技術部門間の情報伝達における煩雑さの解消-業界標準としてワークフローが双方向であるべき理由-

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悪評高き「Easy」ボタン: すべての仕事を完了させる夢のボタンはあるのでしょうか?

このようなボタンがほしいと、誰もが思っています。上司は冗談を飛ばし、部下たちは夢を見るのは、どんな仕事でもすぐに完了させてしまう、悪評高き「Easy」ボタンです。出勤して、そのボタンを押し、退社するだけで、給与を受け取ることができるのです。そんなボタンは要らないという人はいませんよね?  しかし現実には、技術革新が進んでも、ワンクリックですべての仕事が片付くことはありえません。 仮に部分的には片付くとしても、すべて完了できるわけではありません。効率的な製造工程の鍵を握るのは、人間の関与と知識なのです。

エラーが出ないプロジェクトのデータ交換に向けて

想像してみてください。今のあなたは開発プロジェクトに携わり、すべての計画を最終決定し、設計を開始している段階にあるとします。しかし計画した工程や部品形状をすべてまとめあげる作業は、終わりが見えない大きな障壁として立ちはだかっています。さほど難しい問題でもないのに、あなたにとっては大きな精神的負担です。あるいは、すでに話はまとまり、別のCADシステムやファイル・タイプですでにレイアウトされているかもしれません。それはAutoFormソフトウェアで計画されたものかもしれません。一般的な工程をシミュレーションして計画や検証を行った場合、その工程をさらに成熟させる検討作業に直接活用できる便利な一連のデータがあります。全体工程のコンセプトを大雑把または詳細に検討する場合、ティップ・ポイントやティップ角度、フィーチャーを作成した工程などを確認する手間は省かれるべきです。すべてのデータを適切に整理されたファイル名で保存すれば、誰もが工程全体を把握できるようになります。

各部門では通常、シミュレーション・ソフトウェアやCADシステムの機能を使って情報を抽出し、検討作業を行います。各ステーションでどのような座標系やティッピングを使用して部品の姿勢を設定したか、また、どのステーションでどのフィーチャーを成形またはトリムしたか、 工程を検討するには、デザインまたはシミュレーションを開いて評価を行わなければなりません。適正な情報を収集できる場合もありますが、多くの場合は情報が不明瞭であるため、調査が必要になります。次に「古き良き慣習」として、紙に情報を書き留めるか、あるいはパソコンに情報を打ち込みます。このように金型や部品形状に関するデータを抽出およびエクスポートするには、長い時間を要する場合があります。一般的には、ソリッド形状からサーフェスを抽出し、それぞれの抽出物に(理想的には)誰もが判別できるファイル名をつけて、個別にエクスポートします。8連の金型では、シミュレーションに使用するトリム・カーブを含めると、部品の複雑さと金型の要件に応じて30~100個の金型が必要になります。抽出する情報のみを表示することに時間を費やし、その後も抽出作業が完了するまで、ひたすら待ち続けなければなりません。

ボタンを押すだけで、必要なすべての情報が自動的に送信および共有されることができれば、時間を大幅に節約できるのではないでしょうか?

下図に示すのは、AutoFormの早期フィージビリティで検証したコンセプト工程を再利用して作成した新規デザインに対するNXの開始時点です。

AutoFormで共有される項目

AutoForm-QuickLinkは、AutoForm FormingとCADシステム(CATIAまたはNX)またはマネージメント・システム(PDM…)間における双方向のデータ交換を行う機能です。複数のプラットフォームや部門間で情報や決定事項を共有して活用することで、ワークフロー全体の改善を促進します。これは各部門の連携を強化し、全員が共通理解を持つことを目的としています。これにより、情報に基づくより適正な意思決定が可能になります。

膨大な量の情報をAutoFormからzip圧縮ファイルにまとめて共有することができます。エクスポートするデータには、金型サーフェス(金型、フォーム金型、ワイパー金型)、カーブ(プロファイル、ドロービード・ライン、材料ゾーン)、ポイント(パイロット・ピン、流入、スペーサ・グループ、球体、クランプ)など、コンセプトのデータ形状を含めることができます。また、計画した工程、配置、金型方向、プレスのデータといった工程情報に加え、材料タイプや板厚などのプロジェクト情報も含めることもできます。数多くの項目をすべてエクスポートし、会社標準を活用することで、ニーズに合わせて設定できるため、必要な情報のみを共有し、受領することができます。以下に、利用できるファイル形式と、エクスポートできる形状やデータを示します。

CSV: シートの要素情報。

DBG: ビードおよび溝の高さ、幅、半径などのドロービード・プロファイル情報。

Iges: 工程最後での部品の境界、トリムライン、ブランク外形線、ドロービードの中心線、ダイフェース・モジュールを使って作成した、またはCADソフトウェアから初期に取り込んだ金型サーフェス。

PDF: シミュレーション・レポート(レポート・マネージャで作成した場合)。

PNG: 部品形状ビュー、ステーションの部品と結果、ブランク外形線、コイルなどの画像。

STL: 各工程のシート・メッシュ。

TXT: ベクトル・フィールドなどの見込み補正データ。

XML: プロジェクト・データ、標準および元のAutoFormデザイン・ファイルへのリンク、ドロービード・パラメータ、クッション・ストローク、材料情報および金型コスト(工程計画および見積もりソリューション(PBS)を使って設定した場合)。

AutoFormで作成したZipファイルの内容の一部を以下に示します。

インクリメンタル・シミュレーションをすべて完了後に作成したパッケージにて、部門間で共有されるデータの一部を以下に示します。

業界標準とすべき双方向のワークフロー

上述のようなソリューションの場合、一方向のみのワークフローは推奨されません。CADソフトウェアのあらゆる形式でデータ交換できるソリューションを使って、双方向に作用させるべきです。クリックを数回するだけで、プレス成形ソリューション・ソフトウェアからzipファイル形式で共有された形状データをインポートする機能をご利用いただけます。さらにNXまたはCATIAとAutoForm-ProcessDesignerforCATIAを使用することで、このデータをCAD品質のサーフェスの作成に活用できます。これらの形状を別途のQuickLinkファイルとして共有し、瞬く間にシミュレーションに取り込んで検証することもできます。

AutoForm-QuickLinkforNXおよびAutoForm-QuickLinkforCatiaでは、インポート/エクスポートするフィーチャーに自動で一貫した名前を与えられるため(「管理された工程アイテム」と呼んでいます)、迅速なCAD設計工程を実現できるだけでなく、インポートおよびエクスポートを手動で操作する場合のミスも防止できます。そして効率的なデータ交換を促進し、データの完全性、透明性、使いやすさを改善します。

このように、AutoFormソフトウェアの「QuickLinkから共有」ボタンをワンクリックするだけで、容易にデータを交換し、部品開発の構築や決定を促すことができるため、部門間の障壁を超えた意思疎通が可能になるのです。必要なすべての情報が揃うと、次のステップで、より適正な判断を下すことができます。

QuickLinkを使ったAutoFormソフトウェアの形状ワークフロー

製造工程、特に金属の切削分野に関するM.ユージーン・マーチャント博士の素晴らしい功績について、彼の言葉から学びました。マーチャント博士は、デイトンからほど近いシンシナティを拠点にご活躍されていました。この博士の言葉は、世界中の「Easy」ボタンが、ボタンから抽出された情報を操る人間を超えていないことを示しています。

「技術および技術の活用は、それだけで素晴らしいものですが、その技術を操る人材を適正に活用しなければ、立ち行かなくなります。適材を適所に活用してはじめて、技術がその潜在能力を最大に発揮します。」  M.ユージーン・マーチャント博士[1] 

「Easy」ボタンによって、私たちがより重要な仕事に集中でき、製造工程全体の改善が促進されることを願って止みません。

[1] https://www.automationmag.com/images/stories/LWTech-files/43%20Dr.%20Eugene%20Merchant.pdf