AutoForm-BuildOptimizer:バーチャル・シミングとティーチングの可能性

はじめに

手動で行うシミングは、従来型の手法となりつつあります。近年、OEMではバーチャル・シミングの導入が進んでいます。この手法により、リードタイムおよび作業工数の削減が可能となり、その結果として数十万ユーロ(数千万円)規模のコスト削減が見込まれます。

ホワイトボディ(BiW)のアセンブリでは公差の不具合が頻繁に生じますが、それをすべて避けることはできません。アセンブリは複雑です。プレス部品が公差内であっても、それを組み立てるとアセンブリ全体が公差内に収まるとは限りません。そのため、量産立ち上げの段階では、アセンブリを公差内に収めることが主な目標となります。これが達成できない場合、次の2つの問いが生じます。

  • 車体工場で解決できることは何か?
  • 金型工場で解決すべきことは何か?

車体工場に着目すると、主な対策は2つあります。1つはクランプのシミングで、コストが比較的低いアプローチです。もう1つは接合順序の調整であり、よりコストがかかる工程側の変更となります。本稿では、AutoForm Assemblyと専用モジュールAutoForm-BuildOptimizerを用い、顧客とのグローバルな共同検証を通じて得られた、バーチャル・シミングおよびティーチング最適化の可能性に関する知見を紹介します。

1ホワイトボディ(BiW)アセンブリの公差不具合に対する車体工場および金型工場での対策

 主なコスト削減効果は以下の通りです:

  • 金型工場における「ホワイトボディ(BiW)に起因する品質補正や対策の削減
  • トライアウトの回数やトライアル段階のアセンブリ調達量の削減

シミング工程

組立ステーションでは、接合による偏差を補正するために、部品の固定点にシムを挿入する一般的な手法があります。これにはクランプの位置調整が含まれます。「シム」と呼ばれる薄い金属板を、上部または下部のクランプに配置します。シムの厚さは通常0.1mmから2mmほどであり、場合によっては複数のシムを組み合わせることもできます。 その目的は、部品同士を局所的に過度に曲げ、互いに締め付けることで、接合後およびクランプを開いた際にアセンブリが公差範囲内になるようにすることです。

2:シミング工程

ソフトウェアでは、ユーザーはクランプ(および接合)の設定を変更し、バーチャル上でシミング最適化を行うことができます。その原理は以下の通りです:

  • シムを挿入するクランプを選択し、以下を定義します:
    1. 特定のシム値をマニュアルで設定(例:-0.5 mm)
    2. 複数のクランプに可能なシミング範囲(例:±2 mm)を指定し、自動最適化を実行
  • ティーチングオプションを有効にして、溶接ガンの位置補正を可能にする。

この手法は、異なる工程の複数のクランプ(または接合部)に適用でき、時間とコストのかかるトライアンドエラーを伴わずに最適な寸法精度を得ることができます。この手法は画期的です。予測が難しい相互依存関係があるため、現状の車体工場では、一度に複数箇所を同時に補正することはほぼ不可能と考えられているためです。したがって、この手法により、シミング検証の回数を劇的に削減できます。

AutoFormを活用したドアアセンブリの事例

事例をご紹介します。ここでは、インナー部品、各種補強材、およびサイドインパクトビームで構成される左側のドアインナーのサブアセンブリを取り上げます。低・中強度鋼やホットスタンプ鋼など、板厚も0.7~1.5 mmとさまざまな材料が使用されています。

3:ドアインナーのサブアセンブリ

各部品は主に3つの工程で組み立て、接合には抵抗スポット溶接を用います。まず、ドアインナー部品をヒンジやロック補強材(A-10)と接合します。次の工程では、追加の補強材(A-20)を組み付けます。最後に、サブアセンブリをウィンドウフレーム補強材およびサイドインパクトビーム(A-30)と接合します。

4:アセンブリ工程

このソフトウェアでは、ユーザーは個々の部品のプレス成形シミュレーションの結果に基づいてシミュレーションの設定を定義できます。これにより、プレス成形工程から生じる寸法偏差、応力、ひずみ、板厚など、最終的なホワイトボディ(BiW)アセンブリの品質に重大な影響を与える要因を、アセンブリシミュレーションで考慮することが可能になります。本来、接合工程の前に、部品は公差範囲内に収まるように補正されます。しかし、ここで疑問が生じます。

  • 公差に収まるように補正された部品同士を組み付けると、アセンブリの公差に収まりますか?

アセンブリシミュレーションの結果、すべての単体部品が公差内に補正されていても、最終組立品には±1.5 mmを超える寸法偏差が残ります。接合工程に起因するひずみで組立品が公差外となるため、車体工場で最適化を開始します。

5:アセンブリ工程に起因する偏差

手動シミングと自動シミング

まず、ソフトウェア上で手動シミングを適用することで、寸法精度を向上できます。これは、ユーザーがシミングとティーチングを設定し、トライアンドエラーを繰り返しながら反復的にシミュレーションを行うことで、手動で最適化を行う方法です。

6:手動で行うバーチャル・シミング

しかし、この方法はユーザーの専門知識に頼るところが大きく、そして各調整の影響も複雑で相互に作用することが多いため、トライアンドエラーを要し、時間がかかる場合があります。

より効率的な方法として、ソフトウェア内の自動最適化を活用できます。ユーザーが複数のクランプにシミング範囲を設定すると、ソフトウェアが可能な組み合わせを自動算出します。そして複数の組立ステーションに対して公差ベースの最適化を行います。ユーザーは各クランプポイントの感度解析を実行し、プロセスウィンドウを通じて短時間で最適解を導き出すことができます。

ドアアセンブリの事例では、工程A-10およびA-30にシミングとティーチングを設定し、シミュレーションを実行しました。公差限界を定義して自動最適化を開始すると、ソフトウェアは数秒で、アセンブリを公差内で実現する適切なプロセスウィンドウを提示しました。

7:自動最適化を適用したバーチャル・シミング

8:バーチャル・シミングを用いて最適化されたアセンブリ工程から生じた偏差

ただし、シミングが常に有効な解決策とは限りません。場合によっては、シミングやティーチングだけでは特定の不具合を解消できないことがあります(必要なシミング値が大きすぎる場合など)。その際は、接合順序の調整や、アセンブリの不具合に基づきプレス金型工場での修正など、別の対策が必要になります。

バーチャル・シミングによる効率化

図9は、標準的な組織におけるシミングの一般的な進め方を示しています。修正はすべて反復的に行われ、シミングパラメータの定義と実装の両方をエキスパートが主導します。多くの場合、複数回の反復が必要となり、複雑さによっては数日から数週間を要します。

9:車体工場における現状(AS IS)のシミング工程

これまでに、バーチャル・シミングが、適合公差内の組立を実現するために最適なシミング設定を迅速に特定する有効な手段であることを実証しました。さらに、バーチャル検証と、専門家が提案するシミング定義を組み合わせることで、実際のラインでシミングを適用する前に、複数の仮想トライを実施することが可能となります。

10:車体工場における理想(TO BE)のシミング工程

シムそのものは安価ですが、適切な設定を見つけ出し、実装に要するリードタイムを短縮することで、大きなコスト削減が可能になります。つまりトライアンドエラーの反復をなくすことで、従来は数日から数週間かかっていた作業を数時間に短縮することが最終的な目標となります。

組織の内部プロセスを変更するには、関係者の合意形成、ソフトウェアの検証や評価、プロセスの開発または再設計、展開までを含めると、長期間を要する場合があります。当社の経験では、ソフトウェア開発は顧客側での問題解決より速く進むため、プロセス変更はできるだけ早期に着手することが極めて重要です。

結論

要約すると、バーチャル・シミングは、特にトライアウトおよび生産支援に有効なメリットをもたらします:

  • 個々のクランプの影響を明らかにし、複数の組立ステーションにわたる最適化を行うことができます。
  • このソフトウェアは、単なるシミュレーションツールにとどまりません。「バーチャル・シミング」により、工程に関する判断を行うための重要なソリューションとなります。
  • 「自動シミング」機能は非常にユニークです。ユーザーは、選択したクランプのばらつきの影響を即座に把握し、安全な(グリーンの)プロセスウィンドウを特定できます。通常なら数日かかる結果が、わずか数秒で得られます!
  • これらにより、形状・品質分野の専門知見を補完・拡張できます。また、品質補正、トライアウト、量産前アセンブリの手配に要する工数も削減できます。

Linde + Wiemann SE & Co KG からの声クリスチャン・ベシュノルナー氏(工学修士、プレス成形技術、FEA/プロセスエンジニアリング)には、長年にわたりAutoFormソリューションをご利用いただいています。同氏は、ホワイトボディ(BiW)エンジニアリングの改善とトライアウト関連コストの削減に向けた、前述の手法がもたらすメリットについて次のように語っています。

AutoForm Assembly活用することで、プロセス詳細な知見得られ、理解が深まります。その結果、生産ラインの立ち上げを早め、テストランの期間を短縮できます。私は、プレス加工組立を含むホワイトボディ(BiWプロセスチェーン全体に対するこの新しいプロセスエンジニアリング手法に、5年間取り組んできました。

バーチャル・シミングは、予測確実に機能します。ここ数年、さまざまなスポット溶接やライン溶接のプロジェクトを通じて、ホワイトボディ(BiW)のプロセスチェーン全体における要点注意点を数多く学んできました。私たちは常に冷静に一歩先を見据え、プロセス理解のアプローチをどう再定義し、改善のための新たな方法を見出すかを考え続けています」

※参照為替レート:1EUR = 185.44JPY(2026/6/12)