Aurock:部品の割れに関するケーススタディ

Aurockのモデリング&シミュレーションマネージャー、レニー・ジャキノ氏と、CEOのファビアン・ナザレ氏が、これまでシミュレーション活用が進んでいなかったプレス成形業界のさまざまな分野に、板材成形シミュレーションを導入してきた経験をご紹介します。

Aurockは、航空宇宙業界にプレス成形シミュレーション技術を提供した先駆企業です。過去15年にわたり、プレス成形、エラストフォーミング、圧延、熱間プレス成形、超塑性成形など、幅広い分野でお客様を支援してきました。AutoFormとAbaqusによるシミュレーションを活用し、さまざまな解析を実施するとともに、その専門性を活かしソリューションを提案しています。こうした強力なツールのメリットをお客様に示すことで、シミュレーションを継続的かつ体系的に活用する文化の定着を進めています。

早期段階からのシミュレーション

部品の成形性を担保し、安定かつ信頼性の高い生産を実現するために、早期段階からシミュレーションを用いた検討を行うことをお客様に推奨しています。工程計画部門では、金型コンセプトを検証し、部品や工程の制約を考慮した適切な工程パラメータを特定する上で、シミュレーションを積極的に活用しています。この初期段階でのシミュレーションは非常に有効である一方、時間的な制約も厳しくなります。AutoFormは、短時間でのデータ入力と高速計算、そして高精度な結果を備えており、この用途において最適なツールです。数時間以内に結果を提供できるため、非常に早い初期段階からお客様を迅速に支援することができます。

技術部門を支える重要なパートナー

シミュレーションの活用により、部品の成形性やスプリングバックの検討、幾何公差の確認、材料健全性の評価を行い、お客様が安全な工程を設計できるよう支援しています。AutoFormを用いたシミュレーションは、最適ブランク形状や金型面の決定、スプリングバックの予測、プレス成形条件の最適化に特に適しています。こうした特長により、この段階で求められる機動力と迅速な対応を実現できます。

材料データはシミュレーションに不可欠な入力情報であるため、当社では必要な材料カードを作成する補完的な業務も行っています。材料特性の評価から、シミュレーションソフトウェア上での材料定義まで、一連の工程を一元的に管理できます。

量産化:ハイリスクな段階

量産化に伴うコストと時間は、製造業にとって大きな課題です。必要な人材や金型コストに加え、加工条件を調整するために生産設備を占有する必要があることから、この段階は高いリスクを伴います。シミュレーションは、こうしたリスクを抑えるうえで非常に有効な手段です。当社の有限要素シミュレーションの専門性をもって、お客様のプレス成形における初回トライでの成功率を高め、生産の安定性向上に貢献できます。もちろん、当社の内製生産においても同様です。

研究開発の迅速化

研究開発部門では、板材成形シミュレーションを活用したデジタル検証を通じて、新たなアイデアやイノベーションを容易に確認できます。これは、革新的または創造的なデザインを促進するための基軸である同時に、社内で情報を共有するための有効なコミュニケーション手段でもあります。

既存の生産ラインの効率的な改善

シミュレーションのもう一つの有効な活用法は、既存の生産ラインを改善してコスト削減につなげることです。対象となるラインは、数十年前から稼働している場合もあります。その際、実際の生産条件を正しく把握して反映し、シミュレーションを可能な限り現実に近づけたうえで、迅速に適切な結果を得るためには専門知識が不可欠です。

Aurockでは、「製造できるものをシミュレーションし、シミュレーションしたものを製造する」という原則を徹底しています。現場とシミュレーションの乖離が確認された場合は、お客様を支援しながら実際の工程を詳しく調査し、その原因を特定します。プレス機の状況を正確に把握するために生産現場へ赴き、そのうえで既存の工程を忠実にシミュレーションし、問題解決に取り組みます。

ケーススタディ:割れ不具合から良品化

図1 – 不具合が生じた工程をシミュレーションで再現
写真提供:Nimrod Aerostructures

図1の事例では、当初シミュレーションは行われていませんでした。部品には下死点の約200mm手前で繰り返し割れが発生し、生産を開始できない状況でした。そこで、解決策を見つけるために工程モデリングの依頼を受けました。そこで新たに金型を製作することなく、良品を安定して生産できるよう工程を見直すことを目標としました。
当初の金型設計には、ブランクホルダーと折り曲げたプリフォームが採用されていました。生産現場のすべての工程情報、使用材料、実際の金型を詳しく確認した後、その金型の実際の状態を再現し、不具合が発生する状況をシミュレーションで再現しました。

その後、代替案を提案・評価し、シミュレーションを通じて解決策を見出しました。具体的には、ブランクホルダーを取り外し、2本のパイロットピンを追加することで、応力の低減を図ったのです。最初のシミュレーションで有望な結果が得られたため、バーチャルトライアウトを通じてプリフォームの形状を改良し、不具合のリスクなく部品を完全に成形できるようになるまで調整を重ねました。そして、これと同様に重要なこととして、新しい金型を製作することなく実現できたのです。

図2 – デジタル検証により、新たに金型を製作することなく、工程ベースの実用的な解決策を特定
写真提供:Nimrod Aerostructures

結論

Aurockでは、工程をできるだけ早い段階でシミュレーションすることで、後工程で必要となるリソースを大幅に削減できると考えています。シミュレーションデータの入力に細心の注意を払うことも極めて重要です。AutoFormは迅速かつ容易に設定できますが、入力データは実際の金型を忠実に再現していなければなりません。当社の専門性は、次の3つの重要なステップに集約されます。すなわち、適切な材料モデルを特定すること、実際の生産条件を把握すること、そして力学現象を理解したうえで改善策を提案することです。当社では、お客様があらゆるプレス部品と関連するプレス成形工程の設計にシミュレーションの考え方を取り入れられるよう尽力しています。また、当社の専門性を通じて、量産化までの期間短縮と高い部品品質の担保に貢献します。