ガイドラインと標準 ~ロバストな入力と情報展開~

【はじめに】

近年、ロバスト管理の重要性が問われ、金型設計や製作過程において、安全かつ安定が求められています。それにより、日程遵守や高品質の保証並びにコストセーブへと繋がることが期待されています。オートフォームにおいても、Robust Engineering Model (以下REM):ロバストなエンジニアリングモデルを提唱し、図1のような“シームレスなデジタル化”、“シミュレーションにおけるAutoFormパレートの法則”、“AutoFormの正確度指標”を運用し、ロバストなプレス加工の方法を実現しつつ、製造中に発生する加工バラツキを考慮し、量産時の不具合を効率的にデジタル空間上で予測する事を可能にしています。(REMの詳細は弊社へお問い合わせください。)

シームレス・デジタル化

パレート・チャート

正確度指数
図1

REMを実現するために、シミュレーションの設定において、ベテラン若手関係なく、ミスなく運用することが重要です。この設定は、同時に金型設計や製作にも十分活用できます。そこで、この内容を簡易にサポートできる、弊社ソフトの機能として“ガイドライン“と”標準“を紹介します。

【ガイドライン】
ワークフローの管理ツール、作業の透明性・一貫性を可視化。図2のようなチェックリストとしても運用できます。

図2. ステージ事に定義されたチェック項目の一例

  • 設定作業のサポート:設定する項目の選定 (任意の設計検討イベントで必須な確認項目の抽出)
  • 設定と同時に設定漏れ防止:入力したか否か、入力した情報は正しいか否かなど
  • カスタマイズ:用途/目的に応じて設定を任意に変更/追加/削除

運用紹介

あらかじめ準備されたガイドラインファイルを任意のシミュレーションに定義。
たとえばSE業務、見込み形状検討、NC加工データの最終確認もしくは、お客様の設計検討イベントに合わせたガイドライン並びにカスタマイズへ対応します。
これにより、シミュレーション結果を、随時同じ情報として共有し、安心して他部署や技術者間で展開/活用する事が可能になります。

【標準】
シミュレーションを実施するにあたり、前処理と結果解析用の2種類を標準設定。

  • 設定作業のサポート:設定する任意の項目を固定設定 (要素タイプ・評価基準・工法の種類 等)
  • 設定漏れ防止:任意の項目をデフォルトに。On/Offの選定可
  • カスタマイズ:目的や用途に応じて既存の設定項目を任意に変更

目的や用途により使い分け:誤解や誤入力の防止、無駄なシミュレーション解析や誤レポートの防止。

運用紹介
あらかじめ準備された図3にある標準ファイルを任意のシミュレーションに設定 。もしくは、あらかじめデフォルトで任意の標準ファイルをAutoForm上に組み込んでおく。

図3. 標準の選定/設定

具体的に標準化できる変数の例を以下に示します。

  • デザイン:データインポート時の要素条件、摩擦係数、荷重タイプなど
  • コントロール・パラメータ:シートの要素タイプ、結果の選定、結果の出力条件 など
  • Sigma:任意のAutoForm-Sigma変数の選定、組合せ、数値(幅)の定義 など
  • 評価:結果変数(下記参照)、お客様用の準備
    ・仕様限界:ライブ・チェック(不具合の自動検出)時に参照される上限、下限値を定義

    ・連続スケール:スケール・タイプ:連続での評価時のカラー・スケールを定義
    ・判断基準スケール:スケール・タイプ:判断基準での評価の判断しきい値を定義
    ・デフォルト・スケール:定義したスケール・タイプの最小/最大タイプ、値を定義

標準を設定している場合、誰もが判るように、図4のようなドットが表示されます。

図4. 標準の設定項目一例

【おわりに】

今回はシミュレーション解析もロバスト性が必要になることを示し、金型設計に標準・規格があるように、ロバストな設定と運用を実現する“ガイドラインと標準”の利用方法について紹介しました。

これらによって必要な情報の誤入力、誤解釈、誤運用は、間違った情報を他部署や後工程の検討へ共有してしまうことが防げるとともに、シミュレーションと実機の結果の一致度が向上します。そしてさらに実加工における加工バラツキまでも考慮した分析が実施可能になります。

多くの作業者や部署が関わり、多くの情報が飛び交う中、少しでもロバストな情報を間違いなく発信する為に、今回の運用法が有効となります。これらはオートフォームの掲げるREMの基本的な取り組みであり、シミュレーションによる検討のフロントローディングの実現によって金型設計~生産までのコスト削減に繋がることが期待されています。