シュンデ・カナガタ社、シームレスなデータフローでトライアウト・ループを7回から1回に削減

データをシームレスに共有し、面品質と寸法精度を最適に見込んだ金型サーフェスを実現

 金型業界では面品質および寸法精度が担保されたパネルを短いリードタイムで納品することが常に課題となっています。金型メーカーのシュンデ・カナガタ社は、CAE-CAD間のシームレスなデータフローをもとに新たな手法を模索し、ドアインナーのプロジェクトにおいて、金型トライアウトのループを7回からわずか1回まで削減しました。本稿ではその手法とシュンデ・カナガタ社の学びについてご紹介します。

 現在の金型業界において、プレス成形工程のコンセプトを作成するCAEとプレス金型の切削データを作成するCADの部門間にて、データフローは断絶されています。まずCAE部門ではAutoFormなどのCAEソフトウェアでプレス成形工程の検証と最適化を行います。次にCAD部門にて切削加工用の金型サーフェスを準備しますが、大半の企業ではCAEからデータを移行することなく、CADにて金型サーフェスを再作成しているのです。そのためCAEで検証した工程コンセプトとCADで作成した切削データとの間に相違が生じることになります。その結果、面品質と寸法精度の観点において、実はサーフェスのデザインは最適化されていないことになってしまいます。さらにこの手戻りは、作業負荷の増大や人為的ミスにもつながっています。このワークフローではデータが引き継がれないため、たとえば、工程コンセプト段階で既に解消されている不具合が、切削金型で再び生じることすらあります。

図1:工程コンセプトと最終的な工程デザインでデータが共有されないと無駄や人為的ミスが生じる

 この課題を念頭に、シュンデ・カナガタ社とオートフォーム社ではドアインナーのパイロット・プロジェクトにおいて、AutoForm見込み補正技術の有効活用、そしてCAEコンセプト段階からCAD切削段階までシームレスなデータフローの構築を行いました。「エンジニアリングから切削準備までデータをシームレスに共有することによってのみ、サーフェスや寸法精度が最適化されたデジタル・プロセスを実際の金型工場に直接適用し、現場で同じプロセスを構築できると考えています」とクリストフ・ウェーバー氏は指摘しています。


2:シームレスなデータフローを活用することで手戻りを減らし、デジタル・プロセスで検証したデータをすべて金型工場で活用できます

 このドアインナーのプロジェクトには、3つの段階があります。最初の工程コンセプトの段階では、スプリングバックと面ひずみの確認と見込み補正を行いました。次にそのコンセプトとほぼ一致する最終的な金型サーフェスを構築するための情報を、AutoFormの特別なファイル形式でCADに出力します。次の段階では、見込の精度と面品質が最適に調整された金型のコンセプト・データをCAD上で直接サーフェスとして再現しました。そして最後に、シミュレーションで検証された通りに金型を切削し、デジタル・プロセスの設計図に従ったトライアウトを実行しました。その結果、CAD部門のエンジニアリング時間の50%削減を実現し、初回の金型トライアウトから高品質なパネルを提供できるようになったのです。

 シュンデ・カナガタ社副社長Chen Xinzhang氏は「ドアインナーのサーフェス再構築と切削データの作成にAutoForm-Process Designer^forCATIAを活用しました」と明かしています。「このソフトウェアを有効活用すると、作業効率を従来のプロセスと比較して50%向上することができます。そしてさらに、初品の寸法合格率85%を達成し、金型トライアウトのループも7回から1回まで削減できました。」と述べています。

(本稿の画像は特定のお客様のデータではなく、本文を補足するためのイメージ画像です。)