工場の内部を紹介しますが、はたしてこの工場の正体は?!
『ターミネーター:ニュー・フェイト』という映画では、珍しく自動車プレス成形の世界が映し出されています。本稿では、この大ヒット作品に登場するプレス工場、そして重要な役割を果たすプレス成形工程やプレス部品について紹介します。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』をご存知ない方のために説明します。この映画は、未来からやってきたサイボーグ兵士がサラ・コナーと手を組み、凶悪なターミネーターから女の子を守ろうとする物語です。
2019年に製作されたこの作品はジェームズ・キャメロン監督のシリーズ復帰作で、リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイビス、アーノルド・シュワルツェネッガーが出演しています。面白いことに、これは シリーズ6 作目ですが、しかし『ターミネーター 2』の続編としてストーリーが展開してゆきます。
そのため『ターミネーター3』や『ターミネーター:新起動/ジェ二シス』など興行的に振るわなかった以降の続編を鑑賞せずとも、『ターミネーター:ニュー・フェイト』を直接お楽しみいただけます。一部ではこれがシリーズ史上最高の作品だと絶賛されていますが、熱狂的なファンたちの間では賛否両論のわかれるところでしょう。
この映画では迫力あるアクションを存分に楽しめます。そして初代ターミネーターであるサイバーダインシステムズT-800モデル101を、アーノルド・シュワルツェネッガーが再演しています。このキャラクターに老いの兆候が見え隠れすることで、サイボーグ人間の人格にさらなる深みが感じられます。これは演者が72歳にして作品に復帰したシュワルツェネッガーであるからこそ、非常に説得力があります(『エクスペンダブルズ』での不自然なまでに若さを強調する演出とは対照的ですね!)
しかしさらに輝いていたのは強靭なサラ・コナー役で復帰したリンダ・ハミルトンです。シュワルツェネッガーと再会を果たす瞬間は、特に感慨深い場面となっています。
映画の予告編をご覧いただければ、その意味をおわかりいただけるかと思います。
上映開始から約 12 分後に、メキシコのプレス工場にて激しい戦闘シーンがあります。意外にも、ものシーンは実際にはハンガリーにあるメルセデス社の工場で撮影されました。しかし、メキシコのオートフォーム社の情報によると、このシーンはメキシコのアセンブリ工場に特有の整然とした雰囲気がよく表現されていて、ゲスタンプ社やフォード社の工場を彷彿させるような情景となっています。
図 1: 上部および下部フード部品の組立て前の研磨工程。裏では2名の作業員が金型を使い、組立て用の接合面を準備しています。
画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures
図 2:グレースを演じるマッケンジー・デイビスが、インナードア部品を即席の武器として応戦しています。ただしご自宅では絶対に真似しないでください!
画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures
図 3: 組立て作業中、車体の構造部品にスポット溶接が施されます。
画像提供: 20th Century Fox/Paramount Pictures
車種については、ハンガリーで生産されているモデルを調べ、映画の中でも車体の側面を確認したところ、メルセデスCLAの可能性が高いと考えます。
ファンたちの間で注目を集めているのが、映画に登場する「アリウス・モーターズ」のメキシコの工場です。この名称が建物や工場内に大きく表示されていることから、このアリウス・モーターズこそが、人類と戦争を繰り広げる AI を開発したサイバーダイン技術やスカイネットの初期形態ではないかという憶測が飛び交っています。映画でもそれをさりげなく示唆するヒントが散りばめられています。たとえば、工場の作業員がロボットに置き換えられることを嘆くシーンがあります。その上司は「それが未来だ」と言い放ちますが、これはAIが支配する世界の到来を暗示しているようかのようです。
『ターミネーター: ニュー・フェイト』は、低迷してきたシリーズ作品を見事に復活させました。本作は見ごたえ満載のアクションだけでなく往年のファンの心をくすぐる懐かしさを融合させた、スリリングなSF体験を楽しめる秀逸な作品となっています。
運命は自身が創り出す、それを忘れないでください!