シミュレーション – 速度と精度の両立

精度に関する日本市場の誤解を紐解く – コーポレート・テクニカル・ディレクタ、バート・カーレアのインタビュー

1995年当時、AutoFormの市場参入は、正に革命でした。このソフトウェアは、プレス成形シミュレーションの実行時間を大幅に短縮し、お客様を驚かせたのです。AutoFormが高速であること、特にわれやしわの回避に関する検証工程の速度が、大きく評価されました。

バート・カーレア, コーポレート・テクニカル・ダイレクタ オートフォーム本社

「重要なのは、20年前、AutoFormの計算速度が、信じ難いほど速かったということです。」オートフォーム本社コーポレート・テクニカル・ディレクタであるバート・カーレアは、こう述べています。われやしわを正確に描写あるいは予測できる曲げ補正メンブレン(BEM)要素によって、高速な結果算出が可能となり、試行錯誤型のアプローチが促進されました。ただしこれはスプリングバック等の計算には適していません。約10年前に弾塑性シェルが導入され、スプリングバックの予測精度も飛躍的に向上しましたが、AutoFormの速度は、精度を代償としている、という不当なイメージが業界内にはびこりました。

試験やレビュー、活用事例などを通じて、この見解は不当であるという認識が広がりつつありますが、ここで改めて、この速度と精度の問題について考察します。

正しい理解 – 第三者によるレビュー

「イメージ戦略の観点から申し上げますと、弊社がコンセプト評価に重きをおいていた過去のイメージに、競合他社は固執しています。弊社の初期のイメージばかりが先行していますが、実際のところ、我々はこの20年で大きな進化を遂げています。この古いイメージは今や過去のものです。」とカーレアは述べます。
「過去10年のNUMISHEETベンチマークをご覧ください。弊社製品の精度は、少なくともすべての競合他社製品と同等です。このとおり、精度について全く問題はなく、またスプリングバックの予測精度についても同様です。NUMISHEETが信頼できる点は、これがブラインド・テストであることです。シミュレーションを設定および実行して、その結果を送信します。弊社のソフトウェアについては、問題が発生しようがないと確信しているため、毎度大きな自信を持ってテストに臨んでいます。弊社のテスト結果は常に他社と同等であり、またほぼ全ての結果計算は他社よりも短時間です。NUMISHEETでは、通常、最終検証を主に行いますが、弊社製品の精度は他社製品と同等であることが証明されています。」とカーレアは述べています。

材料モデルおよび精度

つまりAutoFormは業界随一の速度を誇り、また精度も他社製品に劣りません。「どの製品でもアルゴリズムや値計算法を有効利用し、またすべての製品には想定があります。」とカーレアは続けます。「しかし弊社の想定は、時に他社とは異なります。多くの会社では、100の事例から特に精度の優れた5つを抜き出し、それを喧伝します。しかし弊社は計算時間において、どの競合よりも優れています。そして精度についても、少なくとも他社製品と同等であることに間違いはありません。」

使い勝手の良さ

優秀なツールの共通点として、AutoFormは単に使えるツールでなく、実のところ、簡単に使えるツールなのです。「AutoFormの計算結果は、ユーザーに依存する部分が少ないのです。」とカーレアは続けます。「ソフトウェアを操作するユーザーの専門性を試すものではなく、むしろ、ソフトウェアの性能、そしてユーザー・ガイダンスやデフォルト設定がカギとなるのです。」

「エラーの原因は、極めて限られています。そのため、ソフトウェアが提示する明快なガイドラインに沿って操作すれば、正確な結果を簡単に算出できる、と言えるでしょう。他社のソフトウェアでは、結果に大きな差異が生じる場合があります。」

オートフォーム社の企業理念である、裏側の数値計算に関する詳しい知識を必要としない、使い勝手のよいソフトウェアの開発について、カーレアは説明を続けます。「プレス成形工程の問題を解決することだけを考えているエンジニアの気持ちに寄り添うのです。」

例えばソフトウェアのインターフェースを、自動車や飛行機の操作と比較してみましょう。「車に乗り込むと、まずエンジンを掛け、諸条件を確認します。外が暗ければ、ライトを点灯します。もし雨ならば、ワイパーを作動させます。そして出発します。」しかし飛行機のパイロットは、エンジンの始動前に、すべてのシステムを詳細に確認しなければなりません。

「したがって使い勝手のよいコックピットが必要なのです。いくつかの基本項目を確認するだけで準備は完了。そして目標に向かって進むのです。チェックリストを見直すだけのために、あれやこれやと20分も費やす必要はないのです。なぜならば確認や定義が必要な項目は、すべて失敗に結びつく可能性を秘めているからです。例えば「はい」または「いいえ」、「緑」や「白」といった100個の項目を設定したら、うっかり忘れたり、些細な間違いをおかしたりしかねません。この意味で、ユーザーの操作は最低限に抑え、きちんと検証されたデフォルト設定を多用する方が、より良い結果をもたらすことは明らかです。」この方法による作業は、エンジニアにとっても、大幅な時間削減につながります。

 

設計の初期段階では、コンセプト評価モードと曲げ補正メンブレン(BEM)要素を組み合わせることで、われやしわを検出できます。その後、画面上のボタンをクリックすると、最終検証モードに切り替わり、スプリングバック、面ひずみ、その他の後期段階の不具合を検討できます。
「先程述べたとおり、雨ならばワイパーを作動させ、視界を確保するのです。ユーザーが考えることは少しだけで、面倒なことはなく、使い勝手も良好です。ボタンを押せば、ワイパーは作動し続けます。ボタンを押せば、最終検証の設定が開き、スプリングバックを実行できます。これは非常に重要であり、ここに真の価値があると信じています。」とカーレアは述べています。「使い勝手の良いインターフェースは、世界各国にて、常に変化を続けるお客様や市場のニーズを正確に把握している弊社のスタッフたちに支えられているからこそです。
この意味では、我々はソフトウェアというツールだけでなく、お客様のご要望に柔軟に対応できるローカル・チームのサポートによって、価値を創造していると言えます。」と述べています。

日本のお客様とオープンな対話

日本には世界のどの市場とも異なる興味深い特性がある、とカーレアは考えます。「欧州や米国では、設計図がエンジニアに渡ると、それを実現するために、製造に関する諸問題を解決しなければなりません。設計は常に工程を主導します。われやしわを詳細に確認し、適切な工程を検討するため、これにはAutoFormのコンセプト評価設定が最適です。

しかし日本では、製造がより重視されます。製造性を高めるために、設計が変更される場合もあります。その意味では、精度問題に関心が集まるのは当然ですし、もちろん、15年前の弊社が重視していたのは、精度ではありませんでした。いま現在、弊社製品の精度は大幅に向上し、高い信頼を得ているということを、日本のお客様にお伝えしたいです。」とカーレアは言います。

市場のイメージを刷新するには、オープンな対話やコミュニケ―ションが欠かせません。「正直なところ、10年前は、開発やお客様の対応に忙しく、AutoFormのコードやプログラムについて、一切の宣伝することはありませんでした。しかし今や多くが変化しました。」と続けます。そして近年では、AutoFormは、国際会議や専門誌にて、高い評価を得ています。

 

バート・カーレア

コーポレート・テクニカル・ダイレクタ

AutoForm Engineering GmbH.

 

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