航空宇宙企業DOMAERO社、数値シミュレーションを活用したリスク回避

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 DOMAERO社は1990年に設立された民間、防衛、宇宙分野のプレス成形を専門とするフランスの航空宇宙サプライヤです。航空構造物の軽量化に関する取り組みが進む中、主要顧客である大手航空宇宙OEMやそのTire1サプライヤからは、DOMAERO社が有するチタン薄板成形のノウハウが高く評価されています。同社では軽量化によく用いられるアルミニウム、ステンレス鋼、インコネルなどの材料にも対応しています。

行動につながるツールとしてのシミュレーション

 DOMAERO社では2021年にAutoFormを導入したことが、現状維持から抜け出すきっかけとなりました。同社 CEOクリストフ・ボンパール氏は、シミュレーションがなければ現在取引のある難解な部品を受注することは決してなかったであろうと語っています。航空宇宙業界では薄板部品の溶接工やボイラー工が減少し、経済的な問題は深刻さが増しています。そのためOEMでは溶接や仕上げの時間短縮を図るため、複雑なプレス部品をデザインすることで対応しようと試みています。そのためサプライヤはこのような変化に対応しなければなりません。

外部評価の要因としてのシミュレーション

 DOMAERO社では顧客から依頼のあった部品の生産性を検討し、そのレポート報告を行っていますが、その際にシミュレーションを活用することでさまざまな懸念を解消できるという信頼感が広まっています。顧客側でも設計部署によっては、たとえば金属疲労などのシミュレーション結果を判断を行う際の参考にしていましたが、そのような部署ではDOMAERO社が成形シミュレーションを用いて生産性の評価提案を行っているという事実に安心感を得ているようです。

 シミュレーションを活用することで、トライアウトの修正回数を半分以下へ削減することができています。以前は標準的な部品でも3~4回の修正が必要でしたが、今では多くとも修正は1~2回のみです。修正が約1週間続くとすると、この部品の計画全体で半月分のリソース削減に相応するため、これは顧客からも大きな関心を集めています。 この削減できたリソースは他のプロジェクトに投入できるため、 DOMAERO社および顧客の双方に非常に有意義なものです。

社内の調和を図るツールとしてのシミュレーション

 かつてDOMAERO社にはプレス成形に精通した多くのエンジニアがいました。しかしプレス成形工程に関する判断を委ねることができる熟練したエンジニアたちは、いまではすでにみな離職しています。現在では数値シミュレーションが最終判断の基準として活用されていて、技術部門と金型工場の見解に相違がある場合には、両者の意見調整に欠かせないツールとなっています。またシミュレーションは、次の一手を検討し、決定する場合にも役立つ優れたツールです。特に今日では過去に経験のない新たな部品を取り扱う機会が増えていますが、その場合、たとえ簡易的なシミュレーションであっても、それは専門家のアドバイスよりも正確で信頼できる情報となりえるためです。CEOのボンパール氏が断言するように、これは非常に心強いことであり、新たなプロジェクトをより穏便に進めることが可能になります。

 DOMAERO社ではプレス成形に関する新入社員の研修にもAutoFormソフトウェアを役立てています。その観点からも、同社にとってシミュレーションは欠かすことができないツールであります。

 DOMAERO社ではシミュレーションの活用を始めてからプレス部品の品質改善が進み、またプレス加工後の手直しも削減されています。プレス加工後の手直しに対応できるエンジニアの離職率が近年高い傾向にありますが、DOMAERO社ではスタッフの稼働率に依存することなく業務を続行することができています。

事業を進化させるツールとしてのシミュレーション

 シミュレーションはDOMAERO社の事業成長にも大きく貢献しています。ここ数年で同社では従来の2倍ほどの価格帯にあるより複雑な部品を生産することができるようになりました。顧客からはより複雑な部品の製造依頼を多く受けるようにもなりましたがDOMAERO社は、部品の生産性、製造工程の複雑さ、そして全体コストの評価などを通じて、顧客をサポートしています。今のところ、DOMAERO社では自社生産する部品の生産性検討のみを行っていますが、将来的には、他の部品についても生産性検討を請け負うことを視野に入れています。

 AutoFormでは条件を素早く設定でき、高速で計算できるため、これらの作業の迅速化を図ることができる点についても、ボンパ―ル氏は非常に高く評価しています。今年はすでに約150件の案件に対応していますが、戦略的価値のある部品により多くの時間を確保でき、その他の部品についても迅速に処理することができれば、DOMAERO社の事業成長は確実に見込まれること間違いありません。