HERU社では見積もりからダイフェース作成まで全工程にAutoFormを活用

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HERU社セールス・マネージャーのトーマス・テイペル氏とCADデザイン・マネージャーのフィリップ・ヌッシェン氏:「いまではAutoFormを活用し、検証まで完了した確実な明細書を作成しています」

 「シミュレーションと見積もりに関しては、最大で5倍もの速度で作業できるようになりました

見積もり作成、そして発注からトライアウトやサンプル提出までの時間枠は、大幅に短くなっています。同時に、工程品質に関する要望も多くなっています。そのためドイツのザウアーラントにあるシート分野のスペシャリスト、HERU Werkzeugbau社では、AutoFormを活用して、初期の見積もり作成から最終的なダイフェースや工程計画までのワークフローをシームレスに作成しています。

ザウアーラントのレネタールは、この地方にある近郊の街々と同じく金属加工の長い歴史を誇る街です。水力発電による豊富な電力、鉄鉱床、精錬所、そして近隣のジーガーラントにある製鉄所および1861年に開通したルール=ジーク鉄道が、その歴史を支えています。レネシュタットに合併されたグレーヴェンブリュッは、ルール地方との関係性もあり、今日でも重要な役割を担っています。そしてこの地区に新築されたビルにHERU Werkzeugbau社が2004年から本社を置いています。「プレス成形分野の先頭を行く金型技術を扱い、部品の最適化および金型デザインから量産の確立まで工程チェーン全体、そして金型に関する社員研修までも手がけています」と、HERU社セールス・マネージャーのトーマス・テイペル氏が説明します。そして同僚のフィリップ・ヌッシェン氏は、「今日のプレス成形関連業務は、AutoFormなく進めることはできません」と言葉を添えます。CADデザイン・マネージャーであるヌッシェン氏は、8名で編成される技術グループの責任者としてHERU社のプロジェクト管理を担っています。「このモジュール方式のシステムを採用してから、入札段階の原価計算や工程設計からダイフェース作成まで、すべての重要な工程ステージをマッピングできるようになりました」と語っています。 HERU社はダイフェースの設計にAutodesk InventorおよびCATIA V5を使用しています。こ のような従来型のCADシステムでは、たとえばお客様の要望に応じて金型の工程計画を短時間で確実に作成しなければならない場合、部品や工程の迅速なフィージビリティ検証、トリム・カーブやドロービードのシミュレーションを活用した検討、寸法精度の確認やスプリングバックの見込み補正といった以降の作業を考慮すると、この分野に特化したツールが欠かせないことは明らかです。この分野で有力な企業として挙げられるのが、1995年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校から独立して設立されたオートフォーム社です。400名以上の従業員を擁し、業界を牽引するソリューション・プロバイダです。

メイン・フロア補強部品の製造に使用する順送金型の下型

 新時代の見積もり業務

ヌッシェン氏はAutoFormモジュールの整合性を高く評価し、その細部まで行き届いた機能によって金型製造の日常業務の負担が大幅に軽減されたことに驚いています。セールス・マネージャーのテイペル氏も同意見です。見積もりの業務に新たな時代がもたらされた例として、オートフォーム社による工程計画および見積もりのソリューションを挙げています。「かつては、準備段階の見積もり作成は、実用的な数値と経験則が頼りでした」今ではAutoFormが見積もり作成の基準となっており、HERU社の営業部門では、見積もり業務だけのために1本のライセンスを使用しています。テイペル氏は、現在のワークフローを次のように説明しています。「お客様から案件をご依頼いただく場合、データ(CADモデルと図面)をメールで受信すると、まずは両方を確認してから、提案書の準備に入ります」最初にフィージビリティの評価と対案の検討から始めます。「そういった図面の80%は、形状や配置が不適当だからです」併せて公差も評価します。「結論としては、その部品は製造可能だとしても、必要な公差を達成できない場合があります」すでにこの段階からAutoFormを活用し、見積もりの基礎となる工程計画を作成します。これはヌッシェン氏のCAD設計部門が担当します。AutoForm-StampingAdviserを開き、何度かクリックするだけで、部品が展開し、フィージビリティ関連の不具合確認と、材料使用量の初回見積もりが完了します。「これだけで個々のステーションが定義され、その部品が製造可能か確認することができるのです」と、ヌッシェン氏が説明します。次に、半自動で作成された工程計画を確認し、材料の要件およびHERU社の製造指針に則した補足や調整を行います。「AutoFormを活用すれば、われにつながる不具合があるか、またはどこかで材料の板増が発生するか、すぐに確認できます」

フィリップ・ヌッシェン氏のワークステーションでAutoFormを活用した工程計画の作成

簡単な操作による高精度な計算

営業部門では、AutoForm-CostEstimatorにデータを入力し、準備段階の見積もりを自動作成しています。「当社では基本的に、営業部門と技術部門の両方で立案を行います。そのため見積もりの作成業務ではサイクルが形成され、両部署が同じファイルを扱います。したがって、工程計画に技術的な変更を加えると、それが原価計算に直接反映されるのです」と、テイペル氏が説明します。「この関係性には他にも利点もあり、これまでに蓄積した複数のコスト標準を使って作業できることです」これはAutoFormがきわめて優れている点です。これらのコスト標準には、すべての設計や製造手順を含むHERU社独自の数値が蓄積されています。また社員の経験則も活かすことができます。そして現在では、さまざまな部品カテゴリーに対応できるようになりました。「たとえば、どの材料を使うのか、工程をどのように進めるか、切削するのかエッチングしなければならないのか、検討できる範囲が広がりました」これこそが、計画作成について「所要時間まで含む非常に現実的な見積もりが、ボタン操作のみで作成できてしまうのです」とテイペル氏が語る理由です。これらはもちろん、純粋な生産コストです。この他にも、材料間接費、利益、前払いによる支払い、併せて製造すべき部品など、その他のコストも考慮しなければなりません。「現時点では、最終案に向けて、これはまだ手作業で詰めています」

AutoForm-CostEstimatorを活用した順送金型工程のリソース見積り

 最高品質のダイフェース

AutoFormは、次の業務へのバックボーンでもあります。営業部門とお客様が合意すれば、ヌッシェン氏の部門は作成した大まかな工程計画から作業を進めます。「作成した工程計画が提案書の基礎になっているため、この時点でまた最初から作業を始める必要はなく、これまでのデータを活用できるのです」まずAutoForm-DieDesignerを使い、パラメータ化されたコンセプト面を作成します。これはすべての工程に必要です。「つまり早期段階の作業にて、頻繁に修正しなければならない面なのです」と、ヌッシェン氏は語り、さらに「このモジュールでは、ネイティブのCADで作成する面よりもはるかに短時間で、コンセプト面を作成することができます。これは次にAutoForm-FormingSolverにて、成形工程全体のシミュレーションや最初のスプリングバック解析に使用します」と続けます。

このようにして蓄積した情報を軸に、最後にAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを活用し、パラメータ化されたCADダイフェースと、すべての深絞り工程や2次工程を含む完全で詳細な工程計画を作成します。ここではコンセプト段階のデータも使用します。そして工程計画のデータは、AutoForm-QuickLinkforCATIAを介してCADに転送するため、 データの損失はほとんどありません。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAは、CAD環境で操作します。ヌッシェン氏は、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAが作成する(フリー・フォーム)面の非常に高い品質と、工程計画を実施できるスピードの両方に満足しています。「クラスA」の品質要件も満たしています。CAMソフトウェアを活用することで、ダイフェースを切削するためのNCデータも算出できます。「AutoForm-ProcessDesignerforCATIAで、最終のダイフェースをさらに微調整しますが、この時点で金型設計はすでに開始しています」とヌッシェン氏はここから並行作業が始まることを指摘しています。「AutoForm-DieDesignerの面をベースにしたインクリメンタル・シミュレーションを信頼できるレベルまで調整できたら、つまり部品が生産可能なレベルになれば、金型設計を開始します。こうすることで、大幅な時間の短縮になるのです。AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでダイフェースと工程計画の作成を完了したら、データをAutoFormに戻して、スプリングバック見込み補正を含む、いわゆる「検証」のシミュレーションを実行します」と、ヌッシェン氏は説明を続けます。その後、AutoForm-ProcessDesignerforCATIAでもう1つのループを実行すると、それが最終の切削データとなります。

最終検証シミュレーション後のスプリングバック結果が「緑」になると、切削準備が整います

 より高速で、より高品質に

HERU社はAutoFormを導入する前からシミュレーションの業務に携わっていたと、ヌッシェン氏は回想します。しかしその当時は、事前にCATIAでダイフェースを作成しなければ、プレス成形シミュレーションを開始できませんでした。「経験則を頼りに作業していたため、現在と比べて10倍もの時間がかかっていました」また作成した工程計画のほとんどに不具合が検出され、製造段階で頻繁に修正していました。「それは果てしない無駄な仕事を思わせる作業で、時には5~6回も再切削することもありました」とヌッシェン氏は当時の状況を説明します。商業的な視点からも、それはすぐに赤字になります。「いまではAutoFormを活用し、検証まで完了した確実な明細書を作成しています」テイペル氏も同様に前向きです。「部品の品質を改善するだけでなく、リードタイムの40%を占めていた修正ループの削減も実現できました」と強調しつつ、現在の状況を次のようにまとめました。「シミュレーションと見積もりに関しては、最大で5倍もの速度で作業できるようになりました」そして、提案書もより正確になり、信頼性が高まりました。「当社ではこの点を高く評価しています」工程全体も大幅に安定しました。「納期に遅れることがなく、高品質な部品と確実な納期を、お客様に提示することができるようになりました」

HERU Werkzeugbau

HERU社は1987年にルディ・ヘッセン氏が創業し、社名の由来にもなっています。同社はドイツのレネシュタット=グレーヴェンブリュックに本社を置き、現在60名の従業員が年間約20件の金型製造プロジェクトに取り組んでいます。最長4mの順送金型、深絞り、トランスファ型などを扱い、また溶接およびねじの成形や測定も行っています。顧客の75%は自動車業界の企業です。HERU社独自の事業活動の一環として、プロジェクト個別ベースの技術提携を積極的に行っています。これらの活動は、社内の工程技術センター(PROTEC)に集約されています。特筆すべきプロジェクトには、グレーヴェンブリュックでシューラー社と提携したMSD 630サーボ・プレスの事例があり、これはマンションほどのサイズで6,300 kNのプレス能力を備えています。ストリップ・フィードやロール・フィード、金型交換の技術や金型監視など、最新鋭の追加設備によって、顧客の工程を解析および最適化するために必要なフレームワークを形成し、開発されたばかりの最新の工程にも対応します。