プレス成形とストロベリーパイ

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ロバスト性について

過去の記事で、ロバスト性や工程の信頼性について、そして工程に対する入力パラメータの変化に応じて製造物がどのようにばらつくか、何度か触れてきました。そして本稿では、このばらつきをどのように識別できるか、詳しく説明します。

プレス成形工程におけるばらつきは、われやしわ、そして治具等から測定することができます。このばらつきは、図表や信号色のカラー・プロットで表します。

許容範囲外の不良率を示しているAutoForm-Sigmaの結果表示

入力が意図せずにばらついてしまい、結果的に工程のロバスト性や生産品質ばらつきが発生しうることについては、 業界内でも抽象的な概念にとどまっており、具体的な認知が進んでいません。

抽象的な概念を比喩でわかりやすく表現してみましょう。まず市場で新鮮なイチゴを購入するとします。このイチゴでパイを作ります。インターネットのレシピによると、 500gの新鮮なイチゴが必要です。市場では、丁度よく500gのイチゴのパックが販売されていました。

パイの材料として使用するイチゴ

500gのイチゴのパックを購入した場合、言葉の定義上当然ながら500gのイチゴを手に入れたと、誰もが信じることでしょう。一般的に代金は物品の対価として支払うものですし、この場合500gのイチゴに対する対価を支払って500gのイチゴを持ち帰り、パイを焼くと確信しています。帰宅後レシピの通りに、イチゴを他の材料と混ぜ合わせ、オーブンにて指示通りの時間、パイを焼きました。しかし結果は期待に反するものでした。

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何が悪かったというのでしょう。計画から意図した結果まで、つまりこの場合は、イチゴの購入からレシピの通りにパイを焼くまで、実はばらつきの原因となりうるものが数多くありました。レシピ(エンジニアリング)が悪いのでしょうか?それとも材料(イチゴの劣化、または重量が過多あるいは過小)の問題でしょうか?もしくはイチゴ以外の材料や、その組み合わせに不具合があったのでしょうか?

これらの入力(材料の品質や重量)が実際にはどうであったのか、きちんと把握しなければ、正確に判断することはできません。まずイチゴについて考えてみましょう。レシピの他の側面からも、同様の精査が必要かもしれないことにご留意ください。

仮にパイの失敗に対して最も影響のある入力がイチゴの重量だとしたら、500gよりも少ない重量に応じてレシピを調整することで、問題を解決できる、と考えられます。再度市場まで出向き、別のイチゴのパックを購入し、パイを焼いたところ、今度はパイがパサパサに乾燥してしまいました。

パック詰めされたイチゴの重量の仮の信頼性

市場で販売しているすべてのイチゴのパックの中で、たまたまこの2つだけが誤っていたのかもしれません。しかし現実的には、パック詰めされたイチゴの重量には一定のばらつきがあると考える方が自然です。

パック詰めされたイチゴの重量の真の信頼性の分布

農家では、規定された重量のイチゴを詰めるよう最善を尽くしましたが、イチゴ詰めの工程には意図しない工程のばらつきが発生する余地は充分にありました。このような工程のばらつきは、自然なことですしまた普通です。有機的に育ったイチゴは、寸法や形状が均等ではありません。また含水率も一定ではなく、あるいは容器への詰め方にもばらつきがあるはずです。

すべてのばらつきを考慮するようなレシピがあれば、それは非常に有意義なことです。パイの品質を正確に評価し、重量のばらつきに対する許容範囲を把握できたら、より美味しいパイを焼くことができるようになります。

パイの材料として使用するイチゴの重量のばらつき – パイの品質のばらつきが最も少ないのはどちらですか?

レシピには、間違いはありません。イチゴが規定の重量だという仮定が誤りだったのです。

エンジニアとしての私たちは、発注量が納品量と完全一致すると、常に仮定していないでしょうか。イチゴの重量を再計測し、含有量を正確にコントロールすべきだという考えもあるでしょう。しかしながら実際のプレス成形工程の現場では、個別に制御しきれない入力のばらつきが無数にあります。それらをきちんと考慮することもまた重要です。
意図しないばらつきがある入力パラメータには、過去のブログ投稿で触れたことのあるものだけでも、材料の板厚、シート材の機械特性、潤滑、ブランクホルダ力、ブランクの位置等々、無数にあります。意図しないばらつきによって、製造工程中に、想定外の品質の不具合、不良品率の増加、プレスのダウンタイムなどが発生する場合があります。

美味しいイチゴのパイの作成に成功するか、失敗するか、パイを焼く前に知りたいと思いませんか。

 

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