - 今こそが電気自動車の普及に向けた取り組みを本格化すべきタイミングではないでしょうか? ニーオ社、理想汽車社、テスラ社を筆頭に、電気自動車(EV)メーカー各社の株価および販売台数は、この数ヶ月で飛躍的に伸びています。中国自動車技術者協会(SAE中国)の技術ロードマップ2.0によると、2035年までにEVの販売台数がガソリン車を上回ると予想されています。中国におけるEVの普及計画はどのようなものでしょうか。本稿では、オートフォーム中国担当マネージャのクリストフ・ウェーバーが、上海で開催されたドイツ商工会議所のイベントで発表した講演の概要をご紹介します。読者のみなさまにもご自身で評価していただければ幸いです。 中国のEV業界が瀕死状態に陥り、新たに再生した2020年 コロナ禍は中国の自動車産業の中でも特にEV業界に大きな影響を及ぼし、以下のような問題点が明らかになりました。 主力市場には手頃な価格帯の車種が存在しないため、フリート車両販売に依存しています。コロナ感染が広がると、人々は自宅に籠り、また自動車の共有も控えるようになり、タクシーや配車サービス向けのフリート車両の販売台数が落ち込みました。主流のお客様は手頃な価格で購入できるハイブランドの自動車を選択する傾向にあり、先行きが不透明な時期には、特にその傾向が強くなります。 政府補助金に依存する中、新エネルギー車(NEV)補助金が2019年夏頃から段階的に減額されています。政府はコロナ感染の拡大防止にすべての資源を投入しなければならず、行政機関による公共バスやパトカーの購入といったNEVの支援を継続できませんでした。感染拡大の初期にはガソリン車の制限を緩和した都市もあり、そのためガソリン車との比較においてEVの魅力も低下しました。 楽観的な市場環境下で、外部からの資金調達に依存しています。大手自動車メーカーの新規EV事業やEVプログラムの大半は採算ラインに乗っておらず、将来的な収益性に期待する外部からの資金調達に支えられています。感染拡大当初、金融市場では金融引き締めが行われ、多くの新規事業が撤退を余儀なくされました。 しかしこの1年で中国のロックダウンが段階的に緩和され、金融市場がリバウンドし始めたことで、EV販売が回復し、EV株は急騰しています。 この危機を通して、中国のスマートEV事業立ち上げ期における勝ち組となったのが、ニーオ社、小鵬汽車社、理想汽車社、威旺汽車(WM Motor)社です。これらの企業の株価はこの半年で急上昇しています(威旺汽車社はまだ上場していません)。テスラが中国製のModel 3を低価格帯に抑えても、この4社は販売台数を伸ばし続けました。2020年序盤の瀕死状態を生き残った企業は、かつてない強さで市場を席巻しています。 2035年までにEVおよびICVの主流化を目指す中国国務院とSAE中国 2020年10月、中国国務院は『2021-2035年の新エネルギー車産業開発計画』を発表、またSAE中国も『省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0』を発表しました。両計画は補完関係にあり、中国における2035年までのNEVおよびICV(インテリジェント・コネクテッド・ビークル)に関する目標、予測、指針および政府方案が盛り込まれています。 中国では、2035年までにフルEVが支配的なパワートレインとなります。NEVに占めるEVの割合は95%、燃料電池車(FCV)も重要な役割を果たします。全自動車販売に占めるEV販売の割合は、2025年までに20%、2030年までに40%、2035年までに50%になると予測されています。そして内燃エンジン車(ICE)は低燃費車両への転換が求められますが、厳しい燃費規制に適合させる必要があります。 2035年までに、コネクテッド・ビークルや自動運転車が普及すると見込まれています。また2025年までには、全新車の50%に車両環境間(V2X)通信装置が搭載されるでしょう。スマート・シティのエコシステムにおける通信・エネルギー部門に自動車を組み込むことを目標としています。 政府機関は、中国独自の要件を考慮した縦方向および横方向の業界標準の策定を調整し、世界的な競争力を有する中国企業とその技術、そしてブランドの確立を目指しています。 次に、EVの目標達成と普及に対する障壁の克服に向けた取り組みについて紹介します。 中国における充電インフラの拡充 132万基の充電ステーションを持つ中国の充電インフラは世界シェアの半分に相当し、さらに急速な拡充が続いています。充電ステーションの74%は、政府直轄市や副省級市(北京、上海、重慶)と沿岸地域(広東省、江蘇省、山東省、浙江省、福建省)に設置されています。また複数の都市が政府主導の「新たなインフラ」のプロモーションの一環として、充電ステーションの増設を表明しています(北京は2022年までに50,000基、上海は2023年までに100,000基を増設予定)。都市部や高速道路網の新インフラ整備は進んでいますが、地方都市の開発にはまだ時間を要します。 充電ステーションの80%が、大手5社によって運営されています。その内訳は、特来電社144,000基、星星充電社112,000基、国家電網社88,000基(高速道路の充電ステーションを独占)、江蘇省YKC社44,000基、そして依威能源社25,000基となっています。これに対して、自動車メーカーによる自社の充電ネットワークは非常に小規模で、主に高速充電ステーションの一般展示としての役割を担っています。国家電網などの大手運営企業は、北京でジョイントベンチャー「UniEV」を立ち上げ、すべての運営企業のデータを1つのインターフェース(API)に統合しました。消費者は「YeahCharge」アプリでアクセスできます。自動車メーカーは、この充電ネットワークを自社のプラットフォームに組み込むことで、シームレスなサービスをお客様へ提供することが可能になります。 2023年までにEVは補助金に頼らないコスト競争力を保有 今日の平均的なEVの価格は、ガソリン車よりも50,000~150,000元(90万円~270万円)ほど高額です。この価格差によりEVの魅力が半減し、また多くの消費者にも手が届かない状況です。下のグラフは、一般的なEVのコスト構造を示します。電気のドライブトレインのコストは、ガソリンのパワートレインとほぼ同等か、わずかに下回る場合もあります。最大の違いはバッテリー・パックのコストです。これは基本的に車体価格に追加され、車両コスト全体の35%を占めます。このコストは主にバッテリー・セルの材料費によるものです。 朗報としては、技術進歩によってバッテリーの価格が急激に低下し、2023年までに、 EVの価格が従来のガソリン車の価格と同等になると見込まれています。それまで補助金によって価格差を緩和する処置を講じ、またそれ以前にコスト競争力のあるEVの開発が進む可能性もあります。 コバルトとニッケルの割合を下げる取り組みとして、バッテリーの化学処理を改善するための研究が進んでいます。コバルトは化学処理の調整や冷却に欠かせませんが、バッテリー・セルに使用する材料の中で最も高価です。またコバルトが採掘できる鉱山は非常に限られています。主な産出国はコンゴですが、児童の労働搾取が深刻な社会問題となっているため、コスト面のみならず、倫理面においても解決を急ぐべき課題です。異なるアプローチとして、バッテリー・セル材料のリサイクルを促進することで持続可能性を高め、コストを削減する取り組みも進んでいます。 さらにテスラ社やGM社などの大手企業では「100万マイル」バッテリーを開発しています。バッテリーの寿命延長によって車両の再販価格が上昇し、また蓄電用途の家庭用電源としても二次利用できます。これにより、EV価値の下落を緩和する狙いもあります。 固体電池では、陽陰極間の電解液をガラスやセラミックスなどの固体材料に置き換えています。陽極、陰極、電解質を強固に積層することができるため、重量および収納場所が半分で済み、コストも大幅に削減できる可能性があります。 さらには固体電池を車体構造に組み込むことで、パッケージの空間要件を最適化できます。固体電池の量産開始は2025年を目途に研究が進められています。 技術開発の発展以外にも、多くの企業がEV普及を促進すべく、従来のビジネス・モデルからの脱却を試みています。ニーオ社は、サービスとしてのバッテリー(BaaS)というビジネス・モデルを中国市場に導入しました。BaaSを利用する消費者は、バッテリーが搭載されていない車両部分のみを購入し、月払いでバッテリーをリースすることができます。すると車両の購入価格は従来の自動車と近いレベルに下がります。バッテリー技術の急速な進化を考慮すると、NIO Powerのような集中管理システムは減価償却を含めたバッテリー資産の管理に適しています。 バッテリー以外にも、各自動車メーカーでは自社のスマートEVの機能拡張として、無線(OTA)を介したソフトウェア・アップデートを車両のライフサイクル全域に渡り継続的に提供する取り組みも進められています。このようなライフサイクルを通じた機能拡張は、経時的価値の下落緩和に貢献します。 2022年までには多様なEVモデルが展開 現状では、非常に限られたニッチなEVモデルのみが販売されています。ほとんどのモデルは魅力に乏しく、また従来のガソリン車よりも高額です。BMWはその洗練されたスタイルが多くの支持を集めていますが、たとえばBMW i3のデザインは、率直に申し上げると醜いです。しかし、テスラ社やニーオ社などの新興企業は、EVが魅力的になり得ることを証明しました。それでもデザイン性に優れたEVが手の届く価格で販売されるケースは、ほとんど例を見ません。幸いにも、こちらも変革期にさしかかっているようです。ブルームバーグNEFによれば、2022年までに全世界で500を超えるEVの新型モデルが発表される見通しです。 フォルクスワーゲン(VW)社はEVに特化した「ID」シリーズを立ち上げ、2025年にかけて80のEVモデルの販売計画を発表しました。ゼネラルモーターズ(GM)社は、2023年までに、同社の「マルチブランド、マルチセグメント」のマーケット・ポートフォリオに20のEVモデルを追加する見込みです。これには上海汽車社・GM社・五菱社の「宏光MINI」といったエントリー・モデルから、悪名高きハマーのEVバージョンまでが含まれます。また現在のGM社では、すでに社員の多くがEVモデル関連の業務を行っています。大手自動車メーカーの中で、唯一トヨタ社だけはEVに消極的で、引き続きハイブリッド・パワートレインの成功を見込んでいます。プレミアム・メーカーのダイムラー社およびBMW社は、今後数年間にEVを導入することを発表しており、ダイムラー社ではEQシリーズ、BMW社はiシリーズとして開発を進めています。 今後12ヶ月以内に、多くのEVモデルの発売が予定されています。特に大手の量産メーカーによる大規模生産からスケール・メリットが生じると、誰もが気軽にEVを購入できるようになります。EVがニッチからメインストリームとなる日もそう遠くはないでしょう。 中国はEVの確固としたサプライ・チェーンとエコシステムを構築 中国は、確固としたサプライ・チェーンとエコシステムを基盤として、EV産業を牽引して行くでしょう。これは世界最大のバッテリー・メーカーである福建省のCATL社や深圳市のBYD社から始まり、テンセント社、バイドゥ社、アリババ社、ファーウェイ社といったテクノロジ企業の通信エコシステムにまで広がります。ダイナミックなスマートEVの新興企業であるニーオ社、小鵬汽車社、理想汽車社、威旺汽車社は、中国の巨大なテクノロジ企業の支援を受けています。 さらに近年には世界の大手自動車メーカーが、中国におけるEV設計および生産能力に巨額の投資を行っています。中国は世界最大のEV市場であり、新しいモビリティ・コンセプトに対する消費者の要求も高いことから、これはごく当然の動向でもあります。トヨタ社はバッテリーの供給を確保し、EVの共同開発を行うため、BYD社とのジョイントベンチャーを立ち上げました。また、VW社は安徽省の電池メーカー、国軒社に出資し、すでに生産能力の増強を発表しています。iPhoneの組み立てで知られるフォックスコン社はEV事業に進出し、自動車メーカーにEVのプラットフォームやコンポーネントを供給することを発表しています。 BMW社は、ミュンヘンではなく、瀋陽で世界初のフルEV SUVとなるiX3を生産しています。吉利汽車はその国際ブランドであるPolestar and Lync & Co社に成都でのEV生産および中国/世界での販売を許可しました。VW社の安亭鎮工場やテスラ社の上海工場で生産されたEVが、ヨーロッパに輸出される可能性も高いでしょう。 今こそが電気自動車の普及に向けた取り組みを本格化すべきタイミングでしょうか? 新たな技術は、初期状態から必ず段階を経ながら、市場に普及してゆきます。それを早期から利用する少数派の消費者は、未熟な技術の欠点を受け入れ、自身に先見の明があることを表現する手段として、プレミアムな価格を支払うことも厭いません。このため、EVが公道を走行する様子は、すでに何年も前から見かけることがあったはずです。しかし大多数の消費者は実利的で保守的です。実用化に向けたすべての障壁が克服されて初めてEVに乗り換える消費者も多くいます。ジェフリー・ムーアは、初期状態から市場に普及するまでの一連の流れを「キャズム(地割れ)をまたぐ」と表現しました。この「キャズム」という大きな障壁こそが、今日でも自動車販売全体に占めるEVの割合がわずか数パーセントである理由です。しかし、すべての障壁を克服し、キャズムという地割れをまたいだら、多くの市場でEVの新技術が速やかに受け入れられると確信しています。 近年の中国では、EVへの流れが加速しています。都市部の充電インフラはすでに整っています。2023年までにEVは十分なコスト競争力を得ると見込まれ、また政府の補助金やインセンティブを活用すれば、より早期に実現する可能性もあります。今後12ヶ月以内に、さまざまなEVモデルが発売されます。今こそが、電気自動車の普及に向けた取り組みを本格化すべきタイミングではないでしょうか? 「大きな一歩を踏み出すことを恐れてはならない。キャズムという地割れを小さな2回のジャンプに分けて渡ることはできない」。D. ジョージ さあ、始めましょう! - [マヒンドラ社金型製作所: フード・アウターを見込み補正せずにスプリングバックを抑制](https://japanforming.com/フード・アウター見込補正せずsb抑制/) - 外板パネルのスプリングバック見込み補正は、面ひずみが生じる恐れがあるため困難を伴います。そのためスプリングバックは、見込み補正よりも工程や設計の見直しによる抑制が望まれます。以下にご紹介する手法は、インドのマヒンドラ&マヒンドラ社金型製作所で採用されています。同社は、自動車の外板パネル、特にフード・アウター・パネルの金型に定評があります。マヒンドラ社は、スプリングバック見込み補正を行わずに、フード・アウターのスプリングバックを17mmから2mm未満に最小化し、初回のトライアウトで85%の面精度を達成しました。 外板パネルは、形状が比較的単純でも、成形には困難が伴います 外板パネルの成形は、われやしわなどの通常の成形性の不具合の他に、面ひずみと、スプリングバックの問題に対処する必要があります。尚、以前ご紹介したヤマセイ株式会社の事例では、型設計の段階で面ひずみの不具合を解消し、時間とコストを大幅に削減した手法について概説しています。この事例では、スプリングバックに注目しています。従来のスプリングバック見込み補正の手法は、外板パネルに重要なAクラスの面精度を損なう恐れがあるため、外板パネルに対する理想的なソリューションとは言えません。外板パネルの場合、スプリングバック見込み補正よりも先にスプリングバックの最小化を検討すべきであり、これには経験と革新的なデジタル・エンジニアリングのソリューションが必須です。 マヒンドラ社の初期シミュレーションでは、工程およびドロー・コンセプトの決定後、許容限度を超える17.0mmのスプリングバック(+10.7mmおよび-6.3mm)が確認されました。スプリングバック見込み補正は、面精度に影響するため適用せず、工程自体を見直すことで、スプリングバックの最小化を試みました。 図1:フランジ金型を均一に投入したフード・アウターで確認された初期のスプリングバック結果 以前の経験から、最終工程でフランジ金型を投入するタイミングがスプリングバックに影響を及ぼすと仮定し、実証実験を行うことになりました。しかし従来の手法では、最適なタイミングの特定は難しいため、AutoFormの分析的工程改善(SPI)手法を用いた実験計画を立案しました。 図2: 部品境界沿いに、曲げ刃が当たるタイミングのばらつきを定義する断面を特定 金型投入時のばらつきとして、20mm(10mm~-10mm)を各断面に定義し、断面間のゾーンの自動調整を行いました。これはフォーム金型の作成中に簡単に定義できますが、しかし5つの断面を検討するには、さまざまな可能性や組み合わせを考慮しなければなりません。そのため手動で最適なソリューションを見つけるのは容易でなく、時間も要します。そこでAutoFormの分析的工程改善(SPI)手法を活用し、これらを自動化しました。このSPIでは、ソフトウェアが自動的に潜在的な組み合わせをすべて検出してシミュレーションを実行し、計算結果を1つのファイルにまとめます。よってそれぞれのファイルを分析する必要はなく、分析的に最適なソリューションを特定することができます。 この時点で、最初のソリューションから各断面に対する適切な投入のタイミングを推定でき、その結果、スプリングバックの範囲を3mmに抑制できました。 図3:AutoForm SPIを活用した実験計画から算出された最適なスプリングバックの結果 図4:ばらつきを考慮したフランジ金型投入の最適化 図5:現場で生じうる制約を考慮してフランジ金型をさらに調整し、スプリングバック結果を1.5mm 以内に抑制 このように、マヒンドラ社は見込み補正をまったく行わずスプリングバックを17mmから1.5mmに抑制し、同時に良好な面精度も保証しました。 結果: 初回のトライアウトで、ドロー金型にスプリングバック見込み補正を適用することなく、86.0%の面精度に達し、大きな成功を収めました。 図6:トライアウト結果とシミュレーション結果の良好な関係性 トライアウトでは、デジタル・プロセス・ツインによる革新的なソリューションを適用した現場を構築することで、外板パネルのスプリングバックを制御できました。このソリューションを採用したことで、大きな困難を伴うことはなく、また長時間を費やすこともありませんでした。またトライアウトにおける修正ループも必要なく、大幅なコスト削減も実現しました。さらには、フード・アウター・パネルの寸法精度に関する修正もなく、型品質の向上およびリードタイムの短縮も達成できました。マヒンドラ社では、この成功事例に基づき、新たなシミュレーション標準を作成して、類似したすべての部品にこの手法を適用することになりました。 マヒンドラ社 – 金型製作所は、インドのナーシク市に位置する著名な金型工場で、 AクラスやBクラスからHSS/UHSS材料まで、あらゆる形態のパネルに応じたプレス成形金型の製作を専門としています。同社は10年以上フィージビリティ解析にAutoFormを活用しています。フード・アウター・パネルの見込み補正を行わないスプリングバック最小化の事例は、プレス成形専門エンジニアおよびチームのリーダーであるムケシュ・タクール氏が行いました。 この興味深い事例をFormingworld.comの読者と共有していただいたムケシュ氏に感謝の意を表します。 - [トライボロジおよび接触面圧パラメータ: AutoFormパレートの法則(パート6)](https://japanforming.com/autoformパレートの法則パート6/) - 最上位レベルのシミュレーション精度を担保する最後の一仕上げ 本稿はAutoFormパレートの法則を活用してシミュレーションの正確度向上を図る連載の第6回にして最終回となります。シミュレーションの正確度指標における最後のパラメータ、トライボロジと接触面圧について説明します。 以前の連載記事で述べたとおり、パレートの法則は逐次のパラメータ設定がシミュレーションの正確度にあまり寄与しないという仮定に基づいています。言い換えれば、まず必須パラメータを定義しなければならず、次に重大パラメータ、最後に重要パラメータの順に定義してゆきます。これらの3つのグループを適切に定義および検証すると、シミュレーション正確度の95%が担保されるため、シミュレーション・モデルは正確かつ高精度になります。つまりシミュレーション結果は、その後に実施する実際の生産工程を表現しています。最終段階として、詳細パラメータを定義し、残り5%の正確度を担保すると、完全なデジタル・プロトタイプが完成します。 正確度指標の基礎部分から発展し、これから些末な詳細を調整してゆきます。詳細パラメータは全体的な精度にはほとんど貢献しませんが、シミュレーションと実際の工程を完全に一致させ、正確に検証する観点からは非常に重要となります。 図1: AutoFormパレート図は、詳細パラメータの入力フェーズに進んでいます 詳細パラメータには、トライボロジの条件と接触面圧の条件があります。 トライボロジ関連パラメータ トライボロジ関連パラメータには、金型サーフェスの粗さ、研磨、シート・サーフェスの粗さ、潤滑量、温度変化、ラム速度プロファイルが含まれます。シミュレーションで扱う特性は、エンジニアリングで定量化させ、実際の工程を正確に反映させた定義を行うことによってのみ、プロセスのデジタル・ツイン・モデルとなりえます。 たとえば、金型サーフェスの粗さはトライボロジに影響を及ぼします。エンジニアリングで定義した重大パラメータには、適用した標準に基づくトライボロジ・モデルがあります。金型の製作および研磨時に、実際の金型サーフェスの粗さを実現すると仮定すると、Raは約0.6マイクロメートルほどになる場合があります。 また金型の研磨が不十分であったり、十分に研磨されていると判断されたために、金型サーフェスの粗さがたとえば0.9マイクロメートルの場合などは、標準からの偏差を考慮に入れることもできます。この詳細パラメータは、TriboFormで修正できます。TriboFormは高度な摩擦モデルのソリューションで、設定の検証シミュレーションも実行できます。しかしエンジニアリング段階の後で検証が行なわれるため、シミュレーションの正確度を向上させることはありません。 修正の基礎となるのは、実際に測定した金型のサーフェスの粗さです。このような「シミュレーション後の検証」は多くの場合、シミュレーションと実際の工程に想定外の偏差が生じた場合に実施します。ただし、(たとえばトライアウトの工数を最小化するために、)デジタル・プロセス・チェーンを最大限に効率化するには、実際の金型を正確にシミュレーションに反映させなければなりません。これは、シミュレーション・モデルをデジタル・マスターとして使用します。もし偏差が生じたら、シミュレーションを調整して現実の工程を反映させるという意味ではありません。最終的に、効率的なエンジニアリング工程では、適用した標準と境界条件をエンジニアリングから実際の工程へきちんと受け渡す必要があります。 場合によっては、シート・サーフェスの粗さ、潤滑量、温度変化、ラム速度プロファイルなど、他のトライボロジ関連パラメータに関しても、同様の検証を行います。これらのパラメータは、シミュレーション設定時に詳細に定義できます。通常はこれらの値を修正しても、結果はほとんど変化しません。ただし、物理的なプロセス・パラメータをもとに修正しなければなりませんが、これはエンジニアリングの作業完了後の非常に後期段階のみで測定できます。エンジニアリングの観点上、ここで得られるメリットはほとんどありません。 必要とされる精度でパラメータを制御できない場合、工程感度に対するパラメータの影響を測るために、ロバスト性解析を行います。そしてパラメータの変化が工程能力の要件を満たして、結果のばらつきがごく軽微であることを立証します。そのためパラメータのばらつきを考慮し、正確なプロセス・ポイントがなくても機能する適切なプロセス・ウィンドウを確立します。 接触面圧関連パラメータ 詳細パラメータには、金型のクラウニング、3D金型設計、金型の変形、プレス・ベッドの変形、金型のスポッティング、 金型のシムや傾きなどもあります。このような接触面圧関連パラメータは、3D金型設計標準、トライアウト工程の手順、プレス構造などからプレスの保守状態まで、さまざまな要因と強い関連があり、大きな影響があります。 これらのパラメータはどれも強い相関性があるため、単独では考慮できません。金型全体とプレス・ベッドに荷重をかけるとたわみながら曲がりますが、これは金型の剛性に影響するリブのデザインや3D金型設計に依存するため、 どのように金型がクラウニングされるかも考慮に入れなければなりません。結果的に生じる荷重と金型内で作用する局所的な荷重は金型のスポッティング(すなわち荷重を伝達する実際の接触領域)に依存するため、金型のクラウニング、金型の変形、プレス・ベッドの変形が影響を及ぼします。このグループで考慮するパラメータは、相互に依存する物理的な現象が入り組んだ複雑なシステムです。 金型のクラウニングは、金型とプレス・ベッドの変形を見込み補正に適用し、金型やプレスの変形の影響を無効化します。これを考慮し、この挙動を適切にシミュレーションできる2つの戦略を紹介します。最初のシミュレーション戦略には、金型のクラウニング、金型の変形、ベッドの変形が含まれません。この設定が基準の金型を定義し、これら3つの影響が相互に相殺するように設計されているためです。代替のシミュレーション戦略では、これら3つの要因をすべて考慮に入れます。この戦略には、関連するすべての詳細をエンジニアリングまたはモデル構築段階で定義しなければならないというデメリットがあります。上述のとおり、この戦略は、適用した3D金型設計標準とプレス・ベッドの剛性、全体的な金型剛性、クラウニングの正確な量、金型のトライアウトで使用するスポッティング戦略に関する詳細を含みます。エンジニアリングの段階で詳細が不明の場合は、最初の戦略で進めます。 トライボロジ関連パラメータと同様に、すべての接触関連の詳細を工程検証に組み込み、効率的なエンジニアリングのワークフローに適合させます。これらのパラメータと影響を考慮するには、多大な工数を伴います。また、3D金型設計が確定し、トライアウトや生産のプレスが定義されてからのみ、適用が可能になります。これらの影響があるとはいえ、生産工程が適切に設計されていれば、最終結果に及ぼす影響は限定的です。実際のプレス成形工程で理解した知識を活用することで、シミュレーションが示すパラメータの悪影響を緩和できます。これを理解すれば、作用する荷重と3D金型設計の剛性を調整することで不要な変形を回避し、接触関連パラメータから生じる問題を解消することができます。 また接触面圧関連パラメータの相互作用は、トライアウトのプレイグラウンドになります。金型のスポッティングは結果的に生じる接触面圧の原動力になり、金型の局所的な荷重と結果として生じる荷重を定義します。金型の慎重なスポッティングが、金型とプレス・ベッドの両方の全般的なたわみをコントロールする主な手段となります。境界条件は、プロセス設定と3D金型設計で定義します。接触面圧関連パラメータは包括的に扱うことが、金型のトライアウトの成功に大きく寄与します。そのため、トライアウトの作業では、孤立したパラメータとしてより、パラメータを複雑なシステムの一部として扱うべきです。 これでシミュレーションの正確度を図るAutoFormパレートの法則がすべて紐解かれました。必須パラメータから始め、次に重大パラメータ、そして 重要パラメータとたどってきました。この段階的な手法から高精度なシミュレーション・モデルを作成でき、その後の実際の生産工程を予測することができます。モデルの作成において、すべての些末な詳細まで組み込むと、極めて大きなエンジニアリングの工数がかかりますが、シミュレーションの精度向上に関するメリットはそう大きくはありません。 この連載の最終回では、「詳細」についてはエンジニアリング工程の後期段階まで確定できないものがあることを実証しました。またこれらの詳細パラメータには強い相関性があり、実際の工程と一致させるには多大な工数が必要となります。その上、精度向上に貢献できるのは、シミュレーションの基礎が適切に定義されている場合のみです。 シミュレーション・モデルの発展過程を勘案すると、重要性の高いパラメータをすべて確実に設定してからのみ、重要性の低いパラメータを考慮することに意義が生じるという点をぜひご理解ください。 この手法には、重要なポイントが2点あります。まずモデルの作成においては、重要性の高いパラメータから低いものへと、パラメータ群を正確にたどる必要があるということです。そうすれば、常時機能する明確で矛盾のない効率的なモデルの作成工程を定義できます。そしてそれは、解析の対象に依存しない、使いやすいモデル作成の戦略となります。これはプレス成形シミュレーション・ソフトウェアを使いこなす上で大きな効果を発揮します。そして2点目のポイントは、重要性の高いパラメータは(たとえば部品や工程に関する新たな情報が追加された場合)、 エンジニアリングの作業時に変更する必要があり、その後に、パラメータの変更後もほかの重要性の低いすべてのパラメータが有効であるか、また重要度の高いパラメータと整合性がとれているかを確認しなければならない、ということです。 この連載によって、プロセス・エンジニアのみなさまの業務が円滑に運ぶようになることを願っています。またみなさまの体験談やご意見、ご感想をいただければ、ありがたく存じます。 - [重要パラメータ: AutoFormパレートの法則(パート4)](https://japanforming.com/重要パラメータ-autoformパレートの法則パート4/) - 正確度指標を成熟させる次段階 本稿はAutoFormパレートの法則を活用してシミュレーションの正確度向上を図る連載の第4回です。この記事では、AutoForm正確度指標のコンセプトに基づいたプレス成形シミュレーションの設定方法を説明し、重要プロセス・パラメータについて検討します。これはAutoFormパレートの法則モデルで扱う第3グループのパラメータです。パレートの法則をプレス成形シミュレーションへ適用することで、どのグループのパラメータが最終結果の正確度に顕著な影響を及ぼし、どのグループの影響は顕著ではないかを判定できます。パラメータに優先順位を適用することで、開発段階を追いながら詳細を選択または把握できるようになるため、シミュレーションの正確度を分析的に、かつ一貫性をもって発展させてゆくことができます。 必須パラメータおよび重大パラメータについては、先の連載記事にて詳説しました。これらのグループがシミュレーションの最終結果全体の正確度の90%を決定づけるため、これでシミュレーションの堅固な基盤ができました。次段階である重要パラメータでは、プロセスのセットアップを微調整します。必須パラメータおよび重大パラメータを確保してから、この段階の作業を始めるのには、2つの大きな理由があります。 まず重要パラメータは、必須パラメータおよび重大パラメータの上に構築されるものです。たとえば、重大パラメータを変更した場合、重要パラメータの微調整を最初から再度やり直さなければなりません。材料の流れをコントロールするために、代表的な材料挙動(特性/モデル)のみに基づきドロービード(位置/拘束プロファイル)を定義したと考えてください。ドロービードを定義すると、必然的な結果として、必要とされる工程荷重にも影響があります。このように必須パラメータのどれか1つを変更すると、必要なバインダ荷重値などの重要パラメータも変化します。 次に、重要パラメータの修正(微調整)によって生じた変化は、重大パラメータの修正から生じる変化よりも非常に小さいです。たとえば、トライボロジはシートおよび金型が接触する部分のすべてに関連がありますが、一方、ベアリング領域(管理面)は摩擦がバインダ領域で作用する部分を定義します。そのためベアリング領域の定義は通常、局所的に効力があります。つまり、結果としてのベアリング領域の効果を分析する前に、摩擦モデルをまず定義する必要があります。 エンジニアリングのプロセスを通じて、シミュレーションおよびプレス成形プロセスの定義が、段階を追って具体的かつ適切に定義されてゆくことについて、ご理解いただけたかと思います。最後のパラメータ・セットの上に次のセットを構築してゆくことで、工程の定義は着実に成熟してゆきます。その結果、すでに定義されている必須パラメータおよび重大パラメータをさらに正確に定義でき、この時点でさらに微調整を進めることができます。ただし条件として、以下2つのパラメータ群の値は信頼できるものであると確証されなければなりません。 図1: AutoFormパレート図は、重要パラメータの入力フェーズに進んでいます 下記の重要パラメータは、現実の工程順が反映されていることが重要です。プロセスの各ステップは、可能なかぎり現実に則して表現します。 自重: 自重は、バインダに初期の平らなシートを位置決めする間に作用します。この段階では、シートに作用している唯一の荷重は自重です。バインダ形状とオプションの支持パンチに応じて、ブランクの正確な位置、形状、たるみが自重力によって定義されます。パイロットの位置を定義することで、ブランク配置の精度と再現性を確保します。この正確な位置とたるみによって、バインダが閉じる時や最初のパンチ接触時にしわの発生または回避ができるかについて、影響を及ぼします。これはもちろん、金型形状が適切に定義されていることが前提となります。シートやブランクの形状を定義しなければ、自重の値は恣意的になります。 中間スプリングバック: これは、部品が変形する工程の最後で考慮します。応力によって、部品の形状がわずかに変化します。このわずかに変化した部品形状が次の工程で考慮され、加工工程が続いていきます。形状の変化はスプリングバックの量に依存するため、シミュレーションにこのステップが含まれるべきです。後続の工程で形状が完全に一致しないと、その後の部品の位置決めと金型のクロージングにて、部品がわずかに変形する場合があります。 ブランク/部品の位置決め: ドロー工程でブランクの位置決めに関して言及されたことは、次工程のプレス成形済み部品にも当てはまります。部品は金型の上で位置決めされ、自重で最終的な位置が決定されます。部品形状とパッド/ポスト形状が正確に一致しないと、部品は金型に完全に適合しません。したがって、部品の位置を再現できる方法でパイロットを定義することで、不要な変形を回避します。 金型のクロージング: 特に複数の工程がある場合、中間スプリングバックを適切に考慮するには、クロージング工程がとても重要になります。クロージングでは変形が生じたり、応力やひずみが変化する場合があります。パネル形状は応力分布の軽微な影響にも非常に敏感な場合があります。そのため、スプリングバックを正確にコントロールするには、全体の工程の順序を正確にシミュレーションする必要があります。 プレス成形プロセス全体を理解するには、自重、中間スプリングバック、ブランク-部品の位置、金型のクロージングをすべて考慮することが重要です。これらの4つの重要パラメータは密接に関連しているため、まとめて定義すべきです。これらのパラメータは最終結果に影響を及ぼしますが、定義および微調整を効果的に行うには、まず工程全体、特にブランクとバインダの最終形状を適切に定義しなければなりません。工程全体は、必須パラメータ(工程順序、すべての工程の定義、金型形状、金型動作)と重大パラメータ(材料、トライボロジ、ドロービード)で定義します。 実際の現場にて建設的な対策を適用する場合は、それもまたシミュレーションで検討すべきです。 ベアリング領域(管理面): バインダのスポッティングには、「部分的なベアリング」を適用します。適用数と、バインダからのクッションは特定の領域のみに作用します。この領域の外側では、バインダとシートの接触力は発生しません。このため、この選択領域のみをスポッティングする必要がありますが、この スポッティングはタイムリーでコストのかかる、厄介な工程であることはご存じのとおりです。スポッティングが少ないほど、 金型のトライアウトをより迅速に、低コストに実施することができます。一方で、バインダがすべてのバインダ領域ではなく特定の領域のみに作用する場合、面圧分布が異なり、摩擦抵抗も異なり、さらには材料の流れにも影響を及ぼします。このため、プレス成形工程における材料の流れを可能なかぎり現実的に表現するには、シミュレーションでベアリング領域を明確にする必要があります。 現実的なプロセス荷重: 適用した荷重または発生する反力は慎重に評価すべきです。これらの荷重を現実の工程に適用できるかを分析する必要があります。プレスの強さは十分ですか?必要なガスまたは窒素スプリングで構築できますか? 金型の構造はこのような荷重を支え、80 kNを支えることのできるカムを設計できますか? 「シミュレーションできるものだけが、現実の工程で構築できる」という事実を常に念頭に置く必要があります。 重要パラメータは、明らかに最終結果に影響を及ぼします。しかしパラメータを操作して、成形結果をコントロールすることはできません。結果はただ生じるのです!自重を無視することはできず、スプリングバックを発生させないこともできません。しかしこれらは最終結果に影響を及ぼすため、この時点で影響を考慮すべきです。 これまでは、基準シミュレーションだけを重視してきました。しかし、工程のフィージビリティだけではなく、工程能力も同様に重要です。重要パラメータのひとつである工程のロバスト性については、次の連載でご紹介します。 - [重大パラメータ: AutoFormパレートの法則(パート3)](https://japanforming.com/重大パラメータ-autoformパレートの法則パート3/) - 正確度指標を成熟させる次段階 本稿はAutoFormパレートの法則を活用してシミュレーションの正確度向上を図る連載の第3回です。この記事では、AutoForm正確度指標のコンセプトに基づいたプレス成形シミュレーションの設定方法を説明し、 重大プロセス・パラメータについて検討します。これはAutoFormパレートの法則モデルで扱う第2グループのパラメータです。パレートの法則をシミュレーションへ適用することで、どのグループのパラメータが最終結果の正確度に顕著な影響を及ぼすかを判定できるため、効果的に活用することができます。パラメータの優先順位を把握することで、開発段階を追いながら詳細を決定できるようになるため、シミュレーションの正確度を、分析的に一貫性をもって発展させてゆくことができます。 この連載記事のパート1およびパート2で説明したように、必須パラメータがシミュレーションの最終結果全体の正確度の80%を決定づけます。必須パラメータについては前稿で詳説し、シミュレーションの堅固な基盤ができました。ここではシミュレーションをより正確に検討するために、次のレベルである重大パラメータ について説明します。 重大パラメータは、通常、会社標準から定義しますが、現実を反映させるには、金型設計の標準も同様に考慮する必要があります。パラメータのいくつかは、明確に定義されています。たとえば、ドロー型にスケーリングを適用するかどうかは、標準が定めています。またシート粗さを含む特定の材料や、その他のパラメータについても同様です。そして残りをシミュレーションで微調整して、最適な値を定義します。ただしこの微調整は、たとえば金型で実際に使用するドロービード・プロファイルなど、指定されたデザイン標準に従って行います。 図1: AutoFormパレート図は、重大パラメータの入力フェーズに進んでいます 以下に重大パラメータの項目を記します。 スケーリング: ゲージが薄い車体パネルの材料を基準ドロー形状に成形(引き伸ばす)すると、ドロー後のパネルは基準部品形状よりも収縮します。この収縮の影響を相殺するために、実際に作成する金型のドロー形状には、スケーリング(基準寸法よりもわずかに大きく収縮分を見込んだ金型を作成)が適用されます。「通常は機械加工時にスケールを調整するので、設計する金型には必要ない」という考え方から、スケーリングをシミュレーションで考慮しない場合が多くありました。実際に金型に適用されるスケーリングは、スプリングバックに大きな影響を及ぼすものでもあるため、シミュレーションにてスケーリングを適用するのはとても重要なのです。ドロー型の形状にスケーリングが適用されないと、ドローしたパネルは収縮しているために、次工程の金型にうまくおさまらない場合があります。シミュレーションでは、ドロー型のスケーリングは簡単に適用できます。特にAutoFormでは、文字通り、ボタンを1度クリックするだけです。多くの場合、スケーリングルは会社の金型標準で定義されています。もし現場で適用されるのであれば、シミュレーションでも同様に適用されるべきです。 ドロービード: ドロー工程を適正に設計するために必要な重大パラメータです。ドロービードの位置、ドロービード・プロファイル、セグメントを最適化するもので、プレス成形工程のコントロールに欠かせない微調整パラメータです。ドロー型でドロービードを集中的に使用し、修正を行うには、プレス成形シミュレーションでドロービードをモデル化する構造的な手法が必要になります。シミュレーションのモデルは修正が容易で、しかも計算時間にも大きな影響はありません。そうでなければ、エンジニアリングの効率が失われてしまいます。 多くの事例から、複数のドロービード・モデルから算出した結果は比較可能であることがわかっています。モデルの挙動を十分に理解し、トライアウトで工程の最終調整を行う確実な戦略があれば、一般論として、いかなるモデルを使用しても適正な工程を作り上げることができます。当社では基本的に、アダプティブ・ライン・ビード・モデルをドロービードのフラットニングおよび非フラットニングと組み合わせてドロービード・モデルとして使用することを推奨しています。 材料モデル: 材料特性は必須パラメータに属します。また、適用した材料モデルそのものは、多くの場合は会社標準で定義されています。会社によっては独自の材料データ一式を使用し、他方では、指定された標準に対応したデータを使用する場合もあります。ただし効果的に適用するには、まず材料モデルが適切に品質要件を記述していることを確認しなければなりません。そのため適切に材料ファイルを選択することが非常に重要になります。 硬化曲線と降伏曲面。 硬化曲線は引張試験の応力ひずみ曲線を表現したもので、単軸の応力状態を表しています。 降伏曲面モデルは、多軸応力状態の挙動を表します。各モデルで降伏曲面の固有形状を構築し、その後、引張試験のデータを使用して特定の寸法に調整します。Hillは引張試験から生成された4つのデータ・ポイントのみを使用し、BBCは6つのデータ・ポイント、Vegter 2017 は10個のデータ・ポイントを使用します。実際のところ、BBCは引張試験に加えてバルジ試験のデータを必要とし、Vegterは圧縮、せん断、および平面ひずみ試験のデータを追加する必要があります。このような詳細試験のデータを入手するのは困難ですが、BBCとVegter 2017を共有して実装することで対応できます。不足しているデータ・ポイントは、引張試験のデータから内部的に計算されます。 また多くの場合、正確な材料データがエンジニアリング段階で不足していると、材料モデルは可能なかぎり近似されます。AutoForm材料データベースには、材料供給元によって実験的に検証された約1000個の材料ファイルがあり、これらは即時利用できます。 トライボロジ・モデル: 標準的なシミュレーションでは、金型とシートの間の摩擦はパネルのサーフェス全体で一定であると仮定され、 1つの摩擦係数を有するクーロン摩擦モデルとして定義されています。しかしこれは現実を反映していません。実際の摩擦は、部品の領域ごとに異なります。小さな半径では、摩擦挙動に比較的大きな面圧の影響をはっきりと確認できます。また鋭い半径では、材料の相対的なスライド速度を見ると、摩擦挙動の減少を確認できます。他の領域では、スライド速度と面圧が局部的に低いために、摩擦が比較的に大きくなっています。 この複雑な現象は、TriboFormの高度な摩擦モデルで正確に記述できます。この摩擦モデルは4次元で、摩擦係数は接触面圧、スライド速度、材料ひずみ、温度に依存します。このモデルの効果的な適用を示す複数の事例が発表されています。TriboFormモデルの利点は、非常に効率的な摩擦モデルなので、シミュレーション時間の増加をもたらさないことです。 結果の評価: シミュレーションの技術がどれほど進化しても、ユーザー が一貫性のある適切な入力をできず、信頼できる結果の解釈基準が適用できないと、シミュレーション結果の信頼性は高まりません。適切な位置を確認しなかったり、必要な出力変数を確認しないと、プレス成形の不具合を特定できない場合があります。シミュレーション・パラメータやデザイン・ガイドラインの徹底した適用や結果の解釈を保証できなければ、成形結果の目標に到達することは叶いません。そのため、プレス成形シミュレーションを適切に定義および実行し、製品やプロセスを着実に評価するには、標準を適用することが極めて重要です。またこれらすべてに対応するならば、品質基準についても、時間をかけてしっかりと確認すべきです。というのは、品質基準は後に現場でも満たす必要があるため、すべての結果を慎重に評価することに妥当な時間を費やすことは意味があります。 測定設定: スプリングバックを測定する場合、プレス成形したシートをどのように位置決めするか、または「取り付けるか」について細心の注意を払う必要があります。特に見込み補正の前に、パイロットやクランプによる拘束計画によってパネルを変形させず、またいかなる方法によってもシートのスプリングバックの自然な反応を妨げないことが重要です。スプリングバックを正しく測定しないと、スプリングバックの評価を誤り、さらには対策や見込み補正が不十分となるか、あるいは最悪の場合には不適切となります。そのため、境界条件を慎重に定義して分析し、プレス成形シミュレーションでスプリングバックを考慮する場合は、いつでも見込み補正の優良事例に従う必要があります。 ほとんどの重大パラメータは適用する標準から定義するべきで、エンジニアリング工程の初期段階から定義できます。 これらパラメータの大半は明確で、シミュレーションと現実の比較を容易に行うことができます。たとえば、正確なドロービード形状を把握するのは困難ですが、ドロービードの有無および位置については明らかです。また、それぞれのドロービードの拘束の大きさは、金型のトライアウト時に微調整します。他のパラメータはより敏感で、シートや金型サーフェスの粗さ、そして潤滑油のタイプといった物理的なパラメータを考慮しながら、ドロー型のスケールやトライボロジ・モデルのように、適用した標準を信頼すべきです。さらに、金型がスケーリングされているかどうは、測定には非常に重要な問題です。 まとめると、前述のこれらの値はすべて重大パラメータとして考慮しなければなりません。これらの特性はプロセス・シミュレーション・ソフトウェアの入力値として扱うだけではなく、この段階で適用している標準の理解と併せて考慮する必要があります。むしろ、現実の工程にも同様に適用できることを検証する必要があります。 次回の連載記事では、次段階の重要パラメータを取り上げ、金型のベアリング(管理面)、接触条件、適用したプロセス荷重を考慮した金型の閉動作に関する事例を検証します。 当社のブログにご登録いただき、本連載の他の記事をご一読いただけましたら幸いです。 - [プロセス・シミュレーションにて必須パラメータを重点的に設定すべき理由: AutoFormパレートの法則(パート2)](https://japanforming.com/autoformパレートの法則パート2/) - 正確度指標を成熟させるために最初にすべきこと AutoFormパレートの法則を活用してシミュレーションの正確度向上を図る連載の第2回では、AutoForm正確度指標のコンセプトに基づいたプレス成形シミュレーションの設定方法について説明し、AutoFormパレートの法則モデルが網羅するパラメータ群から、最初に必須プロセス・パラメータを検討します。 第1回の連載記事が示す通り、必須パラメータは、シミュレーションの最終結果における正確度の約80%を占めています。エンジニアリングの段階でプロセス・シミュレーションを実行して、トライアウトや生産で何が発生するかを予測することで、後段階においてコストのかかる試行錯誤や修正の作業を回避できます。正確なシミュレーションとは、実際の成形結果を正しく予測することです。正確度指標はオートフォーム社が考案したコンセプトで、あらゆるプレス成形ソフトウェアに適用してシミュレーションの正確度を判断することができます。分析的なプロセスによって、シミュレーションのインプットの品質をすべて確認して、高品質なシミュレーション・モデルを一貫して保証します。 図1:矛盾があると正確度指標が縮小します 図1の正確度指標をもとに、パラメータをインプット・グループごとに分類できます。 材料特性: 材料等級など基本的なパラメータで、対応する降伏、引張強度、r値、板厚などの特性を定義します。また代表的な材料モデルを適用して、材料挙動を適切に表現します。 トライボロジ・システム: 金型サーフェスとシートの滑りの相互作用を表現します。代表的な摩擦モデルを定義して、現実の物理的な挙動を再現します。 シミュレーション・パラメータ: 数値的または計算的な観点から、適切なパラメータ・セットを用意し、要素の定式やタイム・ステップ・コントロールに正しいアルゴリズムを使用して、検証するアプリケーションの特徴的な現象を適切に表現します。 工程パラメータ: 各工程における適切なブランクおよび部品の位置、ドロービードの定義、複数の工程で各種金型に適用する荷重などの要素があります。 形状: シミュレーションに適用したデータ・セットが、リリースされた最新の形状と一致しているか検証が必要です。この形状が現実に作成される物理的な形状となるため、金型の切削に使用するデータ・セットを取得することを最終目標とします。 金型動作: プレス成形工程、プレス・モーション、ランプアップ、ランプダウンだけでなく、カムの動作(カム角度など)も、すべて適切に表現する必要があります。 評価基準: シミュレーションと実験結果を評価します。流入、板減、スプリングバックなど、形状公差を検証する複数の基準があります。明確な基準値を定義および適用して、シミュレーション結果を適切に評価します。 ロバスト性: 工程精度または工程能力に相当します。成功を導くには、プロセス(つまりシミュレーション結果)がインプットのわずかな変動にも影響されないことを検証しなければなりません。何千個もの部品を生産するにあたり、すべてのブランクが常に適正な部品へプレス成形されることを保証することが、究極的な目標となります。単なるプロセス・ポイントではなく、プロセス・ウィンドウを検出しますが、これも正確な結果を得るには検証が必要となります。 AutoForm正確度指標は、実測とシミュレーション結果が一致しない根本原因を分析的に特定および分析するためのフレームワークとして活用します。不一致の原因をすばやく特定できるだけでなく、トライアウトを迅速に行い、以後のシミュレーション設定に改善をもたらすツールキットとして役立てることができます。 正確度指標の主な用途は金型トライアウトの検証ですが、パレートの法則はプレス成形のエンジニアリングの調整を目的としています。これらのコンセプトは、共通の基盤から構築され、同じ側面を有します。この連載で順に解説を進めてゆきます。 正確度指標の成熟 — 必須パラメータから着手します AutoFormパレートの法則(図2を参照)では、プレス成形プロセス・チェーンの構築時に必要な正確度を達成するのが最善であるという見解が示されています。前回の連載記事では、プロセス全体の正確度の80%を占める必須パラメータのグループを特定しました。この必須パラメータがシミュレーションの基礎となり、適切に定義することで正確度の高いシミュレーション結果を得ることができます。 図2: AutoFormパレートの法則は、シミュレーションのインプットから正確度の成熟を示します AutoFormパレートの法則を活用してあらかじめ以下の必須パラメータを確保し、追加のパラメータをさらに検討することで、結果の正確度を高めることができます。 工程順: 最初に考慮すべき必須パラメータです。すべての工程は工程計画に従ってシミュレーションしなければなりません。工程ユニットを別の工程に移動すると、結果が劇的に変わってしまいます。以降のすべてのステップに影響するため、プレス成形、トリム、成形などはすべて正しい順序で考慮し、実際に発生する事象をそれぞれ個別に表現する必要があります。そのため、まず初めに確認すべき重要なパラメータは、明確に定義されている工程順です。 金型動作: シングル・アクション・ドロー、プレス・ストローク、プレス成形中の金型支持などの基本動作から、2次成形金型(特にカムやフィラー・カム)の移動量といった特殊な動作まで考慮します。 シミュレーションの対象となるのは、実際に構築できる動作のみです。このような特殊金型に適正な荷重を適用できるか、そして同じ動作を実際の現場に適用できるか、確認する必要があります。そしてこれは早期段階で検証すべきです。 金型形状: 開発プロセスを通じて、常に最新の形状がシミュレーションに適用されていることを確認するため、必須パラメータとして扱います。これはプレス成形および生産を目的とした形状であるため、使用している形状データが適切であるか常にダブルチェックしてください。多くの場合、エンジニアリングと構築した状態に不一致が生じる原因となりえます。 材料特性: 板厚やブランク形状などの材料特性を定義し、選択した材料等級が適正であることを確認します。ブランク形状は、エンジニアリング・プロセスのインプットであり、結果でもあります。部品コストを抑制するには、ブランク形状を厳密に管理しなければなりません。ブランク形状(あるいはブランクのネスティング)を評価し、材料使用量を最適化する必要があります。 数値計算設定: 数値計算上の設定検討は程々にすべきです。「最終検証(FV)」設定を適用することで、エンジニアリングそのものに集中できるようになります。工程の動作や工程自体がまだ適切に定義されていない中で、4桁目や5桁目といった些末な数値に囚われて、大局を見誤らないことが重要です。 工程順、金型動作、金型形状、そしてブランク板厚や形状などの材料特性に加えて、適切な数値を設定したら、これがエンジニアリングの作業を継続するための基盤となります。 この段階で、プロセス・シミュレーションの成形性は、部品にわれや重大なしわが全くない「グリーン」の結果でなければなりません。同時に、材料のストレッチも確保する必要があります。 必須プロセス・パラメータを通じて、プロセス・シミュレーション全体が網羅されていることがわかります。そしてすでに非常に高い正確度を達成するための基盤が確立しているため、エンジニアリングした通りに実際の部品をプレス成形することができます。 エンジニアリング・プロセスの早期段階で、必須パラメータをできる限り適切かつ正確に定義する必要があると認識することが重要です。これらのパラメータは、必然的に、あらゆるシミュレーションの基礎を成す開始条件となります。またシミュレーションと実測を明快かつ簡単に比較することもできます。シミュレーションの定義をプレス成形プロセスへすぐに伝達することができ、また、実際のパラメータも簡単に測定または特定できます。たとえばブランク形状の場合、エンジニアリングで使用したブランクと実際のブランクが同じであるか、非常に簡単に判断できます。 分析的で矛盾がない正確なシミュレーションの設定が行えるように、AutoFormパレートの法則に基づいた「ガイドライン」機能がAutoFormに搭載されました。プロセスを効率的に定義するために、まずプレス成形プロセスのコンセプト上のフィージビリティから開始して、すべての必須パラメータを網羅します。AutoFormソフトウェアのガイドラインに従い、プレス成形プロセス全体の実効性と有効性を適切な順序で検討することで、正確度指標の拡大を促します。 効率的なプロセスの定義は、ガイドラインの「コンセプト上のプレス成形プロセスのフィージビリティ」から開始し、次に「「プレス成形プロセス全体のフィージビリティ」、「プレス成形プロセス全体の検証」と進めます。この最後のガイドラインは、最終的なシミュレーションの設定に特化したもので、以後の金型トライアウトを表しています。AutoFormのガイドラインは、プレス成形プロセス・チェーンをサポートし、AutoFormパレートの法則を分析的に活用しながら、シミュレーションの正確度を高めてゆきます。 次回の連載記事では、重大パラメータに注目し、検証を行います。本稿にご興味をお持ちいただけたら、ぜひ当社のブログにご登録ください。また本連載記事の続きをご一読いただけましたら幸いです。 - [新たな進展: プレス成形シミュレーションにAutoFormパレートの法則を導入(パート1)](https://japanforming.com/autoformパレートの法則導入part1/) - きわめて正確なプロセス・シミュレーションを導く進路が示されます オートフォーム社が導入したパレートの法則は、プレス成形シミュレーションの飛躍的な正確度向上の実現に向けて、業界の意識改革を促進するものです。このバート・カーレア博士(オートフォーム社テクニカル・ディレクタ)による連載記事では、プレス成形シミュレーションに導入されたAutoFormパレートの法則について紹介します。この法則をご理解いただくことで、プレス成形シミュレーションの正確度を効率的に高めることができます。 シミュレーションにおけるパレートの法則 パレートの法則では「80%の結果は20%の原因から生じる」と明言されています。経営コンサルタントのジョセフ・M・ジュランが、品質管理および品質改善の分野にこの法則を適用しました。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートに因んで命名されたこの80:20の法則は、パレート分布とも呼ばれ、数学的にはベキ分布で表します。このベキ分布はパラメータ群に対して有効であるため、部品のプレス成形シミュレーションの設定にも適用できることは、想像に難くないでしょう。事実、数多くの自然現象がこの法則に準じていることが証明されています。 たとえばコンピュータ・サイエンスでは、パレートの法則は最適化に応用することができます。かつてマイクロソフト社では、報告されたシステム不具合の上位20%は、関連するエラーやクラッシュが発生する原因の80%を占めていることに着目しました。この上位20%の不具合をすべて修正すると、80%のエラーが解消したのです。このようにマイクロソフト社は、顕著な不具合を先に解消すべきことを学びました。 AutoFormパレートの法則の図表が示す通り、この法則はシミュレーションの正確度向上にも適用できます。最初に、正確なシミュレーション結果を得る上で不可欠な必須のインプット・パラメータ(シミュレーション結果に最も寄与するパラメータ)を特定します。そしてこれらの必須パラメータを集中的に定義して、検証を行います。すると金型製造現場における「未来の現実」の80%を表すシミュレーションの基礎が形成されます。 図1: シミュレーションのインプット・パラメータとシミュレーション結果に対する影響 すべての必須パラメータをコントロールできるようにすることが、正確なシミュレーション結果を得るための基盤となります。そしてパレートの法則に準じて、次のパラメータ群の検討を始めます。 このインプット・パラメータのグループは、重大パラメータと呼ばれるもので、全体の正確度には貢献しますが、最初のグループである必須パラメータほどの大きな影響はありません。優先順位を理解した上で、後続のパラメータを積み上げていくことで、シミュレーションの精度を高めていくことができます。しかし、優先順位を考慮する中で、最終的な正確度にほとんど貢献しないパラメータも見極めなければなりません。結局のところ、シミュレーション結果に大きく寄与するパラメータが確定せず、検証もされなければ、影響がほとんどない部分の微調整に時間を割くことに意味はありません。また、影響が大きい部分を無視して後回しにすることも、正確度指標のコンセプトに相反します。 つまりAutoFormパレートの法則は、さまざまなパラメータがシミュレーション結果にあたえる影響を見極める指針となるだけでなく、重要度の高いインプット・パラメータから低いものへと順を追って作業を進める、エンジニアリング・ベースのモデル構築プロセスを提案します。このように、この法則は一貫性のある正確なシミュレーション・モデルの分析的な構築を促進します。 AutoFormパレートの法則をプロセスおよびシミュレーションの成熟度に適用 フィージビリティの検討やプロセス・デザインの初期段階では、「既知」と「未知」の両方が存在します。開発チェーンの中で、部品パラメータは徐々に具体化され、定義されていくため、プロセスの成熟度と併せてシミュレーションの成熟度も高まるという観点から、パレートの法則では部品パラメータも検討します。 パレートの法則を図表化すると,エンジニアリング・パラメータのデータ入力は、4つのグループに分類されます。特に必須パラメータ、重大パラメータ、重要パラメータ、詳細パラメータは、正しい順番で入力しなければなりません。パレートの法則の基礎的な考え方では、わずか20%のパラメータ(必須パラメータに分類)がシミュレーション全体の正確度の約80%に貢献します。さらにパレートの法則では、後続のパラメータも全体の正確度に貢献しますが、全体的な正確度に対する貢献の度合いは低くなります。 重要度が高いパラメータが未検証の状態では、重要度が低いパラメータに多くの時間を費やすことが無意味であることも示しています。 これをプレス成形プロセスの開発チェーンに組み込むと、正確度の性質を検討する上で、複数の(代表的な)マイルストーンを明確に特定することができます。 特に初期の段階では、テーマの選択が達成目標となります。ここでは、基本的なスタイリングと初期のCAD形状のみが明らかです。そのため主に部品の形状と機能を検討します。詳細なプロセスの定義が存在しないため、部品のフィージビリティを中心にエンジニアリングを行います。 初期のマイルストーンは、部品設計のフリーズとなります。この段階のエンジニアリングでは、部品のフィージビリティのみならず、部品の製造可能性やプロセスのフィージビリティについて、より重点的に検討を重ねます。材料の仕様などの詳細を追加し、プレス機の選定やプレス工場の決定を行います。部品製造に必要な工程数を決定し、工程に工程ユニットを割り当てます。 金型設計および3Dモデルの構築は同時に行います。金型の外観を決定すると、3D金型設計データが完成します。シミュレーションの設定では、金型に作用する荷重を考慮します。 次の重要なマイルストーンは、切削へのデータリリースです。この時点では、すべての製造データが決定されていなければなりません。成形およびプレス成形のプロセスをすべて定義し、検証を完了してから、データをリリースします。ここで、仮想世界から現実世界に移行して、金型製造が開始します。 最後になりますが、今まで行ってきたエンジニアリングの良し悪しがはっきりわかるのは、金型トライアウトの段階であり、数ヶ月前に決定したエンジニアリング・コンセプトの成果を確認することになります。エンジニアリングした通りに現場が進んでいることが確認できれば、それはシステム全体が機能しているということです。 このように、パレートの法則のレンズを通して見ると、この開発チェーンの中で、より多くの部分が次々と具体化および定義され、プロセスの定義に反映されてゆくことがわかります。プロセスの定義を成熟させることは、シミュレーション・モデルを成熟させることと同等の関係にあります。シミュレーションに裏付けされた意思決定が行われるにつれてプロセスの成熟が進み、未来の現実がより正確にシミュレーションに反映されるようになり、すなわち正確度がより一層高まります。そして現場の結果がシミュレーション結果と一致したときに、究極の正確度に到達します。 プロセス・チェーンの意味するところは、エンジニアリングされた仮想のプロセスを、現実のプロセスにて忠実に再現することにあります。金型トライアウトおよび部品製造を円滑に行うために、エンジニアリングに労力を捧げるのです。 パレートの法則を図表化することで、把握している情報から正確な結果を得るために何をすべきかが明確になります。初期段階では把握できる情報がほとんどありませんが、そのような状況でも、その時点での「最善」を実現することが求められます。デジタル開発のあらゆる段階において、その状況に応じた「最善」が求められるのです。この連載では、この点について詳細に説明していきます。 プロセス・チェーンに沿ったある時点において、どれだけのデータが利用できるかを考慮しなければなりません。何を把握でき、何がすでに定義されていて、今後どのような意思決定を行うのでしょうか。この時点では、どのような前提条件を設定しなければならないのでしょうか。また、成熟している正確度において、どのレベルにどの部分が貢献するかも、パレートの法則は明らかに示しています。初期段階では、詳細にこだわることに意味はなく、最終的に、全体の正確度にはほとんど貢献しません。パレートの法則の図表から、そのような詳細は全体の正確度に5%しか寄与しないことがわかります。また細部にこだわることで全体像が見えなくなり、集中力や時間、お金、労力のロスにつながることもあります。 それと同時に、前提条件の設定やモデル化の際には、シミュレーションに適用するすべての定義が現実に変換できるようにしなければなりません。目指すべき目標は、抽象的な数値を作成することではなく、後段階の現実世界、つまり金型製造工場において、現実のモデル・ツインを作成することです。 本稿のポイントは、プレス成形プロセス・チェーンに沿って(最大の)正確性を目指すということです。そして、以下の点を考慮することが重要です。 各時点におけるプロセス・データの利用可能性 どの入力値が最終結果の正確度にどの程度貢献するか 入力値の定義の論理的な順序 - 必須(最初)から詳細(最後)まで シミュレーション・モデルの定義をどのように現実に変換できるか 次回以降の連載では、AutoFormパレートの法則の適用について、さらに詳細に検討していきます。次回もお楽しみに。 - [ガイドラインと標準 ~ロバストな入力と情報展開~](https://japanforming.com/ロバストな入力と情報展/) - 【はじめに】 近年、ロバスト管理の重要性が問われ、金型設計や製作過程において、安全かつ安定が求められています。それにより、日程遵守や高品質の保証並びにコストセーブへと繋がることが期待されています。オートフォームにおいても、Robust Engineering Model (以下REM):ロバストなエンジニアリングモデルを提唱し、図1のような“シームレスなデジタル化”、“シミュレーションにおけるAutoFormパレートの法則”、“AutoFormの正確度指標”を運用し、ロバストなプレス加工の方法を実現しつつ、製造中に発生する加工バラツキを考慮し、量産時の不具合を効率的にデジタル空間上で予測する事を可能にしています。(REMの詳細は弊社へお問い合わせください。) シームレス・デジタル化 パレート・チャート 正確度指数 図1 REMを実現するために、シミュレーションの設定において、ベテラン若手関係なく、ミスなく運用することが重要です。この設定は、同時に金型設計や製作にも十分活用できます。そこで、この内容を簡易にサポートできる、弊社ソフトの機能として“ガイドライン“と”標準“を紹介します。 【ガイドライン】 ワークフローの管理ツール、作業の透明性・一貫性を可視化。図2のようなチェックリストとしても運用できます。 図2. ステージ事に定義されたチェック項目の一例 設定作業のサポート:設定する項目の選定 (任意の設計検討イベントで必須な確認項目の抽出) 設定と同時に設定漏れ防止:入力したか否か、入力した情報は正しいか否かなど カスタマイズ:用途/目的に応じて設定を任意に変更/追加/削除 運用紹介 あらかじめ準備されたガイドラインファイルを任意のシミュレーションに定義。 たとえばSE業務、見込み形状検討、NC加工データの最終確認もしくは、お客様の設計検討イベントに合わせたガイドライン並びにカスタマイズへ対応します。 これにより、シミュレーション結果を、随時同じ情報として共有し、安心して他部署や技術者間で展開/活用する事が可能になります。 【標準】 シミュレーションを実施するにあたり、前処理と結果解析用の2種類を標準設定。 設定作業のサポート:設定する任意の項目を固定設定 (要素タイプ・評価基準・工法の種類 等) 設定漏れ防止:任意の項目をデフォルトに。On/Offの選定可 カスタマイズ:目的や用途に応じて既存の設定項目を任意に変更 目的や用途により使い分け:誤解や誤入力の防止、無駄なシミュレーション解析や誤レポートの防止。 運用紹介 あらかじめ準備された図3にある標準ファイルを任意のシミュレーションに設定 。もしくは、あらかじめデフォルトで任意の標準ファイルをAutoForm上に組み込んでおく。 図3. 標準の選定/設定 具体的に標準化できる変数の例を以下に示します。 デザイン:データインポート時の要素条件、摩擦係数、荷重タイプなど コントロール・パラメータ:シートの要素タイプ、結果の選定、結果の出力条件 など Sigma:任意のAutoForm-Sigma変数の選定、組合せ、数値(幅)の定義 など 評価:結果変数(下記参照)、お客様用の準備 ・仕様限界:ライブ・チェック(不具合の自動検出)時に参照される上限、下限値を定義 ・連続スケール:スケール・タイプ:連続での評価時のカラー・スケールを定義 ・判断基準スケール:スケール・タイプ:判断基準での評価の判断しきい値を定義 ・デフォルト・スケール:定義したスケール・タイプの最小/最大タイプ、値を定義 標準を設定している場合、誰もが判るように、図4のようなドットが表示されます。 図4. 標準の設定項目一例 【おわりに】 今回はシミュレーション解析もロバスト性が必要になることを示し、金型設計に標準・規格があるように、ロバストな設定と運用を実現する“ガイドラインと標準”の利用方法について紹介しました。 これらによって必要な情報の誤入力、誤解釈、誤運用は、間違った情報を他部署や後工程の検討へ共有してしまうことが防げるとともに、シミュレーションと実機の結果の一致度が向上します。そしてさらに実加工における加工バラツキまでも考慮した分析が実施可能になります。 多くの作業者や部署が関わり、多くの情報が飛び交う中、少しでもロバストな情報を間違いなく発信する為に、今回の運用法が有効となります。これらはオートフォームの掲げるREMの基本的な取り組みであり、シミュレーションによる検討のフロントローディングの実現によって金型設計~生産までのコスト削減に繋がることが期待されています。 - [韓国SDM社が見込み補正モデルで作業スピード200%アップを達成](https://japanforming.com/見込み補正モデルで作業スピードアップ/) - AutoFormの活用を通じたプレス成形解析チームの作業効率化 SDM社のプレス成形解析チームは、2009年からAutoFormを活用しており、熟達したマスター・レベルのユーザーによる主導のもと、見込み補正モデルの作業時間200%短縮を達成しました。本稿では、高い競争力を誇る企業が、シミュレーション・ツールを活用して金型製造の寸法精度を高め、トライアウトの時間短縮を実現した事例をご紹介します。 SDM社は国内のプレス加工会社との競合において、着実に競争入札を勝ち取ることで知られています。また先日韓国で行われたロバスト性解析の研究発表からも明らかなように、同社はAutoFormにも精通しています。オートフォーム社はSDM社と良好な関係を築いていることから、昨年新たに導入されたAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの活用現場を視察訪問しました。 SDM社プレス成形解析チームのリーダーを務める コン・ドンジン氏は、次のように説明してくれました。「CATIAで作業していた当時は、1週間に10個の部品しか対応できませんでした。しかしAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを導入してから、いまでは20個の部品に対応できるようになりました。作業スピードは、文字通り、倍増したのです。すべての金型タイプでプレス成形プロセス全体のシミュレーションを行うことができ、工程解析モデルが必要な順送金型、タンデム、トランスファ型などにも対応しています。CATIAでは時間を要していた作業でも、この新たな効率化で時間と工数を半減できます。また別の点として、解析が工程ごとに実行可能であることや、ドロー・シェル機能のおかげもあり、(フリー・スプリングバックのみが考慮された以前とは異なり) スプリングバック見込み補正の精度が非常に高いことにも満足しています」。 工程全体がCADベースとなり、3Dレイアウトを扱えるようになったことで、関連するモデルをCATIAとリンクさせることができるようになり、作業が格段に簡単になりました。「当初はこのソフトウェアをプロセス・エンジニアリング(フローチャート)を検証するために購入したのですが、見込み補正のモデリングにも活用できることや、初期のシミュレーションに役立つこともわかり、大きなメリットを感じています。またサーフェスのモデルでも、「品質確認」機能を活用することで、機械加工を円滑に行えるようになりました」とコン氏は語ります。 「ぜひお伝えしたいことがあります。コンペンセータ機能によってスプリングバック見込み補正の品質が格段に向上しました。CMMの初期スコアにおけるPIST(公差内のポイント)は、平均で80ポイント以上、最大で90~100ポイントを達成しています。ドロー・シェル、スプリングバック解析および見込み補正を含む、見込み補正の結果を成形工程に適用すると、これら3つの工程が完了した時点で、加工データが完成します」。 SDM社で見込み補正を行った材料には、軽量化を重視した 海外のハイエンドのスポーツカーにも採用された板厚2.5mm超のアルミニウムがあります。他にもピックアップ・トラックのサイド・メンバーのリヤ・プレートに使用する3.6mmのアルミニウムなどもあります。コン氏によると、顧客の要件に応じて、SDM社のほぼすべての製品にスプリングバック見込み補正を行っています。 AutoForm導入後の変化について、コン氏は以下のように述べています。「デジタル・エンジニアリングをより重視するようになるにつれ、トライアウトに必要とされる人数が減ってきています。かつては、工場の作業員に多くの負担がかかっていましたが、いまでは、ソフトウェアに大きく依存しています。現場で問題が生じると、まず解析チームに調査を依頼し、そこで提示された解決策をもとに、トライアウトを行います。シミュレーションの良好な結果が、エンジニアリングの基礎を成すのです」。さらには「思い返せば、手作業で行っていたトライアウト工程の多くを、まず標準化しました。近頃は現場作業員の研修まで、AutoFormをベースに行っています」とコン氏は説明を続けます。 またコン氏の説明によると、韓国の部品製造現場では、今でも多くの工場が時代遅れのノウハウと肉体労働に大きく依存しています。しかし、部品や金型の精緻化に応じて成形性がより複雑になる中、プレス成形解析の重要性は飛躍的に高まっています。このため、韓国の産業界においても、成形性解析の活用が今後ますます広まると予見されます。 SDM株式会社 (www.toolmaker.co.kr)は、2001年に韓国の光州で創業し、現在100名を超える従業員を擁しています。金型メーカーとして、鋳造や鋼材の順送金型、ライン型、トランスファ型など、さまざまな製品を提供しています。顧客には、現代自動車、起亜自動車、GM、フォード、マグナ、フォルクスワーゲン、プロトン、トヨタ、SGM、JAC、ウチダなど各社が名を連ねます。詳細はSMD株式会社のウェブサイトをご確認ください。 - [部品フィージビリティの検討中にスプリングバックを早期評価](https://japanforming.com/検討中のスプリングバック早期評価/) - スプリングバックの解析および設定を通じたロバストな生産の実現 スプリングバック見込み補正は、通常、プレス成形シミュレーションの最終工程で行い、その多くは経験による知識をベースに対応しています。初期段階では、製品のフィージビリティ、余肉のフィージビリティ、そしてビード、ブランク、トリムラインの最適化を重点的に検討します。スプリングバックも考慮しますが、詳細に検討することはありません。自重などの拘束は考慮せず、自然発生的なスプリングバックのみを算出します。 スプリングバック見込み補正によっては、その修正が製品開発に影響を及ぼす場合があり、時には、製品データにまで影響します。シミュレーション・サイクルの後期段階でスプリングバック見込み補正を行うと、金型作成の遅延によるコストの急騰が懸念されるため、実施のタイミングは重要です。また開発の後期段階でも修正はできますが、品質不具合を完全に解消できる可能性は低くなります。早期段階からスプリングバックを徹底的に評価して、プロセス・ウィンドウを確認することで、このリスクを緩和できます。 より正確な材料情報を適用したシミュレーション 材料を正確に把握することは、正確なシミュレーションを行うための大前提となります。材料の定義があいまいだと、実際の金型には存在しない不具合を過少/過剰評価することになりかねません。実際の引張試験から材料ファイルを作成することが最善ではありますが、開発の早期段階では、通常、材料試験を実施することはできません。そのため、別のプロジェクトで使用した同一材料の試験から作成した材料ファイル、材料供給元が提供する材料特性、またはOEMが提供している材料特性などを代替として使用します。 スプリングバックの測定に有効なメッシュおよびコントロール・パラメータ スプリングバックを評価する際には、シートとダイフェースの両方をできる限り正確に表現すべきですが、開発段階や求められる精度に応じて、複数の手法から選択することができます。しかし、AutoFormの最終検証(FV)またはコンセプト評価プラス(CE+)の設定で行うスプリングバック評価では、シートと金型メッシュに互換性があること、そして適切な要素タイプを選択することが求められます。またガイドラインを活用して設定の精度を確認することもできます。しかし本稿では、特に早期段階での評価について説明します。工程の成熟度に応じて、評価方法も異なることにご留意ください。早期段階の最終目標は100%の精度を確保することではなく、スピード、精度、使いやすさに注目します。このように高度なテーマを早期から検討することで、工程実現性をより深く検討できるようになり、さらなる改善が可能になります。 生産計画を再現した部品のシミュレーション 一般的に初期のシミュレーション作業は、金型設計のデータが利用できる状態になる前に実施しますが、良好な工程計画を適用すれば、正確なシミュレーションを作成することができます。これには、工程計画、金型設計、金型トライアウトの担当部署との協力が不可欠です。 ドロー型の場合、金型でクリアランスとバインダのギャップをどのように管理するか理解する必要があります。ブランクホルダにスペーサーがある場合、ギャップ制御型のバインダが最適となります。コントローラとしてスペーサーを追加し、バインダ上で材料の移動を可能にします。金型トライアウトでスペーサーを使用しない場合は、荷重制御バインダと適切な金型剛性値を使います。トン数を増やして金型が閉じた状態を維持することが、金型に必要な荷重を検討するための開始点となります。 2次金型については、金型設計がすべて完了するまで、詳細は把握できません。 AutoForm-DieDesignerを活用して、 金型設計およびトライアウトのベスト・プラクティスをベースに、最終設計に近いトリム型やフランジ金型を作成します。また、シートと接触する金型サーフェスのモデルは、シミュレーションで実際の金型が反映されるように追加的に検討します。これに関連する分野には、次のようなものがあります。1. 曲げラインおよびトリムライン付近のパッドの接触。2. トライアウト前に調整され、シートと接触せずに成形に関与しない半径。3. コスト削減のために実際の金型から抜かれる形状領域。これらすべての要素を管理して、シミュレーションの設定および意匠をより実際の金型に近く表現します。この考え方を以下に示します。図1および図2では、前の工程で成形済みであるため金型に必要ない半径を取り除いています。 図1: シミュレーション金型に定義され本来接触しないサーフェスが存在 図2: 本来接触しないサーフェスを取り除いたもの 次にトリム工程について説明します。すべての2次工程のトリムおよび成形工程で、位置決め/自重および工程の最後のフリー・スプリングバックを有効にして、金型でカットを使用することで、より正確な結果が算出されます。位置決めは、工程における各金型の位置にて、前の工程で蓄積された応力を解放します。金型でカットを使い、パネルが載る金型を作成できますが、自重および現実的なパッドの設定を考慮しながら、トリム前にシートを保持して応力を解放することが可能です。そしてトリム・ポストにネスティングされたパネルを、実際の金型と同様により正確に表現することができます。このように様々な設定を活用することで、事前に工程に関する懸念点を確認でき、素早く対応することができます。 安全な「グリーン」のシミュレーションの構築 工程が確立したら、安全な「グリーン」のシミュレーションを構築します。シミュレーションの開始前に動作確認を行い、金型の干渉がなく、一般的なトライアウトや生産の条件に応じて、金型の移動が最適化されていることを確認します。スプリングバックの評価を行う前に、成形に関する不具合(重大なしわやわれなど)を解消し、ソルバーの収束に関する不具合に対応しなければなりません。 スプリングバックの解析と測定の設定に関する諸注意 各工程後にスプリングバックを評価し、後続の工程でドロー・シェル見込み補正を行います。こうすることで、次のパネルに合わせて金型の見込み補正ができ、パッドの閉動作からパネルに不都合な変形を回避できます。最終のパネルが意図した部品形状と一致するように、トリムの最適化も考慮すべきです。また、トリムラインが正確であれば、開発とブランクを最適化できるため、コスト削減を導くことができます。 スプリングバック・ステップで実測を使用すると、GD&T(幾何公差)や社内のベスト・プラクティスに基づいた測定治具とマッチさせることができます。治具のコンセプトやGD&Tに関する要件がない場合、最少クランプ・コンセプトで解析の一貫性を確認します。毎回の見込み補正を同一の方法で実施するために、信頼のおける測定および見込み補正計画に従うことを推奨します。まずは社内のベスト・プラクティスを確立させ、次にエンジニアリング部署ではAutoFormガイドラインを活用して、推奨される手順で見込み補正を行うことを徹底します。 工程およびスプリングバックの測定が確立したら、最後にAutoForm-Sigmaでロバスト性を確認します。ロバスト性解析で加工ばらつきの影響を検討し、プロセス・ポイントだけでなく、プロセス・ウィンドウ全体を確認します。AutoFormには、あらかじめ用意されている標準から、潤滑剤、ブランクの配置、ブランクの板厚、材料特性の変動幅が自動的に設定されます。AutoForm-Sigmaは数百の調整可能なばらつきを提供するので、自社に適したばらつきを選択しなければなりません。AutoForm-Sigmaでロバスト性解析の実行後、自社で検討したばらつき全体のそれぞれの評価結果を検討することができます。 見込み補正において、工程を評価するために最適な2つのツールは、CpとCpkです。Cpは工程の再現性の度合いを評価し、Cpkは目標とする結果(基準)に対する工程の再現性を表します。これらから、スプリングバックの見込み補正を行う上で、工程の一貫性と再現性が十分に確保できているかを確認できます。Cpからシミュレーション結果に大きなばらつきが特定されたら、パネルの見込み補正で問題が生じる可能性があります。シミュレーションのCpk値が良好でなくても、Cpから工程の再現性を確認できれば、見込み補正は実行できることがわかります。図3は、工程能力の例を示しています。シングル・ポイントと全体的な予想範囲を、許容されるプロセス・ウィンドウと相対的に比較しています。 図3:工程能力 プレス成形シミュレーションを最適化することで、部品の初期スプリングバック確認を安全に評価できます。この早期段階の確認によって、スプリングバック評価に応じて、製品およびダイフェースの開発をすばやく修正できます。早期段階におけるシミュレーション工程の修正は、金型の加工後よりも、より容易かつ安価に行うことができます。納期の短縮や利幅の縮小が進む中、問題を早期に解決することで、製品発表がよりスムーズになり、その結果、より高い利益を確保することが可能となります。 - [【他にないユニークさ】50%以上工数削減可能な抜き刃基面作成手法](https://japanforming.com/50以上工数削減が可能な抜き刃基面作成/) - はじめに 近年、デジタル変革の流れの中で「デジタル・ツイン」という言葉を耳にすることが多くなりました。「デジタル・ツイン」とは、主に製造業界において、仮想世界から現実世界への連携を可能にする概念です。プレス成形業界においても、市場投入までの時間とコストを削減して可能な限り最高の品質を達成することに重点を置くようになり、フルデジタルツインの理想は、そのような目標を可能にする1つの方法だと思われます。オートフォームはその必要性を常に考えて、製品設計、生産計画、プロセス・エンジニアリング、そして、金型・設備の製造、製品量産まで、仮想世界からシミュレーションの意図に沿った設計を、生産可能な現実世界への実現をサポートしています。 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAはCATIAに完全統合したアドオンのモジュールで、フルデジタルツインを実現するために、重要な役割を果たしています。図1のように金型設計に必要なタスクである絞り工程のダイフェース作成や、2次加工の抜き刃または曲げ刃の定義や作成、そして、スプリングバック見込み補正およびNC加工に必要な準備、たとえば逃がし、フィレットのクリアランス、実ビードの作成などを支援し、金型設計のワークフローにおいて、上流から下流まで各関連部署のタスクを全面的に対応しております。 図1.上流から下流まで部署を跨るタスクを全面的に対応するソリューション 本稿では、NC準備の領域におけるR9版にて新しく開発されたユニークな「抜き刃基面作成」機能に注目し、ご紹介します。 抜き刃基面作成機能の開発背景 プレス金型設計の世界では、精度と品質を向上させながら、ダイエンジニアリングやCAE部門で実現可能なコンセプトをより低コスト、かつ高速にNC加工に必要なすべてのサーフェスとカーブを含むCADベースのプロセスに変換するという課題があります。金型構造設計部署においても、同じような課題に直面しています。特に、抜き刃の作成において、図2のように、現在の技術では、スクラップの落下と金型に付着を予測することが困難であり、抜き刃のエントリーや接触など工具動作の成立性を検討する際、経験値に基づいて、厳しい時間制約のある中に、NC部署との頻繁なやり取りを繰り返して、試行錯誤されているお客様が多いと思われます。 図2.スクラップの落下&付着が予測困難 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAは、デジタル・ツインの概念に基づいて、各関係部署間の連携をより円滑に、お客様が苦労されている業務に有効なソリューションを提供しています。特に、抜き工程において、非常に工数のかかる抜き刃基面の角度作成作業及び、シャー角と食い込み量の定義を同時に柔軟かつ簡単に作成できるような着想に基づいた、これまでにないユニークな「抜き刃基面作成」機能を開発しました。 抜き刃基面作成の概要 抜き刃の作成の考え方はお客様によって若干異なりますが、一般的に、パネルの状況やトリム角度を評価しながら、パネル面から少し逃がす角度を付け、食い込みを含めた基面サーフェスを作成します。作成後、逃がし面を作成し、抜き刃の基面とともに、鋳物のソリッド構造に織り込まれ、最終形となります。AutoForm-ProcessDesignerForCATIAの新機能は図3のように、その基面作成に役に立ちます。基面作成後、既存の面作成機能群、たとえば余肉エディタなどを利用し逃がし面を迅速に作成できます。基面について、刃面、底面、上面等さまざまな呼び方がありますが、本稿では基面として説明します。 図3.抜き刃の基面作成 基面作成の考え方 抜き刃の基面作成において、2つ重要なパラメータがございます。1つ目は、断面で示したように、トリムする際、パネルを変形させず、切りやすいようにトリム刃の底面に角度をつけます。また、鈍角にならないように角度を付ける場合もあります。2つ目は、抜き加工力の軽減・減音策として、シャー角を付ける場合があります。いわゆる異なる食い込み量の定義です。(図4) 図4.基面作成の考え方 本機能では、平面に対する一定の角度でサーフェスを新規作成するのではなく、事前に用意したサーフェス、たとえばパネルの一部を抽出したサーフェスに対して、柔軟に逃がす角度をつける面変形機能になりますので、図5に示すように、複雑なパネル形状の干渉も対応可能です。 図5.現状よくある課題の解決策 操作方法は直感的で簡単です。変形したいサーフェスを事前に準備し、抜き線、そして抜き方向を定義した後、逃がしたい角度と食い込みの高さを定義することで、迅速にサーフェスを変形できます。制御点を追加することで徐変制御が出来ます。各制御点において、角度や高さを同時に定義することができるので、お客様のニーズに柔軟な対応が可能です。 底面作成後に、さまざまな分析機能で作成結果を直感的に評価することができます。たとえば、「トリムサーフェス分析」のアニメーションでトリム刃の接触状況を3次元上で確認ができ、また、「トリムカーブ分析」のアニメーションを用いて異なるタイミングのトリム状況を視覚的に確認できます。従来のような平行移動しながら抜き刃の接触状況を確認する作業は不要となります。 顧客事例 実際にお客様のBSO(サイドパネル)における抜き刃作成のベンチマークを実施しました。その結果、42個の鋼材にかかる作成工数は、通常工数の21時間に対して、本機能を利用することで7時間までに下がり、全体の1/3になり、大幅な工数削減効果(67%)を実証できました。 図6.BSOにおけるベンチマークの結果 まとめ プレス成形領域における仮想世界と現実世界との連携の重要性が高まり、1つの統合システムの中において切削可能な面品質を確保しつつ、大幅な工数削減が求められています。AutoForm-ProcessDesignerForCATIAは、デジタル・ツインの概念に基づいて、エンジニアリングプロセスに付加価値を与える、新しい独自の機能を開発してまいりました。「抜き刃基面作成機能」の開発によって、金型構造設計部署とNC準備部署間の円滑なコミュニケーションを促進し、シームレスなワークフローを実現でき、多くのお客様が苦労されている抜き刃作成分野にも大幅な工数削減効果が期待できます。 また、本稿では、抜き刃の作成に注目していますが、その他にも数多くプレス成形金型設計に特化したユニークな機能群を開発しています。AutoForm-ProcessDesignerForCATIAは単なるCADソフトウェアプログラムではなく、オートフォームのCAEシミュレーション・ソリューションと緊密に連携し、一貫かつ透明性のあるデータ交換により、複数のシステムを跨ぐ作業フローに比べ大幅な工数低減が可能になり、シームレスフローを実現できます。 AutoForm-ProcessDesignerForCATIAを用いて、50%以上の工数削減を達成できる事例が豊富にあります。オートフォームは今後も、より日本のお客様のニーズに応え、現場の方々の声を反映したソリューション開発を続け、プレス成形におけるデジタル・ツインの実現を支援します。 - [天運に頼らない、適正な材料カードの選択](https://japanforming.com/天運に頼らない、適正な材料カードの選択/) - 部品のプレス成形シミュレーションにおける適正な材料カードの選択については、いまだに課題が山積しています シミュレーション・エンジニアの多くは、いまだに誤った材料カードを使い続けています。材料カードを選択する際の心構えと課題について、オートフォーム社テクニカル・プロダクト・マネージャーのアンディ・ウォーカーが概説します。本稿では、プレス成形シミュレーションの材料カードを選択するにあたり、宝くじに当たるような天運頼みではなく、適正な材料カードを確実に適用するために必要な取り組みを紹介します。 筆者が寄稿した前回の記事では、多くの場合、シミュレーションに適用している材料カードが不適当であり、それが結果精度に作用していることを説明しました。 適正な材料カードを選択するために必須となる条件があります。 それは、正しい知識を有すること、これにすべてが集約されます.... これまで4年間にわたり(アルミに関しては、さらに以前から)、世界各国のAutoFormユーザーやポテンシャル・ユーザーを対象に、材料理論全般に関するトレーニングを開講してきました。実験による特性評価や材料理論(例えば、材料特有の記号など)から、有意義な材料カードの作成方法まで、幅広いテーマを扱っています。そしてこれら一連のトレーニングを通じて、受講者を企業の規模に応じた2つのグループに大別できることに気がつきました。 一方を「理解しない」グループ、そして他方を「理解できない」グループとします。 話を進める前に、筆者自身は、このように無知を決め込むユーザーや、さらにたちが悪く「どうでもいい」と無関心を装うユーザーを一瞬たりとも支持したことはないと、はっきり申し上げておきます。このような状況は、時間の制約、予算削減、工数不足(これらは氷山の一角)といった問題に起因し、また、ソフトウェア・コードの使用が増すにつれ、知識不足の問題も顕著化しています。前置きはさておき、これらのグループをもう少し詳しく見ていきましょう。 材料カードと「理解しない」グループ OEMやグローバルTier1部品サプライヤといった企業には、材料の特性評価や材料カードの作成業務に特化した部門や部署があります。この場合、例えば、プレス成形シミュレーションの材料カードを作成する上で、どの降伏曲面を使うべきか、また適切な硬化則の近似は何を採用するか、といった特徴的な複雑さを理解している担当者が在籍する場合に限り、ある一定の役割を果たすことが可能になります。またかつては、ほとんどの科学者やエンジニアが主に衝突解析の経験を持ち、その知識にこだわりがちであったことも忘れてはいけません。それがために、アルミニウムなどの材料にHill 48(あるいはフォン・ミーゼス)の降伏曲面が適用されているような、時代遅れの旧態然とした材料カードがいまだ存在するのです。この場合、部品の絞り成型性を調べ、材料番号を読み解き、「適正な」材料カードを読み込まなくてはなりません。一般論として、材料に関するトレーニングが必要だと考えるユーザー (別名:「理解しない」グループ) はほぼ皆無であり、「材料に特化した部署があるのだから」と考えがちです。その結果、その中身を理解しないがために、材料カードを使用前に確認することはまずありません。 材料カードと「理解できない」グループ 次のグループは、「その他の企業」に属しています。その多くは、数名の解析専任者から成る結束の強いチームで、材料や材料カードに関しては、十分な知識を持っていると期待されています。しかしここでも、そのような期待に沿えることは稀です。このようなチームでは、工程に関する知識、CADのスキル、そして「帽子からウサギを引っ張り出す」手品のような困難な状況から解決策を導く能力が、欠陥のある材料カードを見分ける能力よりも高く評価されるのです。彼らの多くは、ソフトウェアに付属している材料カード、OEMが配布する材料カード、インターネットやその他の怪しげなソースから入手した材料カードを、躊躇なく使用します。またカスタマー・サポートに「この番号の材料カードはありませんか?」と問い合わせることもあります。皮肉なことに、OEMにこの話をすると「なぜ弊社に問い合わせないのでしょう…?」と訝しがります。最初のグループと同様に、担当者(別名: 「理解できない」グループ)がトレーニングを希望すると、「トレーニングの費用を出せません」または「業務として参加させるのは難しいです。XYZ社の急ぎの仕事を来週までに終わらせないといけないのを知っていますよね…」といった回答が返ってきます。 図1:これはよくある問題です。Hill 1948降伏曲面の近似の計算では、r < 1の場合、この数式では 材料の降伏曲面を正確に予測できません。 図2: すでにこのような経験があるユーザーもいるとおり、鋼材の値をアルミニウムのカードに適用 すると、非常に不正確な結果が算出されます… 図3: このようにゆがんだ降伏曲面では、不具合、プレス荷重、スプリングバックの予測などを 正確に予測することができません。 材料はそれほど重要ですか? 端的に答えれば、「はい」です。もう少し詳しく答えれば、「そのとおり」となります。成形、衝突、NVHのいずれの工程を扱う場合でも、材料カードはシミュレーションの根幹を成します。プレス成形シミュレーションの精度指標を精査すると、最大66%が材料特性に直接起因しています。こう考えてみましょう。材料がそれほど重要でないのであれば、汎用的な1件の鋼材カードをすべてのシミュレーションに適用するだけで事足りるのではないでしょうか? またさらに、エンジニアは大きな責任を担っています。情報に基づいてエンジニアリングの判断を下すには、必要なすべてのツールを自在に使いこなせなければなりません。これは物理的なツールだけでなく、知識ベースのツールも含みます。(少なくとも)材料カード、結果、あらゆる修正のすべてがLARルールに準じていることを確認するために、知識ベースのツールは欠かせません。尚、このLARルールとは、 Looks About Right (概ね良好)の頭文字で、この仕事で最初に学ぶべきことの1つです。材料カード、結果、デザインなどがすべて概ね良好であれば、それらはおそらく適正であり、概ね良好でなければ、おそらく適正ではないため、さらに調査する必要があります。 立ちはだかる障壁 理想的な世界であれば、現状のような問題は起こり得ません。材料カードはクラウド・サーバーに格納され、誰でも自由にアクセスできるはずですし、時間や費用は無制限に消費でき、ユーザー・ベースも常に最新の動向や理論にアップデートされているでしょう。もちろん、その背景情報の理解については言うまでもありません。 さて、現実の世界に戻ってみると、このような世界が実現することはありえません。どの企業も予算は有限で、工数は限られ、時間の制約とも競わなければなりません。残念ながら、これらを管理する責任者の多くは、トレーニングの大切さを理解していません。たとえ理解したとしても、時間的制約の圧力から、必要な人材を手放すことができません。その結果、良くて1~2名の選抜メンバーのみがトレーニングを受講することになります。受講内容については、参加できなかった同僚と共有すべきですが、そのような時間や機会を得られることはほとんどありません。 材料カードに関しては、適用段階に至る前から、材料の特性評価に膨大なコストと時間がかかります。また、ソフトウェアに新機能や強化機能(移動硬化、エッジ・クラック予測、せん断破壊など)が追加されると、必要な実験データも増大します。さらには、多くの場合、標準化されていない(ISO/ASTM/JIS標準などが存在しない)試験データが必要となりますが、それに対応できるのはごく一部のOEMおよび大学のみです。このような理由から、カードはしっかりと保護され、市場に公開されることはほとんどありません。 この問題にどう対処できますか? Linkedinの多数の関連投稿でもわかる通り、何事も「解決」に至る前に、まず問題があることを認識し、根本原因を特定し、それに対する働きかけを準備しなければなりません。 問題と解決の両面において、まず教育が重要です。すべての物事と同様に、教育にも色々な味付けがありますが、ユーザーおよび意思決定に携わるすべての人材を教育することが重要であり、通常、これはトップダウンで行うべきです。この時点までに、必須のトレーニングを許可しない場合に起こりうる事態について、意思決定者はきちんと理解しなければなりません。ユーザーのトレーニングを許可しないと(つまりソフトウェアを有効活用できないと)、ソフトウェア/ハードウェアの組み合わせにおける最重要部分は、プロセッサやライセンスの数ではなく、端末に向かう人間であるという事実を理解することができません。あまりにも多くの人々が、コンピュータが出力するものは何でも、本質的に疑問の余地なく正しいものだと信じています。しかし、この仕事から学ぶべき2つ目のことは、すべてを疑うということです。コンピュータが元になっているものは特に疑うべきです。 ユーザーには、材料カードの有効性、そして材料カードがもたらす結果を常に疑問視する姿勢が求められ、それを可能にするためにも、トレーニングを受講することが重要です。さらには、数値がどのように結果に影響するか、等級を変更することで顧客が求める部品を提供できるか、といったことも理解する必要があります。 そしてもちろん、トライアウト、量産試作、量産に携わるエンド・ユーザーのことも、(絶対に)忘れてはいけません。何トンもの鉄や鋼材からロバストな金型を作り出す責任を負う担当者も、量産部品に使用する材料の降伏応力やr値の影響などについて、理解を深めなければなりません。 教育の他に考えられるソリューションとしては(実現は難しいですが)、無料のクラウド・ベースのレポジトリへのアクセスを開放し、コードや国に関わらず、すべてのユーザーがデータをアップロードして、誰もが共有できるようにすることです。しかし筆者が知るかぎり、このようなソリューションは存在しません。リソース・レポジトリは、確かに存在します。例えばTATA Steel社のAuroraなど、特定の材料メーカーは自社製品についてデータを提供しており、無料で利用できます。また、幅広い材料をカバーするレポジトリも存在しますが、多額の年会費がかかる上、提供されるのは生データのみです(つまり、正しい知識をもとに、材料カードを作成しなければなりません)。インターネットで検索すれば、名前やアドレスを簡単に入手できます。 オートフォーム社では、両方の問題に取り組んでいます。当社が開催するトレーニングでは、材料理論や特性評価から材料カードの作成までを扱っていますが、平易な用語を採用し、またソフトウェア製品も選びません。ユーザーが独自の材料カードを作成する場合には、(通常は材料メーカーとパートナーシップを組み)、試験条件やデータ要件のアドバイスを行うといった支援も行っています。 さらに当社では、材料カード・ライブラリの拡張に努めています(ご協力いただいている方々に感謝いたします)。本稿執筆時点では、自動車業界および航空宇宙業界で多用される約1,000件の材料カードが登録されています。これらの鋼材、ステンレス鋼、アルミニウムおよびチタンの材料カードは、すべてのAutoFormユーザーが無料でダウンロードして活用できます。そして今後もさらなる拡充を目指します。このライブラリをさらに強化および拡張するために、世界各地の材料メーカーと交渉を続けています。 - [高強度鋼の見込み補正解析: シミュレーションと金型工場における差異の解消](https://japanforming.com/高強度鋼の見込み補正解析/) - 本稿では、高強度鋼部品の見込み補正解析について、長年のお客様であるIJS社(ILJI TECH金型工場)の成功事例をご紹介します。IJS社では、幅広い部品の金型製造を行っています。近年、高強度鋼部品の金型製造においては、スプリングバックの見込み補正が課題となっています。実際のところ、高強度鋼部品の見込み補正については、どの企業もスプリングバックの管理に苦慮しているようです。 IJS社では、2016年以降、シミュレーション解析と製造現場の間に生じている差異の解消に努めてきました。金型工場の諸条件をシミュレーションに適用するため、金型設計者はトレーニングを受講しています。また最近では、フィージビリティ・シミュレーションの強化およびシミュレーションを用いた仮想的な反復解析の最適化にも取り組んでいます。IJS社では、高精度なシミュレーション結果を高速に算出するAutoFormを活用することで、フィージビリティ・シミュレーションの強化を実現しました。さらには、シミュレーションに適用する諸条件と金型工場における金型製造の諸条件が一致するよう、細心の注意を払っています。 かつてのIJS社では、次のようなプロセスを適用していました。まず解析段階で成形性を大まかに確認し、ドロー工程のスプリングバックによるトリム金型へのパネルの位置決めなどの影響を考慮せず、成形性の結果のみからスプリングバックを検討します。そしてNCモデリング・エンジニアがCADを使い、手作業で形状の修正やモーフィングを適用し、見込み補正のモデリングを行います。ドローシェル(ドローパネルに合わせて次工程のトリム金型形状をフィットさせる)については、シミュレーションでは考慮せず、現場で1工程目のOP10(ドロー工程)の部品をスキャンして直接適用します。このようなプロセスでは、シミュレーション解析と製造現場に差異が生じるため、高強度鋼の金型製造には大幅な手直しが必要でした。 このプロセスで完全な成形性を達成するには、多大な時間と工数が必要となります。実際のプレス成形工程と同様に、ドローのスプリングバック・シミュレーション結果からドローシェルを適用し、トリム工程を分離してスプリングバックを確認します。そしてAutoFormのソフトウェアで見込み補正を実行しますが、ここではAutoForm-ProcessDesignerforCATIAによるNCデータのモデリングも考慮します。ソフトウェアのツールを活用してプレス成形シミュレーションからCADへ情報を転送することで、必要な形状修正を直接適用できます。しかしこの工程は、通常、エンジニアが形状修正について個別に判断しなければならないため、多くの手間がかかります。また手作業で行うため、多くの場合、結果に矛盾が生じます。そこでこの見込み補正ループをシミュレーション・ソフトウェアの内部だけで完結することで、より迅速に安定性を達成しようと考えました。検討したロバストな見込み補正戦略の最終案をCAD環境へ適用すると、サーフェスを一度にまとめて修正できます。その結果、1180MPa材のルーフ補強材は、わずか3回のプレス・トライアウトで完了することができ、コストの大幅削減に成功しました。IJS社ではAutoFormのスプリングバック見込み補正を通常業務プロセスへ適用後、980MPa材や1180MPa材を含むすべての高強度鋼材で金型のトライアウトを3回以下に抑える目標を設定するほどの自信を獲得しています。 図1: 部品のスキャンによる測定 IJS社では、AutoFormに対する理解を深め、より安定した結果を得ること、そして金型生産の関係部署にAutoFormの活用を促進することを、2021年の目標に掲げています。チャ・ギョンジュン社長自身が、AutoFormの多様な機能を通じてプレス加工に適用できる新たな技術の開発に取り組んでいます。 シミュレーション解析と製造現場の差異解消のみならず、IJS社におけるコミュニケーションの活性化、そしてAutoFormの信頼性や利便性の認知度向上に大きく貢献してくださったチャ・ ギョンジュン社長と、AutoForm-Compensatorプロセス導入に尽力いただいた ADE社セールス・マネージャのキム・キタエ氏に感謝いたします。 IJS社は、1986年にILJI TECH金型工場として創業し、2014年には慶山市で金型工場として独立しました。現在、同社は100名を超える従業員を擁しています。IJS社の国内の主要顧客は、冷間金型および熱間プレス成形金型を供給しているヒュンダイ、起亜自動車、現代製鉄などがあり、海外の顧客には、金属薄板を供給しているBAIC Motor社、株式会社キーレックス、GAZグループおよびABTOBA3社などがあります。 - [公開議論:インナー・ドアのサーフェス改善手法](https://japanforming.com/公開議論インナー・ドアのサーフェス改善手法/) - サーフェス品質改善の自社対応による工数削減 本稿では、米国の現地企業がエンジニアリング・プロセスに新たなツールを導入し、新たな業務を担うことで、効率改善および納期短縮を実現した事例について、米国オートフォーム社のロナルド・ペックが紹介します。また最後に、金型の見込み補正とサーフェス品質のバランスについて、読者のみなさまに情報共有をお願いしています。 2019年春に開催したオートフォーム社の工程設計トレーニング・コースを受講したお客様から、サーフェス作成モジュールについてお問い合わせをいただきました。このお客様のみが自社でCATIAを使用していましたが、特定のサーフェス作成に対応できる部署や手段がないために、効率的に活用できていなかったのです。この会社では、まず初期作業を終えると、海外の親会社が作業を引き継いでいました。作業を完了したファイルを受け取るまで待機しなければなりませんが、12時間の時差があるため、半日以上の遅延が生じます。またこのサーフェス作成を手作業で修正するには、膨大な時間を要します。もし自社で対応できれば、リードタイムを大幅に短縮でき、長期的には顧客に対してより大きな価値を創出できることは明白です。 通常、新たな業務が生じると、負担も増加します。しかし必ずしもそうとは限りません。この会社では、社内で新たにサーフェス作成の業務を担うようになると、関連部署では変更履歴をすべて把握することで、不具合修正が容易になり、その修正の根拠を顧客に説明できるようにもなりました。ソフトウェアの利便性を考えると、自社のスキルを高めることが何より有効な手段であることに間違いありません。海外の情報はボトルネックとなり、また自社内で情報交換を繰り返すことで意思疎通に齟齬が生じ、あるいは翻訳の不備からも、重要な情報が適正に周知されない危険があります。また自社で部品の修正依頼に対応し、情報を直接咀嚼する方が効率的であることも明らかです。この会社でも、いまではOEMの依頼にすべて直接対応しています。以下、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAがもたらす利便性について、いくつか紹介します。 このソフトウェアを導入したばかりの当時、ベンチマーク評価を行っていたパネルに不具合が発生しました。パネルの寸法精度を高めるために、見込み補正ループを何度も繰り返しましたが、その結果、サーフェスの品質が悪化したのです。寸法精度とサーフェスの品質には一定のバランスが必要であり、これを見込み補正で看過することはできません。見込み補正を行った結果、サーフェスの品質が悪化した金型を図1に示します。 図1: 実際の金型サーフェスの写真。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使用せずに直接見込み補正を行い加工しました。 オートフォーム社の見込み補正エディタを活用して部品の品質改善に成功した事例を余すところなく説明するために、ソフトウェア製品名を「さりげなく」書き記すことにします。ベンチマーク評価を行っていた金型について、見込み補正を施したAutoForm Formingのファイルからベクトル・フィールドを、QuickLinkを介して、サーフェス作成モジュールのAutoForm-ProcessDesignerforCATIAと共有しました。次に、基本的なベクトル・フィールドの見込み補正を、この金型に適用しました。すると以下のゼブララインの画像から確認できるとおり、同じサーフェス領域の品質に劇的な改善が見られました。CATIAのサーフェス解析ツールを使って、より詳細に比較することもできますが、しかし説明を簡潔にするために、以下の図2および図3にはゼブララインのAutoForm解析結果のみを示します。 図2: AutoForm-ProcessDesignerforCATIA適用前、見込み補正済みサーフェスのゼブラライン 図3:AutoForm-ProcessDesignerforCATIA適用後、非常に滑らかなゼブラライン 製品について何度も検討を重ね、最終製品に仕上げるための微調整を行うと、お客様は結果に満足されました。そして次は、金型の見込み補正です。オートフォーム社が推奨するプロセス・モデルを全体に適用する初めての機会だったため、現場に立ち合い、お客様の作業手順が推奨通りであることを確認しました。製品の変更後も最終見込み補正を適正に行えるように、何度も打合せを行いました。 これまですでに金型の構築およびトライアウト、そして金型製造を担ってきたお客様にとって、今回の製品変更から得られる最大の利便性は、見込み補正を海外の本社に依頼することなく、自社で実施できるようになったことです。また、寸法要件を満たす高品質なサーフェスを、比較的短時間で作成できるようにもなりました。 このように興味深い構図や採用した手法を見直してみると、サーフェスの品質を高めるには、オートフォーム社が推奨するプロセス以外にも様々な手法があることがわかります。この事例で紹介したお客様も、さまざまな手法を比較する上で、長所や短所を含めて多くの議論を展開し、今後のプロジェクトでは、新たな手法やソフトウェア・ツールを追加していく準備を進めています。 最後に読者のみなさまと公開議論をさせていただければ幸いです。以下の質問について、ぜひ自由形式でコメントをお願いします。 金型を見込み補正する際に、寸法精度とサーフェスの品質について、どのようにバランスをとっていますか? 見込み補正済みの金型に対して部品設計を修正する場合、どのように対処していますか? 基準形状のデザイン・サーフェスをCADで作成してから、次に基本となる見込み補正のワークフローはどのようなものですか? 見込み補正の作業にかかる時間は、エンジニアリングに費やす時間の何割ほどにあたりますか? - [シミュレーションを成功に導く心構え:ルノー・グループのチーム・リーダーが工数70%削減を提唱](https://japanforming.com/シミュレーションを成功に導く心構え/) - 「あと少し時間があれば、現場の工数を大幅に削減できます」 ドーリン・シェルツ氏は、ルノー・グループのマトリーテ・ダチア部門でMP開発チームのリーダーを務めており、グループの内製金型ツールメーカーで、唯一、ダイフェース・デザインを担当しています。プロセス向上を担う最前線で、特定の部品のみならず、すべてのパネルを対象に自動化の研究を行っています。本稿では、デジタル・エンジニアに求める探求心、高い意識、意思決定に対する主体性を兼ね備えた理想的なメンタルについて、ドーリン氏が概説します。 当社ではシミュレーションを積極的に活用しています。それでも、シミュレーションをさらに幅広く適用することができれば、納期および工数をより大幅に削減できると確信しています。デジタル・エンジニアリングの利便性を提唱するエンジニアの多くは、シミュレーションに対する不信感との対峙、根拠の提示、各関係者の説得といった、長年にわたる不調和に勇敢に立ち向かうでしょう。私自身にそのような意識はなかったのですが、シミュレーションのメリットについて他部署を説き伏せて回っていると、社内で評判になっているようです。私が確信しているのは、この点です。「あと少し時間があれば、現場の工数を大幅に削減できます」と。 こちらから指定された期日の延長をお願いすると、相手方に不信感が生じるのも当然でしょう。しかしその場合はいつも、より精度の高い形状結果を得ることができれば、再切削の必要がなくなる旨を説明します。デジタルに3日間を費やすことで、現場のトライアウトや製造期間を3週間も短縮できることを、何度も実証してみせました。もちろんすぐに信じるには突拍子もなく、必ず疑惑の目を向けられますが、過去の成功事例を提示しつつ、自信を持って説得にあたっています。この工数短縮の考え方は、いずれかの部署のみに該当する話ではありません。シミュレーションを積極活用することで、究極的には、ホワイトボディのリリースまでの包括的な時間短縮を実現できるのです。 納期延長の依頼を行う際には、部品のシミュレーション予測を提示しながら交渉にあたります。シミュレーションのデータを用いて、実際のトライアウトで発生しがちなあらゆる不具合の原因を説明するのです。特にスポッティングに注意を払うよう助言し、サーフェスの不具合を回避する方法を説明します。すると間もなく、同僚たちはシミュレーションの予測が正しかったことを認めざるを得なくなります。その結果、トライアウトの部署では、デジタル・マスターを順守し、安全な「グリーン」のシミュレーションを現場で再現する意識が高まり、さらには、部署間の情報交換がますます円滑になるのです。もちろん、トライアウトの結果が、シミュレーションとは異なる場合もあります。そういった場合は、入力パラメータと現場の金型や設定を比較します。すると現場では、必ずと言ってよいほど、何かしらシミュレーションと異なる部分が発覚します。それがトライアウトの結果が予測と異なる原因となっているのです。 時間短縮を実現できた別の理由として、従来のCADシステムからAutoForm-ProcessDesignerforCATIAに移行した点が挙げられます。この変更によって、サーフェスのモデリングを安定的かつ迅速に作業できるようになり、CADに費やす時間を70%削減できました。例えば、見込み補正で大がかりな修正が必要になった場合、通常ならば2日間かかっていた作業が、このソフトウェアを活用すると、たったの1時間で完了できるのです。プレス成形のデザインに関するニーズに特化した専用機能によって、CADの開発時間の大幅な効率化を実現しました。 図1: ルノー・グループのイアンク・マリウス=エイドリアン(左)とシェルツ・ロネル=ドーリン(右) トライアウト・ループの削減と部品のプレス加工を成功に導く上で、見過ごされがちな要因がもう1点あります。優れたソフトウェアと秀でたトライアウト・チームが揃っていても、実際にそのソフトウェアを使う人員を適切に選ばなければなりません。現場およびデジタル・マスターの作成の両面に精通した人材が適任であると考えられます。さらに、自分が行うべき行動を常に自覚し意識できる能力が求められます。このメンタルの状態を表す言葉は数多く存在しますが、ここでは鍵となるメンタルを、適正な疑問を持ち続ける「探求心」、自分の行動を自覚する「高い意識」、そして「意思決定に対する主体性」と称します。 このような人材は、この心構えを有することで、目前の問題だけでなく、作業中に対処すべき事柄について考えるようになり、また不具合に直面した際には、不意に「これだ!」とひらめくことができます。「これが問題だった。これこそが、自分が何かを見落としていたところだ!」と。選択および分析すべきパラメータがきわめて多くあると、必ず何か見落とすものです。ユーザー・マニュアルの指示通りにすべてのボタンを順にクリックして、結果を出せば完了、というわけにはいきません。 批判的な考察がなければ、効果的なデジタル・エンジニアリングは成り立ちません。この心構えがあればこそ、パラメータに誤りがあると、それが次の工程に影響すること、またはクランプの適用が不適切になることに、気付くことができます。様々な要因が不具合の原因になり得ます。しかし重要なのは、その不具合を、高いコストが生じる実際の現場ではなく、デジタルの世界で発見することなのです。 適切な情報に基づいた主体的な意思決定をもとに、シミュレーションを適正に設定して、トライアウトをデジタル・マスターと一致させることができれば、修正ループを行う必要はなくなると、経験的に断言できます。 これこそが、フード・インナーで特に大きな成功を収めた理由でもあります。この事例ではトライアウトの時間が1/3に短縮され、非常に大きな実績となりました。 最後に、この事例を成功に導くためにご尽力いただいたオートフォーム社のヴォルカン・カラクス氏やイゴール・ブルチッツ氏らに感謝いたします。理想的なデジタル・マスターを作成するためのトレーニングを担当したオートフォーム社のメンバーは、OEMや金型メーカーでの勤務経験があり、そのサポートは非常に的確でした。オートフォーム社側から、これをクリックしてから、あれをクリックして、といった具体的な指示をいただくことはありません。その代わりに、こちらがシミュレーションを設定している傍らで、正しいエンジニアリングについて語ってくれます。このような知見こそが、知識を伝える上で不可欠なのです。この学びに対する実践的なアプローチによって、適正な意思決定のプロセスとデジタル・エンジニアリングを実現できるのです。 - [HERU社では見積もりからダイフェース作成まで全工程にAutoFormを活用](https://japanforming.com/全工程にautoform活用/) - HERU社セールス・マネージャーのトーマス・テイペル氏とCADデザイン・マネージャーのフィリップ・ヌッシェン氏:「いまではAutoFormを活用し、検証まで完了した確実な明細書を作成しています」 「シミュレーションと見積もりに関しては、最大で5倍もの速度で作業できるようになりました...」 見積もり作成、そして発注からトライアウトやサンプル提出までの時間枠は、大幅に短くなっています。同時に、工程品質に関する要望も多くなっています。そのためドイツのザウアーラントにあるシート分野のスペシャリスト、HERU Werkzeugbau社では、AutoFormを活用して、初期の見積もり作成から最終的なダイフェースや工程計画までのワークフローをシームレスに作成しています。 ザウアーラントのレネタールは、この地方にある近郊の街々と同じく金属加工の長い歴史を誇る街です。水力発電による豊富な電力、鉄鉱床、精錬所、そして近隣のジーガーラントにある製鉄所および1861年に開通したルール=ジーク鉄道が、その歴史を支えています。レネシュタットに合併されたグレーヴェンブリュッは、ルール地方との関係性もあり、今日でも重要な役割を担っています。そしてこの地区に新築されたビルにHERU Werkzeugbau社が2004年から本社を置いています。「プレス成形分野の先頭を行く金型技術を扱い、部品の最適化および金型デザインから量産の確立まで工程チェーン全体、そして金型に関する社員研修までも手がけています」と、HERU社セールス・マネージャーのトーマス・テイペル氏が説明します。そして同僚のフィリップ・ヌッシェン氏は、「今日のプレス成形関連業務は、AutoFormなく進めることはできません」と言葉を添えます。CADデザイン・マネージャーであるヌッシェン氏は、8名で編成される技術グループの責任者としてHERU社のプロジェクト管理を担っています。「このモジュール方式のシステムを採用してから、入札段階の原価計算や工程設計からダイフェース作成まで、すべての重要な工程ステージをマッピングできるようになりました」と語っています。 HERU社はダイフェースの設計にAutodesk InventorおよびCATIA V5を使用しています。こ のような従来型のCADシステムでは、たとえばお客様の要望に応じて金型の工程計画を短時間で確実に作成しなければならない場合、部品や工程の迅速なフィージビリティ検証、トリム・カーブやドロービードのシミュレーションを活用した検討、寸法精度の確認やスプリングバックの見込み補正といった以降の作業を考慮すると、この分野に特化したツールが欠かせないことは明らかです。この分野で有力な企業として挙げられるのが、1995年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校から独立して設立されたオートフォーム社です。400名以上の従業員を擁し、業界を牽引するソリューション・プロバイダです。 メイン・フロア補強部品の製造に使用する順送金型の下型 新時代の見積もり業務 ヌッシェン氏はAutoFormモジュールの整合性を高く評価し、その細部まで行き届いた機能によって金型製造の日常業務の負担が大幅に軽減されたことに驚いています。セールス・マネージャーのテイペル氏も同意見です。見積もりの業務に新たな時代がもたらされた例として、オートフォーム社による工程計画および見積もりのソリューションを挙げています。「かつては、準備段階の見積もり作成は、実用的な数値と経験則が頼りでした」今ではAutoFormが見積もり作成の基準となっており、HERU社の営業部門では、見積もり業務だけのために1本のライセンスを使用しています。テイペル氏は、現在のワークフローを次のように説明しています。「お客様から案件をご依頼いただく場合、データ(CADモデルと図面)をメールで受信すると、まずは両方を確認してから、提案書の準備に入ります」最初にフィージビリティの評価と対案の検討から始めます。「そういった図面の80%は、形状や配置が不適当だからです」併せて公差も評価します。「結論としては、その部品は製造可能だとしても、必要な公差を達成できない場合があります」すでにこの段階からAutoFormを活用し、見積もりの基礎となる工程計画を作成します。これはヌッシェン氏のCAD設計部門が担当します。AutoForm-StampingAdviserを開き、何度かクリックするだけで、部品が展開し、フィージビリティ関連の不具合確認と、材料使用量の初回見積もりが完了します。「これだけで個々のステーションが定義され、その部品が製造可能か確認することができるのです」と、ヌッシェン氏が説明します。次に、半自動で作成された工程計画を確認し、材料の要件およびHERU社の製造指針に則した補足や調整を行います。「AutoFormを活用すれば、われにつながる不具合があるか、またはどこかで材料の板増が発生するか、すぐに確認できます」 フィリップ・ヌッシェン氏のワークステーションでAutoFormを活用した工程計画の作成 簡単な操作による高精度な計算 営業部門では、AutoForm-CostEstimatorにデータを入力し、準備段階の見積もりを自動作成しています。「当社では基本的に、営業部門と技術部門の両方で立案を行います。そのため見積もりの作成業務ではサイクルが形成され、両部署が同じファイルを扱います。したがって、工程計画に技術的な変更を加えると、それが原価計算に直接反映されるのです」と、テイペル氏が説明します。「この関係性には他にも利点もあり、これまでに蓄積した複数のコスト標準を使って作業できることです」これはAutoFormがきわめて優れている点です。これらのコスト標準には、すべての設計や製造手順を含むHERU社独自の数値が蓄積されています。また社員の経験則も活かすことができます。そして現在では、さまざまな部品カテゴリーに対応できるようになりました。「たとえば、どの材料を使うのか、工程をどのように進めるか、切削するのかエッチングしなければならないのか、検討できる範囲が広がりました」これこそが、計画作成について「所要時間まで含む非常に現実的な見積もりが、ボタン操作のみで作成できてしまうのです」とテイペル氏が語る理由です。これらはもちろん、純粋な生産コストです。この他にも、材料間接費、利益、前払いによる支払い、併せて製造すべき部品など、その他のコストも考慮しなければなりません。「現時点では、最終案に向けて、これはまだ手作業で詰めています」 AutoForm-CostEstimatorを活用した順送金型工程のリソース見積り 最高品質のダイフェース AutoFormは、次の業務へのバックボーンでもあります。営業部門とお客様が合意すれば、ヌッシェン氏の部門は作成した大まかな工程計画から作業を進めます。「作成した工程計画が提案書の基礎になっているため、この時点でまた最初から作業を始める必要はなく、これまでのデータを活用できるのです」まずAutoForm-DieDesignerを使い、パラメータ化されたコンセプト面を作成します。これはすべての工程に必要です。「つまり早期段階の作業にて、頻繁に修正しなければならない面なのです」と、ヌッシェン氏は語り、さらに「このモジュールでは、ネイティブのCADで作成する面よりもはるかに短時間で、コンセプト面を作成することができます。これは次にAutoForm-FormingSolverにて、成形工程全体のシミュレーションや最初のスプリングバック解析に使用します」と続けます。 このようにして蓄積した情報を軸に、最後にAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを活用し、パラメータ化されたCADダイフェースと、すべての深絞り工程や2次工程を含む完全で詳細な工程計画を作成します。ここではコンセプト段階のデータも使用します。そして工程計画のデータは、AutoForm-QuickLinkforCATIAを介してCADに転送するため、 データの損失はほとんどありません。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CAD環境で操作します。ヌッシェン氏は、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAが作成する(フリー・フォーム)面の非常に高い品質と、工程計画を実施できるスピードの両方に満足しています。「クラスA」の品質要件も満たしています。CAMソフトウェアを活用することで、ダイフェースを切削するためのNCデータも算出できます。「AutoForm-ProcessDesignerforCATIAで、最終のダイフェースをさらに微調整しますが、この時点で金型設計はすでに開始しています」とヌッシェン氏はここから並行作業が始まることを指摘しています。「AutoForm-DieDesignerの面をベースにしたインクリメンタル・シミュレーションを信頼できるレベルまで調整できたら、つまり部品が生産可能なレベルになれば、金型設計を開始します。こうすることで、大幅な時間の短縮になるのです。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでダイフェースと工程計画の作成を完了したら、データをAutoFormに戻して、スプリングバック見込み補正を含む、いわゆる「検証」のシミュレーションを実行します」と、ヌッシェン氏は説明を続けます。その後、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでもう1つのループを実行すると、それが最終の切削データとなります。 最終検証シミュレーション後のスプリングバック結果が「緑」になると、切削準備が整います より高速で、より高品質に HERU社はAutoFormを導入する前からシミュレーションの業務に携わっていたと、ヌッシェン氏は回想します。しかしその当時は、事前にCATIAでダイフェースを作成しなければ、プレス成形シミュレーションを開始できませんでした。「経験則を頼りに作業していたため、現在と比べて10倍もの時間がかかっていました」また作成した工程計画のほとんどに不具合が検出され、製造段階で頻繁に修正していました。「それは果てしない無駄な仕事を思わせる作業で、時には5~6回も再切削することもありました」とヌッシェン氏は当時の状況を説明します。商業的な視点からも、それはすぐに赤字になります。「いまではAutoFormを活用し、検証まで完了した確実な明細書を作成しています」テイペル氏も同様に前向きです。「部品の品質を改善するだけでなく、リードタイムの40%を占めていた修正ループの削減も実現できました」と強調しつつ、現在の状況を次のようにまとめました。「シミュレーションと見積もりに関しては、最大で5倍もの速度で作業できるようになりました」そして、提案書もより正確になり、信頼性が高まりました。「当社ではこの点を高く評価しています」工程全体も大幅に安定しました。「納期に遅れることがなく、高品質な部品と確実な納期を、お客様に提示することができるようになりました」 HERU Werkzeugbau社 HERU社は1987年にルディ・ヘッセン氏が創業し、社名の由来にもなっています。同社はドイツのレネシュタット=グレーヴェンブリュックに本社を置き、現在60名の従業員が年間約20件の金型製造プロジェクトに取り組んでいます。最長4mの順送金型、深絞り、トランスファ型などを扱い、また溶接およびねじの成形や測定も行っています。顧客の75%は自動車業界の企業です。HERU社独自の事業活動の一環として、プロジェクト個別ベースの技術提携を積極的に行っています。これらの活動は、社内の工程技術センター(PROTEC)に集約されています。特筆すべきプロジェクトには、グレーヴェンブリュックでシューラー社と提携したMSD 630サーボ・プレスの事例があり、これはマンションほどのサイズで6,300 kNのプレス能力を備えています。ストリップ・フィードやロール・フィード、金型交換の技術や金型監視など、最新鋭の追加設備によって、顧客の工程を解析および最適化するために必要なフレームワークを形成し、開発されたばかりの最新の工程にも対応します。 - [AutoForm-ProcessDesignerforCATIAトレーニング、 新たなビデオ・ポータルのご案内](https://japanforming.com/新たなビデオ・ポータルのご案内/) - AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのビデオ・ポータルと ユーザー・コミュニティにご参加いただき、最大活用してください。 読者の皆様、こんにちは。 本投稿記事では、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのユーザー向けにインタラクティブなトレーニング・ビデオや更新情報をお届けするビデオ・ポータルをご紹介します。 ある日のライブ・デモンストレーション中に、興味深いご意見をいただきました。ある講習会にてアプリケーション・エンジニアがAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの機能を紹介していると、突然、お客様が「説明書を渡されるより、ライブのデモで新しい機能を見せてもらった方がずっと分かりやすい」と指摘してくださったのです。この言葉がすべてのきっかけとなりました。 以下のビデオ・ポータルのプレビューをご覧いただき、メンバーのダッシュボードやビデオがどのようなものかお確かめください。まず私たちがログインするところを肩越しに見ていただくところから始まります。ビデオ・ポータルの素晴らしさを体感していただくために、ぜひ全画面表示でご覧ください。 https://youtu.be/heLu49jz0GA 度重なる検討会で頂戴したご意見をもとに、次のような目標を設定しました。オートフォーム社は、AutoFrom-ProcessDesignerforCATIAに特化した専門情報を提供するビデオを配信し、初心者のユーザーにはすぐに役立つヒントや活用事例を示し、上級者のユーザーには特定の問題に推奨されるソリューションや最善実施例を提供します。最も検討を重ねた点は、このポータルをユーザーフレンドリーなものとすることです。 2014年の秋に社内で制作が始まり、フォルクスワーゲン社の協力を得て、3本のサンプルビデオを作りました。フォルクスワーゲン社のユーザーから高い評価をいただくと、ホスト・プラットフォーム上に充実したビデオ・ポータルの構築を目指して、さらに開発を進めました。 2015年から当社のアプリケーション・エンジニアによるプラットフォームの検証を開始、2015年の第2四半期には一部のお客様に向けた限定公開を行い、成功を収めました。このポータルは現在すべてのお客様にご利用いただけるようになっています。ビデオは100%社内で制作したもので、最高のビデオ(ドイツ語版と英語版)をお届けできるよう、少数精鋭の担当部署が努力を重ねています。 お客様にはどのようなご不便もおかけすることはありません。ビデオ・ポータルは、オートフォーム社地域オフィスのカスタマー・サポートを置き換えるものではなく、電話やオンサイトのトレーニングも今まで通りご利用いただけます。このポータルは、いつでも視聴可能なビデオ・シリーズの配信と、指先ひとつでアクセスできるコミュニティの構築によって、これまでのサポートを補完することを目的としています。お客様は世界中どこからでも、いつでもトレーニングを受講することができます。 『私は米国でカーンアカデミーと出会いました。これは「世界レベルの教育を、どこにいる誰にでも、無償で提供すること」を目的とした非営利団体です。彼らのツールとアイデアを、AutoFormユーザーのトレーニングやサポートをより充実させる手段として使うことができるのではないか、と考えました。』 オートフォーム社、アントン・ハース ビデオ・ポータルの特長 このビデオ・ポータルは、使い勝手がよく洗練されたツールの提供を目指しています。 ログインすると、縮小画面とフル画面モードが表示され、インタラクティブなアドオンを使うことで、ユーザーの観点からビデオを評価できます。ユーザー・トラッキング機能によって、前回のログイン以降に新着ビデオが追加されると、アカウントが強調表示されます。 以下3つのビデオ検索方法があります。 PROCESS DESIGN(工程設計)のビューでは、一般的な金型設計の手順に応じて作業を進めることができるシリーズがあります。工程設計者が最初から作業を始める際のワークフローとして最適です。 PART(部品)セクションでは、ドア・インナーやフェンダなど、部品別に整理されたビデオを検索できます。 WORKBENCH(ワークベンチ)では、PDソフトウェアの機能別に検索できます。 それぞれのカテゴリの新着ビデオがユーザーごとに強調表示されます。 別途、QRCも便利に使える機能です。このクイック・リファレンス・カードは、 R6とR7に対応しており、 それぞれのリリースで利用できる全機能の概要をお届けします。これはダウンロードしてご利用いただけます。この機能はAutoForm-ProcessDesignerforCATIAソフトウェアを使い始めたばかりのユーザーにはもちろん、経験豊かなユーザーにも、更新情報に関する理解を深める上で便利にご利用いただけます。 最後に、ニュースフラッシュを紹介します。ニュースフラッシュは、新たに追加されたビデオなどの定期的なお知らせや、ソフトウェア・リリースのプレビューを含むAutoForm-ProcessDesignerforCATIAの最新情報をお届けします。ニュースフラッシュの購読は、ビデオ・ポータル内で直接管理できます。 このビデオ・ポータルは、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのユーザーを対象に、製品をご利用いただく際のノウハウやヒントをお届けするためのプラットフォームです。 ビデオはご要望に応じて継続的に追加されています。またユーザーのみなさまは、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAのコミュニティにご参加いただけます。コミュニティへの参加をご希望される場合は、お住まいの地域のオートフォーム社オフィスまたは代理店にご連絡ください。あるいは当社Webサイト(https://videos.autoform.com)の詳細情報をご確認ください。 『AutoForm-ProcessDesigner forCATIAのビデオ・ポータルの開発に貢献できたことは、貴重な経験でした。このビデオ・ポータルによって、これまでのカスタマー・サポートに自己啓発という新たな選択肢ができ、またユーザーがご要望や必要性に応じて知識共有の場に参加できることで、製品活用の可能性が広がります。』メラニー・ガブリエル - [技術部門間の情報伝達における煩雑さの解消-業界標準としてワークフローが双方向であるべき理由-](https://japanforming.com/技術部門間の情報伝達における煩雑さの解消/) - 悪評高き「Easy」ボタン: すべての仕事を完了させる夢のボタンはあるのでしょうか? このようなボタンがほしいと、誰もが思っています。上司は冗談を飛ばし、部下たちは夢を見るのは、どんな仕事でもすぐに完了させてしまう、悪評高き「Easy」ボタンです。出勤して、そのボタンを押し、退社するだけで、給与を受け取ることができるのです。そんなボタンは要らないという人はいませんよね? しかし現実には、技術革新が進んでも、ワンクリックですべての仕事が片付くことはありえません。 仮に部分的には片付くとしても、すべて完了できるわけではありません。効率的な製造工程の鍵を握るのは、人間の関与と知識なのです。 エラーが出ないプロジェクトのデータ交換に向けて 想像してみてください。今のあなたは開発プロジェクトに携わり、すべての計画を最終決定し、設計を開始している段階にあるとします。しかし計画した工程や部品形状をすべてまとめあげる作業は、終わりが見えない大きな障壁として立ちはだかっています。さほど難しい問題でもないのに、あなたにとっては大きな精神的負担です。あるいは、すでに話はまとまり、別のCADシステムやファイル・タイプですでにレイアウトされているかもしれません。それはAutoFormソフトウェアで計画されたものかもしれません。一般的な工程をシミュレーションして計画や検証を行った場合、その工程をさらに成熟させる検討作業に直接活用できる便利な一連のデータがあります。全体工程のコンセプトを大雑把または詳細に検討する場合、ティップ・ポイントやティップ角度、フィーチャーを作成した工程などを確認する手間は省かれるべきです。すべてのデータを適切に整理されたファイル名で保存すれば、誰もが工程全体を把握できるようになります。 各部門では通常、シミュレーション・ソフトウェアやCADシステムの機能を使って情報を抽出し、検討作業を行います。各ステーションでどのような座標系やティッピングを使用して部品の姿勢を設定したか、また、どのステーションでどのフィーチャーを成形またはトリムしたか、 工程を検討するには、デザインまたはシミュレーションを開いて評価を行わなければなりません。適正な情報を収集できる場合もありますが、多くの場合は情報が不明瞭であるため、調査が必要になります。次に「古き良き慣習」として、紙に情報を書き留めるか、あるいはパソコンに情報を打ち込みます。このように金型や部品形状に関するデータを抽出およびエクスポートするには、長い時間を要する場合があります。一般的には、ソリッド形状からサーフェスを抽出し、それぞれの抽出物に(理想的には)誰もが判別できるファイル名をつけて、個別にエクスポートします。8連の金型では、シミュレーションに使用するトリム・カーブを含めると、部品の複雑さと金型の要件に応じて30~100個の金型が必要になります。抽出する情報のみを表示することに時間を費やし、その後も抽出作業が完了するまで、ひたすら待ち続けなければなりません。 ボタンを押すだけで、必要なすべての情報が自動的に送信および共有されることができれば、時間を大幅に節約できるのではないでしょうか? 下図に示すのは、AutoFormの早期フィージビリティで検証したコンセプト工程を再利用して作成した新規デザインに対するNXの開始時点です。 AutoFormで共有される項目 AutoForm-QuickLinkは、AutoForm FormingとCADシステム(CATIAまたはNX)またはマネージメント・システム(PDM…)間における双方向のデータ交換を行う機能です。複数のプラットフォームや部門間で情報や決定事項を共有して活用することで、ワークフロー全体の改善を促進します。これは各部門の連携を強化し、全員が共通理解を持つことを目的としています。これにより、情報に基づくより適正な意思決定が可能になります。 膨大な量の情報をAutoFormからzip圧縮ファイルにまとめて共有することができます。エクスポートするデータには、金型サーフェス(金型、フォーム金型、ワイパー金型)、カーブ(プロファイル、ドロービード・ライン、材料ゾーン)、ポイント(パイロット・ピン、流入、スペーサ・グループ、球体、クランプ)など、コンセプトのデータ形状を含めることができます。また、計画した工程、配置、金型方向、プレスのデータといった工程情報に加え、材料タイプや板厚などのプロジェクト情報も含めることもできます。数多くの項目をすべてエクスポートし、会社標準を活用することで、ニーズに合わせて設定できるため、必要な情報のみを共有し、受領することができます。以下に、利用できるファイル形式と、エクスポートできる形状やデータを示します。 CSV: シートの要素情報。 DBG: ビードおよび溝の高さ、幅、半径などのドロービード・プロファイル情報。 Iges: 工程最後での部品の境界、トリムライン、ブランク外形線、ドロービードの中心線、ダイフェース・モジュールを使って作成した、またはCADソフトウェアから初期に取り込んだ金型サーフェス。 PDF: シミュレーション・レポート(レポート・マネージャで作成した場合)。 PNG: 部品形状ビュー、ステーションの部品と結果、ブランク外形線、コイルなどの画像。 STL: 各工程のシート・メッシュ。 TXT: ベクトル・フィールドなどの見込み補正データ。 XML: プロジェクト・データ、標準および元のAutoFormデザイン・ファイルへのリンク、ドロービード・パラメータ、クッション・ストローク、材料情報および金型コスト(工程計画および見積もりソリューション(PBS)を使って設定した場合)。 AutoFormで作成したZipファイルの内容の一部を以下に示します。 インクリメンタル・シミュレーションをすべて完了後に作成したパッケージにて、部門間で共有されるデータの一部を以下に示します。 業界標準とすべき双方向のワークフロー 上述のようなソリューションの場合、一方向のみのワークフローは推奨されません。CADソフトウェアのあらゆる形式でデータ交換できるソリューションを使って、双方向に作用させるべきです。クリックを数回するだけで、プレス成形ソリューション・ソフトウェアからzipファイル形式で共有された形状データをインポートする機能をご利用いただけます。さらにNXまたはCATIAとAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使用することで、このデータをCAD品質のサーフェスの作成に活用できます。これらの形状を別途のQuickLinkファイルとして共有し、瞬く間にシミュレーションに取り込んで検証することもできます。 AutoForm-QuickLinkforNXおよびAutoForm-QuickLinkforCatiaでは、インポート/エクスポートするフィーチャーに自動で一貫した名前を与えられるため(「管理された工程アイテム」と呼んでいます)、迅速なCAD設計工程を実現できるだけでなく、インポートおよびエクスポートを手動で操作する場合のミスも防止できます。そして効率的なデータ交換を促進し、データの完全性、透明性、使いやすさを改善します。 このように、AutoFormソフトウェアの「QuickLinkから共有」ボタンをワンクリックするだけで、容易にデータを交換し、部品開発の構築や決定を促すことができるため、部門間の障壁を超えた意思疎通が可能になるのです。必要なすべての情報が揃うと、次のステップで、より適正な判断を下すことができます。 QuickLinkを使ったAutoFormソフトウェアの形状ワークフロー 製造工程、特に金属の切削分野に関するM.ユージーン・マーチャント博士の素晴らしい功績について、彼の言葉から学びました。マーチャント博士は、デイトンからほど近いシンシナティを拠点にご活躍されていました。この博士の言葉は、世界中の「Easy」ボタンが、ボタンから抽出された情報を操る人間を超えていないことを示しています。 「技術および技術の活用は、それだけで素晴らしいものですが、その技術を操る人材を適正に活用しなければ、立ち行かなくなります。適材を適所に活用してはじめて、技術がその潜在能力を最大に発揮します。」 M.ユージーン・マーチャント博士[1] 「Easy」ボタンによって、私たちがより重要な仕事に集中でき、製造工程全体の改善が促進されることを願って止みません。 [1] https://www.automationmag.com/images/stories/LWTech-files/43%20Dr.%20Eugene%20Merchant.pdf - [ヒュンダイ社NCグループがCAEデジタル・エンジニアリングでトリムライン展開の工数50%削減に成功](https://japanforming.com/pdでのトリムライン展開の工数削減/) - 本稿では、現代自動車株式会社(以下「ヒュンダイ社」)ウルサン工場のNCグループがプレス成形シミュレーションを活用し、トリムライン展開の効率改善を実現した事例を紹介します。ウルサン工場プレス金型技術部門のレイアウト部は、3年前にAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを導入しました。今ではトリム機能をすべてのサイド・パネルだけでなく可動部品にも使用しています。この取り組みについて報告します。 以前、この部署では3つのソフトウェア(Dynavista、Edge-Trimなど)を同時に使っていましたが、複数のソフトウェアで1回のループを完了するまで長時間を要していました。 当時のCAD/CAMグループでは、トリムラインが一致しないことが大きな問題でした。しかしエンジニアのキム・セヨン氏は、AutoFormソフトウェアを活用し工数の大幅削減が実現するまでを目の当たりにしています。 3年前、セヨン氏の部署にて、グループ会社の起亜自動車のトリムライン展開が非常に優れていることが話題に上がりました。同社の展開手法について手がかりを得るため、セヨン氏はすぐにセミナーを受講し、使用しているソフトウェアが AutoFormであることを知りました。その後間もなく、ウルサン工場のNCグループでは、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAの精度と信頼性について従来の手法との比較評価を行い、正式な導入に至りました。 CATIA環境下で作業を完結できるため、新たなプログラムの操作方法について学ぶ必要がなく、またこのソリューションの利便性が高いことも、 NCグループから報告されています。つまり、操作が簡単な上に、仕事を大幅に軽減することができるのです。さらには、レイアウト設計者が自身の手でトリムラインを展開できることも、工程全体の効率化に貢献しています。また複数のソフトウェア間で不具合領域とサイド・パネルをペアリングする厄介な作業がなくなり、大幅な工数削減が実現しました。 その一例として、サイド・パネルの場合、トリムラインの作業に関するデータをソフトウェア間で転送するには多くの手間がかかるため、1日で終えることはまずありませんでした。しかし今では同じ作業を4~5時間ほどで完了できるのです。これは作業工数の50%削減に相当します。 図1: AutoFormを活用したトリム展開 この工数削減の成功例は、連鎖反応を引き起こしました。ヒュンダイ社は AutoFormソフトウェアの使い勝手の良さや高い利便性を評価し、部品サプライヤや金型メーカーにソフトウェアの検討と導入を勧めました。韓国ではヒュンダイ社の細部まで行き届いた検証プロセスや標準が広く知られていますが、今ではパートナー企業がむしろ積極的なユーザーとなり、ヒュンダイ社よりも多くの機能を使いこなしています。たとえばあるサプライヤは、トリム機能以外にも、サーフェス拡張、簡易的な見込み補正、モデリングなどにもAutoFormソフトウェアを利用しています。設計部が直面していた最大の問題は、社内のCAD/CAMグループとのファイル互換性の確保でしたが、設計とCAD/CAMが同じソフトウェアを使用することで、利便性が飛躍的に高まったのです。 ヒュンダイ社ウルサン工場NCグループのキム・セヨン氏は、AutoFormの導入は円滑に行うことができたと述べています。また、CATIAソフトウェアのプロバイダの対応と比べても、韓国のオートフォーム社が格別に協力的で、きめ細かなサポートを受けられたため、部署でも歓迎されたとも語ってくれました。その結果、ウルサン工場のNCグループは、不便であってもCATIAを使い続けるしかない中、AutoFormのみを使用したいという要望が高まっています。 図2: ヒュンダイ社ウルサン工場のCAD/CAMグループがすべてのモデルにPDを使用 オートフォーム社では、韓国で工数削減という結果を導くことができたことを誇らしく思います。適正な戦略は大きな成果を導くことが証明されました。ヒュンダイ社NCグループの皆さん、素晴らしい結果をありがとうございました。 - [フォード社がTriboForm摩擦解析でアルミ製フードのわれを解消](https://japanforming.com/triboformでアルミ製われを解消/) - 新型フォード・トランジットの新たなアルミ部品のわれを防止 このブログ記事では、新型フォード・トランジットの新たなアルミ部品の設計およびトライアウトを担当したフォード・オトサン社金型工程責任者、セム・ビルギィリ氏のインタビューをお届けします。初期のシミュレーションでは部品の不具合は検出されませんでしたが、生産中にフード・インナーのアセンブリにてわれが発生しました。シミュレーションでは、摩擦係数は0.12の一定値が適用されました。高度摩擦モデルを適用すると、はじめてプレス成形シミュレーションが正確な数値を示し、トライアウトで発生したわれを正しく予測できました。以下、その全容をお読みください。 トルコにあるフォード社の生産工場で行ったアルミ製部品の初期シミュレーションでは、われのリスクは検出されず、結果はすべて安全を示すグリーンでした。フォード・トランジットは同社の最新モデルです。そして発表前の設計段階でシミューレーションした部品は、フード・インナーとフード・アウターのアセンブリです。ビルギィリ氏は次のように説明してくれました。「通常は鋼材で生産する部品ですが、当社の軽量化計画を推進するために、アルミ製の部品を作成することになったのです。実際、フォード・トランジットにアルミを採用するのはこれが初めてです。欧州や北米のフォード社が推奨していたプレス成形シミュレーションの摩擦設定をもとに、0.12の一定摩擦係数を適用することにしました。これは業界でも一般的に適用されている数値です。」 図1:一定摩擦係数を使ったグリーン・シミュレーション(左)、トライアウトでのわれ(右)。 「推奨値を適用した摩擦設定でプレス成形シミュレーションを実行し、スプリングバック見込み補正を含む初期のシミュレーションにて、安全を示すグリーンの結果に達しました。図1の左側がそのグリーン・シミュレーションです。このため当然ながら、このプレス成形はあらゆる面で「安全」だと判断しました。そこでこの結果をもとに金型を加工しました。」とビルギィリ氏は続けます。 「しかし最初のトライアウトで、インナー・パネルに予想外のわれが発生したのです。図1の右側の画像にそのわれを確認できます。最初、これはトライアウトに起因する不具合で、スポッティングなどが原因ではないかと考えました。そのためプレス機の金型を調整することで、この不具合を解消しようとしました。しかし3週間にわたって同じ結果ばかりが続き、ストレスも溜まるばかりでした。この部品に1日2シフト体制でかかり切りとなり、コストも大きく膨らみました。トライアウト・チームでは長年の経験を頼りにさまざまな方法を試しましたが特定の領域に発生するわれを解消することができません。際立った効果を得ることができない中、最後にシートの潤滑剤を増量したところ、ついに変化が現れました。ようやくトライボロジ挙動がアルミ部品の品質に大きく影響することが判明したのです」。 TriboFormのヤン・ハーマン・ウィーベンハ氏は、アルミニウムが摩擦および潤滑にとても敏感である理由を、こう説明してくれました。「アルミニウムは鋼材よりも柔らかく、成形性が低くなっています。だから摩擦に敏感なのです。」さらに説明を続けます。「そのためアルミの金型サーフェスについても、鋼材とは扱いが異なる場合もあるのです。金型サーフェスに研磨などの処理が必要な場合もあるのでご留意ください。」ビルギィリ氏は「確かにアルミは鋼材より問題が多いので、フォード社ではスクラップ・カッターを使用することはほとんどありません。」と同意し、またこう述べました。 「摩擦に敏感な工程にはTriboFormの高度摩擦モデルが有効だという評判を耳にしていたので、この摩擦と潤滑の効果をさらに検証するために、フォード社からTriboFormソフトウェアを使った検証について打診しました。TriboFormを使ったシミュレーションの結果では、われの発生が示され、トライアウトの結果と完全に一致しました。」図2にその結果を示しています。 図2: TriboFormを使用したシミュレーションの結果(左)が初期トライアウトの結果(右)と一致し、両方がわれの発生を示しています。 図3:一定摩擦係数を使った標準的なシミュレーション(左)と摩擦が時間に応じて局部的に変化するTriboFormを使ったシミュレーション(右) ウィーベンハ氏の説明は次のとおりです。「0.12の一定摩擦係数を設定した標準的なシミュレーションでは、金型とシートの摩擦はパネルの表面全体に均一です。図3をご覧ください。しかしこれは実際の挙動とは全く異なります。図3の右図が示すとおり、TriboFormプラグインを使用すると摩擦係数が変動することがわかります。実際の摩擦は、部品のすべての領域で異なります。形状ビード部分で、比較的高い圧力が摩擦挙動に及ぼす効果をはっきりと確認できます。またドロービードを通過する材料の相対スライド速度に注目すると、摩擦挙動の低減を見ることができます。われが発生する領域では、局部的な低い圧力とスライド速度が原因で摩擦が相対的に大きくなっています。この領域の局部的な引き伸ばしは、部品の流入に支配されるため、摩擦挙動は形状ドロービードによって決まります」。 「フォード社で摩擦結果を確認し、非常に驚きました。いつも一般的な0.12~0.15の一定摩擦係数を設定していたからです。シート・サーフェス上の摩擦値が一定でないことに目が覚めた思いがして、すぐにわれの原因を理解しました。この件はフォード社にとって得難い教訓となりました。今後さらにアルミ部品の増産が見込まれるため、TriboFormソフトウエアを購入すべきだという結論に至りました。」とビルギィリ氏は述べています。 図4: 新たなシミュレーションをもとに、2番目のドロービードを局部的に取り除きました。 またビルギィリ氏は、次のように付け加えています。「TriboFormプラグインをはじめとしたプレス成形シミュレーションの性能強化によって、われの不具合をリバース・エンジニアリングできるようになりました。図2をご覧ください。不具合を解決する最短の近道は、図4が示すとおり、2番目のドロービードを取り除くことであることに気付きました。この修正を金型に適用して、再度トライアウトを行うと、図4のとおり、部品のわれは解消し、完璧なものになりました」。 協力:Automotive Circle 取材協力: セム・ビルギィリ氏(フォード社) & ヴォルカン・カラクス(AutoForm) - [50%以上の工数削減を可能とする革新的な見込み補正ソリューション](https://japanforming.com/processdesigner-for-catia/) - 近年、スプリングバック予測とロバスト性の検討に関する技術は進化しています。精度の高い金型見込みデータを作成するためにはCAE成形シミュレーションとCADシステム間のデータを低コストで効率的に連携させ、かつ情報の一貫性を保つ必要があり、この技術に関してはまだ多くの課題が残っています。特に外板部品の場合、クラスAサーフェス品質の確保や、面ひずみ対策、金型のたわみなどを見込んだ切削可能な金型データも求められるため、非常に複雑かつ繊細な対応が必要なプロセスとも言えます。 スプリングバック見込みを効率よく行うため 複数工程設計案を検討する段階では、成形性の問題だけでなく、後工程で行うスプリングバック見込みの負荷を減らすために、部品形状・金型形状を含む方案と加工条件を踏まえ、見込み前にスプリングバックを「コントロール」することが重要です。「コントロール」とは、スプリングバックの最小化、いわゆるバック量をできるだけ削減すること、そしてバック量のバラツキを最大限に抑え、安定したスプリングバックの挙動を確保できるロバスト性を持つ最適なプロセスを検討する必要があります。その「コントロール」のプロセスは効率的に見込み補正を行うために、非常に重要な前提条件となるステップです。 現状の問題点 従来の見込み補正手法では、スプリングバック解析の結果やパネルの実測データを参照しながら、ベテランの経験や指示に基づいて、CAD上にて手動見込み作業を実施することがほとんどでしたが、近年CAE解析用見込み補正ツールを用いた見込み補正検討は増加傾向にあります。しかし、補正ツールから出力された補正ベクトルを扱うCADシステムはまだ少ないため、多くの場合はIGESといった切削加工に不向きな中間データ形式を出力し、自社のCADシステム内で面の張り直し作業を行います。膨大な工数がかかり、場合によっては一回の修正のために数日から週単位で時間がかかるケースもよくあります。さらに、異なるシステムを跨いての作業となるため、設計変更の対応や、データのやりとりが発生し、情報パラメータの一貫性を保つことが大変難しくなります。 自動見込み補正プロセスの概要 これら現状の課題を踏まえると、同じシステムの中にてベクトル・フィールドを利用し、直感的かつ迅速に切削可能なCAD面品質の見込み面を自動生成できる見込み補正ソリューションが不可欠となってきます。 下図で示しているように、はじめは解析見込み補正ツールにて、正確なスプリングバックの結果を元に見込み戦略を立てながら、CAE上で見込み補正検討を行います。そして、検討結果の最終アウトプットとして、補正ベクトル・フィールドを出力してCADシステムに引き渡し、補正領域と補正方案を定義することで、自動的に見込み補正形状を作成するシステムです。補正ベクトル・フィールドは、座標値と、ベクトルを持つテキスト形式でPDMによるデータ連携に対応します。さらに、解析計算モデル化に使われたダイフェースデータ情報がパラメトリックでCADシステムと連携されているので、見込み形状作成後も繰り返し作業における手間が省かれます。またベクトル・フィールドの調整と面作成オプションの組み合わせで面質の向上と共に様々な見込み補正が可能です。 自動見込み補正オプション 様々な状況に対応できるように、異なるタイプの見込みオプション機能があります。例えば、①見込み補正解析ツールから転送されたベクトル・フィールドを直接利用するタイプ;②面品質の高い「ベジエ・サーフェス」を採用した参照サーフェスとターゲット・サーフェスを定義することで、自動的にベクトルが計算され、指定した領域にて非常に円滑な見込みサーフェスを生成でき、Class-A領域も活用できるタイプ;③回転、移動、固定など曲率変化をさせない変換オプション;④外部面を埋め込み、その間を迅速に補正する外部オプションなどがあります。見込み補正実施後、様々な埋め込み式の分析機能で確認ができ、全ての作業は一つの「見込み補正エディタ」の中にて実行できるため、非常に直感的で分かりやすい、操作も簡単なプロセスとなります。上記Door Innerの事例では、最初に補正ベクトル・フィールドの情報を読み取り、全体的な見込みを迅速に実施します。そして品質要求に基づき、参照/ターゲット見込み補正機能を用いて、しわ抑え面の面品質を改良します。次に、機能性のニーズに合わせて、曲率保持が必要なパッチなどの領域にて、局所的な修正を行います。さらに、竪壁の領域において面品質を向上するため、参照/ターゲット補正オプションと外部機能を併用することで迅速的に改良や調整を行います。最後に、見込み補正エディタの埋め込み機能を有効にすることで、全ての補正領域は自動的に組み立てられ、面品質の高い見込み面を簡単に生成できます。見込み面生成後、入力された補正ベクトルと補正結果との差分を表示する乖離量分析や、金型形状全体及び領域毎の体積偏差を表示するエリア分析、ベクトルのシェーディングを表示する総変位量の可視化、見込み前後の断面分析、曲率分布およびゼブラ・ライン解析など、様々な見込み結果解析ツールを用いて、面品質を確認できます。 その他の見込み補正事例 複数の見込み補正オプションを活用することで、下記事例1のような補正ベクトル・フィールドと参照/ターゲット見込み機能を併用しながら品質要求の高い外板部品(Class-A)の見込み補正、事例2のような、補正ベクトル・フィールドを使わず、ベジエ・サーフェスを採用した参照/ターゲット機能を用いて変形量を指定したルーフ(Class-A)中心部の見込み、そして事例3のように局所的な倒し込みなど、様々な場面で、見込み補正を直感的かつ迅速に行うことができます。 まとめ プレス金型設計プロセスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて、CAEとCAD間の連携の重要性が高まり、一つのシステムの中において、切削可能な見込み面品質を確保しつつ、さらに大幅な工数削減が求められています。本ソリューションの導入効果について、初期検討段階の金型形状作成から、スプリングバック見込み補正プロセスを経て、最終NCデータ完成まで一連の流れの中で、頻繁な修正作業や、設計変更または製品置換の対応など、全てのデータがフル・プロセスを通じてパラメトリックに管理されていますので、複数のシステムを跨ぐ作業フローと比較し大幅な工数低減が実現できます。CAE解析結果を反映した切削可能な高い精度のCAD見込みデータを迅速に作成出来るだけではなく、金型設計タスク毎のCAE検証とCADシステムとの連携により、優れた面精度の金型形状データによる検証は可能になり、面倒な金型データ作成のワークフローの簡略化および標準化も可能です。一貫的且つパラメトリック管理によるデータの標準化と設計意図の透明化により、設計変更時の形状編集や解析検証において大幅な工数低減やコスト削減が期待できます。 その革新的な見込み補正技術と手法は、自動車OEMのみならず、多くの部品メーカーや金型メーカーでも幅広く活用されています。 複数の車両開発プロジェクトを通じて、特に外板部品においてClass-Aサーフェス品質を確保しながら、50%以上の工数削減を達成でき、短時間且つ切削可能な高品質な見込み面の作成手法を確立した事例が豊富にあります。オートフォーム社は今後もこの新しい自動見込み補正の技術と手法を活用し、より日本のお客様からの要望に応える形で、実用的かつ標準化に向けた開発を続けてまいります。 - [CATIA環境下の新たな金型設計手段「ProcessDesignerforCATIA」開発の舞台裏](https://japanforming.com/processdesignerforcatia-開発の舞台裏/) - 今回の投稿ではオートフォーム社を代表する3名の役員から伺ったAutoForm-ProcessDesignerforCATIA の開発秘話をご紹介します。 CAEソフトウェア市場を主導する企業が「CAD」の世界に飛び込み、CATIA環境に直接統合されたツールを開発するきっかけとなった契機は、どのようなものだったのでしょうか。またAutoForm-ProcessDesignerforCATIAが市場にどのような革新的手段をもたらし、またダイ・レイアウトの設計工程にどのような変革をもたらしたのでしょうか。 オートフォーム社CEOのヴァルデマー・クブリ、ソフトウェア開発マネージャのマティアス・ピーチ、コーポレート・マーケティング・ディレクタのマーカス・トマとの対談から、工程設計に関するAutoFormソリューションについて、多面的に探ってゆきます。 ダイ・レイアウトの設計工程は、基本的に、ドロー、トリム、フランジおよびフォームの各工程の金型サーフェスを作成する作業です。後に切削機のツール・パスを作成するため、金型サーフェスは必ずCADで作成します。 この作業を行う上で、様々な製品を(単独または併用で)利用することができますが、しかし ヴァルデマー・クブリはこう指摘します。「AutoForm-ProcessDesignerforCATIAが開発されるまで、CATIAには金型サーフェスの作成に特化した機能というものはなく、エンジニアの作業は煩雑でした。様々なCADシステムが広く使われていたにも関わらず、プレス成形に必要なすべての段階を効率的にサポートすることに適したシステムはひとつもなかったのです。特にプレス成形工程全体のダイ・レイアウトを金型の設計段階にて、効果的に定義および検証できる機能は非常に限られていました。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。」 「このソフトウェアによって、CATIA環境にいながらCAD品質のダイフェースを作成することが可能になります。機能の使い勝手もよく、CATIAに不慣れな設計者でも簡単に操作できます。さらには会社全体の工程設計を標準化することを可能とし、CAD品質のダイフェース作成時間を大幅に短縮するといった利用もあります。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。をお使いいただくことで、作業の透明性、データの一貫性、そしてエンジニアリング工程をサポートする様々な機能を実感していただけると確信しています。」と、マーカス・トマは述べています。 フォルクスワーゲン社をはじめ、多くの大手企業がAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを採用し、積極的に活用しています。 ダイフェースを円滑に作成するための4つの指針 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。がもたらす技術革新を、開発マネージャのマティアス・ピーチは、以下のように説明しています。 「高品質の金型サーフェスを作成するため開発されたAutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。によってもたらされる作業フィロソフィーは、4つの指針に基づきます。これらの指針を適用すると、ダイフェースを簡単かつ迅速に作成できます。これら4つの指針は、大手企業や大手金型工場の経験豊富なCADエンジニアでさえこの指針の適用を即決し、すぐに標準手法として採用しました。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。は、標準化された作業モデルとして、これらベストプラクティス手法を業務に取り込むことができます。」 まず第1の指針は「独自機能」の作成です。独自機能の作成とは、「一般的」な金型サーフェスやカーブの作成において、工程設計者の日常業務をサポートすることを目指しています。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CATIA環境にいながらドロー型から2次工程用金型までのすべての設計を行うことを実現した、全く新しい製品です。によるCADベースのカーブ作成と有限要素法を組み合わせ、フランジの計算を実行することで、トリムラインを正確に検討することができます。例えば設計者は、丸や台形といった異なる断面のドロービードや適切なエンド形状を、バインダと金型サーフェスへ、同時に直接指定できます。加えてユーザーは全工程の金型を見込み補正でき、また例えばサーフェスの見込み補正を手作業で行うことができるだけでなく、CAEモジュールのAutoForm-Compensatorplusで作成した見込み補正フィールドを自動でインポートすることも可能です。互換性に問題はなく、データの調整も必要ありません。しかし最も重要な点は、お客様からもご意見を頂戴しているとおり、CATIAの機能に不慣れな多くのユーザーが、操作に苦労することなく作業を完了できているという点です。」と、マティアス・ピーチは述べています。 図 2 - 独自機能例 第2の指針は「金型の再エンジニアリングおよびサーフェス編集」です。と、マティアス・ピーチは続けます。「ダイ・レイアウト設計者がサーフェスをモデリングする場合、数多くのコマンドを必要とするCATIAネイティブとは対照的に、AutoForm-ProcessDesignerforCATIA には汎用的なサーフェスを作成するために必要なコマンドがすべて揃っているため、操作がとても簡単です。連続した部品の境界サーフェスを定義する機能、ギャップの接続や穴埋めの機能、「余肉」のモデル化およびダイ形状の作成機能など、エンジニアのニーズをすべて満たしているのです。これらの機能を組み合わせることで、適切なサーフェス連続性を保持しつつ、サーフェスの編集を可能とし、再エンジニアリングを容易にします。このサーフェスは、例えばオーバークラウンや見込み補正等、モデリングの下流工程でそのまま使用できるため、非常に有効です。」 第3の指針は「標準化」です。とマティアス・ピーチは述べています。標準化されたテンプレートを使うことで、会社全体で一貫性をもってデータを共有できます。新規形状のインポートおよびパラメータの設定によって、自動的に会社標準を満たし、かつ一貫性のある、新たな工程設計を定義できます。標準化によって、社内部署間の協力体制、そして社外OEMやサプライヤとの連携が改善されるでしょう。」とマティアス・ピーチは述べています。 図 4 -テンプレートによる標準化 最終部品の形状に応じた特有の複雑さ、そして独特な成形工程を有するドロー型の設計は、膨大な時間およびリソースを消費する工程です。ドロー型のサーフェスに関しては、エンジニアリング段階や工程設計にて、複数回の修正を伴います。金型サーフェスの精度を維持しながら迅速に検証を行うことが、第4の指針となる「手法」の定義に重要です。 マティアス・ピーチは以下のように説明します。「設計作業全体を論理的で独立したより簡易的なステップ(サブタスク)に分割することで、複雑なダイフェース設計を容易にする高度な手法を採用しています。各ステップで確認するセグメントが少なくなるため、最低限の部分のみを集中的に確認できるのです。さらに部品に依存する形状と深絞りに関連した形状は、それぞれ別途作成します。この明快で論理的な段階型のアプローチには、前述のテンプレートが不可欠です。また各段階のタスクまで誘導するガイダンスとしても有効です。その結果、設計の構築が明快になるため、修正や更新を容易に実行できます。」 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAの利便性をまとめる上で、コーポレート・マーケティング・ディレクタ、マーカス・トマのコメントをご紹介します。「AutoForm-ProcessDesignerforCATIAをお使いいただくと、サーフェス・モデリングの速度に、まずお気づきになるでしょう。これは製品開発サイクルの短縮に直結します。作業効率は最大5倍改善し、初期のダイフェース設計および既存設計の修正を考慮しながら、高品質なダイフェースを迅速に作成することが可能です。作成したすべてのダイフェースはパラメータ化されているため、さらに追加の修正も数秒で実行できます。 またAutoForm-ProcessDesignerforCATIAで作成したサーフェスは、コントロール要素数の大幅削減や適切なサーフェスの連続性に特徴づけられます。そのため比較的短く簡易的な学習曲線にて、高いサーフェス精度を実現することが可能です。反対にCATIAネイティブで作成した高品質のサーフェスは、コントロールするパラメータの数が非常に多いため、より経験豊富なユーザーを必要とします。言い換えますとAutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、より簡易的なサーフェスの表現にて、CATIAネイティブと同等の品質を実現できます。つまりすべてのサーフェスはクラスAの仕様を満たすため、そのまま機械加工のツール・パスの検討にお使いいただけます。 AutoForm-ProcessDesignerforCATIAが高い評価を得ることは私たちの励みとなり、今後さらなるパフォーマンスの向上と、3D金型設計やNCの準備などの重要な機能強化につなげることができるのです。」 - [スプリングバックの要因評価に有用な結果変数の紹介](https://japanforming.com/スプリングバック要因評価の結果変数紹介/) - 近年では、衝突安全性や軽量化の両立をはかるため、高張力鋼板を用いた難成形部品の取組みが進んでおり、数年前には1.0GPa級の高張力鋼板が登場しています。今では1.5GPa級の高張力鋼板も登場し、部品成形の難易度がさらに上昇してきています。高張力鋼板の取り扱いは、OEM、Tier1部品サプライヤのみならず、金型メーカーでの取り扱いも珍しくありません。このため、初めて高張力鋼板を取り扱うメーカーも増え、そういった中、シミュレーションを用いてノウハウの蓄積、加工可能な設計条件の検討も増えてきています。中でも、シミュレーションを用いたスプリングバックの予測に関しては困難を極めているとの声も多く見受けられます。 スプリングバックを抑制するための、凍結形状や公差内に寸法を収めるための見込み補正などの対策を検討する必要がありますが、まずは成形過程の影響を正しく分析するためにAutoFormの評価結果変数、「接触距離」と「相当塑性ひずみ速度」についてご紹介します。 接触距離 接触距離の結果変数は、シートと上型もしくは下型までの距離を示します。 この結果変数を用いて成形過程を確認することで、次の現象が確認できます。 ・前工程で発生したスプリングバックが次工程のパネルフィッテイングに及ぼす 影響。次工程のLocatingでかつぎ状態シートの安定性を確認します。 評価手順は、タイム・ステップを次工程のLocatingに設定します(Locatingを有効にするには、各工程のOP設定の「工程の最初の自重/位置決め」項目にチェックを入れます)。続いて、接触距離を表示し、シートの下側を確認することで、下型とシートの距離が表示され、安定して次工程の金型にフィッティングしていれば問題ありませんが、意図しない箇所で数値を検出した場合など、かつぎの発生、不安定性を確認できます。 シートが安定して金型に乗らない場合、次工程でシートをパッドで押さえる際に意図しない成形が発生し、寸法精度や面精度に影響を及ぼすこともあります。 かつぎの要因として、前工程のスプリングバック量が、実際の正規形状から乖離してしまうことで発生してしまう場合や、前工程の成形圧が足りない事で、金型が下死点まで押し切れず、正規形状が成形できずに発生してしまうと推測できます。また使用しているTool間のアンマッチも考えられます。 また、接触距離の評価では、タイム・ステップを進めることで、形状しわの検出、材料余りの確認にも活用することができます。 相当塑性ひずみ速度 相当塑性ひずみ速度は、時間当たりのひずみ変化量(ひずみ変化率)を示します。 ※速度に依存する為、工程ステージ>PL>成形モーション>速度の値がデフォルトの233.33の際にはカラーレンジを最大1、最小0 に設定します。 この結果変数を用いて成形過程を確認することで、次の現象が確認できます。 ・Closingのタイム・ステップ時にパッドで押さえた際の意図しない成形の有無 の確認 評価手順は、タイム・ステップを絞り工程の次工程のClosingに設定し、相当塑性ひずみ速度の結果変数を表示します(カラーレンジは最大1 、最小0に設定)。 シートと上型が接触してから完全にClosingするまでに数値が検出された場合、パッド成形が発生していると判断できます。(レンジ幅の設定値はAutoFormの経験に基づきます) パッド成形が見られた場合、接触距離での評価同様、かつぎや、安定した状態でシートが金型に乗っていない状態が推測されます。このような場合、成形荷重、工程方案の見直し、見込み量の修正など、工程間で不具合を引き継がないようにする対策が必要になります。 ※シミュレーションで担ぎがある状態のものを見逃して現場に持ち込んだ場合には、現場で担ぎを修正することになります。これはシミュレーションと実パネルとのアンマッチを生むことになり、シミュレーション精度の低下につながります。 補足 今回紹介した結果変数での評価で、金型が下死点まで押し切れていない状態が例として挙げられました。バインダやパッドといった金型のサポート設定で、金型が「下死点で閉じる」設定になっていない場合、実際の金型同様、加圧不足で型開きが発生します。 設定としては現実の挙動を模擬しているため問題ありませんが、現象としては押し切れていませんので、問題がある場合もあります。型開きが発生しているかどうかは、計算後のソルバー・ワーニングを確認してください。 下記の内容が表示されている場合、型開きが発生していると分かります。 Warning: XXX controlled tool opened. (occurred XX times, first at time XX) 今回ご紹介した機能などを使用し、スプリングバックの要因から調べる事で、工程設定が悪いのか、凍結形状や見込みが必要かなど、適切な判断や対策が行えるため、多角的な評価を行う事を推奨します。 - [株式会社ワイテックにおける若手エンジニアの取り組み](https://japanforming.com/株式会社ワイテックの若手エンジニアの取組/) - ~ 超ハイテンのスプリングバック予測や量産時の突発割れ予測への適用 ~ 株式会社ワイテックについて 広島市に隣接する安芸郡海田町に本社を置き、クロスメンバーといったシャシー部品やリヤサイドフレームといった車体骨格部品を主力とし、部品製造、金型設計製作、組立治具設計製作を行っています。ワイテックでは、年々高くなるプレス加工の難易度に対応するためAutoFormを開発初期の成形方案検討段階で活用することに取り組んできました。つまり成形シミュレーションの位置付けを、型設計後の机上トライから、部品検討や工程計画段階で部品形状や加工工程の最適化へと重点を変化させることで、より大きな成果を挙げてきました。 デジタルものづくり塾を活用 AutoFormのようなデジタルツールを更に活用し業務プロセスを変革していくためには若手技術者の育成も欠かせません。そこでワイテックでは、自らもアドバイザー企業として参画する「デジタルものづくり塾」を活用することにしました。これは広島経済同友会の「ものづくり委員会」が主催し、ひろしま産業振興機構「広島デジタルイノベーションセンター」が協賛する取り組みで、「デジタルものづくりの学びと実践」を行い広島の「ものづくり」技術力の底上げに貢献することを狙いとしています。 本稿では2020年度の「デジタルものづくり塾」に参加した若手技術者が取り組んだ、業務プロセス革新を目指したAutoForm活用拡大に向けた取り組み事例を二つご紹介します。 デジタルものづくり塾に参加された石井様(アドバイザー)、益田様、瀬越様 超ハイテンのスプリングバック予測技術の向上の取り組み【益田 幸樹様】 プレス部品の超ハイテン化が進むにつれ、寸法精度対策が間に合わず狙いの初回品質を得ることが難しい部品が増えてきました。超ハイテンではスプリングバックが非常に大きく出るため見込み形状で対策をやり切る事が困難であり、あらかじめ部品形状に反りや捩れを抑制する形状を付加しておくことが効果的です。部品形状を変更するには開発初期の製品形状凍結までに寸法精度対策の検討を行う必要があります。それにはAutoFormで成形性解析に続いて寸法精度対策まで行う必要があります。 しかしワイテックではAutoFormを寸法精度検証に使ってなかったので、どのくらい現物との一致度があるのか確認することから始めました。金型形状や加工条件を実機と合致させていたにも関わらず、当初は実機パネルより過剰にスプリングバック(反り)が出ていました。誤差要因の調査を進めて行ったところ、パッド圧などの加工条件の寄与度は小さく、材料物性なかでも加工硬化特性の影響が大きい事が分かりました。 鋼板は板厚2.0㎜の低降伏比型780級ハイテンのため、曲げ曲げ戻しなど繰り返し塑性変形を受けた材料の挙動を精度良く表現できる吉田‐上森モデルを使っていますが、当初の材料パラメータは従来から利用している物をそのまま使用していました。しかしAutoFormの材料エディタで加工硬化曲線を再確認すると、材料試験時の加工硬化曲線と隔たりがあることが判明しました。そこで降伏応力を下げ、高ひずみ域の応力が高くなるよう材料パラメータの見直しを行い、材料試験結果と一致するようにしました。 解析に用いた材料物性(加工硬化特性) 見直しを行った材料データを用い実機の寸法計測結果と比較したところ、再現精度が改善している事が確認できました。N増しの同一鋼種の他部品での検証でも、同様に実用上十分な再現精度が得られました。 N増し検証での実機パネル再現状況 実機とのコリレーションが取れたので、パネルの捩じれの低減に取り組みました。成形後(離型前)の残留応力に着目し、ねじれの駆動力となっている部位(応力分布)を特定し、応力分布を変える形状変更を施す対策が有効だと確認できました。 この検証結果を受け、ワイテックでは今後も継続して開発初期の精度対策を行う予定です。 残留応力に着目した捩れ低減対策の効果 量産時の突発割れの事前検証技術の確立に向けた取り組み【瀬越 咲貴様】 机上検証でOKだったのに量産中に突発割れ発生という現象が希に発生します。現場では材料特性の変動や経年変化による摺動抵抗の変化など種々の変動が起こりますが、机上検証時にこれらの変動要因を考慮するため不具合判定時の安全率を多く取ると厳しすぎる評価となります。そこで有効なのが統計的手法であるAutoForm-Sigma機能の活用です。ロバスト解析によって各種要因の変動が成形結果に与える影響をシステマチックに分析し、必要最小限の対策で現場変動に強い金型方案や加工条件へ改善することが可能です。 ワイテックでは現場で変動が大きそうな要因(材料特性、摩擦係数、パッド圧など)とその変動幅を仮設定し、量産中の8部品にロバスト解析を適用しました。その結果は以下のようになりました。 ①量産中にワレの起きていない5部品はロバスト解析結果も問題ないと判定 ②量産中に問題が起きていないがロバスト解析ではワレ発生懸念ありと2部品で判定 ③量産中にワレが起きたがロバスト解析では問題なしと判定が1部品 突発割れを予測できなかった③のケースの要因を調査したところ、量産材の加工硬化特性の変動が想定より大きく、ワレ発生時の材料では28%も変動している事が判明しました。そこで降伏応力と強度の変動範囲を見直しロバスト解析を再実行すると、降伏応力の変動の寄与度が大きく出るとともに、突発割れが発生する懸念があることを予測できました。 量産時のフランジ端に発生する突発割れの予測 また、現在は突発割れが起きていないがロバスト解析で割れ発生の懸念ありと出た②のケース2部品に関しては、最も影響の大きい因子として板厚と摩擦係数がそれぞれ挙げられました。現在は問題が起きていないものの、材料ロットによって板厚の変動や、経年変化で摺動特性が変わり、割れ発生が懸念されます。そこで板厚管理の厳格化や金型に表面処理を行い、対策の効果を継続確認していく事にしました。 今後は他の部品でもロバスト解析と経過確認を継続し、実績を残していくよう取り組む予定です ロバスト解析で突発割れが懸念される部品 おわりに ワイテックでは今後も「デジタルものづくり塾」による若手育成も活用しながら、AutoFormをCAE専任者が使う物から部品担当(工程設計者)が検証に使う物へと進化させ、机上検討を更に充実化させる方針です。 <企業概要> 株式会社ワイテック 設立:1960年2月 所在地:広島県安芸郡海田町曽田3-74 従業員数:1,504名(2020年4月1日現在) 事業内容:自動車部品製造、金型設計製作及び組立冶具設計製作 URL:https://www.ytec-gr.co.jp/ - [デジタル・トランスフォーメーションが創出するバリュー・ポテンシャル: 成功を導き出すプロセス・モデルのデジタル化](https://japanforming.com/dxが創出するバリュー・ポテンシャル/) - プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリの デジタル・プロセス・ツイン(パート2) 時代を創造するのはデジタルです。デジタル・トランスフォーメーションへ適応することによって、時代を切り開くことができます。自動車業界のデジタル化に関するブログ投稿シリーズのパート2では、徹底的なプロセスの最適化に備わるポテンシャルを引き出し活用するために不可欠となる、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのプロセス・チェーンの包括的なデジタル化について紹介します。このシリーズのパート1は、こちらでお読みいただけます。 前回のブログ投稿で説明した組織の分断は、デジタル・トランスフォーメーションによる組織間の連携を確立することで解消できます。このソリューションでは、すべての部署とサプライヤーが、共通のソフトウェアによるワークフローと、共通のプロセス・モデルを使用します。プレス成形プロセスのエンジニアリングやプランニングの包括的なデジタル化を可能にするソフトウェアは、オートフォーム社などが提供しています(図2を参照)。このようなソフトウェアを活用することで、組織内のみならず、サプライヤーや社外の利害関係者とも、情報、データ、履歴をシームレスかつ効率的に共有できます。プロセスの早期段階で確立したエンジニアリングの手法や知見を上流と下流で共有できるため、社内外の協力関係が良好になり、プロセスの効果や効率が向上し、製品品質の向上、リードタイムの短縮、開発コストの削減が実現します。 図1:トラブル対応に対する消極的な姿勢、情報やデータの断片的な伝達、部署間の分断… 図2: …包括的なデジタル化、情報やデータのシームレスな伝達 今年度の後期には、自動車業界において、プレス成形およびホワイトボディのエンジニアリング・プロセス・チェーンのデジタル化が新たなフェーズに移行します。オートフォーム社の新たなソフトウェア・ソリューションを使用することで、プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに関連するすべてのタスクが実行できるようになります。そしてプレス成形およびホワイトボディの・アセンブリ・プロセスを包括したデジタル化から、大きな価値が創出されます。また部署間の協力関係が良好になり、情報やデータがシームレスに流れるため、情報やデータが消失することなく、開発プロセスの大幅な加速や、納期短縮を実現できます。プロセスの下流で対応していた不具合の特定や修正を、より早期段階から行うことで、不具合を回避でき、コストを劇的に削減します。 成功を導き出す包括的なデジタル化 ここまでソフトウェアの技術的観点から、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのプロセスを包括的にデジタル化するソフトウェア・ツールの活用による、自動車業界の業務効率化について概説してきました。データの透明性および明快な意思決定のプロセスをベースに、包括的にデジタル化されたワークフローのコンセプトを導入することから始まります。 まず、図3に示したお客様のデジタル・プロセスでは、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プランニングを、一般的なプロセス・チェーン内で、8つのタスクに分類しています(図3を参照)。これらのタスクが進捗しプロセスの成熟度が高まる中で、コスト、品質、リードタイムなどのバリュー・ドライバが重要な役割を果たします。 オートフォーム社は、お客様が8つのタスクをすべて完了できるよう幅広いソフトウェア製品ラインを含むソフトウェア・ソリューションを提供しており、プロセス全体に渡るシームレスなデータ伝達も可能にしています。オートフォーム社のソフトウェア・ソリューションをお客様のプロセスへ適応させ最大限に活用するには、CAD、プロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)、CAM、エンタープライズ・リソース・マネジメント(ERP)、製造実行システム(MES)などのソフトウェア・システムと連携させる必要があります。 図3: デジタル・プラニングのプロセスおよびバリュー・ドライバ このブログ投稿シリーズのパート1で述べたとおり、自動車業界の技術トレンドとして、デジタル化の導入および活用が急速な広がりをみせています。 プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに適用するプロセス・シミュレーションのモデルは、現実のプロセスを描写したもので、プランニング、エンジニアリング、プロセスの最適化、下流の生産工程における不具合予測といった多岐にわたる目的に活用できます。図3に示した8つのタスクを実行する中で、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プロセス全体が、ひとつずつ形成されていきます。このように作成したプロセス・モデルは、プロセスの物理特性を科学的に解明したものであり、現実世界の結果予測に役立てることができます。そのため、金型工場、プレス工場、車体工場で発生しうる不具合をエンジニアリング段階で解消できるようになります。修正作業の工数はさほどかからないため、プロセス・デザインの工数が圧迫されることもありません。 関連する物理特性をすべて考慮したプロセス・モデルの構築について、図4の図表でコンセプトを説明します。プロセス全体を通して、プロセス・モデルを微調整することで、プロセスの成熟度が高まります。 金型設計が完了し、金型製造が始まると、バーチャル世界から現実世界に移行します。つまり、この時点から現実のプロセスを構築する作業が始まります。図4の緑のラインが示すとおり、バーチャル世界では、プレス成形プロセスのコストやリスクを最適化することができます。このバーチャル世界では、プロセスの最適化をコンピュータ上で解析できるため、プロセスの調整にかかる工数は低く抑えられます。しかし現実世界に移行したとたん、工数が上昇し(赤のライン)、コストやリスクを最適化する能力が大幅に低下します(緑のライン)。言い換えると、デジタル・プロセスのモデルを使用することで、プレス成形やアセンブリのプロセスを仮想的に評価できるため、バーチャル世界にて、コストの最適化、リスクの最小化、そして不具合回避までをも早期段階から対応できます。 図4: 現実のプロセスおよびデジタル・プロセスのモデル 現実世界の金型とプロセスを構築する際には、デジタル・プロセスのモデルと完全一致させることによってのみ、その効果を最大限に活かすことができます。現実のプロセスにてデジタル・プロセスのモデルを活用し、現実とデジタルのプロセス間で即時にフィードバックを反復させることで、潜在的な不具合の対応を俊敏かつ柔軟に行うことができます。さらには、現実世界の金型の測定値や工程データをデジタル・モデルにフィードバックして、デジタル・モデルの改良を重ねることで、現実とバーチャル世界にまたがる隔たりを解消することができます。結果として、すべてのプロセスに、高品質のホワイトボディを最小限のコストとリードタイムで生産するという明確な目標を持たせることができます。 現在OEMでは、全般的にデジタル・プロセスのモデルを使用した部署間のデータ交換や情報伝達が、バーチャルと現実の転換点に至るまで行われていますが、多くの場合この転換点からデジタル・プロセスのモデルが活用されず、エンジニアリング(バーチャル世界)とトライアウト(現実世界)が同期していません。つまり、バーチャル世界で検討された一連のエンジニアリングは、現実世界にて反映されていないのです。エンジニアリング部門の技術者は、バーチャル世界で評価を行う際に、現実世界の制約を考慮せず、その一方、金型工場やプレス工場の技術者は、エンジニアリングの意図に気付かないかそれを無視し、現場で発生する不具合には自らの経験を頼りに対処してしまいます。 その結果、バーチャル世界と現実世界のプロセスが乖離し、実際の生産工程に対するデジタル・モデルの適合性が損なわれ、ともあれば完全に消滅します。すると、事実誤認、作業の重複、不具合対応といった大きな負担が生じ、トライアウトや生産工程に大幅な時間とコストがかかってしまいます。 したがって、デジタル・モデルと現実のプロセスを一致させることのみによって、現実のプロセスに関するすべてのデータや情報を最大限に活用することができ、業務プロセスの包括的なデジタル化による利便性を享受することができます。しかしこれを実現するには、大々的な改革を伴います。 デジタル・プロセスモデルは、エンジニアリング部門と金型/プレス/車体工場をつなぐ橋渡しとしての役割を担います。つまり、デジタル・モデルは、デジタル・プロセス・プランニングにおける唯一のデータ・キャリアとして情報伝達の役割を果たし、部署間による双方向の直接的なコミュニケーションを可能にします。事実、過去のプロジェクトで作成したデジタル・モデルを新たなプロジェクトの開始時から使用し、継続的に改良および改善を行うことで、時間と共に効率および効果をさらに高めます。 図5: 現実のプロセスを設定、監視、制御するデジタル・プロセスのモデル 最後に現実世界におけるデジタル・プロセスのモデルが創出する付加価値について説明します。形状公差に収まり不具合もない製品を生産するには、プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスをバーチャルに開発した後も、現実世界で手作業による修正ループが必要になります。修正ループでは、金型を調整しますが、手作業による調整は、非常にコストが高く、時間もかかります。トライアウトおよび品質ループの回数を減らし、プロセスを円滑に生産工程へ移行するには、デジタル・プロセスのモデルを活用することが鍵となります(図5を参照)。プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・トライアウトおよび生産においては、現実のプロセスを構築するための設計図として、デジタルのプロセスを活用することが肝要です。現実世界で不具合が生じたら、デジタル・プロセスのモデルでその不具合を調査し、現実のプロセスで不具合を効率的かつ効果的に監視、制御、解決するために必要な調整を検討します。トライアウトおよび品質ループの回数を減らし、安定したプレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに移行し維持することによって、幅広く無駄を削減することができます。 - [オートフォーム社の熱間プレス成形技術に対する取り組み - お客様と歩んだ10年の足跡](https://japanforming.com/熱間プレス成形技術に対する取組/) - 熱間プレス成形シミュレーションの進展についての考察 10年ほど前、オートフォーム社はプレス成形部品のシミュレーションにおいて、熱間プレス成形工程のソリューションを発表しました。本稿では、初代からソリューションを活用している金属部品のメーカー、ゲスタンプ社PH標準化/高度製造マネージャのボルハ・フェルナンデス氏と、このソリューションを統括しているオートフォーム社テクニカル・プロダクト・マネージャのアルパー・ギュナー博士から、お話を伺いました。 プレス成形部品の熱間プレス成形工程は、複雑で規模が大きく、躊躇しがちなコンセプトです。この難易度の高い工程は、自動車の軽量化およびパッシブ・セーフティ技術の維持や発展の両端を担う技術手法として、数年をかけて実用化されました。 この技術には、低延性と高いスプリングバックを伴う超高強度鋼材(UHSS)の使用や、この工程における金型の過剰な摩耗など、取り組むべき課題がまだ多くあります。 また熱間プレス成形では、シートの変形だけでなく、材料の微細構造の変換も考慮しなければなりません。そのため、機械的工程と熱工程の連成をコントロールし、適正に定義することが非常に重要です。 工程設計、ダイフェース・レイアウト、金型設計に携わるエンジニアにとって、冷間および熱間プレス成形を適切に運用するには、共通のフレームワークやデジタル・プラットフォームを通じて知見を効率的かつ効果的に共有し、それぞれの核心技術を強化することが重要です。 2009年当時、熱間プレス成形シミュレーション、設計、金型トライアウトを手がける技術系企業のDIEDE社に勤務していたボルハ・フェルナンデス氏は、数あるソフトウェアの中でもインターフェースの使い勝手が抜群に良いオートフォームに関心を持っていました。 「部品のフィージビリティ検討はもちろん、設計した冷却システムの効率確認を非常に重要視していました。当時、この要望に対応しているプレス成形ソフトウェアはありませんでした」とフェルナンデス氏は語っています。 2010~11年に、熱間プレス成形工程をシミュレーションするAutoFormソリューションが初めて発表されたのです。ギュナー博士は、次のように説明します。「技術専門誌やウェブサイト、カンファレンスの議事録といった様々な刊行物を調べてゆくと、オートフォーム社のソリューションが発表されるまで、熱間プレス成形のモデリングの大半が、簡易的な仮定に基づいていたことがわかります。当時のシミュレーション・ソフトウェアではオーステナイト流入曲線のみを使用し、たとえば弾性の温度依存や相依存の体積変化など、多くのパラメータが考慮されていませんでした。工程設計者たちは、材料モデルが単純化されすぎていることを認識していて、より緻密で高精度なソリューションを求めていました。オートフォーム社は最初のバージョンのリリースから一貫して、これらの問題に対処してきました。成形中から後工程のクエンチングまで、超高温での材料の状態を考慮する機械的工程のモデル化にあたっては、ボルハ・フェルナンデス氏が評価していた、直感的で使い勝手の良いインターフェースの開発を重視するオートフォーム社の理念に沿って開発がすすめられました」。 数年のうちに熱間プレス成形の需要は急速に高まりました。この熱間プレス成形工程で製造された最初の部品には、1984年モデルのSAAB 9000などがあります。今日では、ホワイトボディ部品の40%超に熱間プレス成形が採用されています。 図1:冷却水路があるパンチとスポット溶接したパッチワーク・ブランク その後、金型の挙動を極限まで最適化しながら納入時間の短縮を導く、新たな技術手法が開発されました。フェルナンデス氏が先に述べたとおり、鍵となるのが金型の冷却水路の検証です。AutoForm ソフトウェアの最新バージョンに搭載された、冷却システムを定義および検証する機能について、ギュナー博士は次のように説明しています。 「さまざまな技術を活用しながら、求められるソリューションを開発しました。たとえば金型工場では、冷却水路の冷却効率と最終製品特性への影響について、特に検討する必要があります。よって冷却水路を考慮した金型の3D熱伝導を導入しました。またパッチワーク・ブランクの使用頻度が高いことにも着眼し、個別のブランクがスポット溶接で結合されているパッチワーク・ブランクを正確にモデル化する機能を追加しました。これによりパッチワーク・ブランクやスポット溶接の不具合をより正確に検証できるようになりました。他にも温度依存のFLCや温度依存のr値など、材料パラメータをより柔軟に定義できるようにしました。最終的には金型の加熱や部分的な冷却など、さまざまなモデリング手法を順次取り入れました」。 またフェルナンデス氏はこう述べています。「冷却システム試験からプレス成形部品の微細構造の予測まで、AutoFormソフトウェアは幅広い技術分野に対応できます。また、プロセス・ウィンドウ予測モジュール(AutoForm-Sigma)を使い、シミュレーションしたモデルのロバスト性も包括的に検証できるようになりました。AutoFormを使用する主なメリットの1つは、複数のソフトウェアを必要とせず、1つのソフトウェアのみを工程全体に活用できることです。プレス成形工程をシミュレーションし、冷却水路の分布を確認し、展開した外形線を最適化し、部品の金属組織がどうなるか検証できます。これらすべてをひとつのソフトウェアでできてしまうのです。それに加えて、AutoFormは高い技能を有する専門家たちによって監修されています」。 近年、業界を牽引しているインダストリー4.0は、プラットフォーム標準によってはスマート・インダストリーやデジタル・トランスフォーメーションとも呼ばれます。これは精度の高いデジタル技術を活用し、着実な品質改善や大幅なコスト削減を達成するデジタル・イノベーションによって、ビジネス・プロセスの変革を促進するものです。オートフォーム社はこの方向性と同じく、長年にわたってプレス成形プロセス・チェーン全体のデジタル化に対する取り組みを続けています。先日、新製品となるAutoForm-TryoutAssistantを発表しました。これはトライアウトや生産を担当する部署をサポートし、また技術部と工場を双方向につなぐ画期的な製品です。ギュナー博士は、「オートフォーム社は、エンジニアリングのプロセス・チェーンに沿ってプロセスを最適化する効率的なツールを設計者に提供したいと考えています。熱間プレス成形においては、技術開発が進められている新たな手法や材料のすべてに対応できる完全なソリューションを目指しています」と締め括りました。 熱間プレス成形は、間違いなく今後も需要が見込まれる技術手法です。すべての先端技術のように、プロセスを最大限に最適化する信頼できる正確なシミュレーション・ソフトウェアが必要です。 - [オランダで働くスペイン人エンジニア: 慣習の相違から得た学び](https://japanforming.com/オランダで働くスペイン人エンジニア-慣習の相違/) - オランダの文化的枠組みから捉えたエンジニアリング業務の考察 エルネスト・アロンソは、オートフォーム社へ入社してから8年が経ちますが、その6年間をオランダで過ごしました。アロンソは母国スペインとは大きく異なるオランダの慣習に時に戸惑いながらも、その文化的枠組みの相違から多くの学びを得ました。そこでオランダの異文化体験を鑑みたシミュレーション事情について、アロンソから話を伺いました。 「エンジニアリングの原則とシミュレーションは、普遍的に一定です。新たな手法が開発されると、その優れた知見は瞬く間に世界中に広がります。そして世界各国の部品製造や金型生産の分野では、シミュレーションが有効活用されてきました。しかし私が当社のエンジニアリング・ソフトウェアについてユーザーをサポートする際には、相手がスペイン人かオランダ人かによって、異なる対応をすべきであることに気付きました。特にユーザーから受ける要望や質問の多くに、文化的な影響を感じたのです。 例えば、安全な「グリーン」のシミュレーションを達成するためのサポートを行う場合、それぞれの国ごとに異なる常識や戦略、期待感によって、社会的に容認される範囲も異なることに注意しなければなりません。私はすでにスペインに帰国していますが、オランダで勤務した経験から生涯の財産となる大切な学びを得ることができました。両国は根本的に多くの歴史的背景を共有し、また価値観や生活様式も似通っています。しかし些細な部分では、両国の慣習は面白いほどに異なり、またそれが文化を豊かにしているのだということも確信しています。 私が感銘を受けたオランダの日常風景は、道路に面した家の大きな窓にカーテンが掛かっていないことです。多くの観光客が驚くこの慣習は、日光が貴重であることや、プライバシーをあまり必要としない国民性といった事情以上に深い理由があります。それは、仕事のみならず人生のあらゆる面において、透明性を重んじる気質に関係しています。オランダの同僚たちは、自身の業務やプロジェクトについて、または個人的なことでも、決して説明を控えたり隠したりすることはありません。ありのままの姿を見せ合い、お互いをよく知ることで、仕事仲間としての結束を強めているのです。 オランダの特徴的な風景として、誰もが思い浮かべるのが、自転車です。街中のいたるところに自転車が走っていて、「オランダを訪れた外国人が道路を渡ろうとすると、ほぼ間違いなく自転車にぶつかる」という大げさな笑い話もあるぐらいです。私は、走るとギシギシと軋むギアのない古い自転車を手に入れ、毎日の通勤では、自転車から公共交通機関の水上バスを乗り継ぐ大冒険を楽しんでいました。 図1: ロッテルダム水上バスには、エラスムス橋の桟橋で乗船し、 上流の目的地に到着するまで、デッキに自転車を駐輪します。 オランダの文化に慣れるまで、様々な戸惑いを経験しましたが、特に「オランダ人の率直さ」については、私にとっては語り草となるほどに貴重な学びでした。オランダに長期滞在した経験のある方ならば、この率直さに対する驚きは、避けては通れぬものです。 オランダ人の同僚や隣人が「で、オランダは気に入った?」と尋ねてきたとしましょう。オランダを訪問する際に、まず理解すべきことは、相手から発せられる言葉は、すべて言葉通りに捉えられるということです。 他の多くの文化圏とは違い、オランダでは社交辞令やお世辞を言うのはまれです。つまりオランダの文化では、相手の感情を守ることより、率直であることに重きがおかれるのです。もちろん、時には誤解が生じる場合もありますが、オランダでは考えをはっきりと伝えることが当然とされています。 社交辞令を気にして率直な意見を言わないと、不誠実だという評価を受けてしまうのです。 オランダのユーザーにトレーニングを行う場合や、サポート業務としてシミュレーションを評価する場合に、この文化的な違いを意識するだけでも、円滑に業務を進めることができます。オランダの人々は、包み隠さない真実のみを求めています。 工程設定が現実とかけ離れていたり、ソルバーの設定が粗すぎたりと、シミュレーションが稚拙である場合、それをはっきりと指摘して、すべての問題を明確に伝えることが重要です。お客様に対して厳しすぎると思っても、軽微な問題まできちんと伝えなければ、それが後に大きな面倒を引き起こす原因になりかねません。 私自身にも失敗談はあります。お客様が見込み補正の前に工程全体のシミュレーションを実行していたときのことです。チェックリストを確認すると、処理を必要とする項目がまだ多く残っていました。しかし指摘する項目が多すぎると、お客様にうるさく思われるだろうと不安になり、ドロー・パネルの収縮に対応するドロー金型のスケーリングなど、必ず毎回必要とはならないオプションについては、説明を控えたのです。その結果、次工程のパネル配置で多くの不具合が発生し、その原因を特定できるまで何度もループを繰り返さなければならず、ユーザーの頭痛は悪化するばかりでした。 その後しばらく経ってから、オランダの人々は何を言われても受け止められることに気付きました。相手の感情を傷つけるかもしれないと恐れる必要はさほどなかったのです。彼らのすばらしいところは、自分が率直である分、相手の率直な意見に対しても根に持たないことです。 実際のところ、この率直さに徐々に慣れてくると、それが心地よく感じるようになりました。たとえば、トレーニングで講師を務めていると、受講者全員がうなずいて何も質問しないより、疑問に感じたことを何度も質問してもらえる方がずっと嬉しくなります。このように積極的な反応がないと、受講者が説明をきちんと理解できたか不安が残ります。オランダのオートフォーム社が(当時)管轄していた周辺国でトレーニングを開催すると、このような不安を覚えることが多くありましたが、おそらくは社会的な慣習の違いか、言葉の壁も一因だったのではないかと思います。 図2. エルネスト・アロンソ(左下)とオートフォームオランダチーム オランダのオートフォーム社は、マーク・ランブリクスが統括しています。ランブリクスは気取ることがない経営者で、パートナーシップ感覚を大切にしています。どの職位にあっても、お客様に対するサポートを惜しむことはありません。また万人から優れた意見を聞き入れようとする姿勢を感じます。私の体験から言わせていただくと、これはオランダの会社に共通する文化であり、明確に縦割りされた組織構造にトップダウン型の意思決定が行われる多くの国々とは対照をなしています。このようなオランダの横並びな管理手法は、働きやすい職場環境や楽しく仕事をした同僚たちとの想い出として心に留まっています。そして幸運なことに、このようにフランクでフラットな組織構造は、オートフォーム社全体に浸透しています。 最後に、オランダの慣習をもう1つご紹介しましょう。手紙やEメールを作成する際に、彼らは絶対に「私」で書き始めることはありません。なぜなら単純に、誰も自分自身を前面や中心に押し出すことを「しない」のです。オランダの会社へ就職を目指す際には、英語で履歴書を作成する場合でも、この点にぜひご留意ください」 - [クラスAアルミ・フードのアウター・パネルを初回の金型トライアウトで公差内に収めるプレス成形の手法: Push Mold社プロジェクト](https://japanforming.com/push-mold社のアルミ・フードパネル公差内/) - デジタル・ツインを生産現場で再現し、初回のトライアウト・ループで公差内に収まるパネルを生産 近年の中国におけるOEMや金型メーカーでは、さらなる軽量化に対応すべく、アルミ・パネルのプレス成形技術に関する関心が高まっています。しかし多くの企業では課題が山積し、品質目標の達成およびロバストな生産の開始まで、6~10回のトライアウト・ループを必要としています。そこでPush Mold社およびオートフォーム社は、長安PSA(CAPSA)社の新型プレミアムモデルDS X83の高品質クラスAアルミ・フードについて、インナーおよびアウター・パネルのロバストな生産を実現するため、金型のエンジニアリングについて共同プロジェクトを立ち上げました。 オートフォーム・チャイナ社と成都Push Mold社の共同プロジェクトでは、アルミ・パネルを4つの工程で生産します。 図1:アルミのフード・アウターを4つのプレス成形工程で生産します 下図に概要を示したAutoForm正確度指標に従いすべての重大要因を考慮し、実際のプレス成形工程をデジタル・モデルとして正確に構築しました。これが、実際の生産現場で生じる不具合を、シミュレーションで確実に予測および解消するための基盤となります。 図2:AutoForm正確度指標に従って構築したデジタル・プロセス・モデル がすべてのプロセス要因を可視化します プロセス・エンジニアリングの初期段階では、材料供給元のKOBELCOが提供する材料カードを使用しましたが、その後、Push Mold社では自社の材料引張試験を実施して材料モデルを改良し、実際の材料バッチと一致させました。摩擦モデルには、各プレス成形工程の時間経過に応じた材料の流れの速度、面圧、金型/シートの粗さを考慮した現実的なトライボロジ・モデルを適用しました。 最大の課題は、アルミ・パネルに生じる顕著なスプリングバックの対応でした。すべての工程で発生するスプリングバックをシミュレーションし、複数のスプリングバック見込み補正方案をバーチャルで検討し、実際にパネルが公差内に収まる方案を特定しました。 図3:見込み補正方案 見込み補正を行う前のフード・アウターのスプリングバックは、+2.6mm~-3.5mmでした。上図の見込み補正方案を適用することで、バーチャルのパネルを±0.3mmの公差範囲に収めることができました。 図4:デジタル・エンジニアリング段階でスプリングバックを予測し見込み補正します 最高品質のクラスAサーフェス精度要件を満たすため、AutoFormで検証した見込み補正方案に従って、金型サーフェスを作成しました。 図5:最高品質のクラスAサーフェス精度要件を満たすため、 サーフェスの曲率を見込み補正し、CADに再構築します 次に、金型の生産現場にて、デジタル・プロセス・モデルを可能なかぎり忠実に再現しました。金型を適正に研磨および調整することで、滑らかな材料の流れと均一な面圧分布を実現し、またこれらをデジタル・モデルで検証した摩擦や面圧と整合させなければなりません。材料の流入がシミュレーション結果と一致するまで、調整が続けられました。デジタルのエンジニアリング工程と製造した金型の整合性を確保するには、この準備作業は欠かせません。この整合性がなければ、シミュレーションは無意味となり、同じ結果を期待することはできません。 図6:塗料の均一な分布は調整が良好であることを示しています 初回の金型トライアウト・ループで、フード・アウターの測定点の80%超が±0.5mmの目標公差内に収まり、ヘミングのエッジ領域で±0.3mm、パネルの中央部で最大+1.1mmの公差を達成しました。このプロジェクトでは、ドロー型の再切削は必要ありませんでした。 図7: 初回の金型トライアウト・ループで、測定点の80%が公差内に収まりました オートフォーム・チャイナ社のカントリー・マネージャ、クリストフ・ウェーバーは、以下の通り語っています。「中国では多くのOEMや金型メーカーが、今もアルミの取り扱いに苦戦を強いられています。経験豊富な金型メーカーでも、クラスAのパネルについては、6~12回のトライアウト・ループを実行しています。このプロジェクトでは、最初の金型トライアウトにて、良好なパネルとロバストな工程を達成できました。成功の秘訣は、当社の推奨する最善のワークフローに従い、緻密な工程計画に時間をかけて作成し、正確なデジタル・プロセス・モデルを構築し、生産現場で忠実にそれを実行に移し、設計意図を可能なかぎり堅持することにあります」。 成都Push Mold社のチェン・ケイ副社長は、このように述べています。「このプロジェクトの結果に満足しています。最初の金型トライアウトで測定点の80%が公差内に収まりました。クラスAアルミ・パネルの取り扱いに関する手法や専門性について理解を深めることができました」。 図8:金型トライアウトでは金型の調整、測定、修正をおこないます 成都のPush Mold社は、このプロジェクトの成功によって業界に強い存在感を示しました。フードを軽量化するために、多くの国内OEMが軟鋼材をアルミ材に切り換える中、Push Mold社は市場シェアの拡大を続けています。 - [Robust Engineered Model (REM) - ロバストエンジニアリングモデル](https://japanforming.com/robust-engineered-model-rem-ロバストエンジニアリングモデル/) - デジタル・プロセス・チェーンに付加価値をもたらし、リスクや不確実性の軽減を通じて意思決定者をサポートする新たなデジタル・シミュレーションの手法 本稿では、プレス成形のエンジニアリング工程における意思決定をサポートし、金型のトライアウトやプレス成形生産のデジタル・エンジニアリングから最大限の価値を享受するために、デジタル・シミュレーションの正確度を確認する新たな手法をご紹介します。 デジタル・シミュレーションによって、プレス成形のエンジニアリング工程は大幅な加速を遂げましたが、しかし依然として金型のトライアウトでは、目的に特化したデジタル・ツールや工程の透明性や追跡可能性を確保できるデジタル・ドキュメンテーションを有効活用することなく、担当者の技術や経験に依存した多くのトライアウト・ループが実施されています。これはつまり、プレス成形工程チェーンの完全デジタル化までの道程には高い障壁が立ちはだかり、実際のプレス成形生産では、デジタル・シミュレーションによるコスト削減の潜在的余地があることを示唆しています。その要因として、シミュレーション・ツールの不確実な予測性能、またはエンジニアリングに関する情報伝達の分断が考えられます。生産のデジタル・エンジニアリングから最大限の価値を享受するには、デジタル・シミュレーションに対する一定の信頼性、つまり確かな予測性能が必要であり、生産開始前にデジタル・シミュレーションのみの結果から適切な意思決定を行うことができるプロセスを確立しなければなりません。 決定論的な (シングル・パラメータ・セットによる) シミュレーション結果のみを使用した場合、改善には限界があり、回避できない生産の不確実性に起因するリスク( [ISO 9001 Risk-Based Thinking])を大きく削減することはできません。決定論的なプレス成形シミュレーションでは、仮にプレス成形工程の複雑な部分をすべて考慮したとしても「AutoForm Accuracy FootPrint(正確度指数)」、多くの入力特性は変動を伴うため、実際の生産現場で忠実に再現できる可能性は殆どありません。無論、稼働中のプレス成形工程がパラメータ変動幅から定義されるプロセス空間のどこに位置しているかに応じて、生産されるプレス成形部品の品質は常に変動するという事実からも、これは十分に考え得ることです。 以下に説明するREMの手法では、AutoForm正確度指標のコンセプトを活用することで、パラメータの変動を考慮したモデルの精度を保証することが可能になります。REMの根幹部分であるロバスト性シミュレーションによって、シミュレーション・モデル(「デジタル・ツイン」)にパラメータの自然変動(制御できない変動)を含めることができます。その上で、正確度の偏りと精度を考慮した定量的な正確度指数を作成します。これは品質管理で繰り返し利用される定量的な品質性能指数でもあります。ではロバスト性シミュレーションは、品質指数と正確度の定量的決定に対してどのような意味を持ち、そして生産に至るまでの意思決定をどのようにサポートするのでしょうか? AutoForm正確度指標を活用して、最終検証シミュレーションのモデル精度に関する要件を満たしたら、ロバスト性シミュレーションを実行し、分布機能でデータ・ポイントのクラスタを作成します。さらに、工程の品質目標、すなわち精度仕様限界(LSL : 仕様下限およびUSL : 仕様上限)を定義しますが、通常は品質仕様限界(LCL : 制御下限およびUCL : 制御上限)と一致しています(図1を参照)。 図1. 定量的正確度指数(品質指数に相当) 正確度指数 は0~1の絶対値で、仕様の中心からデータ・ポイント平均までの正規距離です。 精度指数(または工程能力) は、潜在的な結果バンド幅の尺度です。実際の結果バンド幅が仕様範囲バンド幅と等しいか下回った場合、発生し得るすべての結果の散布が目標範囲のバンド幅内に収まるため、精度または工程能力は理想的と言えます。ただしこれは、すべての結果が目標範囲内に収まるという意味ではありません。その尺度は、全体的な正確度指数で示されます。 全体的な正確度(または工程能力指数) は、目標範囲に収まるすべての結果を示し、結果の正確度が理想的であることを示します。 決定論的なシミュレーションの場合とは異なり、ロバスト性シミュレーションの結果では、相応の工程結果をすべて評価します。そしてこれがエンジニアリングに関する意思決定のプロセスを支援および改善するための基盤となります。 図1の左図について、赤いショットの正確度は高く、精度は低くなっています。右図では、オレンジのショットの精度は高いけれども正確度は低く、目標範囲からかなり離れています。それぞれのシミュレーションを選択的に確認することで、赤の精度とオレンジの正確度を改善する方法を特定できます。もちろん問題を定量化し、定量的正確度指数からエンジニアリングを改善することもできます。赤いショットでは、K=0.05、Cp=0.9 の場合、100万個中の不具合は約10,400個という計算になります。もちろん、予測・予防の保守コストが非常に高くなるため、生産工程では受け入れられません。つまり、生産技術では一貫した精度が求められますが、正確度が満たされていなければ、結果として生産中に莫大な保守および品質管理コストが生じます。 右図では、オレンジ色の部分で、K=0.9, Cp=1.67 の場合、Cpk=0.167の場合、100万個中約62万個の部品に不具合が生じる結果になります。つまり生産部品の62%を廃棄することになるため、生産工程には進めません。 ロバスト性解析を実行し、生産技術と同様の手法で結果の正確度を特定することで、工程設計者は続行または中止の判断ができるようになり、また「中止」の場合はソリューションを検討することもできます。さらに、REMの手法を適用することで、プロセス・エンジニアリングが今後の生産におけるコストと品質の兼ね合いを検討する際に役立つだけでなく、適応的なプロセス・コントロールの技法を通じて、コストおよび品質をさらに改善することが可能になります。 Robust Engineered Model(REM)の手法を使った意思決定プロセスの改善に関する事例が、formingworld.comのブログ投稿『Finding Those Cracks with a Robustness Analysis』に掲載されています。このブログ投稿では、ロバスト・エンジニアリング・モデルの手法が最終工程検証段階における意思決定をどのようにサポートするか紹介しています。 (a) 包括的なシミュレーション正確度および品質工程能力指数(Cpk=約0.6) (b) 品質性能の正確度の位置(K=約0.5) 図2. REMを使ったリスク・ベースの意思決定 これはREMを通じて工程設計者がより適切な意思決定を行えることを示す簡明な証拠です。図2 (a)から、包括的な正確度および工程能力指数は「中止」の状態を示しています。そして図2 (b)では、品質性能の正確度の位置は部品の不具合に接近し過ぎていて、これは正確度が不十分、つまり品質仕様下限を満たすには不十分であることも示しています。この情報から、工程設計者は部品と金型形状に着目し、正確度レベル( - [引張試験の能力拡張に関する近年の動向](https://japanforming.com/引張試験の能力拡張に関する近年の動向/) - 従来から行われている安価な単軸引張試験は、シート挙動の特性について有効なデータを取得できる手法です。 図1: 単軸引張試験の試験片と一般的な試験装置 引張試験の主な測定結果として、硬化曲線または応力-ひずみ曲線があり、これらはシミュレーションで使用する材料の構成モデルを構築する上で不可欠な情報です。 軟鋼グレードの引張試験で記録された公称ひずみの関数として、公称応力の図表を以下に示します。 図2: 単軸引張試験で測定された公称応力-ひずみ曲線 均一伸び(UE)は、材料の「成形性」における実質的な限界と考えられています。これは材料に最大応力、つまり最大引張強度(UTS)が加わっている状態で測定されたひずみです。材料の伸長がUTS/UEを超過すると、延性の裕度の有効利用とはなりません。この変形は拡散や局部的なくびれを引き起こし、試験片の耐荷重能力が材料の強度上昇率より早く低下します。 公称応力-ひずみ曲線は、真応力-真ひずみへ簡単に変換できます。これはシミュレーションにて、材料固有(「真」)の挙動を表現するために必要です。変換されたUTSまでの真応力-真ひずみ曲線を、図3に示します。上述の通り、そこから先の曲線は有用ではありません。 図3:真応力-ひずみ曲線 単軸引張試験が示すシートの変形状態または荷重条件は、ひとつのみであることにご留意ください。複雑なプレス成形では、シートの複数領域に、2軸係数(プリフォーム、パンチ・コーナー)、平面ひずみ(ルーフ両側の中央部のドロー壁)、せん断といった複数の変形状態が生じます。このような変形状態の材料挙動は、相当動作の原理によって、単軸応力-ひずみ曲線でわかりやすく表すことができます。 ただし2軸係数の変形状態では、単軸引張試験の測定値を大幅に上回る有用なひずみや応力が生じる場合があります。つまり図3のオレンジの太線で示した単軸引張曲線は、2軸係数変形の応力およびひずみまで、またその先までも外挿する必要があることを意味します。では適切な外挿は、曲線1と曲線2のどちらでしょうか?またどちらの曲線が材料固有の挙動を表すのでしょうか? この外挿の品質は、選択した構成モデル(SwiftやHocket-Sherbyなど)によって異なります。またこれはシミュレーションの結果精度にも影響があります。 油圧2軸係数バルジなどの試験を追加することで、単軸引張のUEを大幅に上回る応力-ひずみ曲線を作成できます。試験結果は適切な構成モデルを選定する上で有用であり、シミュレーションで表現する材料の信頼性が向上します。ただしバルジ試験は複雑なため、コストがかさむだけでなく、後処理にも手間がかかります。またこの試験はあまり普及していません。 「引張の試験片自体から、通常よりも多くの情報を得ることができるとしたら、どうでしょう?」この発想が素晴らしいです。これはDIC(デジタル画像相関法)測定技術の進化と引張試験への応用によって、実現化できそうです。 引張の詳細評価を可能にするDIC技術の提唱および研究は、10年以上も進められています(IDDRG総会講演、T. B.Stoughton)。J. Chenほかによる最新の論文(J Chen et al 2019 IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng. 668 012013)にも、同様の報告があります。さらにはメリーランド州ゲイザースバーグにあるNIST(アメリカ国立標準技術研究所)で先日開催されたNumisheet 2020ベンチマーク実験では、この手法を適用したアルミおよびAHSS鋼種の引張試験が行われました。試験の詳細(NISTのエヴァン・ラスト博士が実施)および試験結果は、T. B. Stoughton/J-W Yoon共著の「Material Data Source」に、上記のベンチマークの材料データと併せて掲載されています。 従来の引張試験では、試験片の50mmゲージ長の両端の動きのみを追跡し、ひずみと応力の計算から応力-ひずみ曲線を作成します。この動きは伸縮計で追跡できますが、DICの適用も可能です。またDICでは引張試験片の変形をより積極的かつ詳細に精査できます。NISTで行われた試験の場合、デュアル・カメラのDICシステムが試験片の表面の50mmゲージの中心線に沿った計201個のポイントの動きを追跡しました。ポイント間の距離は0.25mmで、0.5mmの材料試験片の中心を示します。 図4: 引張試験片および中心線に沿って追加された仮想ポイント それぞれのポイントを個別に追跡して、各ポイントにおけるひずみの測定および応力の計算を行うことで、個別の応力-ひずみ曲線を作成できます。しかしこれは本当に必要なのでしょうか? まず標準的な引張試験の前提条件として、ひずみと応力の両方が50mmのゲージの全長で均一であり、その後、荷重が低下すると拡散くびれが始まると想定されています(図2を参照)。この前提条件から、DICを使用して201個のポイントから特定される応力-ひずみ曲線もまったく同じであると推測できます。 しかし結果は違いました。追跡したすべてのポイントにおけるひずみの変化や増大は異なり、またこれらの差異はUEよりもかなり早く現れました。つまり、拡散くびれの発生と考えられる時点よりもだいぶ前に、ひずみに差異が生じたのです(図5を参照)。 図5: DICで追跡した引張試験片の201個のポイント におけるひずみの増大 この結果から、ひずみと応力は引張試験片のゲージ長全体で均一ではないという、これまであまり認知されてこなかった知見が改めて確認されました。 局部くびれのポイントを特定し、くびれの発生前から不具合に至るまでを追跡するために、高度な数学的技法が開発され、DICから得たデータの精査が行われました。以下の図6は、201個のポイントのそれぞれに真応力-真ひずみ曲線を重ねた図表です。 図6: 201個のポイントごとの局部的な真応力-ひずみ曲線 注目すべき点を以下に挙げます。 すべてのポイントは、それぞれが除荷/不具合に至るまで、非常に類似した応力-ひずみ経路を辿ります。 いわゆる「拡散」くびれにあるポイントは、試験片の50mmの標準ゲージ長から測定された均一伸びを大幅に過ぎても硬化が続きます。 局部くびれのポイントは、応力-ひずみ曲線の最も遠い変化を示しています。 そのため、局部くびれのポイントの特定および追跡から、UEを上回る硬化曲線を正確に作成することができます。そこで引張試験のみから特定の材料の構成モデルを確実に構築できる手法を採用しました。 材料DP - [完成度の高いチューブ成形工程 インテリジェントなプロセス・エンジニアリングによる日常的な不具合の解消](https://japanforming.com/完成度の高いチューブ成形工程/) - 概要 長年にわたり、CAEはプレス成形部品工程の大幅改善やコスト削減を促進してきました。改善の一例として、工程最適化とロバスト性解析の組み合わせが挙げられます。コンピュータを活用して、プレス成形工程の最適化と実生産の予測を同時に行います。以下の事例では、これらの手法を組み合わせたチューブ成形工程の解析および大幅な改善について概説します。 工程 チューブ成形部品は、図1のとおり、曲げ、成形、ハイドロフォーミング、トリムで構成される一連の工程で作成します。表1は工程パラメータ(「基準」列)の一覧です。成形ステーションでは、初期チューブを下流の金型の狭い断面に取り付ける必要があります。この設定によって、結果が指定の公差内に収まります。スプリングバックは考慮しなくても問題ない程度に抑制され、板減は仕様内で、表2の通りしわや座屈の兆候もありません。 図1 – チューブ成形工程全体 表1 – 工程パラメータ 基準 公差/変動幅 チューブ直径 70mm ± 1mm チューブ板厚 1.75mm ± 10% 摩擦係数 0.15 ± 10% 降伏応力 167.9MPa ± 10% 引張強度 303.5MPa ± 10% 軸押しツールのストローク 0mm 0-48mm 表2 – 当初の工程の結果 当初の工程の値 板減 32% 最小主ひずみ -13% 軸ストローク 0mm 最大不良品率 77.4% Cpk -0.25 問題 シングル・シミュレーションでは実際の諸条件を単独で検討しますが、 工程の最適化においては、さまざまな条件を確認する必要があります。納期が厳しい状況で、たとえばサプライヤーから購入したチューブが厚すぎる、強度が不足している、または直径が誤っているといった問題が発覚すると、金型設計者が現場で対処するしかありません。このようなワークフローでは、担当者の知識や経験が問われます。問題解決に翻弄される中、金銭の浪費や時間の損失によって、利益幅がさらに圧縮されます。 ソリューション CAEを活用して、最適化の実行中にロバスト性を解析し、安定した生産工程を確保することで、上述のような問題を解消できます。この手法はロバストな分析的工程改善(RSPI-Robust - [自動車業界のトレンドと課題: 先進的な工程管理](https://japanforming.com/自動車業界のトレンドと課題-先進的な工程管理/) - プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プロセス・ツイン (パート1) 時代を創造するのはデジタルです。デジタル・トランスフォーメーションへ適応することによって、時代を切り開くことができます。 そこで自動車業界のデジタル化に関するブログ投稿をシリーズでお届けします。パート1ではプレス成形およびアセンブリのデジタル・プロセス・ツインをご紹介し、徹底した工程最適化がもたらす将来性について概説します。 モビリティの多様化や人を中心としたトレンドの影響下にある自動車業界は、過渡期にあります(図 1)。さらに、スマート・ファクトリーおよびインダストリー4.0の開発に関連したさまざまなテクノロジのトレンドの影響を受けています(Schuh et al., 2017)。多くの自動車OEMが、このようなトレンドに応じて、電化、デジタル化、自動運転を重要視しています。その結果、自動車OEMの要望やニーズは変化し、多くの企業では予算の逼迫や売上高の伸び悩みに面しています。それに応じて、複数の自動車メーカーが大幅なコスト削減戦略を発表しました(図 2)。新たな市場環境に適応し、最新技術に十分なリソースを配分するためにも、このようなコスト削減の取り組みは欠かせません。 図1: 自動車業界のトレンド 自動車メーカー各社は、事業や組織の改革を通じて機敏性と弾力性を高め、そしてシミュレーション技術の活用やデジタル化の推進によるコストの削減に取り組んでいます。以下に2社の取り組みをご紹介します(図 2)。 ルノー社は、3年間で20億ユーロ(約2,622億円)のコスト削減を計画しています(2020年ルノー社)。「デジタル・ファクトリー4.0」の戦略によるデジタル化の促進と生産拠点の効率化を計り、エンジニアリングのコスト削減を軸に工程の効率改善に取り組みます。この改革案はソフトウエア・サプライヤを含むルノー・グループのパートナー企業との協議の上で進められます。 トヨタ社は、3年以内に24%のコスト削減を計画しています(2019年トヨタ社)。デジタル化の促進とシミュレーション技術の活用を通じて、このコスト削減に取り組みます。実際の試験や試作をシミュレーションに置換し、デジタル化によって、部署、サプライヤ、事業の協業体制の効率改善を目指します。 上述の事例から、OEMにてコスト削減を達成するには、デジタル・トランスフォーメーションを活用した工程の根本的な変革が重要であることがわかります。またコスト削減のみならず、ルノー社やトヨタ社を始めとするOEMの価値を高める上で、デジタル化がさらに重要な役割を担ってゆくことは確実です。しかしそこで疑問が生じます。シミュレーション技術の積極的な活用や、プレス成形業務やホワイトボディ・アセンブリ工程のデジタル化は、自動車業界にどのように大きな価値をもたらすでしょうか?その答えは、自動車業界におけるプレス成形およびアセンブリ工程のデジタル・トランスフォーメーションを実現するデジタル・プロセス・ツインの導入にあります。 図2: 自動車業界の課題と戦略 (トヨタ社、2019年/ルノー社、2020年) 先進的な工程管理 顧客のニーズや要望の変化に伴い、OEMやサプライヤでは、自社の事業や組織のプロセスを詳細に理解して再構築し、最終的に達成すべきタスクを見通し(Christensen et al., 2016)、関連する価値観や今後必要となるスキルを特定する手腕が、さらに重要視されるようになっています。自動車製造における主な顧客タスクは、多くをデジタルに処理する必要があります(図 3)。最初のステップは、設計工程、金型の設計および製造、そして車体部品のプレス成形ですが、このような顧客タスクについては、包括的なシミュレーションを実行して、金型設計およびプレス成形工程のバーチャルな評価や最適化を行います。その後、プレス工場で行う実際のプレス成形工程では、ロバストな手法で高品質な自動車部品を生産します(Wiebenga, 2014)。これに続き、ボディ工場で車体部品をホワイトボディに組み立てます。 図3: デジタル化された自動車製造工程の顧客タスク 図3は、断片的ではありますが、顧客タスクとデジタル・ツールの密接な関係を示しています。以前は(ある程度は現在でも)、顧客のワークフローは個別の部署やグループに細かく分割されていました。次回のブログ投稿では、明確な分業化によって分断された組織構造について概説します。 このような組織では、各部署やグループがサイロ化し、それぞれが独自のターゲットやマイルストーンに従って作業が進められます。また使用するソフトウエア・ツールが異なる場合も多く見受けられます。このような状態では、部署間やグループ間において、経験、情報、データを共有する機会は非常に限られます。連携や共有が十分でないと、情報やデータの損失につながる恐れがあり、また意思決定における判断要素が、また自己部門の前例や経験および状況のみとなってしまう危険性もはらんでいます。部門間が分断されることにより、行動が常に受け身となり、また上流工程の問題は上流で自己解決しなければならない状況をもたらします。通常これは工程の終盤に発生することが多く、よって開発工程およびバリュー・チェーン全体の遅延の原因となり、その結果、不必要な巨額のコストやスケジュールの遅れが生じます。 このショート・シリーズのパート2では、「デジタル・トランスフォーメーションの活用による価値の可能性 - デジタル・プロセス・ツイン」が、自動車業界にもたらす恩恵についてお伝えします。次回もお楽しみに。 Christensen, C.M. et al., 2016. Competing against luck: the story of innovation and customer choice, New York: HarperCollins Publishers. Greveling, - [AutoFormを用いた「形状逃がし」のモデリングにより 仕上げ工程の合わせ工数を削減](https://japanforming.com/仕上げ工程の合わせ工数削減/) - 兵庫県神戸市において自動車、建機、農機等のプレス金型や治具の設計製作を手がける株式会社サンキョー。同社は20年来のAutoFormユーザーで、金型の設計製作においてシミュレーションが欠かせない存在となっています。今回、金型製作における合わせ作業の工数削減に向けて、AutoFormを活用したシミュレーションを実施。事前に曲げ部分の「R逃がし」のモデリングを実施することで、合わせ作業の工数が削減できることを確認しました。検証結果に合わせて、金型設計製作の業務フローを変更し、フロントローディングによってリードタイムの短縮を図っています。 合わせ作業の工数削減に向けて凸Rによるパネルかつぎの解消を検討 サンキョーは、1960年に兵庫県で創業したプレス金型メーカーです。大型金型製造設備を活かした大型プレスから、小型部品のプレスまで、顧客のあらゆるニーズに応えています。自動車のボディー部品を中心としながら、建設機械、農機具、鉄道車両など多岐にわたる金型製作の実績を持ち、建設機械メーカーや農機具メーカーとの取引も豊富です。 同社における成形解析シミュレーションの活用は早く、2000年にAutoFormを導入して以来、現在まで20年以上にわたって利用しています。常務取締役工場長の池田恵氏は「複数の成形解析シミュレーションソフトを検討した結果、圧倒的なスピードを評価してAutoFormを採用しました。以来、不満を感じることなくAutoFormの利用を続けています」と語ります。 多岐にわたる金型製作を手がける同社ですが、近年は成形の難しい複雑な部品が増えています。金型加工後に発生する仕上げ工数は、2018年度の実績で2015年度と比べて2.2倍と、大幅に増大しています。同社が分析した結果、仕上げ工数の増大は特に自動車部品に多く、トライ後にパネルと金型の“当たり”を確認する「合わせ作業」にあることが判明しました。そこで同社は課題解決に向けて、AutoFormによる合わせ作業の工数削減に取り組むことにしました(図1)。解析を担当する技師補の増田泰征氏は次のように語ります。 「合わせ作業が増大する要因のひとつに、パネルのスプリングバックによる“パネルかつぎ”があることがわかりました。近年、自動車部品の形状が複雑化した結果、プレス時にパネルがスプリングバックを起こしてかつぎが発生するケースが増えています。自動車部品では現場で型当たりをチェックして、かつぎが発生した部位を中心に手作業で削り、必要部位の80%以上に当たりができるまで対応しています。シミュレーションでパネルかつぎを削減することで、全体の工数削減につながると考えました」 AutoFormで逃がしモデルを作成し、解析を実施 サンキョーでは、パネルかつぎの低減による工数削減を検証するため、冷間圧延鋼板(SPCD)板厚1.6mm、型トン数9.3tの自動車部品を用いてシミュレーションを実施しました。 凸Rのパネルかつぎは、過去の経験から成形工程のForm以降で発生し、板厚増加によるパネルかつぎはBendUP以降の工程で発生すると想定。検証は、BendDownの工程で凸Rによるパネルかつぎを、RestUPの工程で板厚増加によるパネルかつぎを調査することにしました。 (1)R逃がしの分析と検証 AutoFormのツール設定を調査するため、プレスのパット圧を実際の金型成形と同じ設定でシミュレーションを実施しました。すると、材料のホールド時に0.14mm、曲げを加えると0.28mmの型開きが発生することがわかりました(図2)。従来は後工程の現場において型開きがなくなるように調整を行いましたが、今回はシミュレーションの段階で型開きをなくすための方法を検討しました。 まず、パット圧を徐々に増やしていくAutoFormの「荷重制御」機能を用いて検証を実施しました。型開きが発生する要因はRがスプリングバックしているためであり、Rの再成形に21.6tもの大きな荷重が必要となると分析。データの段階で凸Rを0.3mm以上逃がすことで合わせ作業がなくなると仮説を立てました(図3)。 実際に0.3mmのR逃がしモデルを作成し、AutoFormで解析を実施した結果、ホールド時で0.00mm、曲げ始めでも0.01mmと、型開きが発生しないことが確認できました(図4)。 (2)板厚の逃がし形状による分析と検証 板厚増加によるパネルかつぎでは、パネルをRestUPする際に板厚が0.23mm増加しているために型開きが発生していると予想されます。しかし、板厚が増加してもAutoForm上ではクリアランスが初期値から変化がないために、シミュレーション上ではしわが発生しません。反対に板厚が減少するとしわが発生すると、AutoFormは解析結果を出してきました。 そこで、実態との乖離を検証するため、次のステップでは凸Rの「逃がし形状無し(型開き有り)」と「逃がし形状の有り(型開き無し)」の2つでスプリングバックを確認しました。その結果、逃がし形状無しの場合はフランジ端で0.32mm、逃がし形状有りでは0.85mmと、スプリングバック量に0.53mmの差が生じることがわかります。改めて曲げR付近の動きと応力を確認した結果、逃がし形状無しではスプリングバックとスプリングゴーが発生し、両者の相殺によって0.32mmになり、逃がし形状有りではスプリングバックのみであるため0.85mmと、応力で差が出ていることが判明します(図5)。 「以上の結果から、R逃がしを行うことでモデリング時間が6時間かかるものの、合わせ工程全体では31.7%の工数削減が見込めることがわかりました。仕上げ課の工数に限定すると、ひとつの型あたりで6.34%の削減となり、測定部位におけるパネル精度(±0.5mm)は100%で改修工事0を達成しています。反対に、R逃がし加工をせずに金型を製作すると、最終的に精度が悪化することが確認できました」(増田氏)(図6) 経験則によるモデルとCAEを元に作成したモデルで実績工数を比較 検証結果を確認するため、次のステップでは自動車部品を用いたフランジ工程において、逃し形状のモデリングを、過去の経験則によるモデル(model G)と、CAE結果を元に作成したモデル(model P)の差を比較することにしました。用いたのは440MP材質で、板厚は0.65mm、型トン数は15.5tです。 まず、経験則によるモデルmodel Gに対して、類似部品を参考にRの逃がし量を決定し、実際の金型と同様に荷重圧を検討した結果、33.6t~44.0tの荷重圧が必要で、ホールド時には0.15mmの型開きが発生することがわかりました(図7)。 CAE結果を元に作成したモデルmodel Pに対しては、接触面圧を参考にRの逃がし量を決定し、相対変位量が0になるまでシミュレーションを実施。その結果、model Gと同等のパット圧でもホールド時で0.00mmと、型開きが発生しないことが確認できました(図8)。 実績工数を確認し、合わせ作業の時間を確認したところ、合わせ工数はmodel Gが40時間であるのに対して、model Pは14時間と65.9%の削減が実現。プレス段取り工数とモデリング時間を加えた工数でも、model Pではモデリングの時間が4.5時間分増えているものの、全体では53.8%の削減となっています。(図9) また、製作した金型を非接触測定機(ATOS)で測定して合わせ量を確認した結果、現場で削るパネルの表面積は、下型パットで12.3%から0.9%と大幅に削減され、最大偏差も0.62mmから0.21mmに改善しました。同様に上型ダイでも削るパネルの表面積は10.2%から3.6%、最大偏差は0.55mmから0.33mmと改善が見られました。このことから、より大型の部品ほど効果が高く、形状の多いインナー部品で有効であることがわかります(図10)。 金型設計製作における業務フローをフロントローディングに変更 以上の検証結果と実際の効果測定から、AutoFormの活用は合わせ作業の工数削減に効果があることが確認できました。 「シミュレーションを実施することで、現場において新人からベテランまで仕上げの熟練度に差があったとしても金型の当たりにバラツキがなくなり、品質や精度を保てるようになりました。プレスの段取り自体もなくなるため、スケジュールにも余裕が生まれます。デメリットがあるとすれば、加工取り代が一定でなく、逃がし加工の工数が発生する程度です」(増田氏) こうした成果をもとに、同社では2019年以降、金型設計製作における業務フローを変更し、基本的にはすべての部品に対して型設計の工程にAutoFormによる造り込み(デジタルパネル合わせ)を組み込みました。実型の造り込みを前工程で実施するフロントローディングにより、初回トライの精度向上による補正回数を削減し、工程全体でリードタイムを短縮しています。 「正直、モデリングの工数は増えるため、解析担当者の私の負担は増えます。とはいえ、最終的には精度が出ることが第一ですから、それをモチベーションに楽しみながら解析を行っています」(増田氏) 池田氏も「シミュレーションの精度は年々向上しており、今では金型を製造する上でなくてはならない設備となっています。現場においても、作業者の熟練度による属人化が解消され、全体の品質向上に貢献しています」と語ります。 今後はモデリングの削減に向けて、Rのかけ直しでなく、昔ながらのオフセットを活用し、CADと仕上げのバランスを保つことを検討中です。加えて、モデリング自体の外注活用、さらには形状作成のAutoForm-ProcessDesignerの活用も視野に入れています(図11)。 AutoFormの活用を通して、手合わせをしない金型づくりを目指すサンキョーのチャレンジは、今後も続いていきます。 <企業概要> 株式会社サンキョー 設立:1960年 所在地:神戸市北区長尾町宅原字上中41 代表者:代表取締役社長 鍵谷 謙介 様 従業員数:53名(2021年3月現在) 事業内容:プレス金型及び治具の設計・製作 URL:http://sankyo-kobe.co.jp/ - [温室効果ガス排出削減の取り組み - ブランク最適化による180万ドル(約1億9600万円)のコスト削減](https://japanforming.com/ブランク最適化によるコスト削減/) - 概要 プレス成形業界では、二酸化炭素の排出量削減が切迫した課題となっています。主な要因として、持続可能性の促進および環境に優しい企業イメージを高めること、そして価格上昇が続くグリーン電力証書の購入削減による将来的なコストの抑制の 2点を挙げることができます。 Automobil Industrieに掲載された記事では、フォルクスワーゲン・グループの最優先課題は二酸化炭素削減であると、フォルクスワーゲン軽量化プログラムを統括するシュテファン・クリンケ氏が述べています。クリンケ氏によると、フォルクスワーゲン社では製品寿命全体にわたり温室効果ガス(GHG)の排出に配慮しています。 将来的に高額に及ぶ補償を回避するには、納入される部品はすべて二酸化炭素排出量のバランスが適正でなければなりません。 その取り組みとして、ブランク・サイズの縮小は有効な手段です。材料使用量を1g節減するごとに、二酸化酸素の排出を削減できるのです。しかしこれには部品生産のロバスト性などの諸要因も大きく関係します(関連記事:『コストを節減するために、生産に影響なくブランク・サイズを縮小できますか。』)。ブランクの使用量を節減すると不良率が上昇し、生産の安定性が低下する場合があるため、材料節減の実行可能性も検討しなければなりません。 すでにエンジニアリング段階から、ブランク・サイズの縮小について考慮する必要があります。それには「試行錯誤型」とも称される手作業による最適化手法もありますが、しかし一般的には、より体系的な手法が選ばれる傾向にあります。工程パラメータの感度解析を活用すると、ブランク・サイズを最小限まで縮小しながら、ロバストな結果も維持することができるため、ブランク・サイズをより明晰に最適化することが可能になります。 この解析を活用して生産量200万個のアルミ製構造部品のブランクを最適化すると、どれほどの材料を節減でき、その結果、どれほどの二酸化炭素が削減されるか、以下に例を示します。 一次アルミニウム1 kgの生産には、16kWhの電力消費と9 kgの二酸化炭素排出が伴います。これは1気圧/27°Cで約550リットル、つまりSUVのトランクほどの容量に相当します。 図1に示すとおり、プレス成形で生産する板厚3mmのアルミ(6016 T4)製構造部品(青のラインは部品境界)の深絞り工程を評価します。 図1: 構造部品の深絞りの結果 デジタルに検証されたプレス成形工程が開始点となります。ブランクの寸法と形状は図1に示しています。 最適化を実行する上で、以下の制約条件を満たす必要があります。 シミュレーションにおいて、われとしわに対して必要なすべての制限を満たしていること(不具合がないこと)。 流入: 流入コントロールとして、最小限でも20mmがバインダ上に留まること。 ブランク外形線: ブランク幅を2000mm(図1の緑のライン)に固定すること。ターゲット: 最も小さなブランク外形線を特定すること。 二酸化炭素排出量をより正確かつ詳細に計算するには、材料供給元からの材料輸送、プレスラインの電力、材料廃棄率(前述)など、多くの要因を考慮しなければなりませんが、本例では簡略化します。 それでは図2のとおり、2000 x 565mmのブランクを使用したシミュレーションの結果を検討していきましょう。 現時点のシミュレーション結果は、われがなく、ほとんどの流入もターゲットを満たしているため、生産可能だと判断できます。しかし図2に示したように、しわの限界は完全に満たされていません。 図2: 初期状態 - シミュレーションによる不具合の表示 現在のブランクに基づく結果から、以下のように分析できます。 必要なすべてのわれの制限を満たすが、しわの制限は満たさない 流入: ほとんど満たす ブランク外形線: 2000 x 565mm 円弧半径3000mm à ブランクの重量= 8.94kg à ブランクあたりの二酸化炭素排出量= 80.46kg (電力=143.04kWh)。おおよそSUV9台分のトランク容量に相当します。 最適化されたブランク 試行錯誤しながらブランク外形線の改善を試みる代わりに、感度解析の実行による体系的手法を適用します。以下に、変数とその範囲を示します。 Y方向上側のブランク・サイズ: ±35mm Y方向下側のブランク・サイズ: ±35mm - [プレス成形シミュレーションの学びをテイクアウト: 2名の大学生と過ごした3日間を振り返る](https://japanforming.com/プレス成形シミュレーションをテイクアウ/) - 卓越を目指す就活生のためのヒント ビルに若者が入っていくのを見るたび、自分が就職活動していた頃を思い出します。私は大学を卒業したばかりの若者で、社会人として新たなスタートを切るために、勇気を振り絞って面接会場へと足を運んでいました。皆さんも面接で恥ずかしい失敗をして、どうして面接であんなことを言ってしまったのだろう?と後悔した経験があるでしょう。 職務経験を積んだ今では、社会人になりたての自分がどうであったかをつい忘れてしまいがちです。 それを思い出すという意味でも、米国のオートフォーム社で3日間のトレーニングを受講する2名の学生を迎えたのは、本当にうれしい出来事でした。この体験をブログ読者の皆様とシェアしたいと思います。皆様にも眩い学生時代を思い出していただければ幸いです。また就活中の方々には、プレス成形シミュレーションの無料トレーニングについてもお知らせしたいと思います。 2名の学生のうちの1人は、ミシガン工科大学の機械工学科の学生で、父親はFCA社に勤務しています。もう1人は、オークランド大学の学生で、産業工学の博士号の取得を目指しており、最近、大学のプロジェクトでAutoFormを使い始めたそうです。 両名とも、自動車産業への就職を希望していました。ふと自分の若かりし日々が目に浮かび、あの頃はトレーニングの雰囲気に少し居心地の悪さを感じていたことを思い出しました。そして、自動車関連企業に何年も勤務した今でも、まだ若干の居心地の悪さを感じていることに気づきました。私たちはみなエンジニアなのに... 図1: ソーシャル・ディスタンスはとれていますか? 確認しましょう! それでも、最初の2時間ですっかり打ち解け、リラックスした雰囲気の中、一緒にトレーニングを楽しみました。学生たちの鋭く、的を得た質問に答えていると、トレーニングというよりも、むしろセミナーを開催しているようでした。 トレーニングはプレス成形の基礎から始まり、実際のプレス成形について説明を行い、金型が上下する様子やトリム鋼材、そして移動装置など、生産現場の様子を紹介する動画を見ました。リアルな世界とバーチャルな世界、またデジタル・マスターを用いた理想のエンジニアリングについて、有意義な意見交換ができたことに満足しています。 そして残りの2日半で、ソフトウエアのハンズオン・トレーニングを行いました。これはお客様向けのAutoFormプロセス・エンジニアリングのトレーニングと同じ構成の短期集中コースです。 まずビール缶のプレス成形から始めて、次にフェンダーの部品に取り組みました。実際に余肉を含むダイフェースまですべてを作成し、実際の現場で部品を製造するために必要なすべての作業を行いました。厳しい時間の制約があったにもかかわらず、ドロー型やクラスAサーフェスのモデリングなどの高度なテーマに取り組み、チューブ成形ソリューションまで紹介することができました。学生たちには、新しい体験だったと思います。初めは誰でもそうであるように、最初の何枚かのパネルは完全に割れてしまいました。しかしトレーニングを続けると、すぐに自力でグリーン・シミュレーションを達成できるようになりました。 図2: 学生たちが取り組んだクロスメンバーの部品 この3日間で、学生たちが就職してすぐに即戦力になるほどのことを学んだとは言えません。しかし主な機能について習得し、他の学生たちより先に一歩を踏み出したことは確かです。 また私たちも、若者たちから多くを学ぶことができたことに、驚きを禁じ得ません。彼らの質問に「なんと素晴らしいアイデアだろう」と考えさせられました。それは「なぜそのボタンがないんですか?」という質問でした。トレーニングの終了後には、そのボタンを新機能としてソフトウエアに追加するよう、開発部に提案しました。 また、学生が提案してくれた余肉設計の手法についても、熟考しなければなりませんでした。私が提示した手法は、金型製造を学んだ当時の会社標準だったため、当たり前のようにずっと使い続けていたものです。私がまずデモを示すと、学生たちはそれぞれ同じ結果を得られる別々の手法を考えました。彼らは使用目的が異なる機能を適用したのです。これらの提案は、複数の手法で同じ結果が得られることの証明です。時折お客様からも、このように斬新な手法を伺うことがあります。学生が示した手法は、これから実パネルで検証する必要がありますが、モデリングの時間を大幅に短縮できるものです。結果はさておき、参加者全員がお互いに学び合うことができ、非常に有意義なトレーニングとなりました。 最後にAutoFormインターンシップについて質問を受けました。 この学生は、大学プロジェクトで、ドア・インナーの処理にAutoFormを使っているため、このトレーニングから学ぶことは多くあったと思います。当社が主催している「カレッジ・デイ」プロジェクトは、このように本気の学生たちを惹き付けているのです。もしご興味を持っていただけたら、トレーニングについて当社へ是非お問い合わせください。このような学びから、就職活動のチャンスが大きく広がります。 私も自分の学生時代を思い出します。ランチをご馳走しますので、いつでも訪ねてきてください。 学生から礼状をいただきました。 - [業界動向と成形安定性についてPWOグループの専門家との対談](https://japanforming.com/業界動向と成形安定性についての対談/) - ヤコブ・マカーレク博士が分析的工程改善について概説します。 PWO社のヤコブ・マカーレク博士をお招きし、部品の成形安定性に関する諸問題と、AutoFormソフトウエアの分析的工程改善を活用したロバストな工程の実現について、お話しを伺いました。軽量化の分野を主導するPWO社の視点から、非常に興味深い見解をお届けします。 機械工学は他の分野と同じく、最新の業界動向や革新的なソリューションと密接な関係にあります。大変革を遂げた自動車業界では、機械工学の発展が特に顕著です。また技術革新だけでなく、製造工程も大きく進歩しています。主な業界動向として、自動車メーカーのコスト削減や工場およびサプライヤーの生産性向上といった取り組みが積極的に行われています。部品のフィージビリティ、機能性、精度のバランスを取るには、プレス成形産業の関与が欠かせません。この分野の飛躍的な発展によって、どのような部品でも、材料の機械的性質を有効活用した設計ができるようになりました。またCO2排出の環境規制と安全基準の強化も、自動車業界が長期的に取り組むべき大きな課題です。 図1: 写真中央 - チェコのPWO CZ社 お客様が規定形状に適合した高品質な部品を最低限の金型コストで求めるのは当然です。そして安定した形状を維持するには、それに特化した技術、つまり部品の製造技術コンセプトが必要です。これが生産準備の計画工程で最も重要な部分です。この時点では、まず初期状態および最終部品の品質を検討します。適切な技術コンセプトを選択することで、実際の製造中に発生しうる諸問題を予防できます。われやしわ、板減超過、スプリングバックといった品質関連の不具合はもちろん、部品の配置やステージ間の移動、ストローク速度、量産時のプレス成形など、金型自体の機能性に関する問題にも対応できます。 このような問題は多くがメソッドの精度が不十分であることに起因しますが、量産中にその事実をまのあたりにすることになります。実際のところ、不具合が発生しない金型やプレスはありません。技術コンセプトの準備や金型の設計段階で諸問題の原因を究明する上で、金型メーカーの経験と、その経験を活用できる金型、開発、設計に精通した技術者、それに最新の手法を融合させることが、非常に有効かつ貴重な助力となります。 PWO Czech Republic社(以下「PWO社」)はこれらの強みと専門性を活かし、金型およびプレス成形業界を牽引する大手企業です。ワークピースの設計およびフィージビリティ検討、プレス成形部品の手法開発など、シートの深絞りの開発全般に携わっています。また、自動車業界向けのプレス成形金型の製造、機械部品や構造部品、安全関連およびシート部品のプレス成形も行っています。従来の金型工場だけでなく、レーザーなどの先端技術を駆使した広範なプレス成形による量産にも対応しています。 このためPWO社の開発および設計部門では、特に社内のプロシージャやイノベーションには、最新技術を取り入れています。有限要素法を用いた最新のソフトウエアでは、深絞りの実際の工程をシミュレーションします。CAEソフトウエアは、たとえば、フィージビリティの検討、部品修正の提案、クランプ・コンセプトの評価、スプリングバックのシミュレーション、量産工程のロバスト性解析など、さまざまな場面で活用されています。最先端のコンピュータ・シミュレーションを使用し、その結果を設計作業に反映させることで、時間やコストを大幅に削減できます。 シミュレーション・ソフトウエアは、多くの企業で活用されています。金型設計の準備段階で部品を「シミュレーション」して、技術コンセプトに応じた成形性を確認します。われ、板減超過、板増やしわの危険性は許容されません。1度のシミュレーションで説明できるのは、入力条件が正確に定義された一定の状態のみです。しかし量産では、潤滑、ブランクの位置、ドロービード荷重係数、板厚とその機械的属性などのパラメータを、ある一定の状態に維持することは不可能です。またシミュレーションの評価時に、「成形性ウィンドウ」のどこを推移しているのかを正確に特定できません(図2を参照)。シミュレーションで特定できるのは、ある条件下で部品が成形可能であるかどうかだけです。同様に、生産全体を通して、その部品が基準を満たし、不具合の危険性もないと評価することもできません。これを分かりやすくするために、シミュレーションした部品の2つの条件を図表で示します(図2aを参照)。両方のケースで、結果は成形可能です。 図2 a)最重要因子を使った成形性 b)工程変数の可視化を使った成形性 では、この問題にはどのように取り組めばよいのでしょうか? 複雑な構造部品や安全部品をプレス成形する場合はどうでしょうか? PWO社の膨大な経験値から判断すると、この手法では不十分です。量産には大きな変化が伴うため、さらに高度な手法が必要です。外装のデザイン・コンポーネントや軽量化と、それに相反する材料強度といった最新の業界動向に適合する部品の需要が高まり、高強度鋼および特殊合金の採用が増えてきています。特に、アルミ合金や2段階板厚部品、その他の代替材料などが代表的です。そのため、成形性評価の重要性がより高まっています。PWO社では、洞察力の優れた技術者や管理者による先進的な取り組みが功を奏し、プレス部品の分析的工程改善における次段階に差し掛かっています。 工程改善は初回のシミュレーションに工程の変動幅を割り当てるところから始まります。それぞれの変数パラメータに値のバラツキを割り当てます。これを数十回にわたる計算の基礎として、部品の成形性を数学的に説明します(図2を参照)。また結果には、初回の設定からの値のバラツキが含まれます。1つの状態はすでに成形性の領域内にあるため合格ですが、もう1つの状態は摩擦と材料品質に大きく影響を受けているため不合格です。このように、部品の成形性のバラツキを正確に評価できます(図2bを参照)。この情報に基づき、製造工程を効率化することで、部品の最終品質を安定させることができます。さらには、設計パラメータが部品の品質に与える影響とその感度を特定することもできます。また、これらの取り組みは金型の設計段階で行うため、金型の製造段階よりも大幅に前倒しで、製造中に発生しうる問題の多くを解決することができるようになります。 図3:プレス成形の工程安定性と工程変動幅の評価 またこの手法には、生産工程の改善と金型の最適化をさらに促進する多くの利点があります。部品のスプリングバックを評価する場合、すべての計算でスプリングバックが安定し、ドローの公差内であるか判断できます。次に、自重と治具のクランプ固定などを考慮しながら、プレス成形のスプリングバックの変動幅を評価します。 工程をさらに改善し、最善のソリューションを見出すことができるのでしょうか? 最初のソリューションを取り上げて、可能性があるすべてのバラツキを計算するのが適切でしょうか?シミュレーションおよび計算の変動幅を使用する場合のもう1つの視点は、シミュレーションの可能性を引き出すチャンスを与えてくれます。この手段では、固定された状態の変数は扱わず、変動幅を適用します。プレス成形の品質に著しく影響する計算の構成要素およびバラツキを含めることが可能で、ドローの深さ、ホルダ荷重、ドロービードによる拘束、ドロー半径、形状、ブランクのサイズと位置などを金型の設計に反映できることを考慮すれば、間違いなく、この方法の初期設計から最善のソリューションを得ることができます。まず、部品の品質に確実に影響を与える一連の変数から着手します。その後、可能性のあるすべての条件のバラツキを計算し、それを元に最適な変数の組み合わせを評価することで、最高の成形性を実現します(図3を参照)。 図4:入力パラメータの変動幅を使った工程改善 金型の設計を始めたばかりの準備段階で、すでにこれだけのことが完了しています。もちろん、このソリューションは時間がかかる上、適切な設定と評価が必要になります。 顧客からの重圧と、部品の材料、工程、生産、品質属性の定常的な改善によって、成形性の領域がかつてないほどに狭まれています。そのため、生産と設計の段階を個別に考慮する必要があります。業界動向や生産の各段階の動向を見守り、それらを実際の工程に適用しなければなりません。理想的には、新たな機会や手法、革新および技能の発展を共有することが望まれます。そしてPWO社が成功を収めたように、直接協力して創出できることが最善です。多くの意味で、PWO社はプレス成形技術を駆使して部品生産の改善を系統的に行う工程の創造者です。 ヤコブ・マカーレク博士 www.pwo.cz PWO Czech Republic社でプレス成形シミュレーションを統括し、量産中の変動幅に対する部品の成形性を評価しています。その結果をもとに、技術コンセプトやクランプ・コンセプトなどに修正を加え、お客様の部品修正依頼に関する相談に応じています。さらに、スプリングバック予測の精度を高めるために、高度なモデル、特に材料モデル(主に高強度鋼)を研究することで、シミュレーションの手法を発展させることを目指しています。また、HSS鋼材のエッジの破断を予測するために、エッジのひずみ評価に注力しています。ご興味がおありでしたら、当社ホームページからご連絡ください。 - [プレッシャーとチャレンジ: 設計とトライアウトの間に橋を架ける](https://japanforming.com/設計とトライアウト間の架け橋/) - 検証可能な要因とトライアウトでの予期しない事態の抑制 技術設計の分野では、プロジェクト実行中の潜在的な問題を予測し回避するために、ソフトウエアを使うことで大きな進展がありました。自動車部品のプレス成形などにおける複数の製品や個別のプロセスを含む複雑なシステムおよび生産ラインなど、設計プロセス・チェーンの多くの分野でシミュレーション・ソリューションが利用できます。本稿では、自動車部品のプレス成形セクターと、同セクターにおけるシミュレーション・ソリューションを統合することのメリットについて検討していきます。 数多くの影響要因が存在するため、プレス成形工程を計画するという初期のタスクでさえ、すでに難易度が高いものとなっています。設計では、適切なソフトウエアを選定し、必要な入力データ(原材料情報、必要な設備、加工精度、プレスのトン数など)を入手するといった一連の課題をクリアする必要があります。したがって、担当者は有意なコンピュータ・シミュレーションをセット・アップして、論理的な方法で解析結果を予測する必要があります。そうすることで、工程に関する意思決定をスムーズに行うことができます。このタスクは、保守的な古株の専門家たちが持っているバーチャルの結果に対する不信感や、何より部署間に存在する高い意思疎通の障壁など、数多くの外的要因によってさらに複雑なものになります。 トライアウトで行われた変更の後、金型工場で確実に最新の入力パラメータが使われるようにするのは困難です。 その上、金型工場でシミュレーションが正しく実行され、デジタル設計に基づいて構築されるようにするのも、さらに困難です。 図 1 - 従来の情報交換の流れ ある設計マネージャが、次のように語りました。「先週、私はトライアウト・エリアに呼び出されました。チームは、サンプルをプレス成形したのですが、パネル全体に複数のわれが発生したため、心配していたのです。私は急いで駆けつけたのですが、彼らは(パネルと金型の)接触領域を研磨する前にサンプルをプレス成形したのがわかりました。」トライアウト・チームは彼に、研磨する前に「どうなるか」確認するために、試してみたと説明しました。彼らは、金型の調整において研磨は重要なステップであることを理解していませんでした。これが、前出の部署間での意思疎通の問題の典型的な例です。設計関係の人々の間では研磨の必要性は広く理解されていますが、必ずしもトライアウト・チームがそれを知っているとはかぎりません。 今日でも、長年の経験を誇るプロフェッショナルたちが、ソフトウエアでプレスの下で何が起こるか予測することなど不可能だと信じているのはよくあることです。この意見に基づいて、彼らはトライアウト・チーム全体の効率を向上させることができる革命的技術を逃してしまいます。 現在の会社経営の最大の挑戦は、意思疎通の断絶を排除して、チーム全体を最終目的に導くことで、さまざまな部署をまとめることです。効果的に協力するためには、全員が最短の時間および最低のコストで最高品質のプレス成形部品を製造するという共通の目的を共有しなければなりません。 意思疎通の改善およびチームの統率の方法に関する多数の理論が存在します。ある方法では、トライアウト・チームを設計パッケージの開発工程に参加させます。彼らの豊かな実務経験に基づいて、多くの場合、工程の定義について貴重な意見が得られます。また、自分が開発に一役買っていると感じると、彼らはプロジェクトを自分たちのものとして取り組み、金型工場で実現するための努力を惜しまなくなります。 この理論は、利害関係者管理に基づいており(図2の例を参照)、プロジェクトの開始時点から少しでも影響力を持つすべてのチーム・メンバーを関与させることの必要性を強調しています。こうすることで、メンバーはよりやる気を感じ、チームを大切にするようになります。このように、部署間の距離が最小化され、健全な意思疎通が促進され、納得できる最終製品が実現します。 図2 – 注力/興味マッピング - 出典: FGV 人間のやる気に関連する多くの戦略と同様に、上記の理論は簡単に説明できますが、実行には困難が伴います。これには、主要な目的が達成されるように、経営側の直接の関与と関連するすべての部署の監督が必要です。 各企業それぞれの方法がありますが、金型を閉じた際にすべての必要な部分が接触していることを確認し(スポッティング)、初期調整がすべて完了してからトライアウトを開始します。そこから、エンジニアリング段階での開発との最初の関連、つまり、トライアウト中にプレス成形する部品のシミュレーションと同じ流入を模索します。 重要でありながら頻繁に見落とされる要因が、最終結果に対する重要な役割を果たします。そのような要因の中でも特に重要なのは、次のような問いです。シミュレーションとトライアウトで同じ材料を使用していますか? ブランクの初期位置は正しいですか? 摩擦条件はトライボロジ・システムと一致していますか(つまり、シミュレーションの前提通り、金型が研磨済みか)? ドロービードの形状は初期ターゲットと一致していますか? 金型の形状はシミュレーションに沿ったものですか? これらの要因のほとんどは検証可能です。しかし、トライアウトで予期しない事態が起こると、すぐに結果を出さなければならないプレッシャーも相まって、多くの場合、緊急時対応策を適用して、シミュレーションされたものと実際に行われたことの関連管理が失われます。これらの問題を回避して、トライアウトの効率を最大化するために、市場にすでに存在しているシミュレーションの適用をカバーし、アクションを指示し、目的の関連を維持するためのテクノロジーを利用できます。 これらのテクノロジーを使うことで、単一の入力だけでなく、さまざまな変化に基づく結果予測によって、従来のシミュレーション以上のことが実現できます。こうすることで、実際のデータに基づいてトライアウトを調整できます。このように、設計によって工程の安定性が確保され、工程が常にプロセス・ウィンドウ内に留まるようにできます(図3)。その結果、トライアウト時間が短縮されるだけでなく、コイルの交換、金型の摩耗、温度上昇などによる生産の不稼働期間による損失が抑えられます。 図3 – プロセス・ウィンドウ また、この情報をトライアウト・チームのユーザーのためにアップロードして、トライアウトの開始時点での金型と工程の両方の状態のチェックリストを作成することができます。この情報と設計チームが実行したシミュレーションに基づいて、ソフトウエアは流入の調整のためのソリューションを提案します。設計チームとトライアウト・チームの両方が協力して事前に定義された緩和戦略に基づき、たとえば、どのドロービードを修正すべきか、どの修正が必要か示されます。 ソリューションの提案に加え、トライアウト金型メーカーがこのソフトウエアを使って、変更を行った場合の結果をテストできます。こうすることで、すべての変更を文書化することができます。たとえば、すでに調査済みで設計で見込み補正済みのスプリングバック結果が妥協されないようにするなどです。図4の例の左側の写真は、基準状態(元のシミュレーションの状態)のスプリングバック結果を示します。右側の写真は、ドロービードの寸法を制御するスライダを操作してあり、ソフトウェアは新たなドロービードの設定に対応したスプリングバック結果を示しています。 図4 – ドロービード形状を修正した場合のスプリングバック結果の変化 このソフトウエア・ソリューションには、設計に関する見慣れた情報(最大、最小ひずみのレベル、成形限界線など)と、トライアウトで使用するそれほど馴染みのない情報が含まれます。最初から各チームをまとめるテクノロジーを使うのが不可欠となり、全員がこの革命に参加すれば効率を高めることができます。 1つの団結したチームを構成することで、従業員がテクノロジーによって脅かされていると感じることを避けることができ、すべてのメンバーの膨大な知識と経験を組み合わせて活用できます。 - [SE検討の拡充による不具合の事前織込み~ダイデザイナー増強](https://japanforming.com/se検討の拡充による不具合の事前織込み/) - SE検討工数の50%低減並びに人材育成の確立 製品開発においてプレス成形要件をいかに製品に織込めるかが開発の要となります。ひいては量産不具合を無くす事にもつながる重要な要素となります。しかし製品に求められる要件は様々であり、又時間的な観点からも、プレス成形要件がそのまま製品形状に織り込まれる事は難しいです。 これは製品要件とプレス成形要件の両立する形状を検討しなければならないという事であります。 上記を成立させる為に製品形状が確定する前にプレスによる成形性を検討し、その結果を製品形状に織込む必要があります。 更に昨今では製品形状の複雑化や超ハイテン材の適用により、今迄の知見では成形可否の判断が難しい難成形部品が増えており、この段階の検討(SE検討)がより重要な役割を担っています。 ある大手部品メーカーでは、1つの開発において数十部品の検討を同時に行う必要がありました。その為AutoForm-StampingAdviserを活用し集中的に短時間で成形性の確認を行なっていました。これにより成形性の可否判断を迅速に行い、必要に応じて製品形状の変更を織り込む事ができました。しかし、その後の詳細検討において成形性が厳しいと判断される製品も含まれていました。 この場合、既に製品形状を提案するタイミングから遅れている為、製品形状の変更は難しく、詳細検討部署では成形性が成立する数多くの方案検討を余儀なくされていました。この作業には膨大な工数を要し、検討業務の負荷が高くなっていました。 AutoForm-StampingAdviserによる成形検討(例)(ワンステップ法による成形性の確認) そこでこの大手部品メーカーでは検討工数を低減する為に取組方法を変更し、フロントローディングに更に注力する事にしました。限られた人員と工数の中でそれを実現する為にAutoForm-DieDesignerを活用する事で、モデリングに要する膨大な工数に対応する事にしました。それはこのフロントローディングの効果を最大限に活かす為に、SE(サイマルエンジニアリング)検討部署の約20名の全員が、AutoForm-DieDesignerを使いSE検討をやり切る事になります。そこにはAutoForm-DieDesignerのモデリング作成の速さとAutoForm-FormingSolverの解析スピードの速さが工数低減に不可欠でした。そこでAutoForm-DieDesigner並びにAutoForm-Forming Solverの増強を行い、人員と設備の両方でフロントローディングに注力しました。 CADによるモデリング(例) AutoForm-DieDesignerによるモデリング(例) (CAD面と同等のモデルを短時間で再現) AutoForm-DieDesignerによるモデリング(例2) これらの取組により目標であった総検討時間の50%低減という見通しは立ちました。加えて、早期に詳細検討をやり切る事で、製品形状への織込みや取引先へのフィードバックも早期に出来るようになりました。更に、SE検討と詳細検討の部署間でAutoForm-DieDesignerを共通ツールとして取扱えるようになった相乗効果は大きいです。 AutoFormを共通言語とする事で、 1 それぞれの部署の技術や情報伝達が容易。(一貫性) 2 技術/検討スキルの向上。(技術の底上げ・蓄積) 3 人材育成。(工法設定・モデル作成・成形性評価 等) 4 AutoForm-DieDesgnerを使用する事で、幅広い工法の可能性と可視化が明瞭 にできるようになった。 これにはAutoForm-StampingAdviser, AutoForm-DieDesgner, AutoForm-FormingSolverのアドバンテージ(迅速な歩留まり計算・迅速なモデル作成・迅速な計算速度・使い易さ等)を組合せた運用法(設備)が不可欠です。 - [シミュレーションを活用したインライン工程コントロール: フランケ社がキッチン・シンクの生産を最適化し、スクラップを50%以上削減](https://japanforming.com/シミュレーションを活用したインライン工程/) - シミュレーションを活用したインライン工程コントロールでプロセス・ウィンドウの安全圏を維持 生産ラインから取り出したプレス成形パネルにわれやしわが発生し始めたら、間違いなく流入も変化しています。チューリッヒ工科大学の仮想生産研究所(IVP)は、オートフォーム社との緊密な協働によって自動プレス・コントロールの手法を開発し、この常識を覆しました。フランケ・キッチン・システムズ社はパイロット・プロジェクトでこの画期的な手法を検証し、キッチン・シンクの深絞り中に発生する不良品の割合の削減に成功しました。 スクラップ率5%に到達 デイビット・ハーシュ博士は、「シンクのモデルによっては、熟練のプレス・オペレータでさえもパネルのスクラップを避けることができません。」と断言しています。特に半径36 mmを超えるキッチン・シンクは、成形工程間でアニーリングされないのでとてもわれやすいのです。「この不良品の割合は、小生産ロットで最大5%です」と、ハーシュ博士は強調します。 ハーシュ博士は、オートフォーム社やフランケ社と緊密に協働している仮想生産研究所(IVP)にて博士号を取得後、フランケ社のエンジニアとして開発やプロジェクトを任されています。担当業務のひとつは、キッチン・シンクの生産最適化です。フランケ社は、スイス国内のみで年間約50万台のキッチン・シンク製品を生産しています。また全世界における生産台数は年間約500万台です。同社のシンク製品には1,100種類を超えるモデルがあり、「生産バッチのサイズは非常に小さく、通常は25~200台ほどです。そのため量産時に発生しがちなスクラップを最小限に抑制することが、特に重要だと捉えています」とハーシュ博士は説明します。 図1: 左から右へ: イェルク・ハインゲルトナー博士(IVP)、アンドレアス・クレイナー(オートフォーム社)、 デイビット・ハーシュ博士(フランケ社) シミュレーション・モデルを活用したコントロール 「深絞り中の工程コントロールについて、この研究所では何年も研究を続けています。」と、チューリッヒ工科大学の仮想生産研究所(IVP)で新たな生産工程の開発に取り組んでいるエンジニアのイェルク・ハインゲルトナー博士が話します。ブランク流入を測定し、それを基準流入と比較しながらプレス荷重を調整することで、品質目標を達成するこの手法は、よく知られています。「ブランク流入から品質を評価しています」とハインゲルトナー博士が説明します。「シミュレーション結果を活用して、すべてバーチャルにプレス・コントロールを設計します。そのためオートフォーム社の協力を得ているのです。」 メソッド・プランナーがコントロール・パラメータを提供 オートフォーム社製品担当責任者であるアンドレアス・クレイナーは、「当社独自のロバスト性解析ソフトウェアを使い、流入を基準値に収めるためのプレス荷重とその分布をどのように調整するか、コントロール・アルゴリズムで計算します。」と説明します。そのため、予めAutoForm-Sigmaのシミュレーションを実行し、プレス荷重と材料パラメータの両方を調整します。 「私たちは、次のような工程を想定しています。メソッド・プランナーが工程と金型を設計し、AutoForm-Sigma解析を実行してコントロール・パラメータを作成します。そしてパラメータをUSBメモリーでプレスラインに渡すのです。この結果からトン数などの工程パラメータとブランク流入の直接的な関係が明確になります。傾向を正しくモデル化できていれば、現実とシミュレーションが完全に一致する必要はありません。」とクレイナーは言います。この工程のもうひとつの利点は、ブランク流入を測定すべき位置が特定できることです。 図2:インライン工程コントロールの概略図 「生産現場では光学的手段または接触によって流入を測定できます。」とIVPのハインゲルトナー博士が付け加えます。ブルーライトを搭載したカメラを1台設置して、上方から絞るパネルの端を検出するシステムを採用しました。「シート全体の流入ではなく、オートフォーム社のロバスト性解析で特定された位置の流入のみを測定します。」 材料特性も考慮 ブランクごとに固有の材料特性は、深絞り工程の結果に大きく影響する場合があります。「フランケ社は多くのメーカーから材料を調達しています。材料によっては特性が大きく異なる可能性もあります。」とハーシュ博士は語ります。「アールブルクでは、この問題を解決するために、ブランキング金型に渦電流測定装置とレーザー測定機器を設置しました(図3)。渦電流測定装置はブランクの材料特性を測定し、レーザー測定機器はブランクの板厚を測定します。測定したデータはコントロール・システムに送信されます。工程条件のバラツキに対応する場合とは対照的に、材料の差違に対するプレス・コントロールにフィードバック・ループは必要ありません。これはAutoForm-Sigmaのメタモデルから作成し、プレス機のPLCに伝達します。各プレス・ストロークの後、カメラで測定したブランク流入を流入基準と比較し、その差異をプレス・コントローラに送り、フィードバック・コントロールを行います。この情報をもとに、次の部品に対するブランクホルダのトン数や4本のクッションピンへの荷重配分を、コントロール・アルゴリズムが計算します。AutoFormソフトウェアにはこの作業に特化したインターフェースが実装され、プレス・コントローラの設定にロバスト性の結果を利用できるようになりました。 図3: ブランキング金型に設置された渦電流測定装置およびレーザー測定機器による材料特性や板厚の測定 実際の生産現場では、この工程全体は次のように進みます。まずブランクの切断時に機械特性と板厚が特定され、それぞれのブランクに識別用のデータ・マトリックスのコードが付与されると、ブランクは山積みされます。次のプレス工程では、ブランクが1枚づつコンベヤーベルトに載せられ、データ・マトリックスのコードが読み取られると、材料特性の測定値が保存されているデータ・バンクから、そのブランクの材料特性が呼び出されます。そしてAutoFormメタモデルから、ブランクの流入基準に適合するトン数が特定されます。続いてシューラー社製の油圧プレス機(加圧能力8,000 kN)にて、ブランクが深絞りされます(図4)。さらにロボットが生産されたシンクを固定具まで運び、上方に設置されたブルーライト搭載カメラがエッジを検出します(図5)。「実際の部品と基準値を比較する際、できるだけ現実に近付けることが大切です。」とハーシュ博士が話します。「そのため進行中の生産現場では必ず優良品をデジタル化して、これをシミュレーション・モデルと比較します」。 図4: 油圧プレスの金型(シューラー社製、8,000 kN)にブランクをセットし深絞りを実施 説得力のある結果 では、すべての工程が計画通りに運んでいるのでしょうか?「基本的には、はい、計画通りです。」とイェルク・ハインゲルトナー博士は答えます。もちろん、インライン工程コントロールを使っても、スクラップを完全に回避することはできません。「すべての外れ値を考慮して、スクラップを2/3削減できたと言えます。さらに、このシステムは非常に薄いシートを処理することができ、また耐障害性もあります。検証の一環として、意図的に不正なプレス・パラメータを設定しましたが、その場合も、コントローラは非常に短時間でトン数を調整し、すぐに優良品を生産することができました。目下、フランケ社の他の工場でもインライン工程コントロールの導入が検討されています。」特にスクラップに注意すべきは、最大16片までセグメント化されたブランクホルダを使用するような複雑なプレスラインです。 ハーシュ博士は、フランケ社が特に留意すべき重要 なポイントを指摘しています。熟達したオペレータは、それぞれのブランクや部品に適したトン数を知り尽くしています。「経験が豊富なオペレータがいなければ、複雑なモデルを許容範囲の品質で生産できなくなりかねません。」キッチン・シンクの生産は、われとしわの隙間にあるわずかなプロセス・ウィンドウ内で行われるため、量産中に金型の温度が上昇すると、すぐに不良品やプレスラインの一時停止を引き起こします。「インライン工程コントロールを併用することで、プレス成形工程が常にプロセス・ウィンドウに収まり、スクラップが皆無になります。」 フランケ社 スイスのアールガウ州アールブルクに本社を置くフランケ・グループは、家庭用キッチン、バスルーム、半公共/公共トイレ、プロのケータリング・システムやコーヒー・サーバーの大手メーカー/サプライヤーです。フランケ・グループは5大陸40ヶ国に展開し、子会社68社、およそ9,000人の従業員を擁します。 - [変動が激しい受注管理にクラウドが寄り添う安心感](https://japanforming.com/受注管理にクラウドが寄り添う安心感/) - Rescale社との提携によるオートフォーム社のクラウド・ソリューションに関するユーザー・レポート 近年、自動車業界のプレス成形関連サプライヤーの多くは、見積もりを非常に短い期間で作成しなければならない重圧に直面しています。また見積もりの依頼は突発的であるため、入札準備を行う部署には大きな負担となっています。平均的な仕事量が見込まれる中では、ハードウェアやソフトウェアは日常業務に必要な備えだけで十分です。しかし、見積もりの依頼が集中するときは、それに関わるエンジニアは対応が追い付かず、保留せざるを得ないシミュレーションがどんどん溜まっていきます。さらには見積もりに必要な機能が契約しているライセンスに含まれないこともあるため、日常的に使用することがないエンジニアリングの手法については、シミュレーションで評価または検証することさえできません。 しかし幸いなことに、このような事態を簡単に回避できる手段があるのです。WMU社の成功事例をお届けします。 WMU社(Weser Metall Umformtechnik)はドイツの金型サプライヤーで約500名の社員を擁し、その高い技術力が同社の高い品質基準の達成に大きく貢献しています。そのため数多くの大手OEMがWMU社を選択しています。 以下、WMUが市場の難題に立ち向かい、顧客の要望に応えるべく切り開いた新たな境地について紹介します。 WMU社のアーネ・ヨーナス・ビートム氏が、AutoFormクラウド・サービスのユーザー体験について次のように報告しています。 車体や排気系のプレス成形およびサブアセンブリのサプライヤーとして、納期の前倒しやプロジェクト実施期間の短縮といった難題を常に抱える業界に身を置いています。 顧客の購買部門の期待に応えるために、プロジェクトの正確なコストを明記した見積書を短期間に作成しなければならず、営業部門の労力や見積もり算出の手間も増大しています。 プレス成形のコストや製造可能性を評価する上で、AutoFormこそが理想的なソフトウェアであると確信しました。 短時間で有意義な工程計画を立て、材料の使用量を推定し、工程コストを計算することができるのです。 自社のコスト構造に応じて調整した標準をもとに、金型コストを見積もることも可能です。 引き合いの段階から製造可能性の評価を求められることが多くありますが、AutoForm-CompensatorとAutoForm-FormingSolverを活用すれば、根拠に基づく評価を行うことができます。 しかし、作業時間を短縮しつつも、より多くの部品をより高い品質で評価するには、担当者を増員するか、あるいは演算性能を強化するしかありません。 「"AutoFormクラウド・サービス"を使うことで、お客様のご要望に柔軟に対応できるようになりました。」 AutoFormクラウド・サービスは、演算性能を維持しながら固定費を削減することができる、素晴らしい手段です。日常業務に使用している既存機能に加えて、より高機能なシステムを利用することができます。プラットフォームは共通しているため、処理済みのデータを簡単に引き継ぐこともできます。 部品変更の依頼が頻繁であったり、「トライ・アンド・エラー」のシミュレーションによってループ数が膨大になる場合、平均的な処理能力を超える高い演算性能が必要となります。その結果、残余性能を使い果たし、処理能力が低下することになります。この問題は「AutoFormクラウド・サービス」によって解決できます。 クラウドにはどこからでもアクセスできるため、自由度が飛躍的に高まります。 圧倒的な性能と手厚いカスタマー・サポートが決め手となり、いまやWMU社では「AutoFormクラウド・サービス」はプレス成形の評価に欠かせません。 アーネ・ヨーナス・ビートム氏 WMU社 – Weser Metall Umformtechnik GmbH 従来型の企業ライセンスとは異なるAutoFormクラウド・サービスにどのようなメリットがあるか、お客様の管轄地域のオートフォーム社オフィスへぜひご相談ください! - [スターウォーズ『マンダロリアン』と高強度鋼のプレス成形](https://japanforming.com/スターウォーズ『マンダロリアン』とプレス成形/) - ドラマ・シリーズのレビューとマンダロリアン・アーマーのプレス成形におけるフィージビリティの検証 昨年投稿した英語版ブログ記事「Top Sheet Metal Stamping Movies」では、映画『8マイル』のレビューをお届けしました。映画産業でプレス成形にスポットライトがあたることはほとんどありません。この投稿記事では、スターウォーズの世界で高強度鋼材(AHSS)が担う重要な役割について詳述します。驚くべきことに、これが非常に魅惑的なのです。そしてスターウォーズのファンたちを興奮の渦に巻き込んだマンダロリアンのアーマー・スーツを(シートから)プレス成形する場面から、フィージビリティを検証します。 遠い昔 はるか彼方の銀河系で マンダロリアンの物語… 月にでも引きこもっていないかぎり、『マンダロリアン』がディズニープラスで配信されている話題のオリジナル実写ドラマ・シリーズであることをご存知でしょう。ペドロ・パスカル演じるタイトルの賞金稼ぎと、ザ・チャイルドとも称される愛らしいグローグーを中心に展開するこのシリーズは、昨年インターネット上で公開されると大ブレークしました。ハードコアのスターウォーズ・ファンでなくても、重武装した傭兵が一転して、フォースを操る謎めいた子供を父親に代わって守るストーリーと聞けば、その魅力の一片を感じるでしょう。 ザ・ガーディアン紙は、『マンダロリアン』を「素晴らしい。怪物が素晴らしい。宇宙船が素晴らしい。ロボットが素晴らしい。風景はため息の出るような美しさ。酒場での異星人の小競り合いは、臨場感に溢れている。」と評しました。 1話あたり1500万米ドルの制作費を投じている『マンダロリアン』は、『ジェダイの帰還』から5年後、J・J・エイブラムス監督の続編『フォースの覚醒』の25年前を舞台に繰り広げられます。このシリーズもまた緊張感漂う、無法の宇宙で展開します。 ご興味がおありでしたら、ディズニーによるシーズン1のまとめ動画(1:30)をぜひご覧ください。 https://youtu.be/kb2K2wPFVUQ 孤高の賞金稼ぎであるマンダロリアン(「マンドー」)は、腕は立つ反面、お金を稼ぐために、報酬が高い仕事を請け負っていました。ある時、賞金稼ぎギルドから「獲物」とだけ呼ばれる逃亡者を捕獲する仕事を紹介されます。 依頼主は報酬をベスカーで支払うと言います。ベスカーは伝説として有名なマンダロリアン・アーマーに使用するきわめて耐久性の高い金属です。マンドーは獲物であるザ・チャイルドを捕獲しますが、彼らの間には絆が芽生え、また自分も両親を失い孤児であったことを鮮明に思い出すと、ザ・チャイルドを孤児にしたくないという気持ちが強まります。 それでもマンドーは仕事を全うし、威圧的なクライアント(実はダース・ベイダーの銀河帝国の残党)にザ・チャイルドを引き渡します。このクライアントはザ・チャイルドに何らかの実験をするつもりであると知ると、マンドーに迷いが生じますが、しかしベスカー(スターウォーズ世界のAHSS)のインゴットで報酬を受け取ります。しかしマンドーはザ・チャイルドの運命に思いを巡らせた末に奪還しました。けれどもマンダロリアンの教義(戦士の掟)では、ザ・チャイルドを同胞の元に戻さなければならないことを知るのです。こうして、二人の冒険が始まります。 さて、これがプレス成形とどのような関係があるのでしょうか? 美しいアーマーで武装する マンドーの報酬がベスカーのインゴットであったことは、マンダロリアン戦士には意義深いことです。スターウォーズの伝説によると、ベスカーは極度の衝撃に対して高い耐性を持つ銀河最強の金属です。マンダロリアンは、数千年にわたって、ベスカーでアーマーを製作してきました。ブラスターの直撃弾を防ぎ、ライトセーバーの攻撃に耐えることができる唯一無二のアーマーで武装したマンダロリアンは、ジェダイの強敵として名をはせていました。 図1: マンダロリアンの武器師を演じるエミリー・スワロー(左) マンダロリアンの鍛冶職人でもある武器師(エミリー・スワロー)は、大粛清で失われたベスカーを報酬として取り戻したのは名誉あることだと讃えます。大粛清は、マンダロリアン戦士の文化がジェダイに次いで脅威となると考えた銀河帝国が、マンダロリアンを絶滅させようとした大混乱の時代でした。 この金属はそれほど貴重であったため、マンダロリアンはその成形方法について秘密を固く守っていました。さらにスターウォーズ世界にてベスカーのインゴットは、金の価値を上回る通貨です。このようにマンダロリアンのドラマ・シリーズでは、超高張力鋼が重要な役割を果たします。 ディズニーは、武器師が製作したマンダロリアン・アーマーを披露する魅惑的なシーンを通して、武器師の肩越しに秘密のベスカー鍛造技術を見せてくれました。 図2: アーマーで武装することは、リソルネアと呼ばれるマンダロリアン戦士の文化を規定する 6つの教義のひとつです マンドーのアーマーがようやく完成すると、ファンたちはインターネット上で大いに盛り上がりました。「ベスカーの価値は?」といった数多くの動画がYouTubeにアップロードされ、スターウォーズ世界での金銭的価値について議論が取り交わされました。また通貨を手にしたい願望に応えるように「ベスカーのインゴットを作る方法」を説明する動画も多く投稿されました。さらにはダマスク鋼に見られる水の波紋のような特徴的な模様をベスカーのインゴットのレプリカで再現する方法について詳細に説明したDIYのウエザリング加工のYouTube動画もあります。レプリカのインゴットには、大静粛で没収されたことを示す帝国の刻印さえ再現されたものもあります。3Dプリントでベスカーのスマホ・ケースを作ったファンもいます。 図3: ベスカーのインゴットを手作りするファン また多くのファンがコスプレ用にマンダロリアン・アーマーを自分で作っています。完成度が高い3Dプリントのアーマー・セットを発見し、Galactic Armory Store (銀河武器庫ストア)に連絡してみました。ストアのオーナーは、自宅に3Dプリンタがある製作者向けに3Dファイルと、作成の手引きとなるチュートリアル動画を公開しています。 図4: すべて3Dプリントで製作したGalactic Armory Storeのアーマー・セット マンダロリアン・アーマーのプレス成形 アーマーにこれほどの関心が集まる中、私たちはその成形性を検証するフィージビリティ・スタディを実施することにしました。特に形状が特殊なヘルメットをどの程度まで作り込むことができるかについて注目しました。そこでGalactic Armory Storeのアーロン氏から3D形状の使用許可をいただき、オートフォーム社テクニカル・ディレクタのバート・カーレア博士が成形性を検討し、レポートをまとめました。 図5: 生データの3D形状を半分に分割 「ヘルメットの形状は凹凸が大きいため、まず最初にデータを準備しなければなりませんでした。この形状の場合、ヘルメットを左右のセグメントに切り分けることにしました。これはプレス成形後に組み立てます。これら2つのセグメントは、ヘルメットの開口部が向き合うように対称に配置しました。この配置でプレス成形することで、両方を1回で絞ることができるのです。 図6: AutoFormを使用した解析 「プレス成形解析を実施する前に、初期フィージビリティ解析を行い、部品のリスク領域を特定しました。結果は上図のとおりです。オートフォーム社のソフトウェアで簡易的なドロー型サーフェスを作成し、AutoForm-StampingAdviserで解析した結果(図6の左下)、ヘルメットの耳周りに赤色が示されました。 これは、オリジナルの設計にシャープ・エッジやアンダーカットがあるために、絞るとわれが発生することを意味します。そのため、耳部分の領域に形状の修正を加えました。それが、右側の図です。いくつかの半径を滑らかにして、アンダーカットをなくしたことで、部品をプレス成形できるようになりました。 「その後、もう一度フィージビリティ解析を行いましたが、ヘルメットの耳部分に大きな改善が見られました。まだ軽微なリスク領域が残っていますが、こういったものは通常は次のプレス成形シミュレーションで解決します。実際にドラマで装用しているヘルメットは、このイヤーピースは別途取り付ける形式になっているので、シミュレーションする必要はありません。しかし今回はあえて成形が難しい部品を1回でプレス成形することにこだわりました。 図7: プレス成形解析によって理想的なストレッチを実現 「次に長方形のブランクを挿入し、仮のパラメータ設定を使ってプレス成形解析を実行しました。図7(左上)がその結果で、大きな長方形のブランクを使っていることがわかります。その下が成形性の結果で、緑の領域で示されているように、適切にストレッチしています。また、ヘルメットの頂点のブルーの領域の近くには、オレンジや黄色のスポットが確認できます。これは注意が必要な状況で、圧縮領域のすぐ隣にわれのリスクがあることを示しています。プレス成形工程を確実に行う上で良くない兆候です。 「図7の右の上下2つの画像は、工程最適化の結果を示しています。材料のコントロールを改善するため、ヘルメットの頂点と長辺に沿って、いくつかドロービードを追加しました。さらにブランクのエッジを切断して取り除きました。これは、材料のロックを解決するためによく使われる手法です。これで材料の流れを大幅に改善できました。われの危険性が緩和されたのがわかります。ストレッチで妥協するため、少しバランスを取る必要がありました。ヘルメット自体に圧縮/伸びが発生していますが、これはコントロールできていて再現可能で、ヘルメットを連続してプレス成形できる安定した工程となっています。 - [大手Tier1部品サプライヤーA社におけるAutoForm-Sigmaを利用した量産不具合への対応](https://japanforming.com/autoform-sigmaの量産不具合対応/) - 大手Tier1部品サプライヤーであるA社は、経験に基づく多くの知見と先端的な技術や理論を積極に取込んで高い技術力を培ってきています。それに伴い愚直な改善活動も盛んにおこなわれ、価値のある提案を行うことができるため、取引先に絶大な信頼を得ています。A社では、長年にわたり多くのAutoFormの製品を使用して様々な技術課題に取り組んできています。この報告では、量産中に発生した成形不具合の要因分析のためにAutoForm-Sigmaを用いた取り組みを紹介します。 この取り組みからA社では、成形性や寸法精度検討の早い時期にAutoForm-Sigmaを用いた加工条件最適化およびロバスト性検討を積極的に取り入れる必要性を認識し、これからの検討作業を拡張していく予定です。 【量産不具合の発生】 今回、問題が発生したのは270材のダッシュ・パネル部品です。この部品はこれまで通りAutoFormによる成形シミュレーションで加工不具合の確認と対策を実施し、問題が無い状態にしてから金型製作に取り掛かっています。そして、トライ時においてもシミュレーションと同様に、加工不具合の問題は発生しませんでした。 しかし、量産加工が始まると、部品中央のトンネル形状部上にシワが散発的に起きてしまい、量産時の加工停止につながってしまいました。 この部品は、初期検討段階で部品形状特性からワレとシワ発生が拮抗する典型的な状況になっていることが明らかでした。設計コンセプトとして、ワレの発生を抑えるとともに、シワ抑制のシワ取りビードを部品形状に追加するという設計方針を立て、AutoFormを用いた検討により、ワレとシワの問題発生しない最適な部品形状提案と金型設計へのフィードバックおよび加工条件の決定を行いました。 しかし、量産トライが開始されるとシワが発生してしまい、量産が困難な状態と判断されました。この結果から、シミュレーションの予測が外れていることになりますが、トライ時では成形性の問題発生が起きていないことから、一概にシミュレーションの予測が外れているとは言えません。はっきりしていることは、シミュレーションとトライの結果は大きな差異が無く、成形不具合が発生していない。しかし、トライと量産では結果に差異があり、量産時にシワが発生した。ということです。トライと量産では加工条件などに差異があるということになります。 そこで、量産時の加工条件のバラツキによりシワの発生が散発的になることを確認するために、AutoForm-Sigma(以下Sigma)を使ってロバスト性解析を実施しました。 【AutoForm-Sigmaを使った感度分析】 Sigmaで加工バラツキによるシワ発生のロバスト性解析を実施するために、実際の量産時に発生する加工バラツキは表1のようになります。 表.1 バラツキ変数一覧 Sigmaではバラツキ変数の最大値と最小値、および標準偏差値を入力値として、それぞれのバラツキ変数の組み合わせを自動で定義し、複数のシミュレーション・モデルを作成した後、成形シミュレーションを同時並行に実施、その結果を集計して統計的に分析できるようになっています。 Sigmaによる加工バラツキの分析結果を図1に示します。図の中央部の破線で囲った問題発生部分のシワ発生は加工バラツキに対して不安定(図中の赤い部位)であることが分かりました。そして、どの加工条件のバラツキに原因があるのか確認すると、摩擦のバラツキが最も影響があることが分かりました。 摩擦のバラツキ、つまり潤滑油の塗布量のバラツキとなるのですが、このバラツキを押さえることは困難と判断し、加工バラツキに対応できるシワ対策を実施することとしました。 図1.Sigmaによる加工バラツキの分析結果 【シワ対策案の検討】 シワの対策としては、既存のシワ取りビードの高さを調整してみましたが、図2の左側のようにシワ重なりの増加が確認され、既存のものだけでは対応できないと判断し、新規のシワ取りビードを追加することにしました。その結果、図2の右側に示すように新規追加のビード形状と位置を検討し最適な条件を見つけ、シワ重なりなどが無いことが確認できました。 この条件において先ほどと同じ加工バラツキを考慮した、シワのロバスト性解析を実施しました。 図2.しわ取りビードの検討 (左:既存ビード高さ変更、右:既存ビート高さ変更+追加ビードあり) 【最終感度分析】 この修正を反映して、再度Sigmaを利用して加工バラツキにおけるシワおよびワレの感度分析をしてみました。図3に示すように加工バラツキによるシワ発生バラツキは図3左の改修前と比べ、改修後ではバラツキの低下が見られ、品質に問題ないレベルで、安定した加工が行えることが認められました。さらに、図4に示したように成形限界線図によるワレ発生の危険度も確認し、ワレの閾値より低く、安定して加工することができる見通しになりました。 このように、実加工前に加工バラツキを考慮して成形性やスプリングバックのバラツキ度合い、いわゆるロバスト性解析を実施しておくことにより、実機量産時における散発不具合の発生を予測することができ、仮にロバスト性に問題が有るとなれば、事前に工程や形状、加工条件などの変更をさらに実施して、ロバスト性を高めることができます。これによって、量産の散発不具合の発生を未然に防ぐことができると考えられます。 図3.Sigmaによる加工バラツキの分析結果(左:改修前、右:改修後) 図4.成形限界線図による成形性不具合の確認 【まとめ】 この、経験からA社では、SE段階および最終検討段階の解析において加工バラツキの影響を検討することの重要性を理解し、開発業務プロセスにSigmaによるロバスト性解析を追加することにしました。 そして、Sigmaの利用が増加し、実用的な計算時間が伸びることを想定して、解析時間の短縮を図るために、Sigmaによる同時処理能力を増強させるためにS32からS-MAXにアップグレードしました。このモデルで実施した場合には、図5に示すようにS-MAXへの変更により、S32と比較して処理速度が3倍ほど向上し、短時間で検討が完了できることが実証されました。 図5.Sigma-S32とSigma―S-MAXの計算時間対比 例えば今回の事例では、Sigma導入により、量産時に発生する散発不具合を設計段階で予測し、対策が行えていたと仮定すると、現場で発生する量産不具合での仕損費、プレスの停止時間、絞り金型の再作成費用、後工程金型の改修費など数千万円の削減効果が得られていたと考えらえます。そして、A社が年間に取り扱う部品数を考えれば、このような取り組みの効果は非常に大きなものとなることが考えられ、量産後の問題に対処するためのSigma導入効果は十分にあると言えるそうです。 A社としては、企業価値の向上と取引先との更なる信頼関係の構築を期待しています。 - [リー・ミョンギュ教授との対談 - エレクトロモビリティ時代におけるプレス成形業界の未来および初となるIDDRGバーチャル会議開催について](https://japanforming.com/エレクトロモビリティの見解とバーチャルiddrg会議/) - 注: この投稿記事は、英語を母国語とするアメリカ人によって校正済みです。 サイエンス・トーク 本稿では、ソウル大学校工科大学材料工学部のリー・ミョンギュ教授との対談をお送りします。エレクトロモビリティ時代におけるプレス成形産業の変革について、リー教授の見解を伺いました。また、今後数十年に渡りこの流れが続くと思われる中、プレス成形の研究が果たすべき役割についてもお話しをいただきました。そして、初となる国際深絞り研究グループ(IDDRG- International Deep Drawing Research Group)のバーチャル国際会議の開催準備にまつわる体験談や、コロナ禍が科学的過程に与えた大きな影響についても伺いました。 リー教授、本日はよろしくお願いします。まずはリー教授の研究分野について伺うところから始めたいと思います。教授はプレス成形の研究に数多くの有意義な貢献をされています。この分野で現在も進行中のプロジェクトはありますか? また最も喫緊な課題は何であるとお考えですか? >> ソウル大学校の私の研究室では、構造材の基本的な機械的応答の研究を専門的に扱っています。固体力学、数値力学および実験力学をベースとして統合されたマルチフィジックスおよびマルチスケール機械工学による材料の変形および機械特性の最適化に重点を置き、金属、ポリマー、ファイバーの強化合金で構成される材料の研究開発を行っています。これは自動車部品や電気器具の製造、バッテリー部品、ハイブリッド接合技術、新材料、工程設計などの分野に応用できます。他にも実験力学および構成モデリングの分野で、非線形かつ異方性が非常に強い材料の機械特性を得るための実験的手法にも取り組んでいます。 プレス成形分野の諸問題に対応するには、微細構造が材料系の特性に与える影響を解明すると同時に、最先端の数値モデルおよびシミュレーションを開発することがとりわけ重要です。これらは現場の技術者たちがより性能の高い材料や工程を設計する上で役立ちます。そのため、私たちは現代自動車の研究開発チームと共同プロジェクトを立ち上げ、熱機械-治金的工程および微細構造の変化、そして強度、異方性、成形性などの最終機械特性までを網羅するバーチャルな統合シミュレーション・プロセスの開発に取り組んでいます。 エレクトロモビリティが勢いを増していますが、韓国の自動車業界ではすでにこの分野で先駆的な開発を行っています。今後数十年で、これがどのようにプレス成形産業を変えていくとお考えですか? またエレクトロモビリティは、この分野の科学的発展にどのような影響を与えるでしょうか? >> 今年の始めの公的報告書によれば、2020年、韓国政府は国内産業および公共事業へのエレクトロモビリティ関連の投資を2019年比で50%増額しています。この資金から環境にやさしい電気自動車およびハイブリッド車の購入と、韓国内の充電ステーションの拡充が行われました。参考までに、産業通商資源部(MOTIE)によれば、公的機関に納入した新車の約70%がエコカーでした。また韓国政府は、エレクトロモビリティの研究開発活動を行う企業、研究機関や大学への補助金を増額しました。最も大きな予算が割かれているのは、政府主導による水素燃料電池自動車(FCEV)の研究開発への投資です。その成果はバッテリー駆動の電気自動車には及びませんが、FCEV市場は韓国政府の支援によって急成長するでしょう。 エレクトロモビリティの台頭が、プレス成形業界の今後に影響を及ぼすことに疑問の余地はありません。プレス成形技術における大きな変化は、成形工程および材料の自由度の増大だと思います。そして未来のエレクトロモビリティの中核的な課題も、現在と同じく車体の軽量化でしょう。エレクトロモビリティの需要に応じて、新たな材料の開発がより短期間で進むため、車体設計に採用される材料を理解することは極めて重要です。 ご存知の通り、電気自動車の車体設計における一番大きな変化はバッテリーの搭載に関わるもので、車両のサイズや仕様に応じてさまざまな設計コンセプトが存在します。また、バッテリーは一般的にモジュール方式であるため、新たな車体構造設計の自由度を大幅に狭めて、さまざまなバッテリー搭載コンセプトに対応しなければなりません。その結果、同じ生産ラインで別の部品を生産し、プレスや金型のコントロールの自由度を高めることで、コストや生産時間の削減を図る場合もありえます。 車体の軽量化は、エレクトロモビリティの鍵となる設計パラメータです。またバッテリーを搭載するた めに複雑な車体構造を設計するために、鋼材、アルミ、ポリマーなどの異なる材質を組み合わせるマルチマテリアル戦略の重要性も高まりつつあります。乗員の安全とバッテリーの保護のため、近い将来、高強度鋼とアルミ合金を使用したプレス成形部品が開発される可能性もあります。今後も主流となる成形技術はプレス成形だとは思いますが、複雑な形状のプレス成形部品を生産するために必要な自由度を高めるために、ロール成形やインクリメンタル成形といった従来とは異なる成形方法も積極的な検討が進み、また標準的な溶接から機械的接合まで、さまざまな接合技術もマルチマテリアルのプレス成形部品生産に導入されていくでしょう。 エレクトロモビリティの実現に向けた科学的成果としてプレス成形部品の自由度が向上し、材料の選定、成形および工程パラメータの多様化が進んでいます。しかしこれらを最適化するには試行錯誤が伴うため、コストが増大します。そのため有限要素解析に基づくシミュレーション技術こそが、自動車業界を支えるテクノロジーとなるのです。シミュレーションによって、従来の金型設計のように成形や接合のコストを最適化できるだけでなく、工程の安定性を特定するためにデジタル・ツイン環境を構築することもできます。エレクトロモビリティにみられるマルチマテリアル・システムでは、各材料の特性だけでなく、成形や形状に及ぼす影響を理解する必要があります。そのため工程全体、微細構造の特性、およびその結果としての機械特性を網羅したシミュレーションを開発しなければなりません。 マルチスケール/マルチフィジックスを基盤としたシミュレーション技術を急成長しているビッグ・データ解析と組み合わせることが、自動車業界の未来に不可欠な研究分野となります。 教授は世界でも先駆的なプレス成形分野のバーチャル会議の開催準備を進めていらっしゃいますね。どのような体験が原動力になっているのかということと、ここまでの課題を教えていただけますか? >> 元々の計画では、2020年6月初旬に釜山でIDDRG 2020を開催する予定でした。当初は新型コロナの影響で10月末まで延期したのですが、最終的にIDDRG実行委員会の賛同を得て、初の IDDRGバーチャル会議を開催することに決定しました。バーチャル会議を成功させる上で最も大きな課題は、プレス成形コミュニティからより多くの人々に参加していただくことです。 幸いなことに、Esaform 2020の組織委員会から貴重なアドバイスをいただき、また材料成形分野のバーチャル会議開催の成功談も聞かせていただきました。もちろんバーチャル・プラットフォームに起因する数々の問題に直面しましたが、初となるIDDRGバーチャル会議の新たな成功談を組織委員会が懸命に導き出してくださいました。すでに当初の期待を上回る180を超える要約をいただいています。世界中のプレス成形コミュニティからの多大なる関心とサポートに感謝いたします。 IDDRG会議の最大の強みは、常に学界と産業界の両界から寄稿や参加がある点ですが、バーチャル会議でも同じような反響があると思いますか? >> IDDRG会議は、産業界および学界の名だたる専門家や研究者の交流を促進する場であることにおいて、他に類を見ません。IDDRG会議の理念にたがわぬよう、バーチャル会議でも、プレス成形分野の産業界および学会の両方からの参加や寄稿のバランスを重視しています。両界から素晴らしい講演者をお招きしています。学会からの講演者については、ほとんどの場合、産業界の経験がありエンジニアとも緊密な協力関係にある方に依頼しています。タイミングよく気軽に海外へ渡航できない産業界従事者の方々には、このバーチャル・プラットフォームに利便性を感じていただければ幸いです。勤務時間外であっても、またどこにいても、バーチャル会議に参加することができるよう、会議の日程を5日間に延長しました。2020年のIDDRGバーチャル会議では、Barlat教授と桑原教授による理論および実験上の塑性とプレス成形について、2回のチュートリアル・セッションを開催します。プレス成形の基礎を学んでいる学生やジュニア・レベルの研究者にとって、貴重な学びの時間となると確信しています。 IDDRGをバーチャルで開催するのは必要に迫られてのことですが、これが今後の会議に大きな刺激となるかもしれません。IDDRG2020が先例となり、今後のプレス成形会議開催にどのような影響があるとお考えですか?「コロナ時代」の収束後も、バーチャル会議は定着するとお考えでしょうか? >> 確かに、現在も人々の移動が制限されているため、今年はIDDRGをバーチャル・プラットフォームで開催せざるを得ませんでした。新型コロナのパンデミック以前にも、バーチャル(またはオンライン)会議はライブストリームのイベントとして着実に増加していました。世界的なロックダウンによって、このトレンドが加速しただけだと思います。その一方、対面の議論やネットワーク作りなど、簡単にはデジタルに置き換えることができない対面会議ならではの利点もあります。たとえば、IDDRG会議では現地企業訪問を併せて開催していましたが、バーチャル会議ではこのような企画を提供することができません。双方の利点を上手く取り入れたハイブリッド・イベントが、また新たな選択肢となるかもしれません。 では、広い意味での科学的プロセスについてはどうですか?コロナ禍によって実験作業に支障は出ましたか? 科学の創出という点において、「コロナ禍」は大きな影響を及ぼすしょうか? >> 北米や欧州では大半の大学が一定期間ロックダウンされ、研究者は研究室で作業できませんでした。幸いなことに、韓国で感染拡大が最も深刻だった期間も、韓国の大学院はロックダウンされませんでした。私たちは問題なく研究を続行することができ、実験作業が中断することもありませんでした。もちろん、外部から試料を調達して準備するのに多少の不便はありましたし、研究プロジェクトを支援してくださっている出資企業とは、オンラインでミーティングをしなければなりませんでした。しかし世界中の多くの研究者たちが、より厳しい現実に直面していたことも承知しています。科学的過程は極めて柔軟で回復力も強く、困難が降りかかっても進んでいくと信じています。 著者について: リー・ミョンギュ博士は、韓国のソウル大学校で博士号を取得しました。現在はソウル大学校工科大学材料工学部教授であり、プレス成形、数値塑性、材料工学を専門とし、先進構造材の有限要素モデリング、マルチスケール・モデリングおよび複雑なひずみ経路の変化が発生した場合の材料の変形作用を解明する実験に携わっています。また、塑性理論、先進構造モデリングおよび有限要素シミュレーションに関する学術論文250編以上、会議議事録2巻、著書1巻、書籍の3章を共同執筆しています。塑性分野での優れた貢献が認められ、2014年国際塑性論文賞を受賞しました。また、2018年POSCO奨励賞を受賞しています。博士は、2020年10月の第39回IDDRG会議の議長を務めます。 共著: ニコ・マヌプロ/リー・ミョンギュ博士 - [Usibor1500鋼材の熱間プレス成形シミュレーション](https://japanforming.com/usibor1500鋼材の熱間プレス成形シミュレーション/) - 自動車業界では車両の軽量化や安全性強化に対する需要の高まりを受け、高い機械的強度を有する鋼材を使用した構造部品が注目を集めています[1]。この需要に応じて新たな合金鋼の開発が進み、すでに多くの鋼材が自動車業界の標準になっています。中でもUSIBOR1500鋼材は、熱間プレス成形技術を応用し、構造部品や高強度補強材の生産や性能を改善することを目的に開発されました[2]。 これには加熱炉、冷却システム、各種処理設備などの導入だけでなく、プレスや金型などの設備も根本的な変換が必要です。そしてすべての設備が調和し動作することで、目標形状と特性を備えた最終部品を生産することが可能となります。 直接熱間プレス成形工程では、約950°Cあるいは完全にオーステナイト変態するまで、シートを加熱します。その直後、冷却した金型にシートを配置し、ほぼ同時に成形とクエンチングを行います。この工程には、最終部品の機械的強度が非常に高く、成形後のスプリングバックが小さい、といった利点があります。シートの機械的強度は約400 MPaからおおよそ4倍の最大1,500 MPaまで高まるため、市場の需要に応じることができます[3]。 有限要素法のアプリケーションを熱間プレス成形工程のシミュレーションに応用するには、成形中および冷却中の熱の現象を正確にモデル化する必要があります。ブランクから冷却した金型までの熱伝達を考慮すると、ブランクから放熱される熱量は、金型に吸収される熱量と等しいと結論付けることができます[4・5・6・7]。本稿ではこれに留意しつつ、 USIBOR1500合金シートの熱間プレス成形製造に対する理解を深めるために、 Bruning Tecnometal社R&D部門が開発した部品の検討を行います。解析および数値モデルが、開発した部品の根幹部分となります。 材料および工程 材料特性 この研究では、シミュレーションに1.4 mm厚のUSIBOR1500鋼材シートを使用します。このシートの寸法を図1Aに、シミュレーションした最終部品を図1Bに示します。 シミュレーションにはAutoFormソフトウェアのThermoSolverモジュールを使用し、材料の機械特性は、弾性係数203 GPa (20°C)、103 GPa (950°C)、ポアソン比0.3、密度7,670 kg/m³と設定しました。さらに熱的特性として、熱伝導率23.3 mW/(mm K)、定積熱容量3.59 mJ/(mm³K)、シートの初期温度950°Cを設定しました。 表1 – 熱間プレス成形工程シミュレーションの入力パラメータ 熱間プレス成形のパラメータ 熱間プレス成形工程中に完全なマルテンサイト変態を生じさせるには、材料の完全なオーステナイト変態と迅速な冷却が必須条件となります。鋼材段階を示した図によると、約900°Cの温度でオーステナイト変態が生じます[6]。冷却率を27°C/秒以上にすることでベイナイト変態を回避し、最終的な微細構造が完全にマルテンサイトとなるようにします[7・8]。表1は工程シミュレーションの入力パラメータを示し、図2は検討するパンチとダイフェースを示します。 結果と検討 この調査では、次のシミュレーション結果を評価しました。部品のしわ、板減、クエンチング後の機械的強度、マルテンサイト含有量、硬さ(ヴィッカース)、サイクル時間の関数としてのスプリングバックおよび温度分布(すべてを以下に示しています)。 しわ・板減 入力パラメータ、使用する材料、金型の動作から検討した結果、部品にしわのリスクは確認されませんでした(図3A)。部品の板減は、青の中央領域で約1.3%、エッジ付近の領域で約6.1%、その他の領域では板減は見られませんでした。図3Bは、部品の板減を示しています。 機械的引張強度・マルテンサイト変態 熱間プレス成形工程後、材料の引張強度が高まりました。カタログに記載されているベース材料の機械的引張強度は約500 MPaでしたが、熱間プレス成形工程後の強度は、部品の側面部分で約1,430 MPa、中央部で最大1,490 MPaとなりました(図4A)。 その結果、すべての部品領域で100%のマルテンサイト変態が実現したことを考えると、シミュレーションした熱間プレス成形工程が実証されます(図4B)。 ヴィッカース硬さ・スプリングバック 硬さと引張強度も大幅に増大し、部品に沿って470~490 HVを維持し、側面から中央部に向かって大きくなっています(図5A)。成形工程後の部品のスプリングバックは、中央部および側面部では基本的にゼロで、フラップ部に0.5 mmのモジュールができました。図5Bは部品のスプリングバックを示します。 サイクル時間に依存した温度分布 最後に、熱間プレス成形工程後の部品の最終温度を、図6Aに示します。工程の最後で、温度が132°Cの領域が検出されました。工程の最初でのシートの処理と同様に、この工程にも適切な安全装置を適用すべきです。それを検討する上で、工程のサイクル時間を増大して工程の最後で部品の温度を下げていき、条件を評価しました。45秒のサイクル時間では、最高温度は49°Cになりました。図6Bは、部品全体の温度分布を示しています。ただし実際の製造工程では、サイクル時間の延長による冷却では不十分です。 サイクル時間が22秒の金型の場合、最初のサイクル終了後のパンチとダイフェースの温度は低く、端部の温度は高いことが確認されました(図7)。 結論 上記の研究から、USIBOR1500材料を使用した熱間プレス成形工程のシミュレーションに適用した金型と入力パラメータが適切であり、その結果、部品のスプリングバックと板減がごくわずかで、また100%のマルテンサイト変態も達成できたことが確認されました。そのためおおよそ1,500 MPaの高強度な薄板部品を作成することが可能となり、自動車業界のお客様に大きな可能性をもたらすと期待されています。 著者について イブソン・イヴァン・ヘルター(ibson@bruning.com.br) 機械工学士(リオグランデ・ド・スル大学機械工学部修士課程)。ブラジル/リオグランデ・ド・スル州/パナンビにあるBruning Tecnometal Ltda社のイブソン・イヴァン・ヘルターは、金型シミュレーションに精通したスペシャリストであり、プレス成形部品のシミュレーションおよび構造シミュレーションを担当しています。 - [フォード・オトサン社が最初のトライアウト・ループですべてを公差に収める100% の結果を達成](https://japanforming.com/トライアウト・ループ成功事例/) - 金型工程チームによるCADサーフェス品質のシミュレーション成功事例 新たなプロジェクトでは、多くの場合、経験のない対象物や困難な問題を扱わなければならず、より高い寸法精度が必要となります。また継続的な工程改善を達成するために、常に新たな品質目標が設定されます。そしてアセンブリ工程の工数削減や車体の外観向上が、下流工程に大きな便益と節減をもたらすことも明白です。 フォード社の北米プロジェクトでは、これらの新たな目標を非常に短期間で達成しました。このブログ投稿では、フォード・オトサン社金型部門のソザー・メティン・タルテイミズ氏が、ルーフ・フレーム部品のトライアウトにおいて、初回で成功を収めた事例について紹介します。以下がそのレポートです。 「このような目標を達成する上で、技術的な専門性だけが唯一の成功要因であるとは限りません。むしろ異なる視点を持つことこそ重要です。成功の裏には様々な要因あります。それらについて詳しくご説明します。 フォード・オトサン社の金型工程チームに配属される前は、NC担当部署にて、金型の最終加工用サーフェスの作成に携わっていました。当社の金型部門では、経験豊かな金型工程設計者となるには、この業務を1から学ぶ必要があると考えられています。なぜならば関係者全員が開発からトライアウトまでのワークフロー全体を完璧に理解できるようになり、矛盾のない意思疎通が可能になるからです。 そして金型工程チームでは、「金型のサーフェスに関する知識」を有することが、何より重要だと確信しています。金型工程の上席設計者、ファティ・ウネヘオネ氏は「金型工程設計者は、自分が定義した金型工程で、金型サーフェスを開発できなくてはいけない」と常々述べています。 また金型工程設計者は、さらに以下を理解しなければなりません。 プレス成形に関する情報(特にパネルのホーム・ライン) 金型工場および製造工程 金型設計の基礎知識 加工に関する基礎知識 私の唯一のモチベーションは、これらを理解し、完全に咀嚼することであり、それは今も同様です。 最初のトライアウト・ループで100%のPIST(Points in Specified Tolerance-指定公差点)を達成するのは、容易なことではありません。私自身は、初めて携わった金型工程にて、これを経験しました。フィージビリティ評価から最終金型工程、そして製造開始まで、金型工程の全段階を実際に見て学ぶ大きな機会に恵まれたのです。 まずは過去に実施された類似部品のプロジェクトを確認し、ノウハウを収集するところから始めました。 フィージビリティの評価を始めるにあたり、CAD金型サーフェスの処理にはAutoForm-Process DesignerforCATIAを使用しました。フォード社内での共通理解を体得するために、自分のCADのスキルを磨く必要があったからです。ここではっきり申し上げたいのは、この選択は正解だったということです。このソフトウェアには適切なタスクを導くガイドラインがあり、最初からとても快適に作業できました。ユーザーのタスクをガイドする方法が非常に優れているため、工程設計を学びながら作業を進める上で、このソフトウェアから非常に大きな支援が得られます。部品の変更による情報更新を、円滑かつ確実に行うことができました。 フィージビリティの評価にはシミュレーション結果を活用し、作成したレポートや工程についてチームのメンバーと意見交換を重ね、さまざまな視点を得ることができました。工程について様々な意見を聞くことは、非常に有効であり、とても参考になりました。 このプロジェクトでは、ルーフ・フレーム部品とインナー・パネルの接合面で寸法精度の公差が± 0.5 mmであるため、非常に正確なスプリングバック見込み補正が必要でした。そのため金型工程チームでは、精度を確保し、金型工場に余裕を与えるために、すべての接合領域に±0.3 mmの範囲を定義しました。 そしてAutoFormを活用し、見込み補正の方案を容易に作成できました。すでに述べたとおり、私は以前に金型工場で勤務していましたが、その当時から、金型製造工程には寸法精度の不具合による品質改善ループが多すぎることが、大きな問題だと感じていました。金型製作者は、品質改善ループの問題に対処するためにグラインダーを使い、ゆがみを解消するために金型表面を時間をかけて磨いていかなければなりませんでした。このような経験から、それぞれがお互いの「痛みを感じる」ことの重要性を学んでいったのです。技術部門が正確な工程を提供することができれば、下流工程にて良い結果を導き出すことができます。 現行版のソフトウェアは、スプリングバック見込み補正が構造化 され、ガイド機能が使えるようになったため、さらに重宝しています。私が驚いたのは、タスクをあれこれ「行ったり来たり」する必要がないことです。私はシミュレーションでサーフェスを検証しながら、すべての見込み補正作業を1日で終えることができました。 これほどの満足感は他のどこで得られるでしょうか?そして最初のトライアウト・ループで、すべて公差に収まる結果が達成されたのです。この素晴らしい成功は、フォード・オトサン社金型部門全員のものです。 この成功に尽力されたみなさま、おめでとうございます。 - [最新の摩擦モデルが中国の大手金型メーカーの5つの部品を救済](https://japanforming.com/triboform摩擦モデルを適用した例/) - TriboFormソフトウェアを利用したドア・インナー部品のしわ予測 この事例記事では、中国の大手金型メーカーがプレス成形シミュレーションにTriboForm摩擦モデルを適用した例を紹介します。近頃、初期プレス成形シミュレーションにてしわを予測できず、トライアウトや生産で不具合が発生していました。AutoFormおよびTriboForm FEM Plug-Inを組み合わせることで、実部品に発生するしわの予測を、シミュレーションでどのように改善できたかをご紹介します。 以下は、大手OEMや一次サプライヤを顧客にもつ世界的に名高い中国のある大手金型メーカーの事例です。この金型メーカーは、アウディやフォルクスワーゲンなど中国の国内外の顧客が求める高い品質基準を満たす精緻な金型を提供しています。 最近、デフォルト設定を用いたプレス成形シミュレーションでは、しわの可能性がある複数の領域が示されましたが、値が非常に小さく、現実にしわが発生するリスクは非常に低いと思われました。そのため、そのデータをもとに金型を製作し、トライアウトを行いました。 しかし残念ながら実際に生産した部品は、デフォルト設定のシミュレーション結果とは一致していませんでした。複数のOEMから受注したドア・インナーなど多数の部品にて、深刻なしわの不具合が生じたのです(図1)。プレス成形シミュレーションでは、精度面で「安全」と予測されているにもかかわらず、部品の特定の場所でしわが繰り返し発生しました。 金型メーカーの李氏は、「製品品質の観点から、このしわは重大な問題であると考えました。まず、入力パラメータを確認し、ブランクのサイズとバインダ荷重を検討しました。すべて適切のようでした。次に、金型の検収条件をもとに、実際の生産方案に準じてシミュレーション工程でも金型のギャップを0.5 mm拡大しましたが、定数摩擦モデルを使ったシミュレーションでは、トライアウトのような重大なしわを示しませんでした。」 その一方、金型工場ではトライアウトをシミュレーションと関連付けることなく、これまでの経験をもとに不具合に対応するしかありませんでした。たとえば1個取りのドア・インナーの場合、ドロービードを追加することで、十分な抵抗が発生し、しわの不具合を解決できました(図2)。 これは上手く行きましたが、CNCマシンで金型を再切削しなければならず、これには高いコストが伴いました。 これは複数のOEMから受注した多くの部品で何度も発生する不具合であったため、金型メーカーでは根本原因を調査するためのプロジェクトを立ち上げました。以前の調査では、摩擦および潤滑条件が製品品質に影響を及ぼす重要な要因であり、特定の材料や部品はトライボロジ条件に対する感度がきわめて高いことが示されました。またシミュレーションの精度を高めるには、シミュレーションでは現実に即した設定をもとに、トライボロジ挙動をなるべく詳細に記述することが重要です。よって、この金型メーカーとオートフォーム・チャイナ社が提携し、TriboForm摩擦モデルを適用した新たなシミュレーションを実行しました。プレス成形シミュレーション・ソフトウェアにTriboFormモデルを併用することで、旧式の一定クーロン係数を、接触面圧、速度、ひずみおよび温度の関数を伴う4次元の摩擦モデルに置き換えることができます。 また、TriboFormを使用することで、トライボロジに関わる材料データに対応した摩擦カードのデータベースを利用できるため、摩擦係数を可視化することができ、また結果をエクスポートしてプレス成形シミュレーションに適用することもできます。この5つの部品に対するアプローチは、より詳細な摩擦および潤滑条件の記述を、プレス成形シミュレーションに適用することでした。この調査では、トライボロジの検査や使用する材料に合わせた調整などは行わず、デフォルトで利用できるライブラリからTriboForm摩擦モデルを適用しました。下図は2つの部品について、TriboForm摩擦モデルを適用した場合と適用しない場合のシミュレーション結果を示しています。 オートフォーム・チャイナ社のクリストフ・ウェーバーはこう説明しています。「当社のお客様とオートフォーム社によるこの共同プロジェクトによって、摩擦こそが、複数のお客様から受注した多くの部品に繰り返し発生するしわの根本原因であることを突き止めました。TriboFormの高度な摩擦モデルを適用して実際の挙動をシミュレーションすることで、トライアウトや量産と同等に信頼性の高い予測が可能となり、5つすべての部品のしわを解消することができました。それも材料や摩擦試験を一切追加することなく、TriboForm標準ライブラリのトライボロジ・ファイルを適用するだけで、すべて実現できました。これは、デジタル・エンジニアリングの段階にて、再設計の労力をかけることなくしわを解決でき、また実際のトライアウトでも、コストがかかる金型の再切削を回避できることを意味します」。 事例: トライアウト・ループは1回につき約37,900元(60万円)のコストがかかります(再設計にかかる人件費1日あたり1,000元(16,000円) x 1日、再切削費用1時間あたり300元(4,800円) x 3日、金型のスポッティングおよびトライアウト1日あたり人件費500元(8,000円) x 3名 x 3日、および1時間あたり150元(2,400円)のトライアウト・プレス機のコスト)。 このプロジェクトでは、5つのドア・インナー部品にTriboForm FEM Plug-inとそのトライボロジ標準ライブラリを適用し、各部品のトライアウト・ループを1回削減した結果、790%の投資利益率(ROI)が実現しました。 コスト 削減 5つの部品 x トライアウト・ループ1回の削減 x 37,900元 (60万円)/削減したトライアウト・ループ = 189,500元(300万円)のコスト削減 ROI 189,500元のコスト削減 / 24,000元の投資 = ROI 790% すべてのドア・インナーおよびドア・アウターのプロジェクトにおいて、包括的な摩擦モデルを作成するTriboForm Analyzerと4つのTriboForm FEM Plug-inを使いシミュレーションを行えば、この金型メーカーでは800%以上のROIも達成可能です。 コスト削減 年間10個のプロジェクト x (4つのドア・インナー + 4つのドア・アウター) - [導入事例:AutoForm導入による納期短縮と品質向上で取引先からの信頼を獲得](https://japanforming.com/autoform導入で取引先からの信頼を獲得/) - 神奈川県綾瀬市において、自動車用の試作金型や試作部品の製造と販売を手がける株式会社ダット。同社はハイテン材(高張力鋼板)の増加で難易度が上昇している金型成形の生産性向上に向けて、AutoFormを採用しました。シミュレーションソフトの導入は初めての経験ながら、オートフォームジャパンのスタートアップ支援プログラムを活用して操作方法を習得。約1年間、AutoForm-DieDesignerを使ったダイフェース作成や、AutoForm-Sigmaによる不具合改善などに取り組んだ結果、ノウハウや経験に頼った検討から脱却し、ワークフローの改善による生産性の向上などを実現しました。 経験と勘に頼った金型成形からの脱却を目指す ダットは、自動車部品の試作金型や部品の製造を手がけるメーカーです。1999年の設立以来、取引先のユニプレス株式会社や東プレ株式会社などTier1サプライヤーからの依頼を受け、量産前の段階で衝突試験や走行性能試験などを実施する試作車両用の車体骨格の金型や部品を製造しています。 同社はこれまで3次元CADで金型を設計し、複数のトライを重ねながら手作業で修正してきました。しかし、作業者の経験と勘に頼った従来の方法では、トライの回数が増える傾向にあり、金型作成にも時間がかかるようになりました。生産管理を担当する正木拓也氏は、現在の課題を次のように説明します。 「近年は自動車部品に軽量化と高強度化が求められ、ここ5~10年は成形が難しいハイテン材が増えています。その結果、金型成形の難易度が上がり、従来のトライ&エラーでは対応できなくなっています。試作部品を扱う当社の場合、納入までに1カ月から1カ月半、場合によってはさらに短い納期の部品を扱うことが多く、金型修正の回数を極力減らして生産性を高めることが課題となっていました」 そこで同社は、シミュレーションソフトの導入を検討。取引先で採用実績があったAutoFormに着目し、デモ、ベンチマーク、実データを使った成形性確認などを経て採用を決めました。「主要取引先が導入しているということで、同じ環境でシミュレーションができるのはメリットになると判断しました」と正木氏は語ります。 スタートアップ支援プログラムで学びながら課題を改善 AutoFormの導入を決めたダットですが、シミュレーションソフトの利用は初めての経験です。そこでオートフォームジャパンのスタートアップ支援プログラムを活用して操作方法を学びながら、「不具合の見える化、対策の裏付け、生産性向上」「完パネ品質の向上」「ワークフローの改善による金型成形期間の短縮」の3つの課題解決を目指すことにしました。 同社が採用したAutoFormのモジュールは、ダイフェースデザインを生成する「AutoForm-DieDesigner」、スプリングバックを計算して金型形状を見込む「AutoForm-Compensator」、工程のロバスト性を検証する「AutoForm-Sigm」の3つです。スタートアップ支援プログラムでは、設計担当者がDieDesignerを使って主要部品のダイフェースが作成できるようになること、Compensatorを使って見込み補正ができるようになること、Sigmaを使った不具合改善アプローチにトライすることの3つを目標としました。 期間は2019年10月から2020年7月までの9カ月。オートフォームジャパンのマネージャーとエンジニアが、月に1回の現地サポートと2週間に1回のオンラインサポートで技術支援を実施しました。以下にその内容と成果について解説します。 AutoForm-DieDesignerによるダイフェース作成 金型データを使用した通常シミュレーション:15部品 部品データを使用したDieDesignerでの金型検討:6部品 金型のCADデータをAutoFormにインポートし、シミュレーションを実施したのが15部品。そのうち6部品はDieDesignerでダイフェースを作成しました。プログラムを受講した正木武志氏は「CADによる金型成形とDieDesignerによる金型成形の違いを理解するため、単純な形状をもとにダイフェースを作成しましたが、簡単に習得することができました」と振り返ります。 AutoForm-Compensatorによるスプリングバックの見込み Compensatorを使用した見込み検討:1部品 Compensatorを使用した実部品との差分による見込み金型作成:11部品 新規部品に対するスプリングバックの見込み検討で1部品、既に成形されている部品に対する矯正金型作成を11部品で実施しました。3次元測定器で成形されている部品を測定してデータを作成し、それらをもとに見込み補正をして金型を作成します。それまでは3次元測定器で測定したデータに対して、CADを使って部分的に変形させながら補正していましたが、今回は実部品の差分に対してCompensatorで補正して金型を作成しました。 「Compensatorによって一括で見込みの値が決定できるようになり、細かいCAD修正だけで済むようになりました。結果として矯正金型のデータ作成にかかる時間は、これまでの3分の1から2分の1に短縮されています。最初から精度に入らない場合でも、トライのデータ作成時間が短縮されているため、再加工することも可能になりました。板金加工の現場からは、これまで時間のかかっていたスプリングバックに対する見込み時間が減り、すぐにハンドワークによる修正工程に移行できるようになったと高い評価を受けています」(正木武志氏) AutoForm-Sigmaによるロバスト性の検証 Sigmaを使用した不具合の改善(SPI):4部品 Sigmaを使用したバラツキの検証(Robust):6部品 不具合の改善は、Sigmaによってプレス時のわれやしわをシミュレーションし、金型のブランクを調整したり、ビード形状を変更したりしながら金型設計に反映させるというものです。バラツキの検証では、Sgimaの変数を変えながら、スプリングバック見込み前の部品のロバスト性を確認しました。 「不具合の改善では、シンプルな金型で検討し、Sigmaのパラメーターもわれとしわの2項目の設定で実施したこともあり、シミュレーションによって簡単に不具合を予測することができ、それに応じた改善を実施することができました。ロバストのバラツキ検証は、エンジニアリングで安定した結果を得るための条件を見つけきれなかったものの、今後の検討課題が明確になりました」(正木武志氏) 方案/工程検討、金型切削、トライアウト、製品製造までのワークフロー改善 従来のワークフローは、加工データの製作時間の短い後工程のリスト型から作成するフローになっていました。後工程からの切削は、加工開始までにかかる時間が短い反面、前工程の金型が出来上がるまでプレストライができず、後工程で見込みを入れたい場合には、一度作成した金型を再度切削し直すという無駄な工程が発生します。方案の検討結果も金型切削後のトライまで待たなければならず、現場修正で対応できない場合はゼロから検討し直し、金型も再加工しなければなりません。 そこで、新たなワークフローでは、AutoFormでモデリングしてシミュレーションを実施し、成形性に問題がないものはスプリングバックの見込みを反映させたうえで工程順に金型の加工を進め、出来上がった工程からトライが実施できるように変更しました(図1)。 「ワークフローの変更によって、方案検討から切削加工、トライまでが先頭から順番にできるようになりました。これまでのように金型の再切削を行ったり、プレスの順番を待ったりすることがなくなり、設計から製品製造に至るまでのリードタイムを短縮することができました」(正木武志氏) AutoFormの活用でデータに基づく検討が可能に 以上のように、AutoFormの活用によってダットが抱えていた3つの課題は50~70%は改善されたといいます。シミュレーションによって事前の不具合対策が実現し、担当者のノウハウや経験に頼っていたトライ&エラーも、根拠のあるデータをもとに検討することができます。ワークフローの改善により業務も効率化され、金型作成にかかる時間の短縮と板金加工の工数削減が実現しました。完パネの品質も、これまで現場の直感で60%程度の精度と見積もっていたものが、半分の部品に関しては80~90%の精度に入るようになりました。 「生産性の向上による納期短縮と、シミュレーションの実施による品質向上は、結果として取引先からの信用獲得につながります。作業時間の短縮によって、受注率を向上させることも可能になり、経営面にもよい影響を与えることが期待できます」(正木拓也氏) 金型成形の工数削減を目指して改善を継続 一定の成果に手応えを得たダットは、今回のスタートアップ支援プログラムの実施を評価。正木拓也氏は「ソフトウェアを売って終わりでなく、実業務で使えるように追加料金なしで教育してもらえるプログラムは非常に有効で、サポートの内容にも満足できました」と語ります。 同社は今後も、現状課題の解決を目指して改善を続けていく方針です。新規部品に関しては不具合をAutoFormで解消して金型データを作成し、Sigmaによるバラツキ改善とCompensatorによるスプリングバックの低減により、最終的にトライ初期精度を80%以上に高めることを目標に掲げています。矯正部品についてもトライ初期精度80%以上を目指す考えです。また、金型の手直し回数、トライ回数、工程検討における型数の削減を進めることでコスト効率を高めていくとしています。 「理想は正確なプレスで、板金加工現場のハンドワークの手間を減らすことにあります。そのために長期的な視点で、AutoFormの活用レベルを高めながら、金型成形の工数削減を目指していきます」(正木拓也氏) AutoFormを導入してシミュレーションを本格化したダットのチャレンジは、これからも続いていきます。 【企業概要】 株式会社ダット 設立:1999年3月10日 資本金:1,500万円 所在地:神奈川県綾瀬市上土棚中3-8-50 代表者:代表取締役社長 正木 進 様 従業員数:30名(2019年9月末現在) 事業内容:自動車用試作金型、部品の製造及び販売 URL:https://y-datt.co.jp/ - [TriboForm活用事例:1180MPaハイテンにおけるスプリングバック精度向上](https://japanforming.com/スプリングバック精度向上/) - 大手Tier1部品サプライヤーであるA社は高い技術力と、愚直な改善活動に加え、長きに渡り多くのAutoFormプロダクトを活用し様々な技術課題に積極的に取り組まれています。超高張力鋼板への対応力強化が急速に求められる中、シミュレーション技術強化として材料データと工程再現の正確性、ロバスト性の確保を行いながらシミュレーションと実パネルとの一致率向上を達成してきました。そのような中、さらなる改善を目指し次のテーマとして“摩擦”に着目しTriboFormの評価に至りました。A社とオートフォームジャパンが共同で行った取組みとして高度摩擦モデルを考慮した評価結果を報告いたします。 【背景】 近年の自動車開発において、特に燃費向上と衝突安全性の要求は年々増加傾向にあります。北米における燃費基準を確認すると2015年:150g/kmからの10年間で90g/kmまでに規制が強化されています。これに伴い、高い衝突安全性を担保するには、安全装置が追加実装され、重量増加が避けられません。よって、今後の車両開発では、“車両軽量化”が必達の開発命題であり、プレス業界においても例外ではありません。 【内容】 日本のプレス業界における“車両軽量化”に対しての傾向として、より高い降伏点を保有する材質変更が最もポピュラーな方法として採用されています。昨今、常用されつつあるハイテンのグレードに関しても980, 1180MPa領域までの拡がりをみせています。上記に伴い、成形性、寸法精度の品質担保の為、シミュレーションの活用は必須となっています。そこで、今回は、課題が散見されるハイテンでのシミュレーション検討にて、特に“摩擦”に着目し、精度向上に取り組んだ事例を紹介します。 【摩擦課題の位置づけ】 初めに、図1.にシミュレーション精度に寄与する要因と、その寄与率を簡単に示します。当然、多くの要因が相関をもって、最終シミュレーションの品質に影響を与えていることは、間違いありません。見逃すことのできない要因として、“摩擦(トライボロジー)”が挙げられます。 工程設定の見直しや、先進材料モデルの評価については、多くのユーザーにて日々研鑽が進んでいます。しかしながら、“摩擦”に対してのアプローチは、距離を置かれているケースが散見されています。その理由として、摩擦係数(μ)を正確にとらえる計測技術、評価閾値の妥当性を含めた仮説検証の難しさ等、多くの技術的に難しい側面があります。最大の理由としては、“どのように評価するか?”が明確でない点であると理解しています。 【背景】 昨今のハイテン化のトレンドを受け、980MPa領域までは、工程設定の見直し、材料モデル(移動硬化)の導入といった対策で、必要品質を担保されてきました。しかし、さらに高強度化が進み、1180MPa領域となった時点で、特に重要な絞り工程において、寸法精度が悪化、首振りや、捻じれといたったスプリングバック挙動の不一致が顕著化し、手直しでの工数増も避けられなくなり、更なる対策が必要と判断されました。 【目標】 1. 工程目(絞り型)精度向上 & リードタイム削減 上記2つの摩擦条件を用いたAutoFormでの計算結果と、実パネルと寸法比較を実施。 【TriboForm(ソフト)について】 Analyzerのみで摩擦評価可能 →各種条件変更 : 金型、シート表面粗さ(Sa)、潤滑量 →摩擦係数確認 : 面圧、速度、温度、ひずみ 4因子水準変更 →摩擦評価 : 比較検討が容易 (図2-B参照) シミュレーション実施の前に、簡単に“摩擦”課題の把握ができます。 【評価結果】 <寸法精度> 評価部品として2部品選定し、1工程(絞り)成形後のシミュレーション結果と実パネルを、外部ソフトにより位置合わせを実施し、その際の面全体の一致率を算出しました。その際、通常(一定摩擦)とTriboFormモデルとの比較評価を実施し、その結果を図3-A.に示しています。両部品共にTriboFormモデルを採用する事で、精度向上につながりました。精度向上率としても、両部品共に同じ値を示しており、対象部品における摩擦課題の支配率もおおよそ把握できる結果となりました。次に実パネルとの最大―最小誤差を図3-B.に示しています。パネル精度誤差のばらつき低減を確認することができています。この点からもパネル全体のスプリングバックをより高精度に予測できたと推察されます。 <スプリングバック挙動(首振り、捻じれ)> 補強部品系のハイテン部品によく見られる不具合として、首振りや捻じれが挙げられます。今回対象の部品においても、材料の高強度化(1180Mpa)に伴い、一定摩擦のシミュレーションと実パネルとの間で大きな差異が発生していました。図4.に首振りと捻じれの比較結果の代表断面を示しています。一定摩擦を用いたシミュレーションでは、過度に表現されてしまう現象を、TriboFormモデルを使用する事で、より実パネルに近い挙動変化を確認できました。これにより、型製作での修正回数削減によるリードタイム削減に繋がる結果となりました。 【TriboForm評価を通して】 本ケースでは、非常にスムーズな評価検討が進みました。そこで、今回の評価における重要なポイントは何処にあったのか振り返ってみます。 ①摩擦(トライボロジー)が品質に与える影響を理解した上で閾値を設定 ②評価対象のトライ日程に合わせた無理のないスケジュール設定 ③AutoFormシミュレーションのFV設定 (FV設定:精度評価に適したパラメータ設定) ④摩擦課題に対して深い技術デスカッション並びに困りごとを共有 大きく上記4ポイントが挙げられました。“摩擦”課題解決に限った話ではなく、因子の関連性を議論しながら理解をお互いに深めていきながら、共通のゴールを見据えたスケジュール設定など基本的な前提条件の擦り合わせを経て、スムーズで定量的な評価につながったと考えます。一方で、摩擦課題を取り扱うことは、特に③で挙げられるいわゆるシミュレーション・パラメータ設定の見直しにもつながり、総合的なシミュレーションを活用するエンジニアリング技術向上に寄与する事が確認できたと考えています。 【まとめ】 TriboFormによる効果代 1工程目(絞り型)精度向上 → △18%精度向上 金型改修期間削減 → △3週間短縮 上記結果から、TriboForm採用の判断に至りました。今後、同様のハイテン材にも適用させ、より詳細に摩擦因子解明に取り組まれる予定と聞いています。 各ユーザー様において対象部品、材質、シミュレーション事情は千差万別であるが、今まで目に見えず何か難しいものという印象の“摩擦”の影響代を確認する事が可能であり、対策が可能となります。“摩擦”が支配的ではないと推察される1180Mpa級ハイテン部品でも、効果代が確認されたのは、私たちにとっても大きな知見となりました。どのような対象部品でも、物理現象として“摩擦”は存在しています。TriboFormを使用した摩擦現象の理解、簡便な評価且つ、高精度なシミュレーションにご興味のある方は、是非お声がけいただきたいです。 【ユーザー様からのご感想】 ・首振り量とねじれ量の見積り誤差低減により、絞り型の修正量、および以降の曲げ刃の修正量も削減でき、精度改修期間を短縮していけそうだ。 ・また、超ハイテン材部品に限らず普通材の難成形部品にもTriboFormを活用し、特に割れしわ混在部位の成形対策に活用していきたい。 - [寿司とソーシャル・メディア : 日本のプレス成形業界と自動車業界向けブログにおける多文化的視点](https://japanforming.com/寿司とソーシャル・メディア-日本のプレス成形/) - オーストラリア人から見た日本と欧州の金型メーカーの相違点 人生のほとんどをオーストラリアで過ごしたサム・クラフは、2008年10月にドイツに移住しました。現在はドイツのドルトムントのオートフォーム社でソーシャル・メディア・コーディネーターとして勤務しています。自身を取り巻く世界観や仕事環境に閉じこもってしまうと、物事は別の視点からまったく異なって見えることを忘れがちです。そこで広い視野を持つために、在独オーストラリア人であるクラフから「ドイツの生活と仕事」に関する話、そしてFormingWorld.com日本語版を立ち上げるために訪れた日本での異文化体験について話を伺いました。今回の投稿では、日本のプレス成形業界、特に工程計画の裏に見逃せない文化的背景とそのアイロニーについて、オーストラリア人の視点から紹介します。 先日、クラフはこのブログの日本語版を制作するために、東京のオートフォームジャパン社を訪れました。この新たなJapanForming.comは、日本では先例のないウェブサイトで、日本の読者にオリジナルの記事や英語版のFormingWorld.comから翻訳したコンテンツを発信しています。また反対にJapanForming.comには、アジア太平洋地域の専門家やお客様の記事を掲載し、それらを英語版のブログでも紹介していきます。 好奇心が強いクラフは、この訪日の機会を活かして現地の習慣や文化も学ぼうと考えました。ここにクラフが感じた日本の印象や感想をご紹介します。 「私はドイツに住んでいるオーストラリア人です。ヨーロッパに引っ越してきた当初は、生活面で慣れなければならないことが多くありました。そして先日の日本訪問時には、当然、文化、人々の気質について、数え切れないほどの疑問が湧きました。私は10代の頃にオーストラリア人となりました。正確には、私はニュージーランド生まれで、マオリ族の文化を受け継いでいます。その背景もあって、日本の同僚達の言葉に、強く共感することが多くありました。また彼らのボディ・ランゲージにも、多くの共通点を見つけました。 そのようなことから、日本語版ブログの立ち上げの傍ら、私の日本での異文化体験と、プレス成形やデジタル・エンジニアリングの取り組みにおける日本と欧州の違いをレポートすることにしました。オートフォームジャパン社に勤務するヨーロッパ人の同僚達も、仕事を通じて感じた違いを話してくれました。そこはまったくの別世界です。異なるのは文化だけではありません。仕事に対する取り組み方もまったく異なります。 私が特に驚いたのは、同僚達が一緒に楽しく過ごす懇親会です。オフィスを1歩出れば、一切の壁が取り払われます。勤務時間後は、食べきれないほどの料理を前に、お楽しみの時間が始まります。気をつけていないと、カラオケで歌わされてしまいます。先だってのNumisheet 2019のようなイベントの後には、決まってそうなります。私達とは違って、日本の同僚達はポップスターのように上手に歌います。もしマイクを握って、酷い歌を披露しても、心配する必要はありません。自分の歌がいかに酷く、みんなもそう感じたとしても、全員が一斉に褒めてくれます。ヨーロッパ人の同僚たちも、カラオケで同じような体験をしたと打ち明けてくれました。 この体験から、私は最初に文化の違いを理解しました。日本では、人を褒めることが信頼関係を築くと考えられているのです。事実、褒められ続けている間は、まだ外側の人間であると考えて間違いありません。そして、批判や訂正を受け始めたら、『やったね。ようやく仲間に入れてもらえそうだ』と思うことです。 一方、オーストラリア人は、少しも人を褒めたり、訂正したりすることはありません。それどころか、何とかして人を困らせ、からかうことで、笑い合います。それがオーストラリアの文化です。私達は、お互いの『悪口の言い合い』を、気さくな冗談として楽しむのです。オーストラリアでは、そんなことで気分を害し、怒るような人はいません。言われたことを上手に受け止めて、全力でやり返すのです。それを愉快にこなすことが理想的です。つまりより多くからかわれるほど、そしてより多くやり返すほど、より深く受け入れられているということなのです。 私が日本で最初に学ぼうとしたのは、コミュニケーションのスタイルの違いです。日本では、行間を読むことがきわめて重要であることに気付きました。それは、私にはまったくない習慣です。後になって『えっ? 誰もそんなこと言っていなかったけど!』となったことが多々ありました。ドイツには『言っていないことは、聞こえなくて当然』という表現があります。言い換えれば、西洋人が10個の事柄を伝えたいと思えば、10個すべてを説明した上で、念のためにあと5個を加えます。しかし日本で私は最も驚くべき表現に出会いました。それは『一を聞いて十を知る』というものです。日本の人達にとって、私達は口数が多すぎるのかもしれません。彼らは常にこのようなコミュニケーションを取っているのですから、行間を読む達人です。すべての会話は私がまったく理解しないまま進んでいきます。これに慣れていないと、自分の心が読まれているのではないかと疑うでしょう。面白いことに、この視点から、日本では相手に余計なことを言わないよう注意すべきことを学びました。日本では『声に出しながら』考えたり、『わざと反論して』議論を盛り上げたりする人はいません。そんなことをすれば、混乱を招くだけです。ヨーロッパ人の同僚達は、先を見越して考える方法と、メッセージを最も伝えたい事項のみに絞る方法を、どのようにして学んだか説明してくれました。しかし、私にはそれはできません。『ソーシャル・メディア担当者』として、私はおしゃべりであることが求められています。おしゃべりこそが、面白いブログを書くためのアイデアを集める方法なのですから。 もう1つの興味深い西洋人との違いは、最初、日本人の同僚達は情報を共有することに消極的な様子でした。しかし彼らは何かを意図して隠そうとしているわけではなく、単に、誰かの意見に対して人前で異論を唱えるのは失礼だという考えだったのです。そういうときは個人的に話をしようとします。私にとって、これはとても新鮮でした。このようにすると、協力に不可欠な信頼感が生まれるからです。日本では皆が協力者であり、前向きな意見を共有することで互いにモチベーションを高めているのを目にしました。彼らはチームのやる気を盛り上げるために褒めるのです。ドイツ人もとても協力的ですが、彼らはどちらかというと無遠慮で要点に徹することで知られています。ドイツ南部にこのような諺があります。“Nicht geschimpft ist genug gelobt.” これは『批判しないことが、すでに十分な称賛だ』という意味です。この言葉には、ちょっとした皮肉があるだけでなく、ドイツ人が互いに対してどれだけ遠慮がないかを表しています。 日本の労働文化の良いところは、皆が一丸となって取り組むことです。ヨーロッパやオーストラリアでは、誰もが船の舵取り役となることを夢見て、自分自身のプロジェクトを立ち上げます。そして時に、全体図を見失うことさえあります。しかし日本人は、正反対です。彼らは共通の意思決定をもとに物事を捉えます。そこにあるのは集団思考で、あらゆる決断が全員にメリットのあるものでなければならないと考えます。組織とその熱意に、ある種の信頼感を求めます。『私達にとって良いはずだから、同意しましょう』というのが根底にある価値観です。実際、これは私が背負うマオリ文化とよく似ています。部族のリーダーは部族全体のために意思決定をすること、そして部族全体を深く思いやることが重視されています。 オートフォームジャパン社の社員たちとの会話を通して、デメリットにも気付きました。このような思考方法では、既存の枠組みにとらわれない考え方をするのが難しいのです。たとえば、金型のトライアウトで言うなら、トライアウト・チームは合意した以上の代案は模索しません。表現しにくいのですが、全員が作業内容と担当者を明確に定義したと思っているようです。しかし実際には、日本での仕事の定義は非常に曖昧です。人生において、仕事が想像もできない方向に変わる場合があると、皆が口を揃えます。これはオーストラリアでも多かれ少なかれ言えることです。しかしドイツでは、多くの人々が定年退職するまで同じ仕事を全うしているように見受けられます。 プレス成形部品に関する戦略は、ヨーロッパと日本では全く異なります。典型的なドイツ人のイメージは、非常に慎重で、全員が10本の保険に入っているというものです。ヨーロッパのお客様は、最初の成形工程を検証してから、次に設計や工程計画へと移ります。このようにフィージビリティを段階的に進めていきます。一方、日本ではお客様のアプローチはまったく異なります。それはこのような『常に左右を確認する』という気質がないことが理由かも知れません。これを悪いことだと言いたい訳ではありません。ひとたび作業を開始したら、日本のお客様は『全力』を傾けるのです。つまり検証作業を行わずに、まずはプロジェクトを進めていきます。そして工程の80%まで整えてから、検討を開始します。これは特に工程開発とサーフェスの作成に言えることです。たとえば、ヨーロッパの金型メーカーのレイアウト設計部門は、この作業に2週間を予定するとします。2週間が経過した時点では、レイアウトの40%を完了し、それ以外にも複数の代替案を用意しています。 ここで大切なポイントは、代替案を残しつつも、金型設計の妥協点を探ることです。ヨーロッパでは、この完成には至らない早期段階から、多くの議論が交わされます。しかし日本では、事情が大きく異なることを目の当たりにしました。日本では、非常に厳しいガイドラインに従わなければならないため、初期段階は2倍の期間を要することに驚きました。そのため、最初の評価を行うまでには、工程計画や金型設計が高い成熟度に達しています。そして次の段階では、工程設計の完成度が80%から95%に高められます。この時点で妥協できる選択肢は、より狭まっています。ドイツでは成熟度が低い早期段階で検討を行うため、このアプローチがもたらす自由度の高さを自在に扱うことができます。このような気づきから、JapanForming.comに貢献すべき私の目標のひとつとして、ヨーロッパのOEMの成功事例を紹介することに決めました。同様にFormingWorld.comについても、日本における知見を紹介する場として活用していきたいと思います。 FormingWorldとJapanFormingが連携したブログのウェブサイトは、プレス成形業界のコミュニティのグローバルな情報交換プラットフォームとなりえる可能性を秘めています。エンジニアリングに関するアイデアや詳細な工程情報、そして文化的な違いを世界規模で共有する機会となり得ます。 もちろん、JapanForming.comプロジェクトの立ち上げは、とてもやり甲斐がありました。何より日本の食事が懐かしいです。それはドイツで見かける『ジャパニーズ・フード』とは全く異なります。日本で食べる料理の方が遙かに優れています。魚が新鮮なだけではなく、繊細な味付けや多くの薬味があることもその要因です。またオーストラリアにも大きな日本人コミュニティがあり、新鮮な魚も容易に手に入るので、オーストラリアの日本食はすばらしいです。 一方ドイツでは、レストランのテーブルに置かれている調味料は古き良き塩とコショウだけです。日本人の同僚が最近ドイツを訪れた際に、私にそれを気付かせてくれました。 『ドイツは変わったところですね。何にでもお塩しかかけないのですか? どこでもお塩しか置いてないですよね。ヨーロッパの人達はお塩だけが好きで、他には何も要らないのですか?』 日本を訪れてみて、彼が正しかったことに気付きました。自分の舌に合うように、塩をかけたいと思ってテーブルを探しても、なかなか見つかりませんでした。また、つい先日、日本の同僚達をドイツのレストランに連れて行ったときのことです。彼らにとって、私達の普通の食事はすでに塩味が濃すぎたのです。一方のヨーロッパの同僚達は、もちろん、さらに塩を振りました。 この場をお借りして、オートフォームジャパン社のみなさまに改めて感謝の意を表します。日本語に堪能な読者の皆様には、JapanForming.comにて、定期更新されるコンテンツと翻訳記事をお楽しみいただけます。」 - [部品設計の早期段階で行うべきコスト増の回避](https://japanforming.com/部品設計の早期段階で行うべきコスト増の回避/) - 早期フィージビリティ検討: 早期検討における効果的な手段と誤った手段 オートフォーム社テクニカル・アカウント・マネージャーのステファン・キューパーが、早期段階でフィージビリティを詳細に検討すること、そして小さな見逃しが大きな代償につながることを認識することの重要性について説明します。早期段階で部品や工程のフィージビリティを検討する際に、適正なスプリングバック見込み補正方案まで作成できれば、トライアウト担当部署では膨大な時間とコストの無駄を回避することができます。しかしここには大きな問題があります。事前に回避できたかもしれない不具合を解消するには、多くの場合、部品形状の変更を伴うのです。つまり後期段階のトライアウトで形状を変更すると、多大なコストと労力がかかります。「冗談はやめてくれ。シミュレーションが現実と違うじゃないか」と言うようなことをプレス担当部署やトライアウト担当者から耳にしたことがあるかもしれません。 しかしこのような主張は退けることができます。すべては部品フィージビリティ担当部署が達成すべき目標から始まるのです。そのひとつは、フィージビリティを詳細に検討することで、工程計画や金型設計中に行う部品形状の修正を最低限に抑えることです。その観点から、部品のフィージビリティ検討では、一般的に、われやしわを生じることなく、設計した部品形状を製造できることを確認しています。そして残念ながら、多くの場合、部品設計をリリースすることのみが、フィージビリティ検討の達成目標となってしまっています。 「われがなく、しわもない。だから次に回そう。一件落着だ」 この結果、その後のスプリングバックの評価中に、問題に直面するお客様が増えました。この場合、金型の見込み補正が必要になりますが、合理的な対策を打ち出すにはすでに遅すぎる段階にいます。この状況で繰り返し発生する問題は、スプリングバックのロバスト性評価の欠如、そして大きなスプリングバックが原因となる見込み補正後の金型のアンダーカットです。 これはこの記事を執筆するきっかけとなったお客様の現場にて実際に起こった問題であり、また同様の問題が生じ得る可能性もあります。問題の複雑さに応じて、さらに数週間におよぶ追加のトライアウトが必要となる場合もあり、大型のパネルの場合、数十万ユーロ単位の利益損失につながりかねません。 フィージビリティの検討中、設計は当然のように変更されますが、設計変更による影響はほとんどありません。ロバスト性を改善するために補強材を変更したり、見込み補正の精度を高めるために壁角を増大したりと、この早期段階では必要に応じて部分的な変更を検討します。 それに加えて、部品設計のリリース前に工程のロバスト性や部品の見込み補正の手段も検討するのです。 スプリングバック評価における最初のステップは、見込み補正が可能であるかを確認することではありません。まずは部品のスプリングバックに最も大きな影響を与える境界条件がどれであるかを理解することが重要です。これは各工程後のスプリングバックを計算して、結果を比較することによって検討できます。 そして次のステップでは、工程の管理を容易に行うために、スプリングバックの量を減らし、また工程の安定性(ロバスト性)を高めます。理想的には、金型の見込み補正を行わずに実現することが望ましいです。 3番目のステップは、適切な見込み補正の方案を特定することです。 そのためフィージビリティの検討では、シミュレーション設定は簡易的であることをお勧めします。複数のアプローチを検証し、それぞれの利点や欠点を比較できるからです。その上で、データに基づき、最適なオプションを選択します。 フィージビリティの検討に使用する設定例: AutoFormで金型サーフェスを作成 - 複数のコンセプト設計を迅速に検証します。 カット金型のクロージングは考慮しません(カットのみ)。つまりシートの塑性変形がない単純なトリム工程と仮定します。 ドロービードは代替モデル(アダプティブ・ライン・ビード)を使ってシミュレーションを行います。これには、バインダが閉じる間の流入やしわを確認するためのフラットニング機能を使用します。 ドロー型のスケーリングはスプリングバック結果に大きく影響するため、必ず考慮します。 ロバスト性を確認する際には、標準や材料ファイルを用いてノイズ変数を定義します。 精度設定を調整することで、シミュレーションを迅速化できます。 結論 ここで紹介したアプローチでは、工程フィージビリティの検討段階にて、部品のスプリングバック挙動、工程のロバスト性、見込み補正の可能性を検討することが、デジタルで製品開発の戦略に大きく貢献することを説明しました。 この記事を執筆するきっかけとなったお客様には、部品製造中にスプリングバック結果を確認するために、ロバスト性解析を実行するようアドバイスしました。 検討できる時間に制限がある中、そのお客様は高い計算能力を持つAutoFormクラウド・ソリューションを活用しました。当社にて工程を分析し、いくつかの小さな変更を提案した結果 – 問題は解決しました。そして、オートフォーム社によるトレーニング開催に関する提案も受け入れていただきました。 全体として、このアプローチは新製品の開発時間を短縮し、開発の後期段階における修正を回避することができるため、開発部門と製造部門の連携が改善します。少さな出費が大きなコスト削減を導くのです。 論より証拠と言います。このような包括的な検討によって、トライアウトを1回のループで完了できた複数のお客様による事例が届いています。フォード社および埼玉車体株式会社の記事をお読みください。いずれもデジタル・エンジニアリングによって、初回のトライアウトで成功を収めた事例を紹介しています。 - [2段階の熱間プレス成形工程シミュレーション](https://japanforming.com/熱間プレス成形工程シミュレーション/) - 熱間プレス成形部品の設計や製造、そしてその製造工程の計画は、冷間プレス成形工程よりも複雑で、より専門的な知識や経験が必要となります。また潜在的な問題を特定し、すべての要件を満たす部品を製造するには、より高度なリソースも必要です。 熱間プレス成形部品の設計には細かな配慮が必要です。特に流入制限を考慮した適正なプレス成形部品を製造するには、プレス成形およびクエンチング工程をきわめて慎重に定義しなければなりません。なぜならばブランクは通常プリカットされるため、冷間プレスで使用する標準的なブランクホルダやドロービードを活用できないからです。また製造サイクルが過剰に長いと最終的な製造コストの増加を招くため、指定された工程時間内でマルテンサイト変態を完了させる必要もあります。そのため製造中にシートのしわを防止するインナー・ホルダや可動インサートの設計、そして金型を素早く冷却する冷却チャンネルの設計には、特に注意が必要です。 以下の項目について考慮する必要があります。 部品形状を単純化することで、部品を1回の成形ステップで製造できるようにします。 なるべく垂直な壁を避けることで、金型とシートの接触面へプレス荷重が効率的に適用されるため、クエンチング工程にて重要な熱交換が迅速に行われます。 クエンチング後のカット工程を最小限に抑えることが重要です。そのためにプリカットされたブランクと最小限の穴を設定する必要があります。これを可能にするために外形や穴の部品エッジの公差を調整(拡大)する必要があります。 より大きな延性または局部的な溶接性を確保するため、マルテンサイト非形成領域を定義する場合があります。このような場合、複数の材料(テーラード・ブランク)または局部的な加熱/冷却部分を有する溶接ブランクを使用します。 シートを重ねて、それを元のブランクに溶接することで、部品の重量増加を最小限に抑えつつ、最大の強度を確保した形で、部品を局部的に補強することができます (パッチワーク)。 様々な目的や段階への適用 設計の最優良事例には、2段階のデジタル・シミュレーションが伴います。基礎的なパラメータを使用した部品の工程フィージビリティ検証と、実際の製造に関わるすべての詳細を考慮した最終工程検証です。 基礎的な設計パラメータを検討する第1段階 まずはCAE技術を活用して、製造が可能である部品を設計しなければなりません。それには工程シミュレーションを通じて潜在的な問題を特定し、製品や金型の形状に変更を加えながら問題解決を検討します。さらには工程に最も適したパラメータの調整も併せて行います。この第1段階では、形状、金型動作、標準材料、面圧、工程などの重要なパラメータについて、使用するシミュレーション・モデルに優先順位を与えることができます。設計担当者はこれらのパラメータを優先的に検討できるため、設計や計算時間の短縮につながります。プロジェクトによっては複数回のシミュレーションを実行するため、さらに多くの検証を行い、最善の工程を検討できます。 この段階では、しわ、われ、寸法偏差など、致命的なプレス成形の不具合を特定および解消することを目的とします。以下の図1~3は、この段階で検討できる不具合の一部を示しています。 詳細な設計パラメータを検討する第2段階 第1段階で部品と工程の詳細を定義したら、次はクエンチング工程に特に配慮しながら金型の詳細設計を行います。この段階では金型設計はより現実的となり、実際の製造技術を用いた具体的なクエンチング対象物となります。 ここでは、プレス機が閉じた状態のままオーステナイトをマルテンサイトへ完全に変態させるために、シートを急速かつ均一に冷却することが重要です。これで部品に十分な強度が生じるだけでなく、パーライトやベイナイトなど異なる鋼材相の収縮差から最終冷却前に生じるゆがみも回避できます。このため接触面圧やクエンチングのサイクル時間、そして金型の冷却チャンネルの最適化といった工程パラメータを、丁寧に定義する必要があります。 この第2段階では物理的な試験によって保証された計算パラメータを使い、ソルバーの精度を確保しつつ、細心の注意を払いシミュレーションを実行します。さらにシミュレーションでは、第1段階で検討した基礎的なパラメータから派生するすべての詳細、つまり摩擦係数、プレス荷重、冷却による変態、加熱サイクル、金型の温度分布、冷却チャンネルの寸法および配置を考慮する必要があります。また当然ながら、1回のシミュレーションあたりの計算時間は長くなります。ただし金型のコンセプトはすでに定義されているため、一般論として、プロジェクトの終盤にかけて必要なシミュレーションの回数は大幅に削減されます。そのためシミュレーション時間が長くなることは、通常は大きな問題とはなりません。 この段階では、クエンチング後のシートの微細構造に関する結果に注目します。部品の必要なすべての領域でマルテンサイトとなるよう、冷却チャンネルの配置を定義します。計算の精度を確保するために、金型サーフェスの温度分布を必ず考慮します。これは金型とシートの熱交換率、つまりシートの冷却率を決定する要因のひとつです。特にラインの稼働開始時から温度変化が安定し始める平衡ポイントまでの期間の加熱や冷却サイクルも考慮します。 これには、単純化されたモデルで使用される平面要素メッシュとは対照的に、ソリッド有限要素メッシュを使用します。図4は、計算した温度分布とソリッド・メッシュを適用し、併せてユーザー定義の冷却チャンネルを使用したモデルの例を示します。 このタイプのモデルは、複数のシミュレーション・ソフトウェア・ソリューションで利用できます。最先端のソフトウェアでは、冷却液の流れの影響を明確に生成および計算できます。図5に、別の例として、さらに包括的なシミュレーションの最終結果を示します。成形およびクエンチングの連続的なサイクルによって、部品の各領域で形成されたマルテンサイトをパーセンテージで表示しています。 このような最終解析結果は、プロジェクトで定義した金型コンセプトの有用性を確認するものであり、冷却チャンネルの配置と直径の有効性も確認できます。また最終的な金型設計の詳細に必要な情報も得ることができます。 結論 熱間プレス成形工程は、一般的に従来の冷間プレス成形よりも大幅に複雑です。温度の影響と材料の相変態、クエンチング段階での急速冷却、クエンチング後の材料の切断に関する制約など、着目すべき点が多くあるためです。そのため工程に大きな影響を及ぼす多面的で敏感な設計パラメータを適切に設定し、最適なソリューションを導くためには、シミュレーションを活用することが不可欠となってきています。 設計作業を連続的かつ補完的な2つの段階に分けることで、リソースを実用的かつ客観的に有効活用できます。フィージビリティ解析で基礎的なパラメータを検討することで、まずは工程のベースラインを固めます。そして最終工程検証にて、工程の進展に併せて追加のパラメータを連携させてゆき、実際の製造状態に近づけていきます。 2段階のワークフローに従って工程を一貫して関連付け、発展させることによって、総合的な工程精度を実現できます。このように最小限の時間とリソースにて、潜在的な不具合に解決すべき順で対応することで、熱間プレス成形用金型を分析的に最適化することができます。 - [ボルボ社金型部門: 新たにAHSSを採用した「フルEV」XC40モデルのプレス成形をデジタルな見込み補正によって成功に導く](https://japanforming.com/デジタルな見込み補正/) - 順応力と対応力による打開策: 新たな材料への挑戦 ボルボ社金型部門のCAEチームは、20年間にわたってプレス成形解析ソリューションを活用してきました。ボルボ社のXC40モデルを「フルEV」へと進化させるには、その軽量化に高強度鋼を採用せざるを得ません。しかしオロフストロムの金型工場では、この材料の取扱経験がありませんでした。この記事では、金型部門プロジェクト責任者のフレーデリック・ホーキャンソン氏による事例報告をご紹介します。 2018年、ボルボ社は名高いXC40の新型モデルとしてフルEVのXC40リチャージを発表しました。これはボルボ社では初の100%電気自動車です。ハイブリッド・モデルとは対照的に軽量化が大きな課題となり、エンジニアたちは特に安全性に関わる部分で剛性の高い材料について検討を重ね、高強度鋼を使った頑丈な構造部品が設計されました。またフルEV化によりエンジンが廃止されたため、車両前部の構造と安全性に関わる部品を一から見直す必要に迫られました。 以下のボルボ社の動画では、この新たな構造と安全性に関する取り組みについて紹介しています。 ボルボ社では、AHSSのプレス成形部品を含む複数の新規部品を、スウェーデンのオロフストロムにある自社サプライヤのボルボ社金型部門にて生産することを決定しました。しかしこれには新たな課題が山積していました。ご存じの通り、高強度鋼のスプリングバック見込み補正は厳しい公差管理が必要とされるため、高度な技術を要します。この自社金型工場では、これまでボンネット、フェンダー、ドア、テールゲートなどの部品を生産していました。新しい部品を生産するということは、すなわち、新たな課題が生じるということであり、つまり、新たなスキルが必要になるということです。 「私たちは、サイド・メンバー、Aピラー、シル構造部品、フロア部品、その他の構造部品の生産を担うことになりました。熱間プレス成形で生産していたAピラーの部品の一部が、高強度鋼へと代わります。これまで高強度鋼を使った部品の生産は、1つのプロジェクトに1つ程度しかありません。この金型工場で、これだけ多くの高強度鋼の部品を請け負ったのは初めてでした。そのため、特にスプリングバック見込み補正をデジタルとトライアウトの両方で確立するために、シミュレーションの新たなワークフローを開発しようと考えました。 部品によっては、シミュレーションで15mm~25mmと極端なスプリングバックが発生したため、本格的な見込み補正の方案を導入する必要に迫られました。たとえば、DP800を使ったシル・インナーでは、サイドウォールに反りやねじれが生じたため、新たな材料の加工方法以外にも、新たなスキルが必要でした。そのために、AutoForm-Compensatorを導入することになりました。ボルボ社金型部門では、このソリューションを使い、深刻なスプリングバック不具合が発生している2つのAピラー、シル構造部品、2つのサイド・メンバー、計5つの構造部品を同時に検討する幅広いアプローチを取りました。 フレーデリック・ホーキャンソン氏は、以下のように説明しています。 「私達のチームには、シミュレーションについて豊富な経験があります。中には20年もAutoFormを使用しているメンバーもいます。はじめにメンバーの1人がすぐに活用方法を習得し、CAE部門のエンジニア達を指導しました。さらにはオートフォーム社の協力体制も大きな支えでした。まずは初期フィージビリティの検討を行い、次の段階では、シミュレーションで確認されたスプリングバックに対応するために見込み補正を行いました。さらには部品を公差に近付けるため、実パネルをスキャンしたデータを『一般の見込み補正』にインポートしました。そしてこれが、新たなワークフローとなりました。」 「トライアウト・チームは、常にスポッティングを重視してきましたが、今回は特にそれを心掛けました。成功の一因は、生産の初期段階で金型のテストを行い、トライアウト・プレスと同じ結果が得られると確認したことです。このように、デジタル・エンジニアリングでトライアウトの先まで見通すことによって、すべての不具合を正確に予測できるのです。大きな違いは、例えば、この金型工場で通常扱っているフードのアウターとインナーを加工する場合、インナー構造がアウターの形状を整えるためにアウターは見込み補正せず、インナー構造のみを見込み補正していました。しかし今までと比べ多くの構造部品を扱うことになり、エンジニアリングの段階であらゆる部品を見込み補正せざるを得なくなりました。私達の目標は±0.5mm以内で見込み補正することでした。」 「また以前と異なる点として、今回はトリム型を含むドローシェルの見込み補正をデジタルで検討し、すべての金型にそれぞれ適した見込み補正を行いました。新しいワークフローの一環として、非常に複雑なシミュレーションを行い、徹底的に検討したのです。AHSSへの移行は、デジタル・エンジニアリングの比重が飛躍的に高まることを意味します。すべての金型の見込み補正を行い、それを適用することは、これまでにない新たな取り組みです。」 「確かに、AutoForm見込み補正ソリューションの精度について、当初は懐疑的であったことも事実です。しかし、先進的で成形が難しい部品でしたから、まずは試してみようと思いました。すべての作業を完了し、試作した部品を測定するまで、ソフトウェアの評価を下すことはできません。これまで経験したことのないものに直面すると、不安が生じるのは当然です。切削段階の開始時に、トライアウト・チームは難しい決断を迫られました。そのときこそ、デジタルな見込み補正が正確であることを信じ、信頼に基づく賭けに出る瞬間でした。このトライアウト、そしてプロジェクトが完了する頃には、この新たなソリューションが成功に導いてくれることを確信していました。ですから、成形が難しい材料であるにもかかわらず、予定日を大幅に前倒しする形で金型を完成できました。最期に1回の品質確認のためのトライアウトループを行っただけで、金型をプレス工場に納入できたのです。」 「私は一般の見込み補正機能の有用性を確信しました。これはAutoFormの非常にシンプルな機能ですが、品質確認ループでは非常に役立ちました。 今回の成功要因の1つは、スキャンしたデータのインポートが可能で、基準データと最初のトライアウト結果のベクトル・フィールドが作成できることでした。このベクトル・フィールドを2回目の見込み補正の検討に活用することで、短時間で目標に近付けることができます。これが、たった1回のループで成功した理由です。最初のトライアウトの結果は、AutoForm-Compensatorに基づくもので、品質確認ループは一般の見込み補正ツールのおかげで成功したのです。」 「組織にとっての価値は、エンジニアリングの努力がトライアウトで無駄にならないことです。チームにとっては、AHSSを使用したパネルの見込み補正はこれまでにない体験であり、通常より時間がかかりました。このように、現場に適用できる結果を得られたことは、今後、他の材料やパネルを扱う上で大きなメリットになることは明らかです。」 オロフストロムにあるボルボ社シミュレーション・チームの9名の皆さんに、祝辞を贈りたいと思います。 - [SUSTA Die Construction社、熱間プレス成形工程シミュレーションによるトライアウト・ループの削減](https://japanforming.com/熱間プレス成形の成功事例/) - 「...怒りの中、神々は鋼の秘密を戦場に置き忘れて行った。 それを見つけた私達は、ただの人間である。 - 神でもなく、巨人でもない - ただの人間だ。 鋼の秘密には、常にミステリーがつきまとってきた。」 『コナン・ザ・グレート』ジョン・ミリアス作より 1982年にアメリカ映画となった剣と魔法の叙事詩と熱間プレス成形金型の製作会社が、どのように関係するのか知りたいですか? – ぜひお読みください。 概要 SUSTA Die Construction社は、金属加工の分野ですでに数十年の経験を有する起業家達が、自動車部品の金型製作に特化した企業として1992年に創立しました(図1)。 創業以来、情熱と深い知識を持ち合わせる同社は、高い品質を求める顧客からも絶大な信頼を寄せられています。またジョン・ミリアスの言葉を引用した社訓「鋼の秘密は、それを振るう者の手の中にある」は、技術へのコミットメントを強調するものです。 SUSTA社は創業当初から社員教育を重視する傍ら、最新の技術革新の動向も注視してきました。進化を求め、2009年にオートフォーム社の冷間プレス成形シミュレーションを採用し、その数年後には、デジタルの世界で熱間プレス成形工程にも乗り出しました。 今日、同社は世界最大規模のOEM各社向けに、中型から大型のさまざまな冷間・熱間プレス成形金型を生産しています。この業界では、数多くの挑戦が立ちはだかります。熱間プレス成形エンジニアのステファノ・カプリオッティ氏は、それを次のように説明してくれました。「毎日のように、私達はさまざまな分野のソリューションやサポートを迅速に提供するよう求められます。それらは、冷間および熱間プレス成形の見積もりからトライアウトまで、またプレス成形フィージビリティ解析など、多岐にわたります」。 カプリオッティ氏と彼のエンジニアのチーム、そしてトライアウト・チームが直面した最近の難題は、熱間プレス成形によるトンネル・フランジの2次成形工程でした(図2を参照)。 トライアウト中、1次ドロー工程にはまったく問題がありませんでしたが、後工程に問題が起きました。クエンチングで上型と下型の間の材料を冷却中に、フランジ・アップ工程で一端の最終部品形状を成形することになっていました(図3)。トライアウト・チームは、フランジ・アップした鋼材が初期位置(トップ・ストローク)に留まり、プレスから取り出した部品にフランジができていない(図4)ことを目の当たりにして、驚きとともに不安を感じました。 デジタル・ソリューションで、トライアウトの時間とコストを削減 プレス成形部品で品質が満たされない場合、不具合を速やかに解決するか、または少なくとも適切なソリューションを提供しなければならず、すべての関係者がプレッシャーを感じます。いまや経験は成功のために必要なもののひとつに過ぎません。ほとんどの場合、試行錯誤のループを重ねることで、再加工時間と費用が手に負えないほど膨れ上がるからです。この場合、SUSTA社の技術グループでは、AutoFormを使い、部品のフィージビリティで最も重要な最初のドロー工程を詳細にシミュレーションしました。100%マルテンサイトのトンネル形状にて、われおよびしわを回避することが、デジタル工程解析における最初の目標でした。残りの工程は、時間に応じて、シミュレーションに含めるかを選択できます。このトンネルの場合、カプリオッティ氏は、ブランクの加熱、ドロー、クエンチングおよび成形、室温までの冷却を含む、フル・サイクルのシミュレーションを設計しました。しかし、トライアウトの結果は、すべての成形ステップでシミュレーションと一致しませんでした。フル・サイクルの詳細なフィージビリティ・シミュレーションでは、ドローや2次工程で重大な成形不具合は見られませんでした(図5)。これは全く予期しないことだったと、カプリオッティ氏は認めています。「通常、成形工程では大きな違いはありません。シミュレーションのレポート内容は、その後のトライアウトで確証されます」。 「この調査に関するサポートをオートフォーム社に依頼したとき、私はシミュレーションのドロー結果(クエンチング中にフランジが成形されなかった最初の工程)と実パネルの間に、相当の関連性があることに気付きました。しかし2次工程のフランジが、なぜこれほど挙動が異なるのかを説明できませんでした。シミュレーション結果では、フランジは35KN未満で簡単に正しく成形されましたが、しかし実際のプレス機では、100KNの窒素システムで金型を持ち上げることができませんでした。私は、改めて『鋼の謎』に途方に暮れました。ソリューションにたどり着かないのは、熱間プレス成形に関する経験不足に因るのでしょうか。」 カプリオッティ氏とともに実際の工程の設定を詳細に確認してみると、いくつかの設定がシミュレーションと異なっていることが確認できました。これらの設定が「ゲームの展開」を劇的に変え、カプリオッティ氏のシミュレーションを異なる結果へと導いたのでしょうか? これを確かめる最も簡単な方法は、シミュレーション設定を修正しながらデジタル・ループを数回実行し、結果を確認することです。金型工場では、プレスの動作とフランジ金型の速度が気になったため、それらのシミュレーション設定を変更し、再度AutoFormを実行してみました。特に、加熱炉からプレス機への移動時間を延長して、ブランクの冷却を増大しました。2つめの変更点として、ブランクをパンチ・サーフェス上でもう数秒間待機させてから、ラム動作を開始するようにしました。これらの変更で、ドロー工程の開始時点での熱勾配が変化し、適正な材料相変態が得られるようになりました。AutoFormは、元のシミュレーションより100°C低い平均温度を示しました。これは、温度制御成形工程では無視できない差です。次のフランジ・アップ・ステップは、金型速度および工程のタイミングの点で、実際の工程に従ってシミュレーションしました。これは、コンポーネントの他の部分をクエンチング前ではなく、クエンチングしている間に、2次成形が行われることを意味します。実際の金型動作と解析的事象を適正に説明することで、フランジ加工を開始するために必要なブランク反力が35KNから126KNに増大しました(図6)。トライアウト・チームが実際に確認したとおり、最大能力100KNの窒素システムでは、鋼材を押し上げられません。 実パネルとシミュレーションの結果が一致すると、SUSTA社のプレス成形およびトライアウトのチームは、豊かな経験をもとに必要な修正を迅速かつ容易に行い、目標品質を満たす部品の生産を開始することができました。 結論 この事例から、AutoFormシミュレーションを設定する際に工程説明の精度を高めることで、トライアウトのリスクを予防できることが、改めて証明されました。ジョン・ミリアスを引用したSUSTA社の「鋼の秘密は、それを振るう者の手の中にある」という社訓は真実のようです。最も現実的で最善の結果を得るには、シミュレーションを適正に定義することが肝要であり、すべての経験とノウハウをデジタル世界でも有効活用することが必須です。試行錯誤を現実世界からシミュレーションへ移行することが、金型工場の労力と時間を軽減するための鍵となります。つまり、変動費を節減できるのです。 このようなSUSTA社の経験と日常的な成功によって、SUSTA社とAutoFormの確固な協力関係の歴史に、新たな重要なページが書き加えられました。 AutoFormイタリアとFormingWorld.comのファンの皆様に代わって、ステファノ・カプリオッティ氏とSUSTA社の皆様に、経験をシェアしていただいたことに対してお礼申し上げます。 - [コストを節減するために、生産に影響なくブランク・サイズを縮小できますか。](https://japanforming.com/ブランク・サイズの最適化/) - プレス成形業界では、材料およびコストを節減するために、ブランク・サイズを必要最低限まで縮小することが広く行われています。 エンジニアリング段階で検討するほか、一般的には、金型トライアウトの最終段階または部品製造の開始時に行います。 この最適化によって、年間数百万ユーロもの節減が可能となりますが、しかし必ず成功すると断言できるでしょうか。またブランク・サイズを最小化することで、部品製造に及ぼす悪影響が見落とされていないでしょうか。 もちろん、何らかの影響は避けられませんが、問題は、それを許容できるか否かです。つまり、実際には総合的にコストを削減できているか、ということです。 そのためにも、実際の影響を検証することが重要になります。 ブランク・サイズの縮小が生産の安定性に与える影響の詳細な分析は、正に自動車部品メーカーの技術部門が切望していたことです。 それを念頭に、どこから検討を開始すべきでしょうか。ブランク最適化の効果を特定するには、どのパラメータが必要で、どの結果変数を確認すべきでしょうか。 すでに述べたように、正確な材料特性(板厚や降伏応力など)を有するブランクを使う金型トライアウトにて、ブランクの最適化を行います。 その際には、このシナリオが生産シナリオを100%反映しているかを留意すべきですが、その答えはノーです。生産に使用する材料は一定範囲の特性を備えていますが、しかし複数の異なるコイル(各特性の値分布を確認してください)から生産するため、潤滑油、1分間のストローク数、プレス・タイプ、ブランクの位置などにばらつきが生じます。 部品製造工程の結果を事前にシミュレーションするには、まずロバスト性確認を実行し、特性のばらつきを考慮することが重要です。これで工程パラメータの変動幅を考慮する場合にも、適切な結果が得られます。つまり、ロバスト性確認を実行することで、生産中にコントロールできない変数のノイズを考慮できるようになります。以下の例では、次を検討します。 潤滑 バインダ荷重 シート板厚 材料の平均r値(材料異方性) 材料降伏応力および引張強度(相関係数による相互依存) 例: ドア・インナー ドア・インナー(1つの金型で2つの部品を製造)を例に、スプリングバックを含む製造の全工程を検討します。次のパラメータを評価基準とします。 価格: ネストしたブランクの最低価格。 流入: D-30ドロー工程の後、ブランク・エッジはインナー・ドロービードを超えて流入してはいけません(ビードの中心線から4mm以上の距離 – 図1の黄色のライン)。 われ不良率:マックス・フェイラーの最大値を1に設定し結果を確認することで、D-30最後の生産中のわれによる不良率を推測します。現在の基準結果は最大0.946と同等なため、要件を満たします。 スプリングバックの安定性: 最終部品のスプリングバック公差=±0.5mm もちろん品質条件を追加することもできますが、この記事ではコンセプトをできるだけシンプルにします。ブランク修正では、基準ブランクの3方向すべて(対称と想定)の流入は、すでにインナー・ドロービードに非常に接近しています(図1を参照)。修正すると上記の条件#2に違反するおそれがあるため、ブランクの幅(1300mm)は一定でなければなりません。ただし、上下の2つのコーナーで、x方向でブランク・サイズを最小化できる可能性があります(図1を参照)。 よって、このシミュレーションでは、ロバスト性の設定として、両方のポイントを稼働幅が±30mmでx方向に相互依存した設計変数(つまりコントロール可能)として定義します。こうすることで、AutoForm-Sigma解析で複数のブランク・サイズのロバスト性を同時に評価できます。 では、結果を検討しましょう。 結果:最適なブランク・サイズを決定する前に、まず設計上のロバスト性を検討します。 基準ブランク:ブランク・サイズ: 1500mm x 1680mm (上辺 x 下辺) 基準ブランクのロバスト性解析の結果、次の出力が得られます。 価格: 9.27ユーロ (図2) D-30最後の流入: 満たす(図1) D-30最後のわれ不良率: > 10.7% (生産パラメータ変動幅に基づくマックス・フェイラー変動幅: 0.727 – 1.2)。注: 基準シミュレーションで、基準ブランクがこの限界を満たしています。ただし、ロバスト性を確認すると、この不良率の原因となりうるノイズ変数に敏感な領域があることがわかります(図3)。これは、金型トライアウトまたは生産において、材料またはその他のノイズ・パラメータが設計上の基準シミュレーションと異なる場合、われが発生する可能性があることを意味します。 最終部品のスプリングバックの安定性:不良率が0.007%以上の小さく局部的なオレンジ色の領域(Unreliable)以外、スプリングバック挙動は非常に安定しています(図4)。 最適化されたブランク:可能な入出力の組み合わせの計算が完了したら、結果を比較することができ、上記の条件に適合したより小さなブランク・サイズを検討できます。 - [プレス成形においてトライボロジをコントロールすることで生産の不稼働期間を短縮:フィリップス社、オペル社、TriboFormなどがタッグを組んだASPECTプロジェクトの取り組み](https://japanforming.com/プレス成形におけるトライボロジ/) - こんなことが、よくありませんか? プレス成形工程が順調だと思っていたら、突如として製品の不良が判明。量産を続けるには生産を一旦停止して、プレス成形工程の設定を調整しなければなりません。このような状況を踏まえて、ASPECTコンソーシアムは、プレス成形部品に不具合が生じる原因をトライボロジの側面から研究し、成形シミュレーションを活用した予測方法と、後の実際の生産におけるコントロール方法を探りました。 ASPECTプロジェクトは、オペル社やフィリップス社など、複数の欧州企業および研究機関で構成され、消費者向け製品および運輸セクター向けの生産における摩擦およびトライボロジの影響を調査することを目的としています。 ASPECTプロジェクトについて 大量生産の初期段階では、ほとんどの生産ラインで特に大きな不具合は発生しません。通常、生産開始から一定数までの部品は、順調に生産されます。しかし、ある時点でしわやわれなどの成形不具合が生じて、量産が停止します。経験豊かなベテラン従業員は、熟練の知識を使ってさまざまな修正を行い、不稼働期間の短縮を試みます。部品製作者は、経験を積むことで量産時の部品の「工程の変曲点」を理解できるようになり、独自の修正方法を身に付けます。 これまで主な原因のひとつは、生産中の金型の温度上昇であると考えられていました。ASPECTプロジェクトではTriboFormを使い、シートや潤滑と関連付けた生産金型のトライボロジ上の挙動と、金型の温度上昇がわれやしわなどの不具合に与える影響を調査しました。不稼働期間を生じさせる要因を成形シミュレーションで事前に予測し、部品製作者が予め工程を調整できることを、この調査の目標としました。またこのような知識があれば、不具合を回避し、プレス成形ユニットの工程設定を調整するための対策を講じることが可能となります。 オペル社は、スペアのホイールウェルの量産中に発生した不具合の所見を説明しました(図1)。約500点の部品を生産するとわれが生じ、生産が停滞しましたが、これらの部品では温度に依存したトライボロジの影響が見られたため、これらを計測し、統計的に特定することができました。またこれをきっかけに、われの原因となるパラメータに対応する予防的な自動調整を求める声が高まりました。 オペル社の調査では、非接触温度計を金型に挿入し、金型の温度変化を計測しました。最初の500ストローク中に、金型の温度が20°Cから45°Cへ上昇することが確認されました。またその時点で、最初の不具合が発生しました。また、非接触温度計以外にも、部品の周りに流入センサーを取り付け(図2の0C~7C) 、8か所で生産中のブランク流入を計測しました。図2からわかるように、温度が20°Cから45°Cに上昇すると、流入が大幅に減少します。温度が上昇すると摩擦が増大し、よって、ブランクホルダの下の拘束が強まり、部品にわれが生じます。 金型の長期的な温度上昇は部品のわれにつながり、生産停止の原因となります。生産を停止すれば、設備等すべての温度が下がります。しかし、生産停止を回避してプレス生産を継続するには、ブランクホルダ力の軽減や、潤滑剤の増量といった調整が必要です。 部品生産の継続および副次的影響の回避を目的として、ASPECTプロジェクトのチームはTriboForm摩擦モデルを作成し、ESI Pam Stampに組み込みました。シミュレーションでは、金型温度20°Cでは部品は影響を受けないという予想通りの結果を示しました。金型温度45°Cで、実パネルと同じ場所で同じ向きのクラックが発生しました(図3)。 この調査から、温度上昇に応じて摩擦係数が増大し、よって、金型の温度が上昇すると摩擦が増大する様子が明らかになりました。トライボロジの依存を考慮した量産の影響をモデリングする上で、TriboFormの予測が正確であることが証明されました。よって、例えばストローク率の調整、ブランクホルダ荷重の軽減、潤滑剤の増量など、最適な生産を維持するための方策を詳細に調査できます。 このようにTriboForm Plug-Inを活用することで、量産時のリスクを効果的に予測し、情報に基づく意思決定を行うことができるようになりました。製品がいつ、どの温度で、どこが危険な状態となるか、正確に把握できます。そして、どのような変更をいつ行うべきか、判断できます。 よって、プレス成形シミュレーションに最新の摩擦モデルを組み込むことは、プレス成形工程のロバスト性を高める新たな方法であることが証明されました。 「摩擦の影響または工程全体をコントロールでき、 より高い温度が引き起こす摩擦の影響を補正することができれば、 不良品を回避でき、生産のコスト効率が大幅に高まります」。 アルベルト・エムリヒ博士 出典論文:“Temperature dependent friction modelling: The influence of temperature on product quality” by Daan Waanders from TriboForm Engineering in the Netherlands, Javad Hazrati Marangalou from Nonlinear Solid Mechanics of the Faculty of Engineering Technology - [材料データの有効利用: プレス成形工程チェーンに沿った材料カードの有意義な活用について](https://japanforming.com/材料カードの有意義な活用/) - 最善を願い、最悪に備える プレス成形業界における工程エンジニアの職責は、ある一定数の車体部品を製造するための金型を製作する上で、それに適した工程や形状のパラメータを定義することです。例えばある自動車の生産においては、200,000個の部品が必要になりますが、これらをすべて寸法公差内で生産し、意匠面でも品質を満たさなければなりません。まずはこの目標を、簡単に、素早く、低コストで変更ができるバーチャルな世界で実現するために、プレス成形工程シミュレーションのソフトウェアを使って、関連するすべての工程パラメータを定義し検証します。 バーチャルから実世界へ移行する上で、工程全体を効率化するには、シミュレーションの条件が実際の条件と一致することが重要です。しかしながら、すべてのパラメータを複製することはできますか? もしそれが可能であれば、どの程度の公差が許されますか? さらには、工程全体におけるコストと時間の効率とは、何を意味するのでしょうか。 これらの問題を掘り下げてゆくと、シミュレーション結果の信頼性に大きな影響を及ぼす重要な入力パラメータ、「材料特性」に行き当たります。 シミュレーションの材料特性は、金型のトライアウトや生産で実際に使用する材料と、どれぐらい一致しているでしょうか? 言い換えると、トライアウトで使用する材料の特性が、シミュレーションで設定した特性と一致する可能性は、どの程度でしょうか? さらには一致していることを、どのように確認できるのでしょうか? 結局のところ、薄板の塑性変形挙動を数学的に説明するための試験は、現実に発生している材料の挙動とは、完全に異なるということです。 下の図は、材料挙動の説明に必要なパラメータと、評価基準 (硬化曲線、降伏曲面、成形限界図など)を示しています。 工程の早期段階で行う部品のフィージビリティ解析では、自動車メーカーが材料等級を指定します。また工程エンジニアが扱うことができる材料特性は、OEMまたは国際基準( EN、DIN、VDAなど)によって定義された一般的なものに限られます。 例えば設計した部品の等級について、特性がCR210xxx(冷延鋼板、最小降伏応力 = 210 MPa)だと仮定しましょう。もちろんプレス成形工程中の材料挙動を説明するには、降伏点あるいは耐力(Rp0.2)や引張強さ(Rm)だけでなく、多くのパラメータを定義する必要があります。しかしここでは、この2つのパラメータのみを検討しましょう。すると、その他のパラメータを考慮しなくとも、すでにシナリオが非常に複雑になることを、すぐにご理解いただけると思います。 また、材料メーカーでは特性値に一定の幅をもたせています。それは実際の生産時に起こりえるバラツキを考慮するためです。ここでは仮に以下のデータを使用します。 フィージビリティを検討するには、どの値を使用すべきでしょうか? 選択肢のひとつとして、最悪のシナリオを特定し、それを検討します。その場合、どのような状態が最悪のシナリオであるか、という疑問が生じます。 この疑問に留意しながら、しばし話題を変えます。 フィージビリティの詳細を検討し、プレス成形工程全体を検証する段階では、材料の「価格交渉」などのために、材料サプライヤが未定である場合が多くあります。またエンジニアリングの検討や金型の設計を行う場合にも、多くの不確定要素が存在します。漫然とした不透明感が残るにも関わらず、工程はデジタルに設計および検証されます。材料サプライヤの決定が早まれば好都合ですが、しかしサプライヤの選定は、多くの場合、購買部署の管理下にあるため、エンジニアリングとは無関係に行われます。 ただし、幸いにも、サプライヤとの交渉が完了するまで、金型が製造されることはありません。工程エンジニアは「不具合のない」結果を得るために必要な一連のパラメータを特定し、それを下流工程に伝達することができるかもしれません。しかし、もし金型がすでに切削の段階にある場合は、下流工程に適切なパラメータを伝達したところで、それを検討する時間的余裕はないため、諦めるしかありません。 さて、ここでは金型形状のリリース前に、情報が届いたと仮定しましょう。工程エンジニアは、材料サプライヤが提供する材料特性を検討するだけでなく、材料パラメータ(ヒストグラム)の統計分布も検討します。下図はそのデータです。 降伏強度 – 0.2 引張強度 もし工程エンジニアがシミュレーションする際に、2つの範囲(降伏点あるいは耐力 Rp0.2=240MPaおよび引張強さ Rm=375MPa)の平均値を算出して検討したとします。するとシミュレーションに適用した降伏応力が、部品生産者から納品された実際の材料の降伏応力と一致する可能性は、おおよそ3.5%(7% x 50%)となります。 また反対に、シミュレーションに適用した値が、対応する範囲(Rp0.2=210MPaおよびRm=340MPa)の最小値であった場合、実際の生産に使用する材料がシミュレーションのデータと一致する確立はゼロです。 もちろん最終部品が100%すべて不良品であるということにはなりませんが、実際の挙動がシミュレーションされていると言えないことは明らかです。 ここで話題を戻します。最悪のシナリオとなるパラメータとは、どのようなものでしょう? 正直に言って、それは良くも悪くもなりえます。確定した材料サプライヤから統計分布を得るまでは、エンジニアは推測することしかできないからです。 金型の生産開始前、トライアウト工程にて、金型の試験や微調整を行います。これはパネルを実際にプレス成形して、最終部品の目標品質に達するまで、金型の修正を繰り返す反復工程です。生産した部品が寸法精度や目標品質を満たしている場合のみ、それぞれの金型は検収を通じて生産にリリースされます。 では金型のトライアウトで使用する材料タイプの重要性はどうでしょう? 同じサプライヤが同じ統計分布で提供した材料を、トライアウトと生産の両方で使用できることが理想です。しかし仮にそれができたとしても、金型のトライアウトで使用した材料がRm = 400MPa (図1を参照)であった場合、何が起るでしょうか。 この場合、生産に使用される可能性がおおよそ2%の材料特性をベースに、金型が調整され、パネルの生産が行われます。実際にトライアウトで使用する材料をRp0.2 = 225MPaと仮定すると、生産で同じ材料を使用する確立は2% x 50% = 1%となります。 繰り返しますが、これは99%が不良品であるという意味ではありません。むしろこの99%は、生産中の材料挙動を知ることができないという意味です。なぜならばコイルごとに材料特性は変わり、また同じコイルの中であっても材料特性にバラツキがあるからです。 ところで、残されたすべての組み合わせを検討するために必要な数式を想像してみてください。 本当ならば、問題はこうなります。自動車はどのように作るのですか? 幸いにも、エンジニアリング工程には、はっきりとした白黒はありません。しかし生産に関連したコストについて考える必要があります。 エンジニアリング工程は材料特性の変動に対する感度が高く、特にアルミや高強度の鋼鉄等級を使った金型では、トライアウトや生産で不具合が生じる可能性は高くなります。 - [材料カードの重要性](https://japanforming.com/材料カードの重要性/) - プレス成形シミュレーション作業における「三種の神器」(ここではシミュレーション・コードは含みません)といえば、「金型モデル」、「工程パラメータ」と「材料定義」があげられます。 これらの良好なデータがない限り、最終的に生産される「プレス成型品」に近い結果を、シミュレーションで算出できる保証はありません。さらに、CADで作成されたサーフェス・モデルがない場合、シミュレーションによる検討が行われないことがよくありますが、それと同様に、材料カードの重要性も軽視され、限りある時間や労力を費やす価値がないと判断される場合も多く見受けられます。 シミュレーションの結果が望ましい結果でなかった場合、その原因が、シミュレーション・コードにはなくとも、多くの場合は、シミュレーション・コードに原因があると非難されてしまいます。この現代社会ではつい忘れがちですが、コンピュータやそれが実行するプログラムは、GIGO (Garbage In, Garbage Out)「ゴミからはゴミしかでてこない」、要するに、不完全なデータを入力すれば不完全な答えしか得られませんが、しかし人間は暗黙のうちにそれらを信頼してしまう最たる例なのです。 しかしなぜこのように原因を見過ごすのでしょうか? 良い材料(カード)と悪い材料(カード)をそれぞれ使用した結果を比較すると、その差異は一目瞭然です。実際のプレス機にて、良い材料と悪い材料をそれぞれ使用した場合と、全く変わりありません。工程のロバスト性が低くなると、プロセス・ウィンドウが小さくなり、機械特性の変動に対する感度がより高まります。 実際のところ、AutoFormを起動し、バーチャルなプレス機を前にすると…。 25年にわたるFTI、AutoForm、PAM-Stamp、Optrisシミュレーションの経験を有する元ユーザーとして、『お使いのコードは@%#!€、シミュレーション結果はプレス成形品と似ても似つきません!!!』といった趣旨の警告を受け取った場合、最初に確認するのは材料カードで、次に確認するのが、摩擦タイプや使用されている値です。多くの場合は、この時点までに原因を特定することができ、また証拠も提示でき、一件落着となります。しかしここで、しばし立ち戻ってみましょう。 90年代半ばに開発されたソフトウェアは進化を続け、また材料特性のサポートや材料カードの生成も同様に進められました。材料の基本を説明するテキスト・ファイルを手書きで作成した日々はすでに遠い過去の記憶となり、今や最先端の理論や数式を駆使して自動作成された材料カードが主流となっています。 この進化を支えた一端には、共通の材料試験データや処理の改善に対する継続的なサポートが挙げられます。簡易単軸引張試験から得た測定の生データ(最大x1000対のデータ)と 直ぐに使用できる硬化曲線をソフトウェアへ入力することで、近似アルゴリズムから、Swift / Hockett-Sherby硬化曲線に必要なパラメータを作成できます。より詳細な設定が必要であれば、ひずみ速度の依存性や移動硬化は係数を使用することで簡単に追加設定ができます。 多くの分野で硬化曲線の重要性は認識されていますが、降伏曲面については未だ認知が進んでいません。不適切な降伏曲面モデルか、あるいは(概ねデータ不足のために)単に等方性材料を選択することが、頻繁に見受けられます。しかし降伏曲面は弾性/塑性変形の境界を示すだけでなく、どこで、どのように、材料が最終的に不具合を発生させるかを示します。これらの点に留意して、次はスプリングバックの予測が実際と大きく異なるか、または予期せぬ場所で部品が割れるなど確認します。 FLCはGoodwinおよびKeelerにより「発見」されてから、長年に渡りよく使用されてきました。サークル・グリッド解析を通じてプレス工場で直接使用できるため、最も頻繁に使用されましたが、しかし材料カードの中でも、最も理解が進んでいない部分でもあります。カーブそのものは、シミュレーションに直接の影響を及ぼしませんが、モデルの応力やひずみを変化させないため、実際のところ、このカーブを設定しなくとも、シミュレーションの実行はできます。このカーブの存在理由は成形性の測定のみを目的とし、エンジニアリングに関する意思決定を行う上で、成形性プロットの基礎基盤を成します。しかしながら、これが非線形のひずみ経路には有効でないことを、ご存じでしょうか。曲げはどうでしょう。またエッジ・クラックはどうでしょう。数百万ユーロ規模の金型製作プロジェクトを契約する前に、ユーザーとして、モデルのひずみ経路を最後に確認したのはいつでしょうか。 オートフォーム社では、意味を成さない文字や数字が羅列したプログラム・コードでしかない材料カードの認識を転換しようと、積極的な取り組みを進めています。AutoFormには、実際の材料挙動を模倣する上で、最高レベルのデータ処理を行うツールがありますが、これには最低限の試験能力が必要です。広範囲にわたる材料データを、材料メーカーから直接提供してもらい、ユーザーが利用できるように公開しています。当社の一般材料ライブラリには、MMK、Novelis、SSABの材料カードが最近追加され、材料メーカーから直接提供のあった300以上の材料カードが揃っています。この材料サプライヤ別のライブラリでは、欧州の大手材料メーカーのアルミ、鋼鉄、ステンレス鋼など、様々な材料カードをご利用いただけます。 しかしこれに満足しているわけではありません。近い将来には、アジア圏および米国の材料メーカーの材料カードを追加できる見込みです。またプレス成形に特化した材料や材料の理論に関するトレーニングも開催する予定です。 今後のシミュレーションでその結果がプレス成形品と一致しない場合、シミュレーション・コードやユーザーを責める前に「三種の神器」を確認していただくことをお勧めします。 注: オートフォーム社では、一般ライブラリおよび材料メーカーから提供を受けた300以上の材料カードを公開し、ユーザーが行う重要な選択を支援しています。さらには、AutoFormではAperam,ArcelorMittal, Bilstein,Erdemir,MMK,Novelis,Outokumpu,Severstal,SSAB,Tata Steelといった大手材料サプライヤと提携した材料サプライヤ別の材料データベースも提供しています。MMK,Novelis,SSABの材料カードは、最近更新されました。 OEMライブラリはオートフォーム社のウェブサイトからご利用いただけます。 著者略歴: アンドリュー・ウォーカー ウォーカーは2016年にオートフォーム社へ入社、英国北部の材料およびカスタマー・サポート担当エンジニアのテクニカル・プロダクト・マネージャとして活躍しています。ヨーク大学にて論理物理学を専攻し、卒業後はコベントリを拠点とする大手自動車関連企業に就職しました。大学院過程を履修後、FTIおよびAutoForm、後にはPAM-Stampを使用したプレス成形解析を担当し、後にAlcan(現Novelis)へ転職しました。サポート・チームの一員として、ジャガー社のエンジニアと共にX350のプログラムに参加し、AutoFormおよびOptrisのコードを使い、コンセプトから生産まで担当しました。2011年、英国の事務所閉鎖に伴いスイスへ移住、5年間の解析および材料のサポート業務に従事し、英国に帰国しました。その後、現在の役職であるテクニカル・プロダクト・マネージャとして活躍しています。 - [事例紹介: ルノー社およびダイムラー社による新たなトライボロジ摩擦モデルの適用](https://japanforming.com/トライボロジ摩擦モデルの適用/) - IDDRG 2019国際会議にてOEMからTriboFormが紹介されました 2019年6月3~7日にオランダのエンスヘデにて、第38回IDDRG(International Deep Drawing Research Group)が開催されました。この国際会議では、プレス成形の主導的立場にいる世界各国の専門家や研究者たちが一同に会し、プレス成形のテクノロジ分野の諸問題について意見交換が行われました。冷間プレス成形シミュレーションにおけるトライボロジの重要性に関するセッションでは、ダイムラー社およびルノー社から事例が発表され、高品質な部品のシミュレーションおよび生産には、トライボロジが主要な役割を担っていることが示されました。本記事では、大手OEMがTriboFormをエンジニアリング工程に適用し、生産不良の解消やスプリングバック量の緩和を実現した2点の事例をご紹介します。 事例1: メルセデスベンツ乗用車のフロント・フェンダ ダイムラー社では、メルセデスベンツ乗用車の新型モデルのフロント・フェンダを評価する上で、複数のドロービード・モデルとTriboFormの摩擦モデルを組み合わせて検討を行いました。すべてのドロービード・モデルにTriboFormの摩擦モデルを適用した結果、部品のシミュレーション精度が向上しました。TriboFormを適用すると、異なるドローモデル間の流入やひずみの変動が小さくなることが確認されました。また一定摩擦係数を使用した場合と比べて、3Dプロファイルのドロービードを使用したTriboForm摩擦モデルでは、実験値と良好に一致することも確認されました。 さらにフロント・フェンダの流入とスプリングバックの予測も詳細に評価しました。図2の右図は、フロント・フェンダ部品を最適化せずに、最初のトライアウト実行後のスプリングバック結果を示しています。部品のスプリングバック量を計測し、シミュレーション結果と比較しました。TriboForm摩擦モデルを使用したシミュレーションでは、クーロンの一定摩擦係数を使ったシミュレーションよりも、スプリングバックの予測精度が明らかに向上します。また流入についても、一定摩擦係数の適用時よりも、正確に予測されます。詳細については会議資料をご確認ください。 会議資料はこちらからダウンロードできます。 事例2: ルノータリスマンのトランク・リッド、インナー部品 次のプロジェクトでは、ルノー・グループおよびタタ・スティール社がTriboFormと協業して、トランク・リッド、インナー部品の生産中に確認された、われやしわなどの不具合の原因を検討しました。一定摩擦係数を使用したシミュレーションとTriboForm摩擦モデルによるシミュレーションの結果を比較しました。そして実際に生産した部品では、一定摩擦係数を使用したシミュレーション結果よりも流入が少ないことがわかりました。しかしTriboForm摩擦モデルを使用したシミュレーションでは、流入は実部品のアウター・エッジにより近くなりました。ひずみの大きさについても、一定摩擦係数を適用した場合は、発生個所や大きさが生産部品と一致しませんでした。TriboForm摩擦モデルの適用時には、致命的なひずみの大きさと発生個所を予測しました。最後に生産部品とシミュレーションで確認されたしわを比較すると、両方のモデルで生産と同様のしわを予測しました。 会議資料はこちらからダウンロードできます。 IDDRG 2019国際会議について IDDRG 2019は、トゥウェンテ大学ならびに欧州タタ・スティール社が主催する国際会議で、オートフォーム社は主要スポンサーです。TriboFormはオートフォーム社製品であると同時にトゥウェンテ大学のスピンオフ企業でもあり、タタ・スティール社から協力支援を受け研究開発が進められているため、IDDRG 2019にてTriboFormの事例を発表させていただきました。 - [スプリングバックの測定、軽減、コントロール、および見込み補正](https://japanforming.com/寸法精度を確保したプレス成形を実現/) - デジタル・エンジニアリングにより寸法精度を確保したプレス成形を実現 仮想空間におけるデジタル・エンジニアリングによるスプリングバックの測定、軽減、コントロール、および見込み補正の効果的な検討方法をご紹介します。デジタル・エンジニアリングで問題を解決したものを、デジタル・マスターとして実際の現場で忠実に採用し実行することで、現実世界でのトライアウト・コストを大幅に削減し量産開始までのリードタイム削減に大きな効果をもたらします。また工程のロバスト性を確保しているため一定の品質で安定した製造を実現します。 [作成者: Kidambi Kannan] 数十年にわたり培われたスプリングバックの成功事例が、軟鋼材および低合金高張力鋼(HSLA)のプレス成形における寸法精度の確保に効果を発揮してきました。しかし、ここ20年ほどは、超高強度鋼材(AHSS)および高強度アルミニウム合金の新たな等級の登場によって、それまで蓄積された知見や経験が必ずしも通用しなくなってきました。バーチャル設計ツールがこれらの材料のスプリングバックの軽減および管理において中心的な役割を果たしてきましたが、効果的な応用の成功事例は明確に理解されていません。 測定、軽減、コントロールおよび見込み補正は、金型設計および工程の成功事例を網羅した系統的な方案で、寸法精度を満たしたプレス成形を実現します。これを忠実に採用し実行することで、トライアウト・コストを大幅に節減し、パネル生産を通して一定した寸法を保つことが可能であることが証明されています。本稿では、この方案の実行に不可欠な設計およびシミュレーションの成功事例を検討します。第3世代の二相鋼であるAK Steel社のNEXMET 1000等級を使ったAピラーのプレス成形工程(図1を参照)を例に、この方案の主なポイントを説明します。 測定:シミュレーションは、実際のパネルで測定されるスプリングバックの最も信頼性の高い予測をするために構築され、成熟させる必要があります。 そのためには、プレス成形の結果に影響を与えると予想されるプレス成形工程、金型、材料、潤滑のすべての側面をシミュレーションする妥協のない努力が必要です。これには、物理的なトライアウトや生産で実施されるものが含まれます。 金型条件:パッドの姿勢、バインダのギャップやスポッティング、側壁面のクリアランス、底付ブロック、フランジ鋼の進入とクリアランス、しごき、強当てなどは、生産中と同様にシミュレーションで表現する必要があります。 工程:金型の動作位置関係、バインダおよびパッドのトン数、クッション・ピンの位置、およびストローク中のトン数が、意図する設計および製造通りに定義されている必要があります。 材料:シミュレーションの材料定義には、試験が欠かせません。引張試験が一般的になりつつあり、引張状態での材料の挙動を表すのに有用です。AHSSおよび高強度アルミニウム等級のスプリングバックを高い信頼性で予測するには、圧縮試験も必要です。シミュレーションでこれらの材料で一般的に適用される引張および圧縮状態で材料は同じ挙動を示すという仮説では、不正確で信頼性の低い予測につながります(図2を参照)。 実際には、引張-圧縮試験は困難で、そのようなデータは一般的に入手できません。ただし、このようなデータは最先端材料等級での予測およびスプリングバックの管理において重要であるため、材料供給元はこの点に配慮し、今後、このデータを作成し、配布すると期待されます。 摩擦:成形工程中の摩擦は、金型の表面処理、金型とシートがコーティングされている場合はそのコーティング、使用する潤滑剤、金型ギャップ、シートと金型サーフェス間のスライド、および成形中に発生する熱に依存します。現在では、高度なモデリング・ツールが利用できるようになり、これらの要因を考慮して、摩擦条件をより正確に表現できます(図3を参照)。これにより、シミュレーション結果の信頼性がさらに高まります。 ドロー・スケーリング:一般的に、シートは最初のドロー型で十分にストレッチされます。均一なストレッチは、部品の機能性およびパネルのゆがみのコントロールに重要です。パネルがドロー型から取り出される際に、弾性回復によって成形中にストレッチされた量から微小量が失われ、パネルが縮みます。縮んだパネルは、基準トリム金型にフィットしません。 このようにフィットしないことによって、トリム・ポストとパッドの間でパネルが押し潰されます。この問題は、一般的にドロー型を拡大、つまりスケーリングすることで回避します。 パネルがスケーリングされたドロー型から取り出されるとき、パネルは基準寸法に収縮します。よってスケーリング工程は、シミュレーションで正しく考慮する必要があります。 ドローシェルのネスティング: ドローシェル(スプリングバックしたドロー・パネル)をネスティングするためのトリム金型のサーフェス加工は、トリム金型で意図しない押し潰しが発生するのを最小限に抑制するために欠くことのできない金型製作におけるもうひとつの改善策です(図4を参照)。これも、シミュレーションで正しく表現し、検証する必要があります。 詳細な検証:以上の詳細をすべて統合し、全工程のシミュレーションを成熟させ、最終決定する必要があります。 最終バージョンのシミュレーション結果は、すべての成形性および品質要求を満たしている必要があります。 シミュレーションの最終決定の一般的な手法は、手動調整と反復です。初期シミュレーション結果から開始して、金型および工程条件を経験に基づいて手作業で修正し、新たなシミュレーション結果を作成します。この「検討-修正-再計算-結果待ち」のアプローチは、時間がかかることが多く、また、最終の金型および工程の最適な結果が得られるとはかぎりません。今日では、より系統的で効率的なアプローチを可能とするテクノロジーを利用できます。これを使って、すべての妥当なシナリオを検討した上で、最適なシナリオを特定できます。 ブランクの展開、トリムラインの最適化:これらのラインを変更すると、スプリングバックの結果も変わるため、スプリングバック結果を検討する前に完了することが重要です。 シミュレーションでのスプリングバックの測定:このような努力はすべて、シミュレーションで正確で信頼性の高いスプリングバックの結果を生成するためのものです。スプリングバックの測定中、パネルを治具で固定する必要がありますが、この工程で治具がパネルをゆがめないことが必要です。 これが確認できたら、1つのステーションから次のステーションで計測されたスプリングバックの状態を観察して、スプリングバックの原因およびタイプを特定します。曲げによる解放、側壁の反り、オイルキャニング、ねじれ、シミュレーション・テクノロジーは、そのような調査に使用できるさまざまな診断ツールを提供します。スプリングバック量の正確な測定とスプリングバックのタイプの特定は、適用すべき対策を決定する上で必須です。(工程の修正で対策可能か? 製品形状での対策が必要か? 見込み補正で対策せざるを得ないか?) スプリングバックしたAピラー(図5を参照)は、一端で深刻なねじれ、もう一端で重大なフラットニングを示しています。これは、材料の性質、部品のデザイン、および使用されているブランク節約のクラッシュフォーム工程を考えると、想定範囲内です。どのようにして、このパネルを寸法に準拠させられるでしょうか。ゆがみの深刻さを考えると、あらかじめいくらかでもスプリングバックを緩和しておかないと基準工程および金型を見込み補正することができないのは明白です。 軽減:軽減には、側壁の反りやオイルキャニングなどのスプリングバック・モードから発生するパネルのゆがみの特定および解消または最小化、および過大なスプリングバックの削減が含まれます。 通常、オイルキャニングは成形工程中に強い圧縮が発生することが原因で、幾何学的剛性が不足している単純な形状部分に起こりえます。側壁の反りは、シートの板厚全体で大きな応力差が発生した場合、および成形半径で曲げ/曲げ戻されるときにフランジの長さ方向に起こります。オイルキャニングおよび側壁の反りのスプリングバック・モードは、見込み補正できません。これらは、高い信頼性で特定して、適切な方策(製品または工程)を適用する必要があります。シミュレーション・テクノロジーは、このような特定のために便利に利用できる診断ツールを提供します。 同様に、大きなスプリングバックのゆがみおよびねじれは、簡単に見込み補正できません。制御できるレベルまでスプリングバックを軽減してから、見込み補正を実行します。 このAピラーでは、成形中にフランジで発生する圧縮が、底部に向かって深刻なフラットニングの原因となっています。これは、典型的な収縮フランジのシナリオです。この圧力が解放されると、フランジの引張状態によってパネルが外側に反り、フラットニングが発生します(図6を参照)。 適切であれば、多くの場合、スプリングバックを軽減するために強当て加工およびしごき加工が使用されます。このAピラーで、曲線のフランジのトップ半径を強当て加工してねじれを縮小し、ワイプ・フランジに沿ってしごき加工してパネルのフラットニングを軽減するよう試みました。これらの方策の組み合わせによってスプリングバックが大幅に軽減され、ねじれに対してパネルが安定しました(図7を参照)。このように、このパネルは、見込み補正のための良好な出発点となりました。 コントロール:見込み補正は、単一条件で計算されたパネルで測定される分布のスプリングバックについて行われます。単一条件で計算されたパネルという表現は、実際の世界では、材料パラメータおよび板厚は、仕様限界の許容範囲内で変動しますが材料パラメータ、摩擦、およびその他の成形条件において1つの値での計算結果という意味です。摩擦、ブランク・ゲージ、温度、およびその他多数の条件が、コントロールできない「ノイズ」となっています。これらは、ストロークごと、コイルごとに異なるため、スプリングバックを含むパネル結果は変化すると考えられます。どれほどのばらつきがあるでしょうか? この変化が数ミリメートルと大きなスプリングバックである場合、見込み補正の成功は望めません(図8を参照)。 つまり、ノイズが存在する状態で最終決定した工程のロバスト性、つまり再現性を評価することが重要です。これを実行し、図9で「改善/軽減対策済み」工程と、スケーリングおよびドローシェルのネスティングを適用していない工程を比較しています。 この比較は、一般的に適用される工程能力指数Cpに基づいています。工程全体で実施された改善および軽減方策が工程結果の安定性、再現性に大きく貢献したことが明白です。スプリングバックが安定している狭い範囲での分散は、見込み補正の成功の重大な要素です。 最先端のシミュレーション・テクノロジーでは、再現性結果を向上するために、診断およびwhat-if調査に加えこれらの評価が可能です。 見込み補正:見込み補正を実行するために、より小さなスプリングバック量と優れた再現性の「改善および軽減対策済み」工程を選択しました。 見込み補正の方案:1つのステーションから次のステーションでのスプリングバックの変化によって、最終形状およびフランジ金型を見込み補正のターゲットとすべきことが確認できます。図10に、使用する見込み補正のスキームと見込み補正ベクトル・フィールドを示します。 見込み補正は4回反復し、寸法内におさめます(図11を参照)。 コントロール(再確認):見込み補正結果が基準通りでも、見込み補正済みの工程が制御され、結果が再現可能であることを検証することが重要です。これは、作成された金型サーフェスの加工を承認する前に行う重要な検証です。 このケースでは、Cpを見ると見込み補正後のスプリングバック結果が再現可能であるとわかります。ただし、フランジ・サーフェスの小さな領域がパネルの基準/仕様限界の +/-0.5 mm から外れています。これは、Cpkを使って確認します。Cpkは、結果が再現可能でで仕様を満たしているか否かを確認するためのものです(図12を参照)。 このケースでは、工程が再現可能(良好なCp)であることが確認されていますが、完全に基準を満たしているわけではありません(不十分なCpk)。これに対する方策として、追加の見込み補正、パネルの治具装着方法の変更、見込み補正の方案の変更、また、最悪の場合は仕様限界の妥協などが考えられます。 現実のトライアウト・サイクルを削減し、安定した高品質のパネルを得ることができることは、トライアウトから量産開始までの総コスト削減の実現を意味します。そのためには、バーチャル世界でロバスト性を考慮しスプリングバック見込みを完了させるとともに、それをデジタル・マスターとしてシミュレーション通りの金型形状と加工条件を実際のトライアウトで再現することが不可欠です。 物理的な工程に近い表現とスプリングバックの安定した狭い範囲での分散は、見込み補正の成功の重大な要素です。 Kidambi Kannanは、AutoForm Engineering USA Inc. - [部分非焼入れ技術を用いたホットプレス工法で生産性の向上と新規開発の加速を実現](https://japanforming.com/ホットプレス工法で生産性向上と新規開発の加速/) - ボデーパーツ、衝突安全部品、燃料系部品、ドアなどの自動車部品の設計開発から製造までを手がける株式会社アステア(以下、アステア)は、近年の自動車部品に求められる「軽く、強く、安く」に対応するため、独自の「部分非焼入れ技術」を用いた直接通電加熱式ホットプレス工法を開発。2013年9月よりドアインパクトビームの量産に適用しています。ホットプレス工法のさらなる生産性向上と、部分非焼入れ技術の進化を目指す同社は「AutoForm-ThermoSolver」を導入し、ベンチマークを実施。その結果、部分非焼入れのシミュレーションに有効と判断しました。 「部分非焼入れ技術」を採用した独自のホットプレス技術を開発 総合自動車部品メーカーであるアステアは、現在、岡山県総社市内に7つ、九州と東海に各1つの全9工場を持ち、自動車のボデー骨格部品を中心に、衝突安全部品や燃料系部品などを製造しています。自動車メーカーからの注文に応じて生産する以外にも、自社開発部品として衝突安全性に優れたバンパーリンフォースや、キャップレスユニットなどを開発しながら、種々の自動車メーカーに提案しているのが特長です。 開発提案型企業である同社が、独自技術の獲得に向けてホットプレス工法の取り組みを始めたのは2007年頃でした。近年、自動車のボデー部品には、燃費向上や安全性向上などの観点から、軽量、高強度、低コストが求められています。そのために、鋼板には780MPa 級以上の超ハイテン材が採用され、今では980MPa、1180MPaの鋼板も使われるようになっています。しかし、超ハイテン材は高強度であるがゆえに、通常の冷間プレス工法では成形がしにくく、加工がしづらいという欠点があります。この難題を解決する手段として注目を集めていたのがホットプレス工法です。この工法は、鋼板を約900℃に熱した状態のままプレス機にかけ、同時に急速に冷ますことによって焼きを入れ、1470MPa級の高強度パネルを得る方法です。超ハイテン材の冷間プレスよりも成形が簡単で、スプリングバックの発生も最小限に抑えることができます。しかし、一般的なホットプレス工法は鋼板の加熱に大型の炉を用いるため、コストが高くなることが課題でした。 そこでアステアでは、低コストでホットプレス工法を実現する方法として、鋼板の加熱 にジュール熱を用いる「直接通電加熱方式」を検討し、低コスト、省エネ、高生産性を目指しました。こうして開発されたアステア独自のホットプレス工法は、「Smart Hot Press (SHP)」技術と名付けられ、特許を取得しています(図1)。 図1:Smart Hot Press(SHP)工法 SHP工法の特長は、加熱した鋼板に焼きを入れない部分を作る「部分非焼入れ技術」。これによって衝突時の変形モードの最適化が実現し、部品点数の削減や最適設計が可能で、溶接部の破断を防止、冷間トリム&ピアスによる遅れ破壊の防止や高価なレーザーカット工程の廃止などが実現します(図2)。 図2:部分非焼入れ技術 鋼板の加熱時間は、炉加熱式のホットプレス工法が2分~5分であるのに対して、直接通電加熱を利用したSHP工法は5秒 ~15秒。炉全体を熱する必要がないため、エネルギー効率は約3倍向上します。 その結果、部品の製造コストは炉加熱式に比べて20%の低減、設備面積は 90%の低減が可能です。アステア独自のSHP工法は、その高い技術力が認められ、2013年4月に第25回中小企業優秀新技術・新製品賞の優秀賞、2015年には経産省が主催する第6回ものづくり日本大賞優秀賞を受賞しています。 圧倒的な計算スピードを評価。温度切り分け位置も正確、かつ容易に検討可能 アステアでは当初、SHP工法のシミュレーションに他社ソフトを使っていました。しかし、SHP工法の量産化を加速したり、新たな技術の開発を進めたりするうえで、ホットプレスの成形性を短時間で検証したいというニーズが生じたのです。SHP工法の特長である「部分非焼入れ技術」では、部分冷却の位置をシミュレーションで検証していますが、既存のソフトでは時間がかかることが課題となっていました。また、部分非焼入れ技術を改良し、さらに進化させていくうえでも高速なシミュレーションが欠かせません。こうした中で機能開発課は、同社のボデー開発課が超ハイテン材の冷間プレス成形性検討に利用していたAutoFormに着目。そして、その機能の高さや圧倒的な計算スピードの速さを評価し、ホットプレスと焼入れ工程をシミュレーションする「AutoForm-ThermoSolver(以下、AF-ThermoSolver)」を2014年1月に導入しました。 本格採用にいたる前にアステアは、ソフトが実際の利用に適合するかどうかを検証するため、独自のSHP工法において、①バンパービームの部分非焼入れと、②部分非焼入れの新しい手法の2つに対してベンチマーク計算を実施しました。 その結果、①については、鋼板の中で部分的に冷却する位置がシミュレーションによって正しく再現されることを確認(図3)。②においても検討に利用できることを確認しました(図4)。さらに、加熱工程での温度切り分け位置が正確かつ簡単に検討できることから同社の新規受注部品の金型製作にも適用されており、金型の一発玉成も実現しています(図 5)。 複雑形状部品への適用確立に向け、熱間切断&成形焼入れの金型検討に活用 アステアでは現在、直接通電加熱方式を用いたSHP工法を拡大するため、複雑形状部品への適用に向けて検討を続けています。具体的なターゲットは、台形形状のセンターピラーリンフォースと、弓型形状のルーフレールリンフォースの2つです(図6)。これらに対してSHP工法を実現することで材料の歩留まり改善や、レーザートリムの削減を目指していくとしています。昨年度は株式会社アークと共同で、通電加熱した鋼材を900℃に熱したまま切断しながら同時に成形と焼入れを行う「1ストロークでの熱間切断&成形焼入れ」の金型検討にAF-ThermoSolverを活用しました(図7)。 図6:異形ブランク材の通電加熱 図7:1ストロークでの熱間切断&成形焼入れ実現 アステアがAF-ThermoSolverを実際に使い込み評価したのは、解析専任者でなくても、数字を直接入力するだけで設定ができる操作の簡単さと、詳細な物性データが標準装備されていること。今後も、国内外のさまざまなホットプレス材の物性データの整備や、金型冷却配管を設定した条件でのシミュレーションの実現が期待されています。直接通電加熱方式と部分非焼入れによるSHP技術を確立したアステアは、今後もホットプレス対象部品の拡大や、新技術の確立に向けて、AF-ThermoSolverと共に進化を進めていくことになりそうです。 - [小ロット・多品種の試作品の金型製作で 全体の約 70%で「トライ一発」を達成 平均 4 日間の工期短縮と工数削減を実現](https://japanforming.com/全体の約70%でトライ一発を達成/) - 四輪車・二輪車の試作と部品製造を主力とする埼玉車体株式会社(以下、埼玉車体)では、 近年増加傾向にある590MPaから1200MPa クラスの高張力鋼板を使った試作品の金型製作において、スプリングバックの見込み補正が課題となっていました。これまでは、スプリングバックの計算結果をもとにマニュアルで金型の形状補正を行ってきましたが、製品公差に収めるために見込み量を織り込んだ金型データをCADで作成した後、シミュレーション解析を繰り返し行う必要がありました。そのため、実型でのトライに至るまでに時間を要していたといいます。そこで、スプリングバックの計算結果をもとに金型の形状補正を行うAutoForm-Compensator を導入しました。現在では、CADでのモデリングの後、シミュレーション解析結果をもとに、見込み補正が織り込まれた金型モデルの修正・作成までをAutoFormのシミュレーション上で実行し、作業工数低減を図っています。そして、 CADを介することなく見込み補正後に出力されるデータを用いてNC加工機で金型を製作することで「トライ一発」を実現しました。「トライ一発」で見込み通りの公差内に入る部品の数は、高張力鋼板を適用した試作品の約70%に達しており、小ロット・多品種の試作品を手がける同社に、大幅な工期の短縮と工数の削減をもたらしています。 創業以来積み上げてきたスキルとノウハウで 四輪・二輪の試作品と部品製造に特化 埼玉車体は、1965年に埼玉県新座市で設立された四輪車・二輪車の試作部品の加工メーカーです。1965年の創業以来蓄積してきた独自のスキルとノウハウで、二輪車および四輪車の試作と部品製造に特化したビジネスを展開してきました。現在は「安定した品質の試作品を、早く、安く、作る」を基本理念としながら、新たな技術領域にも積極的な挑戦を続けています。 工場は、埼玉県川越市の本社のほか、栃木県さくら市氏家、埼玉県狭山市の3カ所にあり、合わせて約100名の従業員が働いています。3つの工場の役割はそれぞれ異なり、本社工場では四輪車を中心としたボディ関連の中物・小物 部品の加工をメインに担当、氏家工場では四輪車のドアーパネルなど大物ボディパーツの加工を担当しています。2007年に完成した狭山工場は、二輪車のフューエルタンクおよび周辺パーツの加工と、汎用機器の加工・小ロット量産品加工が中心です。 各工場には、常に高品質で安定した製品の生産ができるように高度な生産システムを導入。 さらに、1500トンプレス機、レーザー加工機などの積極的な追加投資を行い、多彩なニーズの製造に対応しています。難易度が高く繊細さを要求される作業では、最新の機械に頼るだけでなく、熟練した職人のハンドワークを生かし、柔軟な体制で製造を行っています。 同社がAutoFormのソフトウェア製品を導入したのは2005年で、試作品の製作依頼から出荷までの時間が限られている中、解析スピードの速い本製品は有効なツールとして利用されてきました。 高張力鋼板・超高張力鋼板の増加で スプリングバックの見込み補正が課題に 設立以来、50年以上にわたって小ロット・多品種の試作品や部品の製造を手がける埼玉車体ですが、近年は四輪車や二輪車の燃費向上のため、取引先の自動車メーカーや部品サプライヤーは、部品の重量軽減を目指しています。 その結果、薄くて、強度の高い高張力鋼板の採用が一般的になりました。埼玉工場工場長の氣谷優氏は「 590MPaや780MPaの高張力鋼板はごく一般的に使用されており、980MPa から1200MPaクラスの超高張力鋼板を使うケースも増えています」と語ります。 高張力鋼板・超高張力鋼板をプレス成形する中で、同社の課題となってきたのがスプリングバックです。高張力鋼板は応力値が大きいためスプリングバックが大きくなり、見込み補正は難しくなります。一方で、小ロットの試作品や部品を加工する同社では、取引先からの製作依頼から出荷までの時間は限られており、スプリングバックの見 込み補正は短時間で行う必要がありました。 「オーダーを受けてから製品を出荷するまでには、金型の設計と鋳造から、金型の機械加工、 鋼板のプレス成形、寸法精度の測定、部品のアッセンブルまでの工程がありますが、それらを短期間で終わらせる必要があります。多忙期には何種類もの部品を並行して作るため、金型の設計工程で時間がかかってしまうと、後工程にしわ寄せが及んでしまいます。そのためにも時間短縮は最大の課題となっていました」(氣谷氏) 小ロット・多品種の試作品成形では 見込み補正のスピードが重要 これまでの軟鋼材を使った場合の金型製作では、熟練した作業者の経験に基づきスプリングバックの補正を行っていました。AutoForm のシミュレーションソフトでワレ、シワ、スプリン グバックを解析することもありましたが、大体は 製品データから起こした見込みが入っていない 金型データで実際にプレスしてからスプリングバックを測定し、例えば 5mmハネていたら金型に5mm見込むといった対応をすることで時間短縮を図ってきました。最終的にはプレスした部品をハンドワークで調整して成形することもあったといいます。埼玉工場 生産3課 係長の熊本康貴氏は「小ロット・多品種の試作品の場合、何よりもスピードが優先されるため、シミュレーションにこだわらず、臨機応変に対応してきました」と語ります。 しかし、高張力鋼板を扱う頻度が増え、取引先からさらに複雑な形状の部品製作を求められるようになると、成形が比較的容易な軟鋼材の経験をそのまま適用しているわけにもいかなくなります。さらに、アセンブリーの初回ロットから±0.5mmクラスの高い精度が求められることが増えていることから、スプリングバックの見 込み補正をより短時間かつ正確に行う必要が出てきました。 そこで埼玉車体は課題の解決策として、スプリングバックの計算結果をもとに金型の見込み補正を行うAutoForm-Compensatorを導入し、工数低減を図ることにしました「これまでのように実物を見ながら作業員のカンと経験で補正するよりは、シミュレーションでスプリングバックの大まかな見込み補正を行ってから成形すれば、試作部品の生産効率が高まるという 期待がありました」と熊本氏は振り返ります。 ソフトウェアの採用にあたっては、まず2015年6月から3カ月間で評価を実施。予想以上の成果が得られたことから、9月に本採用に至り、現在は川越の本社工場に1ライセンスを導入し、試作担当者が数人で利用しています。 プレス全体の約 70%で「一発トライ」 大幅な工期短縮と工数削減が実現 本社工場で扱う材料は、約80%を590MPa 以上の高張力鋼板で占めていますが、 見込み補正ソフトウェアの導入により、試作部品の金型製作において、全体の約70%で「一発トライ」が実現しました。見込み補正が難しいのはアルミ材や平面形状の多い部品で、これらは一発トライから外れることが多いようです。そのため約30%の部材については現在も手作業での補正はしているものの、70%で一発トライが実現していることで、大幅な工期短縮と工数削減に結びついています。熊本氏は「一発トライによって、金型の作り直しがなくなることで、中には4日( 32時間)程度の工期短縮につながっているものもあります」と語ります。 一般的な量産加工の現場では、見込み補正の結果をもとに3D CADで面を再作成し、それをもとに加工するケースが多いようですが、同社の特徴的な使い方といえるのが、AutoForm-Compensatorで補正したデータを金型切削用のデータとして出力し、NC加工機に転送して、直接金型を加工していることです。これは小ロット・多品種の試作部品を手がける同社ならではの使い方で、AutoFormのソフトウェアの機動力の高さをフルに活用しているケースといえます。 解析スピードには満足 解析精度のさらなる向上に期待 2015年9月の導入以来、本社工場におけるプレス成形では、多くの試作品に対してスプリングバックの見込み補正を行っています。熊本氏も「今となっては、AutoForm-Compensatorはなくてはならない存在です。どの程度のスプリングバックが発生するかが見えにくい高張力鋼板を扱っている中で、計算すれば何らかの指針を得ることができるので、それをもとに作業を前に進めることができます」と述べています。 解析時間は、1つの部品に対しておおよそ 20分前後で、スピードにも満足しているといいます。複数の部品を解析する際もバッチ処理で夜間に実行することで、作業者には負担もかからず、日中の業務に影響を及ぼすこともありません。ただし、今後については精度の向上に期待を寄せており、氣谷氏は「精度をより高めて、トライ一発で対応できる部品の数を増やしていただければと思います」と話しています。多様化するメーカーからの要望に対応するため、今後はプレスを中心とした部品製造だけにとどまらず、製品加工の分野にも進出を検討している埼玉車体。同社の独自のチャレンジは今後も続いていきます。 - [型設計初期段階での面ひずみ確認と対策](https://japanforming.com/型設計初期段階での面ひずみ確認と対策/) - ヤマセイ株式会社ではAutoFormを工程検討段階での加工方向検討、ダイフェースや余肉形状の簡易造形と検討、トリム角度やカム方向の検討、後工程の成形性検討などに活用してきました。 しかし成形難易度の高い外板部品の受注が増加するにつれ、従来のやり方では面ひずみの対策に手間と時間が掛かり対策を打つのが遅くなるのが問題となってきました。 そこで手早く解析ができる特長を生かし、型設計初期段階で面ひずみの確認を行い、対策を型構造に織り込む取り組みを行いました。 プレス技術課解析チームの皆さんと 取締役 山中部長(右から2人目)、プレス技術課 藤本課長(左から2人目) 従来の活用方法 手間が掛からず早く解析結果が得られるAutoFormの特長を生かし、初期検討段階で複数の工法案の検討や成形性(われ、しわ)確認と対策の検討を行ってきました。図1はアンダーカットが無く、絞り深さのバランスが取れた加工方向を決めて、DieDesignerでダイフェースと余肉形状を造形した例です。パラメータ変更するだけで造形を変えることができるため複数の方案を手軽に検討することができます。 図1 加工方向の検討と絞り型の簡易造形 また図2に示すのは絞り型の成形性(われ、しわ)確認に加え、後工程での伸びフランジ割れや成形途中のしわや展開トリム位置を確認した事例です。これらの事例のように解析を早期段階から活用することで金型製作期間とコストの削減に大きな成果を上げています。 図2 絞り型から後工程までの成形検証 面ひずみ予測 近年ではヤマセイにて成形難易度の高い外板部品を受注するケースが増えてきました。それに伴い寸法精度不良や面ひずみの対策に時間を取られるようになってきていました。そこでAutoFormの解析時間の短さを生かし、型設計初期段階で面精度確認を行い、その対策を金型構造に反映できるように、業務プロセスを変更すべく検討を行いました。 まず、面ひずみが捉えられるか確認を行いました。面ひずみは高さがせいぜい数十ミクロンの微細な凹凸であるがゆえに、それを成形シミュレーションで捉えるには非常に高精度な解析のセットアップが求められます。ここで言う「高精度な解析のセットアップ」には実型・実加工条件の正確な再現と数値解析上の近似精度の向上の2つです。 前者のためには、絞りビード形状をシミュレーション上に正確に再現することが必要です。ビード断面形状や配置をシミュレーションと実機で一致させることは言うまでもなく、スポッティングによって当たりを付けているエリアと付けていないエリアをシミュレーション上でも区別して定義することで実機の再現性を上げています(図3)。また工程間のスプリングバック設定も、当初の工程パネル検査時の拘束状態を意識して過拘束になっていたものを、フリー・スプリングバックにして実操業状態を再現しました(図4)。 図3 絞りビードと非スポッティング領域 図4 拘束によるスプリングバックの違い 後者のために行った事の一つに、シミュレーションのコントロール設定の変更が挙げられます。変更内容は、①初期要素サイズを20㎜から10㎜に変更(最小要素サイズが変わらないように最大リファインメント・レベルは6から5に減少)、②タイムステップ・コントロールの最終金型変位ステップを0.5㎜から0.25㎜へ半減するとともに最終金型変位ステップ数を3から5へ増加、を行いました(図5)。これらの変更によって下死点前後で発生する微小な局部変形である面ひずみを捉えやすくなっています。 図5 コントロール・パラメータの変更 上述の変更により解析精度は向上しましたが、面ひずみ評価の難しい点は官能検査と相関の高い定量評価が確立されていないことです。そこでAutoFormに実装されている結果変数のうち、どれが実機の官能検査(成形パネルに砥石がけをして目視)を再現できるか検証を行いました。検証に用いた面ひずみに関する結果変数(定量評価指標)は、①曲率ケース(曲率の正負)、②3点ゲージ、③サーフェースへこみ(砥石掛け)です。 面ひずみを評価する場合には、しばしばスプリングバック前後のパネルを比較することで面ひずみの検知が行われます。これは面ひずみがスプリングバックによって発生することが多いことを利用したものです。しかし、金型面や製品面には面ひずみとして認識されてしまう凹みが潜んでいることも多く、その場合にはスプリングバック前後の比較では評価ができなかったり、面ひずみの対策を間違ったりする懸念があります。そこでヤマセイでは、金型面や製品面に面ひずみと認識される凹みがないか確認する事も行っています。図6は曲率ケースを用いて製品面にあるネガ形状部を確認したものです。成形パネルの同部位に凹形状が観察されたとしても、それは製品のデザインなので対策をする必要がないと判断できます。 図6 曲率ケースを使った製品面品質の確認 フロントフェンダの面ひずみ解析を実施し実機との比較を行った結果、検証した3つの結果変数の中では「参照サーフェースへこみ」が最も良い再現性を示しました。図7にフロントフェンダの各部に発生する面ひずみを「参照サーフェースへこみ」で評価した結果を示します。いずれも実パネルを砥石掛けして見えてくる面ひずみをシミュレーション結果でも捉えることに成功しています。また、曲率ケースや3点ゲージによる評価も、参照(金型面)との変化を見ることで面ひずみの検知ができる部位もあるので、それらの結果変数も組み合わせて総合的に評価することで、面ひずみをより的確に捉えることができるようになります。 図7 「参照サーフェースへこみ」による面ひずみ予測の実機との比較 今後は精度検証に活用を拡大 面ひずみ評価の方法が確立できたので、次は修正対策の効果確認評価を行います。図8はフロントフェンダに発生する面ひずみの対策案を検討した事例です。面ひずみの原因となっている肉余りを生じさせている製品フランジ面形状に起因する余肉深さの急変を、オーバードロー造形で緩和したり、余肉の実長を増やす造形を追加して余りを吸収したりする事の効果を確認しています。 図8 面ひずみ対策の効果の確認例 このような検証を金型設計の早期段階で行うことにより、対策を金型設計に初めから織込むことができ、現物修正が削減できると期待できます。またスプリングバックによる寸法精度の変化への対策についても、AutoFormの手早く短期間で解析ができるという特長を生かし、金型設計の早期段階で行えるように検証を進めていきます。 ヤマセイでは、これらのフロントローディング型の業務プロセスを確立することで、お客様の求める短納期と品質保証に取り組んでいます。 ヤマセイ株式会社について 本社を愛媛県松山市に置く板金プレス金型と樹脂金型の設計製作メーカー。2012年1月17日に旧山本製作所金型事業部が分社独立し、同年3月1日にビューテックグループの一員として再スタート。山本製作所時代を含めると1960年代から半世紀以上の歴史を持つ。取引先は国内の自動車OEM各社やTer1各社に加え、海外の自動車OEMやTer1にも広がる。 ボディサイドアウタやフロントフェンダといった大物難成形部品の金型の設計製作に豊富な実績を有する。CAD/CAM/CAEといったITツールを使いこなす技術、温度・湿度管理された専用環境下での高精度機械加工技術、職人の匠の技術の3つがヤマセイの強み。 ヤマセイの3つの強み - [最適化手法を使ったハイテン部品のスプリングバックの最小化](https://japanforming.com/最適化手法を使ったハイテン部品のスプリングバ/) - 自動車のボディシェル部品などの開発・設計・製造を手がける広島の大手自動車部品メーカー(以下、A社)は現在、取引先の自動車メーカーから見積もり依頼が寄せられる前の段階から、製品形状や金型に関する対策を事前検討しておき、受注後はスピーディに製品を提供する金型づくりを目指しています。その評価手段として、初心者でも活用でき、プレスのあらゆる業務をカバーするAutoFormのシミュレーションソフトを活用。ハイテン材におけるスプリングバック抑制形状の検討に用いた結果、最適な形状の割り出しに成功しました。検討時間は従来の解析手法と比べて76%の削減が見込まれ、開発の生産性向上への貢献が期待されています。 広島県の製造業の生産性向上を目指す「デジタルものづくり塾」 取引先の要求に合わせた生産性の向上が求められる中、自動車部品の開発設計から量産まで一貫して手掛けるA社が目指している業務プロセスは、ファーストトライ品で要求規格内の製品を作る「修正のない金型づくり」です。そのためにはこれまでのように金型育成の段階に移行してから対策を考えるのではなく、自動車メーカーから見積もり依頼が寄せられる前の段階から工法を検討し、先を見越して製品形状や金型に関する対策を検討する取り組みを進めています。 そんなA社が「ハイテン材のスプリングバック抑制形状」を検討するに至った背景には、広島経済同友会のものづくり委員会が企画した「デジタルものづくり塾」への参加がありました。ものづくり委員会は、広島県の製造業、特に中小企業の生産性向上を目的に2017年に発足したものです。2018年には活動の1つとして「デジタルものづくり塾」が発足し、県内の中小企業が集まりプレス金型の成形シミュレーションについて学ぶことになりました。同塾で使用するシミュレーションソフトには、共通のツールとして初心者でも簡単に扱える敷居の低さが特長であり、プレス部品のエンジニアリングチェーンを総合的にカバーするAutoFormが選ばれました。 プレス金型の成形シミュレーションで高いノウハウを持つA社は、2018年の第1期「デジタルものづくり塾」から参加しています。その中で、人材育成や生産性向上の面で一定の成果が見られたことから、2019年からの2期目の活動にも加わり、独自テーマとして「ハイテン材のスプリングバック抑制形状」を設定しました。 AutoFormを活用してハイテン材のスプリングバック抑制形状を検討 近年、自動車の燃費向上や安全性能向上の背景からハイテン材の使用率が増加傾向にあり、A社においても1000MPaを超える超ハイテン材が約3割を占めています。2018年には1310MPaの高張力鋼板も採用され、スプリングバックの問題を見逃せなくなっているのが現状です。同社では、以前からトライ型を用いて成形性やスプリングバック量を確認していたものの、1000MPa超級のハイテン材は工法や見込みの対策だけでは限界があり、金型製作後の精度育成でも多くの工数を費やしてしまいます。 そこで製品精度を狙いの公差に入れるため、ハイテン材のルーフレインフォースメントの工程設計において、工程変更、金型の構想変更、形状の見込み方法の変更などを試しながら、最適な方法を探ってきました。見込みの方法としては、部品の曲率をルーフの曲率より小さくするのが一般的ですが、加工圧の不足、見込み量の限界などの問題があります。そこであらかじめ製品形状の評価段階でスプリングバックを抑制する形状を付けることで、形状の見込み量を少なくすることを検討することにしました。 今回、A社がハイテン材のスプリングバック抑制形状の検証に用いた部品は、材料SPCN118YL-N、板厚1.2mmのルーフレインフォースメントです(図1)。検証では、車種固有の形状によって影響が生じる穴・座面・トリムラインなどはすべて除去。製品中央の縦横断面を基準にスプリングバック検証のモデルを作成し、抑制に最適な形状を特定していくことにしました。また、同社がこれまで社内で実施してきたシミュレーションと、AutoFormを使ったシミュレーションを比較し、両者の違いも改めて検証しています。 現状のスプリングバックを分析し、応力除去によって影響を与える形状を切り分け 最初に基準として、現状の工法で作成したルーフレインフォースメントの形状でスプリングバック量をシミュレーションしました。その結果、製品端部の横断面で最大15.8mmのスプリングバックが発生していることを確認しました(図2)。 一方、製品の曲率が変化している部分(折り曲げが発生している部分)には、プレスで「シワ」を潰したことによる圧縮応力が発生しています。スプリングバックは製品の中央部から発生しているため、シワ潰しによる圧縮応力とスプリングバックとの相関関係はわかりません。そこでA社は、曲げによって発生した応力(形状)がスプリングバックに与える影響を改めてシミュレーションで確認してみることにしました。 スプリングバックに影響を与える応力(形状)は、ベース形状のシミュレーション結果をもとに、a)製品端部、b)シワを潰した応力発生部、c)製品中央部の3カ所にあると想定。その3カ所から応力を部分的に除去し、スプリングバック量の変化を検証する影響分析を実施しました(図3)。 すると、a)の製品端部の応力除去では、スプリングバック量にほとんど変化が見られませんでした。一方、b)のシワを潰した応力発生部を除去すると、スプリングバック量は従来の15.8mmから12mmへと改善。c)の製品中央部の応力除去では、スプリングバック量が従来の15.8mmから4.9mmへと劇的に変化しました。 この結果から、スプリングバックに大きな影響を及ぼしているのは、c)の製品中央部の応力であることがわかりました。 形状変更機能により製品形状にビード形状をスピーディに追加 次のステップでは、応力の影響が大きかったc)の製品中央部分をさらに細分化し、断面の「たて壁部」「上面」「下面」の3カ所について、どこの応力がスプリングバックに影響しているかを確認しました。すると、下面の影響が大きいことが明らかになります。 そこで改善案として①シワ潰しをなくす方法と、②製品内側のスプリングバックに対してバックを拘束する形状を追加する方法の2つを検討しました。まず、①のシワ潰しをなくす対策では、シワ発生部の製品形状を深くし、断面実長を増やすことで対応しました。その結果、スプリングバック量は従来の15.8mmから11mmまで改善されました。 次に②のスプリングバックを拘束する形状を追加する対策では、応力を除去するために製品底面に縦長のビード形状を追加するアイデアを採用しました。ビード形状を加えたことでスプリングバック量は15.8mmから8.2mmまで改善しましたが、新たに追加ビードの断面外側に大きなスプリングバックが発生する問題が発生します。そこで改めて、ビードを細かく分割する方法を考案し、再度検証した結果、断面外側のスプリングバックはなくなり、スプリングバック量も9.8mmで落ち着きました(図4)。 A社では、このビードの最適な形状や分割の長さを検討するために、ビードの造形に形状変更機能を用いて行いました。通常、製品形状にビードを追加する場合、ビード形状や分割長ごとにCADでモデリングする必要があります。対して形状変更機能なら寸法の変更のみで簡易に変更が可能で、短時間で多様なパターンのビード形状の造形ができるため、検討時間の短縮につながります。 追加のビード形状を座面形状に変更、AutoForm-Sigmaで最適な座面位置を算出 これらの対策を踏まえて新たなルーフレインフォースメント形状を作成し、スプリングバック量を解析した結果、ベースの15.8mmから6.6mmまで改善されました。しかし、ビード形状を追加すると、プレス時の加工圧が約140トン増加するという新たな問題が発生します(図5)。 機能や組付け用の模様なども考慮すると、さらに大きな加工圧が必要となるため、プレス機の加圧限界を考慮すると現実的な方法ではありません。そこで、加工圧の増加を最小限にとどめるため、A社はビード形状ではなく、丸形の座面形状で代用することを考案しました。 丸形の座面をどの位置に配置するかの検討については、手作業で計算すると膨大な時間と手間を要するため、設計パラメーターの寄与度の分析ができるAutoForm-Sigmaを活用しています。最初に設計パラメーターの変動範囲を定め、AutoForm-Sigmaを実行すると、座面の位置を自動で動かしながらAutoFormでスプリングバック計算までを実行します。そこで得られた結果を統計的に分析することで、スプリングバックが最小となる座面の位置を割り出すことができます(図6)。 AutoForm-Sigmaでシミュレーションし、最良となる座面の位置を決定した結果、ビード案と同等のスプリングバック量を維持しながら、加工圧を約100トン減少させることができました。結果として既存のベース形状からは40トンの加工圧の増加で済み、スプリングバック量も最大5.1mmに収まっています(図7)。 量産時のバラツキを低減し、ロバスト性の高い生産プロセスの確立へ 以上の結果から、ルーフレインフォースメント想定モデルでは、製品底面に丸形の座面を追加することで、スプリングバックの抑制が可能であることを特定できました。AutoFormを活用した結果、座面の最適位置算出にかかる時間は、既存のCADと解析ソフトの組合せでは7.5時間かかっていたものが、AutoForm-Sigmaを使った場合で1.8時間と、76%の短縮に成功しました(図8)。結果として分析者のリソースを、より重要な業務に割り当てることが可能になり、生産性や品質の向上が期待できます。 (図8) A社では、次のステップに向けた課題として、次期車種への形状折込みに向けて対策方法の選択肢を増やし、自動車メーカーに対して効率よくスピーディに対策を提案することを挙げています。 今回の取り組みにより特定の材料に関する検証はできましたが、残された課題は量産移行時のバラツキ対策です。量産時には、特に材料ロットがかわると成形品の板厚やスプリングバック値に差が出たり、加工圧にもバラツキが発生したりします。スプリングバックの大きなバラツキは部品の組付けに影響を及ぼすため問題になります。そこでA社は今後もAutoForm-Sigmaを活用し、公差の範囲内に収まるようパラメーターを動かしながらバラツキの分析・検証を重ね、ロバスト性の高い生産プロセスを確立していく考えです。 - [AutoForm-Sigmaを用いたスプリングバック低減の取り組み事例 [前編]](https://japanforming.com/autoform-sigma・スプリングバック低減の取り組み事例前編/) - ハット断面の超ハイテン構造部材をテーマに、AutoForm-Sigmaと形状変更機能を組み合わせてシステマティックにスプリングバック低減に取り組んだ事例をご紹介。前半である本稿では、取り組みの背景や手法と加工工程に加え、最初の取り組み事例である壁面へのスプリングバック抑制形状の付与と最適化について掲載しています。 <導入> スプリングバック低減のニーズと取り組み対象部品のご紹介 背景 次世代の自動車開発体制として、CASE(コネクテット、自動運転、シェアリング、電動化)の拡充が加速している。自動車の車体設計の目線では、自動運転やシェアリングに伴う衝突安全性のさらなる向上と、環境性能の向上や電動化に伴う車体軽量化が最も大きな課題として挙げられる。衝突安全性能の確保と軽量化という、相反する課題を解決するための手段の一つとして、骨格系部品への高強度鋼板の採用が進められている。 高強度鋼板は一般的に製品としての高い強度を持つ一方で、製品を形作るための成形性と形状凍結性の担保が難しく従来の設計、製造プロセスのように生産技術による対応のみで高品質な製品を短期間で開発することが困難になっている。従来プレス成形シミュレーションは設計された製品を生産技術がいかに成立させるかを検討するためのツールとして利用されてきたが、近年のこうした背景から、製品設計段階においても成形性や形状凍結性をあらかじめ考慮するためにプレス成形シミュレーションを利用した不具合予測と対策検討が求められている。 目的 形状凍結性、すなわち製品成形後のスプリングバックに対する対策としては、見込み補正が最も一般的に行われている。これまでも実物における補正をシミュレーション上で置換し、現場での検討コストを抑える活動が進められて来たが、高強度鋼板のさらなる適用拡大により様々な課題が生じている。例えば、わずかな加工条件の変化でスプリングバック傾向が逆転し見込みが収束しなくなったり、ダイフェース面の変形量が大きくなりすぎて面品質が悪化し、仕上げ工数が増加したりという本末転倒な事態も招きかねない。製品の設計製造プロセスを包括的にとらえた場合、スプリングバック量自体を低減させることがコスト的に最も優れた対策であることは言うまでもない。本稿では、指定された工程計画を変更することなくスプリングバック見込みを実現するために、見込み後にアンダー形状が出ないことを目的とした設計変更提案を体系的に達成するための手段とその検討事例を示す。 手法 製品設計の初期段階では、衝突などの強度的な性能を満たすために製品の材質と大まかな設計空間、断面形状、組み付け位置が制約として与えられることが多い。この段階におけるスプリングバック量低減のためには、これらの制約を除いた製品形状の変更を検討することができる。一方考慮するべき前提条件として、製造過程におけるスプリングバック量を予測するためには、成形を行うダイフェース設計が必要となる。通常ダイフェース設計は工程計画とCADでの面張り作業が必要となり、設計のタイムフレームに収まるような時間で生技性を検討できない。また、スプリングバック自体が非常に複雑な現象であるため、机上計算や簡易計算ではスプリングバックを予測することが困難である。ここでは、製品形状からのダイフェース設計にAutoForm-DieDesignerを使用することで、現実的なレベルでの高速かつ柔軟なダイフェース設計を行い、設計変数の設定、計算、結果の分析にAutoForm-Sigmaを利用することで、複雑なスプリングバック現象と設計変数との関係性を体系的に分析する。 検討部品 本稿での検討対象部品を図1に示す。本部品は板厚1mm、材質は1180MPa級の超ハイテンで設計された、ハット断面をもつ構造部材である。この製品は工程計画およびコスト見積もりの結果、曲げ、曲げ、ピアス/トリムの3工程で製造するものと仮定して検討を進める。過去にもこのような形状の製品を製作したことはあるものの、今回の材質、板厚の組み合わせでの製作は初めてのことで、過去の経験から見込みでの精度保証は非常に困難と予測される。そのため、製品形状が決定する前段階で、製品形状に変更を加えることでスプリングバック量の低減を図る。 図1 対象製品 図2 加工工程と初期状態でのスプリングバック変位量(カラーレンジ:±15mm) 図2に加工工程と、最終工程終了後のスプリングバック変位量のカラーマップを示す。本図では負の値がスプリングバック、正の値がスプリングゴーを表している。スプリングバック量は25mmを超え、このままスプリングバック見込み変形を行うと金型にアンダーが発生してしまうことは明白である。アンダー形状が発生した場合カム加工や追加工程が必要となり、製品製造コストの見積もりが前提から大きく異なってしまう。そこで本稿では、製品設計の自由度の範囲で形状に関する以下3パラメータを変更し、現行の工程設計で見込み変形が成立するようスプリングバック量の低減を検討する。なお、スプリングバック量を正負逆転して見込み変形をかけた場合、アンダー形状とならない限度の目安としては±7mm程度である。 ・ 壁面に対するジョグル形状の追加 ・ 初工程の加工形状の検討 ・ 天板面に対するエンボス形状の追加 <スプリングバック量低減検討①> リブ形状の追加とその適正高さの検討 ここからは、スプリングバック量低減の一つ目の対策案である、リブ形状の追加について、検討を行う。図3に改めて正規製品形状と、基準シミュレーションのスプリングバック結果を示す。本図では負の値がスプリングバック、正の値がスプリングゴーを表している。 図3. 初期加工条件における正規形状とスプリングバック後形状 (カラーレンジ±15mm、法線方向の変位量) フランジ部はスプリングバック量(壁反り)が非常に大きく、前回も述べた通り正規形状との乖離は25mmを超える。正規製品寸法としては、切り欠きのあるフランジの壁面(Above)がプレス方向から見て10°、切り欠きのないフランジの壁面(Below)がプレス方向から見て7°であり、仮に25mm見込み変形を行うとアンダーとなってしまうことが明らかな形状をしている。一般的にこういった場合には、リブ形状やエンボス形状を追加してスプリングバック量の低減対策を図ることが多い。今回も製品の両壁面にリブ形状を設定し、スプリングバック量の低減を検討する。但し、この部品の材質は1180MPa級の超ハイテンであるため、大きく伸びを求められる形状を設定してしまうと割れの危険性が高まるリスクがある。そこで、われ、スプリングバックに対して現実的な形状となるようリブ深さをSigma変数として設定する。 ■設定手順 製品サーフェスを一定間隔でトリムし、モーフィング機能を使用した変形によって、両壁面にリブ形状を生成する。変形時の面移動量をSigma変数として設定し、最適なリブ深さを検討する。 図4 モーフィング機能を利用したリブ形状の作成 変形量は、組み付けや他部品との干渉を考慮して、図5の通り0~-7mmの範囲とした。 図5 移動量のSigma変数化設定 両方のフランジ壁面に対してそれぞれ6個のリブを配置し、リブ深さは同一フランジ内では一定を保って変形する。一方で、それぞれフランジ部は深さ、角度とフランジ上に存在する形状が異なるため、最適なジョグル深さは異なる可能性がある。そこで、図5の通り変数を個別に設定しそれぞれ最適化ができるよう変数を設定した。 図6 リブ形状深さのSigma設定 図6の通り、2変数の設定でトータルの計算数は64ケースのSigma解析を実施した。 ■計算結果の評価 計算結果を確認すると、今回設定した範囲ではフランジのスプリングバック量を±7mmに抑えることはできない。図7の通りわれを度外視して最も深いリブを設置したとしても、約9 mmが限度であることが確認できる。 図7 設計変数範囲での要素ごとの最善結果コンター (カラーレンジ±15mm、法線方向の変位量、最高値) この結果を参考に、フランジ壁面のスプリングバック低減目標を±10mmとし、かつFLDベースでわれが発生しない範囲で求めたプロセス・ウィンドウを図8に示す。図に示す通り、スプリングバック10mm以内かつわれのない設定としては、切り欠きのあるフランジ壁面のリブ深さが2.3~5.3mm、切り欠きのないフランジ壁面のリブ深さが3.3~6.6mmで、条件を満たし、スプリングバック量に有利な点から、それぞれ4.5 mmと6 mmの修正としたものが図8右の結果である。 図8 プロセス・ウィンドウと最適設定におけるスプリングバック量 (カラーレンジ±15mm、法線方向の変位量) ■まとめ 本稿では、フランジ縦壁部にリブ形状を追加しスプリングバック低減を試みた。Sigma機能を用いてリブ深さとスプリングバック量に関するプロセス・ウィンドウが得られた。プロセス・ウィンドウから、われが発生しない範囲でスプリングバック量を最小化できるリブ深さをそれぞれのフランジに対して4.5mmと6mmと定義した。 後編では、今回の計算結果を元に、2回成形で加工されているフランジ部分の1度目の加工量であるフランジの角度を変数として、スプリングバック量のさらなる低減を検討する。また更に、その検討結果をもとに、製品上面への形状付与によるスプリングバック低減を検討する。 - [プレス成形シミュレーションにおける精度は実証できるか?精度指標の基本原則](https://japanforming.com/プレス成形シミュレーションにおける精度の実証/) - 精度問題の根本原因を追求 精度の高いシミュレーションとは、実部品の実機の結果を正しく予測することを意味します。精度指標はオートフォーム社が教示するシミュレーションの精度を検討するためのコンセプトですが、プレス成形シミュレーションのあらゆるソフトウェアに適用することができます。この精度指標は、シミュレーションで使用するデータの品質を確認するための分析的な手段を示しています。現実との相違を特定し、「不正確」な結果をプレス成形工程にて再検討することができます。 実際には、「こちらがシミュレーション結果です。そしてトライアウト(生産)の結果がこちらです。」といった具合になります。もし生産した部品がシミュレーション結果と合致しない場合、トライアウトで何かが異なることに間違いありません。経験上、8割方の金型トライアウトでは、エンジニアリングの意図が完璧に反映されているとは言い難く、トライアウト工程の細部がシミュレーションの設定と合致していない場合が多く見受けられます。問題解決の手段としてオートフォーム社が提示する精度指標によって、これが証明されます。 精度指標による問題解決 実機の設定とシミュレーションの設定が同一であれば、結果も同一になるという基本原則が、精度指標の根幹にあたります。この精度指標の枠組みの中で、実際の品質を確認します。つまりシミュレーションと実機のデータの相関性が良好であるかを検討するのです。精度指標図はデータの品質を表しています。この精度指標は有機的で、合致するパラメータが増加すると、指標自体が広がります。 精度指標図をご理解いただくために、プレス成形シミュレーションを側面から検討してみます。上の指標図で、時計回りに検討を進めていきます。 まず材料および機械特性から開始します。構成要素には、R値、降伏強度、引張強度、材料モデル、ブランクの板厚などがあり、これらは「材料モデル-機械特性」セクションの三角形で表します。 トライボロジ・システムに関しても同様です。このブロックには異なる指標要素が含まれ、全体として、実部品で確認されるようなトライボロジ・システムを表しています。 指標図を時計回りに見ていくと、シミュレーション・パラメータ、工程パラメータ、形状と、精度指標が拡大します。最後には、パンチ、バインダ、ダイのレベルの形状確認を行います。また余肉、半径、壁角のレベルも確認します。図の各ブロックにそれぞれの指標や考慮すべきレベルを示しています。 次の部分は、金型の動作、結果評価および不具合基準です。最後はロバスト性を検討します。 これらはすべてシミュレーションの側面ですが、プレス成形工程を詳細まですべて表しています。実部品の実機を設定する際には、これらすべての側面をシミュレーションの設定と同一に定義しなければならないことを、ご理解ください。 現実的には材料にも配慮が必要であり、例えばブランクの大きさや板厚を確認しなければなりません。また機械特性もシミュレーションの設定と合致していることを確認する必要があります。 そしてトライボロジ・システムについても、精度指標に応じて作業します。適正な潤滑量や、ブランクや金型のサーフェスの粗さがミュレーションと同様であることも、実機の設定時に確認しなければなりません。不具合が発生してからでは、遅すぎます。 これらの詳細をすべて設定してから、トライアウトを実行します。そのため精度指標に沿って作業を行います。位置決め、金型の動作、荷重などの工程パラメータを確認していきます。時計回りに作業を進め、形状確認では、半径や壁角が正しく入力されているか確認します。 そして金型の動作のブロックでは、金型の動きを設定し、カム角度などを検証します。 結果評価および不具合基準では、われやしわを簡単に検出できますが、より深く掘り下げ、スキッドラインやスプリングバックなども確認しなければなりません。 最後のロバスト性の確認では、反復可能な結果を求めなければなりません。生産工程を設定する上で目標とすべきは、単発のラッキーショットではなく、信頼性が高い部品の連続生産です。 縮小した精度指標の問題点 パラメータが合致しないと、精度指標が狭まります(下図参照)。そしてシミュレーションと実機の結果に、差異が予測されます。どちらかの設定データが異なることで、結果の不一致が生じるのです。 精度指標図に沿った検討では、「正しいか、間違いか」は問題ではありません。「これらは全く同一であるか、否か」という観点で確認するのです。結果に違いがあると、トライアウトの設定に相違が生じるのです。この段階におけるトライアウト工程では、シミュレーションで検証されたエンジニアリング・モデルと完全に合致する実部品の生産が求められます。精度指標は、シミュレーションとトライアウトの各設定に定義されたパラメータを、それぞれ並べて分析的に検討するための手段を示しています。そしてシミュレーションとトライアウトにそれぞれ設定されたパラメータが合致するかを検証することで、問題解決を導くことができます。以下の事例から、この手法について解説します。 シミュレーション設定の分析的な定義に活用できるガイドラインがAutoFormに搭載されています。このガイドラインをご利用いただくことを、強く推奨します。シミュレーションを修正する方が、トライアウトの段階で修正を行うよりも、手間がかかりません。 ドア・インナーのドロー工程における事例 「ドア・インナーのドロー工程」では、トライアウトにて下側の角部にわれが生じました。これはシミュレーションでは確認されなかった不具合であるため、精度指標に立ち戻り、ブランクの板厚設定が合致していないことを特定しました。シミュレーションでは情報伝達のミスにより板厚を0.98mmと入力していましたが、実際のトライアウトでは板厚が0.80mmのブランクを使用していました。トライアウトのブランクに相違があるため、シミュレーションと実機の各設定の間に不一致が発生しました。 その後、実際に使用したブランクの板厚と同様の設定にてシミュレーションを再実行し、結果を確認しました。するとシミュレーションでは、その領域にわれが予測されました。つまりシミュレーションと実機の各設定が合致すると、結果も合致します。そしてこのシミュレーションの設定を活用することで、実際の成形不具合、つまり下側の角部のわれの解消について検討が可能になります。 フード・アウターの事例 シミュレーションの結果は良好でしたが、トライアウトにて不一致が発生し、角部にわれが生じた事例を紹介します。 シミュレーションにて板減が確認されましたが、大きな問題はありませんでした。精度指標に沿って調査を進めると、ダイが磨かれていなかったため、過剰な板減やわれが生じていたことが判明しました。そのため、油の注入による補正を行いました。シミュレーションでは研磨された金型面を使用しましたが、実際の面粗度はシミュレーションよりも高かったのです。デフォルトの潤滑量は1平方メートルにつき1グラムですが、トライアウトでは摩擦を減らすために3グラムを使用しました。シートが潤滑剤に浮遊している状態でも、われの不具合は解消しません。 シミュレーションの設定を変更して、ダイの面粗度と潤滑量を高く定義すると、われを正確に予測することができました。潤滑量を高めると角部の板厚に効果があることは確認できましたが、しかし高い面粗度を見込み補正するには、この効果だけでは不十分です。トライアウトで使用するダイを研磨すること、そしてエンジニアリングの初期計画の通りに作業することによって、問題解決を導きました。 シミュレーションの設定を変更してトライアウトと合致させると、シミュレーションで同じ領域にわれを予測できるようになります。しかし成功していないトライアウトの設定にシミュレーションを合致させることは「学術研究」と捉えるべきです。シミュレーションとトライアウトの設定がそれぞれ良好に定義されているか、あるいは設定が不十分であるか、いずれにせよ設定が合致したら、シミュレーションとトライアウトの結果も完全に合致します。 そのためシミュレーションと不完全なトライアウトの設定は合致させず、また、トライアウトとパラメータが安全範囲であるグリーン・シミュレーションと合致させることが重要です。この精度指標は、象徴的な図表ではありません。エンジニアリングを成功させるために必要な思考過程なのです。 1度の実機測定値と1回のシミュレーション結果を比較することで、精度に関する有効な結論をすぐに導き出せるわけではないことにご留意ください。しかし1つの実部品の測定値しかなくても、AutoFormをお使いのみなさまには、シミュレーション結果から点群を簡単に作成できる可能性があります。つまりAutoFormをご利用いただくことで、「現実的な精度査定」を実現できる可能性が広がるのです。詳細については今後の精度解説シリーズでお伝えします。 総じて申し上げると、オートフォーム社の精度指標に関するコンセプトは、測定値とシミュレーション結果が相違する根本原因を分析的に解析するための枠組みです。不一致の原因を迅速に特定できるだけでなく、トライアウトを迅速に行い、また今後のシミュレーション設定を向上させるためのツールキットとしての役割も果たします。 *カバーイメージの背景: Volvo Body Componentsのご提供 - [AutoForm-Sigmaを用いたスプリングバック低減の取り組み事例 [後編]](https://japanforming.com/autoform-sigmaスプリングバック低減の取り組み事例後編/) - ハット断面の超ハイテン構造部材をテーマに、AF-Sigmaと形状変更機能を組み合わせてシステマティックにスプリングバック低減に取り組んだ事例のご紹介。後半である本稿では、中間加工工程の曲げ角度変更と製品上面部へのステップ形状の付与について掲載しています。最後に、低減後のスプリングバック量を対象に、見込みの実現性を簡易的に確認します。 <スプリングバック量低減検討②> 初工程の加工形状の最適化検討 前編の振り返りと導入 前編で検討したフランジ壁面に対するリブ形状の追加により、壁面における壁開き量はおよそ30mmから10mmに減少した。(図9)目標とする見込み後アンダー発生の回避のためには、この変位量を7mm程度まで減少したい。本稿では、フランジを成形する2回の曲げ加工のうち、初工程の中間形状を最適化し、スプリングバック量の低減を目指す。 図9 Case1終了時のスプリングバック量(カラーレンジ±9mm、法線方向の変位量) 初工程の加工はクラッシュフォーム加工で、金型形状は図10に示すとおりである。 図10 初工程の加工金型形状 設定手順 両側のフランジは中間加工であるため比較的自由に角度を変更することができる。初工程での角度を変化させることにより次工程でフランジ壁面に導入される曲げ量やその分布が変化する可能性がある。本稿では、初工程での加工角度をSigma変数として設定し、最終製品のスプリングバック量の最小化を検討する。 図11 初工程加工角度のSigma変数化設定 初工程における加工角度の変数化設定は図11に示すとおりである。初期の工程設計では水平に対して30°のフランジ角度で初工程を加工しているが、それぞれ角度が深い方向に10°、浅い方向に20°までの範囲で最適な加工角度を検討する。なお、角度を深くする方向の変化については、次工程にパネルを乗せた際に担ぎが発生しない10°を限度とした。初期状態では両フランジの角度開き量は同一だが、ここではそれぞれの開き量に対するスプリングバック量の応答が異なることを想定して、独立の変数として検討する。 図12 角度変化量のSigma設定 計算結果の評価 以下に初工程の加工角度変化量に対する、両フランジのスプリングバック量の応答を示す。本図では縦軸に示された負の値がスプリングバック、正の値がスプリングゴーを表している。横軸は初工程加工角度の変更量を示しているが、同一方向に回転軸を取っているため、切り欠きのあるフランジでは正が壁開き方向、負が閉じ方向を表しており、切り欠きのないフランジでは正が壁閉じ方向、負が開き方向を表している。 図13 初工程加工角度変化量に対する量フランジのスプリングバック量の応答 図13左の散布図から明らかなように、切り欠きのあるフランジは初工程でより深く加工したほうが最終製品におけるスプリングバックを低減できることができる。一方、図13右の散布図からは明確な傾向が得られないものの、初工程で約2.5°深く成形するのが今回の検討範囲では最も有利な結果ということができる。今回の結果は比較的バラつきが大きいため、最後にSigma解析にて定義した最適開き量での確認解析を実施した。 図14 Case1とCase2の結果比較(カラーレンジ±4mm、法線方向の変位量) 図14はリブ追加直後の結果と、初工程での加工角度をオリジナル設計からそれぞれ10°、2.5°深くした結果を比較したものである。変化は小さいものの、スプリングバック量が最も大きい部位におけるスプリングバック量が9.5mmから9mmに低減されている。 まとめ ここでは、初工程での曲げ角度を最適化することで、スプリングバック量の低減を検討した。前項と比較して変化量はわずかではあるものの、最終曲げ終了後のスプリングバック量を低減することができた。 <スプリングバック量低減検討③> 部品上面へのステップ形状追加検討 これまで検討したリブ形状の追加と、初工程の加工角度の最適化によりフランジ壁面における壁開き量はおよそ9mmとなった。下図に検討②までの検討結果を示す。 図15 Case2終了時のスプリングバック量(カラーレンジ±9mm、法線方向の変位量) ここまではフランジ壁面のスプリングバックに対して、フランジの加工条件と製品形状の変更を検討した。スプリングバックによる壁開きは製品上面の応力や剛性も影響を持つ可能性を考え、本稿では製品上面に対するステップ形状の追加を検討する。 設定手順 製品上面には他部品との組み付け位置が存在することから、当該部分を避けた領域の高さを変更する。図16に黄色で示した領域が実際の面移動領域、緑色で示す領域はオリジナル形状との徐変領域を表している。面の変形量は、凹凸両方を考慮できるようプレス加工方向に±5mmの範囲とした。 図16 ステップ形状の設置範囲 図17 ステップ形状高さのSigma設定 計算結果の評価 図18にSigma計算によって得られたステップ高さとスプリングバック量の応答を示す散布図、およびそこから作成した簡易的な1次元のプロセス・ウィンドウを示す。横軸がステップ高さを表し、縦軸が製品内で最大のスプリングバック量を取る部位での法線方向の変位量を示している。プロットの背景とプロセス・ウィンドウはそれぞれスプリングバック量±7mmをしきい値としている。 図18 ステップ高さとスプリングバック量の関係図 以上の結果から、ステップ高さ(深さ)約-0.7~-2.1mmの形状を付与したときに、スプリングバック量7mm以内を達成することができる見込みがある。この結果から、ステップ高さを-1.5mmとした確認解析の結果を図19に示す。 図19 ステップ高さ-1.5mmでのスプリングバック結果 (カラーレンジ±7mm、法線方向の変位量) 当初目標は、見込み変形を入れても曲げ刃にアンダーが発生しない程度までスプリングバック量を低減することである。そこで、Compensatorを使用して簡易的な見込み変形を行い、現状のスプリングバック量をそのまま見込んだ場合、アンダーが発生するかどうかを確認した。なお、使用した見込み補正係数は1倍、つまり発生したスプリングバック量をそのまま正負反転して見込み変形を適用した。 図20 見込み後の製品形状におけるアンダーカット評価 図20に示す通り、3回の検討を経て、見込み変形が現実的に可能な範囲までスプリングバック量を低減することができた。 まとめ 今回の取り組みでは、スプリングバック量を低減できる可能性がある形状パラメータをSigma変数として設定し、結果の分析を行った。それぞれの形状変更について適切な目標値を定め、最適な深さや角度を求めることで、当初目標である見込み変形が可能な程度までスプリングバック量を低減することができた。 DieDesignerとSigmaを活用し早期検討することで、初期の製品形状がリリースされた時点で見込みの可否判定から、適切な設計変更提案までを短時間かつ体系的に実施することができる。 ※ 尚、本稿の内容は実際の事例に基づき作成されていますが、部品形状および結果は一部変更して記載しています。 - [プレス成形とストロベリーパイ](https://japanforming.com/プレス成形とストロベリーパイ/) - ロバスト性について 過去の記事で、ロバスト性や工程の信頼性について、そして工程に対する入力パラメータの変化に応じて製造物がどのようにばらつくか、何度か触れてきました。そして本稿では、このばらつきをどのように識別できるか、詳しく説明します。 プレス成形工程におけるばらつきは、われやしわ、そして治具等から測定することができます。このばらつきは、図表や信号色のカラー・プロットで表します。 入力が意図せずにばらついてしまい、結果的に工程のロバスト性や生産品質にばらつきが発生しうることについては、 業界内でも抽象的な概念にとどまっており、具体的な認知が進んでいません。 抽象的な概念を比喩でわかりやすく表現してみましょう。まず市場で新鮮なイチゴを購入するとします。このイチゴでパイを作ります。インターネットのレシピによると、 500gの新鮮なイチゴが必要です。市場では、丁度よく500gのイチゴのパックが販売されていました。 500gのイチゴのパックを購入した場合、言葉の定義上当然ながら500gのイチゴを手に入れたと、誰もが信じることでしょう。一般的に代金は物品の対価として支払うものですし、この場合500gのイチゴに対する対価を支払って500gのイチゴを持ち帰り、パイを焼くと確信しています。帰宅後レシピの通りに、イチゴを他の材料と混ぜ合わせ、オーブンにて指示通りの時間、パイを焼きました。しかし結果は期待に反するものでした。 Source: 何が悪かったというのでしょう。計画から意図した結果まで、つまりこの場合は、イチゴの購入からレシピの通りにパイを焼くまで、実はばらつきの原因となりうるものが数多くありました。レシピ(エンジニアリング)が悪いのでしょうか?それとも材料(イチゴの劣化、または重量が過多あるいは過小)の問題でしょうか?もしくはイチゴ以外の材料や、その組み合わせに不具合があったのでしょうか? これらの入力(材料の品質や重量)が実際にはどうであったのか、きちんと把握しなければ、正確に判断することはできません。まずイチゴについて考えてみましょう。レシピの他の側面からも、同様の精査が必要かもしれないことにご留意ください。 仮にパイの失敗に対して最も影響のある入力がイチゴの重量だとしたら、500gよりも少ない重量に応じてレシピを調整することで、問題を解決できる、と考えられます。再度市場まで出向き、別のイチゴのパックを購入し、パイを焼いたところ、今度はパイがパサパサに乾燥してしまいました。 市場で販売しているすべてのイチゴのパックの中で、たまたまこの2つだけが誤っていたのかもしれません。しかし現実的には、パック詰めされたイチゴの重量には一定のばらつきがあると考える方が自然です。 農家では、規定された重量のイチゴを詰めるよう最善を尽くしましたが、イチゴ詰めの工程には意図しない工程のばらつきが発生する余地は充分にありました。このような工程のばらつきは、自然なことですしまた普通です。有機的に育ったイチゴは、寸法や形状が均等ではありません。また含水率も一定ではなく、あるいは容器への詰め方にもばらつきがあるはずです。 すべてのばらつきを考慮するようなレシピがあれば、それは非常に有意義なことです。パイの品質を正確に評価し、重量のばらつきに対する許容範囲を把握できたら、より美味しいパイを焼くことができるようになります。 レシピには、間違いはありません。イチゴが規定の重量だという仮定が誤りだったのです。 エンジニアとしての私たちは、発注量が納品量と完全一致すると、常に仮定していないでしょうか。イチゴの重量を再計測し、含有量を正確にコントロールすべきだという考えもあるでしょう。しかしながら実際のプレス成形工程の現場では、個別に制御しきれない入力のばらつきが無数にあります。それらをきちんと考慮することもまた重要です。 意図しないばらつきがある入力パラメータには、過去のブログ投稿で触れたことのあるものだけでも、材料の板厚、シート材の機械特性、潤滑、ブランクホルダ力、ブランクの位置等々、無数にあります。意図しないばらつきによって、製造工程中に、想定外の品質の不具合、不良品率の増加、プレスのダウンタイムなどが発生する場合があります。 美味しいイチゴのパイの作成に成功するか、失敗するか、パイを焼く前に知りたいと思いませんか。 - [最悪のケースを想定した材料の使用は最善策か?](https://japanforming.com/材料特性-ロバスト-プレス成形/) - 材料特性の変動に耐えるロバストなプレス成形工程を実現するには 自動車や家電などの構成部品を設計する場合には通常、衝突事故、悪天候、より高い積載荷重といった最悪の条件下においても部品が安全であることを検証します。同様に、設計したプレス成形工程も、最悪の条件下にて問題なく稼働することを確認すべきです。この意味で非常に汎用的なパラメータとなりうるのは、シート材です。設計したプレス成形工程が、生産のライフサイクルを通じて、材料となるすべてのコイルから製品を確実に生産できるものであるかを確認したいとは思いませんか。 有限要素法によるシミュレーションは確定的です。シミュレーションはコンピュータのコードを基礎とします。つまり入力データは一意的で、特定の条件下における結果を計算します。しかしながら、実世界は常にバラツキがあります。特定の条件下のシミュレーションでは、実世界で発生しているすべてのバラツキを反映させることができません。 シート材の機械特性にも、多くのバラツキがあります。サプライヤによって差異があり、またバッチごとにも異なり、そして各生産拠点によっても違いが発生します。シート材の生産においても、原料を加熱炉で溶かし、合金化、熱処理、圧延工程などの工程を経る中で、さらにバラツキが伴います。そのため、引張強度、降伏応力、r-値などの材料パラメータにも、バラツキが伴うことが予測されます。このようなバラツキに対するプレス成形工程の安全性も検証すべきなのです。 以下の図は、十分に検討されていないプレス成形工程を示しています。 材料特性の基準値を使用したシミュレーションでは、工程が安全であることを示しています。しかし特定の材料特性値の組み合わせによっては、安全性が低下し、工程に不具合が発生します。このような工程では、あるコイルでは問題なく生産できますが、一方、同じサプライヤでも異なるバッチのコイル、あるいは異なるサプライヤのコイルでは、生産中に不具合が発生する可能性があります。 そこでシート材の特性に伴うバラツキに対しても、ロバストなプレス成形工程を設計する必要が生じます。以下に示すとおり、安全なプロセス・ウィンドウがパラメータのバラツキ範囲の全域をカバーする状態が理想的です。 良い点:機械特性のバラツキの許容範囲が標準化されています。 材料メーカーが情報提供を行い、また材料等級も業界基準に準じます。これによりシミュレーションではファースト・レベルの精度が実現できます。例えば、材料タイプ DP600(HCT600X) を例にとると、値は以下の通りです。 降伏強度: 340-450 MPa 引張強度: 600-650 MPa 硬化指数nのバラツキや異方性を定義するr-値の変動は、大半が不明です。通常はシミュレーションでは最小値が与えられます。あるいは業界標準から算出する場合もあります。 悪い点:最悪のケースの材料を一意的に定義することはできません。 製品の設計を検討する場合、稼働負荷や衝突試験から最終製品性能を計測します。そのため、最悪のケースの材料については、「強度が弱い」または「剛性が低い」と、非常に明確に定義することができます。その一方で、プレス成形の状態は一意的ではありません。プロセスであるため、最悪の材料値を定義することは困難なのです。またユーザーは材料情報を得ることができ、さらにはYやTの強度が最大値や最小値と併せて表示されることを予期しているため、定義は一層困難です。その場合最悪の材料値をユーザー自身が定義しなければならない場合すらありますが、中々容易ではありません。 軸対称カップの絞りを検討するならば、ガイドラインを定義することは可能です。硬化指数やr-値が低いと、絞り深さが浅くなります。しかし高度な技術を伴う製品形状や工程はとても複雑なため、どのようにパラメータを組み合わせると最悪な状態となるか、事前に予測することは非常に難しいです。 解決策は? 材料パラメータのバラツキによる影響を考慮することで、プロセスの実行可能性を評価します。一意的な状態ではなくプロセス・ウィンドウを考慮することで、ロバストな工程を検証できるのです。理想的な検討の進め方としては以下の様になります。 材料パラメータのバラツキを定義します。 どのパラメータがバラツキますか? バラツキの大きさはどの程度ですか? 材料パラメータを統計的に組み合わせます。 パラメータはどれぐらいの幅でバラツキますか? 安全と確認されるまで、シミュレーションは何度必要ですか? シミュレーションを開始すると、結果がひとつのファイルに自動集約されます。 手作業による計算がないよう効率的に使用できますか? 完了したジョブから情報を直接収集し、ひとつのファイルにまとめることができますか? シミュレーションを評価するツールを使用します。 複数のシミュレーションから結果を同時に評価できますか? 複数のシミュレーションから結果を収集し、工程のロバスト性を数値やコンター図などで表示できますか? 引用 「基準の材料カードよりも、むしろ最悪のケースの材料を適用したシミュレーションの結果が良好だったというご指摘をいただくことがあります。これはつまり一意的な最悪の材料カードに関するコンセプトを見直すべきだと解釈しています。目指すべき目標は、シート材の材料特性のバラツキをきめ細かく網羅した、より幅広いプロセス・ウィンドウを確立し、よりロバストな工程を設計することにあります。」 アルペル・グンナー アプリケーションエンジニア AutoForm Dortmund - [シミュレーションにおけるトライボロジの重要性を認識させたトライボフォーム社](https://japanforming.com/シミュレーションにおけるトライボロジの重要性/) - 大学の研究プロジェクトから国際的な成功までの軌跡 トライボロジに精通した2名の若者がシミュレーション市場を席巻 これは一般家庭出身の、しかし尊敬に値する2名の若者の話です。TriboFormは、シミュレーション業界で国際的な成功を収めたAutoFormの1モジュールとして認知され、今やボルボ社やダイムラー社といった大手自動車メーカーでも採用されています。しかし彼らはどのように、ここまで至ったのでしょう?この投稿では、この若者たちの物語をお伝えします。 主人公となるのは、トゥウェンテ大学の博士課程を専攻しているヨハン・ホル、そして企業買収について深い理解のあるヤン・ハーマン・ヴィーベンガ、このごくありふれた家庭で育った2名の若者です。ヤン・ハーマンは、ロバストな最適化およびプレス成形工程の博士課程を専攻していました。彼らは共に研究室で学ぶうちに、起業という形で彼らのスキルを役立てることができると考えました。 彼らは若きコンサルタントとして、企業訪問を重ねました。当初はロバストな最適化のソリューションに関するコンサルテーションを専門としましたが、むしろトライボロジに関する専門性について、お客様の関心が集まったのです。実際のところ彼らの目の前には、シミュレーションの新たな市場が広がっていました。 トライボフォーム社テクニカル・プロダクト・マネージャのヨハン・ホルは、以下のように述べています。 「トライボロジに関する案件は増え続け、ついには、ダルムシュタットで行われた権威あるトライボロジ会議 TriboForum基調講演の依頼を受けるまでになりました。主要OEMが揃って参加したこの会議では、業界を主導する大企業の多くからソフトウェアについてお問い合わせやご依頼をいただき、トライボフォーム社が本当の意味で始動した瞬間でした。そして私たちは、最適化戦略からトライボロジに完全に方向転換する決断を下したのです。そして社名もインプルーブ・ソリューション(Innprove Solutions)からトライボフォーム(TriboForm Engineering)へ変更しました。その当時、シミュレーション業界でトライボロジを専門的に扱う会社は皆無でした。事実上、我々が最初にこの穴を埋める存在となったのです。」 ビジネスを主導する立場として、これはブルー・オーシャン戦略の最たる成功例と言えるでしょう。トライボフォーム社は、2013年に正式に創業しました。ヨハン・ホルとヤン・ハーマン・ヴィーベンガは、当初、トライボフォーム社にて週1日程度、有償のコンサルティング・プロジェクトを提供していました。博士課程の修了後、会社を軌道に乗せるため、仕事に没頭しました。 彼らは機運に恵まれただけでなく、以前のコンサルティング業務で培ったネットワークにも支えられ、トライボロジに関する講演依頼が次々と舞い込むようになりました。「当時のお客様にとっては、すべてが新しいことでした。お客様は、ご自身に問題を抱えていることすら、認識がなかったのです。」とホルは述べます。これは業界にとって、まるで「目からうろこが落ちる」ようでした。 これまでは、数多くの実験を手作業で行い、複数の条件下で「最適な」摩擦係数を検討することが通例でした。しかし摩擦に関しては、固定値ではない何らかの数値が必要だと、多くの技術者が疑問を感じていたのです。 TriboFormモデルを使用して摩擦係数を調整した場合の実効性やシミュレーションへの影響を確認したいという要望が企業から相次ぎ、TriboFormの需要はすぐに広がりました。そして驚くべきことに、未だ製品すら存在しない状態で、事業が本格始動したのです。彼らにはいわゆるTriboFormソルバーを提供しました。2015年当時、これは実用的な解決策でした。 しかし問題は、お客様がすべてを自社で検討したいと希望されたことです。コンサルタントが、独自の手法でトライボロジの影響を実証する手法は、敬遠されました。 そのためトライボフォーム社では、対応策となるソリューションを開発しました。TriboFormソフトウェア・パッケージとして、TriboForm Analyzer、AutoForm用のTriboFormプラグイン、およびLS-Dyna、Pam-Stamp用のプラグインの提供を始めたのです。 今ではこのソフトウェアを利用することで、お客様ご自身がトライボロジ・システムを選択して、ファイルへエクスポートすることができます。このファイルはTriboFormプラグインを通じて、例えば AutoFormへインポートして使用できます。これにより、摩擦係数の固定値を適用していた従来の手法が、完全に刷新されました。この新たな手法は『TriboForm摩擦モデル』として、現場に大きな改善をもたらしました。 AutoFormの金型形状に摩擦モデルを適用します。それからシート材の粗さ、潤滑剤、機械設備を、まとめてモデルへ設定します。簡単に言い換えると、シート材を拡大すると、谷間や山脈のような凹凸を見ることができます。これは「粗さ」の係数に置き換かえることができます。TriboFormでは、これをプレス成形中の摩擦計算に利用します。 そして今日のトライボフォーム社は、市場に確固たる存在感を示しています。そしてプレス成形業界に大きな変革をもたらしました。 シミュレーション業界では、Apple、Google、Microsoftに匹敵する成功事例です。7名の社員が結託したトライボフォーム社は、若々しく、活気にあふれ、そしてソフトウェアの開発に非常に意欲的に取り組んでいます。 - [シュコダ社のリバース・エンジニアリング – トライボロジを考慮したシミュレーション](https://japanforming.com/トライボロジー-シュコダ社/) - お客様のプロジェクトからトライボロジの論争を検証 シュコダ社およびトライボフォーム社による非常に興味深いプロジェクトが最近完了しました。このプロジェクトの面白い点は、生産現場で採用されている実際のメソッドを、TriboFormシミュレーション・モデルへ取り入れたことです。 トライボフォーム社テクニカル・プロダクト・マネージャのヨハン・ホル、そしてオートフォーム・オランダ社ジェネラル・マネージャのマーク・ランブリクスに取材した裏話を紹介します。 OEMが品質を高めるための新たなアプローチを模索する中、トライボロジは大きな注目を集めています。シュコダ社のプレス成形生産部門では、トライボロジの影響について、すでに対策を講じていました。経験やノウハウをもとに主に潤滑を制御することで、摩擦の成形不具合を解消し、工程における不確定要素の削減に成功しています。 プレスラインが変更されると、技術者は通常、試行錯誤を繰り返しながら対応します。「ここで生じた難題は、このような対策をシミュレーションへ組み込み、より大きな案件に適用することでした。」と、トライボフォーム社のヨハン・ホルは回顧します。 フロント・フェンダの挑戦 「シュコダ社は、潤滑剤の種類や分量が最終部品の品質に影響を及ぼすことについて、しっかりと認識していました。」と、ヨハン・ホルは説明します。「例えば、コイルを受け取ると、まず最初にコイルを巻き戻してブランクを作成します。場合によっては、洗浄や潤滑剤の塗布によって、表面の摩擦を緩和することで、プレス成形中のわれを防止します。各部品の手法をシミュレーションによって数値的に統合し、生産現場全体を事前検証することで、新たなレベルの製品品質を実現することが、大きな課題でした。」 TriboFormはシュコダ社ファビアのフロント・フェンダの改善に関するプロジェクトを請け負いました。フロント・フェンダは比較的深部にあり、われや面ひずみなどの不具合が、特に大きな問題となっていました。 「これがこのプロジェクトの興味深い部分です。各部品に特化したTriboFormライブラリを作成し、PamStampおよびAutoFormにてプレス成形シミュレーションを実行しました。その結果、実機を正確に模倣できたのです。これは実際の生産現場の結果と相応に一致していました。」と、ヨハン・ホルは述べています。 このプロジェクトでは、トライボフォーム・チームはTriboForm Analyzerを設定し、摩擦制御の効果についてシミュレーションを実行しました。「以前のシュコダ社では、潤滑量の変化に関する実験を行っていました。今では実験の代わりに弊社のツールを活用し、シミュレーションにて潤滑量を幅広く確認しています。」と、ヨハン・ホルは言います。 オートフォーム社のマーク・ランブリクスは、こう言い添えます。「成形工程の予測精度が向上したのです。シュコダ社では、これまでクーロン摩擦の固定値で工程のシミュレーションを行っていましたが、このフロント・フェンダでは、すべての基準を満たしてしまい、シミュレーションでは、われを確認できませんでした。しかし生産現場では、通常通りの潤滑量(0.6 g/m2)を適用すると、部品にはわれが発生しました。しかし潤滑量を増やすことで、この不具合が解決されたのです。シミュレーションにTriboFormを併用することで、この挙動を予測することができるようになりました。潤滑剤の減量に起因する同様の不具合と、増量による不具合解決を、シミュレーションで再現できたのです。従来のシミュレーションでは、クーロン摩擦モデルを使用するため、潤滑量を考慮することはできませんでした。しかしながらTriboFormを活用することで、潤滑量を検討することができるようになったのです。これはまさに画期的でした。」 このように、流入予測とシミュレーション精度の向上が実現しました。 課題となっていたフロント・フェンダは、すでに生産が始まっています。かつてのシュコダ社では、われが解消されるまで潤滑剤を増量することで、不具合をコントロールしていました。しかしこのプロジェクトを通じて、日常的に直面している問題を、シミュレーションで再現することに成功しました。 「仮想世界と実世界が一致したのです。」と、ヨハン・ホルは表現しています。「シュコダ社ではこの体験をきっかけに、部品や金型開発の早期段階から数値ツールを活用し、このような不具合を特定するようになりました。ツールを活用することで、部品の潤滑に関する感度や品質も解析できます。さらにはコーティングの影響も予測することが可能になりました。」 鋼材のコーティングには、最終部品の品質に影響をおよぼすトライボロジ効果が、例外なくあります。 TriboForm Analyzerでは、鋼材のブランクに適用したコーティングのタイプを検討することができます。 「Analyzerのライブラリを適用することで、一般的な亜鉛のコーティングから最先端のコーティングまで、豊富な種類を選択できます。そのためシミュレーションでは、例えば複数の潤滑やコーティングを組み合わせることで、最適なシミュレーション結果を引き出すことができるのです。」とヨハン・ホルは述べています。 事業事例の結果 「TriboFormを併用することで、成形性、流入、スプリングバックといった品質基準に関連したプレス成形シミュレーションが、より確実かつ現実的に実行できることが、この事例によって示されました。これはOEMにとって、非常に有意義です。なぜなら、われやしわが発生したパネルは、破棄しなければならないためです。またそのためにプレスを一旦停止し、再調整する必要も生じます。究極的には、部品の破棄やプレスラインのダウンタイムによる、膨大な時間と費用の無駄を省くことにつながります。」とマーク・ランブリクスは述べます。 「この特定の部品について言えば、シュコダ社は、1つの自動車モデルの1つの部品につき、総額で約80 k€のコスト削減を見込んでいます。これは非常に大きな削減です。最新鋭のシミュレーション技術を適用することで、会社は巨大な投資利益を得ることができることが証明されました。」 「シュコダ社では、主要なシミュレーション・ツールとしてAutoFormを使い、併せてTriboFormも活用することで、生産予測を良好に行っています。 」 マーク・ランブリクス, ジェネラル・マネージャ オートフォーム・オランダ社 - [分析的工程改善 – 試行錯誤のループ数を削減](https://japanforming.com/分析的工程改善/) - シミュレーションが正しく機能するには 「高級車」の位置づけにある自動車は、買い手の購買意欲が高まるようなスタイルで作られています。市場で成功を収めるために自動車メーカーは複雑なデザインを極限まで追求しています。部品形状はより複雑になり、また新たに先進的なシート材も使用するため、プレス成形工程の設計は非常に複雑になってきています。エンジニアにとってシミュレーションは複雑な工程を扱うための手段ですが、すべての要件を満たさなければ適正なソリューションを実現できないことが課題となっています。 これを「試行錯誤型」で進める場合、改善には時間がかかり、またその作業担当者によって成果は大きく異なります。担当者は例えばバインダ荷重の値を修正し、シミュレーションを再度実行します。そしてシミュレーション結果からわれのない高品質な部品を生産できるバインダ荷重値が選択されているかを判断します。選択した工程設定の計算結果が望ましいものではない場合、バインダ荷重を再度修正して、シングル・シミュレーションを今一度実行します。こうして繰り返しの計算となるため、より分析的にソリューションを求める工程が必要となってきました。このような背景から今日、オートフォーム社により分析的工程改善(SPI)の手法が開発されたのです。 この分析的工程改善は、部品の品質に対して、どのデザイン・パラメータがどの程度の影響を与えるのかを特定することで、成形工程を効率的に最適化する標準手法です。例えばわれやしわがないことや、十分な引き伸ばしといった目標結果を目指すことで、品質の高い生産を導くことができます。このように、部品の成形に最も影響があるデザイン・パラメータを、早期の設計段階から特定できるのです。 本質的な目標は、試行錯誤のループ数を削減すること、またソリューションに対する見解の透明性を保証すること、そして作業内容の情報交換を円滑に行うことです。それはより信頼性が高く、また個人の資質への依存が軽減され、かつ人的エラーを回避できる、確実で最良の方法を、迅速に確立できることを意味します。 これを実例で検証しましょう。以下の図はインナー・デッキリッドです。シミュレーションの結果に、われの不具合が含まれることが問題となっています。 このわれの不具合を解決しなければなりません。 シミュレーション中にわれの不具合を解決できなければ、どどうしたらよいでしょうか。定義されているバインダ荷重値は1800 kNです。従来の試行錯誤型では、多くの場合、部品の歩留まりが最適化されていません。バインダの荷重を修正してからまたシミュレーションを実行し、結果を確認し、また修正を行います。これには相当な労力を要します。 さらには、これが良好な結果をもたらす保証もありません。 最初に結果が良好になった時点で、それが最良のソリューションだとユーザーが判断したら、仮にそれが理想的な値ではなかったとしても、この検討は終了します。 反対に分析的工程改善を通じて、最適化が実現する場合もあります。 ユーザーはまず目標結果を指定します。本稿ではわれのない部品とします。そしてデザイン・パラメータを選択します。本稿の場合はバインダ荷重です。現在値は1800 kNですが、これを変数として考慮し、最小値は1000 kN、最大値は2000 kNとします。 そして分析的工程改善解析を開始します。ソフトウェアは複数のシングル・シミュレーション(Sigma計算)を同時に実行し、複数のバインダ荷重やその影響を計算します。結果の算出後、すべてのSigma計算がひとつのシミュレーション・ファイルに保存されるため、まとめて評価することができます。また計算を中断されることはないため、その間、シミュレーション担当者は他の業務に対応できます。 デザイン・パラメータごとのプロセス・ウィンドウを使用しすべての不具合を解決できる条件を検討します。緑のプロセス・ウィンドウは「健全」なバインダ荷重の設定を表し、すべてのわれは解決されていることを意味します。赤はわれの不具合が発生しうることを意味します。 プロセス・ウィンドウの表示がガイドとなるため、シミュレーション担当者は解析範囲内のバインダ荷重を迅速に検討できます。さらにはバインダ荷重を最良に定義してから、結果を3Dビューで表示することも可能です。解析したデッキリッドについては、緑のプロセス・ウィンドウが1000 kNから1240 kNまでとなり、必要な限界を満たします。 最終結果として、バインダ荷重が1100 kNにて、致命的なわれが発生する領域がないと確認されました。 分析的工程改善の手法ではすべてをデモ実演できるため、工程をより詳細に理解することが可能になります。シミュレーション担当者は、試行錯誤せずに「効果的な方法」を見出すことができるため、調査を掘り下げずとも、さらなる工程改善の可能性を容易に特定することができます。現在の結果よりも必要限界に近い、より良好なソリューションがあるかもしれません。 分析的工程改善ではデザイン・パラメータの理想的な範囲を解析し、最も実行可能性が高い工程を実現するための道筋を検討します。また複雑な部品形状や高強度材、さらにはアルミを扱う上でも、この分析的工程改善は効果的に利用できます。分析的工程改善は、品質に関する要求の対応に優れています。無論、これらの結果はすべて迅速に適用され、開発時間の短縮を実現します。 以上のことから、シミュレーション・エンジニアは分析的工程改善を活用することで、より良好な結果を迅速かつ確実に導き出すことができ、またその結果を報告および情報交換することも容易にできます。 またR7より分析的工程改善はAutoFormソフトウェアの標準機能として提供されております。 - [アルミ合金の熱間プレス成形シミュレーション - コンステリウム社はAutoForm-ThermoSolverで業務改善を実現](https://japanforming.com/アルミ合金-熱間プレス成形-コンステリウム社/) - 今回はフランスのブログに投稿された記事をご紹介します。アルミ合金の熱間プレス成形シミュレーションで実際に算出された結果をご覧いただけます。 ここに紹介するプレス成形会社は、革新的なアルミ製品の設計・製造を手掛ける大手サプライヤ、コンステリウム社です。このような部品の成形は、自動車部品のプレス成形業界で注目の話題ですが、多くの自動車メーカーでは、以下に紹介するとおり、数多くの課題を抱えています。 コンステリウム・グループには、欧州、北米、中国に22か所の生産拠点があります。中でもフランスのヴォルップに所在する研究センターは、パッケージング、航空宇宙、自動車業界における、先進的なアルミ二ウム・ソリューションの拠点となっています。 自動車業界に関しては、コンステリウム社はホワイトボディのハングオン部品について、全製品群を開発するなど、自動車メーカーやサプライヤによる軽量化への取り組みをサポートしています。また特に燃費向上や二酸化炭素の排出削減に関するサポートにも注力しています。 Strongalex©やSecuralex©等の構造部品に適用する現況のソリューションに加えて、コンステリウム社は新たに高強度合金(series 6xxx)および超高強度合金(series 7xxx)のUltralex©を開発しました。 コンステリウム社はUltralex®の部品を成形する上で、サプライヤや協力会社の支援のもと、 400~500°Cのシート処理による熱間プレス成形技術を使った社内および社外の実験を行いました。 コンステリウム社のBピラーの熱間プレス成形工程では、工程に必要な温度に近づくまでの数分間、ブランクを加熱します。 薄板をプレスに移動後、室温の金型で(冷間)プレス成形を行い、金型が閉じた状態のままクエンチングします。 このような実験室の環境では、プレス成形サイクル全体は20秒もかからずに完了しますが、加熱工程全体には、各工程に8分を要します。 フランスのヴォルップに所在する研究センターでは、2011年からオートフォーム社のプレス成形シミュレーションを利用しています。熱間プレス成形シミュレーションのソフトウェア、AutoForm-ThermoSolverで作業を行い、結果の妥当性はプレスのトライアウトと関連づけて検証しています。 コンステリウム社では、シミュレーション・ソフトウェアを最大限に活用し、最新鋭の合金を使い、実在するプレス成形部品の熱間プレス成形シミュレーションを実行することで、お客様にさらなる付加価値を提供しています。 AutoFormシミュレーションに必要なデータ項目は、以下の通りです。 複数の温度で測定した応力カーブ 熱間加工用材料パラメータ(熱容量、熱伝導率、等) 熱交換パラメータ この他にも様々なオプションがあり、どのようなタイプのアルミ合金の成形挙動でも説明できます。例えば、降伏軌跡、FLD、あるいは温度依存のr-値までもを設定することができるため、どのような材料でも指定可能です。工程を定義する間、原則的には、すべての金型やステップが考慮されます。 AutoForm-ThermoSolverにて、熱間プレス成形工程のシミュレーションを実行すると、例えば製造工程全体におよぶプレス成形の温度履歴(下図を参照)等、大量の結果変数が算出され、それらを表示することもできます。 コンステリウム社では、下図のように、計算結果と実測値に良好な関連性を確認しました。この図は、実測とシミュレーション結果の板厚分布を比較しています(結果は赤色、実測は白色)。AutoForm-ThermoSolverを活用することで、最新鋭製品の販路開拓に新たな道が開けました。ヴォルップ研究センターの成果によって、デジタル技術の利点や付加価値をお客様に改めて認識していただくことができ、またコンステリウム社の最新鋭アルミ合金を使用した部品の熱間プレス成形工程のシミュレーションについても、その可能性を充分に示唆することに成功しました。 コンステリウム社では、AutoForm-ThermoSolverを活用することで、最新鋭製品の販路開拓に新たな道が開けました。 - [シミュレーション - 速度と精度の両立](https://japanforming.com/シミュレーション速度と精度の両立/) - 精度に関する日本市場の誤解を紐解く – コーポレート・テクニカル・ディレクタ、バート・カーレアのインタビュー 1995年当時、AutoFormの市場参入は、正に革命でした。このソフトウェアは、プレス成形シミュレーションの実行時間を大幅に短縮し、お客様を驚かせたのです。AutoFormが高速であること、特にわれやしわの回避に関する検証工程の速度が、大きく評価されました。 「重要なのは、20年前、AutoFormの計算速度が、信じ難いほど速かったということです。」オートフォーム本社コーポレート・テクニカル・ディレクタであるバート・カーレアは、こう述べています。われやしわを正確に描写あるいは予測できる曲げ補正メンブレン(BEM)要素によって、高速な結果算出が可能となり、試行錯誤型のアプローチが促進されました。ただしこれはスプリングバック等の計算には適していません。約10年前に弾塑性シェルが導入され、スプリングバックの予測精度も飛躍的に向上しましたが、AutoFormの速度は、精度を代償としている、という不当なイメージが業界内にはびこりました。 試験やレビュー、活用事例などを通じて、この見解は不当であるという認識が広がりつつありますが、ここで改めて、この速度と精度の問題について考察します。 正しい理解 - 第三者によるレビュー 「イメージ戦略の観点から申し上げますと、弊社がコンセプト評価に重きをおいていた過去のイメージに、競合他社は固執しています。弊社の初期のイメージばかりが先行していますが、実際のところ、我々はこの20年で大きな進化を遂げています。この古いイメージは今や過去のものです。」とカーレアは述べます。 「過去10年のNUMISHEETベンチマークをご覧ください。弊社製品の精度は、少なくともすべての競合他社製品と同等です。このとおり、精度について全く問題はなく、またスプリングバックの予測精度についても同様です。NUMISHEETが信頼できる点は、これがブラインド・テストであることです。シミュレーションを設定および実行して、その結果を送信します。弊社のソフトウェアについては、問題が発生しようがないと確信しているため、毎度大きな自信を持ってテストに臨んでいます。弊社のテスト結果は常に他社と同等であり、またほぼ全ての結果計算は他社よりも短時間です。NUMISHEETでは、通常、最終検証を主に行いますが、弊社製品の精度は他社製品と同等であることが証明されています。」とカーレアは述べています。 材料モデルおよび精度 つまりAutoFormは業界随一の速度を誇り、また精度も他社製品に劣りません。「どの製品でもアルゴリズムや値計算法を有効利用し、またすべての製品には想定があります。」とカーレアは続けます。「しかし弊社の想定は、時に他社とは異なります。多くの会社では、100の事例から特に精度の優れた5つを抜き出し、それを喧伝します。しかし弊社は計算時間において、どの競合よりも優れています。そして精度についても、少なくとも他社製品と同等であることに間違いはありません。」 使い勝手の良さ 優秀なツールの共通点として、AutoFormは単に使えるツールでなく、実のところ、簡単に使えるツールなのです。「AutoFormの計算結果は、ユーザーに依存する部分が少ないのです。」とカーレアは続けます。「ソフトウェアを操作するユーザーの専門性を試すものではなく、むしろ、ソフトウェアの性能、そしてユーザー・ガイダンスやデフォルト設定がカギとなるのです。」 「エラーの原因は、極めて限られています。そのため、ソフトウェアが提示する明快なガイドラインに沿って操作すれば、正確な結果を簡単に算出できる、と言えるでしょう。他社のソフトウェアでは、結果に大きな差異が生じる場合があります。」 オートフォーム社の企業理念である、裏側の数値計算に関する詳しい知識を必要としない、使い勝手のよいソフトウェアの開発について、カーレアは説明を続けます。「プレス成形工程の問題を解決することだけを考えているエンジニアの気持ちに寄り添うのです。」 例えばソフトウェアのインターフェースを、自動車や飛行機の操作と比較してみましょう。「車に乗り込むと、まずエンジンを掛け、諸条件を確認します。外が暗ければ、ライトを点灯します。もし雨ならば、ワイパーを作動させます。そして出発します。」しかし飛行機のパイロットは、エンジンの始動前に、すべてのシステムを詳細に確認しなければなりません。 「したがって使い勝手のよいコックピットが必要なのです。いくつかの基本項目を確認するだけで準備は完了。そして目標に向かって進むのです。チェックリストを見直すだけのために、あれやこれやと20分も費やす必要はないのです。なぜならば確認や定義が必要な項目は、すべて失敗に結びつく可能性を秘めているからです。例えば「はい」または「いいえ」、「緑」や「白」といった100個の項目を設定したら、うっかり忘れたり、些細な間違いをおかしたりしかねません。この意味で、ユーザーの操作は最低限に抑え、きちんと検証されたデフォルト設定を多用する方が、より良い結果をもたらすことは明らかです。」この方法による作業は、エンジニアにとっても、大幅な時間削減につながります。 設計の初期段階では、コンセプト評価モードと曲げ補正メンブレン(BEM)要素を組み合わせることで、われやしわを検出できます。その後、画面上のボタンをクリックすると、最終検証モードに切り替わり、スプリングバック、面ひずみ、その他の後期段階の不具合を検討できます。 「先程述べたとおり、雨ならばワイパーを作動させ、視界を確保するのです。ユーザーが考えることは少しだけで、面倒なことはなく、使い勝手も良好です。ボタンを押せば、ワイパーは作動し続けます。ボタンを押せば、最終検証の設定が開き、スプリングバックを実行できます。これは非常に重要であり、ここに真の価値があると信じています。」とカーレアは述べています。「使い勝手の良いインターフェースは、世界各国にて、常に変化を続けるお客様や市場のニーズを正確に把握している弊社のスタッフたちに支えられているからこそです。 この意味では、我々はソフトウェアというツールだけでなく、お客様のご要望に柔軟に対応できるローカル・チームのサポートによって、価値を創造していると言えます。」と述べています。 日本のお客様とオープンな対話 日本には世界のどの市場とも異なる興味深い特性がある、とカーレアは考えます。「欧州や米国では、設計図がエンジニアに渡ると、それを実現するために、製造に関する諸問題を解決しなければなりません。設計は常に工程を主導します。われやしわを詳細に確認し、適切な工程を検討するため、これにはAutoFormのコンセプト評価設定が最適です。 しかし日本では、製造がより重視されます。製造性を高めるために、設計が変更される場合もあります。その意味では、精度問題に関心が集まるのは当然ですし、もちろん、15年前の弊社が重視していたのは、精度ではありませんでした。いま現在、弊社製品の精度は大幅に向上し、高い信頼を得ているということを、日本のお客様にお伝えしたいです。」とカーレアは言います。 市場のイメージを刷新するには、オープンな対話やコミュニケ―ションが欠かせません。「正直なところ、10年前は、開発やお客様の対応に忙しく、AutoFormのコードやプログラムについて、一切の宣伝することはありませんでした。しかし今や多くが変化しました。」と続けます。そして近年では、AutoFormは、国際会議や専門誌にて、高い評価を得ています。 バート・カーレア コーポレート・テクニカル・ダイレクタ AutoForm Engineering GmbH. - [ボルボ・トラック社の生産現場では、3年間もわれが発生していません! ロバスト最適化の実施結果をお伝えします!](https://japanforming.com/ボルボ・トラック社の生産現場では、3年間もわれ/) - ボルボ・トラック社における後部キャビンのファイアウォール・パネル、サイド・ルーフ・パネル、フロント補強材の改善に成功した活用事例をお届けします。 本日のブログ投稿は、オートフォーム・フランス社の成功事例を特集します。本稿では、ボルボ・トラック社の3つの部品に関するロバストな最適化について取り上げます。 ボルボ社は世界第2のトラックのOEMで、ルノー・トラック、マック・トラック、UDトラックスといった複数のブランドを所有しています。ルノー・トラックのプレス成形センターは、フランスのヴェニシューにあり、ボルボ・トラックやルノー・トラックの外板パネルや構造部品、そしてキャビン全体を生産しています。プレス成形部品の生産量が非常に高いため、ロバスト性に関するコンサルテーションを実施することになりました。 2012年の春、ボルボ・トラック社は、プレス成形のロバスト性をデジタルに改善する方策について、オートフォーム社と共同プロジェクトを立ち上げました。当時最新であったルノー・トラックT、K、Cキャビンの生産最適化を目標とし、プロジェクトにはAutoForm-Sigmaが使用されました。 ヴェニシューのプレス成形エンジニア、Christophe Duboeufは、主な問題点を次のように説明しています。「部品の生産において、プレス荷重、ブランクの位置、材料の板厚といったパラメータ、そしてコイルや潤滑条件に依存する他のパラメータには、常に一定のバラツキがあります。これらのバラツキは、生産中に部品のわれやしわの原因となる場合が多くあるのです。」 また別の問題として、金型サプライヤとの契約上、工程のロバスト性については、工程能力の簡易的な検査を行うのみであるため、サプライヤの関与は導入段階の短期間に限定されることが挙げられます。 初期段階の部品生産は小規模です。材料公差の全範囲おける生産部品の品質を検証できないことが、3番目の重要な不具合につながりました。 生産の拘束という観点から、新キャビンのランプアップ段階では、金型のロバスト性を徹底検証することができません。 調査段階における主な目標は、部品のライフタイムを通じて、生産工程の安定性を高めることができるプロセス・ウィンドウを特定することでした。その結果は良好で、ボルボ・トラック社はAutoForm-Sigmaを10か月の試用期間後に購入しました。 2017年にフランスで開催されたAutoForumユーザー会議では、プロジェクトで解析した11点の部品から、キャビンのファイアウォール・ライニング、サイド・ルーフ・パネル、キャビン後部のフロント補強材の3点を、活用事例として発表しました。 以下、サイド・ルーフ・パネルについて詳しく説明します。 この部品は、生産のランプアップ段階にて複数のわれが発生し、大きな問題となりました。生産工程がロバストではないために、生産開始から1時間も経たずに、われが次々と発生したのです。AutoForm-Sigmaで解析を実行すると、部品の複数領域にわれの危険性を検出するなどの工程能力の低さを特定し、結果として、1000個の部品を生産すると400個が不良品となる予測を算出しました。 ロバスト性に関する不具合を解決するには、簡易的に工程を修正するだけでは不十分です。工程を見直し、バインダとダイを完全に修正することが早急に決まりました。そして金型サプライヤの現場にて、金型の修正と新たなトライアウトを実施しました。修正後に必要な部品の品質を特定するため、初期トライアウトの基本を順守した結果、材料消費のわずかな増加が確認されました(+4%ですが、必然的かつ許容範囲内です)。また板減は24%の公差内でした。そしてお客様が設定したスキッドラインの限界に変更はありませんでした。その後、工程のデジタル検証が実施されました。 そして最終結果はどうであったかを申し上げます。ボルボ・トラック社によると、過去3年にわたり生産中にわれは検出されず、プレス成形センターの決断が適切であったことが確認されました。その他2点の部品も同様に、この3年間、生産部品にわれは発生していません。 2014年から現在までの3年間、AutoForm-Sigmaの活用によって、プレス成形の生産性(生産の実効時間)は+5%増加、また金型の不具合によるダウンタイムは2.5%から1.5%に減少しました。 現在ではソフトウェアを活用した実験的な設計を行うことで、実際の生産を5年ほど行った場合の結果に相当する情報を得ることができています。またプレス成形センターでも、サプライヤから届いた納品物の適性を確認できる新たなSigmaベースのシステムは高く評価されています。ボルボ・トラック社は、AutoForm-Sigmaを早期から工程に適用し、上流過程で製品や工程を修正することで、プレス成形生産のロバスト性を高めています。 この戦略は生産の最終段階における緊急的な不具合対応ほどはコストがかかりません。 「この成功事例から、AutoForm-Sigmaの活用が広がっています。スウェーデンにあるボルボ・トラック・グループのプレス成形センターにて、新たなプロジェクトにAutoForm-Sigmaが採用されました。」とヴェニシューのプレス成形センターのマネージャ、Jean-Hugues MOREAUは述べています。 - [ゲスト寄稿に関するご案内: プレス成形に関する記事(単発または連載)をお寄せください](https://japanforming.com/ゲスト寄稿/) - JapanForming に記事を掲載し、国際的なプレス成形コミュニティに参加しませんか 御社の製品・研究開発や成功事例に関する記事をJapanFormingに掲載することで、プレス成形のプラニングやシミュレーションに関心の高い読者とつながることができます。 JapanForming は、プレス成形業界を主導するオートフォーム社が管理しています。LinkedInおよびFacebookとリンクされ、業界随一のアクセス件数を誇ります。また掲載記事は、定期購読者に配信されるだけでなく、部品設計にAutoFormを利用している金型メーカーやOEMを含むお客様にお届けするニュースレターでも紹介されます。 寄稿による最大のメリットは、掲載された記事は世界中の方々に紹介されることです。 究極的にはこのブログを通じて、御社のウェブサイトやサービスへのアクセス件数の増加が見込まれます。 JapanForming に寄稿することに利点はありますか? JapanForming にはプレス成形シミュレーション業界における研究開発や技術革新、そしてソフトウェア・リリースに関する情報が集約されています。本ウェブサイトの読者は、世界各国のCEOやCFO、ベンチャー起業家から、開発者、技術主任、そしてエンドユーザーまで、多岐にわたります。つまり本ウェブサイトは、御社の記事が最適な読者に届く機会を提供するプラットフォームとして活用できます。 専門領域のブランド戦略は、ベンチャー・ビジネスの成功に必要不可欠です。新製品の市場展開や会社の立ち上げにおいて、あるいは専門分野における御社の地位を確立するには、本ウェブサイトの読者の影響力を利用することでブランド戦略を強化できます。 職務や研究を公開することで、反響を得ることができます。実績を伸ばすには、論文や研究成果を発表することが、何より効果的な手段です。企業に接触する際に、すでに発表している研究成果が、研究者に対する信頼性の裏付けとなります。 JapanForming では定期あるいは不定期の寄稿をお受けします。ゲスト寄稿者として、単発の記事を不定期に投稿することができます。また記事を定期的に投稿していただくことも可能です。読者からより多くのサポートを得ることで、寄稿者の特集ページを開設することも可能になります。特集ページとは、寄稿者によるすべての投稿を掲載する、寄稿者専用の特別なページです。 ゲスト寄稿者に原稿料をお支払いすることはありませんが、投稿記事と併せて、2行の寄稿者紹介文および連絡先またはウェブサイトのリンクを掲載します。 JapanForming では、どのような寄稿を募集していますか? JapanForming では、以下のような寄稿文をお受けします。 ■プレス成形シミュレーション/材料に関連するトピック: • 研究論文、プロジェクトの最新情報、プロジェクトの結果および参加募集 • 業界の動向、取材、イベントやその他の情報 • アルミや鋼材の品質関連情報 • 事例 - 読者の関心が高いトピックです • 熱間プレス成形やプレス成形関連のトピックに関しては、ウェブサイトのカテゴリをご参照ください • シミュレーション・ソフトウェア(ブランドは問わず)を使用したデモの結果や成形不具合の解決 ■製品やブランドに関するトピック: • ソフトウェアのツールや機能に関する論文や取材記事 • JapanForming を御社製品やブランドの広報活動に利用できます。ただし露骨な販促はご遠慮ください。御社のソフトウェアについて言及できるのは、事例や実例のみとします。 ・取材記事、成功事例、顧客事例 ■学生の研究に関するトピック: • 大学への提出物、研究論文や研究結果。 JapanForming に掲載されている主要分野は以下の通りです。 プレス成形、部品&工程のフィージビリティ、ブランク形状、材料利用およびブランクのコスト、われや過剰板減の危険性、しわ、部品形状に基づくフィージビリティの早期評価、ブランク展開、埋め込みおよびネスティング、プレス成形工程、コスト見積もり、工程計画とコスト見積もり、金型作成、形状フィーチャー(例、フランジ、穴、エッジ)、CAD部品データの入力、トリム・カーブ、プレスの姿勢とカム角度、ダイフェース・デザイン、シミュレーション・パラメータ、マッピングからシミュレーション・データまでのワークフロー、プレス成形の不具合、流入評価、不完全なサーフェス、デジタル・ストーニング、最適化およびロバスト性、不良品の排除、トライアウト時間の短縮、プロセス・ウィンドウ解析ノイズおよび工程パラメータのバラツキ、深絞り金型、シャープ・エッジのフィレット、部品半径の修正、ティッピング角度の検討、ワイパーおよびフォーム金型、フランジの展開、トリム角度の評価、金型品質、ヘミング工程、材料変形、ヘミングの不具合、材料の重なりおよび巻き込み、ロール・ダイおよび従来のダイとテーブル・トップ・ヘミング、クランプ治具、シミュレーションおよび結果の精度、スプリングバック見込み補正、ダイフェース摩耗保護、深絞り、リストライク、トリムおよびフランジの工程、スプリングバック・シミュレーションおよび見込み補正、熱間プレス成形、クエンチング、クエンチング中の相変態、冷却後の熱変形、チューブ・ハイドロフォーミング、サーフェス金型、CADサーフェス、CATIA、等々 その他、ご希望される執筆分野がありましたら、お気軽にお問合せください。 寄稿に関するガイドラインはありますか? ■研究論文や関連記事を掲載する場合、過去に発表した原稿を改めて寄稿する場合があるかもしれません。その場合、内容をすべて書き換える必要はありません。 • すでに発表されているホワイト・ペーパーや大学出版物等は、本ウェブサイトでは、新たに執筆した原稿にPDF形式で添付する形で発表できます。 • 新たな原稿は、研究内容の紹介文として、英文にて800~2000語で執筆してください。 ## Pages - [ホーム](https://japanforming.com/) - トレンド シミュレーションにおけるトライボロジの重要性を認識... スターウォーズ『マンダロリアン』と高強度鋼のプレス... マヒンドラ社金型製作所: フード・アウターを見込み... 明日の天気とシミュレーション 正確度指標: シミュレーションとトライアウトの設定... 最新のブログ投稿 スプリングバック見込み補正 バーチャルシミュレーションからプレス成形の現場へ ... Emerson Dias, AutoForm - 2026-07-09 スプリングバック見込み補正 部品設計の初期段階におけるコスト増のリスク低減 アセンブリ AutoForm-BuildOptimizer:バ... ダイフェース・デザイン Aurock:部品の割れに関するケーススタディ 株式会社ツバメックス:金型たわみ量を考慮したより高... Satoshi Fujiu, AutoForm Japan - 2026-06-04 クインタス・テクノロジーズ社:航空機ドアフレームの... Björn Helgesen Sture Olsson - 2026-05-28 インペリアルカレッジロンドン 機械工学科:インダス... LiLiang Wang, Michael Bluck, Dr Saksham Dhawan, and Julie Varley, Imperial College - 2026-05-21 見込み補正の新しいアプローチ ~ - [サイト情報](https://japanforming.com/about/) - JapanForming はプレス成形およびシミュレーションのオンライン情報ポータルで、世界中の方々に紹介されます。高度なプレス成形部品を扱うプロセス・チェーン全体のデジタル・プラニングやデジタル・エンジニアリングに関する情報をお届けします。初期コンセプトから量産までの業務に携わる金型メーカー、OEM、バリュー・エンジニア、プランナー、プロセス・エンジニアの皆様に役立つ情報を特集し、プレス成形デザインのフィージビリティ評価、生産の代替コンセプト評価、熱間プ「サイト情報」、コスト削減、金型の見込み補正、といった幅広い話題に対する専門家の見識をお伝えします。 本ウェブサイトはオートフォーム社が管理していますが、すべてのシミュレーション会社に通じるソフトウェア開発や技術革新について情報を発信します。シミュレーション業界全体に関する最新の情報や動向について、本ウェブサイトでは信頼性の高い情報を提供します。 JapanForming では「顧客事例」ページにて、プランニングやシミュレーション・ソフトウェアを適用した成功事例を特集し、世界各国の金型メーカーやOEMの実績を紹介します。 本ウェブサイトは業界全体の活性化を目標としています。紹介可能な記事がありましたら、単発の寄稿や連載を随時お受けします。掲載をご希望の際には、ガイドラインをご一読ください。 - [プライバシー・ポリシー](https://japanforming.com/privacy-policy/) - – EU一般データ保護規則(GDPR)第13、14および21条ならびに個人情報の保護に関する法律に基づく情報 – このプライバシー・ポリシーが定めるとおり、AutoForm Engineering GmbHおよびオートフォームジャパン株式会社(以下、オートフォームジャパン株式会社を「オートフォームジャパン」といい、オートフォームジャパンとAutoForm Engineering GmbHを合わせて、「オートフォーム社」と表示)は、オートフォーム社による個人情報の取扱いおよびデータの保護に関する法に基づくユーザーの権利に関する概要を説明します。このプライバシー・ポリシーは、オートフォームジャパンのブログ http://japanforming.com に適用されます。 オートフォーム社は、適用されるデータ、個人の情報の保護に関する法律、関連法令およびガイドラインならびにこのプライバシー・ポリシーに従い、個人情報に関するセキュリティやプライバシーの保護に全力を尽くします。 オートフォーム社は、このページを更新して、プライバシー・ポリシーを変更する場合があります。このページを時折確認し、変更に不服がないことを確認してください。このプライバシー・ポリシーは2020年4月1日から適用されます。 第1部 基本情報 個人情報の取扱責任者および連絡窓口 個人情報保護取扱事業者の氏名:オートフォームジャパン株式会社 取扱責任者:個人情報保護管理責任者 連絡窓口:マーケティング部 連絡先:電話番号: 03- 6459-0881 Email: marketing@autoform.jp Controller of the processing of personal data is: AutoForm Engineering GmbH Fällmisstrasse 2 8832 Wilen bei Wollerau Switzerland Our representative in the European Union according to Art. 27 GDPR is: AutoForm Engineering - [連絡先](https://japanforming.com/impressum/) - オートフォームジャパン株式会社 〒105-0021 東京都港区東新橋2丁目3番17号 MOMENTO SHIODOME 3階 日本 Tel 03 6459 0881 Fax 03 3431 7661 Eメール 本社 AutoForm Engineering GmbH Fällmisstrasse 2 Postfach CH-8832 Wilen b. Wollerau Switzerland +41 43 444 6161 +41 43 444 6162 E-mail - [test ホーム](https://japanforming.com/new-home-test/) - Trending Now シミュレーションにおけるトライボロジの重要性を認識... スターウォーズ『マンダロリアン』と高強度鋼のプレス... マヒンドラ社金型製作所: フード・アウターを見込み... 明日の天気とシミュレーション 正確度指標: シミュレーションとトライアウトの設定... 最新のブログ投稿 スプリングバック見込み補正 バーチャルシミュレーションからプレス成形の現場へ ... Emerson Dias, AutoForm - 2026-07-09 スプリングバック見込み補正 部品設計の初期段階におけるコスト増のリスク低減 アセンブリ AutoForm-BuildOptimizer:バ... ダイフェース・デザイン Aurock:部品の割れに関するケーススタディ 株式会社ツバメックス:金型たわみ量を考慮したより高... Satoshi Fujiu, AutoForm Japan - 2026-06-04 クインタス・テクノロジーズ社:航空機ドアフレームの... Björn Helgesen Sture Olsson - 2026-05-28 インペリアルカレッジロンドン 機械工学科:インダス... LiLiang Wang, Michael Bluck, Dr Saksham Dhawan, and Julie Varley, Imperial College - 2026-05-21 見込み補正の新しいアプローチ - [寄稿やコメントに関する免責事項](https://japanforming.com/guest-post-disclaimer/) - 免責事項: 掲載の投稿とコメントは、プレス成形シミュレーションの世界における意見の多様性を表しています。 これらの記事に記載されている見解および意見は著者のものであり、「AutoForm」または「FormingWorld」の公式の立場を必ずしも反映しているわけではなく、不正確な情報に対して責任を負うこともありません。本ウェブサイトで紹介するシミュレーションとプレス成形の方法論、およびすべての寄稿は、AutoFormが推奨する戦略を反映していない場合があります。 許可:本ウェブサイトに掲載される記事の執筆者は、記事の公開に必要なすべての許可を得ることが義務付けられています。 - [Quarterly Highlights of FormingWorld.com](https://japanforming.com/downloads/) - All Previous Editions Welcome to our downloads page. Here you’ll find all print editions for distribution. These are issued quarterly. These are to be printed only. Rights for electronic distribution not granted. 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