デジタル・トランスフォーメーションが創出するバリュー・ポテンシャル: 成功を導き出すプロセス・モデルのデジタル化

プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリの
デジタル・プロセス・ツイン(パート2)

時代を創造するのはデジタルです。デジタル・トランスフォーメーションへ適応することによって、時代を切り開くことができます。自動車業界のデジタル化に関するブログ投稿シリーズのパート2では、徹底的なプロセスの最適化に備わるポテンシャルを引き出し活用するために不可欠となる、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのプロセス・チェーンの包括的なデジタル化について紹介します。このシリーズのパート1は、こちらでお読みいただけます。

前回のブログ投稿で説明した組織の分断は、デジタル・トランスフォーメーションによる組織間の連携を確立することで解消できます。このソリューションでは、すべての部署とサプライヤーが、共通のソフトウェアによるワークフローと、共通のプロセス・モデルを使用します。プレス成形プロセスのエンジニアリングやプランニングの包括的なデジタル化を可能にするソフトウェアは、オートフォーム社などが提供しています(図2を参照)。このようなソフトウェアを活用することで、組織内のみならず、サプライヤーや社外の利害関係者とも、情報、データ、履歴をシームレスかつ効率的に共有できます。プロセスの早期段階で確立したエンジニアリングの手法や知見を上流と下流で共有できるため、社内外の協力関係が良好になり、プロセスの効果や効率が向上し、製品品質の向上、リードタイムの短縮、開発コストの削減が実現します。

1:トラブル対応に対する消極的な姿勢、情報やデータの断片的な伝達、部署間の分断

2: …包括的なデジタル化、情報やデータのシームレスな伝達

今年度の後期には、自動車業界において、プレス成形およびホワイトボディのエンジニアリング・プロセス・チェーンのデジタル化が新たなフェーズに移行します。オートフォーム社の新たなソフトウェア・ソリューションを使用することで、プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに関連するすべてのタスクが実行できるようになります。そしてプレス成形およびホワイトボディの・アセンブリ・プロセスを包括したデジタル化から、大きな価値が創出されます。また部署間の協力関係が良好になり、情報やデータがシームレスに流れるため、情報やデータが消失することなく、開発プロセスの大幅な加速や、納期短縮を実現できます。プロセスの下流で対応していた不具合の特定や修正を、より早期段階から行うことで、不具合を回避でき、コストを劇的に削減します。

成功を導き出す包括的なデジタル化

ここまでソフトウェアの技術的観点から、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのプロセスを包括的にデジタル化するソフトウェア・ツールの活用による、自動車業界の業務効率化について概説してきました。データの透明性および明快な意思決定のプロセスをベースに、包括的にデジタル化されたワークフローのコンセプトを導入することから始まります。

まず、図3に示したお客様のデジタル・プロセスでは、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プランニングを、一般的なプロセス・チェーン内で、8つのタスクに分類しています(図3を参照)。これらのタスクが進捗しプロセスの成熟度が高まる中で、コスト、品質、リードタイムなどのバリュー・ドライバが重要な役割を果たします。

オートフォーム社は、お客様が8つのタスクをすべて完了できるよう幅広いソフトウェア製品ラインを含むソフトウェア・ソリューションを提供しており、プロセス全体に渡るシームレスなデータ伝達も可能にしています。オートフォーム社のソフトウェア・ソリューションをお客様のプロセスへ適応させ最大限に活用するには、CAD、プロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)、CAM、エンタープライズ・リソース・マネジメント(ERP)、製造実行システム(MES)などのソフトウェア・システムと連携させる必要があります。

図3: デジタル・プラニングのプロセスおよびバリュー・ドライバ

このブログ投稿シリーズのパート1で述べたとおり、自動車業界の技術トレンドとして、デジタル化の導入および活用が急速な広がりをみせています。

プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに適用するプロセス・シミュレーションのモデルは、現実のプロセスを描写したもので、プランニング、エンジニアリング、プロセスの最適化、下流の生産工程における不具合予測といった多岐にわたる目的に活用できます。図3に示した8つのタスクを実行する中で、プレス成形およびホワイトボディ・アセンブリのデジタル・プロセス全体が、ひとつずつ形成されていきます。このように作成したプロセス・モデルは、プロセスの物理特性を科学的に解明したものであり、現実世界の結果予測に役立てることができます。そのため、金型工場、プレス工場、車体工場で発生しうる不具合をエンジニアリング段階で解消できるようになります。修正作業の工数はさほどかからないため、プロセス・デザインの工数が圧迫されることもありません。

関連する物理特性をすべて考慮したプロセス・モデルの構築について、図4の図表でコンセプトを説明します。プロセス全体を通して、プロセス・モデルを微調整することで、プロセスの成熟度が高まります。

金型設計が完了し、金型製造が始まると、バーチャル世界から現実世界に移行します。つまり、この時点から現実のプロセスを構築する作業が始まります。図4の緑のラインが示すとおり、バーチャル世界では、プレス成形プロセスのコストやリスクを最適化することができます。このバーチャル世界では、プロセスの最適化をコンピュータ上で解析できるため、プロセスの調整にかかる工数は低く抑えられます。しかし現実世界に移行したとたん、工数が上昇し(赤のライン)、コストやリスクを最適化する能力が大幅に低下します(緑のライン)。言い換えると、デジタル・プロセスのモデルを使用することで、プレス成形やアセンブリのプロセスを仮想的に評価できるため、バーチャル世界にて、コストの最適化、リスクの最小化、そして不具合回避までをも早期段階から対応できます。

4: 現実のプロセスおよびデジタル・プロセスのモデル

現実世界の金型とプロセスを構築する際には、デジタル・プロセスのモデルと完全一致させることによってのみ、その効果を最大限に活かすことができます。現実のプロセスにてデジタル・プロセスのモデルを活用し、現実とデジタルのプロセス間で即時にフィードバックを反復させることで、潜在的な不具合の対応を俊敏かつ柔軟に行うことができます。さらには、現実世界の金型の測定値や工程データをデジタル・モデルにフィードバックして、デジタル・モデルの改良を重ねることで、現実とバーチャル世界にまたがる隔たりを解消することができます。結果として、すべてのプロセスに、高品質のホワイトボディを最小限のコストとリードタイムで生産するという明確な目標を持たせることができます。

現在OEMでは、全般的にデジタル・プロセスのモデルを使用した部署間のデータ交換や情報伝達が、バーチャルと現実の転換点に至るまで行われていますが、多くの場合この転換点からデジタル・プロセスのモデルが活用されず、エンジニアリング(バーチャル世界)とトライアウト(現実世界)が同期していません。つまり、バーチャル世界で検討された一連のエンジニアリングは、現実世界にて反映されていないのです。エンジニアリング部門の技術者は、バーチャル世界で評価を行う際に、現実世界の制約を考慮せず、その一方、金型工場やプレス工場の技術者は、エンジニアリングの意図に気付かないかそれを無視し、現場で発生する不具合には自らの経験を頼りに対処してしまいます。

その結果、バーチャル世界と現実世界のプロセスが乖離し、実際の生産工程に対するデジタル・モデルの適合性が損なわれ、ともあれば完全に消滅します。すると、事実誤認、作業の重複、不具合対応といった大きな負担が生じ、トライアウトや生産工程に大幅な時間とコストがかかってしまいます。

したがって、デジタル・モデルと現実のプロセスを一致させることのみによって、現実のプロセスに関するすべてのデータや情報を最大限に活用することができ、業務プロセスの包括的なデジタル化による利便性を享受することができます。しかしこれを実現するには、大々的な改革を伴います。

デジタル・プロセスモデルは、エンジニアリング部門と金型/プレス/車体工場をつなぐ橋渡しとしての役割を担います。つまり、デジタル・モデルは、デジタル・プロセス・プランニングにおける唯一のデータ・キャリアとして情報伝達の役割を果たし、部署間による双方向の直接的なコミュニケーションを可能にします。事実、過去のプロジェクトで作成したデジタル・モデルを新たなプロジェクトの開始時から使用し、継続的に改良および改善を行うことで、時間と共に効率および効果をさらに高めます。

図5: 現実のプロセスを設定、監視、制御するデジタル・プロセスのモデル

最後に現実世界におけるデジタル・プロセスのモデルが創出する付加価値について説明します。形状公差に収まり不具合もない製品を生産するには、プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスをバーチャルに開発した後も、現実世界で手作業による修正ループが必要になります。修正ループでは、金型を調整しますが、手作業による調整は、非常にコストが高く、時間もかかります。トライアウトおよび品質ループの回数を減らし、プロセスを円滑に生産工程へ移行するには、デジタル・プロセスのモデルを活用することが鍵となります(図5を参照)。プレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・トライアウトおよび生産においては、現実のプロセスを構築するための設計図として、デジタルのプロセスを活用することが肝要です。現実世界で不具合が生じたら、デジタル・プロセスのモデルでその不具合を調査し、現実のプロセスで不具合を効率的かつ効果的に監視、制御、解決するために必要な調整を検討します。トライアウトおよび品質ループの回数を減らし、安定したプレス成形およびホワイトボディのアセンブリ・プロセスに移行し維持することによって、幅広く無駄を削減することができます。